透き通るような世界観に乱入する邪悪魔術師のお話   作:ストライダー信長

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お久しぶり大根。
………その、はい、去年の暮れから鬱やらパソコンブレイクやらスマホブレイクが重なり遅れました。大変申し訳ございませんでした。


第6話 外道魔術師VS便利屋 そしてブラックスーツ登場

 

 

 

 なんで、なんでこうなった?

 

「ちょっとガルちゃん!?ぼーっとしてないで戦ってくれないかな!?」

「っ、すまない、ホシノ先輩!!」

 

 咎めてきたホシノ先輩に叫び返し、意識を切り替える。

 正直状況は呑み込めていないが、便利屋の請け負った任務とやらの標的がアビドスだったのだろう。

 ………余計な事は制圧してから考えよう。

 

「《深海の息吹》は………相手が多すぎるか」

 

 心肺停止蘇生コンボは無理そうだな。

 接近して武装を破壊するのが得策だろう。

 

『ジェヴォーダン、アタマウスを用意しろ』

『はい、マスター』

 

 連中の武器が何で出来てるかは知らんが、竜の首より硬い事はあるまい。

 全て斬り伏せて、

 

『……あっ』

『ジェヴォーダン?』

『その、マスター………剣、無いです』

「………は?」

「……ガルちゃん?」

『剣、無いです。………多分ですけど、その、ニャルラトホテプに………』

「ガルちゃ」

ひぃいぃぎゃぁあぁああああっっっっ!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぐっ、えぐっ、ふぐっ、うぅぅ〜〜〜…………」

 

 あんまりだ、あまりにもあんまりだ。

 こんな、こんな残酷な仕打ちが、許されて良いのか?

 

「異教徒と探索者をちぃっとばかし血祭りにあげただけで、血も涙もねぇ!!!」*1

「いや、それはガルちゃんが悪いんじゃないかな………?」

「許さんぞ!!絶対に許さんぞ!!便利屋ぁ!!!」

『マスター、便利屋の皆様は悪くないかと』

「黙れジェヴォーダン!!お前に私の悲しみがわかるものか!!」

『えぇ………』

 

 立ち上がり、前方で立ち尽くす便利屋を睨めつける。

 右腕を、突き出して、

 

 

「っ、社長!避けて!!」

「《ロビクスの接吻》!!」

 

 ずぬ、と、音がして、見上げるようなスケールのヒラタケが炸裂した。

 辛うじて避けた陸八魔が大きく吹っ飛び、巻き込まれた傭兵共が数名、地面に叩き付けられて昏倒する。

 ドリームランドに棲む旧神の一柱、錆と菌類の神、ロビクスの授ける奇跡は、指定範囲内にキノコを咲かせ、或いは錆腐らせる。

 一瞬で変色して腐り堕ちるキノコを尻目に、羽織っていた上着を脱ぎ捨て、

 

 

「ジェヴォーダン!!!」

「─────はいっ!」

「私は便利屋を叩く!!お前は傭兵共を死なない程度に痛めつけろ!!!絶対に殺すな!!!」

「了解しました、マスター!!」

 

 自らの掌をナイフで裂いて鳳仙花の種を握り込み、溢れた血を媒介に急成長させる。

 創り出した杖を正眼に構えて、《肉体の保護》を発動し、

 

「さぁ、かかってこい、便利屋。ちぃっとばかし遊んでやろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

「《クラネスの魔槍》」

 

 

 突き出した手から灰紫色の光線を連射し、散発的な弾幕を回避して突貫する。

 前衛らしき紫髪の少女のコメカミに、振り被った杖を叩き込み、

 

「こ、のぉっ!!!」

「ほぅ?」

 

 

 ズドン、と重い音。

 顔面で杖を受け止めたまま、少女が引き金を引いていた。

 脳味噌を揺らしてやったはずだが、よく耐えるものだ。

 まぁ、

 

「これで終わりだな」

「────っ!?」

 

 

 服越しに腹へ押し付けたドアノブほどの金属塊が連続して炸裂音を鳴らし、相手が声にならない悲鳴を上げて倒れこむ。

 

「ミ=ゴの電撃銃だ。ちょっとした玩具のようなものだが、なかなかの威力だろう?………あぁ、筋肉が痙攣するせいで、まともに喋れなくなるんだったな、そういえば」

 

 まともな人間ならまず動けなくなる一撃を喰らって意識があるのは驚きだが、それだけだ。

 念のために顎を殴って気絶させ、

 

「《被害を逸らす》」

「─────っ、弾がっ!?」

 

 手を狙った弾丸を魔術で弾き、一足跳びに間合いを詰め、

 

「《幽体の剃刀》」

「にぎゃっ!?」

 

 至近距離から放った不可視の刃が陸八魔の腹に直撃し、大きく吹っ飛ばした。

 ゴロゴロ転がった陸八魔に電撃銃を撃ち込んで気絶させ、

 

「マスター。こっちはもう終わりましたよ。動きが鈍ったんじゃないですか?」

「殺さぬように加減しただけだ」

 

 玉虫色の光沢を帯びた触手が残り2人をグルグル巻きにしているのを見て、杖を地面に突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ~しよしよしよし!!!」

「あばばばばば」

「えっと、ガルちゃん?それ、なに?」

 

 プルプル震えるジェヴォーダンをワシャワシャ撫でていたら、ホシノ先輩に後ろから話しかけられた。

 

「あっ、どうも、ジェヴォーダンです、よろしくお願いします、小鳥遊ホシノさん」

「あっ、どうも………じゃなくて!!なにその………なに!?」

「ショゴス」

「しょご………?」

「ショゴス。水陸両生の不定形生物、私の………まぁ、家族のようなものだ。自在に変形し、器官を創造し、銃火器と火炎、雷に耐性を持つ。普段は私の皮膚下に潜ませて防御に用いているが、このように排出して戦わせることも出来る」

「名前はジェヴォーダンです」

「な、なるほど………」

「………ガル、アンタ、そんなもの飼ってたの?」

「そんなものとは失敬な!!ボク、これでもアナタの数百倍は生きてますからね!」

「すうひゃくばい」

「たかだか百年も生きてない小娘にあれこれ言われたくなむぐっ」

 

 余計な事を言いかけたジェヴォーダンの口を塞いで、

 

「ところでホシノ先輩、そこの便利屋と傭兵どもはどうするつもりだ?一応、全員生かして捕えてあるが………」

「あ~………どうしようか?」

「特にないなら、こっちで使っても構わないか?」

”ちょっ、使うって………”

「採血だ」

「………へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「…………」」」」」

「ふんふふんふ~♪」

 

 

 なんだかゲッソリした顔で帰っていく一団を見送りつつ、淡紅色を帯びた液体を充填した小瓶を眺める。

 その総数、なんと58本。

 一人一本程度しか採っていないが、それでもこれだけあれば十分だろう。

 

「あの、ガルちゃん?それ、何に使うの?」

「ウマルの根と同時に服用することで致命傷程度なら容易く治す秘薬になるし、その他使い道はいくらでもある。キヴォトスに来てから新鮮な人血の入手に難儀していたが、ちょうど良かった」

 

 もっとも、瓶詰めして魔術で封をしたところで3か月も持たないだろうが………まぁ問題ないか。

 腐ってもジェヴォーダンの餌にすればいいし。

 

「餌って………いや、でも、あれ………」

「なんだ、セリカ。しっかり駄賃も渡してやったのだ、何も問題はなかろう」

「えぇそうね、触手でぐるぐる巻きにされて必死になって抵抗している人の腕から無理やり血を採ってなかったら完璧だったわ」

「皆さん、助けてくれって感じの眼をしてましたね」

「大袈裟な事だ、血を幾らか抜かれたところで死ぬわけでもあるまいし」*2

「それは………そうかもしれないけどさ」

「あぁ、そうだ。せっかくだし、このアビドス校舎の補修でもやっておこうか?これだけ血液のストックがあれば、ある程度補強する程度の事は出来よう」

「ガルさん、修理も出来るんですか?」

「修理………というよりは、建物の外壁をツタで覆ってプロテクターにするイメージだな。私の祀る神はアトゥ、遥か星海の果てより飛来した大樹の神格だ。その程度の事は容易い」

「なるほど………それじゃ、お願いしてもいいかな?」

「任された」

 

 外套に小瓶を仕舞い込んで、立ち上がり、

 

 ぐうぅ~………

 

”………紫関行く?”

「………すまん、先生」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピロリン。

 

 深夜、アビドス高校、空き教室。

 聞きなれない電子音が響いた。

 ポケットに突っ込んでいたスマホを取り出し、

 

「マスター?どうかされましたか?」

「………どうやら、ようやく状況(シナリオ)が動いたようだ」

 

 寝床から身を起こし、外套を着込む。

 念のため、腰に短刀を佩き、

 

「いくぞ、ジェヴォーダン。面白いものが見れるやもしれん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、お待ちしていました。【魔法使い】さん?」 

「………ずいぶんと、辺鄙な場所に呼び出してくれたものだな」

 

 メッセージに添付されていた待ち合わせ場所………アビドス高校から幾らか離れた、砂に埋もれた廃墟の一室のデスクに、全身を黒いスーツで包んだ怪人が腰かけていた。

 真っ黒い霧の塊のような頭に、白く罅割れた隻眼と三日月のように裂けた口。

 部屋の中央に置かれたパイプ椅子に、腰を下ろし、

 

「まずは、自己紹介をさせていただきます。私たちの事は『ゲマトリア』。私の事は………そうですね、黒服とでもお呼びください」

「ゲマトリア、ねぇ。………お前、人間か?」

「一応、と答えさせていただきましょう。私たちはこのキヴォトスの外の、あなた達とはまた別の領域から来た存在です。私たちの目的は」

「この世界………いや、『生徒達』の探究、だろう?」

「………えぇ、その通りです。良く分かりましたね?」

「私自身、初めて見た時は、目を疑ったさ」

 

 持参した蜂蜜酒で、唇を湿らせ、

 

 

「『自覚なき神々の化身』。キヴォトスはその揺籃といったところか。………誰が、どんな目的で作ったのかは知らんがな」

 

 世界の外に座す偉大なる神々や、かつて星を統べた支配者たちではなく、人の集合意識によって存在する神格の、自覚無き化身達。

 あのニャルラトホテプが守護する『レンの高原』のカダスに座す神々と、似て非なる存在。

 

「なるほど………どこかで、似たようなモノを見た事がおありで?もしよろしければお話を」

「やめておけ。人らしく、まともに死にたいのならな」

「………わかりました、そうしておきます」

 

 馬鹿な事を言いかけた黒服に釘を刺し、

 

「それで、お前、何で私をここに呼んだ?まさか理由も無く呼んだわけではないだろう?」

「あぁ、そうでした。()()について、いくつか伺いたく」

 

 

 そういった黒服が、横に置いてあったスーツケースから、なにか赤い布に包まれた手帳のようなものを取り出した。

 慎重な手つきで机の上にそれを置いた黒服が、ゆっくりと布を取り払い、

 

 

 

「………まったく、面倒なものを」

「ふむ。この書物についてご存じでしたか」

「おい、これをどこで入手した?」

「それについては、残念ながら何も。ただ………」

「ただ?」

我々(ゲマトリア)の一員、とだけ」

「………そうか」

「Celaeno Fragments………セラエノ断章。その()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()です」

 

 カビて変色したボロボロの紙の束を、そっと、割れ物でも扱うような手で、赤い布で包んだ黒服が、スーツケースにソレをしまいなおした。

 

「我々の手でもある程度、解読は進めているのですが………情報の欠落は如何ともしがたく、貴女の助力を伺いにまいった、というわけです。どうでしょうか、報酬は」

「断る。………私には私の目的とやり方がある。お前らはお前らの好きにしろ」

「そうですか………アビドスへの支援を対価にする、と言っても?」

「くどい。私はもう帰るぞ。夜中に呼び出されたせいで眠くて仕方がない」

 

 パイプ椅子から立ち上がり、そのまま回れ右して。

 

 

「もし、」

 

 

「もしもお気が変わりましたら、どうかご連絡を」

 

 

「我々はゲマトリア。神秘の、キヴォトスの探究者です」

 

 

「………ご連絡、心待ちにしています」

 

 

*1
ヤクザも魔術師も人類の敵という意味では同じ穴のラクーンなのだ

*2
クトゥルフTRPG的には1点分くらい






ちなみに、キヴォトスを『自覚なき神々の揺籃』としたのは、クトゥルフ的に解釈した場合、一番近そうなのがカダスだと思ったからです。
アウターゴッズやらオールドワンじゃない、人間の集合意識による神々の自覚なき化身が集う土地として見た場合、ちょうどよさそうだったので。

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