その力は何の為に   作:カニ漁船

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魔王呼ばわりされるタルマエ。


二つ名とファン感謝祭

 ドバイワールドカップミーティングの戦いから日は過ぎて。

 

「ち、っちょっとぉ!なんですかこれ!?」

「……どうしたの、タルマエ。なにかあったの?」

 

 スマホ片手に悲鳴?を上げていたタルマエ。何かあったのだろうか?エゴサ的なものをしていたんだと思うけど。

 

「これ、見てくださいよぉ!私のニュース記事!」

 

 わなわなと震えているタルマエは、僕にスマホの画面を突きつけてきた。え~っと、なんて書いてあるのか……【ホッコータルマエ圧勝V!ダートに魔王が誕生した!】、か。あぁうん、言わんとしたいことは何となく分かったよ。

 

「誰が魔王ですか誰が!私、そんなに怖いことしてましたぁ!?」

「……勝つために一生懸命ではあったんじゃないかな」

 

 確かに、まぁ、百歩譲って、そうだったかもしれないけど。タルマエが一生懸命になった結果だ。勝つために色々と頑張って、努力の末に出した結果ついた異名。タルマエ的には納得いってないみたいだけど。記事では結構好意的に書かれているけど、タルマエ的にはナシらしい。カッコいいと思うけどな。というか記事をよく見るとトランセンドが発起人なのか。確かに彼女なら名付けそうな気がする。

 どうにか宥めようと考えていると、他のみんながやってきた。タルマエもバクシンオー達に主張、抗議している。

 だが。

 

「まぁあのレースっぷりだと魔王と呼ばれてもおかしくはないねぇ」

「んな!?」

 

 タキオンからバッサリと切り捨てられた。強く否定はできないのが悲しいな。

 

「考えてもみたまえ。前回負けた相手を執拗にマークし、逃げウマ娘を掛からせ、後続のウマ娘を幻惑し、終始ペースを支配して、レースを圧倒的に勝ったんだぞ?これを魔王と呼ばずになんと言うんだい?」

「そ、それでも!もっと他にあるじゃないですか!ジェンティルさんは貴婦人なんですから、こう、もっとかわいい感じの!」

「君のレーススタイルでかわいいものは似つかわしくないだろう」

 

 改めて自分のスマホで色々と記事やネットの反応を見たりするけど、凄いな。【魔王】の他にも【忍者】とか【ネオ・苫小牧の王】とか【レースの支配者】とか【砂のシンボリルドルフ】とか言われてる。どれもこれも厳つい二つ名ばかりだ。タルマエが抗議するのも分からなくもない。

 ぐぬぬ、と納得のいってないタルマエだったけど。やがて諦めたのか抗議するのを止めた。代わりに。

 

「……いや待ってください。この機会に魔王の私をモチーフにした商品を展開するのもアリではないでしょうか?ちょっと相談してみましょう」

 

 自分の二つ名を利用して苫小牧の新たな商品展開を企んでいた。商魂逞しいね、君。

 

 

 そしてさらに日は流れてドバイから帰る時がやってきた。

 

「『それでは高村。またどこかで会おう』」

「『聖!またね!』」

 

 モンジューやヴェニュスパーク達とも別れる日が来る。

 

「『うん。元気でね……とはいっても、VRでまた会えるけど』」

「『それもそうだな。ただ、我々は君達が欧州のレースに参戦する日を待っているよ』」

 

 欧州のレース、か。今のところは未定だね。ただ、ヴェニュスパークとオルフェーヴルの存在を考えると……アリの選択肢だ。

 ヴェニュスパークはというと、ジェンティルに向けて挑発的な笑みを浮かべている。

 

「『私、負けません。誰にも、貴方にも』」

「『あらあら、随分とお可愛らしいこと。私を挑発しているのかしら?』」

 

 2人とも空港で止めてね。

 空港でいろいろとあったものの、飛行機に乗って日本へ帰ることに。すでに4月、戻る頃には春のファン大感謝祭があるだろう。こっちの準備にも追われそうだ。

 

(……まぁいつもみたいにでいいだろう)

 

 帰ったらスクラップブックを作らないと。日本の新聞は虎太郎に買ってもらってるし、忙しくなりそうだ。

 

 

 ドバイワールドカップミーティング。ジェンティルもタルマエもそれぞれのレースを勝つことができた。ただ、これで終わりじゃない。今後のレースに向けて調整していかないと。それに……覚悟も決めないといけない。

 

(ジェンティルが望む強敵……きっと、タルマエと戦う日が来るね)

 

 同じチームで鎬を削る2人がレースで争う日が来る。同世代だからこそありえるし、いつかは来るだろうって身構えていた。ダートの頂の1つに上ったことで、ジェンティルが今のタルマエを標的に定める可能性は十二分にありえる。ジェンティルが望む強者だから。それに、タルマエもジェンティルと本番のレースで走ることを望むかもしれない。仲間であるとともにライバルなのだから。

 2人の併走は五分の勝負であり、どっちが勝つかは予想がつかない。ジェンティルの無敗が途切れるかもしれないし、タルマエが落ち込んでしまうこともありえる話だ。

 2人が戦うことを良しとするか、だけど。僕の意見は変わらない。

 

(それがジェンティル達の望みなら。僕は舞台を整えるだけだ)

 

 まぁ、どっちが負けても悔しいしどっちが勝っても嬉しい。それは変わらない。それに、もしかしたら2人とも負けるなんてこともある。あらゆることを想定しておかないと。

 ドバイから日本へ戻る飛行機の中、ジェンティル達のレースを選定する。頭の中であぁでもないこうでもないと考え、プランを詰めていく。さて、頑張るか。

 

 

 

 

 

 

 日本へ戻ってからしばらく。今度は春のファン大感謝祭があった。トレセン学園で2回に分けて開催される感謝祭だけど、春の方は運動会の側面が強い。出店なんかが並ぶ中、学園のウマ娘達がスポーツ競技を楽しんでいる。

 その中でミーティアのみんなはというと。

 

「開催を間近に控えたU.A.F.!まだまだ募集中ですよ~ッ!この機会に是非ッ!」

「U.A.F.体験会はこちらですよ~ッッ!誰でも参加OKッッ!」

「さぁさぁ!よってらっしゃいみてらっしゃい!お祭り娘がU.A.F.を盛り上げちゃいますよ~!」

 

 ソノンエルフィーさん達と一緒にU.A.F.の体験会を開いていた。ちゃんと学園には許可を通してあるので問題はない。もうすぐ予選会が開かれるので、ここで更なるPR効果を狙っている。過剰と思っても、念には念を入れておかないといけない。

 今回やるのはスナイプボールにハングクライム、ムゲンリフティングだ。限られたスペースでやる必要があるのと、初心者でも楽しくやれる必要がある競技を検討した結果、この3つに絞られた。スペースも取らないし、体験会にはもってこいの競技だろう。

 

「こちらは安全のために着けて欲しい。また、なにか異常があったらすぐに我々に報せてくれ」

「みんな~!怪我はしないように気をつけてね~!ホッコータルマエとの約束だべ!」

 

 僕達は裏方。ソノンエルフィーさんとタルマエが主導で競技を説明しつつ、有事の際にはすぐに対応できるようにしている。そんな様子を都留岐さんと一緒に眺めていた。

 

「こちらでも大盛況、ですね都留岐さん」

「はい。U.A.F.の認知度はもはや語るまでもないでしょう。それに、みなさん楽しくやっています」

 

 嬉しそうに顔を綻ばせている。U.A.F.の体験会ブースはたくさんの人で溢れており、このまま感謝祭の終わりまでひっきりなしに来る見通しだ。U.A.F.に興味を持ってくれた人、元々持っていた人。どっちも楽しそうにしている。

 

「もうすぐ予選会、ですね。どうでしょうか、首尾は」

「滞りなく進んでいます。スポンサーも着実に増えていってますので、かなり大きな大会になると」

 

 余談だけど、スポンサー一覧にジェンティルの父親の名前があった。あの人もスポンサーになったのか、とちょっとびっくりしたのはここだけの話。

 

「ただ、U.A.F.の理念、意義を忘れないようにしないといけませんね。欲をかきすぎて本質を見失うのはよくありませんから」

「都留岐さんなら大丈夫ですよ。それに、ソノンエルフィーさんがいますから」

「フフ、そうですね。それに、聖さんも止めてくれるでしょう?」

「勿論です。U.A.F.を成功させたいのは、僕も一緒ですから」

 

 U.A.F.の未来は明るい。それに……これはまだいいか。とにかくU.A.F.は大きなものになりそうだ。

 

 

 春のファン大感謝祭、U.A.F.の出張ブースは大盛況に終わる。お客さんはほとんどの人が満足して帰っていったし、なによりアンケートでも好意的な意見が大半を占められていた。うん、嬉しいね。

 感謝祭も終わって、家に帰ってきた。今後の目標を考え……決める。

 

「U.A.F.も順調、だね」

 

 次の舞台は──かしわ記念だ。




こちらも終わりが近づいてきました。
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