その力は何の為に   作:カニ漁船

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タルマエのチャンネルのお話。


ウマチューブの事情

「……したっけ、今日はこの辺りで!また見に来てほしいべ!」

 

 生放送終了のボタンを押して、私はウマチューブを閉じる。後は事故がないようにしないと!万が一にも繋がっていたら大変だし。

 でもな~……なんというか。このままじゃダメなんだろうなぁ。どうしたらいいんだろう?

 

「あら、今日も生放送を?精が出ますね」

「あ、ヴィルシーナさん」

 

 今日はお出かけしていたルームメイトであるヴィルシーナさんの声。慌てて生放送が切れているかをチェック……うん、大丈夫だったみたい。ヴィルシーナさんに迷惑をかけるわけにはいかないものね。

 私は現在、ウマチューブで専用のチャンネルを作って動画を投稿したり生放送をしたりしているんです。これが結構長いことやってて、今ではようやく四桁に突入するぐらいにはなれたんだけど。どうも最近はダメというか。

 

「なにか気になることがあるのですか?少し、浮かない表情をしているみたいですけど」

 

 う、ヴィルシーナさんに見抜かれた。顔に出ていたみたい。

 今更取り繕う気もないし、このまま話しちゃおう。別に秘密にしたいものでもないし、どちらかといえばヒントが貰えるかもしれないから。

 

「実は……最近登録者数が伸び悩んでいて。前までは良い感じに増えてたんですけど、最近は停滞気味なんです」

「チャンネルの登録者数、ですか?」

 

 頷く。前はポンポーン、って感じで増えてたんだけど、最近は減ったり増えたりの繰り返しというか。とにかく増えなくなっている。

 

「歌配信とか、雑談配信をメインにしているんですけど、どうも掴みが弱いみたいでして……。伸び悩んでいるんです」

「そうですか……私はたまにタルマエさんの配信を開きますが好きですよ。特に歌配信!」

「あ、ありがとうございます」

 

 ヴィルシーナさんの言葉は嬉しいけど、苫小牧を有名にするためには止まっていられない!どうか伸びるための良いアイディアはないかな?

 

「でも、それならミーティアの方々と動画を作成したらよろしいのではないでしょうか?」

「ミーティアのメンバーと?」

 

 あーでもないこうでもないと唸っている私にヴィルシーナさんが提案したのは、チームのみんなと動画撮影をしたらどうか?というもの。

 

「ミーティアに所属しているサクラバクシンオーさんとアグネスタキオンさんは凄く有名ですから。タルマエさんのチャンネルに登場すれば、登録者は増えるのではないでしょうか?」

「う、う~ん……でも、それだと私の存在が!」

 

 正直、ヴィルシーナさんの案は考えなかったわけではない。むしろ真っ先に考えたことです。

 ミーティアのメンバーは有名な子が多い。バクシンオーさんやタキオンさんは言わずもがな、ジェンティルさんにドゥラさんは名家出身だからかなり注目されている。私やキタさんはちょっと知名度は低いけど、それでもミーティアのメンバーというだけで一定以上の期待をかけられているんだよね。

 ただ、メンバー全員が結構個性的というか。私よりも目立ってしまう恐れがあるのだ。そしたら苫小牧の宣伝どころじゃない。

 

「私よりも他のメンバーが目立っちゃったら、苫小牧を宣伝できない気がして!」

「大丈夫ですよ。タルマエさんも他の方々に負けず劣らずインパクトありますから」

 

 それはどういう意味だろうか?……まぁいいとして、ミーティアのメンバーはちょっとした最終兵器みたいな扱いで残しているんです。何なら生放送のコメント欄でたまに出てきますからね、【同じチームのメンバーは出てきますか?】みたいな質問が。

 それに、トレーナーさんも需要があるんですよね。バクシンオーさんにタキオンさんの功績が大きいみたいで、たまにコメント欄でトレーナーさんも出てきますか?みたいなコメントも見かけますから。

 

「う~ん……やっぱり、ミーティアのメンバーと動画を撮影した方がいいんでしょうか?」

「需要はかなりありますし、良いと思いますよ。使える手は使ってみるのが良いと思います」

 

 最終的にはヴィルシーナさんに後押しされる形で採用することに。まずは他のメンバーに許可を取らないと!早速LANEでお願いして、と。

 後は明日改めてお願いするだけ!頑張るぞ~!

 

 

 

 

 

 

 

「動画を撮りたい?……あぁ、前に言ってたウマチューブの?」

「はい。メンバーみんなと動画を撮影したいんです。良いですか?」

 

 朝のトレーナー室。タルマエからそんな提案をされた。それにしても動画撮影か。

 

「僕は構わないよ。後はみんなの許可次第だけど」

「あ、そこは大丈夫です!事前に許可を取りましたから!」

 

 随分と根回しが早いな。それなら僕が文句を言う必要はないだろう。

 

「ならいいと思うよ。動画、伸びると良いね」

「はい!あ、後……トレーナーさんにも出て欲しくて」

「え?」

 

 僕がタルマエの動画に?……え?必要ある?

 

「僕が出る必要ある?需要なんてないでしょ」

 

 野郎だし、僕がやっていることは基本裏方だよ。インタビューでも特別面白い受け答えをした覚えはないし、有名ではあると思うけど、ウマチューブを見ている層に需要はあるのかな?

 ただ、そう思っているのは僕だけみたいで。タルマエは首を横にブンブン振っていた。

 

「トレーナーさん、凄い需要あるんですよ!生放送のコメントでも登場を望まれてたりしますし!」

 

 ……何が起こっているの、それは。いや、タルマエの歌配信とかは僕も覗いたりするけど、コメント欄そんなことになっていたのか。見たことないから分からなかった。

 それにしても僕が動画出演か……大丈夫だろうか?色々と。

 

(でも、タルマエのお願いを断るのも忍びないしなぁ)

 

 それに一定の需要はあるみたいだし。それなら、うん。

 

「分かった。じゃあ、今回は軽くトレーニング風景でも撮ってみる?」

「はい!そうしようと思います!」

 

 これで急遽、チーム・ミーティアの動画撮影が始まったのである。僕が見たいっていう物好きっているんだなぁ。

 

 

 時間は過ぎて放課後。みんな集まっている中、タルマエから受け取ったカメラを回す僕。

 

「おぉ!これは何でしょうか?トレーナーさんがカメラを回していますねッ!」

「動画の撮影だろうねぇ。LANEでそんなことを言っていたから」

「確か、ウマチューブに投稿するんでしたよね?うぅ……緊張してきたぁ」

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。いつもと変わらないトレーニングをしたらいいから」

 

 普段もフォームチェックだったり後から見直す用でカメラ回したりするからね。同じ要領だ。ドゥラもちょっと緊張しているみたいで、足を高く上げて歩いている。

 

「……問題ない。動画撮影も完璧にこなしてみせよう」

「ドゥラさんドゥラさん、緊張してるよ。リラックスリラックス」

 

 さて、しっかりと動画を撮ろうか。

 

 

 ……なんて、考えていたんだけどね。

 

「バクシンバクシーーーンッッ!!委員長のバクシンは止まることを知りませんッ!」

「ショットガンタッチなのにボール追い越したら意味ありませんよバクシンオーさ~ん!?」

 

 違う練習法を確立しようとしているバクシンオー。

 

「さぁトレーナー君!この試験薬“ι”を飲みたまえ!ささ、グイっと一杯!」

「……飲んだら滅茶苦茶眩しくなったんだけど」

「ちょ、眩しすぎです!動画撮影どころじゃありませんよ!」

 

 変わらない様子で僕に薬を飲ませてくるタキオン。

 

「あら、随分と柔い鉄球ですこと。ちょっとトレーナー?今すぐ新しいのを持ってきなさい」

「ぎ、銀玉みたいになってる……毎回どうやってるんですか?これ」

「ふぐぐぐぐ……ッ!」

「ドゥラさん!気合入れすぎです!顔色が凄いことになってますよ!?」

 

 鉄球を圧縮し続けるジェンティル。

 

「それでは、トレーニング兼動画を見るであろうみなさんのために!キタサンブラック、歌います!」

「あの、キタさん?歌によっては……その」

「そんなぁ!?」

 

 演歌を歌おうとするキタサン。なんというか、一言で表すなら。

 

「大分カオスだね、これ」

「というか、みなさん普段通りのトレーニングで大丈夫ですって!そんな特別なこと……特別じゃないですね。割と普段通りですね」

 

 悲しきかな、タルマエの言う通りこれがほぼ普段通りなのがまた。精々キタサンの演歌ぐらいだろうか?……いや、演歌もたまに歌ってるな、キタサンは。

 とにかく濃い、ものすごく濃い。見る方も大変じゃないだろうか、これ。

 

「大丈夫なの?これ。動画として」

「……ま、まぁ。最悪編集でちょっと誤魔化しますので」

 

 どこか遠い目をして答えるタルマエ。他のメンバーはというと。

 

「だ、大丈夫だキタさん。私に問題はない」

「いやいやドゥラさん!右手と右足を同時に出してるよ!いつもそんな走り方じゃなかったですよね!?」

「バクシンバクシーーンッッ!タルマエさんのためにもこの委員長が一肌脱ぎましょうッ!さぁ!画面の前のみなさんもバクシンバクシーーンッ!」

「バクシンを布教しようとするんじゃないよ。後、これは生放送じゃなくて動画の撮影だねぇ」

「トレーナー。今度は器具が壊れましたわ。新しいのを持ってきてくださいな」

 

 ……カオスだ。

 

 

 一日のトレーニングも終わり、タルマエは今日撮影したものをチェックしている。さっきから百面相をしているけど。

 

「ま、まぁちょこちょこっと編集すれば……うん、イケるイケる!」

 

 どうやら大丈夫らしい。本当に大丈夫だろうか?

 

「みなさん今日はありがとうございました!これからもお願いするかもしれませんけど、大丈夫ですか?」

 

 頭を下げながらお願いをするタルマエ。これからも動画の撮影に協力してくれるか、ウマチューブに投稿しても大丈夫かの確認だ。

 

「勿論構いませんッ!学級委員長はいつでも協力しますよッ!」

「まぁいいだろう。たまの暇潰しにはなるだろうからねぇ」

「……今度はしっかりとこなそう。動画の撮影も、生配信も!」

「あたしも盛り上げちゃいますよ~!」

「トレーニングの邪魔にならない時間でしたら構いませんわ」

 

 他のメンバーは了承。これからもタルマエのチャンネルには度々ミーティアのメンバーが登場するんだろうね。

 

「チャンネルの登録者、増えると良いね」

「はい!気合入れて編集しちゃいますよ~!」

 

 早速今日から着手していくらしい。一体どうなるのか……ちょっとドキドキするな。増えてくれたら勿論嬉しいな。

 

 

 

 

 

 

 後日。興奮気味にトレーナー室の扉を開いて入ってきたタルマエ。

 

「トレーナーさんやりました!登録者が1万人超えました!さらに増加する勢いです!」

「……良かったね」

「今の勢いなら10万人突破も夢じゃありません!苫小牧の宣伝が捗りますよ~!」

 

 あの時の動画を投稿してから3日も経ってない気がするんだけどなぁ。まぁ増えたならいい、のかな?




実際気にはなるチャンネル。
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