「ち、ちょっとまって……? 今……なんて言ったの……?」
「だから、竜之助を養っていってもいいという家族が見つかったんだ。前にお前も言っていただろう? 早く見つけて欲しいと」
「た、確かに言ったけど……で、でも、なんでそんな簡単に……? 子供一人を引き取るなんて簡単なことじゃ……」
「確かにそうなんだが、実はその家族は母親の方が病気のため子供が産めない体らしくてな。ずっと前から子供を育ててみたいということを話していたらしいんだ。今回私が竜之助の話を持ちかけたところ、ぜひ育てさせてくれと言ってきたんだよ」
「……で、でも、竜之助は半妖よ……? ま、万が一のことがあったら……」
霊夢の声は少し震えていた。守ると誓った矢先、こんなことが起こってしまったら当然だろう。しかし、慧音には伝わらず、別の意味として捉えていた。
「心配はいらないさ。竜之助は半妖だが、普通の食事もとるし、何よりあの性格だ。人を襲うことなんてあるまい。万が一のことが起こっても、私が対処するからそこまで心配しなくて大丈夫だ」
慧音は苦笑しながら言葉を繋いだ。
「なに、あまり大きな声では言えないが、その家族は村の中でもお金を有している部類に入る家族だ。竜之助の生活の心配はいらないさ。これまで通り寺子屋には通わせる。霊夢も里に来れば会うことも出来るだろうしな」
「…………え、ええ……そうね……」
「どうした霊夢、顔色が優れないぞ?」
「そ、そんなことないわよ‼︎ 普通よ普通‼︎」
霊夢はハッとしながらやや強めに声を張り上げた。そのせいで、話していた慧音と近くにいた村人数人は驚いたように霊夢に目を向けた。
「ど、どうしたんだ霊夢。いったい……」
「……良かったわね……竜之助……新しい家族が見つかって……」
「えっ? あ、ああ……そうだな……」
霊夢は慧音の質問には答えずに、そう呟き、慧音はそれに対して相槌を打った。
「……そうよね……あの年齢だもの……こんな私といるより、その裕福な家族といる方がよっぽど幸せよ……」
霊夢は慧音が前にいるのも気に留めず、ブツブツと呟き出した。
「……霊夢……お前……」
「……慧音、その人達はいつ迎えに来るのかしら……」
「……明日の朝、神社に迎えに行くと言っていたな……」
「……そう……」
「…………………………」
「…………………………」
お互いが言葉を交わすことをやめ、辺りに沈黙が流れる。
「……霊夢……竜之助を手放したくないのか……?」
沈黙を破るように、慧音が先に口を開いた。
「……ふふっ、何言ってるのよ。そんなことあるわけないじゃない。いきなり神社に来て、弾幕が見たいだのなんだの言って迷惑をかけてくれて、いなくなってくれた方が清々するわ。またいつも通り気楽な生活に戻れるんだもの」
霊夢は目を閉じ手を顔の横に出し、やれやれといったポーズをとった。
「……それでいいのか……? お前は……」
「いいも何も、こんな貧乏巫女といるより、少しでもお金があって、家族として迎えてくれるところに行った方が竜之助も喜ぶでしょうよ」
霊夢は目を開けて腰に手を置き、慧音の目をジッと見据えた。
「…………そうか……お前がそう言うなら私は何も言わん……」
慧音は目を閉じ少し悲しげな表情をした。
「まぁ、今日の夜まででいいなら面倒ぐらいは見てあげるわ」
「……あぁ、そうしてやってくれ」
……お前のためにもな……
慧音は内心でそう呟きながら後ろに振り返り、寺子屋に向かって歩き出した。
「……さて……早く帰って料理の下ごしらえでもしましょうかね……」
霊夢はそう言いながら買い物カゴを拾い上げ、博麗神社に向かって飛んで行った。その際に霊夢の目元から光の粒が零れたことを知るものは、霊夢本人でさえいなかっただろう……。
お疲れ様でした。霊夢さんの感情が上手くかけているかが不安なのですが、ひとまずこの話はここで終わりです。もし良かったら次回もゆっくり見て行ってください