無事にジェンティルがオークスを、タルマエが日本ダービーを取った。夏合宿も控えているし、タルマエはジャパンダートダービーなんだけど、その前にやることがある。
「入場待機列はこちらでーす!慌てないでくださーい!」
「開場まで後10分でーす!」
「体調がすぐれない方はすぐ付近の係員に連絡を!」
今日はとあるドームを貸し切って、U.A.F.のプレオープンイベントの日だ。バクシンオー達も勿論来ている。
「さぁ!腕が鳴りますよ~ッ!しっかりと模範的なアピールをしましょうッ!」
「ふぅン。演目の最後には私と委員長君での対決もある……本番ではないが負けるのも癪、勝たせてもらうよ?」
「えぇッ!負けませんよタキオンさんッ!」
バクシンオーとタキオン。この2人はソノンエルフィーさんと一緒にU.A.F.15種の競技を実演する。デモンストレーションというヤツだ。後は2人での対決もある。レースではないけど、盛り上がることは必至だろう。
他のメンバーは基本的に裏方だ。タルマエはソノンエルフィーさんとコラボしているから多少は出番があるけど、それ以外はお手伝いとして動くことになる。
僕も基本的には裏方業務。さて、頑張るか。
そんなわけで始まったプレオープンイベント。まずはソノンエルフィーさん達によるU.A.F.の説明だ。
「会場にお集まりのみなさんッ!どうもこんにちは!ワクワクアスリート系ウマチューバーのソノンエルフィーですッ!」
「──U.A.F.運営の総責任を務めています、都留岐涼花です。本日はU.A.F.のプレオープンイベントに足を運んでいただき、誠にありがとうございます」
「まず、U.A.F.とはなにか?その説明から始めましょうッ!正式名称【ウマ娘アスレチックフェスティバル】。アスリートウマ娘達が自分の肉体を使って挑む、新しい形でのスポーツエンターテイメントですッ!」
ライブモニターでは編集された動画が流れている。内容はU.A.F.の競技を実際にやっている映像だ。
「アスリートウマ娘たちがプライドを懸け、魂を燃やして競い合う。誰も見たことがない総合スポーツ競技……それがU.A.F.になります」
「己の身体能力の極限に挑みッ!熱くぶつかり合うエンターテイメント!アスリートウマ娘たちの汗と情熱、筋肉と魂の共鳴を!刮目してくださいッ!」
「今回のプレオープンイベントでは、そんなU.A.F.で行ってもらう15種の競技について説明させていただきます。それぞれ特設ブースを組んでありますので、是非とも足を運んでください」
開会の宣言はつつがなく終わり、会場にいるお客さん達はパンフレット片手にどこへ行こうかを決めている。
「ふむふむ、ゴッドスピードカラテなんて面白そうじゃない?」
「ソニックフェンシングだって!どんなのだろう?」
「無限リフティング?ただのリフティングじゃないの?」
「へ~、体験会もできるのか。人が多くなければやってみるか」
現時点でかなりの動員数。これは捌くのが大変そうだ。
開会の宣言が終わったが、中継とアナウンスはまだ続いている。
「また、今回のプレオープンのメインイベントでは<チーム・ミーティア>のお2人……サクラバクシンオーさんとアグネスタキオンさんによる15種競技の対決も行う予定です。競技を始める時間は無料配布のパンフレットに記載されていますので、見学の際は余裕をもって特設ブースまでお越しください」
「お2人ともかなり仕上がってきてますよ~!楽しみにしててくださいねッ!」
この言葉に、会場の人達の熱気がさらに上がる。
「きたきたぁぁぁ!これを楽しみに来たんだよ!」
「ミーティアの2人のガチ対決!レースじゃないけど、見るっきゃないでしょ!」
ガチではない、と思いたい。でもタキオンは負けず嫌いだし、バクシンオーも触発されて本気を出すだろうし……間違ってないのがね。
それはともかく、プレオープンイベントが本格的に始まった。僕も自分の作業を頑張るか。
◇
イベントはとても順調に進んでいる。いや、順調なんてものじゃないなこれは。
「お、やってるやってる。よっしゃ、どんな競技があるか観に行こうぜ!」
「おとーさん!早くしないと見れなくなっちゃうよ!」
「U.A.F.、ねぇ。なんか面白そうじゃん」
開場からお昼を回りそうになった今でもひっきりなしにお客さんがやってきている。会場を埋め尽くさんばかりの人、人、人。老若男女問わず訪れており、中には地方からやってきたというお客さんもいるぐらいだ。
「この日のために上層部に掛け合って有休をとってきた……!57連勤はこの日のために!」
「サクラバクシンオーやアグネスタキオンに会える!」
「ふっふっふ……親を死ぬ気で説得した甲斐があったってもんだぜ……!」
……なんか凄い人もいたけど、それぐらい楽しみにしていたのだろう。喜ばしいことだね。
今は裏の方で都留岐さんと2人休憩中。
「お疲れ様です、都留岐さん」
「聖トレーナー。そちらもお疲れ様です」
さて、今回のイベントだけど……現時点で確信を持って言える。
「プレオープンイベント、大成功ですね都留岐さん」
「はい。エルフィー達のデモンストレーションも評判が良かったですし、みなさんU.A.F.に興味を持ってくださっています。後は無事に終わることを祈るばかりですね」
「そうですね。終わりまで気を引き締めていかないとですから」
頷く都留岐さん。プレオープンイベントは現状問題なく進んでいる。この後はバクシンオーとタキオンによるU.A.F.15種競技の対決だ。
「バクシンオーさんとタキオンさんのお2人は?」
「準備の方は大丈夫です。いつでもいけますよ」
「そうですか。それでは、プログラム通りに進めましょう。まずはゴッドスピードカラテからですね」
もうすぐイベントの時間。問題がないようにしっかりとやり遂げないとね。
室内でジャージ姿のバクシンオーとタキオンが向かい合う。どちらも不敵な表情を浮かべていた。会場内にアナウンスが響き渡る。
《それではこれより、サクラバクシンオーさんとアグネスタキオンさんによるU.A.F.プチ大会を始めます。まずはゴッドスピードカラテからです!》
派手な音楽と演出と共に板を持ったスタッフさん達が出てきた。
まずはバクシンオーから。
「スピードを競う競技において、この学級委員長に敗北はありえませんッ!トリャー!」
中々のペースで板を割るバクシンオー。自己ベスト更新はならずだけど、それでもかなりの好タイムだ。
対するタキオン。
「生憎と、私もスピードには自信があるんだ……勝たせてもらおうか委員長君っ!」
俊敏な動きで板を割っていくタキオン。こちらも中々のタイムだが……バクシンオーのタイムには及ばず。
《1戦目、ゴッドスピードカラテはサクラバクシンオーさんの勝利!お見事です!》
「ハーッハッハッハ!当然ですとも!このまま全勝しますよ~ッ!」
「……次は勝たせてもらうよ」
ゴッドスピードカラテはバクシンオーが制した。高笑いをするバクシンオーを睨みつけるタキオン。舞台は次の競技、マシンガンレシーブへと移る。
(機械から打ち出されるボールを次々とレシーブする競技……これもスピードを競うものだけど)
準備が終わり、またバクシンオーから始まる戦い。結果は──
《マシンガンレシーブはアグネスタキオンさんの勝利です!サクラバクシンオーさんも多くのボールを返していましたが、より多くのボールを返したのはアグネスタキオンさんの方だ!》
「ふぅン。ま、こんなものだね」
「ぐ、ぐぬぬ~!こんなはずではっ!」
タキオンの勝利。さっきの雪辱を果たした形になる。
2人とも雰囲気が本気のそれだ。今にもゴゴゴとかいう擬音が聞こえそうなぐらいに空気は揺れており、熱い勝負が繰り広げられている。
お客さんも、雰囲気を感じ取ってかかなり盛り上がっており。
「いいぞいいぞー!」
「実際にやってるとこ見ると……ヤベーな!大迫力だ!」
「頑張れー!バクシンオー!」
「負けるなー!タキオーン!」
会場中から声が聞こえるんじゃないか?ってぐらいにイベントは盛り上がっていた。
◇
バクシンオーとタキオンの白熱した勝負は続く。
「トリャー!委員長はボールコントロールも模範的ですよッ!」
「ウマ娘の跳躍力……しかと目に焼き付け、たまえッ!」
《一進一退の攻防を繰り広げるサクラバクシンオーさんとアグネスタキオンさん!どちらも凄い記録を続けているぞ!会場のボルテージはどんどん上がって行きます!次の勝負は……》
「すっっっげぇ……!」
バクシンオーが勝てばタキオンが取り返す。タキオンが取り返したら、またバクシンオーがやり返す。まさに激闘、って感じの展開が繰り広げられていた。レースとはまた違った面白さに、観客も熱中している。
会場のボルテージが高まり続ける中最後の戦いアクロバットアローへ。アスレチックコースに設置された的全てを、いかに素早く射貫くかの勝負になる。
2人の勝ち星は互角。このアクロバットアローで全てが決まる。
「トリャ!ソリャ!委員長は負けませんよッ!」
「生憎と、私も負けるのは嫌いな性分だ!」
お互い正確に的を射抜く。弓を構え、矢を引きながら障害物を躱し、時には飛び、的を1つ1つ打ち抜いていく。どちらが先に完走するか?観客達が固唾を飲んで見守る中、激闘を制したのは──バクシンオーだった。
《先に全ての的を射抜いたのはサクラバクシンオーさんだぁぁぁ!そして!これでサクラバクシンオーさんが8勝!アグネスタキオンさんが7勝ということで!U.A.F.プレオープンイベント特別対決はサクラバクシンオーさんの勝利です!》
「「「ワァァァァァッッ!!」」」
「バクシン的勝利ッ!学級委員長は模範的に勝利を収めますッ!」
「……クソ!あと少し、届かなかったねぇ……!」
荒い呼吸を繰り返す2人。かなりの接戦だったことから体力を消耗している。最後には。
「次は負けないよ、委員長君」
「次も勝ちますよ、タキオンさんッ!」
お互いに握手を交わしてイベント戦は終了となる。会場中で拍手と歓声が沸き上がっていた。
閉場の時間。帰り際にお客さんの声が聞こえてきたのだけど。
「いや……凄かった!熱かったぞこれ!」
「レースも良いけどこっちも良いな!」
「これが本番ではもっと増えるんだろ?めっちゃ楽しみになってきたんだが!」
「今日来て良かった~!」
ほとんどのお客さんから楽しかった、面白かった、熱かったという声が聞こえる。つまりは……イベント大成功、ということだ。
まだプレオープンイベント。本番ではないとはいえ……成功した、というのはかなり嬉しい……!
(お客さんの掴みは上々。今後に期待が持てる内容だ……!)
ここからはまたすり合わせ。次のイベントの準備や告知、宣伝もまだまだやらないといけない。でも、そうだね。
「喜んでいいはずだ」
U.A.F.のプレオープンイベント。結果は──大成功に終わった。イベント後はご機嫌な都留岐さん達と打ち上げもやって楽しかったね。
大盛況で終わったプレオープンイベント。次も期待ですよ!