「…………」
神社に戻った霊夢は、自室に戻り、一眠りし、起きてもそのまま寝そべりながら天井を仰いでいた。すでに日は沈んでおり、文にもらった新聞はコタツの上に置きっ放しだ。
「……なんで……こんなに……どうして……私は……」
霊夢はぼそぼそと独り言を呟きながら虚ろな目をしていた。しかし、
「……隠れてないで、出てきたらどうかしら……紫」
霊夢が虚空に向かってそう声をかける。しかし、反応は無い。
「しらばっくれても無駄よ。あなたがそこにいることは分かってる」
「……なぜ、分かったのかしら?」
そう声が響くと、虚空に無数の目をひしめかせたスキマが現れ、その中から幻想郷の賢者、八雲紫が姿を表した。
「自分で気付いてないの? いつものあなたなら確かに気がつかなかったでしょうけど、今のあなた、落ち着きが無いというか、焦りというか、普通の人には気づかないでしょうけど、スキマに綻びがあったのよ。と言っても、私もさっきまでは気づかなかったわ。少し落ち着くと見えてくるものってあるのね」
「……なるほどね、私もまだまだ甘いわね。こんなにあっさりと見破られるだなんて」
紫は苦笑しながら言った。
「……それで、いったい何の用よ。あなたが起きてる理由はなんなの?」
「あら、たまには私が起きていてもいいとは思わない? ずっと寝てるよりは健康的だと思うけど?」
「この冬の時期じゃなければそう思ってあげても良かったわね」
「……あなたは知らなくてもいいことよ。霊夢、いえ、博麗の巫女」
紫は扇子を取り出して広げ、口元を扇子で隠しながらそう言った。
「……なるほどね。いつものふざけた感じではなく、妖怪の賢者様としての意見ということね」
霊夢はそう言いながら起き上がり、紫と真っ正面に向かい合った。
「なら、私、博麗の巫女に何か言うことがあるんじゃないのかしら?」
この内心のモヤモヤを紛らわすにはちょうどいい。そう思いながら霊夢は紫に詰め寄った。
「言ったでしょう? あなたはこの件に関しては何も知らなくていいの。これまでのことも、そして、これからのことも」
「えっ……いったい……」
霊夢はどういう意味だと尋ねようとしたその時--
……ゾプリ……
いつの間にか、紫の手首から先がスキマの中に入っており、その手の先は……
「あぁああああぁあぁっ‼︎ うぁあぁああぁああっ‼︎」
霊夢の真後ろから出現し、霊夢の頭にスキマを開け、頭の中をいじっていた。霊夢は頭を掻き回されているショックで悲鳴をあげ、倒れ、悶え苦しんだ。
「紫ぃ……‼︎ いった……い……何を……っ‼︎」
霊夢は頭の中を掻き乱されることに耐えながら紫を睨みつけた。
「言ったでしょう? あなたは何も知らなくていいのよ。まぁ、記憶を弄っているわけだから、今言ってることも忘れちゃうでしょうけどね」
「記憶…を…っ…あぁあぁあぁぁ‼︎」
霊夢は頭の抑えながらジタバタと悶えた。
「痛くはないでしょう? まぁ、今あなたの頭の中はぐちゃぐちゃに掻き回されてるから精神的に酷いかもしれないけど……大丈夫、すぐにそれも忘れるわ」
そう言った瞬間、紫はスキマから手を抜き、霊夢はビクンと一瞬体を跳ねさせそのまま気絶した。
「……む……‼︎ お……夢……‼︎ おい、霊夢‼︎」
「……んっ……あれ……ここは……」
「気が付いたか……霊夢」
「良かった……無事で何よりですよ。霊夢さん」
霊夢が目を覚ますと、そこには魔理沙と文の姿があった。霊夢は布団に寝かせられていた。外を見てみると、太陽が昇っていて、朝だということが見て取れた。
「……あんたたち……なんで……それにここは……」
「ここはお前の神社の居間だ。あれから私たちは話し合って、お前に謝ろうと思って日を改めて来て見たんだが、玄関から声をかけてもお前の返事は無かったんだ。そこで中に入ってみたら、お前が倒れていたってことだ」
「あれからって……?」
「あー……それは……ほ、ほら、文、今度はお前の番だぞ」
魔理沙は文を肘で小突きながら言った。
「は、はい。あの、霊夢さん。本当にすみませんでした。何も知らなかったとはいえ、あんなことを言ってしまい……」
文は本当に申し訳なさそうな表情で謝罪した。
「あんなことって……何よ?」
「えっ、で、ですから、竜之助さんのことを……」
霊夢は首を傾げながら、こう言った。
「竜之助って……誰のことよ?」
はい、というわけで二十六話完了です♪まさかの紫さん登場で作者の私も驚いてます。そして紫さんのあの行動、また更に謎が深まった気がします。そして竜之助のことを忘れてしまった霊夢さん。これからどうなるのでしょうか。もしよろしければ次回もゆっくり見ていってください♪