機動戦士ガンダムSEED DUEL   作:デュエル好きの名無し

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ep.08

「まず俺が先んじて出撃、隠密行動でザフト艦に向かう。ザフトはまず間違いなくモビルスーツを投入してくるだろうからな、俺から少し後に出撃したお前らに奴らの相手をしてもらう」

 

「ほう」

 

「敵の目をお前らに集中させ、俺が母艦に奇襲を仕掛ける。単純明快だろ?」

 

「はい」

 

「うん」

 

ムウさんが私とキラの肩に手を置いた。

 

「とにかく、だ。死ぬなよ、絶対に死ぬんじゃない。難しいことは考えずに、生き残ることを優先しろ。いいな」

 

……あれ?艦を護れとは言わないんだ。

ふとそう思うと、ムウさんは首を振った。

 

「言ったろ、難しいことは考えるなって。防衛対象とかそんな風に考えずに、とにかく艦の近くにいろ」

 

なるほど、戦争初心者の私達にわかりやすいように説明してくれたのか。

 

「大尉!」

 

「分かった!すぐ行く!…じゃあ俺は行く。お前らも頑張れよ!」

 

「うん」

 

「はい!」

 

小脇に抱えていたヘルメットを被ったムウさんが、メビウス・ゼロへと向かう。

私とキラは自然と顔を合わせた。

 

「皆がいるんだ。守らないとね」

 

「そうだね」

 

トール達のことかと軽く返答すると、キラはそこで言葉を切ったあと、少し言いずらそうに告げた。

 

「……イージスの相手は、僕がする」

 

「イージス…X303か。なんで?」

 

本当は分かっている。

でも、私はまだキラからイージスのパイロットと幼馴染なのだという事情を聞いていない。

そう考え言葉を口にする。何も知らないならこう言うだろう。

 

「パイロット……アスランは、僕の幼馴染なんだ」

 

「幼馴染」

 

「多分、アスランも僕のところに来ると思う。だから、僕が相手するよ」

 

「……説得とかは、しないの?幼馴染なんでしょ?」

 

「無駄だと思うんだ。あの時だって、聞き入れて貰えなかった」

 

「――」

 

私は絶句した。

まさかキラがこんなことを言うなんて思いもしなかったのだ。

 

「でも、それって」

 

「うん。勝手なのはわかるよ。……でも、僕はアスランを殺したくないんだ」

 

「なら、私が」

 

「でも!アスランに皆が殺される方が、嫌なんだ!」

 

キラの大声に格納庫中の視線が一度集まるが、何やらそういう雰囲気を感じ取ったのか、整備員達は黙々と作業を再開する。

 

「「……」」

 

私達もまた2人して無言になり、そのままお互いの機体へと向かった。

 

整備員の1人から現在のデュエルの状態について説明を受け、コンソールを用いて調整を行う。

ヴァリアブルフェイズシフト装甲が欲しいなという思考が頭を過ぎるが、生憎今はC.E.71年である。

 

Destinyの舞台であるC.E.73年まで生き残れたら、劇場版のあれみたいにデュエルをヴァリアブルフェイズシフト装甲に換装したりできるかもしれない。

 

そう何気なく考えると同時に、私が相対したあのジン達の姿が思い浮かんだ。

 

……でも、そうか。

改めて考えると、私はジンを2機撃墜していて、パイロットが脱出した様子は見られなかった。

 

「2人、殺した」

 

私は死後どこに行くのだろう。

やはり地獄か、人殺しの行き先などそこしかないだろう。

顔も知らないパイロットが私を責め立てる。

よくも殺したな、次はお前だという声が聞こえて来る。

 

……いや、今は考える必要はない。

理由はどうあれ、私は生きていて、彼らは死んだ。

 

「弱肉強食」

 

弱ければ、死ぬだけだ。

 


 

宇宙空間をデュエルが駆ける。

スラスターから吹く推進剤は青い軌跡を描き、暗闇の(ソラ)を彩る。

 

「ハァァァァァァ!!」

 

「ん」

 

ビームサーベルを出力した機体がデュエルに踊りかかり、振り下ろされた斬撃がシールドに受け止められる。

 

『あなたが、あなたがイザークを!』

 

「……」

 

襲い来る機体の名はブリッツ。GAT-Xシリーズが3号機、X207 BLITZ(ブリッツ)だ。

電撃の名を冠する本機が、決闘の名を有するこのデュエルに向かってくる理由は明白だ。

 

………彼だ。

 

私が彼を殺した。その事にブリッツに搭乗するパイロット、ニコル・アマルフィは激怒しているのだ。

あの穏やかなニコルが、まさかここまでの怒りを顕にするなんて……

 

『確かに、僕らだって覚悟の上です!』

 

右腕の複合兵装――攻盾システム"トリケロス”のビームサーベル兼用ビームライフルが放たれる。

 

ひらりと回避し、ビームサーベルを抜刀。

繰り出した斬撃はトリケロスによって防がれるも、気にせずイーゲルシュテルンをブリッツの胸部目掛けて発射。

 

フェイズシフト装甲によってダメージこそ皆無だが、如何にフェイズシフトといえどその衝撃までは消せない。

 

『うわぁぁぁぁぁぁぁ!?』

 

案の定ブリッツのコクピットは、至近距離から放たれたイーゲルシュテルンの衝撃で大変なことになっているらしい。

 

サーベルをマウントし、通信の先で絶叫を上げるニコル――ブリッツの右腕を狙いビームライフルを放つ。

 

『クッ!』

 

流石に狙いが露骨過ぎたか……

 

「でも、時間稼ぎが目的だし」

 

モニターの一つに表示されるセンサー画面を一瞬流し見て、X105とX303にZGMF-1017、そしてX103の番号を確認する。

 

ストライクとイージスは交戦中、バスター――X103 BUSTER(バスター)はアークエンジェルからの対空砲火に苦戦しているらしい。

 

イージスはともかくとして、問題はバスターだ。

今は苦戦しているとはいえ場数を重ねられると厄介なことは、低軌道会戦において強奪された他のXナンバー達と共に、次々に第8艦隊の艦を撃沈していたことから既にわかっている。

 

……かと言ってブリッツを無視してバスターに向かえるかと言われると、難しいと言わざるを得ない。

 

怒り心頭とはいえそこは腐ってもエリートの赤服。

下手に離脱を狙えば、絶妙なタイミングでスラスターやコクピットを狙って来るであろうことは想像に難くない。

 

特徴的な動きで撃ち出されたランサーダートを再び抜刀したビームサーベルで斬り捨て、爆発の衝撃を利用しブリッツに強引に近付く。

 

「ここまで近付けば」

 

『な!?』

 

トリケロスの上からシールドで押さえつけ、グレイプニールはただワイヤーを切断するのではなく、クローの開閉機構部にビームサーベルを突き立て破壊する。

 

『お前…!』

 

「その機体には頭部バルカンもない。あなたの負け」

 

『誰が!』

 

腕がダメなら足をとキックを放とうとするブリッツ――先んじて膝を蹴りつける。

 

『ならば……!』

 

「ッ!?」

 

これで無力化したも同然。

あとはバスターの注意をこっちに引き付けて――などと考えたのも束の間、押さえ付けられたトリケロスの切っ先を強引にデュエルに向け、ランサーダートを射出して来た。

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

『うぅぅぅぅ!!!』

 

ロケット推進弾が勢い良く爆発し、強制的に距離を離される。

衝撃で頭を揺らされ、シートに後頭部をぶつける。

 

「ニコル!」

 

『ディアッカ!?』

 

ディアッカ?まさか……!?

ロックオン警報が鳴り、慌ててシールドでの防御を試みたが、無情にも一条の光がデュエルの左腕を貫く。

 

「チッ」

 

左腕をパージ。切り離された左腕がシールドを巻き込んで爆散し、生じた光が宇宙を照らす。

 

バッテリーは……まだある。

ランサーダートでの消耗が気になるが、それはブリッツも同じ。むしろあちらにはイーゲルシュテルン分の消耗がある以上私の方が有利。

 

となると、目下の問題は……

 

『よくもニコルを!』

 

わざわざ通信まで繋げて来たこの緑の機体(バスター)だ。

 

「襲って来たのはあなた達、正当防衛」

 

『イザークをやった癖に、どの口が!』

 

「自業、自得ッ!」

 

フェイズシフト装甲に対して特攻を持つビーム兵器に加え、350mmガンランチャーと6連装ミサイルポッドを有する本機は、シールドすら失った今のデュエルにとっては天敵とも言える。

 

『ニコル、前は任せた!』

 

『わかりました!』

 

唯一のデュエルの勝ち筋である接近戦も、前衛をブリッツに任せることで回避される。

白兵戦という条件下において、第1期GAT-Xシリーズの中でも無類の強さを誇るデュエルとはいえ、それはあくまでも1対1(タイマン)の場合。

 

後衛による火力支援が望める相手に対し、こちらは単騎。

……非常に不味い。

 

それに……いや、もう目を逸らすのは無理か。

ブリッツと交戦し始めた当初から、デュエルの動き――いや、私の操縦の精細さはどんどん酷くなる一方だ。

 

理由なんて目に見えていたが、今までは敢えて無視していた。

目前の彼らとてエリートの証である赤を着ることを許されたパイロットだ。

Destiny時のアスランのような操縦では死は避けられない。

 

『はぁ!!』

 

『ほらよ!』

 

「くっ!」

 

防げない以上は避けるしかない。

ブリッツ、バスター双方から放たれたビームライフルの光を躱す。

 

『逃がすかよ!』

 

続けて発射された無数のミサイルがデュエルに向かって来る。

迷わず迎撃を選択、ビームライフルを構えミサイルを撃ち抜こうとしたその時、

 

『今!』

 

「な!?」

 

何時の間にか近付いていたブリッツが、今まさにサーベルを振り抜こうとしていた。

視界に移る全てがスローモーションになったかのような錯覚に陥り、心臓が破裂しそうな程激しく高鳴る。

 

「――!」

 

死の恐怖に思わず目をギュッと閉じ、その瞬間が訪れるのを待った。

 

『デュエル、援護する!艦に近付け!』

 

「ッ!」

 

――が、アークエンジェルから繋がれたナタルさんの声に再び目を開き、操縦桿を強く握った。

 

同時に飛来したミサイルがブリッツに激しく衝突、無数の赤き華が咲き誇る。

 

『足付き…!ぐぅぅっ!』

 

ミサイルの衝突と爆発によりバッテリーが吹っ飛んだのか、漆黒色だったブリッツが灰色に転ずる。

 

『ニコル!?くそっ、撤退する!』

 

フェイズシフトダウンしたブリッツを掴んだバスターが、保有する全ての火器を乱射しながら後退して行く。

 

2機が向かう先には、ストライクとイージスの方に向かっていた筈の1機のジンがおり、左腕と左脚の膝から先を失っているにも関わらず、どこか憎々しげに輝くそのモノアイがデュエルを真っ直ぐに貫いていた。

 

「こちらデュエル、これより艦の直掩に入る」

 

『了解した』

 

ジンと合流し撤退する2機のGを追うことなく、機体をアークエンジェルへと向ける。

ブリッツはともかくとして、まだ戦闘継続が可能であろうジンとバスターに向けて、牽制の意味も込めてビームライフルを構えていると、ムウさんから作戦成功を告げる通信が入った。




カットしてますが、ヘリオポリス組は無事ブリッジに上がりました。
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