圧倒的な強さでティアラ路線の頂点、トリプルティアラを戴いたジェンティルドンナ。世間は大いに賑わった。
そしてクラシック三冠の最終戦菊花賞。ゴールドシップが二冠の座をかけて挑んだ本レースは、秋華賞に負けず劣らずの盛り上がりだった。
《第3コーナーから一気に捲ってきたゴールドシップ!いよいよ最後の直線、ゴールドシップが上がってきた!ゴールドシップ先頭、ゴールドシップ先頭!》
三冠ウマ娘、ミスターシービーを彷彿とさせる掟破りの走り。上りの第3コーナーから加速して一気に先頭に立ち、下りでもスピードを緩めることなく先頭に急襲。瞬く間に先頭に立ったかと思うと、その勢いのままに最後の直線を走り抜けた。
「オラオラァ!ゴルシちゃん劇場を楽しめ~い!」
2番手との差を広げていき、最終的には7バ身差の圧勝を飾る。観客の興奮が高まる中、ゴールドシップは二冠ウマ娘となった。
《ゴールドシップ!ゴールドシップだ!菊の冠を手にしたゴォォォルドシップゥゥゥ!ゆっくり上ってゆっくり下るのが定石と言われる京都の坂、そんなものは関係ない!我が道を突き進んだゴールドシップ二冠達成!ミスターシービーを彷彿とさせる走りで、皐月と菊の二冠を達成しましたゴールドシップ!》
「オラッシャァァァイ!」
熱狂と歓声が支配する京都レース場。ゴールドシップの偉業を讃えていた。
クラシック限定戦は終わり、今後はシニア級との対戦が気になるファン。とりわけジェンティルドンナへと注目が集まっていた。ティアラ戦全てを5バ身差で制する圧倒的な力を証明した彼女。次に挑むレースは。
「ジャパンカップへ出走いたしますわ」
「次走はジャパンカップです」
ジャパンカップ。凱旋門賞を制したオルフェーヴルも出走するレースであり、クラシック三冠ウマ娘対トリプルティアラウマ娘の対戦カードが実現。また、海外からは凱旋門賞2着だったウマ娘も出走を予定しており、報道陣とファンは更なる盛り上がりを見せる。
「やっぱオルフェ様だよ!オルフェ様しか勝たん!」
「クラシック三冠を制して、しかも凱旋門賞まで勝ったんだから!オルフェ様の勝ちで決まり!」
「オルフェ様~!頑張ってくださ~い!」
オルフェーヴルが勝つと言うファン。
「ジェンティルドンナさんだって負けてないわ!これまでのレースも凄い勝ちだったんだから!」
「ジェンティルドンナも全然あるな。オルフェーヴルにだって負けてないぞ」
「勝つのはジェンティルドンナだー!」
ジェンティルドンナが勝つと言うファン。反応は様々だが、ジャパンカップの日本勢はこの二強だというのが大方の予想だ。
また、この2人だけではない。天皇賞秋でスーパーレコードを叩き出したトーセンジョーダンに加え、ダービーウマ娘エイシンフラッシュも出走を予定している。また、エイシンフラッシュは天覧レース*1となった天皇賞・秋を制しており、大きな話題を呼んでいた。
始まる前からかなりの盛り上がりを見せているジャパンカップ。だが、
「今年はさらに楽しみだよな~」
「おうよ。ついにシニア級に殴り込みだろ?こりゃ応援するっきゃないべ!」
「はてさて、今のダートでどんな結果を残すのか……楽しみだね」
JBCクラシック、ダートのレースだ。今回はスマートファルコンとトランセンド、ワンダーアキュートが出走を予定。さらにはクラシック級からホッコータルマエが参戦すると報じられていた。
芝とダートのダービーを両取りしたホッコータルマエ。彼女が魔境と呼ばれるダートレースでどのような結果を残すのか?JBCクラシックの時は、刻一刻と近づいてきていた。
◇
いつものように都留岐さん達とU.A.F.のトレーニングをやっている。ジェンティルもタルマエもレースが近いからさらに気合が入っているね。
「良い感じですよタルマエさん!筋肉も喜んでいますッ!」
ソノンエルフィーさんが応援し、他のメンバーはサポートに回る。そんな光景を尻目にノートへと視線を落としていると、都留岐さんが話しかけてきた。
「タルマエさん、調子良さそうですね。さっきから好記録を出し続けています」
「都留岐さん。そうですね、調整は問題なく進んでいます……が」
タルマエの調子は最高といってもいいだろう。トレーニングに支障はないし、都留岐さんの言うように好記録を出し続けている。でも正直な話、まだ不安が残る状態だ。それは勿論、次に出走するレース……JBCクラシックが一筋縄ではいかないから。
「やっぱり、JBCクラシックは今までのようにはいかないでしょう。かなり厳しい戦いを強いられます」
「……そう、ですよね。今のダートには」
「はい。スマートファルコン達がいる……戦国時代を形成しているウマ娘達が」
今回出走してくるのはスマートファルコンとトランセンド、そしてワンダーアキュートの3人。フリオーソにエスポワールシチーがいないのがせめてもの救いかも知れないけど、大して変わらない。
「聖トレーナーの目ではどれくらいの差があるのでしょうか?スマートファルコンさん達とタルマエさんの間に」
「……どうぞ」
丁度開いていたページにスマートファルコン達のステータスが載っている。開いたページを都留岐さんに見せると、彼女の表情が苦々しいものに変わっていく。
「……厳しいですね。以前聖トレーナーはステータスは絶対視するものではない、とおっしゃっていましたが」
「それでも、一つの指標にはなります。そして、タルマエにとって苦しい戦いになるでしょう」
一緒にノートを見る。
ホッコータルマエ
適性:芝A ダートA
距離:短B マA 中A 長B
脚質:逃げA 先行A 差しG 追い込みG
スピード:UF4 1347
スタミナ:S 1031
パワー :UG1 1209
根性 :A+ 912
賢さ :S+ 1054
スマートファルコン
適性:芝E ダートA
距離:短B マA 中A 長E
脚質:逃げA 先行D 差しG 追い込みG
スピード:UF7 1377
スタミナ:SS+ 1159
パワー :UG3 1232
根性 :SS+ 1174
賢さ :UG1 1202
トランセンド
適性:芝F ダートA
距離:短G マA 中A 長G
脚質:逃げA 先行B 差しF 追い込みG
スピード:UF2 1326
スタミナ:SS 1144
パワー :UG4 1246
根性 :SS+ 1192
賢さ :UF8 1381
ワンダーアキュート
適性:芝G ダートA
距離:短D マA 中A 長E
脚質:逃げC 先行A 差しC 追い込みE
スピード:UF1 1311
スタミナ:UG3 1236
パワー :SS+ 1178
根性 :UE2 1427
賢さ :SS 1124
タルマエは今も成長中とはいえ、現段階だと難しいな。トランセンドとワンダーアキュートにはスピードで勝っているけど、スマートファルコンには劣っている。他のステータスも軒並み下、簡単にはいかないか。
「それでも、出走なさるんですね。聖トレーナー」
「……はい。他ならないタルマエが望んだことなので」
JBCクラシックを回避する手もあった。けど、タルマエがそれを良しとしなかった。スマートファルコン達に挑みたいと、彼女達に勝ちたいと言った。だったら僕がやるべきことは……最善を尽くすこと。
「僕がやるべきことは対策を練ること。スマートファルコン達のデータを洗い出して、タルマエの勝率を1%でも上げることです。勝ち目が薄くても挑む、それが彼女達の望んだことならば」
「……そうですか。私にできることは応援だけですが、タルマエさん達を応援します。頑張ってくださいね、聖トレーナー」
都留岐さんの言葉に頷いて答える。さて、頑張らないとね。
視線の先では変わらずトレーニングをしているタルマエ。指導をしているソノンエルフィーさんの姿が映る。タルマエの表情は真剣そのものだ。
「良いですよタルマエさんッッ!自己ベスト更新も夢じゃありませんッ!」
「っ、まだです。もっともっと、頑張らないとっ!」
「……そうですかッ!では頑張りましょうッッ!!でも頑張り過ぎはよくありません!適宜休憩を取って身体を休めるのも大事ですッ!」
トレーニングは順調だ。
そういえば、U.A.F.で思い出したことがある。
「年末もやるらしいですね、U.A.F.のイベント」
「そうですね。ただ、前回のプレオープンイベントとは違って本番を想定したイベントにする予定です」
年末にもU.A.F.のイベントをやる予定だ。バクシンオーとタキオンがコメンテーターとして呼ばれているからミーティアも参加予定である。実際に競技に参加するわけではないとのこと。
「前回のイベントが好評だったので、多くの方々が参加してくれることになりました。さらにはスポンサーもついてくださって……これも聖トレーナー達のおかげです」
「力になれたのなら良かったです。バクシンオーとタキオンがコメンテーターですか……大丈夫ですかね?」
「あ、あはは……」
タキオンはともかくバクシンオーがどうか。まぁ大丈夫か。
「U.A.F.は今かなり注目を集めていますから。今が頑張り時です」
「雑誌や新聞でも取り上げられるようになりましたからね、U.A.F.も」
「はい。一部ではトゥインクル・シリーズと同様の盛り上がりが期待できる一大イベントとして紹介してくれる記事もあって……ありがたい限りです」
本番にも更なる期待が持てる、ってところか。実際ニュースでも取り上げられることがあったし、U.A.F.の注目度はプレオープンイベントを経てかなり集まるようになった。学園のウマ娘の子達も何人か興味を示しているみたいだし。
「タルマエとソノンエルフィーさんの登録者数も増加していってますからね。2人ともすでに200万人に届きそうだとか」
「そうですね。とても順調で怖いぐらいです。だからこそ、兜の緒を締めなければと思っています」
こういう時だからこそ、思わぬ落とし穴に嵌らないようにしないといけない。U.A.F.が成功するように、僕達も全面協力しないと。
「これからもよろしくお願いします、都留岐さん」
「えぇ、こちらこそよろしくお願いします聖トレーナー」
都留岐さんの微笑み。さて、次のレースはJBCクラシック……タルマエが勝てるように頑張るか。
◇
そして夜。いつものようにヴェニュスパークのコーチングをやる。
「『聖、聖!私メイクデビュー勝ちました!圧勝です!』」
「『聞いたよ。おめでとうヴェニュスパーク』」
ふふーんと言わんばかりのドヤ顔を披露するヴェニュスパーク。それにしてもメイクデビューで大差圧勝か……将来が末恐ろしいな。
「『あ、後凱旋門賞も見ました。確かに強かったです、オルフェーヴル。それに、なんだか不思議な縁を感じます』」
「『オルフェーヴルと?』」
「『はい。彼女、来年も出走するでしょうか?もし出走するなら……私が勝ちます』」
瞬間、圧が増すヴェニュスパーク。とてもジュニア級のウマ娘とは思えないほどの圧だ。
「……『分からないけれど、可能性はあると思うよ。彼女の場合、日本のウマ娘がまだ成し遂げていない、過去にもほとんど例がない凱旋門賞の連覇を狙ってるだろうから』」
「『そうですか。それは楽しみですね!』」
これに関しては予想に過ぎないけれど、可能性は高いと思う。ヴェニュスパークは対戦できるかもしれないという事実に楽しそうにしていた。
こちらもこちらでコーチングは順調。ヴェニュスパークとモンジュー経由で色んなウマ娘と知り合えている。いずれはこちらのウマ娘とも併走したいな。機会を狙ってみるか。
JBCクラシックも魔境ゾイ。