透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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            曇天

鉛の空 重く垂れ込み
真白に澱んだ太陽が砕けて
耳鳴りを尖らせる

ひゅるりひゅるり 低いツバメが
8の字なぞってビルの谷を翔る
もうじきに夕立が来る

曇天の道を傘を忘れて
歩く彼女は雨に怯えてる
ので僕も弱虫ぶら下げて空を仰ぐ

あちらこちらあんよは上手
珈琲屋に寄って一休み極めたら
帰れない帰らない

曇天の道をぶらりぶらぶら
歩く二人は足軽のごとく
危険好きの誰かのふりをする小心物共
曇天の道を傘を忘れて

歩く彼女は雨に怯えてる
ので僕も弱虫ぶら下げて空を仰ぐ


第百十訓 ソシャゲはインフレから逃れられない

銀時は静かに歩みを進めていた。足取りは飄々としているが、その奥に潜むものは、風に消える軽さなどではなかった。肩に担がれた木刀が、やや前のめりに傾く。そのまま彼は、悪戯を仕掛ける子供のような笑みを浮かべながら、手をひらひらと振って、目の前の“異形”へと近づいていった。

 それは、マエストロが創造した兵器。忌まわしき名を冠された、<ヒエロニムス>。

 顔のない司祭のような姿、フードに覆われた頭部の上に浮かぶ金属質の光輪、背部には威厳と狂気が入り混じった荘厳な装飾。四本の腕のうち二本は緻密な細工が施された杖を握り、残る二本は胸前で祈るように組まれていた。

 だが、銀時の足は止まらない。無言のまま、木刀の柄を軽く握り直すと、その切っ先を異形へと向けた。磨かれていない木の刃が、僅かに戦場の光を受けて鈍く反射する。

 ヒエロニムスは、静かに銀時を見据えていた。言葉を持たないはずのその存在が、明らかに「理解した」のだ。目の前のこの男が、単なる一兵にあらず。早急に排除すべき“異常因子”であると。

 マエストロが軽く顎を引いた。ヒエロニムスはその意を受け取り、左手に握った杖を床へと静かに叩きつけた。

 瞬間、銀時の足元に黄金の光柱が閃く。

 反応は――雷光よりも早かった。

 銀時は靴底を蹴り上げ、爆ぜる光の只中を抜ける。衣の裾を焼く光をすれすれで躱しながら、迷いなく戦場を駆ける。足音は、まるで踊るかのように軽やかで、それでいて静寂を切り裂く鋭さを持っていた。

 そして、その様子を遥か後方から見つめていたのは、地下カタコンベの入口に佇むマエストロだった。

 薄闇に身を沈めながら、彼は虚空を仰いで呟く。

「素晴らしい――」

 その声音には隠しきれぬ歓喜があった。罅割れた仮面のような顔。刻まれた双頭の目が震え、小刻みに軋む音と共に、自らの身体を抱きしめる。圧し切れぬ感情が、震える声と共に漏れ出した。

「大人としての知性と品格もない……だが、先生としての信念、侍としての矜持……そして、何より……」

 皺の寄ったスーツの袖を指先で撫でながら、再び空へ声を張った。彼の瞳には、破れた衣を翻し、血に染まった身体でなお走り続ける男の姿が映っていた。

「全てを賭して尚、揺らがぬ“在り方”!」

 その姿勢は、思想も信条も相容れずとも――美しかった。己が道を貫かんとするその強靭な意志が、マエストロの中の芸術家としての矜持を、激しく震わせたのだ。

 ゴルコンダは言った。この男と交わった物語は、常に変質する。悲劇は喜劇に、絶望は希望に。運命すら書き換える“異端”。

 未完成のままで――この在り様である。

 ならば、彼が“完成”まで寄り添った作品とは、いかなる輝きを放つのか?

 知りたい、見たい、この目で。――それは、創造者として当然の渇望だった。

「ですが……あなたのような方を私は失いたくありませんでしたよ」

 囁くように、マエストロは呟く。

「そんな体では、不完全とはいえ、私の“作品”を打ち壊すことなど出来ませんからね。おかしくなる前に……早々に後退された方がよろしいかと」

 銀時は走りながら、遠くのマエストロを睨みつける。木刀の切っ先は、すでにヒエロニムスへと戻されていた。

「会って早々“死なせたくない”つった相手に木偶の坊で攻撃させやがった奴が、よく言うぜ」

 息を弾ませつつも、その口調に陰りはない。むしろ皮肉めいた軽口が、戦場に不釣り合いなほどよく響いた。

「そう言うアンタの作品も不完全ってことは……調子がよろしくねぇんだろ?」

 口元に笑みを浮かべて、煽る。

「腹でも下してんのか? んー?」

 マエストロはその挑発を聞いて、ふ、と目を細めた。

「腹下してるのはあなたの方でしょう?」

 その言葉を合図にするかのように、ヒエロニムスが動いた。

 左手の杖が、空気を裂く音と共に振り下ろされる。それを銀時はすんでのところで受け止め、木刀の背で押さえ込む。

 だが次の瞬間、右手の杖が床を叩く。

 地面が蠢いた。

 ドス黒い影から、無数の手が這い出し、銀時の足元を包囲する。そしてその中の一本が、銀時の古傷を掴んだ。

「うぐっ……!」

 その苦悶と共に、銀時の身体が一瞬硬直する。しかし、次の刹那――

「ウォォォォ!!」

 雄叫びと共に、銀時はその黒き腕を引き剥がし、強引に体勢を立て直す。そして、右手の木刀を大きく振るう。

 ――受け流しからの、反撃。

 木刀の一閃が、ヒエロニムスの身体に叩きつけられた。

 轟音と共に砂煙が舞い、視界が閉ざされる。

 静寂が、戦場を包んだ。

 やがて、砂塵がゆっくりと晴れていく。その中に、折れた木の破片が一つ、転がっていた。

 それを見て、マエストロが細く笑う。

「おやおや、大丈夫ですか? あなたの得物が折れてしまわれましたが?」

 だが――違った。

 折れていたのは、ヒエロニムスの持つ杖。マエストロの創造物の一部だった。

 銀時は、肩で息をしながら、目を細めた。

「おいおい、大丈夫か? アンタの得物が折れてるぜ?」

 静かに、しかし確かに告げる。

 マエストロは――笑った。最初は鼻で、次に喉の奥で。そして、口を大きく開いて。

「ふふふ……フハハハハハ!!」

 ヒエロニムスが反応する。主の感情を受け取り、怒りとともに再び銀時へと突進しようとする。

 狂気の咆哮が、戦場を再び焼き尽くさんとしていた。

 

 

 

地上では――

 砂塵舞う戦場。焦げついた空気の中で、覆面水着団、山海經、補習授業部、ゲヘナ、トリニティの混成部隊は、着実に押し込んでいたはずだった。数的不利と混乱により敵は崩れ、戦線は確実に瓦解しつつあったのだ。

 だが――。

 「……これは……っ!」

 その気配を最初に感じ取ったのは、トリニティのナギサだった。彼女の視線が、戦場の一角、地面に横たわっていた“何か”に注がれる。

 かつてサオリが置き土産として遺していった、漆黒のオーラーを放つ司祭――アンブロジウスが、ゆっくりと立ち上がる。その姿は不死そのものであった。

 その瞬間、空気が変わった。

 乾いた大地が震えるほどの咆哮が、聖徒会の残党たちの耳に刺さる。

「――皆の衆よ。真のエデン条約機構は、我らを蘇らせしアリウスの者たちだ。」

「眼前にいるは偽りの秩序。それでも戦わぬというのならば――我が直々に、その怠慢を裁こう。」

「さあ、立ち上がれ。戦え。雑兵どもよ!」

 轟音のような声が地平を打つ。その言葉一つで、怯えていた聖徒会の兵たちが――

 立ち上がった。

 覆面水着団の一人、アヤネはそれを見て、青ざめた顔を伏せた。

「……たった一言で、崩れかけていた士気が……恐怖が、さらに恐怖で塗り潰されていく……」

 ノノミが、ホシノの肩に身を寄せながら問う。

「ホ、ホシノ先輩……これって……」

「あちゃー、こりゃまずいねぇ〜。今まで敵が混乱してたから押し切れたけどさぁ……あの人数で“ほぼ不死身”のやつらが、意識と戦意取り戻しちゃったとなると……」

 戦場に漂う空気が重く沈む。

 ハナコが静かに口を開いた。

「――万事休ですね……」

 だが、マコトは臆することなく吠えた。

「何、即席の戦意など恐るに足らぬ! 我らゲヘナの猛攻で、そのまやかしごと打ち砕いてやろうッ!」

 ナギサが眉をひそめた。

「待ってください、早計に動けば――!」

「撃てッ! イロハ!!」

 マコトの指示で、戦車部隊が一斉に砲門を開いた。

 イロハがため息まじりに帽子を傾ける。

「まったく……仕方ないですね」

 次の瞬間、轟音とともに砲撃の嵐がアンブロジウスへと襲いかかる――が。

 「……フン」

 アンブロジウスは腕を軽く振るだけで、空間にいくつもの青白い球体を生み出した。それらは空中で浮遊し、迫る砲弾を次々と迎撃する。

 爆発と閃光、巻き上がる土煙。

 確信していた勝利が、音もなく崩れ去る。背後から響いた爆音に、マコトは反射的に振り返る。戦車部隊が、逆に爆破されていた。

「な、何……?」

 そして、すぐ背後。マコトの影に、冷たい殺気が忍び寄る。

 「――しまっ……!」

 迫るのは、アンブロジウスの鋭利な爪。

 回避は、間に合わない。そう悟った瞬間――

 ヒフミの悲痛な叫びが、空気を裂いた。

「ペロロ様っ!! お願いします!!」

 空中に投げ込まれたホログラム・ペロロが、虹色の光とともに出現し、爪の一撃を逸らすようにマコトを押し飛ばした。その身体がバランスを崩し、倒れそうになる。

 そこへ、ナギサが滑り込むように支えた。

「大丈夫ですか、?」

「ト、トリニティか……!」

「まったく、相手の正体すら分からない段階で攻撃など、やはり無謀だったんですよ。だから止めましたのに」

「ふ、フン! ……私はお前らとは違う……速攻で叩き潰す戦略だっただけだ!」

「強がりを言っている場合ですか?」

 互いに吐き捨てるように言葉を交わしながらも、わずかな信頼がその間に芽生えたようにも見えた。

「……だが、助かった。感謝するぞ」

「感謝は後にしてください。今は――彼らにどう対処するかが先決です」

 アンブロジウスが、悠然と歩みを進める。

「我はユスティナ聖徒会。条約を乱すものを正すために存在する者。恐れるものなど、何もない」

 その威容に、再び空気が硬直した。

 ――だが。

 その圧倒的存在の前に、なおも一歩、また一歩と進み出る者たちがいた。

 五人の男たち。その姿はまるで地獄から這い上がった鬼神のようだった。

 顔には醜く深い傷。頭部にはねじれた二本の角。黒く長い髪と蓬々と伸びた髭が風に揺れ、口元には獰猛な二本の牙が覗く。

 その肌は苔むした緑色、瞳は血のように赤く燃え――ただの人間ではないことを、誰もが直感で悟る。

 風貌も、威圧も、正気の存在とは思えなかった。

 それでも彼らは、確かな足取りでアンブロジウスへと向かっていく。

アンブロジウスのその言葉は、断罪にも似た静かな怒気を孕んでいた。

「そんなものがあるならば――この手で、摘み取るまでです」

 だが――男たちは彼の言葉を意に介さず、まるで彼の存在が見えていないかのように、その脇を素通りしていく。

 アンブロジウスの眉がぴくりと動いた。その瞳がわずかに揺れた。理解不能の事態に、確かな違和感が芽吹く。

 そして――

『あなたたち、聞いていなかったのですか?』

 その声と共に、アンブロジウスの手がひらりと宙を薙ぐ。鋭利な爪が舞い、五人の男たちを無慈悲に切り裂いた……はずだった。

 だが――

 彼らは立っていた。微動だにせず。衣服は裂け、風に踊る花びらのように繊維が散るが、その肌には一点の傷も見られない。

 その異様な光景に、アンブロジウスの表情が凍りつく。

『戦わぬ者はーー』

「ヘドロ兄さん大丈夫だった?」

 柔らかな声が、唐突にその場の空気を切り裂いた。

「いや〜すいませんね。僕たち、戦争が起きたから皆を避難させてて……」

 別の男が頭をかきながら現れる。周囲の喧騒とは無縁のようなその空気感。

「なぁ兄さん……」

 言葉に詰まる彼の隣で、別の男が静かにしゃがみ込んでいた。

「ごめんなさい。無理でした。」

 彼の手元には、瓦礫に埋もれてなお懸命に咲こうとしていた、萎れたタンポポの花が一輪。

「もっと早く植え替えてあげれば良かった。」

 その言葉には、悔しさと、やるせなさと、ひとひらの祈りが滲んでいた。

「申し訳ございません」

 その場にいた者たちは皆、声を失っていた。

 なぜなら、彼らは――あの爪による神秘の力を宿した攻撃を、真正面から受けながら、一切の傷を負っていなかったからだ。

『あなたたち、神秘の力を入れた攻撃に対してなぜ無傷なのですか!?』

 

 『もしやあなたたちは恐怖を体現したあのーー』

 

 アンブロジウスが声を荒げる。だが返ってきたのは、しゃがんでいた男の静かな声。

「僕はあなたたちなんて知りません。」

 その場にいた敵味方、誰もが理解を超えた光景に唖然とする。

「この星のただの花屋です。兄弟運営の」

 そして、男が続けた言葉に、多くの者たちの顔色が変わった。

「この星に咲いた花を命を愛する万事屋さん家のーー」

 その名を知る者たちの中に、戦慄が走った。

「隣のヘドロです!」

「ジロウです!」

「サブロウです!」

「シロウです!」

「ゴロウです!」

 矢継ぎ早に名乗りを上げる彼らに、威圧感のある自己紹介に皆が一斉に青ざめる

「「「「な!!!!!」」」」

 ヘドロが一歩前に出た。

「故に聞きます!この星の命を踏みにじったのは誰ですか!?正直に手をあげなさい!」

 アヤネが震えながら声を漏らす。

「へ、ヘドロさん一家……」

 アンブロジウスの顔が引き攣る。怒りに駆られ、声を荒げた。

『や、やってやってしまいなさい!皆でこの化け物を叩き潰しなさい!!』

 号令と共に、ユスティナ聖徒会の兵たちが一斉にヘドロ一家へと突進しようとする。

 だが――

 ヘドロ一家が一斉に、無言で睨む。否、ただ「見ただけ」であった。

 その瞬間、空気が張り詰め、聖徒会の足が止まる。

「困ったねぇ〜ヘドロ兄さん。」ジロウがぼやく。

「みんな正直に手をあげてはくれたけど、予想より多くいたみたいだよ」サブロウが続ける。

「どうしようヘドロ兄さん。この調子で皆に謝らせたら日が暮れてしまうよ。」シロウが肩を落とす。

「聞いたところ痛みを感じないんだって」とゴロウ。

 

 アンブロジウスは苛立ちのまま、ホシノたちを一瞥した。

 

ふ、見た目は怖そうではあるが所詮は平和ボケした一般人恐る必要などない

 

『ここで見せやろう。貴様らは何も守ることができないということをーー!』

 

 彼の掌に収束する巨大な球体――破壊の象徴が渦巻き、怒りと共にヘドロ一家へと投げつけられた。

 衝撃音と共に砂煙が立ち昇る。

 誰もが目を見開き、煙の向こうに視線を走らせる。

 そして、そこにあったのは――

 アンブロジウスの右手だけが地面に転がり、その本体は遥か彼方の建物の壁にめり込んでいた。

 

 風が止まり、時が凍った。

「そうだね。謝ることが無理で、あまり痛みを感じないとなるってなると、少し心配していたけどーー」

 ヘドロは静かに歩み寄りながら言う。

「1人一発ずつ、少し本気のゲンコツなら――なんとかなりそうですね〜」

 その言葉と同時に、アンブロジウスの姿が霧のように淡くなり、掻き消えた。

 だが、ヘドロ一家は淡々としていた。

「さて……早く済ませたいんでーー」

「まとめてきていただいてよろしいでしょうか?」

「家族全員で殺(や)りますから」

 

 その瞬間、右手で掴んだエネルギー弾を潰し、全員が腕を鳴らす。

 筋肉が鳴り、骨が軋み、雷のような音が大地を伝うわけではないのにそんな感じがした。

 その異様な光景に、敵も味方も声を失い、ただ一様に震え上がった。

 

 

その瞬間だった。

 天を裂く咆哮の如き衝撃が鳴り響いた。まるで地中深くに眠る古代兵器が目を覚ましたかのように、聖徒会の兵たちが次々とミサイルのごとく吹き飛ばされ、建物の壁面にめり込んでいく。

 

 ドガァァァン! ドゴォォォン!! バギィィィィン!!!

 爆音の合間から、アヤネの叫びが抜け出してきた。

「へ、ヘドロ一家ァァァ!! 一発であの化け物たちを仕留めた!? あの不死身の部隊を恐怖のどん底に叩き落としちゃいましたよ!!」

 

「敵が一気に恐怖に呑まれ、引いていきます!」

 

「ヘドロさん怖いです! やっぱりあなたたち一家が一番怖いですよ!!」

 

 

 まるで地獄の底から這い上がってきた悪霊にでも取り憑かれたかのように、聖徒会の兵士たちは蜘蛛の子を散らすように、四肢をばらばらにして逃げ出した。

 だが――逃げ遅れた者に待っていたのは、さらなる地獄だった。

 「グヘッ!!」

 叫びとともに、また一人、建物の壁に突き刺さる。

 「グハッ!!」

 もう一人、天井を突き破って消える。

 ドォォォォン!! ドォォォォン!! ドォォォォン!!

 

 

「ホシノ先輩、皆さん!畳み掛けるなら今しかーー」

 

 アヤネの声が上ずる。だが振り返った先にいたのは、本来味方であるはずのホシノたち――その全員が、ものすごい勢いで逃げていた。

「こっちも逃げてるーーーッ!!」 

「あなたたちまで恐怖に呑まれてどうするんですか!?」

 アヤネが悲鳴を上げる横で、ホシノは逃げながらも冷静(?)に語った。

「逃げるよ〜アヤネちゃん。こっちまで標的になったら、新たな厄災の登場だよ〜」

 

「この調印式動乱篇はソシャゲ十八番のインフレシステムの序章でしかなかったんだ。」

 

「もう懲り懲りだよ〜。おじさん、ギャルゲーに転職する!!」

「どこの次元の話してるんですかァァ!!」とアヤネがツッコむ間もなく、ホシノたちは巨大な武器にドゴンとぶつかり、吹き飛ばされた。

「うへぇ〜……」

 その前に現れたのは、ミレニアムの主戦力たちだった。

 レールガンを抱えた小柄な勇者・アリスが、すっくと立って言い放つ。

「皆さん、もう大丈夫です。この世にどんな魔王、悪鬼が現れようともーーキヴォトスには勇者アリスがいますから!」

 その隣に並ぶは、チビヤンキーの異名を持つネル。

「おい、筆者ァァ! いい加減“チビ”って言うのやめろよな!? 次書いたらぶっ放すぞオイ!!」

 さらには、セミナーのノアと、“太もも”の異名で有名なユウカの姿もあった。

 その姿を見て、キサキが(ミナに抱えられたまま)薄く笑う。

「ほう……ミレニアムの生徒会か。お前たちも、銀時を助けに来たのか?」

 

「べ、別に私たちは……」ユウカが顔を逸らし、しどろもどろに答えた。

 

「アリスちゃんとネル先輩が助けたいって言うから、仕方なく……」

 

「はぁ〜何言ってやがる? 銀時が心配だ。って、トリニティ行こうって言い出したのはお前だろうが?」ネルが呆れきながら肘で突っつく。

「な! ネル先輩、ちょっと余計なことを!」

「アリスもそう言われて来ました」アリスも無表情で答える。

 

「そうですね。ユウカちゃん、銀さんが撃たれたって報道受けてからずっと心配してましたもんね〜」

 

「この通りばっちりと録音も………」

 

 とどめとばかりにノアが、録音データの再生ボタンを押そうとする。

 

「もういい、もういいから!!!」ユウカの顔が真っ赤になった。

「とにかく、私たちも助けに来たの! ね? アリスちゃん!」

 

「はい!」アリスがレールガンを掲げた。

 

「**厄災ガ◯ンとの第三次ハイ◯ル大戦なんか起こすので遅れてしまいましたが、**オープンワールドから青春RPGに切り替える準備は万全です!」

「いや、明らかにそっちの方がヤバいですよね!?というかどこの世界線!?」アヤネの絶叫。

「ここからはアリスが勇者となって、あなたたちを導きます。だから、逃げずに戦ってください」

「それでも逃げるというのならーー」

 レールガンに、蒼い閃光がチャージされていく。 

「ガ◯ンと同じように、あなたの人生もゲームオーバーにしますけど、いいですよね?」

「いや、それさっき悪者がやってた手口ィィィ!!」

 ネルも叫ぶように二丁のマシンガン。ツインドラゴンを撃ち放つ。

「つーわけで進めェェェ!!、腰抜けどもォォォ!!!」

 ドドドドドドドドッ!!!

 弾幕と閃光、そして破壊の嵐。

 

「どっちが厄災だが分かりやしませんよコレ!!」

 ホシノたちは恐怖のあまりさらに加速し、ついには敵より速く逃げ出していた。

「ちょ、ちょっと待ってください!」アヤネが泣きながら叫ぶ。

「これ撤退っていうか、敵より早く逃げてるだけじゃないですか!?」

 

「ん。敵追い抜いてる」シロコが平坦な声で言う。

「いや、置き去っていますよシロコちゃん。」

 

「ちょっと、前に化け物がいるんだけど!!」コハルが叫ぶ。

 

「なんなのよこれ! 何ドイッチなのよコレ!! 何ドイッチ伯爵が考案した奴なのよコレ!!」セリカの混乱も極まっていた。

 

 最後に、涙目のホシノが叫ぶ。

「助けに来たけど助けてよ〜〜!!」

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「いいか!敵の主力部隊は今や無力となり烏合の衆とかした。ゲリラ戦で持って追い詰めろ!!」鴨太郎の掛け声に合わせて

バズーカが放つ轟音と煙が、辺り一面を白く包みこんでいた。爆煙のカーテンの向こうで、真選組の一団はまるで影法師のように現れては、次々と敵兵をなぎ倒していく。

 しかし、その中に交じるアリウスの兵たちは、既に怯えきっていた。

「ど、どうする? このままじゃやられてしまうぞ……」

 一人が声を震わせて言うと、もう一人が辺りを見回して叫ぶ。

「あ、あそこだ! あそこに穴が空いてる。そこから退却し、挽回を図ろう。いくぞ!!」

 二人の敵兵は煙をかき分けて走り出す。そして、勢いよく足元の穴へ飛び込んだ。

 次の瞬間――

 ゴンッ!

 地面の下で奇妙な音が響いた。落ちた先にあったのは、赤白のラインが入った古風な三角木馬。それをまたいだまま落下した敵兵たちは、見事にその罠にハマったのだった。

 その直後、薄暗い空間にもうひとつの影が現れる。木製のバットを担いだ沖田総悟が、軽やかなステップでバッターボックスに立つと――

 ブンッ!!

 鋭いスイングとともに、落ちてきた敵兵を快音と共にかっ飛ばした。

「はいいーち、はいにー、はいさーん」

 呟きながらバットを振るう沖田の顔には、冷笑が浮かんでいた。

 宙を舞いながら、敵兵のひとりが叫ぶ。

「待てェェェェェェ!!し……下はSMバッティングセンターだったァァ!!とんでもないドSラッガーがバッターボックスに立ってるぞ!!」

 その声が天井に届く間もなく、もう一人の兵が絶叫する。

「いや、SMバッティングセンターって何!?」

 が、恐怖はそれだけでは終わらなかった。かっ飛ばされた兵士の軌道を読みきったように、その先には卓球のラケットを構えた信女が静かに立っていた。

 スパーンッ!

 小気味よい音と共に、信女が球――いや、敵兵を撃ち返す。

「タァ〜」

 卓球のように、彼女は一人で敵兵をラリーしていた。

「と思ったらこっちでそのままラリーしてるゥゥゥ!!」

「ちょっと何の勝負をしてんだコイツら!!ただのドSポーツじゃないか!!」

 恐怖におののく敵兵の声が響くなか、沖田のカウントは続く。

「20、21、22、23、24」

 信女の掛け声も続く。

「タァ〜、タァ〜、タァー」

 戦場が地獄のトレーニングジムと化す中、敵兵の一団がようやく一筋の階段を見つけた。

「か、階段だ!!ひとまずここから逃げ――」

 その時、空間を切り裂くように、焼きたての香りと共にあんぱんが飛来した。

「はいいーち、はいにー、はいさーん」

 山崎が腕を振るい、次々と敵兵の顔面にあんぱんを叩きつける。

「待てェェェェェェ!!今度はあんぱん工場だ!」

 混沌と狂気が渦巻く中、上から降ってきたのは、爆発したかのように膨れ上がったアフロ。

 アフロの主――斎藤終が、プラカードを掲げていた。

『はいいーちだZ はいニーだZ はい3だZ』

「こっちは爆発頭だァァァ!!」

 満身創痍の敵兵が、最後の望みをかけて叫ぶ。

「外だァァァァァァ!!外なら問題ないはず!!」

 だが、外に出た瞬間、彼らの視界に映ったのは一匹のゴリラ――いや、ゴリラの着ぐるみを着て、なぜか本物以上に自然に電柱を登り降りしている近藤勲の姿だった。

「はいいーち、はい、にっ」

 全身から溢れるどこか達した感じを見せつけるように、近藤がリズムよく電柱を上下する。

「はっ、さ……ん」

「ダメだァァァァァァァァァ!!ゴリラが延々と登り降りしてるゥゥゥ!!股間に生まれた新感覚を延々と楽しんでる!!」

 

下の方を見ると白い液体がぶちまけられている。

 

「まさかこれ。ゴリラのーー」

 

1人がそれを見て絶望した表情を浮かべる兵士……そこに朗報が届いた。

 

なんとーー

 

「はいいーち、はいにー、はいさーん」

 

白い液体の正体は土方が下から放ったマヨネーズだったからである。

 

「良かったァァァ!!これはマヨネーズだ!!R18指定しなくて済んだぞ!!」

 

「いや、何の心配してんだ!!」

 

「どーすんだ!!もう逃げ場がないぞ!!」

 逃げ道のない混沌。それは戦場という名の地獄でも、想像の斜め上をいく

 

 

戦場の喧騒が、地下洞窟の奥深くまで反響していた。だが、奇妙なことに、この地には本来届くはずのない陽光が、天から差し込んでいた。もはや理屈では語れぬ異常な空間に、それぞれの因縁が交錯する。

 

 神楽は歯を見せて笑った。

「どうやら上の方は上手くやってるみたいアルな」

 その明るい声に、新八が苦々しげに返す。

「いや……どっからどう見ても問題しか起きてないけど」

 アズサは、そんな二人の会話に口元だけで笑みを浮かべて応えた。

「何を言ってるんだメガネ?あの先生について来た者だ。コレぐらいがちょうどいいじゃないのか?」

 その言葉に神楽も頷く。

「そうアル!新参者の方がよくわかってるネ!」

 だが、場違いな空気を断ち切るように、サオリの鋭い声が飛んだ。

「無駄話をしている場合か!!」

 その怒号と同時に、銃声が空間を裂いた。サオリの放つ銃弾がアズサに向かって何発も放たれる。しかし、アズサの体は風のようにひらりと翻り、銃撃を紙一重で回避する。

 そのままアズサは懐へ飛び込んだ。彼女の持つ銃が、もはや射撃ではなく、鈍器として振るわれる。撃つのではなく、叩く。殴る。その重みが空気を唸らせた。

 

 一方、新八はミサキの攻撃を正面から受けるわけにもいかず、慎重に距離を詰めていた。

 が――

「ドォン!!」

 耳をつんざく爆音と共に、ロケットランチャーの砲弾が地を砕く。

 ミサキは、ただ撃ってくるだけではない。距離が詰まると、多弾道ミサイルを放ち、即座に間合いを離してくる。その動きに隙はなかった。

 本来の新八ならば対応できたかもしれない。しかし、彼の瞳は怯えではなく、迷いを抱えていた。

 ミサキは、彼の胸の内を見透かすように囁いた。

「ねぇ、あなたたち私たちのことを◯さないで生かすつもり?」

「そんなんじゃ私たちを倒せないよ」

 新八は、迷いを振り払うように真っ直ぐミサキを見据えた。

「僕たちは銀さんと約束したんです。なにがあってもあなたたちを生かしたまま倒すって」

「それにーー」

 彼は口角をわずかに上げた。

「警戒すべきは僕だけじゃないんですよ」

 その言葉にミサキが眉をひそめた直後、背後から何かが迫る気配を感じて振り返る――そこには、白く巨大な定春が、その大きな口をミサキの頭部ごと飲み込もうと迫っていた。

 咄嗟に身を翻して避けるミサキ。

「しまった!」

 振り向いた先に、新八の気迫に満ちた拳があった。

「タァァァァ!!」

 その一撃が腹にめり込み、ミサキの身体が宙を舞った。

 ミサキは苦笑しながら倒れ伏す。

「リーダー……やられたよ」

 

 ――――――

 

 無数の銃弾が、神楽を目掛けて飛来していた。その速度、角度、量。いずれも常人には避けられぬほどだったが、彼女にとっては違った。運動神経と戦場で培った勘が、獣のように弾をすり抜けていく。

 だが、敵の姿が見えない。神楽は舌打ちをしながら叫ぶ。

「ったく、ちょこまかと鬱陶しい奴アルな!あの泣き虫はどこ行ったアルか!」

 その頃、ヒヨリは地下道の岩陰から狙っていた。NTW-20の長大な銃身を抱えて、静かに息を潜める。

 その沈黙の中で、ヒヨリの声が響いた。

「ふふっ、痛いですよね……苦しいですよね……でも、私と違ってすぐに楽になりま──」

「そこアルな!」

 神楽が声の主の方角へ向けて傘を振ると、機関銃の銃口が火を吹いた。

 連続する発砲音の中で、ヒヨリの悲鳴が木霊する。

「いったぁぁい!!うわぁぁあん!」

「スナイパーが声出して煽ってじゃねぇヨ!」

「◯し屋ゴルゴでも読んで出直してこいや青二歳が!!」

「うわぁぁぁん!!私はおしまいなんですね!?捕虜にされて凌辱されてしまうんですね!!??どうせ最後なら沢山お肉食べたかったです!!」

 その台詞に神楽は顔を歪める。

「アホか!それじゃ高くてたらふく食えないネ!お前たちにちょうどいいのはな〜食べ放題でソフトクリーム作れるところぐらいのーー」

 その瞬間だった。ヒヨリの瞳が細く鋭く光り、反撃に転じる。

「隙ありです!」

 至近距離でNTW-20が腰だめで構えられ、トリガーが引かれた。

 衝撃とともに炸裂する弾丸――しかし、そこにあったのは神楽の笑顔だった。

 彼女は――歯で弾丸を噛み砕いていた。

「がっ……!?」

 次の瞬間、ヒヨリの顎が跳ね上がる。神楽の鋭い蹴りが彼女を襲い、続けざまに拳が振り下ろされる。

「さんざん、わたしをバカにしてくれたアルな。死なない程度にぶん殴ってやるヨ……わたしをヤロウなんて百年早いネ小娘ぇ!!!」

「ヒェェェェ!!」

 神楽の拳が壁を砕き、ヒヨリは腰を抜かしてそのまま気絶した。

 神楽は軽く肩を竦める。

「悪いな、お前たちのことは◯すな銀ちゃんに頼まれてるネ」

 

 ――――――

 

 陽光のような光が射す地下空間。その中央に、サオリは静かに立っていた。彼女の瞳は、目の前の敵をまっすぐに捉えている。

「……まだ私と1対1で、正面から勝てるとでも思っているのか?」

 アズサは無言だった。だが、その瞳は答えていた。

 変わらぬ覚悟。

 揺るがぬ信念。

「そうか……考えは変わらんか……なら何もかも……全て片付けてやる。お前も、そいつらも……! 全てが虚しいこの世界で、真実を思い知れ!!」

 その言葉は、もはやアズサには届かない。彼女の中には、確かな芯があった。

「サオリ……私は、もう負けない」

 サオリがアサルトライフルを構えた。だが、間合いを詰めたアズサは、その引き金の動作を読むように銃身を払った。弾道が逸れ、アズサは即座に銃口を突きつけて発砲する。

 サオリは首を傾けてそれを避ける。

 銃撃戦では分が悪いと見たか、サオリはアサルトライフルを捨て、ハンドガンとナイフを構える。

 ナイフが振るわれる。だが、アズサは半歩退き、その手を取ってナイフを叩き落とす。

 その隙に腹部へ蹴り。

「ぐぅっ……重い、蹴り……だな……だがーー」

 サオリが咄嗟にアズサの銃を蹴り飛ばす。

「終わりだァァァ!!」

 彼女の手が再びハンドガンを構えようとした、その瞬間――アズサの手にあったのは一本の木刀だった。

 サオリの目が見開かれる。

(バカな……アズサの持ち物にそんなものは……まさか……!)

 それは新八が投げたもの。この合宿での教えが生きていた。

「イヤァァァァ!!」

 アズサが突きを放つ。その一撃は、サオリの腹部を正確に貫いた。

「ぐっ!!」

 彼女は吹き飛ばされ、そのまま地面へと倒れ込んだ。

銃声も怒号も途切れ、時間が止まったような静寂が空間を包む。

 アズサの胸が、上下に小さく波打っていた。荒くはないが、確かな疲労と達成感がその呼吸には滲んでいる。手にはまだ、突きの勢いが残ったままの木刀。その刃先は、倒れたサオリのすぐ手前で静止していた。

 そして、ぽつりと呟いた。

「か、勝った……」

 その声は誰にともなく向けられたものであり、また、自分自身への言葉でもあった。

 その背後から、優しくも軽やかな声が響いた。

「やったね。アズサちゃん」

 振り向けば、そこには新八がミサキを背負い、定春の背には気絶したヒヨリが横たわっていた。そして、その傍らには、神楽が誇らしげに腕を組んで立っていた。

 アズサとサオリの戦いを、遠巻きに見守っていたのだ。

「お前はよくやったネ!それに比べて新八〜」

 神楽がにやりと笑う。定春も無言のジト目で新八に視線を送っていた。

「え、何?なんか僕悪いことした?」

 新八が戸惑いを浮かべて問い返す。

「今回上手いとこ取っただけで碌な活躍してないアル。それでも原作からの登場キャラアルか?」

「え、別によくない?そこに関しては……勝ったし、気絶させたし!!」

 ふたりのやり取りに、アズサは目を瞬かせてきょとんとする。しかし、すぐに柔らかい笑みを浮かべ、穏やかな空気に包まれたその瞬間――

 ズズ……という軋む音と共に、地を這うような声が響いた。

「お前たち……これで勝ったとでも………思っているのか?」

 その声にアズサは表情を引き締め、振り返る。

「サオリ……!」

 立ち上がったサオリは、傷だらけの体をかろうじて支えながら、なおも睨みつけてきた。顔は血と煤にまみれていたが、その瞳だけはまだ、諦めを知らなかった。

「私たちはお前たちにやられたかもしれない。だが………彼はどうだ? あの恐怖を体現せし教義」

 その名を告げると、洞窟の奥から低く、異様な重低音が響いた。

「ヒエロムニスの前には何人だろうと無力――」

 その言葉を遮るように、

 ドォォォォン!!!

 爆音が空間を切り裂き、凄まじい衝撃が洞窟全体を震わせた。

 誰もが思った。今の衝突は、きっと銀時か、あるいはヒエロムニスか。だが、土煙が晴れた時、そこにあったのは――

 ヒエロムニスの姿だった。

 黒衣をまとい、顔を見せぬその男は、無造作に背を壁へと打ちつけられ、動きを止めていた。

 そして、その前に立つ男。片手で腹の傷を押さえながらも、なお真っ直ぐに前を向き、走り出していた。

 坂田銀時――白夜叉であった。

 サオリの表情が凍りつく。理解が追いつかないまま、戦況は大きく反転していた。

(な、何だと……!?)

(あの教義と互角……いや、それ以上の力で押している……!?)

 その戸惑いに答えるように、側に佇む一人の男――マエストロが、静かに口を開いた。

「どうやら、あの男のことを我々は甘く見ていたようですね」

 マエストロの声は穏やかで、しかし含みのある冷たさを帯びていた。

「ヒエロムニスは未だ不完全。本来の力を発揮できてはいませんが、それでもこの一帯を無に返すなど造作もない……そのはずでした」

 銀時が地を蹴る。ヒエロムニスが放つ、光の柱が空間を裂いた。そこから、無数の赤黒い手がうごめくように伸び、獲物を捕えんと蠢く。

 だが、銀時はそれらを正確に見切り、一つずつ、的確にかわしていく。その動きは、もはや剣士の枠を超えた、まるで獣のような直感と身体能力だった。

 サオリは叫んだ。

「おい、どういうことだ!あの“作品”は、何者も恐怖へと飲み込み、絶望へと帰すのではなかったのか!」

 マエストロは肩をすくめる。

「彼は……極限の命のやり取りの中で、眠る戦いの記憶を呼び覚ましたのでしょう」

「君たちに倒された彼は、まだ本気ではなかったということです」

「な……!」

 マエストロの視線が、銀時に釘付けになる。

「……流石、黒服が認めた男……彼が目をつけた、“白夜叉”か……」

 まさにその時、ヒエロムニスの杖が音を置き去りにしながら振り下ろされた。そこから放たれる“概念すら歪める”一撃。しかし――

 銀時はその杖の軌道に乗った。

 疾風のように踏み込み、敵の攻撃をまるで足場にするように乗り上げると、そのまま高く跳躍し、

「たぁぁぁああああッ!!!」

 魂を宿した木刀を、ヒエロムニスの手に突き刺した。

 木刀は、教義の象徴たる手を穿ち、ヒエロムニスの全身を震わせた。

 血の代わりに黒き煙が噴き出し、空間が軋むような呻き声を上げる。

 

 サオリは、その光景をただ茫然と見つめていた。

(この男は……恐怖をも穿つというのか)

 




次回予告

銀時vsヒエロムニスの最終決戦

サオリの過去と本音

黒幕の呻き

刮目せよ

次回 陽また登る

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

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