年末と新年はフランスのホテルで過ごし。そろそろ三が日も終わりそうなので日本へと戻ることになる。空港にはモンジューとヴェニュスパークが見送りに来てくれた。
「『ありがとう、モンジューもヴェニュスパークも。君達がフランスを案内してくれたから、とても楽しかったよ』」
「『礼には及ばない。我々も君と過ごせてとても楽しく過ごせた。それと、
「『うん。ちゃんと伝えておくよ』」
モンジューと約束を交わす。都留岐さんにしっかりと伝えておこう。U.A.F.の今後にも関わることだから。
「『聖!またフランスに遊びに来てくださいね!もっともっとフランスの観光地を紹介してあげます!』」
「『うん。その時はよろしく頼むよヴェニュスパーク。元気で』」
「『はい!見ててくださいね?凄いウマ娘になりますから!』」
ヴェニュスパークとも笑顔で別れ、飛行機へと乗り込む。ここからしばらくは空の上だ。今のうちに仕事の資料を作成したり、トレーニングメニューの更新をしよう。
(フランスのトレーナー達から色々と教えてもらった。さて、どう組むか……)
「3月のドバイワールドカップミーティングの構想も練らないと。今回はドバイシーマもワールドカップも油断ならないし」
ドバイシーマクラシックの方にはモンジューの弟子の1人が出走してくる。コロネーションカップを2連覇、BCターフを制したこともある強敵だ。ジェンティルからすれば嬉しい強敵だろうけど。
ドバイワールドカップはスマートファルコンやトランセンドは勿論のこと、アメリカから三刀流と呼ばれているウマ娘が出走する。芝・ダートに加えて、オールウェザーでも結果を残しているウマ娘だ。
「……誰が相手でも関係ないけどね。僕がやるべきことは、今も昔も変わらない」
やるべきことはジェンティルとタルマエの勝率を1%でも引き上げること。そのためにも対戦相手となるウマ娘をさらに研究することだ。この飛行機の時間も活用して進めていこう。
「どの道着くまでの間暇だし、眠くもないからね」
日本に着くまでの間、時々休憩を挟みながら今後のプランを立てていた。
そして日本に帰りつく。すぐに家に帰って、荷物を置いた後神社にお参りに行って。終わった後は家で飛行機での作業の続きをやる。
「明日は都留岐さんと会って、モンジューからの伝言を話さないと。事前に打ち合わせの許可は取ってあるから問題はないとして、後は……」
U.A.F.も更なる盛り上がりを見せるかもしれない。そう考えたら、うん。楽しくなってきたな。
次の日は都留岐さんと会う。新年なので飲み会、という体で。ソノンエルフィーさんもついてきていた。
「それでは涼花さんも聖さんも!かんぱーーーいッッ!」
「「乾杯っ」」
程々に飲んだところでモンジューの伝言を切り出す。
「そうだ、都留岐さん。U.A.F.のことなんですが」
「はい。何かあったのでしょうか?私の耳に入れておきたいことがある、と仰っていましたが」
一言一句、間違えることなく都留岐さんに伝える。最初は相槌を打つように頷いていた都留岐さんだが、その顔は徐々に驚きに変わっていって。
「……と、いうわけなんです」
話し終わる頃にはジョッキを落としそうになるくらいに震えていた。とはいっても、恐怖とかそういうのじゃない。感激とか、そっちの部類だと思う。隣のソノンエルフィーさんは笑顔を浮かべていた。
「そ、の……ほ、本当なんですか、聖トレーナー。嘘とかではなく?」
「全部本当のことです。今頃、モンジューも頑張っていると思います」
「良かったですね涼花さんッッ!これはさらに盛り上がること間違いなしッ!ただ、今後の展望を見直さないとですね~ッ!」
「……あぁ」
感激したように息を漏らす都留岐さん。口元を手で押さえ、目にはうっすらと涙が見える。そして、指で涙を拭いた後、都留岐さんは微笑んだ。
「本当に、貴方に頼んで、貴方達に声をかけて良かったです──聖トレーナー」
「そう言っていただけると、僕も嬉しいです」
「これからより一層、頑張らないといけませんね。聖トレーナー、この先も協力していただけますか?」
答えは決まっている。YESだ。
「いいですよ。僕でよければ、これからも喜んで」
「私も~っ、私も頑張りますよ涼花さ~~んッッ!」
「そうね。勿論エルフィーにも頑張ってもらうわ。U.A.F.の成功に向けて、頑張っていきましょう!」
これからのU.A.F.の発展を祝って。とても楽しい気分で飲み会が進んでいった。
やることはたくさんある。でも、とても充実した日々を送れていると思っている。嫌な気持ちにはならないし、なにより楽しい。うん、楽しいな。
(頑張るか)
飲み会でそんなことを思っていた……余談だけど、その後ソノンエルフィーさんは酔いつぶれたので都留岐さんに介抱される中解散した。まぁ後日普通にLANEが返ってきたので大丈夫だったんだろう。
◇
1日1日を大切に、一歩一歩着実に成長する。
「おぉッ!凄いですねタルマエさんッッ!ライクアサブマリンも記録更新ですッッ!」
「ほ、本当ですか!?や、やった……!」
「他の種目もどんどん成長していってます。この調子で頑張りましょうッッ!」
エルフィーさん達の協力で日々トレーニング。平日は徹底的に基礎を鍛えることに終始する。
日曜日はバクシンオーさんとタキオンさん、そしてジェンティルさんとの併走。3人との併走は毎回学びがあるし、なによりトレーナーさんが時折条件を変えるから発見もたくさんだ。
「どんな条件でも、この学級委員長が模範的で花丸ですッ!バクシンバクシンバクシンシーーンッッ!!」
「おっと、私も負けるわけにはいかないんでねぇ。さぁて、頑張ってついてきたまえよ、ジェンティル君タルマエ君!」
「楽しいですわねぇッ!今度こそ貴方方を下して差し上げますわッ!」
「負け、ないっ!」
反省会ではタキオンさん主導で私達の改善点を教えてくれる。最初の頃は本当に色々とダメ出しされてたけど、最近では少なくなってきた。これも成長で嬉しい。
「ところでトレーナー君!今日はこの試験薬“Υ”mark.Ⅴを試そうじゃあないか!」
「……確かそれって「いいよ」相変わらず即決しないでくださいよ!」
……タキオンさんの実験だけは本当によく分からないけど。トレーナーさんも最終的には問題ないからって躊躇がなさすぎだと思います。
私は確実に成長している。
「これがJBCクラシックまでのデータ。そしてこれが今のデータだよ。どうかな?」
「……ちゃんと伸びてる!よし、よし!」
実感できるし、データにもちゃんと表れている。自信に繋がっていった。
「いいかい、タルマエ君。相手の力を出させない、というのも重要だよ」
「はい、タキオンさん」
「レースを支配し、君臨する。そのためにも私や委員長君が持っている技術を君達に叩き込んでいる。なぁに、君達ならばできるさ」
「難しいなぁ……ドゥラさんは大丈夫?」
「……問題ない、キタサン」
コツコツと、地道に。そして、自分の現在地点を確認することも忘れずに。
「最優秀ダートウマ娘はファル子さん、ですか」
「チャンピオンズカップと東京大賞典の2連勝が評価されたんだろうね。後は基本3着か2着に入ってるからだ」
「でも、今度は私が受賞します!」
ダートの先輩達に勝つことを誓って。ドバイワールドカップを勝つことを誓う。余談だけど、年度代表ウマ娘はジェンティルさんが受賞した。無敗のトリプルティアラに秋シニアの二冠が評価された。最後の最後までオルフェさんと評が割れてたんだけど、ジャパンカップの直接対決でジェンティルさんが勝ったことから軍配はこちらに上がった。
「当然ですわ。次は満票での選出を御覧にいれるのも悪くないわね」
……させない。同じチームだとしても、私にとってはジェンティルさんもライバル。だから負けない。
「……ほほほ、待っていますわよタルマエさん」
すぐに追いついてみせる。絶対に。
後は、うん。また来たんですよね。
「ね~ね~キタサンのトレーナーさ~ん!私達もドバイに連れてって~!」
「また来たね、ヴィブロス」
「ご、ごめんなさい高村トレーナー……!ぼくもちゃんと言ったんですけど聞かなくて……!」
私達がドバイに行くから、ヴィブロスさんが。最近契約したらしいトレーナーさんと一緒に。このトレーナーさんはヴィブロスさんを止められなかったんだと思います。さっきから慌ててますし。
「おねが~い、いいでしょ~?」
う、か、可愛い……!ついつい許しちゃいたくなる!ヴィルシーナさんの気持ちが分かりますね。
ヴィブロスさんの甘える攻撃。トレーナーさんは……相変わらずの無表情ですね。全く効いてる様子がありませんねこれ。私でもちょっと揺らいだのに、トレーナーさんのメンタルどうなってるんでしょう?
「前回も言ったと思うけど、君は僕の担当ウマ娘じゃないからダメかな」
「え~!?私もドバイにいきた~い!ねぇ、だめぇ?」
「ダメかな」
す、凄いですね。ヴィブロスさんの甘えるにも全く動じてない。結局この後ヴィルシーナさんに見つかって連行されたヴィブロスさんでした。
色々とありましたけど、とても順調に進んでいます。後は結果を出すだけ、それだけだ……でも、結果に固執しちゃうのは良くない。またJBCクラシックの時みたいになるから。
(みんなの頑張りに報いたいからとか、苫小牧のために頑張りたいって気持ちは嘘じゃない。でも、囚われすぎるのは良くないって私は学んだ。だからこそ、程々に)
ドバイワールドカップは近づいてきている。私の年明け初戦……よし!
「頑張るぞ、私!勝つぞ、私!」
相手は世界の強敵に加えて、ファル子さんとトランセンドさん。一筋縄じゃいかない相手です。でも負けません、絶対に勝ちます!
ヴィルシーナ「あの子のお願いを受けても平然としてなおかつ断るなんて貴方のトレーナーは人間かしら?」
タルマエ「人のトレーナーを何だと思ってるんですか」