透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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うーん、最後無理やり感半端ねぇ〜

今回は私念が含まれてますが気になさらず〜


第九十八訓 取り調べにはカツ丼でしょ!と思うけど実際は出せないらしい

「彼女が一体何をして――何を交わしたのかを……な」

 

 

 

近藤のその一言に、場がふたたびざわめいた。

 

サクラコの眉がひくつき、銀時は思わず額を押さえ、ハナコの顔には「また始まった」という呆れとも微笑ともつかない色が浮かぶ。

 

 

 

近藤

「まぁ口で説明するのも面倒だ。ここは銀魂らしく、回想で語るとしよう」

 

 

 

──そして、場面は自然に“あの日”へと遡る。

 

 

 

部屋には、冷たい鉄のような空気が漂っていた。取調室の照明は、どこか古く、白々とした明滅を繰り返している。

 

机を挟み、座るのはひとりの少女。

 

肩までの白髪、何を考えているのか窺わせない紅い瞳。補修授業部所属、白洲アズサ。

 

その横顔には、怒りも恐れも、焦燥もなかった。

まるで、ただ時間をやり過ごしているかのような――そんな静けさがあった。

 

 

 

近藤(回想内)

「白洲アズサ、補習授業部の生徒一人、ティーパーティーホスト・百合園セイア殺害未遂事件の重要参考人として、ここにいる」

 

 

 

背筋を伸ばしたまま彼はそう口にし、書類を机に置く。

 

「彼女は取り調べに対して黙秘を貫いており――」

 

 

 

その言葉通り、アズサは何も語らない。

それどころか、眼差し一つすら、こちらに向けようとしない。

 

 

 

「単独での戦闘能力は、あの桂にも認められるほど……奴はどんな拷問にも口を開かない、強い精神の持ち主だ」

 

 

 

背後で煙草をふかす男が一人。土方十四郎だった。

 

 

 

土方

「まったく……あの紅茶女、なんて面倒な仕事をよこしてくれやがったんだか」

 

 

 

近藤は軽く頷いた。

 

「確かに彼女は、補修授業部の一員として、万事屋と共にナギサちゃんの命を救った。だが――」

 

「それとこれは別の話だ。改めるべきものは、きちんと改めねばならん」

 

 

 

机の上、未記入の調書用紙に視線を落としながら彼は言う。

 

「間違いなく彼女は、事件当時の詳しい情報を握っている」

 

 

 

土方

「それを俺たちに……吐かせろと?」

 

 

 

近藤

「ああ、そういうことだ。……やれるかね?」

 

 

 

室内の空気が少しだけ重くなる。そのとき、不意に一歩前に出た男がいた。

 

 

 

沖田

「少なくとも、拷問で口を割らせるのは無理でしょう。見てくだせぇ――あのドM面」

 

 

 

彼が指さした先には――ペロロ様のぬいぐるみを抱き、目を細めるアズサの姿があった。

その顔は……どこかうっとりしている。

 

 

 

銀時(回想の外から)

「いや、それペロロ人形抱いて幸せそうな顔になってるだけだよね?誤解を招くような言い方はやめようか沖田くん?」

 

 

 

山崎

「……おそらくですが、あれは拷問の訓練を受けていますね」

 

「奴にとって痛みは拒むものではない。自ら望んで受け入れるものなんですよ」

 

 

 

銀時(回想の外から)

「ちょっとちょっと、それだと“ペロロ好きテロリスト=ドM”ってことになっちゃうでしょ!? 原作のキャラ崩壊、免れなくなるんだけど!?」

 

 

 

現実(回想外)では全力で抗議する銀時の声が響くが、回想は容赦なく続く。

 

 

 

近藤

「ふーむ……困ったものだ」

 

「だが、どうしたもんかね、トシ」

 

 

 

問いかけに応じるように、土方が前に出る。

タバコの煙を細く吐き出しながら、彼は言った。

 

 

 

土方

「取り調べっつーのはな、ただ責め立てるもんじゃねぇ」

 

「飴と鞭をうまく使い分けて、奴にとり入り、心の隙を作る。それがコツだ」

 

 

 

 

 

銀時「心の隙をつくというか、隙があるのお前らの頭のほうなんだけど!!隙間という隙間から倫理観が通り抜けてんだけど!!」

 

 

 

 

回想の外で、銀時の鋭すぎるツッコミが走る。だが、誰も彼の声に耳を貸す者はいなかった。

 

 

 

──静かに、取調室の照明がまた、明滅を繰り返す。

アズサの指が、膝の上でほんの少しだけ動いた。

けれど、その唇はまだ、開かれないままだった。

 

取調室の中。静謐な空気が漂っていた──はずだった。

 

だが、その沈黙を容赦なくぶち壊す者が一人いた。

 

 

 

山崎

「取り入るって……あんな薬中カバ、どうやったらお近づきになれるんですか」

 

 

 

唐突に、あまりに真剣な口調だった。

しかしその眼差しは、机の上に鎮座しているペロロ様人形に向けられている。

 

アズサではない。まるで彼女など眼中にないかのように。

 

 

 

山崎

「あのイッてる目に、謎のフォルム……全国のゆるキャラランキングでも一番人気がないに決まってますよ」

 

 

 

銀時(外から)

(いや絶対アズサのことじゃないだろコレ。ペロロ人形の話しかしてなよねコレ!!……ヤベェよヒフミが聞いたらたぶん殺到するぞ、いやマジで)

 

 

 

だが、山崎のペロロへの怨嗟はまだ止まらない。

 

 

 

山崎

「言うなれば、三年間同じクラスにいるのに、卒業まで一言も会話を交わさないレベルですよ」

 

 

 

その例えが何故そこまで切実なのかは、本人にしかわからない。

 

 

 

近藤

「大丈夫だ。卒業前なら、どんな嫌な奴でも、たとえば人のカバン(※作者の鞄)を勝手に漁ってまで、テストの点数をクラスのみんなにバラすような奴でも──まあ良い奴に見えてくるもんだ」

 

 

 

銀時(外から)

「いや何が大丈夫なんだよ!!」

 

「さりげなく作者のクラスメートの黒歴史を爆弾みたいに投下しないであげて!? しかもそれ、何から卒業する話になってんだよ!? 人か!? 人の持つ倫理観から卒業するんですか!?このヤロー!!」

 

 

 

その横で沖田は、悪戯っぽく口角を上げる。

 

 

 

 

 

 

 

「土方さん、今がチャンスですぜ。友達つくる三年間、机に突っ伏したまま青春(ブルーアーカイブ)終えるつもりですか?」

 

 

 

「やめろ。そこでタイトル回収するのやめろ」

 

土方は苦々しく口を開いた。

 

「というか俺を人生寂しく終わるタイプみたいに言うな」

 

 

 

「自分から話しかけないと友達なんてできませんよ。たとえば……身体測定とか、そういう――」

 

 

 

そこで、不意に次元の壁をぶち破って現れた声があった。

 

 

 

ハナコ(回想外)

「裸で語り合うイベントでこそ、密着し合って親交が深まるんですよ♡」

 

 

 

沖田の目が輝いた。

 

 

 

「その通り。『アレ?お前、ブリーフ派?』みたいなノリで言ってみなさいよ」

 

 

 

……なぜか彼は、回想外のハナコのセリフをそのまま流れで使って会話を続けていた。

 

 

 

ハナコ(外から)

「ちなみにブリーフ派はヤリ◯ンらしいですからね。マヨネーズ注入もし放題ですよ♡」

 

 

 

 

 

「誰がブリーフ派でヤリ◯ンだ!!」

 

しかし、その迫力も次の瞬間、間の抜けた声にかき消される。

 

 

 

「頑張って!! 勇気を出して!! トシ!!」

 

近藤が両拳を握りしめ、謎の応援モードに突入していた。

目には涙まで滲ませている。

 

 

 

「心の扉を!! ブリーフの扉を開いて、トシ!!」

 

沖田はなぜかピースサインを振り回しながら加勢。

完全に遊んでいた。

 

 

 

そこへさらに、異次元から透き通るような声が響いた。

 

 

 

「頑張って!! ピーやピーしてピーピー!! ピーの扉を開いて!! ピーしてくださいトシ!!」

 

ハナコだった。

回想という体裁などお構いなしに、場の空気を嬉々として乱しに来るあたり流石だった。

 

 

 

土方は額に青筋を浮かべ、ぎり、と奥歯を噛み締めた。

 

 

 

「……回想に無理やり入り込んできた野郎と協力プレイするのやめろ!!」

 

吐き出すように叫んだ後、疲労困憊といった顔で頭を抱える。

そこへ静かに付け加えた。

 

「というか面倒ごと俺に押し付けてんじゃねぇよ……」

 

 

 

ふと目を上げる。

 

「……山崎、お前が行け」

 

 

 

「い゛!!?」

 

短く悲鳴のような声を上げた山崎は、一歩後ずさる。

目を見開き、必死の抵抗の構えだ。

 

 

 

その様子を見て、銀時の声が回想の枠を破って飛んだ。

 

 

 

「結局お前も面倒ごと押し付けてんじゃん!! というかアレうちの子だよ!? どんだけ失礼なことしてるか分かってんのかゴラァ!!」

 

 

 

「お前、ブリーフ派だろ? 行け」

 

とどめを刺すように土方が冷然と告げた。

 

 

 

「いや、俺トランクス派なんですけど……」

 

山崎はか細い声で返す。だがそれが許される空気など、今の土方にはなかった。

 

 

 

「そんなんどっちでもいいんだよ。存在そのものがもっさりしてんだろ?」

 

バッサリ。情けもへったくれもない一刀両断。

 

 

 

銀時の声がさらにヒートアップする。

 

 

 

「もう見てらんねぇよ!! 部下に押し付けまくってるよ!! こんなんもう鬼の副長じゃないよ、逃げの副長だよ!! 威厳もクソも何も残らねぇよォォォ!!」

 

 

 

「いや、そもそも相手女子ですよ!? 下着について議論してる時点でーー!」

 

山崎が涙目で最後の抵抗を試みた。

 

 

 

ドカァ!!

 

次の瞬間、土方の手によって強引にドアの向こうへ放り出されていた。

 

 

 

閉まりかけるドアの隙間から最後に聞こえたのは、やけにテンションの高い近藤の声だった。

 

 

 

「開いて! ブリーフの扉を開いてザキーー!!」

 

 

 

ガチャ。

ドアは無情にも閉まった。

 

山崎は、重いため息をついた。

「……もう……なんだってんだよ……まったく……」

 

ぼやきながら、取り調べ室の椅子にカタリと腰を下ろす。

目の前には静かに座る少女――白洲アズサ。

その腕には、何とも言えぬフォルムのペロロ人形が抱きしめられていた。

澄んだ瞳がじっとこちらを見つめている。

 

 

 

「む、ようやく来たか」

アズサが静かに口を開いた。

「なんでも聞いてくれ……知っていることなら、なんでもーー」

 

 

 

バンッ!!

 

机を激しく叩き、山崎が立ち上がる。

 

 

 

「薬中カバコラァァァァァ!!!」

怒声が部屋中に響いた。

「お前はいつまでダンマリ決め込むつもりだァァァァ!! 警察なめるのも大概にしろよこのクソッタレがァァァァ!!!」

 

 

 

アズサは、静かに瞬きを一度。

「いや……聞いてくれたら、なんでもーー」

 

 

 

「こっちも暇じゃねぇんだよ!!」

机に再び拳を叩きつける。

「エデン条約、さっさと進めたいのに、いらん取り調べシーンが原作にあったからって必死に考えながら笑い取ろうと努力してんの!!」

 

「わかったらモタモタしくさってねーで、さっさと全部吐けこのカバァァァァ!!」

 

 

 

ーーそのやり取りを、回想の枠を超えて見ていた銀時が頭を抱えた。

「オイィィィィ!! 誰に向かって喋ってんのコイツゥゥゥ!!!」

 

画面に映るのは、無垢な目をしたペロロ人形。

アズサはそのペロロをぎゅっと抱きしめたまま、微動だにしていない。

 

 

 

「小説だから分からないと思うけど、画面いっぱいに映ってんのあの変なゆるキャラなんだけど!! ペロロ人形なんだけど!!」

 

 

 

そんな銀時の悲鳴など届いていない。

山崎はすでに別の方向へ暴走していた。

 

 

 

「俺だってさァ、ホントは鳴潮に原神、オープンワールドで遊びてーよ!!」

「ブルアカだって周年までに天井分の石を集めるまでやり込みてーんだよ!!」

 

拳を振り上げて叫ぶ姿は、もはや尋問官というより悩めるオタク青年そのものだった。

 

 

 

「でも今以上時間が増えると受験勉強がなくなるから仕方なく我慢してんだよぉぉぉ!!」

 

 

 

背後から近藤の声が小さく漏れた。

「オイ、なんかだんだんただの愚痴になってね?」

 

 

 

「ちくしょおオオオオ!!」

天を仰いで絶叫する山崎。

「俺もこち亀の秋本先生のように仕事が早くできればナァァァァァ!!!」

 

 

 

こんなが肘をついて呆れ顔で隣に目をやった。

「ねえ……何してんのアイツ。もう全然相手に向かってないんだけど。完全に自分に向かってるんだけど。」

 

 

 

それでも止まらない。

 

 

 

「熱血大陸見ましたァァァァ!!!」

「見た後メッチャ勉強できそうな気がして机に向かったけどやっぱ全然ダメだったァァァァ!!」

 

涙目で叫ぶ山崎。

「俺はあなたのようにはなれませんんんん!! ダメ人間ですゥゥゥゥゥ!!」

 

 

 

土方はため息をひとつ、深く吐いた。

「いや……知らねーから……」

 

机を軽く叩きながら、静かに言い放つ。

 

「いい加減にしろよ。ここは**"時代が遅れてる作者"の懺悔室**じゃねーんだよ。」

 

 

 

ーーその言葉に、山崎は一瞬だけ我に返った。

だが目の前のアズサは相変わらず無言のままペロロを抱き、じっとこちらを見つめていた。

静謐なその視線に、山崎の精神はもう一度大きく揺らぎそうだったーー。

 

 

その時だった。

不意に、取り調べ室の空気が変わる。

 

 

 

――テ〜テレレ〜 テ〜テレレ〜 テ〜テレレ〜

 

 

 

「!」

 

山崎の耳がビクリと震えた。

心の奥に、あの旋律が鋭く突き刺さる。

 

 

 

(これは……! 熱血大陸のテーマ曲、葉◯瀬太郎……!!)

 

なぜだ。なぜ今ここで。

 

視線を前に戻すと、目の前のペロロ人形――いや、アズサが、それを抱えたまま静かに口を動かしていた。

どう見ても腹話術でペロロが口ずさんでいるように見せかけている。

 

声は、間違いなくアズサのものだった。

 

 

 

「お前……」

 

言葉が自然と漏れ出す。

 

 

 

「確かに、お前はとんだダメ人間だ」

 

低く、それでいて澄んだ声が響く。

その声に、山崎の心臓が妙なリズムで跳ねた。

 

 

 

「な、何……!? お前みたいな子供に言われたくな……」

 

 

 

「勉強が捗らない、やる気がないことじゃない」

「ゴールという名の山の頂を仰ぎ見て、卑屈になっていることだ」

 

 

 

言葉の一つひとつが、まるで矢のように山崎の胸へ突き刺さる。

ペロロ人形がまるで賢者の相貌すら浮かべている錯覚すら覚えた。

 

 

 

「かがめばかがむほど、山頂は遠くなる」

「頂は己の卑小さを知るためにそびえ立っているのではない。ただ、目指すためにあるのだ」

 

「山道でかがんでいる暇があったら、ゆっくりでもいい、登るんだ」

 

 

 

ペロロが、いやアズサが淡々と紡ぐその言葉は、なぜかこの場に似つかわしくないほどの正論と熱意に満ちていた。

 

 

 

「秋本山は血を吐く思いで努力して出来た山だ」

「そうたやすく登れるはずもない。お前も血を吐く思いでも登るつもりでいけ」

 

「一歩ずつ、亀のような確かな足どりで。それでも頂には辿り着けないかもしれない、途中で力尽きてしまうかもしれない」

 

「だけど、そこから見える景色は、きっと今よりマシなものになっているはずだ」

 

 

 

「…………!」

 

山崎は言葉を失っていた。

拳は震え、涙すら滲みそうになる。

 

 

 

ーーその様子を、回想の外から見ていた銀時は、満面の汗顔で絶叫していた。

 

 

 

「超良いことォォォォォォォォ!! 超良いこと言ったァァァァァァァ!! この子ォォォォ!!」

 

「すごいんだけど! 遊んでばっかだったあの合宿で(ほとんどウチのせい)どうしたらそんな良いこと言えるまで成長したってんだよ!!」

 

 

 

その言葉に背中を押されるように、山崎はビシィと立ち上がった。

 

 

 

「ありがとうございました! 失礼しますッ!!」

 

ガチャ。

勢いよくドアを開け、部屋を飛び出す。

 

 

 

ドカァ!!

 

次の瞬間、別室にいた土方が怒りの形相で蹴りを食らわせた。

 

 

 

「お前、何しに行ったんだァァァ!!」

 

ボコボコボコボコ。容赦ない追撃の嵐。

 

 

 

「何でお前がアメとムチで絡め取られてんだよ!! 何でテメーがムチ打たれてんだよ!!」

 

「オメーが色々吐いてどうすんだよ!!」

 

 

 

山崎は蹴られつつも、なぜか満ち足りた顔で言い返した。

 

 

 

「いやでも……お近づきにはなれました……」

「DVD、焼いてもらいました。熱血大陸」

 

 

 

「完全にお前が取り入られてんだろ!!」

 

土方の怒号がさらに響く。

 

 

 

沖田がすっと顔を覗かせた。

「おっ、山崎。俺にも焼いてくれィ」

 

 

 

山崎は誇らしげに頷く。

「コレでいつでも優しい秋本先生が取材陣に『今一番怒っていることは何ですか!』って聞かれて、『取材が長いこと』って答えたレアカットがまた見れる……!」

 

 

 

土方は机に頭を打ちつけんばかりに叫んだ。

 

 

 

「オメーはどんな楽しみ方してんだァァァ!!」

 

「あの秋本先生がああ言うってことは、よっぽど長い取材だったんだよ!!」

 

「最後の取材陣を取材し返す、あくなき探究心の方をリピートして見ろ!! そっちが大事だろォォォ!!」

 

 

 

部屋には怒声と呆れ声、そしてどこか誇らしげな山崎の笑顔が満ちていた。

 

土方は大きく息を吐いた。

だがその吐息には怒りが混じっていた。

 

 

 

「山崎……お前は、奴におちょくられたんだよ」

 

冷えた声が部屋に落ちる。

 

「してはあんな薬中鳥に、説法なんざ説かれて丸めこまれやがって……情けねェ」

 

 

 

山崎はうなだれたまま、小さく肩を震わせていた。

しかし、そのポケットの中では今もDVDがホカホカのぬくもりを残している。

 

 

 

近藤はその様子を見て、静かに立ち上がった。

 

「やはり一筋縄ではいかん場のようだな……よし」

 

スッと前に出ると、きびすを返して宣言する。

 

 

 

「次は俺が行こう」

 

声には妙な自信と使命感がこもっていた。

 

 

 

「攻めるのは、もう充分なハズ。俺はアメで行く」

 

目を細め、拳を握る。

 

 

 

「……はぐれ刑事よろしくぅ〜」

 

 

 

ゴリラ刑事、人情派――そんなテロップが見える気すらした。

 

 「情をもってして奴を説き伏せてみせる」

 

土方がすかさず鋭く突っ込む。

 

「ゴリラ刑事って、ゴリラになってんだけど!!人から逸れてんだけど!」

 

 

 

近藤はその言葉すら意に介さない。

むしろ覚悟を決めた男の顔になっていた。

 

 

 

「課長、俺に何かあったら……娘たちのこと……頼む」

 

そう言いながらドアノブに手をかけ、意味深に土方の方を振り返る。

 

 

 

土方は眉間に深いシワを寄せる。

 

「……どこに課長と娘がいるんだ?」

 

 

 

だが近藤の芝居は止まらない。

 

「ケイン刑事……お前はアクション勉強する前に芝居を勉強しろ」

 

視線は沖田に向いた。

 

 

 

沖田は目を細めて言う。

 

 

 

「本当に……今どこにいるんだ……ケイン刑事………」

 

 

 

そこへハナコの声が、無邪気に回想の外から飛び込んできた。

 

「最後にテレビで見たのは……アレ? リポDのCM以外思い浮かばないですねぇ」

 

 

 

銀時の乾いた声がすぐさま被さった。

 

 

 

「なんでそんな古いCM知ってんの?」

 

 

 

ガチャ――。

 

ドアが静かに開いた。

 

 

 

近藤は悠然と入室する。

 

その手には……湯気の立つカツ丼の載った盆。

 

 

 

机の上に、慎重にそれを置いた。

 

「ムショの臭いメシは飽きただろう。今日は特別だ……」

 

優しい、どこか哀愁を帯びた声で言う。

 

 

 

「好きなだけ食べなさい。ゴリさん特製カツ丼だ。」

 

 

 

土方はその様子を遠巻きに見ていた。

 

(……カツ丼ってアイテムは人情派だが……なんか怪しい予感がするな……)

 

 

 

次の瞬間――。

 

 

 

グチャグチャグチャ!!

 

 

 

目の前の光景は、誰も予想だにしなかった。

 

近藤が、アズサとその腕に抱かれたペロロ人形の顔面を、カツ丼に無理やり押し付けている。

 

 

 

米粒とタレが、ペロロの顔にべったりと付着し、アズサは抵抗する素振りすら見せず、虚空を見つめていた。

 

むしろペロロ人形のほうが「助けて」という無言の叫びをあげているように見える。

 

 

 

その様子を回想の外から見ていた銀時が絶叫する。

 

 

 

「オイィィィィ!! 人情ォォォォォォォォォォォォォォ!? 人情どこ行ったァァァァァァ!!?」

 

 

 

「食わせてる絵面が全然人情じゃねぇんだけど!! 非情派にしか見えねぇよ!! 完全にこれ拷問だよ!!!」

 

 

 

部屋の空気は、一気に本格人情ドラマから拷問劇場へと転がり落ちていた――。

 

近藤は、どこか遠い目をしてアズサを見つめた。

その手は、今しがたまでペロロ人形ごとカツ丼に押し付けていたとは思えぬほど優雅に膝の上に置かれている。

 

静かに、語り出した。

 

 

 

「……実はな。私にも丁度、お前さんと同じくらいの息子がいてな」

 

 

 

その言葉にアズサの眉がぴくりと動いた。

土方は無言で額に手を当て、沖田は半眼で見守っている。

 

 

 

「お前さんを見てると……アイツを思い出すよ」

 

近藤はしみじみとした声色で続ける。

 

「……今どこで何をやっているんだか……アメリカでアクションを勉強するとかのたまっていたがな……」

 

 

 

土方の冷静な声が即座に飛んだ。

 

「何でケイン刑事、息子の設定になってんだよ!!」

 

 

 

しかし近藤の芝居は止まらない。

 

まるで過去に思いを馳せるかのように、語りのトーンはより一層低く深まっていく。

 

 

 

「あれも……一時はひどくグレてなァ……」

 

目を伏せ、カツ丼の冷めかけた湯気を見つめながら、彼は呟いた。

 

「夜な夜な……やれ筋肉番付だ、やれ SASUKE だ……危険なマッスル地帯にばかり繰り出し……」

 

 

 

土方は思わず机を叩いた。

 

「いや、確かに危険だけれども!!」

 

 

 

それでも近藤は止まらない。

 

あたかも己の記憶の底に沈んでいた"息子"の過去を、今、誰かに打ち明けるべき時が来たのだとでも言うように。

 

 

 

「室伏……照英……」

 

「どこの馬のマッスルとも知れん奴らとつるみ……マッスルを吸ったり……盗んだマッスルで走り出したり……」

 

「それは……ひどかった……」

 

 

 

回想の外から、銀時の絶叫が響いた。

 

「いやマッスルなのはお前の頭ァァァ!!」

 

 

 

土方も拳を震わせながら叫ぶ。

 

「盗んだマッスルって何だよ!?どんな状態だよ!?筋肉どうやって盗むんだよ!!?」

 

 

 

近藤はそれでも尚、遠い目のまま、謎のマッスル・ノスタルジーに浸っていたのだった。

 

そんな折ーー。

 

 

 

ふ、と近藤は更に目を細めた。

まるで何か思い出すのもためらわれるような、苦悩の影をその顔に落としながら。

 

 

 

「……そんな折……妻が……マッスルをマスらって倒れてな……な……」

 

 

 

一瞬、場の空気が凍りついた。

土方がそっと拳を握りしめたまま、冷たく言い放つ。

 

 

 

「オイ……もう意味わかんねぇよ」

 

「もういい……ケイン刑事のことはもういい!!」

 

 

 

だが、近藤の物語は止まらない。

いや、止めようにも止まらないのだ。なぜなら彼は今、**完全に「人情派刑事モード」**に入りきっている。

 

 

 

「……息子の……あまりのマッスルっぷりに……」

 

「心労がたたったんだろうな……妻は……母は……倒れてしまった……危篤状態だった……」

 

 

 

少し声が震える。まるで一人芝居の舞台の上にいるかのように。

そして、拳を握り締め、机の天板を見つめた。

 

 

 

「……だが……母が危篤状態だというのに……息子は……ついに病院に来ることはなかった……」

 

「奴は……ムショにブチ込まれていたんだ……」

 

 

 

土方のツッコミはもはや本能の叫びだった。

 

「オイッ!!何勝手にケイン前科持ちにしてんだァァァァァ!!」

 

 

 

それでも近藤は続けた。

むしろ、ここからが本題とばかりに、重々しく語りを進めていく。

 

 

 

「……マッスル不法保持……」

 

 

 

静寂が流れる。

 

近藤は低く、言葉を紡ぐ。

 

 

 

「ヤツは……自室のタンスの中で……ひそかに池谷を栽培していたんだ……」

 

 

 

場面が切り替わる。

 

 

 

そこに映し出されたのは、タンスを開いた瞬間に並ぶ無数の池谷選手の体操フィギュア。

しかも全員が 完璧な着地ポーズ でビシッと揃っていた。

 

圧倒的なシュール絵面。誰一人として動かず、誰一人として崩れず。

 

 

 

近藤は沈痛な面持ちで続けた。

 

 

 

「池谷弟なら……執行猶予がついた……」

 

「だが……池谷兄なら……実刑は免れん……」

 

 

 

その瞬間、銀時の絶叫が 外の回想枠から響き渡った。

 

「池谷兄弟に謝れェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!」

 

「何だよこの図!!シュール過ぎんだろ!!」

 

 

 

銀時のツッコミは止まらない。

 

「執行猶予の違いは……何!?オリンピックに出たか出てないかで変わんの!?そういうことなの!?そういう判例あんの!?」

 

 

 

その間にも、近藤の眼差しはタンスのフィギュアたちに向けられたままだった。

 

彼にしか見えていない哀愁のドラマが、今もなお続いていたーー。

 

近藤勲は深く、静かに息を吐いた。

さっきまで机にカツ丼を押し付けていた男とは思えないほど、その顔は今、真剣そのものだった。

 

まるで舞台のスポットライトが一つ、彼だけに当たったかのように。

 

 

 

「……私は怒り……失望し……奴と絶縁しようとした……」

 

 

 

掠れる声で、言葉は紡がれていく。

アズサもペロロ人形も、自然とその語りに耳を傾けていた。

 

 

 

「親の死に目に……あろうことかマッスル中毒で会えぬ奴を……どうして息子なんて呼べる……」

 

「……だが、そんな私に……おそらく一番失望し、無念であった妻が……こう言ったんだ……」

 

 

 

間。

 

近藤は机の縁に手を添え、苦しげに目を閉じた。

言葉を噛み締めるように。

 

 

 

「……逃げないで、と」

 

 

 

その一言に、かつての記憶が鮮明に蘇った。

 

妻の震える声、涙ぐんだ目。

病室の白い天井。

 

そこに響いた、たった一言。

 

 

 

「……子供が良い事をした時……最も喜び、褒めてやるのが親の責務ならば……」

 

「……子供が罪を犯した時……世界で最も悲しみ、憎んでやるのも親の責務なんだと……」

 

 

 

アズサの目が僅かに見開かれる。

 

その声色には、幼い頃の父と母の面影がよぎったのかもしれない。

 

 

 

近藤は拳を固め、低く語り続ける。

 

 

 

「……息子が出所した時……私は奴を力いっぱい殴りつけた。死ぬほどにな……」

 

「だが……奴が更生し、一人立ちした時……私は力いっぱい息子を抱きしめた。これも死ぬほどにな」

 

 

 

ぐっと唇を噛む。

 

それは、簡単な道のりではなかったのだ。

怒りも哀しみも、自らに矛先を向けたこともあったのだろう。

 

 

 

「子がどんなになろうと……それを受け取ってやるのが親というものだ」

 

「だが……子供を……憎みたい親がどこにいる」

 

 

 

静寂が訪れた。

 

ペロロ人形のボタンのきらめきすら、どこか悲しげに見えるほどに。

 

 

 

「子を憎み、愛すのが親の責務なら……子供の責務とは何だ……」

 

 

 

一拍置いて。

 

 

 

「……月並みなことを言わせてもらう。これ以上、親御さんを苦しめるな」

 

「どうか……私の妻のような思いはさせんでやってくれ」

 

 

 

アズサの胸の奥に、小さな痛みが走った。

これまで聞き流してきたような言葉が、今だけは妙に胸に刺さっていく。

 

 

 

「お前さんは……たくさんの罪を犯した」

 

「今さら贖えるものではない。お前の親御さんも、これからその"生"を背負っていくことになるだろう」

 

「だが……今なら……背負わずに済む罪もあるはずだ」

 

「今なら、親御さんを苦しめる荷を、一つ取り払う方法があるはずだ……」

 

 

 

静まり返った取り調べ室。

椅子の軋みも、時計の針の音すらも止まったようだった。

 

 

 

アズサは目を伏せ、震える吐息を一つ。

 

そして、ゆっくりと顔を上げた。

 

目の奥に、迷いも恐れも張り詰めた覚悟も滲んでいた。

 

 

 

「…………」

 

「……吐く」

 

「洗いざらい、全て……」

 

 

 

近藤の目が驚きに見開かれた。

 

「……あ、アンタ……」

 

 

 

その声は、誰よりも震えていた。

 

それは、刑事の声ではなかった。

 

一人の「父」の声だったーー。

 

「ま、まさか……あの殺人事件が、あんな説得に応じ……」

土方の喉が鳴った。あまりの展開に思わず言葉を飲み込んだその時ーー。

 

 

 

「おぼろシャァ!!」

 

 

 

ビシャァァァァァァ!!

 

 

 

取り調べ室に、突如として衝撃音と共に水飛沫ならぬ別の液体が飛び散った。

 

 

 

アズサとペロロ人形が……いや、完全に同時に、仲良く豪快にゲロを吐き散らかしたのだ。

 

 

 

「別のモノ吐いたァァァァァ!!」

土方が絶叫した。

 

 

 

「まぁ、確かに吐いたな。洗いざらい全て……」

銀時の皮肉混じりの声が、またも回想の外から響く。

 

 

 

「なんじゃあこりゃああああ!!」

近藤は目の前の光景に顔面蒼白となりながら叫んだ。

 

 

 

「似てねぇ……逆に松田●作に似てたらどうしようかと思ったが、何とかなったな。似てたら色々面倒くせぇったらありゃしねぇ」

銀時の声はやけに冷静だった。

 

 

 

「つかBGMゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

土方が頭を抱える。

 

流れているのは、なぜか**『太陽にほえろ』殉職のテーマ**だった。

 

 

 

「なんでGパン刑事殉職みたいになってんだよ!はぐれ刑事じゃなかったのか!?」

「つか何でゲロかけられて殉職のテーマが流れてんだよ!!」

 

 

 

アズサは青ざめた顔で息を整えつつ口を開いた。

 

「その、ごめん……このカツ丼が腐っていると感じて……」

 

 

 

「ま……待ってくれよ。こりゃまだ……くさ……腐ってねーよ……持ってくれ、捨てないでくれ!こりゃまだ構え……三日前のなんだ……あとから食おうととっといたんだ」

近藤が震える声で必死に弁明する。

 

 

 

「いや腐ってんだろ。カツ丼もアンタの頭もな!」

土方が呆れた声で切り捨てた。

 

 

 

アズサは顔を上げ、すまなそうに言った。

 

「すまない……せっかく私のために用意してくれたのに……あの、責任取って全部食べるから……そこ置いといてほしい」

 

 

 

「なんじゃそりゃあぁぁぁぁ……待っ、待ってくれよ……持っていかないでくれ、無理しないでくれ……俺ぁ人殺しにはなりたくねーよ……」

近藤は半泣きで訴える。

 

 

 

「オイ、中途半端なモノマネすんじゃねーよ」

土方のツッコミが入る。

 

 

 

「というかどの口がそんなことほざいてんだよ。うちの子にゲロ吐かせた時点でキャラ殺してくるから!もう手遅れだから!」

銀時の声が怒り混じりに響いた。

 

 

 

その時ーー。

 

ペロロ人形が静かに口を開いた。

 

 

 

「安心してくほしいペロ……あなたは悪くない」

「私はあなたを信じるペロ」

 

「子の罪を罰し共に苦しむのが親の役目ならば……無実を信じ共に戦う役目は友が担うペロ」

 

 

 

その瞬間ーー。

 

近藤は銃弾に撃ち抜かれたかのような衝撃に全身を震わせ、吹き飛んだ。

 

 

 

「ゴリさんんん!!」

沖田が駆け寄る。

 

 

 

「Gパンじゃねぇのかよ!というかはぐれ刑事どこ行った!**」

土方の絶叫が響く。

 

 

 

沖田は近藤の肩を揺さぶった。

 

「ゴリさん、しっかりしろ!」

 

 

 

近藤は血の気の引いた顔のまま、かすかに唇を動かす。

 

 

 

「や……やられたよ……乾杯……俺の完敗だ……罪を疑った上にこんな豚のエサを食わした俺を……友と……俺を信じると……」

 

 

 

そう言いながら近藤は、頭に乗っていたカツ丼を口に咥えた。

 

 

 

「だからなんでカツなんだよ。普通タバコだろ、タバコ!」

土方が渾身のツッコミを入れる。

 

 

 

「俺には……奴は撃てない……奴が恐ろしい殺人者なんて俺には思えない……」

 

「マヨラ刑事……ドS刑事……あとは……たの……」

 

 

 

力尽きたように、がくりと首が垂れた。

 

 

 

「ゴリさァァァーー!!」

沖田が叫ぶ。

 

 

 

ーーその刹那。

 

「じゃないでしょォォォ!!!」

 

 

 

サクラコが跳び蹴りで近藤を吹き飛ばし、無理やり回想シーンを終了させた。

 

 

 

気がつけば、一同は元の会議室に戻っていた。

 

 「誰があなた方の、ふざけた茶番劇を知りたいなんて言いましたか!!」

 

 

 

サクラコの声が、会議室の天井を震わせた。

場の空気が一瞬にして氷点下まで冷え込む。

 

 

 

顔面蒼白の近藤は、なおも脂汗を流しながら震える声を上げた。

 

「た、確かに……あっただろ? アズサちゃんの証言も……」

 

 

 

サクラコはズイと一歩前へ出た。

目が据わっている。

 

「あれはあなたたちに向けてのメッセージです!

事件の証言じゃないでしょうが!!」

 

 

 

そこまで言い切ってもなお、部屋の隅から聞こえてきたのは銀時の呑気な声だった。

 

「いやぁ……原作のまんまだと面白くねぇからさ〜。ちょっとだけアレンジを……」

 

 

 

その瞬間、サクラコは額に青筋を浮かべ、銀時の方を**バシィン!!**と指さした。

 

「メタいです!先生!今すっごくメタいですよ!!」

 

 

 

一方、ハナコたちはいつの間にか壁際で縮こまっていた。

 

「……その、私たち……突っ込んでも大丈夫な流れなのか迷ってて……」

 

 

 

「迷わないでください!!

あなたたちまで茶番に染まってどうするんですか!!」

 

ハナコが静かに歩み出た。凛とした声が、まだ少しざわついていた会議室を静める。

 

 

 

「……仕方ありませんね」

 

彼女は小さく息を整えてから言った。

 

「ここは私が、アズサちゃんの証言についてお話ししましょう。もっとも、先ほどサクラコさんがおっしゃったことがほとんどですが。特筆すべき点は――ほとんどありませんでした」

 

 

 

「そうですか」

サクラコが軽くうなずく。

 

 

 

銀時は椅子に深く座り直し、気怠げに声を上げた。

 

「でも、その様子じゃ……ほんの少しの情報が、とんでもねぇ情報だったんだろ?」

 

 

 

ハナコは頷いた。

 

「ええ。その通りです」

 

一拍の間を置き、会議室の空気が再び張りつめた。

 

「彼女に指示をしていた人物が分かったんです」

 

「……アリウススクワッドの、サオリという人物から指示を受けていたそうです」

 

「そして、アリウススクワッドはアリウスの部隊のリーダー的なポジションにあり、さらに『姫』という人物も存在している、と」

 

 

 

「おいおい、姫様だぁ?なんだそりゃ、雪でも操れて野獣と一緒にいたりするのか?」

銀時が冗談めかして肩をすくめる。

 

 

 

ハナコは微笑みすら見せず、淡々と続けた。

 

「姫はとても大事な存在で、いつもサオリという人物と行動を共にしていたそうですが……ティーパーティー殺害の任務を受ける少し前から、姿を見ていないそうです」

 

「私が知っているのはこれくらいですね」

 

 

 

「分かりました」

サクラコがきっぱりと言い、視線をマリーと近藤に向けた。

 

「とりあえず、アズサさんはナギサさんを助けた件もあります。転入手続きの方は私たちシスターフッドが正式なものにしておきましょう。行きますよ、マリーさん、ゴリラ」

 

 

 

「は、はいっ!」

マリーが慌てて立ち上がる。

 

「ちょっと……俺の扱い酷くない……」

近藤がぼやいたが、誰にも拾われることはなかった。

 

 

 

一同が散りはじめ、銀時はふぅ、と息を吐き椅子から立ち上がった。

 

「さてと……これであのつまらねぇ報告会ともおさらばだ」

 

「帰ってドラマの再放送でも――」

 

 

 

「先生、」

 

 

 

銀時の足が止まった。

 

「ん?」

 

振り返れば、そこには真剣な目をしたハナコが立っていた。

 

 

 

「ミカさんの件、どう思いますか?」

 

「は?」

 

銀時は眉をひそめる。

 

「どう思うって……怪力で相手にしたらやばいメスゴリラの一人――」

 

 

 

「そうではなく」

ハナコは遮った。

 

「ミカさんがナギサちゃん、セイアちゃんをアリウスに襲わせた理由です」

 

「自分で推理しておいてなんですが、私にはどうしても、ゲヘナが憎いだけで襲わせたとは思えなくて――」

 

 

 

銀時は少しだけ顔を伏せ、沈黙の中に言葉を探すように口を開いた。

 

「……他人が何をどう思っているかなんて、誰にも分からねぇよ」

 

「本心を知っているのは、本人だけだ」

 

 

 

「――楽園に辿り着きし者の真実を、証明することは出来るのか」

 

 

 

ハナコは小さく息を呑んだ。

 

「それは……五つ目の」

 

「楽園にたどり着いた者は、そこから抜け出すことはない。外にいる者は、楽園を認識することができない。楽園の存在証明に対するパラドックス」

 

「先生は、人の心を楽園と同じく証明できないと、言いたいんですか?」

 

 

 

銀時はわずかに肩をすくめた。

 

「楽園があることも、人の本心も知ることができねぇんなら――」

 

「……俺たちは信じるしかねぇだろ」

 

「そこに楽園があるってよ」

 

 

 

ハナコの目が静かに揺れた。

 

「それが……たとえ、裏切られたとしても?」

 

 

 

銀時は黙って一度だけ、深く頷いた。

 

 

 

ハナコは視線を落とし、ひととき言葉を探す。

 

「先生は、どうして……そこまで」

 

 

 

銀時は苦笑ともつかぬ笑みを浮かべて、ぽつりと答えた。

 

「さぁな、」

 

 

 

それだけを残して、彼は煙のように歩き去っていった――。

 

 

 




次回予告

ミカ「……私にはもう誰もいらない、友達も……何も……」

???「本当に、そう思うか?」

ミカ「誰?」

???「僕は、君と同じように以前、仲間を裏切ってしまった者だ。」

次回 本当にほしいものは意外とそばにある

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
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  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
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  • ミカ
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