竜之助と大妖精の2人だけが出席した寺子屋があった次の日、博麗神社ではいつも通りの朝が迎えられていた。
「それじゃあ霊夢、行ってきます」
「なるべく遅くならないように帰ってくるのよ」
「はーい」
竜之助は玄関で草履を履き、鞄を背負い、霊夢に声をかけて寺子屋へと向かった。
「さて、竜之助も行った事だし、私は私のやる事をやらないと……」
霊夢はそう言いながら一度居間に戻り、買い物用の籠と財布を持って外に出た。外は太陽が高く昇っていて、絶好の散歩日和と言っても過言ではないほどだ。
「いい天気ねぇ。こういう日はさっさと帰って居間でゴロゴロするに限るわ」
散歩日和という言葉をどこかに忘れてきたかのように、霊夢は当たり前だというようにそう口にして人里に向かった。
「いらっしゃいいらっしゃい‼︎ 今日は安くしておくよー‼︎」
「どうだい奥さん。この魚、生きがいいと思わないかい?」
「さー、今から特売だよ特売‼︎ 今買わないと損するよー‼︎」
霊夢が人里に着くと、いつも通りの賑わいが人里に溢れかえっていた。
「相変わらず元気だこと……ま、いいことなんだけどね」
霊夢がそう呟くと、店の主人の一人が声をかけてきた。前に話したことのある肉屋の店主だった。
「おや、霊夢さん。今日は竜之助君は一緒じゃあないのかい?」
「今はあの子は慧音の寺子屋で勉強中よ」
「ほほー、偉いねぇ。最近の子供は遊んでばっかりだけど、竜之助君はちゃんと真面目に勉強もしてるんだとか」
「一度やると決めたらやる子なのよね。毎回毎回言われなくても予習復習っていうの? それして寺子屋に行ってるみたいだし」
「なるほどなぁ。おっといけね、そういう話題もいいが、今はこっちだな。いらっしゃい、何か買いに来たのかい?」
「ええ。また牛肉をいただけるかしら」
「はいよっと。竜之助君と二人分だね?」
「正解。オマケして四人分とかにしてくれてもいいわ」
「あはは、そいつは残念。ウチには非礼は時々あってもオマケは持ち合わせてねぇもんで」
「あら、残念」
霊夢と店の店主は顔を見合わせて苦笑を浮かべる。
「それにしてもまた牛肉だなんて、何かあったんですかい? 今のご時世少しばかり高価なもんでしょうに」
「竜之助が前に食べたときに美味しいって言ってたからね。たまにはまた食べさせてあげようって思っただけよ」
「なるほどなぁ。博麗の巫女さんは優しいこって」
「そう思うならオマケしてくれる?」
「はいよ、二人前お待ちどうさま」
「はいはい、どうもありがとう」
霊夢の言葉を遮るように、店の主人は霊夢に二人分の肉が入った袋を渡す。霊夢は少し残念そうにその肉の入った袋を受け取った。そこに、
「た、大変だー‼︎ 妖怪、妖怪が出たぞー‼︎」
突如としてそう叫ぶ男性の声が辺りに響く。それを聞き、最初はシンッとし、しかしすぐさま騒ぎが起こり、人々は混乱したように声を上げはじめる。
「お、落ち着きなさいあなた達‼︎ 私がいるから大丈夫よ‼︎ ちょっとそこのあなた、妖怪っていうのはどんな妖怪で何したのよ‼︎」
霊夢がパニックになっている人々に声をかけながら、最初に声をあげて妖怪がいると知らせに来た人に近づいて尋ねた。
「え、えっと.なんていうか普通の妖怪とは言えなくて……と、遠くから軽く見かけただけなんだけど、ゾワゾワっとしてて嫌な感じがして……」
男は慌てているのか、それとも混乱しているのか、要領の得ない風に話をし、霊夢にはその妖怪に対して何も理解できなかった。
「あぁもう、わかったわ。それでその妖怪はどこにいるの?」
「あ、あっちの草原に……」
男は指を震わせながら人里の入り口の方向を指差す。そこからでは何もわからないが、少し進めばきっとその妖怪がいるのだろう。
「わかったわ。人里の皆さん、今から私が様子を見てくるので、家に入り、決して部屋から出ないようにお願いします。……あ、お肉預かっててもらえるかしら?」
「え? あ、は、はい……」
霊夢は人々にそう声をかけながら、妖怪がいると声をあげていた男性に買った肉を預け、指が指された方向へと勢いよく飛んでいく。
「まったく……こんなにいい天気だっていうのに、なんで妖怪なんか出るのかしら……早い所済ませないと……」
霊夢がそう呟いた直後、禍々しい妖力を感じ取り、思わず少しビクリと震える。
「この感じ……あの狐のやつと似てる……? なら、油断は出来なそうかしらね……」
霊夢は数ヶ月前にあった狐のような妖怪のことを思い出し、頭を軽く振るう。そこには先ほどまでのような怠けた様子はなく、真剣な瞳が前を見据えていた。そうして少し飛んでいくと、人里から離れた場所にある草原にたどり着く。草原の中央とも言える位置に、その妖怪が居座っていた。
妖怪の容姿は緑色で四本足で立ち、獅子のような鬣を持ち合わせ、棘がついている尻尾をたなびかせ、白く透き通るような二枚の羽をつけていた。
「……あんたが騒がれてた妖怪? みんなが迷惑してるの。悪いんだけど、何もしてなかったとしても問答無用で退治されてくれないかしら?」
そう軽口を叩くように言いながらお祓い棒を取り出して妖怪に向けた。霊夢はそう言いながらも気は抜いてはいない。以前の狐の妖怪どうこうではなく、博麗の巫女としての勘が、そう告げていた。
「……ガルルルル……」
獣はそう低く唸ると二枚の羽を羽ばたかせ、霊夢に向けていきなり突進してきた。
「っ……⁉︎」
霊夢は咄嗟に上に飛び上がり、その突進をかわした。獣は霊夢が先ほどまでいた場所に爪を振り下ろし、地面にクレーターを作る。
「やっぱり前と同じで、殺す気でかかってきてるわね……なんだっていうのよまったく、今の幻想郷ではスペルカードで決まるっていうのに……」
獣の攻撃に冷や汗を垂らしながらも霊夢はそう呟く。するとそこに、
「おい、霊夢。無事か⁉︎」
「助太刀に来たぞ‼︎」
寺子屋がある方角から二人分の声が聞こえ、振り返るとそこには寺子屋の教師である、上白沢慧音に、その友人である、藤原妹紅がこちらに向かってきていた。
「あ、あんたたちどうして……」
「先ほど、人里で妖怪が出たという騒動を聞いてな。たまたま里に来ていた妹紅が私のところに来て、事情を伝えてここに来たんだ。生徒たちは危ないから寺子屋に残して来ているが……ん……?」
慧音はそこで言葉を遮り、獣の方に目を向けた。
「へー、あいつが噂の……見たことないね。それにあの攻撃、弾幕使ってないけど、どうなってるの、博麗の巫女さん」
「私の方が聞きたいわよ。何がどうなってるのか。何か知ってる? 慧音……って、知るわけないわよね」
霊夢はそう言いながらチラッと慧音の方に目を向ける。すると慧音は信じられないものを見るように、その獣をジッと見つめ、顔を青ざめ、カタカタと体を震わせていた。
「け、慧音? 大丈夫か? そんなに怖いのなら無理しなくても……」
「……なのか……?」
妹紅の問いに答えるわけでもなく、ただポツリと、その獣に向けて声を漏らす。
「え? 今何を?」
「……精、なのか……?」
「慧音……?」
霊夢は不思議そうに慧音を見つめる。慧音は意を決したように、なんとか言葉を紡ぎ出す。
「……あの獣は……大妖精……なのか……?」
「…………え……?」
慧音がそう呟くのを確かに聞いた霊夢は、言葉を頭の中で巡回させる。
獣は何も言葉を発するわけでもなく、透き通って見えるほどの綺麗な羽を羽ばたかせ、三人の様子をジッと見つめていた。
はい、ということでね、久しぶりに投稿ですよ投稿。かこうと思うとどうもなんか書けなくて……まぁ、遅れました(苦笑
それでまぁ、本編の方ですが、慧音さんはいきなり何を言い出すのかと。まぁそうおもいますよね。えぇ。とりあえず、詳しいことは次回に言うつもりではいるので、もしよろしければ次回もよろしくお願いします♪