「……なるほど……竜之助を返して欲しいと。霊夢さんはそう仰られるわけですね?」
「はい。誠に勝手だとは重々理解しております。しかし、私は竜之助を返して……いえ、再び居候させたいと思っております」
場所は変わって、鷺ノ守宅。霊夢は記憶を取り戻してすぐに、竜之助のいる鷺ノ守のところに来ていたのである。そして、居間に案内され、霊夢側には、霊夢、魔理沙、文、慧音の四人。鷺ノ守達側は由美一人。このメンバーで話し合うことになった。(永琳とは神社で別れました)
「お気持ちはわかりますが、私達も譲れないものがあります。今まで子供ができなかった私達にやっとできた息子。預からせていただいた以上、そう簡単に引き渡すわけには行きません」
「それは……」
「あなたは、それでも私達から竜之助君を引き離すというので?」
「…………」
琢磨の言葉に、霊夢はなにも言えずに黙ってしまった。確かに、自分の身勝手な想いより、鷺ノ守の二人の方が理由としては強い。ただ、ここで身を引くわけにはいかなかった。
「……引き離すことはしたくはありません。ただ、私も少しの間ですが、竜之助を預からせていただいた身。竜之助のことを想う気持ちはあなた達に負けるつもりはありません」
「お、おい、霊夢。それは言い過ぎじゃ……」
「いえ、いいのですよ。えっと……白黒さん。話し合いというのは、はっきり言い合ってこそ意味があるのですから」
魔理沙が思わず止めに入ったのを、由美はあっさりと受け流した。
「……白黒……」
「コホン、それに、私は竜之助が居なくなったら、また一人になってしまいます。一人の生活はもうしたくは無いと思います。もちろん、竜之助の意思を第一前提としますが、竜之助さえよければ、また博麗神社で一緒に暮らしたいと思っております」
魔理沙が白黒と言われ、若干落ち込んでいるのを尻目に、霊夢は話を続けた。
「なるほど。確かにあなたの理由はわかりました。ただ、私達もやはり、譲れません。お引き取り願います」
由美は目を閉じ、これ以上話すことは無いと言ったような態度を取った。
「あやや、それはまた随分と身勝手ですね。竜之助さんを引き取った身であるといえ、竜之助さんの意思も聞かずに、それをあなたに決定する権利はあるのでしょうか?私はないとは思いますが」
「そうですね。これについては確かに私もそう思います。鷺ノ守さん。あなたはこんな風に物事を急いで決めていくような人じゃなかったはずです。何かあったのですか?」
文と慧音が揃って口を開く。しかし、由美は目を閉じたまま、口を開くことはなかった。
「……だんまりか。困ったな」
「いったいどうしたというのです。何かあったのでしたら、言ってくだされば……」
「……おや? みなさん、今何か聞こえませんでしたか?」
魔理沙と慧音の言葉を遮り、文が言葉を漏らす。
「声? 私にはなにも聞こえなかったが……天狗の聴力ってすごいんだな」
「文、魔理沙、今はちゃんとした話し合いの場よ。しっかりと集中して……」
「……これは……男性の声? それも子供の……竜之助さん……?」
「竜之助⁉︎ 文、それはいったい……⁉︎」
「行かせない‼︎ あの子の元へは行かせない‼︎」
霊夢が声を出した瞬間、由美は目を見開き、霊夢に向かって飛びついた。
「なっ、由美さん⁉︎」
「くっ……霊夢‼︎」
魔理沙は咄嗟に霊夢を突き飛ばし、由美を組み合う形を取った。
「魔理沙‼︎」
「霊夢‼︎ 竜之助のところに向かえ‼︎ この様子だとなんだかよくわからんがマズイ気がする‼︎ 私のことはいいから、さっさと行け‼︎ 文は霊夢を案内して、慧音は私を手伝え‼︎」
「っ……わかった‼︎ 文、案内して‼︎」
「り、了解です‼︎ こっちです‼︎」
魔理沙と慧音が由美を取り押さえている内に、文と霊夢は居間を飛び出した。
〜鷺ノ守宅から少し遠いところにある離れ〜
「…………」
「あ……ぐ……」
竜之助は、琢磨に暴力を受け、地面に押さえつけられていた。
「な、なんで……いきなりこんな……僕、何かしましたか……っ」
「……なにかした……だって……? そうだな……お前はなにもしてない。だが、私達はお前を殺しておかなければならない」
「ぐっ……僕を殺す……理由はなんですか……っ……」
「理由か。理由は……理由はなんだ……?」
「えっ……」
「理由……理由はいったい……」
琢磨は急に頭を押さえだし、狼狽し始めた。そこに
「竜之助‼︎」
霊夢がドアを蹴破るような勢いで飛び込んできた。霊夢は竜之助を見つけるや否や、竜之助に近づき抱きかかえた。
「霊……夢……なんでここに……」
「竜之助‼︎ しっかりしなさい‼︎ よくも、竜之助を……‼︎」
霊夢は竜之助を抱きかかえたまま、琢磨を睨みつけた。
「くっ……邪魔を……するなぁ‼︎」
琢磨は懐から刃物を取り出し、霊夢と竜之助に向けて襲いかかった。
風符「風神一扇」‼︎
その直後、霊夢の開けたドアから突風が流れ、琢磨を吹き飛ばし、壁に打ち付けた。
「ふぅ、なんとか間に合いましたね。霊夢さん、私を置いていくってどんなスピードしてるんですかあなたは」
文は苦笑を交えた顔をしながらドアから入ってきた。
「あんたが遅いのよ。あんたが……じゃなくて、竜之助、大丈夫⁉︎」
「あ、うん……打撲程度だからなんとか」
竜之助は霊夢に抱えられながらも頷いた。
「よかった……本当によかった……」
霊夢は竜之助を抱きしめたままそう呟いた。
「えっと……霊夢と文さんはなんでここにいるんですか……?」
「えっとですねぇ、本当ならもっと穏便かつ平和的な交渉をするつもりでここに来たのですが……」
「……竜之助、私はあなたに謝らないといけないわ」
「僕に、謝る?」
「ええ、あのとき、あなたと離れた方がいいなんて言ってごめんなさい。私は、まだあなたと一緒にいたい。あなたとあの神社で暮らしていきたい。もしよかったらだけど……また、神社で一緒に暮らして行かない……?」
「……ありがとう、霊夢。僕も霊夢と暮らしていきたいな」
竜之助はニコリと微笑みながら頷いた。
「私の方こそ、ありがとう。私を許してくれて」
霊夢も竜之助を見つめ、ニコリと微笑み返した。
「……えーっと、コホン、とりあえず、この人気絶しちゃいましたけど、どうしましょう?」
文は琢磨に近寄り、様子を見ながら言った。
「どうするって言われても……」
と、そのとき
「霊夢‼︎ 無事か‼︎」
開いたドアから魔理沙が入ってきた。
「え、ええ。私は……あなた達、随分早かったわね。由美さんは……?」
「それが、霊夢が居なくなった瞬間、プツリと糸が切れたみたく気を失ったんだ。私は慧音にその場を任せてこっちに来たが……同じような状況なのか?」
「こっちは文が吹っ飛ばしたからそうだけど……気になるわね……」
「あやや、とりあえず、この人は私が慧音さんのところまで運んでおきますから、お二人は今日はお帰りください。竜之助さんがここにいるとまた襲われるやも知れませんし」
文は琢磨を背負いながらそう言った。
「ん……わかったわ。竜之助、今日は帰ってもう休みましょう?」
「あ、うん。わかった」
「それじゃあ魔理沙、文、詳しいことはまた後日聞くことにするわ」
「おう、ゆっくり休めよ」
「はい、お気をつけて」
そう二人に言われ、霊夢は竜之助を抱えながら、その場を飛び去った。
「……失敗ね……まさか記憶を取り戻すなんて……早く次の手を考えないと……」
その様子を見ていたスキマが静かに閉じたのには、誰も気がつかなかった。
はい、ということで、なんだかすごく長くなってしまいましたが無事に第一章終了でございます。まぁ、この後も第一章は一話だけ続きますが……まぁ、はい。よろしくお願いします。さて、ここまで読んでいただきありがとうございます♪次回もよかったらゆっくり見て行ってください♪