「ただいまー」
霊夢は人里から帰って来て、博麗神社の玄関を開けた。
「(……ただいま……か……)」
今まであまり口にしたことのない言葉に思わず苦笑しつつも中に上がり居間にいく。しかし、そこには寝ているはずの竜之助の姿はどこにも見当たらなかった。
「あれ……? あの子はどこに……」
そう思っていると、台所から香ばしい香りが漂って来た。
「……まさか……」
霊夢は仮説を一つ立てながら台所に向かった。そこでは案の定台所で料理をしていた竜之助の姿があった。
「うーん……もうちょっと塩を入れてみるかな……でも、この塩の残量を見るとあんまり無駄遣いできなそうだし……」
「別に使っていいわよ」
「ひゃぁっ⁉︎」
霊夢がいたことにすら気づかなかったのか、変な奇声を上げながら思わず手にしていた箸を落としそうになりながらも驚く竜之助。
「れれ、霊夢さん⁉︎ いつの間に⁉︎」
「ほんのついさっきよ。ただいまって言ったの聞こえなかったかしら?」
「あー……すいません。聞こえてませんでした」
竜之助は苦笑しながら料理を続ける。時刻は昼の12:00を過ぎたぐらい。確かにお腹が空く時間帯だった。
「あなた、料理できたのね。なんだか意外だわ」
「一応簡単な家事全般は出来ると思いますよ。家に居たときの習慣でしたから」
明るく笑顔で話す竜之助だが、その顔には何処か曇りがさしたような表情が見えたように霊夢は感じた。
「(……無理もないか……家族や村の人達がもうこの世に居ないだろうということを知りながら気丈には振る舞えないわよね……)」
霊夢は内心そう思いながら竜之助の後ろ姿を眺めていた。
「あともう少しで出来るので、ゆっくりくつろいでいてください。そちらに持って行きますから」
「ん……分かったわ」
霊夢はそう答えると居間に戻ってコタツに座り込んだ。少し経つと、御盆に食事を乗せた竜之助が台所から出てきた。
「勝手に料理しててすいませんでした……僕のために動いてくれてる霊夢さんに少しでも恩返しがしたくて……」
そう言いながら竜之助は御盆をコタツの上に置いた。焼き魚に味噌汁、ご飯といったごく一般的な食事だ。
「別に迷惑なんて思ってないわよ。むしろ作る手間が省けてありがたいわ」
「そ、そうですか……良かったです……」
竜之助は安堵したような表情を浮かべる。
「とにかく食べましょ? 冷めたら勿体無いわ」
「そ、そうですね」
そう言いながら霊夢は箸で焼き魚を切り、口に入れた。
「……美味しい……」
ぼそりと霊夢は呟いた
「あ、ありがとうございます‼︎」
ニコリと笑って自分も食べ進める竜之助。
「(これほどの料理を食べれるならやっぱりここに置いても問題ないわね……)」
もぐもぐと口を動かしながら考える霊夢。
「あ、そ、そうだ。結局僕の住むところ……どうなりました?」
恐る恐るといった感じで竜之助が尋ねて来た
「心配することないわ。ちゃんと決まったから」
「そ、そうですか……そ、それで僕はどこに?」
「ここよ、ここ」
「………………………………えっ?」
竜之助はご飯を食べようとしながらそのまま固まった。
「す、すいません……どことおっしゃいました?」
「だから、ここよここ。博麗神社」
「……………………あ、あの……まだよく理解が……」
「めんどくさいから説明は省くけど、あんたは今日からしばらくの間ここに住む。以上」
そう言いながら眈々と食事を進める霊夢。
「……め、迷惑じゃないのですか……?」
「最初はそう思ったけど、こういう食事を作ってくれそうだし、損は無さそうだから良しとするわ」
「……ありがとう……ございます……」
「その代わり、しっかりと働いてよ?」
「もちろんです‼︎誠心誠意お手伝いさせていただきます‼︎」
竜之助はニコリと微笑むが、霊夢は一つ疑問に思うことがあった。
「……あんた、今何歳?」
「えっ? 12歳ですけど……?」
「私よりも年下じゃない。敬語なんて気を使わなくていいわ」
「で、でも、お世話になりますし……」
「これからしばらくの間一緒に住むのに、ずっと敬語なんて使われてたらこっちが肩が凝っちゃうわ。だから今から私に対しては敬語禁止。いいわね?」
「……わ、わかったよ。霊夢。これからよろしくね」
「ええ。それでいいわ。さ、早く食べちゃいましょ」
「は、はい‼︎あっ……う、うん」
敬語であったことを訂正したことに苦笑しつつ、久しぶりに他の人が作った料理を楽しみながら食べ進める霊夢であった。
ふー、お疲れ様でした♪かくして博麗神社に住むことに決まった竜之助。ここからいったいどのような生活が繰り広げられていくのでしょうか。良かったら次回もゆっくりして行ってね♪