時間は流れ、ついにこの日がやってきた。都留岐さん達が主催するU.A.F.──ウマ娘アスレチックフェスティバルの本番が。
《ついにこの時がやってきたッ!これまでのU.A.F.が描いてきた奇跡、日本だけではなく、世界にまでこの熱は広まった!その熱は今日ここで発揮される!!U.A.F.の終着点です!》
会場は人、人、人で埋め尽くされている。少しでも多くの人に、加えて世界中の人に生で見てもらいたいと思った結果、限界ギリギリの量を攻めすぎたみたいだ。
《類まれなる身体能力を駆使してこの場に集った一流アスリート達!彼女達の情熱を後押しするべく!!熱く、盛り上がっていきましょぉぉぉぉ!!》
「「「わあああぁぁぁあああ!!」」
けれど、カメラに映されるお客さんの表情は楽しそうだ。アナウンスの声に賛同するように、大きな声を上げている。
《刮目せよ!!No.1アスリートウマ娘が決まる瞬間を!一瞬たりとも見逃すな!!至高のアスリートウマ娘達による、究極の
そばにあるPCでは、U.A.F.の配信画面が見えている。コメントも大盛り上がりだった。
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おくはし 誰が勝つんだろうな~wktk ガンビン 現地で観たかった~!競争倍率高すぎ! Jeremy Gaveston Good luck to the contestants!(出演者たちみんな頑張れ!) あんj ソノンエルフィーがんばれ~! Abella Jouan J'ai hâte d'y être!(楽しみで仕方ないわ!) オカルティズム 推しに念を送って応援だ! パルムボリ こんな催しを考えてくれた運営には感謝! Heath McLean We bear witness to a legend.(我々は伝説の証人になる) Lennie Macnair It's going to be the hottest show ever!(最高に熱いショーになること間違いなしね!) |
世界中の人からたくさんのコメントが寄せられている。誰もがU.A.F.を楽しみにしている人で、始まる時を今か今かと待ちわびている様子だ。かくいう僕も、ちょっとドキドキしているんだけど。
(バクシンオー達は今回出場しない、実況・解説での参加だ。それでも、楽しみにしている自分がいる)
《それでは、選手宣誓を──》
後は、
「──熱く、楽しく、輝いて!頂点を競い合うことを!!ここにッ!!誓いまぁぁぁすッ!!!!」
選手宣誓が終わり、ついにU.A.F.本番が始まる。世界中から集まったアスリートウマ娘達の祭典、年末最後の情熱が、会場を埋めつくそうとしていた。
◇
実況と解説は主にバクシンオーとタキオンが担当している。感覚で素直な感想を残すバクシンオーと、理論的に説明を挟むタキオンの解説コンビは当初から人気を集めていた。
《さぁライクアサブマリンです!この競技はどのようなものでしょうか?模範的な委員長は答えることを他の人に譲りましょう!タキオンさんどうぞ!》
《委員長は関係ないだろうそれ。ライクアサブマリンに要求されるのはスタミナだねぇ。だが、ただスタミナがあればいいというものでもない》
《と、言いますと?》
《誰もが新鮮な酸素を求めて浮上したくなる。その気持ちをグッと抑える精神力も必要になってくるわけだ。肺活量と忍耐力、この2つを兼ね備えてなければ良いタイムは出せない。我慢しすぎるのはよくないがね》
小気味よい実況と解説のテンポ。案外この2人は良いコンビかもしれない。
《しかし、モンゴルから来たという彼女は素晴らしいねぇ!これは良いモルモっ、失礼。良いタイムが期待できそうだよ!》
《あの子からも学級委員長の素質を感じます!素晴らしいバクシンですねッ!》
《モンゴルといえば、世界一過酷と称されるモンゴルダービーが開催されている地だねぇ。彼女のスタミナはそこから来ているのだろう。実に素晴らしい!》
……前言撤回。タキオンが暴走しだしたらどこまでも行くからストッパーがいなくなるな、これ。まぁ配信ではこのやり取りが面白いのか、結構好評みたいだ。
また、バクシンオーとタキオンだけじゃない。ジェンティルとタルマエ、キタサンとドゥラがコンビで実況と解説をすることがある。
《プッシュザロックはただ闇雲に岩を押せばよいというものではありません。それでは、動くものも動かなくてよ》
《力押しだけじゃ動かないんですよねぇ、あの岩。例外はありますけど》
《重要なのは力の伝達です。身体の力を一点に集中させ、全身で押すように動かすのがコツですわ。私は片手で押せますが》
《それはジェンティルさんの力がおかしいだけです》
ジェンティルとタルマエのコンビは普通よりだ。
《アクロバットアローは広く視野を持つことが重要ですね。的を射るために速く動くことを意識してはだめです》
《どこに的があり、どのような順番で射るのが最適か。アクロバットアローで好タイムを記録したいのならば覚えておきなさい》
《後はどんな時でも冷静でいることです。的が見つからなくても焦らず、しっかりと探しましょう。焦ると視野が狭まっちゃいますからね》
普通の実況と解説。さっきのバクシンオー達と比べたら面白みに欠けるかもしれないけど、こちらもまた人気だ。
そしてキタサンとドゥラのコンビ。こちらは何というか、初々しい。
《わ、わ!すごいよドゥラさん!アメリカから来たあのウマ娘さん!どんどんボールをレシーブしてる!》
《あぁ。アメリカでは短距離よりもさらに短い距離に全力を注ぐウマ娘達がいると聞いたことがある。彼女は、そちらの競技出身なのだろう》
《すごいな~。すっごく速いよ!》
純粋なキタサンとアスリートの名家出身ということから色々と精通しているドゥラ。キタサンの反応に微笑ましさを覚えるコメントだったり、ドゥラの博識に驚くコメントが散見されている。うん、ミーティアメンバーの実況・解説は好評のようだ。
《……》
《ど、ドゥラさん!?緊張するのは分かるけど黙っちゃったらダメだよ!?》
《も、問題、ない。解説も完璧にこなして見せよう!》
《立ち上がってステップを刻まないでドゥラさーん!?誰にも見えてないから!トレーナーさんやバクシンオーさん達にしか見えてないからー!》
……たまに心配になるのは愛嬌ってヤツだろう、うん。
競技は順調に進んでいる。会場の熱気は上がり続け、声援はどんどん大きくなっていく。
「頑張れ頑張れー!」
「応援してるよー!」
「気合いだー!」
みんなが夢中になっている。競技者の熱が伝播して観客に伝わり、観客の熱がまた競技者に伝わる。
「よっしゃあ!まだまだ上がるぜ!」
「『せっかく日本まで来たんだ。こっちだって負けられないよッ!』」
「『よ~しよし!過去一の記録!絶好調!』」
熱が高まり続ける好循環。見ているこっちも体を動かしたくなるほどの情熱を感じさせる祭典。そしてなにより──会場にいる全員が、笑顔でいること。これが一番大きい。
(……凄いな)
「聖トレーナー」
気づけば、都留岐さんが近くに来ていた。表情を見ると、とても嬉しそうな表情をしている。
「ご覧になられていますか?U.A.F.の、景色を」
「……はい。とても、素晴らしい光景だと思っています」
「それは良かったです。観客の方々も、配信の方々もみんな、U.A.F.を楽しんでいらっしゃるみたいで」
感極まっているような、そんな表情。U.A.F.の成否など、もはや疑う余地もないだろう。
「この景色がみられるのも、聖トレーナー達の協力があってこそ。みなさんで頑張ってきたからこそ、この景色があります」
「スポーツの根源的な面白さを伝えるための大会。競い、高めあうことで熱は伝播していき、人々を熱狂させる」
「素晴らしいですね……U.A.F.は、最高のものになっています」
僕達の視線の先では、ちょうどソノンエルフィーさんが競技をやっている最中の光景が目に入った。
彼女の表情は──とても素晴らしい笑顔。万人を笑顔にするような、そんな笑顔を彼女は浮かべていた。
競技を眺めていた都留岐さんの表情が、優しいものになる。
「エルフィー……あなたの夢は、私達の夢は。叶ったわ」
「都留岐さん……」
「よかったわね、エルフィー」
無言で頷く。都留岐さんの言葉に同意する。U.A.F.は……大成功だ。
◇
プログラムはつつがなく終わり。気づけば全ての競技が終了していた。時間が経つのはあっという間、会場中からももう終わり?といった声が聞こえてくる。それほどまでに夢中になっていたんだろう、U.A.F.という大会に。
《──これですべての競技が終了しました!!この瞬間、大会の総合得点が確定します!》
ドキドキの瞬間。優勝は誰のものになったのか?会場中が発表される瞬間を待っている。かくいう僕もそうだ。バクシンオー達もそわそわしていて落ち着きがない。
待って、待って。発表された、その名前は。
《優勝は──ソノンエルフィー選手ですッ!!》
僕達にとって、とても聞きなじみのある名前だった。
「「「ワアアアァァァアアア!!」」
「や、やった~!やりました、やりましたよ私~!涼花さ~ん!ミーティアのみなさ~ん!」
ステージで、とても嬉しそうに報告しているソノンエルフィーさん。僕も、気づいたら拍手で彼女を称えていた。
栄えある第1回ウマ娘アスレチックフェスティバル。総合優勝を果たしたのは──U.A.F.の火付け人でもあるソノンエルフィーさんだった。
壇上に上がり、トロフィーを受け取って掲げるソノンエルフィーさん。メディアの人達はカメラに姿を収め、慌ただしそうにしている。他の競技者はどこか悔しそうにしつつも、晴れ晴れとした表情でソノンエルフィーさんを称えていた。
表彰式も終わり、閉会のあいさつも終わった。このまま解散……することはなく。
「本日会場にお集まりのみなさん!!そして、配信を見てくださっている視聴者のみなさん!!」
そのまま、優勝者であるソノンエルフィーさんのスピーチが始まる。観客は何事かと足を止めている。配信を見ている人達も、今頃何事かと思っているだろう。
そう、
「ワクワクアスリート系ウマチューバー、そしてU.A.F.のイメージキャラクター!ソノンエルフィーですッ!!みなさん、U.A.F.は楽しんでいただけましたか!!」
歓声。空気が震え、会場が揺れていると錯覚するほどの大歓声で答える人々。ソノンエルフィーさんは満足げにうなずく。
「私もです!私も、すっごくすっっっっごく!楽しかったですッ!!やっぱりスポーツは素晴らしいってことを再認識しましたッ!」
ソノンエルフィーさんの言葉に頷く競技者達。心は一つだ。
「U.A.F.は、私一人の力では実現できませんでした!涼花さんが私を見つけてくれて、一緒に夢を見てくれて!」
スポーツは楽しいということ。誰かと一緒にいるのは、競い合うのは楽しいということ。
「ミーティアのみなさんが私達に協力してくれて!U.A.F.を好きになってくれたみなさんが応援してくれてッ!U.A.F.はここまで来れましたッ!!みなさんの熱い思いが、私達にすごく伝わってましたッ!!」
夢を見るということは悪くないということ。夢を諦める必要はないということを。
「輝く汗は世界を繋ぐッ!!スポーツを大好きって思う気持ちは万国共通!!みなさんがU.A.F.を見て、少しでも気持ちが前向きになれたら嬉しいですッ!!」
ありったけの感謝を、ソノンエルフィーさんはみんなに届けている。みんながいたからこそここまでこれたのだと、U.A.F.を見てくれてありがとうと。見てくれた人達が元気になってくれたら嬉しいと伝えている。
「たっくさん!たっっっくさんありがとうって言ってもまだ足りませんッ!!みなさんの熱い思いに応えるには、まだまだ全然足りませんッ!!だから!」
ついに、その時がやってくる。気づけば出来上がっていた特設ステージに足を運ぶソノンエルフィーさん。そして、ミーティアのメンバーにモンジュー、ヴェニュスパークに限らず。競技者の中から選ばれたウマ娘達が特設ステージに並んでいた。センターに立つのは──当然、ソノンエルフィー。
「最後の最後に!私達からのセレモニーライブを送ります!!この日のために書き下ろしてくれた楽曲を!聴いているだけで心が熱くなるような、燃えるような情熱のライブを!!みなさんに送りたいと思います!!」
「「「みなさん!!聴いていってくれますか!!」」」
呆けている観客。静まり返る会場。数瞬の後──再燃焼する。
「「「ワアアアァァァアアア!!」」」
声援を受けて、満足そうに頷くソノンエルフィーさん。隣にいる都留岐さんは、ずっと嬉しそうに泣いている。U.A.F.の成功を、心の底から喜んでいる。
「ありがとうございます!では、聴いてくださいッ!!」
U.A.F.──ウマ娘アスレチックフェスティバルの曲。ライバル達が競い合い、高め合うこと。スポーツは素晴らしいことをテーマにした、情熱の曲。
「「「【爆熱マイソウル】!!」」」
彼女達の情熱は、終わることなく燃え上がることだろう。どこまでも美しく輝くキラメキを放ちながら。
今後は活動報告にて