その力は何の為に   作:カニ漁船

8 / 88
いつもの夏合宿。てかアンケート1週間は長すぎたな……。


来る夏合宿!

 今年もやってきた夏合宿の季節。ミーティアのメンバーは合宿所でもいつも通りである。

 

「バクシンバクシーーーンッ!目指すは2000m水上を走ることッ!水上バクシン理論が完成した今、問題なくこなせますッ!」

「あ、またやってるバクシンオーさん」

「あたし、救助待機しておきますね!」

「いいかい?ドゥラ君。絶対に着いていくんじゃ「いざっ!」遅かったか……」

「最悪、私が海を割って助け出しますわ。どれくらい割れるかも気になるところですし」

「このチームにいたら常識無くなりそうですね」

 

 今更だと思うよ、タルマエ。なんならもう常識なんてなくなってるよ。

 

 

 夏合宿はステータスを上げる良い機会だ。ジェンティルとタルマエを中心に、みんなにはサポートをしてもらう。

 

「さぁさぁ!この委員長に続けー!ビーチフラッグでも負けなしですよー!」

「甘いねぇ委員長君!私の勝ちだ!」

「ちょわぁっ!?ゆ、油断しましたが次こそは私が勝ちます!」

「いや、ジェンティルとタルマエのサポートをしてくれるかな?2人とも」

 

 ……バクシンオーとタキオンが2人揃ってビーチフラッグに熱中していたけど。

 夏の太陽が砂浜を照り付ける中始まるトレーニング。毎年この時期は熱いね。後、この夏合宿の間なら僕のトレーニングもなくなると思ったけど。

 

「さぁトレーナー。貴方もトレーニングウェアに着替えなさい。一緒にトレーニングしますわよ」

「……今日も空が青いなぁ」

「なにを逃避していますの。早く準備なさい、時間は有限ですわよ」

 

 別にそんなことはなかった。ジェンティル達が高負荷のトレーニングを続ける中、僕もなぜかトレーニングをさせられる。照り付ける太陽の下、僕も筋トレをやっていた。

 スクワットに腹筋、プランクにレッグレイズなど。メイクデビュー以降のあの日以来ずっとやらされ続けてきたので少しばかり慣れてきている。10回すら怪しかったスクワットはギリギリ2セット組めるようになったしね。

 

(成長している実感は湧いてるけど……なんで僕が)

「邪な感情を感じましたわ。つべこべ言わずに身体を動かしなさい」

「……はい」

 

 慣れてきたけどそれはそれ、これはこれだ。辛いもんは辛いし普通に逃げ出したい。おかしい、僕はトレーナーのはずだ……トレーナーの、はずなんだけどなぁ。ジェンティルのトレーニングは良いのか?と思わなくもないけど、全員が交代で僕を見張っているわけで。ジェンティルも普通にトレーニングをしている。ジェンティルが見ていない時は他のみんなが僕を監視している。逃げ場なんてなかった。

 僕のトレーニングについては端に置いておこう。メインはジェンティル達だからね。

 ジェンティルとタルマエのトレーニングは基礎が中心。平日の間は砂浜ダッシュに筋トレ、遠泳とステータスをひたすら上げることに注力している。

 

「タルマエ、ペースが落ちてきているよ。ペースを落とさないように」

「っう、くっ……は、はい!」

「ジェンティルは良い感じだね。指定したペースで走れている。なら、ペースをさらに早めようか」

「分かりましたわ……フッ!!」

 

 タルマエはちょっとキツそうだけど、ジェンティルは淡々とこなしている。ただ、少しキツそうにしている時もあるし、トレーニングの量にも文句を言ってこないので今が限界ギリギリなのだろう。けど、すぐに適応するから油断はできない。常に目を光らせておかないと。

 

 

 土日はバクシンオーやタキオンと併走。たまに夏合宿に来ている他のウマ娘とも併走をする。実践的なトレーニングだ。

 

「や、高村トレーナー。約束のもの、ちゃんと渡してくれるよね?」

「タルマエとジェンティルのデータ、だったよね?勿論構わないよトランセンド」

「やた。ほらほら~トレちゃん早く~。時間は待っちゃくれないよ~?」

 

 タルマエにはトランセンドにタイキシャトル、さらにはシンコウウインディが協力してくれた。タイキシャトルはダートがAになっているし、なによりマイルにおける強さは圧倒的。シンコウウインディは言わずもがな、トランセンドも実力者。タルマエの力になるだろう。

 ビデオカメラを回してデータを収集。これは後にトランセンドにも送る。

 

「バクシンバクシンバクシーーーンッ!ダートでも実力を完璧に発揮できるよう頑張りますよーッ!」

「ダートを走るのはアレだが、走れておいて損はない!未知なる可能性の扉を開こうじゃあないか!」

「……ねぇ、高村君」

「なんでしょうか」

 

 トランセンド達のそれぞれのトレーナーから凄い目で見られている。理由は分かってるけど。

 

「なんで芝の2人があんなにダート走れてるの……?普通にダートのレースでも勝てそうどころかG1で勝ち負けに絡めそうなレベルになってるんだけど……」

「頑張りました」

「……頑張りましたじゃすまされないんだよいつもいつもよぉ!」

「おお落ち着いてウインディのトレーナーさん!?気持ちは凄く分かるけども!」

 

 併走の先頭に立って逃げをかましているバクシンオーとタキオン。凄まじいスピードで後続を千切ろうとしている。なお、すでにバクシンオーのダート適性はBに、タキオンはCになっている。その内Aになりそうだし、そうなったらとんでもない適性になるなぁ。タルマエの併走相手確保に苦労することもなくなるだろう。

 

「いや、あの!あの2人速すぎやしませんかね!?ダートウマ娘の面目が立たないんだけど!?」

「WoW!バクシンオーもタキオンもエネルギッシュで~す!ワタシも、負けていられませんよ~!」

「エネルギッシュじゃ済まされないのだ!どう考えてもおかしいのだ~!?タルマエも、何かおかしいと思わないのだ!?」

「慣れました」

 

 併走メンバーであるトランセンド達もビックリしていた。そりゃビックリするだろうね。

 併走の結果は、シンコウウインディの勝利で終わった。

 

「ほ、本気で危なかったのだ……ッ!やっぱあのゾンビトレーナー頭おかしいのだ……!」

「ウインディ!失礼だろ!すまない、高村!気にしていることを……」

「大丈夫ですよ。別に気にしてないので」

 

 それにしても、さすがはダートウマ娘。適性がAにならないとさすがに勝てないか。惜しいとこまではいったんだけどな。

 

「惜しいとこまでいける時点で大概おかしいことに気付いてほしいかな、君は」

 

 タイキシャトルのトレーナーさんに咎めるような目で見られた。いや、うん。そうなんですけどね。

 何本か走り終わった後、トレーナーの間で意見交換会。その折に、トランセンドのトレーナーさんからトランセンド共々頭を下げられた。

 

「ありがとね、高村トレーナー。ウチらのためっしょ?バクシンオーとタキオンの2人が逃げで走ってたん」

「……さすがに分かりましたか?」

「まぁ、1回ならともかくずっとだとさすがに気づくよ。ありがとうね、高村君」

 

 どうしてバクシンオーとタキオンの2人を逃げで走らせていたか?そしてトランセンドがどうして併走を受けてくれたのか?その理由は──彼女が戦っている相手にある。

 

「現役最強のダートウマ娘、スマートファルコン……通称【赤鬼】。ま~これがヤバい相手でね~」

 

 スマートファルコン。ダートの逃げウマ娘で、その強さは現役ダートウマ娘の頂点に立つほど。この前開催された帝王賞でも、2着のエスポワールシチーに9バ身差の圧勝を飾るほどだった。ちなみにトランセンドは同競走の4着。3着はワンダーアキュートだった。

 

「サクラバクシンオーもアグネスタキオンも、どっちも凄いウマ娘だ。あそこまでダートを走れるなら、仮想スマートファルコンにはもってこいの2人だったよ」

「それならばよかったです。お2人のお役に立てたようで」

「お役に立つどころじゃないよん本当に。まぁこれで……()()退()()の準備は整ったかな~?本当にありがとね」

 

 夏合宿中はこの3人にお世話になった。タルマエも、急成長を遂げたことだろう。

 

 

 ジェンティルの併走相手はトウカイテイオーにミホノブルボン。主に中距離ウマ娘を中心に組んだ。

 

「いやはや~、ワガハイに目をつけるとは。相変わらず高村君はお目が高いね~!苦しゅうないぞよ~!」

「……キャラ変ですか?」

「あまり気にしないでやってくれ、聖君。テイオーも頼られて嬉しいんだよ」

 

 微笑ましい目のトウカイテイオーのトレーナー、天城さんと仏頂面のミホノブルボンのトレーナーさんが見守る中、併走が始まる。

 展開はというと、ミホノブルボンが逃げてトウカイテイオーが続く。ジェンティルドンナは一番後ろで観察をしていた。

 

「……へぇ?」

「ステータス『平常心』。変わらずこのペースを維持します」

 

 一定のペースで逃げるミホノブルボンと問題なくついていくトウカイテイオー。ジェンティルドンナも苦しそうにしているとはいえ、喰らいついていた。

 あの反応、トウカイテイオーは気づいているだろう。多分、ミホノブルボンもそうかな?

 

「コーナーでの脚さばきにペースの守り方、そして崩し方。全部余すことなく観察しているな」

「そうですね……それだけじゃない。テイオー達を下して自分が勝とうと機会を窺っている。闘争心も十分だ」

「それにしても……まだジュニア級だというのに、ここまでやれるとはな。全く、お前が育てるウマ娘は毎回規格外だ」

「誉め言葉として受け取っておきます」

「安心しろ。誉め言葉だ」

 

 2人ともジェンティルの強さに関心を抱いている。少しだけ誇らしい気持ちになるけど、旗色が悪いのはジェンティルの方だろう。

 トウカイテイオーがペースを乱そうとしている。その間にもミホノブルボンの巡行は止まらない。ジェンティルは後手を踏まされ続けていた。併走が始まってからずっと不利を背負わされている。3番手につけたことが仇になったね、これは。

 最終的にはトウカイテイオーが1着、ミホノブルボンが2着。ジェンティルは3着になった。ただ、ほぼ差はないといってもいいだろう。

 

「……もう一本お願いできますかしら?次は問題なく修正しますわ」

「もっちろんいいよ!何度でもコテンパンにしてあげよ~う!」

「『問題なし』。ミホノブルボン、次の併走に向けて冷却します」

 

 少しの休憩の後、また始まる併走。次のレースでは……ジェンティルは2番手につけた。

 

「ほぉ」

「へぇ?」

 

 驚いたような声を上げる天城さん達。ミホノブルボンが先頭は変わらず、トウカイテイオーは3番手だ。

 

「……さっきまでの問題点を即修正。適応力も凄まじいときたか」

「学習能力も高い。しかも……テイオーのステップ技術を少しだけ取り入れてるね」

 

 さっきまでは3番手で進んだことで後手を踏まされた。ならばと2番手につけて、今度はトウカイテイオーに後手を踏ませるという算段だろう。

 とはいっても。

 

「中々面白いじゃん。でもさぁ……それだけで勝てるほどボクは甘くないよ

 

 トウカイテイオーは中距離の最強格。タキオンとも鎬を削っている相手だ。一筋縄ではいかない。ジェンティルの後ろにピッタリと張り付いて風除けに使っている。

 

「くっ!」

「頑張りなよ?色んな策を使ってくれていい……その全部を、ボクが砕いてあげるよ」

「……楽しい。あぁ……楽しいですわねぇッ!」

 

 ただ、それで折れるジェンティルじゃない。むしろ心を躍らせるのが彼女だ。強者との戦いに気持ちは昂り、なお喰らわんと努力を重ねる……それがジェンティルだからね。

 結果はミホノブルボン1着、トウカイテイオー2着、ジェンティル3着。ただ、得られるものは多かった。

 

「今日はこんなところかな?みんなお疲れ様」

「実りのある時間だった。今度、別のウマ娘も連れてきても構わないか?」

「勿論大丈夫です。ありがとうございました、お2人とも」

 

 深々と頭を下げて解散。そして、早速ジェンティルとミーティングをする。

 

「トレーナー、ちゃんとビデオは撮っていますわね?」

「勿論。宿舎に帰って問題点を洗い出そうか」

 

 これが土日の合宿。タルマエもジェンティルも、着実に成長していた。




水上バクシン理論は完璧!

掲示板回がいるかどうか

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。