その力は何の為に   作:カニ漁船

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ジェンティルドンナ達のトレーニングですわ。


2人のトレーニング

 メイクデビューに向けて頑張るジェンティルとタルマエの2人。今日もトレーニングに励んでいた。今日のトレーニング場は昨日の夜から降っていた雨の影響か、重バ場になっていた。

 1人ずつメニューを指示して、次はジェンティルの番。

 

「ひとまず、ジェンティルはパワーの使い方だね」

「分かっていますわ。ただ振り回すだけの力は無意味。正しく振るってこそ、でしょう?」

「そういうこと。毎回フルパワーで走るんじゃなくて、バ場に合った走り方を覚えていこうか」

 

 ジェンティルのパワーはウマ娘の中でも随一だ。学園一のパワーと言っても差し支えないだろう。けど、力の使い方をしっかりと把握しておかないと、100%の力は発揮できない。なので覚えるべきは力の使い方だ。

 

「まだデビューしてない今だからこそ、しっかりと矯正しないとね」

「おかげさまで、私の新しいフォームは完成しつつあります。後は馴染ませるだけですわ」

 

 ウォーミングアップを終えた彼女はすぐさま走り出す。うん、言葉通りだね。しっかりと矯正してある。

 

(重バ場での走り方も覚えたみたいだ。順調そのものだね)

 

 前はクレーターができるぐらい強く踏み込んでいたけど、今はそんなことはない。しっかりと走れている証拠だ……それにしても、本当に踏み込みだけでクレーターができるなんてね。まさか事実だとは思わなかったよ。

 

 

 次はタルマエの番。

 

「タルマエは、今日のところは基礎トレーニングだね。巨大タイヤ引きをしようか」

「分かりました!」

「週末にはコパノリッキー達との併走を控えているから、平日は基礎トレを中心に頑張ろう」

 

 生憎と僕のチームにはタルマエ以外にダートを走れる子がいない。なので、他のトレーナーさん達にお願いしてタルマエの併走相手を確保していた……後はみんなの適性上げも兼ねて。

 併走相手に関しては、コパノリッキーがよく付き合ってくれる。タルマエとも仲が良く、キタサンとも仲が良いから大体二つ返事で了承してくれるのだ。勿論、別の形でちゃんとお礼をしている。

 タルマエも巨大なタイヤを引いている……このタイヤ、特注らしいけどどこで用意しているんだろうね?タイヤの上ではバクシンオーとキタサンがメガホン片手に応援していた。

 

「フギギギギ……ッ!」

「ファイトですよータルマエさーんッ!学級委員長が花丸な応援を送りましょう~ッ!」

「頑張ってくださいタルマエさ~ん!わっしょいわっしょ~い!」

 

 ドゥラとタキオンはジェンティルのサポートについている。怪我をしないようにしっかりと見張りつつ、この後の予定を確認しておこう。

 

 

 休憩時間に入った途端、タキオンが2人に対して怪しげなドリンクを提供していた。

 

「さぁさぁ!今日もいつものように飲んでもらおうじゃあないか!」

 

 傍から見るとヤバいものを飲ませようとしている光景に見えなくもない。ただ、実際のところは違う。

 

「いかにもなドリンクを飲ませようとしている風を装うのはお止めなさい。ただのプロテインでしょう」

「本当ですよね……あの、なにも入ってませんよね?本当に何も入ってませんよね!?」

「疑い深いねぇ。そんなものはトレーナー君にしか飲ませないよ」

 

 中身はタキオンが作成した特製プロテインドリンクだ。疲労回復の効果が加えてある。別に変なものは入ってないし、飲んだからといって身体が光るわけでもない、ただのプロテインである。

 タキオンからドリンクを受け取り、一気に飲み干す2人を尻目に、トレーニングの経過について。

 

(ジェンティルもタルマエも順調そのものだ。特に、ジェンティルの方は負荷を強めているのに軽々とこなしている……)

「本当にとんでもない逸材だ」

 

 デビュー前にもかかわらず、ジェンティルの方はヤバいくらいの量を普通にやっている。走り込みの数に重りの量、器具に関しても並のウマ娘よりよっぽど多い。器具に関しては時々彼女の力に耐えきれず、壊れたりするけど。

 

(本人に悪気はない。ジェンティルのパワーに耐えきれなかっただけ、ってのは分かるんだけどね)

 

 ほぼ毎日のように器具はチェックしている。ジェンティルのパワーに耐えきれるかどうか、もし壊れても即座に対応できるように予備を用意しておき、トレーニングに支障がないように気を配らないとね。

 タルマエも、僕の予想を超えるぐらいに仕上がってきている。メイクデビューに向けて視界は良好だ。

 

(普通ならジェンティルにばかり目が向くけど、タルマエの方も凄い。僕が提示したメニューも軽々とこなせるようになったし)

 

 さすがにジェンティルより負荷は少ないけれど、タルマエもデビュー前の子達に比べたら負荷は強い方だ。十段階評価で他の子達を5と仮定したら、タルマエの負荷は8ぐらいある。ジェンティル?12くらいは余裕であるよ。

 

(特に、同時デビューを考えているジェンティルの存在も大きい。彼女に負けじと頑張っている)

 

 対抗心というヤツだろう。同じチームだからこそ負けられない、なんて思いがあるのかもしれない。ジェンティルもタルマエの雰囲気を感じ取っているのか、楽しそうに笑っていた。

 ただ、いかんせん僕のチームにダートを走れるウマ娘がいないのがちょっとネックだ。コパノリッキーがよく付き合ってくれるとはいえ、いつも併走してくれるわけではない。なので、ダートで有名なウマ娘のトレーナーさんに片っ端からお願いしている。どうかタルマエと一緒にトレーニングしてくれませんか?と。結果、3人はほぼ確約してくれた。

 

(スマートファルコンのトレーナーさんにワンダーアキュートのトレーナーさん。それにエスポワールシチーのトレーナーさんともトレーニングの予約が取れた。たくさん学ばせてもらわないと)

 

 感謝しなければならない。優しいトレーナーさん達に。

 

 

 横目で時計を確認。おっと、もう終わりか。

 

「それじゃあ、休憩は終わり。トレーニングを再開しようか、みんな」

「「「はい!」」」

 

 掛け声1つで元気よくトレーニングへと向かうチームのみんな。今日も元気にトレーニングを積んでいる。

 

 

 

 

 

 

 休みの日は午後の時間を目一杯使って併走をしている。今日も午前のトレーニングを終えた2人が、併走をしようとしていた。

 

「さて、今日こそは先着させてもらいますわよ」

「いつやっても豪華な併走だなぁ……」

 

 闘志を滾らせるジェンティルとしみじみとしているタルマエ。そんな2人の併走相手はというと。

 

「タルマエさんッ!今日はこの学級委員長と併走をしましょうッ!ダートも走れるようになってきた委員長はまさに鬼に金棒ッ!学級委員長に花丸笑顔ですッ!」

「さぁて、頑張って私に追いつきたまえよ?もっとも、そう易々とは追いつかせる気はないが」

 

 片や無敗のクラシック四冠。皐月・NHKマイル・日本ダービー・菊花賞を制し、幅広い距離適性で結果を残した学級委員長、サクラバクシンオー。

 片や無敗で凱旋門賞を制した中距離最強と呼ばれる超光速のプリンセス、ワールド・ベスト・レースウマ娘・ランキング*1でレーティング140を獲得したアグネスタキオン。この2人と併走をしてもらう。

 2人と併走することは、多くのことを学べる良い機会だ。アプリでいうところのスキルを2人に叩き込むことができる。

 

(2人とも物覚えは良い方だ。スポンジみたいに吸収していく)

 

 バクシンオーとタキオンが持つ技術をしっかりと受け継いでもらおう。

 

 

 早速始まる併走。まずは──ジェンティルとタキオンの2人だ。タキオンが先行する形で外につけ、ジェンティルは内で後ろを走っている。

 

「ほらほらぁ、遠慮する必要はないよ?頑張りたまえ!」

「っ、くっ!」

 

 ジェンティルはなんとか食らいつきながらも、タキオンの走りをしっかりと観察しているね。余さず、見逃さず。この併走の意義をしっかりと感じ取り、己の力として取り込むために目の前を走るタキオンを見ている。心なしか、タキオンも楽しそうに走っていた。

 次はダートでタルマエとバクシンオー。バクシンオーのダート適性はまだCなんだけど。

 

「バクシンバクシンバクシンシーーーンッッ!この学級委員長の後ろをしっかりとついてきてくださいねッ!」

「あ、相変わらず、速いッ!」

 

 ステータスの暴力で先行する。タルマエはついていくのがやっとといった状態だ。それでも、ジェンティルと同じようにバクシンオーの走りから学びを得ている。自分の走りにどう落とし込むか?どうすれば自分のモノにできるかを掴もうとしていた。

 バクシンオー達も併走しながら指導をしている。

 

「……ッ!このタイミングです!このタイミングですよタルマエさんッ!ここで1つ息を入れましょうッ!グッと楽になりますッ!」

「直線で加速することも重要だが、コーナーでも加速することはできる。最内の経済コースを走りながら加速する方法は……こうだよジェンティル君っ!」

「理想的なフォーム、理想的なレース運びッ!この学級委員長を模範として、しっかりと頑張ってくださいねッ!」

「どうだい、走り辛いだろう?ただ走るだけでもこれだけプレッシャーをかけることができる。覚えておきたまえ」

 

 何度も反復し、モノにするまで繰り返す。その表情に辛さはなく、むしろ楽しそうにしていた。

 

(こればっかりは2人が教えた方が良いからね。僕が教えられるのは理論的な部分だけ、実戦で叩き込むことができないから)

 

 ノートに書き出しながら併走を見守る。しっかりとドリンクとタオルも用意して。

 

 

 何本か併走が終わると、一日のトレーニングも終わりだ。片づけて撤収の時間になる。

 

「さて、今回の併走も勿論録画してある。後でデータを渡しておこう」

「……感謝いたしますわ」

「そう拗ねなくてもいいだろう?一度も先着できなかったとはいえ」

「余計なお世話ですっ」

 

 可愛らしく頬を膨らませているジェンティル。この時点で2人に先着できたら凄いというかヤバいんだけどね。でも、彼女としては許せることじゃないんだろう。

 

「ですが、覚えておいてくださいませ。いつか必ず、跪かせて差し上げましょう。えぇ、必ず」

 

 対抗心。自信に満ちた表情で、いつかタキオン達を下してみせると宣言するジェンティル。彼女の言葉に、タキオンとバクシンオーは笑った。

 

「それはそれはッ!とても楽しみですねッ!()()()()()()()!」

「い~い表情だ!さっきも言ったが、易々と追いつかせる気はない。精々頑張りたまえ」

 

 一方タルマエの方は。

 

「今回の併走でバクシンオーさん達に習ったこと、ちゃんと書き出しておかないと……!」

 

 自前のメモ帳を広げて、今回の練習で教えてもらったことを書いていた。こちらも順調みたいでなによりだね。

 

 

 平日は基礎トレを中心に、休日は併走を主にやっている。ジェンティルとタルマエ、どちらもメイクデビューに向けてよい調子だ。

*1
ワールド・ベスト・レースホース・ランキングのウマ娘版




あらやだ、併走のメンバーが豪華すぎる(クラシック四冠+最強スプリンター&無敗の凱旋門賞ウマ娘)
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