透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
ハナコさんの探偵化が進んでしまい申し訳ございません。
マジでコナンかしかねん。
高杉……あんな行動するほどでしゃばらないと思うけどて…二次創作だしいいよね。
ハナコは、静かに口を開いた。
「みなさん、どうやら全員揃ったようですね」
その場には、桂とエリザベスを除いた補習授業部の面々、そしてティーパーティーからは聖園ミカと桐藤ナギサが顔を揃えていた。場所は当初、期末試験が行われるはずだった広間。だが、今そこに学びの雰囲気は微塵もなく、ただ張り詰めた空気だけが漂っている。
ミカがひょいとナギサの袖を引いた。
「ねぇ、ねぇナギちゃん? 今から何があるの?何か楽しいこと?」
ナギサはわずかに眉をひそめ、鋭い視線を広間に走らせた。
「聞いた話によると……“トリニティーの裏切り者”が判明したので、その説明をすると連絡がありましたが……」
静かに、銀時の方を向く。
「本当なんですよね? 先生」
銀時は頭を掻きながら、あっけらかんと指を差した。
「いやぁ……俺は“そう言え”って言われただけで〜。詳しくはそこの露出狂にでも聞いてくれや」
場の視線が、一斉にハナコに集まる。
ナギサの目もまた、無言の圧を帯びてハナコへと注がれていた。
だが――。
ハナコは一歩前へ出ると、眼鏡を軽く押し上げて言った。
「それじゃあ、始めましょうか」
微笑を浮かべながら、その瞳だけが鋭く冷たい。
「ナギサちゃんが警戒している、“エデン条約を転覆させようとしているトリニティーの裏切り者”は――」
「この中にいます!!」
その瞬間、場が凍りつく。
空気が軋む音が聞こえるような張り詰めた緊張の中で、顔、顔、顔――まるで推理劇の演出のように、居合わせた全員の表情がアップで切り取られる。驚愕、疑念、怯え、そして沈黙。
銀時は横で小声を漏らす。
「ねぇ、いつからこの小説は推理小説ものになったの?これじゃあアレだよ。メガネをかけた生臭ボウズの探偵アニメ、いや、いつも赤点なのにこう言う時だけ頭が冴えるじっちゃんの孫のアニメ劣化版一直線なんだけど!?」
ヒフミも、そっと肩を寄せながら応じる。
「しっ!……仕方ないじゃないですか……こうでもしなきゃ、私たちずっと疑われっぱなしで、お祓い箱行きになっちゃうんですから」
そして小さく、肩をすくめるように呟いた。
「それに……なぜかハナコさん、とても生き生きしてますし……」
ヒフミが目を向けた先では目をキラキラさせながら話すハナコの姿があった。
コハルも、頭を抱えるように小声で続けた。
「……本業、探偵じゃなかったよね?」
ナギサは一つ、深く息を吐いた。
「……なるほど。つまり、補習授業部のメンバーの中に……裏切り者がいた、というわけですね」
その瞳が、そっとアズサに向けられる。
アズサの肩が、ぴくりと揺れる。
ハナコは、一拍置いて言葉を続けた。
「ナギサちゃんがなぜ、トリニティー内に裏切り者がいると考えたのか――その理由は明白です」
「それは……ティーパーティーの実質的なリーダー、“百合園セイア”が――殺害されたからです」
その場の空気が、一瞬で変わる。
「……!」
ヒフミとコハルの表情から血の気が引いた。
ヒフミは震える声で問う。
「セ、セイア様って……今、ナギサ様が代理でなされているホストの……!?」
コハルも唖然としたまま、続ける。
「え……え!? 嘘でしょ!? そんな大事件、正義実現委員会だって報告を受けてない……何かの間違いじゃ……!」
ハナコは静かに、しかし確信を帯びて言った。
「おそらく、“話せなかった”のでしょうね。混乱を避けるために」
「ティーパーティーの中枢――その象徴たるホスト、セイアさんが殺害されたとあれば、エデン条約によってもたらされた秩序の最後の柱すら失われかねない。だからこそ、ティーパーティー内部でも極秘にされた」
言葉は抑制されながらも、一言一言が重く、刃のように場を切り裂いていく。
――これは、ただの事件ではない。
“エデン条約”の崩壊の引き金。そして、その渦中に“生徒”たちが巻き込まれているという、現実。
の声が、広間の空気を切り裂くように響く。
「……この事件が起きたとき、ナギサちゃんは、おそらくこう考えたのでしょう。この殺害は“エデン条約反対派”がティーパーティーを狙って起こしたもの。このままでは、自分の命も危ういと」
場が静まり返る。
ヒフミが、そっとナギサを見る。
「ナギサ様……?」
ナギサは一つ頷くと、わずかに視線を落とし、再び鋭く顔を上げる。
「流石、第一学年時にティーパーティーの席が決まっていただけのことはあるようですね……その通りです」
言葉は冷静ながらも、感情の芯が揺れていた。
「私は、セイアさんが殺害されたことに――強い危機感を抱きました。このままでは、ゲヘナとの友好の象徴である“エデン条約”が崩れ、ゲヘナとの関係性も……更に悪化しかねないと」
その思いを代弁するかのように、銀時がぼそりと呟く。
「なるほど〜だから、疑わしい奴らを一箇所に集めた“補習授業部”を作ったわけだな」
「……えぇ」
ナギサの答えは短く、だがその重みが全てを語っていた。
そこで、ハナコが静かに言葉を継ぐ。
「でも、ナギサちゃん。この事件、あなたの知らない“もう一つの学園”が関わっていたんですよ」
「……?」
ナギサの目がわずかに揺れる。
ハナコの声音は変わらず、しかし明確な意図を持って進む。
「ナギサちゃんの推理――“トリニティーの中に裏切り者がいて、そいつがセイアさんを殺害した”という仮説。それ自体に、矛盾があるんです」
「矛盾……?」
「あなたたち、ティーパーティーの警備は常に最高レベルで配備されていますよね?」
ナギサは頷く。
「もちろんです。ティーパーティーは、トリニティーの“要”ですから」
隣でミカがにっこりと笑う。
「何かあったら、すっごく面倒だもんねー」
その軽さに対し、ハナコの言葉は鋭く重なった。
「そんな厳重な警備を突破して、“ホスト”である百合園セイアさんを狙える生徒なんて、普通じゃありえない」
「つまり、“ただの反対派”や“反乱分子”には不可能」
「ならば必要なのは――“訓練された戦闘力”。潜入戦やゲリラ戦を熟知し、トリニティーを陥れるためなら命さえ厭わぬほど恨んでいる存在」
「……アリウス生徒、ということですか」
ナギサが、目を見開いた。
ハナコの声は、まるで絞首台のロープのようにじわじわと締め上げる。
「そうです。恨みとともに育てられ、戦場で鍛えられたアリウス生徒であれば――躊躇うことなく、任務を遂行するでしょう」
「そして侵入するには、偽装された入学手続きを使う……そう、“表”からトリニティーに潜り込むにはそれしかない」
ナギサが、はっと息を呑んだ。
「となると……白洲アズサ! やっぱりあなたが……!」
だが――ハナコは、首を横に振った。
「いいえ、違います」
「……なぜですか?」
ナギサの声がかすれる。
ハナコは一瞬沈黙した後、理詰めで語る。
「考えてみてください。確かにアズサさんがアリウスの刺客だったとして、こんな公の場でバラされるようなリスクを犯すでしょうか?」
「それに、どれだけ戦闘力があろうと、トリニティーの要であるティーパーティーを襲うには……“内通者からの情報”が不可欠」
「内部の構造、警備のローテーション、セイアさんの動き――それらを提供できる人物が必要なんです」
ナギサの顔から、色が引いていく。
「……まさか……」
ヒフミの呟きが漏れる。
コハルが小さく震えながら口を開いた。
「う、うそでしょ……?」
銀時の視線は、ただ静かに一人の少女を見つめていた。
ハナコの視線が、その人物へと真っすぐに向けられる。
「――そう。“百合園セイア”さん殺害の真の黒幕」
「アリウスと手を結び、エデン条約を転覆させようとした“裏切り者”は」
「――聖園ミカさん、あなたです」
ミカは一瞬、笑顔のまま静止した。
「……アハハ、ハナコちゃん。冗談はよしてよ」
口調は軽く、顔は笑っている。しかし、その声には一瞬の揺らぎがあった。
「私はティーパーティーの一員だよ? なんで友達のセイアちゃんを殺してまで、そんなことしないといけないの?」
ナギサが慌てて叫ぶ。
「そ、その通りです! ミカさんは、確かにセイアさんとよく喧嘩していましたが……でも、殺すほど恨んでいたというわけでは……!」
だが。
ハナコはゆっくりと、静かに首を振った。
「――そう“殺すつもり”なんて、なかったんですよ」
「……え?」
ナギサの声が震えた。広間に再び、氷のような沈黙が落ちた。
ハナコが一歩前に出る。冷ややかだが、情のこもった声。
「まぁ、それは後ほど詳しく話しますが……」
「ミカさん。あなたは確かに、ティーパーティーの一員です。けれど――“政治的な立場”という観点で言えば、その三人の中で最も弱い」
その言葉に、ミカの表情が一瞬だけ陰る。
「エデン条約を“転覆”させようとする者たちにとって……あるいは、“乗っ取ろう”とする者にとって、最大の障害となる人物は――」
ナギサがぽつりと呟く。
「セイアさん……」
「そうです」
ハナコの声が、確信に変わっていく。
「おそらく当初の計画は、“致命傷ではない怪我”を負わせることでした。条約が締結されるまで、セイアさんを“動けなく”しておく。それが目的だったはずです」
「でも、アリウス側との思惑の違いが生まれた。あなたは“傷を負わせる”つもりだった。けれど――アリウスは、“殺す”つもりでいた」
「彼女たちは、“過去の因縁”から。セイアさんを“敵”と見なしていた。だから強行手段に出てしまったんです」
静まり返る室内。
コハルがそっとヒフミに寄り添いながら、困惑した声を漏らす。
「うぅ……全然話が分からないぃ……」
ヒフミは、瞳を伏せながら答える。
「つまり簡単に言うと、ミカ様は政治にあまり関心がない。だからこそ、“友好を結べば、アリウスも分かってくれる”と――そんな甘い考えで動いてしまったそう言うことですか?」
「その通りです」
ミカが、声を荒らげる。
「じゃあ!」
彼女は必死に、否定の言葉を紡ぐ。
「じゃあなんで、“政治に疎い私”が、“エデン条約”を転覆させようとするの!? それに……証拠は!? 証拠がなきゃ意味ないよ!」
「証拠を出してよ!!!」
その叫びを、静かに銀時が受け止めた。
「――証拠なら、あるさ」
ミカの目が、見開かれる。
「……え?」
銀時は無造作にミカのスカートの方を指差す。
「ほら、そこから鳴ってるぜ」
――ピッピッピッピッ
無機質な着信音が、静寂を切り裂くように鳴り響く。
ミカが恐る恐る取り出したスマートフォン。その画面に表示された発信者の名前は――アリウスの生徒。
「……うそ……なんで……」
「よぉヅラ〜。そっちはもう片付いたみてぇだな」
『ヅラじゃない桂だ』
『全く、数と威勢だけはいい奴らだったな』
『突然の事態にうまく対応もできていない。あれでは“将”としてやっていけんだろうな』
ミカの手が震える。
――桂の声。
そう、今ここにいない“桂とエリザベス”が、別働隊を壊滅させていたのだ。
ミカの顔から、色が失せていく。
「うそ……行動まで読まれて……」
そして、ハナコの声がトドメのように放たれる。
「さっき、“どうして私がエデン条約を転覆させようとするの?”と聞いていましたね?」
「答えは――“ゲヘナが憎いから”ですよね?」
ミカが息を呑む。目をそらす。
「ど、どうして分かったの?」
ハナコは容赦なく真実を突きつける。
「先生との留置所で話していたでしょう? 『パテル分派はゲヘナを嫌っている』『アリウスと仲が良かった』『派閥には腹黒い子が多くって』――あなたの“心の本音”です」
「ゲヘナが嫌い。だからこそ、ゲヘナと関係を持つ“エデン条約”が許せなかった」
「ナギサちゃんを攻撃させなかったのは、あなた自身が条約を進める力を持たないから。締結までは、“彼女”に仕事をしてもらう必要があった――そういうことですよね?」
そして、ハナコは最後に問う。
「……これでも、言い逃れをしますか? 聖園ミカさん」
室内は、まるで時が止まったかのような沈黙に包まれていた。
ナギサの唇が震え、声が掠れる。
「ミカさん……あなた……」
しかしその問いかけに、返ってきたのは乾いた笑いだった。
「そうだよ。私がトリニティーの裏切り者。真打登場ってやつ?」
ミカは肩をすくめ、茶目っ気のある笑みを浮かべる。けれど、その眼差しは氷のように冷たい。
「ハナコちゃんも先生もすごいね〜。まるで探偵みたいに、ひとつずつ真相を暴いてさ」
ナギサが再び言葉を紡ごうとした瞬間、ミカはふと目を細めた。
「あーあ、本当はね。こんな風になる前に――ナギちゃんを“始末”するつもりだったんだけど」
――チャキ。
軽い音とともに、ミカの手に握られていたのはサブマシンガン。
迷いのない指が引き金を引く。
乾いた銃声が木霊した。
ナギサ「!」
けれどその刹那、白い影がナギサを突き飛ばす。
ヒフミ「ナギサ様っ!!」
ふたりの身体が床に倒れ込む。ナギサの背に重なるように、ヒフミがその身を覆う。
「ヒフミさん……!」
「ご無事……ですか……?」
ミカはその光景を眺めながら、残念そうにため息をついた。
「もう、なんで邪魔するかな〜。でもね、次はちゃんと当てるよ?」
――再び響く銃声。
だがその瞬間、風を切るような音が響いた。
ドン。
金属と木がぶつかる鈍い音。銃弾は空中で跳ね返され、床に転がった。
視線の先に立っていたのは、一振りの木刀を携えた――侍。
銀髪の男が、無言のまま煙をくゆらせていた。
ミカの瞳がきらめく。
「わーお!反応して木刀で銃弾を弾いたの? やるぅ〜、本当にいたんだ、そういう人⭐︎」
銀時が、眉間を押さえながら呟く。
「お前……モサッとしてる割に、エグいことやってくれるな。逆に好きになりそうだよ、怖いもの見たさで」
「ふふっ、そう? じゃあさ、一緒に来ない? エデン条約を“乗っ取る”の。だったら、ずーっと一緒にいてあげるよ?」
銀時はゆっくりと背を向け、ナギサたちを守るように立つ。
「……悪いな。こっちはな、先に頼まれた仕事がある。そっちの依頼は――受けられねぇ」
ミカは肩をすくめて、言った。
「じゃあ、仕方ないね〜。みんな〜、出てきて〜」
まるで呼応するように、闇の中から黒い影がぞろぞろと現れる。
無機質なガスマスク。機関銃を構えた武装生徒たち。
その姿に、コハルが目を見開いた。
「ねぇ、あれって……!」
アズサが小さく呟く。
「……アリウス、だ」
ミカは笑いながら、腕を広げた。
「残念だったね〜。“アリウスの本隊”が向こうだけだと思った? ナギちゃんがここに来るって分かったからさ、ちゃんと“待ち伏せ”してたんだよ〜」
その時、前線の生徒の一人が口を開く。低く、命令の響きを孕んだ声。
「――アズサ、こっちに来い。これより、邪魔者を排除する」
アズサはしばらく沈黙したまま、じっと床を見つめる。
やがて、顔を上げる。揺れる瞳に、かすかな光が宿っていた。
「……ごめん。私はもう、そっちには戻らない。いや、戻りたくない」
沈黙。
その言葉は、銃声より重かった。
隊長格の生徒が、鋭く問う。
「……なぜ、裏切った」
アズサは、少しだけ微笑んだ。
「早く終わらせて、試験を受けなきゃいけないの」
「合格して……みんなと一緒にいたいから」
その声には、迷いがなかった。
一人の生徒が、苦しげに呟く。
「……隊長……」
けれど隊長は、一切の感情を排した声で命令を下す。
「任務を果たす。……構え」
全員が、一斉に銃を構えた。
銃口の向こうに、確かな殺意がある。
ハナコの声が静かに響いた。
「――万事休すですね〜」
銃口が、冷たく銀時たちを狙う。
ミカはつま先をひとつ上げ、くるりと軽やかに一回転して、優雅に言い放つ。
「先生、残念だけど……ここで、おしまいだね」
――その瞬間。
ドォォォォォン!!
轟音とともに、体育館の壁が粉々に吹き飛んだ。
破壊された壁の向こうから、立ち上る土煙。
そして、その中から現れたのは――
「ねぇ銀さん、ここで合ってますか? “キヴォトスのお姫様”とか抜かしてる不届きものがいるって話は――」
軽やかな声とともに、涼やかな瞳を光らせて現れたのは、一人の女傑。
ヒフミが目を丸くする。
「え……もしかして……」
コハルも震える指で指差す。
「あの時のーー!!」
「よぉ、遅かったな、初代ゴリラひーー」
「誰がゴリラ姫じゃァァァァァ!!」
お妙がものすごい勢いで銀時に飛び蹴りを喰らわす
ズドン!!!
銀時の視界が一瞬、真っ白になった。
お妙の飛び蹴りが銀時の顔面に炸裂し、彼の体がすごい勢いで回転しながら壁にぶつかる。
ぐるぐるぐるぐる、ドォン!!
綺麗な放物線と共に床にめり込む銀時。皆が手を合わせた。
「合掌……」
その様子を見ていたミカが、キラキラした目で手を叩いた。
「わぁーお! 一撃であそこまで吹っ飛ばすなんて……あなた、すごいね。本当にゴリラみたい」
お妙がふっと笑う。だが、次の瞬間、声のトーンが急降下する。
「そういうあなたこそ、“お姫様”とか言ってるけど……鏡、見たことある? どう見てもゴリラじゃない。巷じゃミカゴリラって言われてるのよ。知らないの?」
「その胸もドラミングするためのものなんでしょ?哀れよね〜女の魅力的な武器がそんなことのために使われるなんて……」
ミカの頬がピクついた。
「いやいや、あなたの方はドラミングするための胸もないただまな板じゃん⭐︎可愛げがなくて世界のメスゴリラたちが泣いちゃうよ?」
「アハハハハ!!」
ミカとお妙はたがいのディスリに笑って見せるが全然目が笑っていない。むしろ恐怖すら感じる。
ヒィィィン……!
その瞬間、教室の窓がピシッ……パリンッ!!
ヒビが走り、ひとつ砕け落ちた。
コハルは一歩下がって震える。
「ねぇ……ねぇこれ、別の意味でヤバくない!?」
アズサが腕を組み、深く頷く。
「うむ。これが……生態系の頂点に立つ者同士の会話か」
「絶ッッ対違う!!!」
地響きのような殺気が、ふたりの間に渦巻いていた。
お妙が、ゆっくりと足を踏み出す。
「あなた、さっきから誰に物を言っているのかしら?」
「私はすべての女性の上に立つ存在。いや、この世界、キヴォトスの頂点に立つもの」
「ひれ伏しなさい。私がキヴォトスの女王よ」
その声は、ドス黒く低く、聞く者の背筋を凍らせた。
だが、ミカは一歩も引かず、笑った。
「女王ねぇ……じゃあ、私はその座を奪うために下剋上を企む**“お姫様”**」
「よそ者は地面に這いつくばって天を見上げてればいいよ〜?」ニコッ
お妙の瞳に火が灯る。
「ありゃァァァァァ!!!」
ミカも叫ぶ。
「アハッ、無理無理ィィィ!!」
次の瞬間、ふたりは地を蹴った。
飛び上がり、拳を振りかざし――
ドォォォォォン!!!!
空間が砕けたかのような衝撃音。
そこにあったのは理屈も政治も戦略もない、ただの本能。
これはもうゴリラの縄張り争いである。
拳と拳が激突した瞬間、衝撃波が四方へと炸裂した。
圧縮された空気が爆ぜ、体育館の床に蜘蛛の巣状の亀裂が走る。
天井から吊るされた照明が激しく揺れ、金属の軋む音が響き渡る。
二人の女は宙を舞い、同時に着地。
床を陥没させるほどの勢いで地を踏みしめ、破片が弾け飛んだ。
次の瞬間、ミカが身体をひねりながら鋭い蹴りを放つ。
お妙はそれを受け止めるように片手腕で掴み、そのまま力任せに投げ飛ばした。
反動で跳ねたミカの身体が、宙を滑るように後方へ。
しかしその空中姿勢からすぐさま体勢を立て直し、落下の瞬間に地を蹴った。
その刹那、床をえぐるように加速したミカの拳が、お妙の頬をかすめる。
僅かなズレで命中を免れたお妙が腰をひねって回し蹴りを繰り出す。
空を切る一撃――しかし、次の瞬間には互いの拳が再び交錯する。
拳と拳。膝と膝。
繰り返される打撃の応酬に、空気が次第に重く、熱を帯びていく。
周囲のアリウス兵ですら、一歩後退した。
跳躍。踏み込み。回避。そして打撃。
もはや舞闘。否、獣の乱舞。
互いに一歩も譲らず、眼光は火花のようにぶつかり合う。
アリウス兵の隊列、その後方――
アリウス兵「隊長、あれは一体……」
アリウスの生徒(隊長)は眉を潜め、宙を裂くような戦闘の中心を見据えていた。
「……さぁな。我々は“ナギサ”の抹殺。そして、計画の最大の障害となりうる“坂田銀時”の排除を命じられた……だが」
天井の照明が軋むなか、拳が再び爆ぜる。
「まさか、あの銀髪の男を一撃で吹き飛ばす戦力がいるとは……まぁ、おかげで――」
その時、部下の声が遮る。
アリウス兵「隊長……その、銀時がいません……」
「なに……?」
次の瞬間――
「よぉ、戦闘中に仲良くおしゃべりとは……小学校の遠足の自由時間ですか〜?」
銀時の声が、耳元で囁くように響いた。
アリウスの生徒(隊長)「ッ!?」
『し、しまった!あの2人の戦闘に気をやりすぎた』
振り返る前に、音速を切り裂くような一振りが直撃。
「ずりゃァァァァァァァ!!」
轟音と共に吹き飛ぶアリウス兵。彼の身体が宙を舞い、地面に叩きつけられた。
ドサッ!
「先生!」
「テメェら!動けい!!」
ガシッとまた違うアリウスの生徒の頭を掴み集団で襲ってくるアリウスの生徒に投げつけた。
「自分より数が多い敵に勝つ方法ってのはなァ、敵が混乱してる時に――」
「勢いよく、叩き込んでやることだァァァ!!」
銀時の蹴りが風を裂き、アリウスの隊列が一気に崩れる。
――その頃、後方。
ハナコ「あらあら、賑やかになりそうですね〜♪」
微笑とともに制服を脱ぎ捨て、現れたのは鮮やかなビキニ姿。
コハル「……ちょっと。なにその登場方法、意味が分からな――」
一拍の間を置いて、笑みを浮かべる。
「……いや、いつもなら死刑にしたいところだけど、今回は……許してあげるわ!」
ライフルを手に、腰から手榴弾を引き抜いた。
ヒフミは震える手で拳銃を構えながらも、ナギサの前に立ちはだかる。
ヒフミ「わ、私は……ナギサ様をお守りします!」
アズサは愛銃を装備し、冷静に頷く。
アズサ「よし……行こう、みんな」
次の瞬間、戦場に咆哮が走った。
「ある名探偵がサッカーボールで敵を倒すなら――私はビーチボールで敵を倒す探偵です♪」
ハナコはそう言うと、片手に持ったカラフルなビーチボールをぐるりと回し、まるで軌道計算済みのスナイパーのように真一文字に放り投げた。
「イッてください⭐︎」
空気の塊とは思えない、ほど威力。
“ボンッ!”と空気を引き裂く音と共に、ビーチボールは敵兵の顔面を直撃。仰け反った敵はそのまま数メートル吹き飛び、他の兵士数名を巻き込んで壁に激突。
「な、なんで……ただのボールがあの威力でッ!」
ビーチボールがバウンドするたび、まるでボーリングのように敵をなぎ倒していく。
軽快な足取りで敵陣を駆け抜けながら、ハナコはまるで舞うように次のボールを手に取る。
「トラップは既に設置済み……あとは、狩るだけ」
アズサの足取りは軽く、舞うように宙を滑る。
壁を蹴って跳躍し、敵兵の頭上を飛び越えると、背後から不意に地雷が爆発する。
キン、と澄んだ音を残し、敵は吹き飛んだ。
その間にもアズサは細身のサブマシンガンを片手に、跳躍とともに正確な掃射を浴びせる。
敵兵が遮蔽物に隠れると同時に、設置済みのワイヤートラップが作動。バチッという音とともに、電撃が走る。
「数の暴力は……地の利で覆す」
鋭い視線のまま、アズサは全く無駄のない動きで戦場を縦横無尽に駆け巡った。
銀時は瓦礫を盾に、敵の銃弾を受け流す。
銃撃が止まない中、銀時は木刀を上に投げ敵の注意を逸らした。
「な、なんだ!?」
敵が木刀に顔取られている間に間合いに入ると同時に――銀時が敵の持っていた銃を奪って殴り
銃を構えた兵の手首を一撃で弾き飛ばし、蹴りで背後の敵を吹き飛ばす。
さらに一人を掴んで生身の盾とし、残弾を無駄撃ちさせたあと、そのまま敵兵を瓦礫へと叩きつけた。
乱戦の中でも、彼の動きは戦場の空気を読んだ職人技のように洗練されていた。
「ペロロ様……お願いします!」
ヒフミはそう言うと、ピカピカと光るホログラムを空中へ放った。
ふわふわと宙に浮かぶ“ペロロ様”に、敵兵たちの視線が一斉に集中する。
「……な、なんだあの生物!?狙撃対象か!?」「ま、待て!動くな!」
その隙を逃さず、コハルが手榴弾を投げる。
2人の連携に敵は手も足も出なかった。
戦闘時間――五分にも満たなかった。
けれど、それは永遠にも感じられる刹那だった。
焦げた硝煙が空気を黒く染め、足元には無数の空薬莢が転がり、壁には弾痕が無数の花のように咲き誇る。
さっきまで「体育館」と呼ばれていた空間は、いまや廃墟に近い。
最後のアリウス生徒が、静かに膝を折り、床に沈んだ。
それを見届けて、ヒフミが愛銃をそっと抱え直しながら、震える声で呟いた。
「か、勝った……?」
「――うん、全員、戦闘不能。」
アズサはなおも警戒を解かず、倒れた敵に銃口を向けたまま、短く頷いた。
倒れているのは二十名近いアリウスの兵士たち。だが、こちらに損害は一人もいない。
極限の緊張が静かにほどけていく中、安堵と勝利の色が少女たちの表情にゆっくりと浮かび始める。
「わ、私たち……生き残ったの……?」
「えぇ。私たちの、勝利です♡」
そう言ったハナコの声に、やがて誰からともなく笑みがこぼれ始める。
その時、銀時がふと視線を煙の向こうへ向けた。
「さて……あっちは?」
立ち込める煙が風に流れ、視界が開けていく。
そこにいたのは、膝をついた一人の少女――ミカだった。
額に汗を浮かべ、荒い息を吐きながらも、それでも立ち上がろうとしている。
ミカは顔を上げ、言った。
「うぅ……まだ、私は――」
その肩に、そっと手が置かれた。
「銀さん、これは“貸し”ですからね」
お妙が、肩越しに小さく笑っている。
「へいへい、わーってるよ……」
銀時が腰を上げ、ミカを正面から見据えた。
「ミカ、もういいだろ? テメェの馬鹿げた“人類補完計画”は終わった。これ以上、抗っても何も――」
「――何も、ない。」
ミカは小さく呟いた。けれど、その声は苦しげな微笑みと共に続く。
「でもね……私はもう止まれない。いや、“止まっちゃいけない”の。だって……」
その声が、震えた。
「友達を裏切って、挙げ句殺して……ついてきてくれた人たちや、信じてくれていた人を全部……裏切って……」
「今さら……今さらどんな顔して戻ればいいのさッ!!?」
声が裂けるような叫びだった。
その瞬間、全員の動きが止まった。
コハルも、ヒフミも、アズサも、お妙も、誰も何も言えなかった。
ミカの叫びは、あまりにも切実だったから。
だが、その静寂を、異質な気配が破った。
ミカの背後――黒い霧が立ち昇る。
空間そのものが裂けるように、そこから“何か”が滲み出ていた。
そして、聞き覚えのある低く冷たい声が響く。
「心配せずとも……死んだお友達と顔合わせできるようにしてやらぁ……」
「――地獄でな」
コハルが息を呑んだ。
「な、なにあれ……!」
ヒフミは、ペロロを抱えたまま言った。
「中に……誰か、いる……?」
ナギサが叫ぶ。「ミカさん!!」
ハナコが警告する。「そこから離れてください!!」
お妙も、ミカの腕を掴もうと駆け寄る。
「何をしてるの!?逃げないーーと」
だが、ミカは動かない。
その場から一歩も動かず、ただ静かに霧を見つめていた。
刹那――黒い霧の中から刃が閃く。
お妙がミカを引こうとする、その瞬間。
全員が、直感的に目を閉じた。
――だが、聞こえたのは“斬撃の音”ではなく、金属が交わる音だった。
ガキィィン!!
「……グヌヌ……」
目を開けると、そこには銀時がいた。
霧の中から飛び出した刃を、木刀で受け止めていた。
「銀さん……!」
お妙が息を呑む。
ミカが呟く。
「え……?」
銀時は歯を食いしばりながら、刃を握る手首を掴み――霧の中からその“存在”を引きずり出した。
「ウォォォォォ!!」
黒い霧を裂いて引きずり出されたそれは、どこか懐かしい、片目を隠しているあの男。
「まさか……先に地獄で待ってろって言った奴と、また会うことになるとはな」
「地獄めぐりはもう飽きたか?」
銀時の目が細められる。
その口から、かすれるように名前が落ちた。
「……高杉」
次回予告
高杉「銀時、お前はこの世界でもガキども先生ごっこしてるらしいな」
「言ったはずだ。俺はただ壊すだけだこの腐った世界…いや、この腐った輪廻を!!」
次回 何が起きたとしても目をつぶっていては何もできない
最終篇第一章に繋がる大事なことが少し明らかになるかも……お楽しみに
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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銀時
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新八
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神楽
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沖田
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土方
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山崎
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高杉
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桂
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定春
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エリザベス
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ホシノ
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シロコ
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ヒナ
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アコ
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ミカ
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ナギサ
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セイア
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ユウカ
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ノア
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近藤