その力は何の為に   作:カニ漁船

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あれからどうなった的なウマチューブ。


ウマチューブの進捗状況

「やりましたトレーナーさん!チャンネル登録者が50万人超えましたよ!」

「……凄いね、普通に」

「これだけの人が登録してくれるなんて!10万人どころか100万人も視野ですよ、これは!苫小牧のアピールチャンスです!」

 

 月刊トゥインクルの取材から3日ほど経って。虎太郎からもらったメンタルカウンセリングの本を読みこんでいる時、タルマエが慌ただしく入ってくる。一瞬何事かと思ったけど、とんでもないことを報告された。どうも、タルマエのチャンネルが登録者50万人を突破したらしい……いや、普通に凄くない?

 

「デビュー前が1000人行くか行かないか。ミーティアの動画を撮りだし始めて1万人超えて、メイクデビューから徐々に数を増やした……って感じかな?」

「はい!チームの動画を出してからじわじわと伸びていたんですけど、メイクデビューからさらに伸び始めて!この前のプラタナス賞で50万人を超えました!」

 

 銀の盾も貰ったんですよ~、と言いながら持ってきた銀の盾を僕に見せてくる。そして、どこに飾ろうかと検討し始めるタルマエ。いや、それここに置いていいの?

 

「寮の部屋に置くよりも、こっちに置こうかな~と。ダメ、でしたか?」

「タルマエが良いって言うんなら僕は文句ないけど……うわ、実物は初めて見たな」

「私もです!チャンネル登録者も増えて、これで苫小牧の情報発信がさらに捗ります!」

 

 とても楽しそうにしている。ずっと笑顔だし、幸せそうならいいのかな?

 

 

 

 

 

 

 タルマエのチャンネルでは色んな動画が投稿されている。タルマエ自作の苫小牧のイメージソングだったり、歌ってみた動画だったり。有名な観光地を取り上げた、苫小牧の解説動画が上がってたりしている。配信も盛んにしているみたいで、同接も結構多い方だ。

 その中で一番人気があるのは──ミーティアに関連する動画である。それでいいのか?って思わずにはいられない。

 

「タルマエ的にはOKなの?ミーティアの動画が一番人気だけど」

「あ~……良くはないです。全然良くはないんですけど!苫小牧観光地の解説動画を一番見て欲しいですけど!」

 

 心底悔しそうにしている。気持ちは分からないでもないけれど、タルマエは握り拳を作って立ち上がった。

 

「随所に苫小牧をアピールすることでサブリミナル効果を狙っているんです!ただじゃ倒れませんよ!」

「……まぁ、タルマエが良いならそれで良いよ」

「でもCMとしても好評なんですよ。コメントでも結構評判良いんです」

 

 実際に確認してみると、確かに苫小牧のCMに関して好意的な反応を示すものが多い。評判が良いならそれに越したことはない、ホッと安心だね。

 

 

 さて、そのミーティアの動画なんだけど。基本的にはメンバーとトレーニングをしている光景を切り抜いたものだ。どれもこれも、撮った覚えがある。

 

「タキオンの動画もあるんだね。あまりイメージ湧かないけど」

「タキオンさんは結構協力的ですよ。それに人気も高いんです。知識も豊富でタメになる話も多いですから。後、高確率で背後に映るトレーナーさんも人気です」

「大体光ってるけどね」

 

 僕が注目されている理由は絶対物珍しいからだろう。どういう原理で人体が発光しているのが不思議で仕方がない、ってコメントで溢れているし。

 それにしても、本当に色んな動画があるな。企画系もあるし。

 

「【水上を走るウマ娘爆誕!?無敗の四冠ウマ娘サクラバクシンオーの水上バクシン理論実践編!】……とても見覚えがあるね、これ」

「あ、それが一番再生数多い動画ですね」

 

 これだけ再生数が飛び抜けてる。サムネはウマチューブでよく見るようなもので、バクシンオーが水上を走っている画像がチョイスされている。これ、コラじゃないんだよなぁ。

 ちなみにコメントを一部抜粋してみると。

 

・これコラだろ?コラだといってくれ

・なんだよ水上バクシン理論って。なんでウマ娘が海の上を走ってんだよ

・↑いいだろお前バクシンだぜ?

・とても精巧なコラ画像ですね。加工技術に感服しました。え?コラじゃない?

・私も走れます

 

 コラを疑ってる声が多数、なお動画を見てコラじゃないことを悟って呆然としているコメントで溢れかえっていた。そりゃ信じられないだろうね。

 

「まさか本当に走れるとは思わなかったなぁ」

「私はいまだになんで走れてるのか疑問です」

 

 僕に聞かれても分からないかな。多分バクシンだよバクシン。

 

 

 と、まぁタルマエのチャンネルは順調そのものだ。軌道に乗っているし、これから先もどんどん増える見込みだろう。そうなると増えてくるのは、やっぱり他のウマチューバーとのコラボだろう。懸念すべき点でもある。相手によってはタルマエにとっても良くない影響が及ぶだろうし、しっかりと精査をしないといけない。

 

「コラボのお誘いとかも来てるんですよ!」

「そうなんだ……コラボする前にまずは相談してね。相手の情報とか調べないといけないから」

「それは勿論です。トレーナーさんに判断してもらわないといけないことなので」

 

 分かってるみたいで良かった。それにしても、何か事務所みたいなことになってきたな。

 

「それに、まずはレースを頑張らないといけませんから!ウマチューブの活動もそうですけど、優先すべきはレース!全日本ジュニア優駿もありますからね!」

 

 うん、タルマエの言う通り、ウマチューブの活動にかまけて本業であるレースが疎かになるのはダメだ。あくまでメインはトゥインクル・シリーズ、それを忘れてはいけない。ちゃんと分かっているなら、僕から言うことはないだろう。

 

「これからもトレーニングに支障がない範囲で頑張ってね。無理しすぎて、僕みたいになったらダメだよ」

「説得力が段違いですね。トレーナーさんが言うと」

「……睡眠時間3時間は伊達じゃないよ。もうやってないけど」

 

 最近になってようやくたづなさんからお許しが出たのか、ロイヤルビタージュースを卸してもらえるようになった。大変ありがたい限りである。

 さて、そろそろみんなが来る時間だ。準備をしよう……って考えていた時に。

 

「あ、そうだ!実はトレーナーさんのお耳に入れておきたいことがあって」

 

 タルマエが思い出したかのように何かを取り出す。1枚の紙みたいだけど……えっと、これは?

 

「実は、コラボを希望している方の中に熱意が凄い人がいるんです。タキオンさんの動画とか、一通り拝見しているみたいで」

「……」

 

 タルマエから渡された紙に書いてあったのは、彼女とのコラボを希望するウマチューバーの手紙みたいなものだ。メールで送られてきたであろうものをコピーしたんだろう。ただ、どうも一人じゃないっぽいな……名前の欄に2つ名前があるし。

 

「正直、コラボするのも悪くないな~って思ってるんですけど……その、()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 うん、成程。これは確かに、悪くない。僕の考えていること、前世の記憶が確かならば──これは受けた方がいいのかもしれない。

 

(間違いなく、僕達にとってプラスになる。となれば)

「ど、どうでしょうか?トレーナーさん」

 

 不安げな表情で僕の顔色を窺うタルマエ。おっと、早いところ反応しないと。

 

「いいよ。というよりは、是非ともお願いしたい。早めに返信をお願いしても良いかな?」

「ッ!ほ、本当ですか!?ありがとうございます!早速お相手の方に返事を書きますね!」

 

 スマホを取り出して相手への返事を書こうとしているタルマエ。それにしても……これは嬉しい誤算だ。手紙の端々から誠実さが見てとれる文章だったし、悪いことにはならないだろう。

 

(さて、僕の方でも準備を進めておかないとね)

 

 まずは来賓用のお茶とお茶菓子がなくなってきてるからそれを買い足さないと。

 きっと実りのあるコラボになるだろう、そんな思いを抱きながら今後の予定を立てた。

 

 

 

 

 

 

 とある部屋の一室で、1人のウマ娘が寝息を立てていた。良い夢を見ているのか、時折嬉しそうな声を漏らしながら幸せそうに寝ている。

 そんな彼女の眠りを妨げるように、スマホのアラームが鳴った。瞬間、先程まで寝ていたのが嘘のようにウマ娘はベッドから飛びあがる。1つ伸びをして、身体を整えていた。

 

「う~……ん!気持ちの良い朝ですね!さぁ、今日も頑張りましょう!」

 

 スマホのアラームを止め、身支度を整える。その最中、連絡が来ていないだろうか?とソワソワしながらスマホを操作する彼女。メールアプリに入っている新規の通知を見て、彼女は食い入るようにスマホへと齧りついた。

 メールアプリをタップし、通知を受け取る。新規のメールを開いていき──一つのメールでその手が止まった。メールの題名は、【コラボのお誘いの件について】と打たれている。

 

「ッ!き、来ました来ました!お、落ち着け私~……気になる中身の程はッ!」

 

 じっくりと、一文字の見逃しもないようにメールを確認するウマ娘。次第に肩を振るわせていき……やがてスマホを放り投げそうな勢いで両手を上げ、歓喜の咆哮を上げた。

 

「や、やりましたッ!OKの連絡が来ましたッ!やったやった~!」

 

 小躍りしそうなほどに、実際にステップを踏みながら喜ぶウマ娘。数分の間喜びまわり、ハッと我に返ったのかスマホへと視線を戻した。

 

「そ、そうだ!まずはお礼の返信をしないとですねッ!え~っと、この度は……」

 

 その日、彼女は一日中ウキウキ気分で過ごしていた。学友からも指摘され、周りの人もつられて笑顔になるほどに上機嫌であり、微笑ましい空間を形成する。

 そんな彼女はウマチューバー。これほど喜んでいる理由は──気になっていた相手とのコラボができるから、である。

 

「きっと喜んでくれるはずッ!いえ、すでに喜んでいましたッ!よ~し、気合が入りますよ~ッ!」

 

 拳を天高く上げて決意を固める彼女。名前は──

 

ワクワクアスリート系ウマチューバー、ソノンエルフィーッ!コラボでも頑張りますよッ!」

 

 ソノンエルフィー。現役の女子大生ウマ娘であり、ウマチューブでも人気のワクワクアスリート系ウマチューバーである。




ソノンエルフィー好き。都留岐さんとずっと仲良くしてて欲しい。

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