その力は何の為に   作:カニ漁船

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その頃高村Tは。


フランスへ旅行!

 僕は現在フランスに旅行、というよりはヴェニュスパーク達に会いに行っている。きっかけは有馬記念前にVRでトレーニングをしていた時の話だ。

 

「『高村、新年はフランスで過ごす気はないかな?』」

「『これまた唐突だねモンジュー。どうして?』」

 

 モンジューからフランスに来ないか?という誘いを受けた。トレーニングの休憩中に言われたものだから本当に驚いたよ。

 理由を聞いてみると納得のいくものだった。

 

「『我々はVRを介して会ってはいるが、現実世界では顔を合わせたことがない。だから会ってみたいというのはごく自然な感情だと思うが?』」

「……『一理あるね。そういえば、リアルではまだ会ったことがないか』」

 

 VRでほぼ毎日トレーニングしているから忘れがちだけど、リアルでヴェニュスパークに会ったことはない。一応コーチをしているわけだし、VRではなくリアルで会っておくのも大事だろう。モンジューの提案は納得のいくものだった。

 年末にやることは仕事とドバイワールドカップミーティングで相手になるウマ娘の研究とみんなの記事を漁ること。後はU.A.F.の放送を見ることも忘れちゃいけないな。けどウマチューブで配信する都合上、フランスでも視聴できるので問題はないだろう。他のこともフランスでできなくもないことだ。なら、断る理由はない。

 

「『そうだ。無論、飛行機の手配にホテルはこちらで用意しよう。無理を言っているのは我々なのだから』」

 

 それはちょっと悪い気がする。僕としても一度は会っておきたいわけだし。

 

「『気持ちは嬉しいけど、ホテルの手配は僕にやらせてほしいかな。それぐらいは自分でやっておきたいんだ』」

「『そうか。では、後ほど貴方にフランスでも評判の良いホテルをリストアップしたものを送ろう。ぜひ活用してくれ』」

「『ありがとう。楽しみにしているよ』」

 

 なのでホテルの手配は僕の方でやる、ということで話が成立した。

 余談だけど、話を聞いていたヴェニュスパークは嬉しそうにしていた。

 

「『聖がフランスに来るの?楽しみ~!私がもてなしてあげるね!』」

「『ヴェニュスパーク、部屋はちゃんと片付けておけよ?』」

「ゔ、う、Oui……」

 

 うん、部屋という単語が出た瞬間モンジューの目が鋭くなり、ヴェニュスパークはバツが悪そうに視線を逸らした。つまりはまぁ、そう言うことだろう。あまり触れない方がいいな。

 

 

 そんな経緯があって今はフランス。そして。

 

「『聖~!こっちこっち~!』」

「『待っていたよ、高村トレーナー。ようこそフランスへ。もっとも、貴方にとっては久しぶり、かな?』」

「『うん、こうしてリアルで会うのは初めましてだね。ヴェニュスパーク、モンジュー』」

 

 フランスの空港で2人と合流した。VRで毎日のように顔を合わせているとはいえ、少し新鮮な気分になるね。

 

「『まずはホテルに荷物を置いておきたいね。構わないかな?』」

「『無論、構わないとも。貴方の都合に合わせよう』」

「『フランスをたくさん楽しんでいってね、聖!』」

 

 そういうわけで。僕のフランス旅行が始まった。

 

 

 

 

 

 

 フランス旅行中はトレーニングは自主トレのみ。本格的なトレーニングはお休みで、身体を鈍らせないようにするための運動が主だ。年末だしね。

 

「『気合は十分!さぁ、今日も張り切っていきますよ!』」

 

 ただ、ヴェニュスパークだけではなくモンジューの弟子達も一緒にトレーニングをしている。合同の自主トレで、勿論彼女達のトレーナーも一緒に来ていた。

 

「『失礼。君が日本の高村トレーナーかな?』」

「『はい。初めまして、高村聖と申します』」

 

 失礼のないように、頭を下げて挨拶をする。相手は、微笑んでいた。

 

「『そう畏まらなくてもいい。いつものようにしてくれて構わないよ』」

「『ありがとうございます』」

「『それにしても……君の噂はよく聞いているよ、高村トレーナー』」

 

 僕の噂、か。どんなものだろうか?

 

「『日本の若き天才トレーナー、担当したウマ娘にG1を必ず取らせる稀代の傑物、だとね。我が学園も、君のことを欲しがっていたよ。日本ではなんというんだったかな?確か……喉から手が出るほど、だったかな?』」

「……『かなりの評価ですね』」

「『君がやっていることはそれだけのことさ。ヴェニュスパークも、フランスのトリプルティアラは確実だろうな』」

 

 とんでもないくらい評価されてるな、僕。喉から手が出るほど欲しいと来たか。いや、別にフランスに移籍する気はないんだけども。

 それに、ヴェニュスパークのトリプルティアラは確実、か。

 

「『トリプルティアラ最後のレース、ヴェルメイユ賞はシニアとの混合戦のはずですけど』」

「『いいや、私には確信がある。ヴェニュスパークは必ずトリプルティアラに輝くとね。それほどの実力を身につけているのさ。今の彼女は』」

 

 君の手によってね、と付け加えるヴェニュスパークのトレーナーさん。過分な評価、とは思わない。ここで謙遜するのも少し、失礼かもしれない。

 

「『日程によっては英オークスも視野だ。彼女ならば問題なく勝てるだろう。いやはや、これから先が楽しみだよ』」

「『そうですか。とはいっても、油断はできません。勝つために、勝たせるために。コーチングでは最善を尽くします』」

「『うんうん、それが君の美徳だ。勿論、私も油断はしない。ヴェニュスパークに土は似合わないからね』」

「『そうですね』」

 

 笑っているヴェニュスパークのトレーナーさん。そうだ、忘れるところだった。

 

「『すみません。この機会にトレーニング法について教えてもらっても構わないでしょうか?今後の参考にしたいので』」

 

 本場フランスのトレーニング。教えてもらって損はないはずだ。前回来た時は聞きそびれたし、僕達がやっているトレーニングとは別のものがあるだろう。きっと参考になるはずだ。

 

「『我々のか?……構わないよ。私のでよければ教えよう』」

「『ありがとうございます』」

「『気にしないでくれ。君には忙しい合間を縫って貰ってヴェニュスパークのコーチをやってもらっているんだ。これぐらいのことは返したい』」

 

 その後はヴェニュスパークのトレーナーさんに様々なトレーニング法を教えてもらったりして、時間はあっという間に過ぎていった。元々自主トレなので長くやるつもりはないので、3時ごろには解散。別れることになる。

 

 

 別れた後は、ヴェニュスパークの家へと向かう。モンジューと一緒に。

 

「『どうぞ入ってください!大丈夫、ちゃんと綺麗にしてますから!』」

「『お邪魔します……まぁ、()()()()()()綺麗だね』」

「『そうだな。目に見える範囲は綺麗だ』」

 

 パッと見た感じは綺麗だ。ソファも台所も綺麗にしてあるし、何も問題がなさそうに見える。ただ……目についたのは押入れであろう場所。何だろう、ギチギチ音がしてそうな気がする。多分、あそこに物を詰め込んだんだろうなぁ。ヴェニュスパークも押入れの近くを陣取って動かないし、なにより思いっきり目を逸らしてるし。

 モンジューが溜息を吐く。

 

「『まずは整理整頓からだ。高村トレーナー、すまないがあなたに手伝ってもらってもよいだろうか?無論礼はする』」

「え゙、わ、『悪いですよ!大丈夫ですって!』」

「『構わないよ。新年は綺麗にして過ごした方が良いからね』」

「Euh……『師匠も聖もいじわるです……』」

 

 意地悪、というかなんというか。まぁいいや、まずは掃除をしよう。幸いにもまだ時間はあるからね。夕食の時間まで、モンジュー達と一緒にヴェニュスパークの家を掃除した。

 

 

 流れで夕食も一緒にいただくことに。そして、あるものを見るためにヴェニュスパークに聞く。

 

「『ごめん、ヴェニュスパーク。テレビを借りてもいいかな?』」

「『テレビ?いいけど、どうしたの?』」

「『ちょっと見たいものがあってね』」

 

 どうやらウマチューブも見れるらしい。なら好都合、検索して……あ、あった。U.A.F.のイベント振り返り配信。これを再生して、と。

 

《──それではただいまより、U.A.F.の模様を配信したいと思います!実況は私、チーム・ミーティアのホッコータルマエと!》

《同じく。チーム・ミーティアのジェンティルドンナですわ。本日はよろしくお願いいたします》

《配信版では私達2人が実況と解説を務めさせていただきます!テレビ放送版では、我々と同じチーム・ミーティアのサクラバクシンオーさんとアグネスタキオンさんが実況と解説をしていますよ!そちらも良ければ見ていってください!》

 

 うん、U.A.F.の様子が映し出されているね。日本でやってるけど僕はフランスにいるから見れない。日本に帰ってから見てもいいんだけど、せっかくだしここで2人にもこういうイベントがあるんだよ、ということを教えてもいいと思ってこちらで見ることにした。

 

「『聖、これは何のイベントですか?』」

「『U.A.F.っていう、日本で今話題を集めているイベントだよ。ウマ娘達の限界に挑む、アスリートの祭典』」

「『ほう、これは中々興味深いな』」

 

 いざ競技の様子が生中継されると……ヴェニュスパークは目を輝かせて、モンジューは時折感嘆の息を漏らしていた。どうやら、2人にも好評らしい。

 

「incroyable!!『凄い!日本ではこういうのがあるんですね!』」

「『まだ本番前のイベントだけど、かなり盛り上がってるよ。気に入ってくれたかな?』」

「Oui!!」

 

 気に入ってくれたのならなによりだ。世界にも目を向けてもらえるイベントとして認知される、U.A.F.の発展に繋がるだろう。

 ただ、モンジューはブツブツとなにかを呟いている。よく聞き取れないけど、どうしたのだろうか?

 

「『これは、アリかもしれないな』」

「『どうかしたのかな、モンジュー。もし気に入らなかったら』」

「aucun problème.『とても気に入っているさ、高村トレーナー。このまま配信を見させてほしい』」

 

 よく分からないけど、気に入ってるみたいなのでその後も3人でご飯を食べながら配信を見る。

 

「『相談してみるか。これは、ひょっとするかもしれないからな』」

 

 ただ、後でモンジューの企みについて教えられ、僕は驚くことになった。しかし上手くいけばU.A.F.はさらに盛り上がること間違いなし。なので日本に帰ったらモンジューの提案を伝えることを約束する。彼女は笑顔を浮かべていた。

 これがどっちに転ぶか……良い方向に転んで欲しいな。




コイツさらっとヴェニュスパークの家に上がってる件について。まぁこの後宿泊先のホテルに帰ったんですけどね。
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