タルマエがコラボ相手に返事を送ってから数日。打ち合わせの日がやってきた。お茶の用意もしてあるし、お茶菓子も補充してある。お茶菓子……よいとまけをね。
「き、緊張しますね……!私にとっての初コラボ!」
「気持ちは分かるよ」
初対面の相手だから緊張しないわけがない。タルマエは気持ちを落ち着かせようと深呼吸をしていた。
さて、今回タルマエがコラボする相手なんだけど……ワクワクアスリート系ウマチューバー、ソノンエルフィーさんだ。ウマ娘の身体能力を活用して、色々なチャレンジ企画をやっているウマチューバー。いつも楽しそうに運動している姿に加えて、ほぼ全てのスポーツで高いパフォーマンスを発揮するほどの身体能力を有している彼女。ウマチューバーの中でもかなりの人気を誇っている。
そんな彼女ともう1人、別の人もこのコラボに参加する。名前は都留岐涼花(つるぎ りょうか)さん。
(確か、ソノンエルフィーとは知り合いで、かなり仲が良かったはず。もう結構曖昧だけど)
果たして彼女達の目的は何か?少し気になるところではあるね。
しばらく待っていると、約束の時間5分前に部屋のドアがノックされる。
「どうぞ」
失礼します、の声と一緒に入ってきたのはソノンエルフィーさん達だ。立ち上がって挨拶をする。
「今日はよろしくお願いします。ソノンエルフィーさん、都留岐涼花さん」
「よ、よろしくお願いします!」
向こうも丁寧にお辞儀をして、都留岐さんはにこやかな笑みを、ソノンエルフィーさんは元気いっぱいの笑顔を浮かべていた。
「初めまして。よろしくお願いします。高村聖トレーナー、ホッコータルマエさん」
「よろしくお願いします!ソノンエルフィーですッ!」
どことなく緊迫した空気の中、コラボの話し合いが始まる。
「涼花さん!このお菓子とても美味しいですッ!」
「え、エルフィー?一応コラボの話し合いだから、その、ね?」
「お構いなく。こちらの緊張もほぐれますので」
と、思いきや。用意したお茶菓子に手を付けて美味しそうに頬張っているソノンエルフィーさんの姿で緊張は一気になくなる。タルマエも心なしか楽になったみたいだ。
「気に入ってもらえましたか?こちら、苫小牧の銘菓でよいとまけっていうんです!是非、都留岐さんも召し上がってください!」
タルマエとしても苫小牧の銘菓で喜んでもらえて万々歳だろう。よいとまけに合うお茶を厳選した甲斐があったというものだ。
「気に入っていただけたのならば、後で同じものをお渡ししますね」
「いいんですかッ!?ありがとうございますッ!」
「エルフィー……」
呆れつつもどこか微笑ましそうに見ている都留岐さん。こちらとしても喜んでもらえてなによりだ。
さて、お茶菓子はこのあたりにして。早速本題に入ろう。
「今回はホッコータルマエにコラボのお誘いをしていただき、ありがとうございます」
「私の方もありがとうございますッ!コラボのお話を受けてくださってッ!嬉しいですッ!」
コラボをするんだけど、どんな動画を撮るのだろうか?その辺は決めていない。タルマエは決めているみたいだけど、まずはソノンエルフィーさんの企画を聞いてからだそうだ。
「それで、どのような動画を撮るのでしょうか?ソノンエルフィーさんの要望を聞いておきたいのですが」
都留岐さんがいるのがちょっと気になるけど、それは隅に置いておく。向こうの反応はというと……よくぞ聞いてくれました!とばかりに目を輝かせていた。そんなにやりたい動画があるのだろうか?
「よくぞ聞いてくれましたッ!実は、絶対に、ぜぇ~っっったいに!撮りたい動画があるんですッ!」
凄い熱意だな。一体どんな動画なのだろう?そして、何故都留岐さんは困ったような表情を浮かべているのだろうか?ついでにさっきから僕の頭の中で警鐘が鳴っているのはどうしてだろうか?
「撮りたいものがあるようですし、内容をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「はいッ!それはですね……」
◇
……あぁ、うん。頭の中で警鐘が鳴っていた理由はこれかぁ。
「うおおおぉぉぉッ!目指せ水上バクシンりろガボボボ……」
「え、エルフィィィィィ!?」
「まぁ初回はそうなるだろうねぇ」
現在学園のプール施設。ソノンエルフィーさんの撮りたい動画のためにここにきている。まぁここにいる時点で大体察しはつくだろう……彼女がどうしても撮りたいもの。
「ハーッハッハッハッハ!全ての道はバクシンに通ずッ!バクシンを信じれば、ソノンエルフィーさんもいずれは走れるようになりますともッ!」
「なにを言っていますの?彼女は」
「バクシンじゃない?」
「思考を放棄しないでくださる?」
タルマエのチャンネルの動画で一番の再生数を誇っている例の動画、バクシンオーによる水上走りである。確かにチャレンジ企画としてはこの上ないものだろうけども。ちなみに他のメンバーも合流した。ミーティアのみんなで撮りたいらしい。
絶賛沈んでいったソノンエルフィーさんだが、すぐさま浮き上がってきた。そして、目には炎を宿している。
「これくらいでへこたれる私ではありませんッ!さぁ、次なるチャレンジですッ!」
「おぉっ!素晴らしい心意気ですねッ!あなたからとても花丸なバクシン魂を感じますよッ!さぁソノンエルフィーさん!私と共に頑張りましょうッ!」
「はい、バクシンオーさん!いざ!」
「「バクシンバクシーーーンッッ!」」
……なんとなく気が合うだろうな、とは思っていたけど、ここまで合うとは思わなかったな。余談だけど、タルマエも一緒にチャレンジをしている。
「さ、さすがに無理ですって!あれはバクシンオーさんがおかしいだけですって!」
「いいえ、そんなことはありませんタルマエさんッ!あなたの心にある委員長の魂、バクシン魂さえあればどんな困難でも乗り越えることができますッ!」
「何事もチャレンジすることが大事ですッ!頑張りましょうタルマエさんッ!」
……ご愁傷様。
どんどんチャレンジを重ねていくソノンエルフィーさん。まぁ流石に無理じゃないかな?なんて気持ちで動画を撮る。カメラを回すのは僕と都留岐さんの役割だ。
挑んでは沈んでいくソノンエルフィーさん。でも、当の本人はとても楽しそうだ。
「まだまだ行きますよ~ッ!」
絶対にやれると信じている、目に灯った炎は決して消えない、笑顔を絶やさず挑み続け、何度でもチャレンジする姿。あぁ、うん。彼女が人気なのも頷けるな。
「凄いですよね、エルフィー。とても楽しそうにしています」
「えぇ、そうですね」
都留岐さんも気づけば微笑ましそうな表情でカメラを回していた。ただ、その表情が途端に険しいものになる。
「……高村トレーナー。実は、折り入って相談したいことがあるんです」
真面目な顔でこちらを見る都留岐さん。相談したいこと、か。
「どういった内容でしょうか?コラボ動画以外に、なにか?」
「……そうですね。これはコラボの話と関りがあるものなのですが」
となると、カメラを回し続けるのはちょっと厳しいものがあるだろう。大事な話みたいだし。
「ゴメン、キタサン、ドゥラ。ちょっとカメラをお願いしても良いかな?」
「良いですよ!このお助け大将にお任せください!」
「任された。良い画が撮れるように尽くそう」
2人にカメラを任せて、都留岐さんと話をする。みんなには聞こえないように。
「それで、ご相談というのは?」
彼女の相談がどういったものか?それ次第では受ける気だ。コラボと関わりのある話みたいだし。
「我々は、現在
「……タルマエではなく、私のチーム全員、ですか」
こくりと頷く都留岐さん。1つ深呼吸をして、そのプロジェクトの名前を出した。
「U.A.F.──ウマ娘アスレチックフェスティバル。アスリートウマ娘たちによる新しい形のスポーツエンターテイメント、そのプロジェクトにどうか協力して欲しいんです」
U.A.F.……それが新しいプロジェクトの名前、か。
「一体、どういうものなのでしょうか?新しい形のスポーツエンターテイメントとのことですが」
「はい。U.A.F.とは……」
都留岐さんからU.A.F.について詳細な説明を受ける。
アスリートウマ娘達が一風変わった15種の競技に挑み、競い合う新しい形でのスポーツの祭典。15種の競技で獲得した総合得点で順位をつけ、No.1のアスリートウマ娘を決める戦い。誰もが参加できて、みんなが見て熱くなれるスポーツエンターテイメント……それがウマ娘アスレチックフェスティバル。
「近い将来、トレセン学園にも通達が来るはずです。参加可能の範囲には勿論、学園の生徒も含まれていますので」
「成程……かなり大掛かりなプロジェクトみたいですね」
「勿論です。このプロジェクトは、どうしても成功させたいですから」
どこか遠い目をする都留岐さん。その目からは固い決意のようなものが感じられた。
それにしても、新しい形の祭典か。それで僕のチームが関わってくるとなれば。
「ソノンエルフィーさんと同じように、広告塔のようなものですか?」
「……身もふたもないことを仰ってしまえば、そうなります。チーム・ミーティアはトゥインクル・シリーズで最も勢いのあるチームですから」
やはりというか、U.A.F.の広告塔になって欲しい、というものだった。
都留岐さんの言う通り、現在僕のチームはかなりの人気を博している。四冠ウマ娘のバクシンオーに始まり、日本で初めて凱旋門賞を制したタキオンが所属するチーム。新しくデビューしたタルマエとジェンティルも実力をいかんなく発揮してるし、注目されない方がおかしいでしょ、ってレベルだ。自分で言うのもなんだけどね。
しかも、タルマエがウマチューバーとして活動をしている上にトレセン学園生。影響力もあるだろう。広告塔としてはもってこいかもしれない。
ちょっと考えてみるけど、中々悪くない提案だと思う。全く新しい形でのスポーツの祭典、つまりは新しいトレーニング法が学べるかもしれない、というわけで。
(ジェンティル達のパワーアップに繋がるんじゃないだろうか?)
そう考えると、この提案を受けるのはアリだ。というか、こちらからお願いしたいレベルで受けたい。広告塔?新しいトレーニング法で全然おつりがくるレベルだ。むしろそれだけの評価をしてくれて嬉しい限りである。
「どうかお願いします!U.A.F.に協力してくれないでしょうか!?」
「良いですよ」
「……噂には聞いていましたけれど、本当に躊躇がないんですね」
目を丸くしている都留岐さんだけど、当然だ。こちらにもメリットがあるのだから。
「新しい形でのスポーツの祭典……そこから新しいトレーニング法が見つけられるかもしれないので。こちらとしても是非受けたい企画です」
「そういうことですか。勿論、こちらとしてもタダで協力してもらうつもりはありません。私とエルフィーも惜しみなく協力するつもりです」
都留岐さんと握手を交わして、契約成立の合図となる。きっと力になってくれるだろう。これからが楽しみだ。
余談だけど、水上バクシン理論の動画の方は。
「や、やりましたッ!!!チャレンジ成功ですッ!5mですが進めましたよッ!」
「これが水上バクシン理論の力ですッ!頑張りましたねエルフィーさんッ!」
「……トレーナーさん、わたしも」
「止めとけミラ子。絶対ろくな目にあわないから」
なんで5mも進めてるの?どういうことなの?
これが水上バクシン理論の力()
アンケートですが、掲示板形式の回を書きます。
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