透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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作者からのお願い

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            曇天

鉛の空 重く垂れ込み
真白に澱んだ太陽が砕けて
耳鳴りを尖らせる

ひゅるりひゅるり 低いツバメが
8の字なぞってビルの谷を翔る
もうじきに夕立が来る

曇天の道を傘を忘れて
歩く彼女は雨に怯えてる
ので僕も弱虫ぶら下げて空を仰ぐ

あちらこちらあんよは上手
珈琲屋に寄って一休み極めたら
帰れない帰らない

曇天の道をぶらりぶらぶら
歩く二人は足軽のごとく
危険好きの誰かのふりをする小心物共
曇天の道を傘を忘れて

歩く彼女は雨に怯えてる
ので僕も弱虫ぶら下げて空を仰ぐ


第百十七訓 火種もってして曙光をもたらさん

 ーーーーーーー

「こんばんは」

 夜空の下、近藤勲が一歩前へ進み出る。

 その背後で整列する真選組の隊士たちが一斉に刃を抜き、またはバズーカを構える。金属音が夜の静寂を打ち破り、冷たい月光の中で鈍く光った。

 その規律正しい気配は、まるで嵐の前の凪。だが次の瞬間には、大地をも揺るがす破壊の嵐へと変貌しかねなかった。

 ーーーーー

 大聖堂。

 佐々木異三郎が静かに片手を上げる。その無表情な瞳は紅に染まる空間を一瞥するだけで、空気を支配していた。

「お巡りさんです」

 その一言と共に、無数の銃口がベアトリーチェに狙いを定める。

 鋭い冷気が走り、魔の存在を射抜こうとする視線が一点に集まった。

「全く、何をしているんですかあなたたちは……」

「あなたたちがそのザマでは――」

 苛烈な言葉が紅の光を裂く。

 ーーーーーーーーー

「俺たちのメンツも丸潰れになるだろうがよ」

 近藤が唸るように言い放つと、新八が思わず声を上げた。

「こ、近藤さん……!」

 聖徒会の兵らはざわめき、困惑の色を隠せない。

(なぜ? なぜ彼らがここに……! アリウスの場所を知らぬはず……!)

 異国の言葉は伝わらずとも、敵が狼狽していることは真選組の面々に伝わった。

 近藤はわざとらしく肩を竦め、低く呟く。

「おやおや、何を戸惑っているのか分からんが……俺たち警察がここに来たことに驚いているのなら、勘弁していただきたいものだ。ねぇ先生」

 暗がりから伊東が進み出る。

「僕たちはあの学園の自己処理を仰せつかったんだ。あの一件で関わったアリウスについて、何も知らずにいたとでも?」

 その声音は冷ややかで、しかし確固たる自負が籠っていた。

「入り口くらい、捕まえた生徒たちが快く喋ってくれた……後はそれを知らせて迎え撃つだけ。シンプルな話だろ?」

 だが、その言葉に土方の顔には途端に怒りの筋が浮かぶ。 

(我々の生徒に尋問を……人の心がないのか、逆賊にも劣るちくしょうとは……!)

 聖徒会兵らが憤怒に震える。

 近藤が小声で囁く。

「おい、何で怒っているんだ? 俺、何か変なこと言ったか?」

 山崎が汗をかきながら囁き返す。

「し、知りませんよ……言葉分からないんですから」

 その横で沖田が肩を竦め、バズーカを地面に置いた。

「ちくしょうで結構」

 その声は冷酷に響いた。

「醜く肥え太った豚に媚び続ける犬よりはマシだ」

 その瞬間、神楽を踏みつける。

「目の前に豚が転がってんなら食っちまうのが狼よ」

「誰が豚だチンピラ調教師が!!」

 神楽が足を振り上げ、沖田の体勢を崩して転がす。

「っいて、お前じゃねぇメス豚が!」

「私のことだろうが!!」

 二人はその場で火花を散らした。

(まさか……後ろにいるのは見廻り組……!? そうか、あの契約を断った一件で消えた男……佐々木と結託したのか……!)

 聖徒会は戦慄に包まれる。

 バズーカが火を吹いた。

「土方くん! 何をやってるんだ!」

 伊東の叫びが響く。

 土方は煙草を噛み潰すような声で応じる。

「うるせぇ……何話してるか分からねぇが、俺たちをコケにするようなことを話してたのは確かなはずだ」

 刃のような声が夜に響く。

「もういっぺん言ってみろ……!」

(き、貴様らが……!)

「ああ、聞こえねぇな! あんだって!?」

 土方の声と同時に、再びバズーカが発射される。

(……結託……!)

「聞こえねぇって言ってんだろ! もっと腹声出せ! つーか分かるように話せ!!」

 爆炎が夜空を朱に染めた。

(手を……)

 再び爆炎。

「ああ聞こえねえ! つーか聞きたくもねぇ!!」

 土方の怒号が爆音に溶ける。

「反吐がでらぁ! あんなクズどもと手を組むのも、伊東が来たことも! 紅茶中毒の下につくのなんて誰がするかァァァァァ!!」

「ちょっトシ! みんな傷つくから! この一場面みんな見てるから!」

 近藤が必死に制止する。

 だが遠くの丘からそれを見ていたナギサは呆然と紅茶をこぼし続けていた。

「見て!ナギサちゃん、なんかまた紅茶垂れ流しちゃってるよ!! ナイアガラの滝のような勢いで紅茶溢しちゃってるよトシ!!」

「よぉし近藤さん、まんまと奴は大聖堂に入った……マダムごと大聖堂を焼き討ちだ!」

「いやそんな計画知らねぇけど!? つーかそれもうテロリスト!!」

(構わない……どうせ結果は変わらないのだから――やれェェェ!!)

 銃を構える聖徒会兵たちが一斉に迫り、真選組の隊士もまた雄叫びを上げて応じる。

「ウォォォォ!!!」

 夜空を裂くように、鉄と炎がぶつかり合った。

 

ウォォォォ!!

 掛け声が大聖堂の外から轟き渡る。

 佐々木は片眼鏡を指で押し上げ、微かに笑った。

「おや、どうやらあっちでも始まったようですね〜」

 血の匂いと瓦礫の粉塵が漂うバシリカの奥、彼はわざとらしく肩を竦める。

「ご覧の通り我々エリートに包囲されています。大人しく武器を捨てて投降してなさいとか言ってみましたけど嘘ですから」

「実はこのセリフ、結構気に入っていて使い回しているだけですから」

「本当に捨てないでくださいね。一応警察なんで、無抵抗の皆殺しするのは色々まずいんで」

 その軽薄な口調に、ベアトリーチェの紅い瞳が怒りで燃え上がる。

「貴様ーー! どうやってあの中を生き延びた!!」

 佐々木は微笑を崩さず、手首を軽くひらひらと振った。

「そんなに興奮しないでくださいよ。順を追ってご説明しますから」

「まず、私はあなたのその姿の一撃で吹き飛ばされた……それは確かです」

「ですが、あなたは夜郎自大し、私を始末したかどうかを確認しなかった」

「……あっ、あなたは凡人の神なのでエリートの言葉知りませんよね? 簡単にいうと、自分の力に自惚れた愚かなことを指す意味ですよ」

「なっ!」

 ベアトリーチェが紅の裾を揺らし、歯噛みする。

「まぁ、そのおかげで私は生き残ったんですけどね……」

「帰りは遅かったけどね」

 信女がぼそりと口を開く。

「信女さん、それは合流した時に渡したドーナツでおあいこにしたでしょう」

 佐々木は苦笑し、懐からドーナツを取り出す。

「仕方ありませんね。このドーナツでも食べて――」

 次の瞬間、信女がその手ごとガブリと噛みついた。

「アムアマアマ」

 佐々木は上下左右に手を振り回し、必死に引き剥がそうとする。

 だが表情は崩さず、観客に語りかけるように呟いた。

「雰囲気壊すような会話続けてすいませんね。でも少しくらい希望ある感じで会話しないと読者さんも安心出来ないでしょうし……ほら、あそこで頼みの坂田さんも参っているみたいですからね!」

「フン!」

 無理やり手を叩きつけて、ようやく信女を引き剥がす。

 ベアトリーチェの瞳が紅く閃いた。

「一度逃げた者たちが助けに来ようと……無駄なこと! 丁度いい機会です。あなた方もろともここで始末してあげましょう!」

 その両手が広がると、バシリカの床に亀裂が走り、そこから無数の聖徒会兵が紅の光と共に召喚される。

 銃声と足音が反響し、サオリたちは銃を構え直した。

 しかし――坂田銀時だけは、依然として眠るように微動だにしない。

「全く、エリートの私が彼らの手を引いて助太刀に来たというのに……おねんねですか。肝心な時に頼りにならないんですから。ねぇ、アリウスの隊長どの」

 天上から、複数の足音。乾いた声と共に銃弾の雨がベアトリーチェへと降り注ぐ。

 紅い月光を浴びる彼女は難なく舞うように身を翻し、弾丸を避ける。

「ああ、本当だ。全く頼りない先生を信じてしまったものだ」

 声の主は天井から銀光を背に姿を現した。

 それは――かつてトリニティーで投獄されていた、アリウスの生徒たち。

「こんな状況下でも優雅に睡眠を取れるのだからな」

 ベアトリーチェの紅が揺らぐ。

「あなたたちまで……何のつもりだ! この私に、神に謀反を起こそうというのですか!」

 隊長格の一人が鋭く答える。

「私たちは何も知らない。悪い大人に引っかかっただけだ」

「アリウスにも太陽が昇ると自由に生きられるようになる……そんな大ボラを指導で教え込まれたんだ」

 彼は天井から飛び降り、地を踏みしめる。

「こいつらも皆、その悪い大人に騙された口でな」

「ほら、そこでおねんねしている奴だ。全く、信じてきてみればこのザマ」

 紅の瞳で銀時を睨み、銃口を向ける。

「全く、お天道さんが昇っていると聞いてきてみれば……どこにそんなものが昇っていると言うんだ? この大ホラ吹きが!!」

 乾いた銃声。弾丸が真っ直ぐに飛び、銀時の顔面へ迫る――

 その時。

 銀時の瞼がゆっくりと開いた。

 紅い月光の中で、その瞳に再び光が宿る。

 咄嗟に顔を横に逸らし、弾丸を掠めてかわした。

「ホラなんざ吹いちゃいねぇよ」

 掠れた声で、だが確かに言葉を紡ぐ。

「太陽なら上がってるじゃねぇか……そこかしこにたくさん」

 銀時は胸に突き刺さった赤の刀を引き抜き、それを杖にして立ち上がる。

 血に濡れた白髪が揺れ、彼の影はなおも強く地を踏みしめた。

「へっ、眩しくて眠りやしねぇ……」

「「「先生!!」」」

 サオリたちの叫びが弾ける。

 佐々木は片目を細め、皮肉げに笑った。

「おやおや、ようやくおねんねから卒業したと思ったらそのザマとは……これは期待できるほど動いてくれとも思えませんねぇ、隊長殿?」

「ふっ、隊長? そんな称号もう捨てたさ!」

 元アリウス隊長は堂々と胸を張った。

「私の名はフレア……先生からの叱責で思い出したのさ。私の名前を」

「アリウスに太陽を登らせるに相応しい名前だろ」

 銀時は肩で息をしながらも、口元を吊り上げた。

「そんなもんなくたって、お前ら十分なくらいなひかりをもってるつーの」

 

銀時は血に濡れた唇を吊り上げ、片目を鋭く光らせた。

「俺が眠れねぇくらいにはな」

 フレアが地を踏みしめ、声を張り上げる。

「ふ、戯言を吐けるなら心配はいらないな……」

 サオリが駆け寄り、折れた木刀の柄を差し出した。

「先生、コイツを」

 銀時はそれを受け取り、眉を顰める。

「ったく……」

 背後で信女が冷たい声を響かせる。

「準備は出来た? 早くしないと味方も構わず切り捨てるよ」

「へいへい、わーったよ」

 銀時は肩を竦め、皮肉交じりに笑う。

「ったくこれだから女ってもんは嫌なんだ。勝っても負けても地獄だな、こいつは」

 折れた木刀の柄と剣先を両手に構え、ベアトリーチェに向かって踏み出す。

 紅き巨影が嗤った。

「死に損ないどもめが! 貴様ら雑魚が何人集まろうと何も変えられないとなぜ理解しない!」

「なぜ立ち上がる! なぜ抗う! なぜあなたたちの瞳から光が消えない!!」

「気に食わないその瞳! 折れた剣で一体何をしようというのか!!」

 銀時の声が、堂内に轟く。

「折れてなんかいねぇよ。良く見やがれ、目ん玉ひん剥いてな」

 ベアトリーチェの紅の瞳が揺らぎ、サオリたちは息を呑む。

「!?」

「「「!?!?」」」

 その瞬間、銀時の両手に握られた木刀が眩く光を帯びた。

 柄だけになった方には蒼の刀身が伸び、

 剣先だけ残った方は、柄と刀身を結ぶように桃色の光で形を成す。

 崩れた剣は、再び「光」として蘇った。

ーーーーーーーーーーーーー

 少し前。

 サオリから木刀の柄を受け取った時、シッテムの箱から声が響いた。

『先生! 剣が折れたなら、私たちが先生の剣になります!!』

 ――アロナの声だった。

『先生の剣は、簡単に折れるものじゃないと知っていますから!』

 銀時の胸に熱が灯る。

「お前……」

 次いで、ケイの声が冷静に割り込んだ。

『勘違いしないでください。私はアロナと違って王女のために剣になっただけです』

『あなたが死んでは、王女は悲しみますから』

 銀時は口元を吊り上げ、笑った。

「上等だ。見せてやろうじゃねぇか……俺たちの刃を!」

 

ーーーーーーーーーー

 ベアトリーチェが怒声を放つ。

「フン! たかが剣が元に戻ったところで結果は同じ! その瞳から光を消し去るだけ!!」

「さっさとその瞳から光を消せェェェ!!!」

「行くぞォォォ!! テメェらァァァァァ!!!」

 銀時の叫びが堂内を震わせた。

「ババアの鎖、断ち切るぞォォォォ!!」

 「ウォォォォ!!」

 サオリ、フレア、そしてアリウスの生徒たちが一斉に声を上げ、ベアトリーチェへと突撃する。

 銃火と紅の魔力が交錯する中、佐々木が手を上げた。

「さて、我々も始めるとしましょうか」

 声色は軽いが、その目は研ぎ澄まされていた。

「見廻組につぐ。あの凡人たちの戦いの援護にまわります。有象無象の幽霊たちを、決して彼らに近づけてはなりませんよ。――エリートとして」

 見廻り組の銃口に剣先が一斉に光を宿し、幽鬼の群れを迎え撃つ。

 光と紅が交差し、戦場は烈火の如き修羅場と化していく――。

 

銀時の蒼き刀身が弧を描き、光の奔流となってベアトリーチェへと振り下ろされる。

 だが、その一閃は届かなかった。

 紅に輝く新たな刀身が瞬時に生まれ、甲高い金属音を響かせて受け止める。

 刹那、影のように跳躍したフレアが銃口を突きつける。

「……っ!」

 しかしベアトリーチェは視線すら動かさず、伸ばした片手で銃身を掴み取った。

「なっ――!」

 フレアの息が詰まる間もなく、前方からサオリが駆け寄ってくる。

 愛銃を構え、まっすぐにベアトリーチェを狙うが――

 ベアトリーチェは獰猛に口角を吊り上げ、掴んだフレアの身体を振り回し、サオリに向かって叩きつけるように投げ飛ばした。

 ドガァァァン!!

 二人は大聖堂の壁に激突し、砂煙が舞い上がる。

 銀時は歯を食いしばり、蒼の剣を押し込もうと力を込める。

 しかしベアトリーチェの腕力は揺るがず、膠着する。

 銀時はもう一方の桃色の刀で横薙ぎに振り抜き、顔面を狙った。

 ゴッ!

 確かに命中した――だがその直後、ベアトリーチェの紅の剣が閃き、銀時の右手首を強かに打ち据えた。

「なっ!?」

 握力が弾け飛び、蒼の刀が手から離れる。

 銀時が驚愕した刹那、紅の影が跳ね上がった。

 ドガッ!!

 重い蹴りが鳩尾を抉り、銀時は血を吐きながら宙を舞った。

 ガシャァァン!!!

 背中からステンドグラスを突き破り、外光を浴びながら大聖堂の外へ吹き飛んでいく。

 「――撃て!!」

 ミサキの怒声と共に、ロケットランチャーから七発の砲弾が雨のように降り注いだ。

 ドドドドドドドォォン!!

 爆炎が大聖堂を揺らし、天井から瓦礫が降り注ぐ。

 アリウスの生徒たちも続いた。

 銃口を一斉に構え、火線の嵐を浴びせる。

 だが――

 ベアトリーチェは悠然と紅の刀身を幾本も生み出し、床に突き立てた。

 ドゴォッ! 突き立つ瞬間、砂煙が一気に巻き上がる。

 アリウスの少女たちは一瞬、手応えを錯覚した。

 ――当たった。命中した。押し切れる。

 だが次の瞬間、砂煙の奥から紅の閃光が閃き、光線となって彼女たちを薙ぎ払った。

「――ッ!!」

 直撃を受けた少女たちは吹き飛ばされ、床を転がり、壁に叩きつけられる。

 続く一閃、二閃。

 紅の斬撃が大聖堂を縦横無尽に駆け抜け、悲鳴と衝撃が連鎖する。

 それでも。

 なお彼女たちは、立ち上がろうとする。

 膝をつき、血にまみれ、震えながら――それでも武器を握り直す。

 ベアトリーチェの胸中に、黒いざわめきが生じた。

『渇く……どうしようもなく渇いてしまう』

『何度地に落としても、何度絶望させようと、何度でも立ち上がる』

『なぜだ? なぜ圧倒的力の前に平伏さない?』

『まさか……光を見たというのか? あの男の背から、火種を貰い受けたというのか!?』

 「ぐはっ!」

 フレアの身体が紅の奔流に弾かれ、床を転がる。

 全身が痛みに悲鳴をあげ、指先すら思うように動かない。

 それでも、彼の視線だけは炎のように消えなかった。

 倒れ伏したフレアの眼は、決して閉じることなく、銀時から弾き飛ばされた青い刀を求めてなお前へと這い進んでいた。

 

ミサキが動いた。

 彼女の肩に重く構えられたロケットランチャーが唸りを上げ、一発の弾頭が射出される。

 今回は分裂弾ではない。残弾僅少の高威力・高貫通弾――全てを貫くための切り札だった。

 白い尾を引き、弾頭は一直線にベアトリーチェへ突き進む。

 次いで、轟音と共に爆炎が巻き上がり、大聖堂全体が揺れるほどの衝撃が走った。

 ――直撃。

 ミサキの瞳は確信を映した。

 しかし、炎が収束した先に立つ巨躯は健在だった。煤一つ付かず、赤き衣の如き魔力を纏ったまま。

「っ、硬い、これで抜けない何て……!」

 吐き捨てるようなミサキの声。

 サオリはその光景を見て、しばし無言のまま考え込んだ。

 ミサキの砲撃ですら通じない――ならば自分に何が出来るのか。

 だが、退くという選択肢は彼女の中にはなかった。

 深く息を吸い込み、身を沈め――決意と共に告げる。

「ミサキ、援護を頼む……ッ!」

「っ……リーダー?」

 サオリは迷わず駆け出した。

 紅の斬撃が空を裂き、地を抉る。それらを身をかすめながら、彼女は低く地面を這い、ただ一直線にベアトリーチェへ迫る。

 その背に驚愕を覚えながら、ミサキは即座にサイドアームを抜き放ち、援護射撃を浴びせた。乾いた銃声が連続し、いくつかの紅光線が軌道を逸らす。

 肉薄するサオリの姿を、ベアトリーチェは冷笑と共に見下ろす。

「はッ、非力な子どもが、何度やって来ようとも……ッ!」

「いいや――!」

 サオリの声は鋭い。荒々しさと共に、奇妙な静謐さを孕んだ声だった。

 その瞳に宿るものは――燃え盛る焔。

 スクワッド配属時に支給された愛銃。

 何度も手入れを繰り返し、危険を冒してまで独自にパーツを集め、調整し続けてきた銃。

 それはただの道具に留まらず、彼女の血肉と同じほどに馴染んだ相棒だった。

 効率、確実性――それだけを求めて磨き上げてきた。

 だが今は、それだけでは足りない。

 必要なのは――爆発的な一撃。限界を越えた力。

「数で攻めるな、一発に込めろ、全てを、私の、文字通り全てを――ッ!」

 全身の血が沸騰する。産毛が総毛立ち、心臓が耳を裂くほどの鼓動を刻む。

 骨が軋み、筋肉が悲鳴をあげる。

 それでも――引き金に込めた指は、震えを知らなかった。

 「だが――ッ!」

 胸奥に溢れる苦悩も、虚しさも全てを呑み込み、サオリは叫ぶ。

「それでも、抗う事に意味はある筈なんだ……っ!」

 地を踏み砕き、銃口を向ける。

 その瞬間――サオリの全身から奔流のような熱が溢れ出した。

 マズルフラッシュが炸裂する。

 雷鳴のごとき銃声、炸裂する反動で床が抉れ、衝撃波が周囲を打つ。

 青白き光を纏った弾丸――それは流星。

 宛ら夜空を裂く彗星のように、ベアトリーチェの肩を撃ち抜いた。

「――ッ!?」

 紅の権能が軋む。

 初めて味わう痛みと共に、赤い液が飛散する。

 ベアトリーチェの上体が仰け反り、鋼鉄すら砕く防御を貫かれた事実に瞳を見開いた。

 即座に周囲へ放たれた衝撃波。

 瓦礫が弾け飛び、サオリの身体も抗えず宙を舞う。

「ぐぅッ……!」

 叩きつけられる寸前、ミサキが身を挺して受け止める。

 抱き締めたその身体は異常な熱を帯び、蒸気を吹き上げていた。

「っ、リーダー!?」

 息も絶え絶えのサオリは、しかしなお瞳を逸らさず、ベアトリーチェを睨んでいた。

 その肩口から溢れる鮮血を見つめ、ベアトリーチェは呆然と呟く。

「ぬ、かれた……っ? 私の、権能が――?」

 防御は絶対のはずだった。

 それを抜いたのは、ただの少女の一発。

 サオリは立ち上がる。

 崩れ落ちたマスクの下、露になった口元は挑発的に笑んでいた。

「御立派な大人とやらに、一矢――報いてやったぞ……ッ!」

 その瞬間、ベアトリーチェの全身から軋みが響く。

「ふざけるなァアアアアッ!」

 怒声と共に紅の奔流が炸裂。

 大聖堂が震え、ステンドグラスが次々と砕け落ちる。

「子どもがッ! 搾取されるべき弱者がッ! 崇高の足元に及ばぬ木っ端がッ! この私に傷を!? その様な言葉を――ッ!」

 咆哮と共に放たれる紅の刀。

 サオリの身体を狙って、無慈悲に飛来する。

 サオリにはもう、避ける力すら残っていなかった。

「この暗闇に! この世界に!」

「火種なんていらないのです!!」

「あなたたちが如きか細き火種など、この手ですぐに消え去るのです! このように!!」

「ヌァァァァァァァ!!」

 振り下ろされた刃は、次にフレアへも向けられる。

 紅の波動が獣の咆哮のように迸り、仲間たちを一掃せんと迫った――。

 

その時、振りかざそうとしていた手に向けて自分の投げたはずの刀が突き刺さる。

 

見てみると銀時がサオリの前に立ち投げた刀を弾きそのまま掴みなおしてベアトリーチェの手に向けて投擲したのだ。

 

それを理解している間に銀時は桃色の柄の木刀を持って突進してくる。

 

「せいっ!」

 

「貴様!」

 

銀時は蹴りが当たり吐血。

ベアトリーチェは桃色の方に肩を突き刺される。互いに地に足をつけてベアトリーチェは落とした刀を掴み突きを繰り出す。

 

銀時も同様に突き刺さっていた赤い刀を引き抜き突きを繰り出す。

 

『燃やし尽くせ魂を!』

 

『生を手繰り寄せろ!』

 

『縋りつこうが、泣きつこうが、構いやしねぇ』

 

『どんなに小汚くてもーーー』

 

互いの突きがぶつかり合う。そして、銀時の剣は砕けた。

 

ベアトリーチェ「終わりーー!」

 

銀時の反対の手には離されたはずの青色の刀があった。先ほどの足に地についた間にフレアが銀時に向けて投げていたのだ。

 

「行けェェェ!!」

 

「ウォォォォ!!!!」

 

銀時が青い刀でベアトリーチェの顔面に一閃を繰り出す。

 

『守り抜け!!』

 

ベアトリーチェの刀は宙を裂いて舞い、重力に引かれるまま地へ突き刺さった。
直後、青白い刃の一閃を浴びた彼女は、鮮血を吐き散らしながら呻き声を上げる。

「ガァァァァァァ!!」

顔を押さえながらも、なおも光線を放とうとする――しかし、その隙すら許さぬ勢いで、銀時の身体が疾風のごとく迫る。青い残光をまとった乱撃が何度も何度も宙を裂き、風が咆哮を上げた。

刃の嵐に翻弄され、ベアトリーチェの巨躯は後退し、吐血を繰り返す。

 

『反撃する暇を与えるな』

 

『息さえさせるな』

 

『もうチャンスは二度とねぇ……』

 

『これで決めなきゃ負ける』

 

鋭い突き、振り下ろし、そして逆袈裟に振り上げる斬撃――容赦ない 連撃が、怒涛の波のようにベアトリーチェを襲った。

 

『終わりにするんだ!』

 

銀時は最後の一撃にすべてを込め、突きの構えをとる。

 

「ウォォォォ!!!!」

 

「これでしめぇだァァァ!!」

 

雄叫びと共に壁際へと押し切り、刃は深々と迫った。

 

「ぐはぁ!」

 

ベアトリーチェの口から血が溢れ、その身は一瞬動きを止める。だが、完全に倒れたわけではなかった。彼女は刀身を両手で掴み、その威力を必死に抑え込んでいたのだ。

 

「貴様、貴様ァァァァァ!!!」

 

怒号と共に腕を振りかざし、灼熱の力を銀時に叩きつける。銀時は跳躍してかわす、その瞬間、背後から銃声が響いた。

 

「撃てェェェ!!」

 

フレアの号令。アリウスの生徒たちが一斉に引き金を引き、無数の弾丸が雨のようにベアトリーチェを襲う。轟音は止むことなく響き、圧倒的な弾幕に押され、ベアトリーチェの身体は壁に叩きつけられた。砂煙が立ちこめ、姿は見えなくなる。

 

「やった……」

 

「ついにやった……!」

 

「マダムを、ベアトリーチェをついに倒した!」

 

「自由だ!これで私たちは、アリウス自治区はーー」

 

歓喜に満ちる声。しかし銀時だけは、その奥を凝視していた。――砂煙の隙間から、紅の閃光が覗く。悪魔の眼。

 

「!」

 

「まだだァァァァァ!!」

 

次の瞬間、赤い弾丸が放たれ、標的はフレア。避ける暇もなく迫る凶弾を、銀時は身を挺して庇った。

 

「ぐっ……!」

 

弾丸が身体を貫き、銀時は膝を折る。

 

「せ、先生!」

 

フレアは叫び、血に染まる彼に駆け寄った。

 

「ぬるい、ぬるすぎる……」

ベアトリーチェは砂煙を裂いて現れ、不気味な笑みを浮かべる。

 

「あなたたち如きか細き火種がいくつ集まろうと!このマダムを焼き尽くすことなど出来はしないのですよ……!」

 

「この不朽から存在する鎖を断つことなど出来はしないのですよ!!」

 

「ハァッ!!」

 

全身を震わせると、彼女の身体に刻まれた傷は一瞬で消え去った。

 

「ば、バカな……あれだけやってもまだ……」

 

アリウスの生徒たちが愕然と声を上げる。

 

「太陽などとはよく言ったものです、吹けばすぐに掻き消える蝋燭のような脆弱な火種、それがあなたたちだ!!」

 

「大人しく神の鎖に繋がっていればいいものを……」

 

「まさか、掻き消したはずの火種を時代の敗北者から飛び火を貰い受けるとは………」

 

「それもこれで終わる。さっさとケリをつけるとしましょう。火種は消さねばなりません、その鈍く光る光を!!」

 

フレアは愛銃を構え、再び戦う覚悟を決めた。しかし銀時が血に濡れた手で彼女を制する。

 

「まて、もういい。もう俺だけで十分だ。」

 

「その火はとっておきな、明日を生きるお前の名前のためにもよ」

 

「だが!」

 

「それにーー」

 

「アイツにゃもう呼び出せるダチなんざどこにもいねぇんだからよ」

 

血に濡れ、なおも燃え尽きぬ炎を瞳に宿したまま、銀時は立ち上がる。

 

ベアトリーチェは両腕を天へ広げ、声を轟かせた。

「さぁバシリカの兵たちよその身をここに集結させこの者たちを根絶やしにしなさい!!」

だが――応える声はない。

広間に冷たい沈黙が降り立ち、彼女の言葉は石造りの壁に虚しく反響するばかり。

「…………」

不気味な静寂が続き、ベアトリーチェの眉間に皺が寄った。

「なぜ、なぜここに来ない。バルバラに他の聖徒会は」

その問いに答えるように、影から佐々木が悠然と現れる。目に宿る光は冷酷で、どこか愉悦を含んでいた。

「残念ながらこの死に損ない共はみんなこのエリートが始末してしまいました。」

「なっ!」

ベアトリーチェの表情が強張る。

「ここだけじゃありませんよ。ここ一体真選組に、ゲヘナ、トリニティーの治安部隊が皆あなたの配下にあった幽霊たちを皆制圧してしまいましたから」

「ま、まさか!エデン条約機構の全部隊がここに来たというのですか!?」

――その頃。

真選組は新八、神楽と共に、爆音を轟かせるバズーカと鋭利な刀を駆使し、聖徒会の兵を次々と制圧していた。

一方、ゲヘナの万魔殿。

「いいか!我らが友、シャーレの先生に仲間の異三郎に危害を加えた連中だ!!遠慮は無用我が万魔殿の全勢力を持って奴等を撃てェェェ!!」

マコトの声が響き渡る。

「はいはい分かりましたよ。」

イロハが気怠そうに返事をしながら号令を飛ばすと、戦車の砲口が一斉に火を噴き、大聖堂を震わせる轟音と共に砲弾が飛んだ。

マコトはその光景を見て高らかに笑う。

「キハハハハハ!!」

だが、頭上にも砲弾が迫っていることには気づかず――直撃。

「グハッ!」

煙を吐き、髪はアフロのように膨れ上がる。

「オイ!イロハ!!わざとこのマコト様を狙っただろ!!!」

トリニティーでは正義実現委員会が大聖堂を固め、聖徒会を足止めしていた。

さらに――。

「ワッハハハ!!我らが新しく設立した補習攘夷党の前から逃げようなどできるわけがないだろう!!」

桂の高笑いに続き、アズサ、ハナコ、ヒフミが戦線を支える。

「さて、押さえ込むとしようかヒフミ」

「はい、教えてあげましょう♡」

「攘夷の心意気を!!」

「ペロロの良さを!!」

「夜の遊びを♡」

「ってみんな目的変わってるじゃないですか!!! 後補習攘夷党って何!?いつ名前改変したんですか!!これじゃただのテロリストですよ!!」

 

無慈悲にプラカードを振り回すエリザベス。その一撃ごとに、聖徒会の兵が吹き飛んでいく。

プラカードには大きく――

エリザベスプラカード『ヒフミツッコミファイト』

と書かれていた。

 

ーーーーーーーー

 

戦場を見据え、サオリが低く言い放つ。

「……ベアトリーチェ、神芝居もここまでだ。」

ミサキもまた冷静に声を重ねた。

「あの男の言う通り聖徒会も封じられている状態で私たちを相手取るほどの力もあなたには残っていないはず……」

しかしベアトリーチェは冷笑を返す。

「ふふふ、一体何を勘違いされているのか知りませんが私はまだ戦える。」

「雑兵共を掃除するための駒が扱えなくなっただけの話。私が直接手を下すことになっただけのことですよ。」

「力が落ちとてあなたたちを皆殺しにするぐらいの力は残っていますからね」

そして高らかに、狂気を孕んだ笑声を上げた。

「ふふふふははははは!!!!」

ーーーーーーーーー

大聖堂の奥深く。

重苦しい空気の中で、ミカはひとり、殿を務めていた。

「はぁ、はぁ……痛い……疲れた……あーもう傷だらけ」

荒い息を吐きながら、彼女の身体は血と泥にまみれ、衣服は裂け、傷痕が全身に刻まれている。

それでもなお、聖女バルバラを含む聖徒会を前に立ちはだかり続けていた。

だが――限界はすでに近かった。

彼女は震える手を見下ろす。

指先は腫れ、切り傷と青痣が重なり合い、ひどく醜く、かつての面影を失っていた。

数ヶ月前、保湿クリームだの美容だのと口にしていた自分がこの姿を見たら――きっと驚愕のあまり意識を失ってしまうだろう。

その現実に小さく笑い、彼女は拳を握りしめる。

「でも大丈夫」

その言葉とともに、ミカはふらつく身体を無理やり起こし、大聖堂を駆け抜けた。

辿り着いたのは、古びた扉の向こう。

「ここは、聖歌隊室?」

中には、使われなくなったオルガンが沈黙し、埃を被った楽譜が積み重なり、古い蓄音機が忘れ去られたように置かれていた。

「オルガンに楽譜、蓄音機まである」

「そっか、そうだよねアリウスも私たちと同じように同じ授業を受けていたんだもんね」

鍵盤を押しても音は鳴らない。蓄音機も動く気配はない。

「………動かないか〜ま、そうだよね。長い間使ってなさそうだし、あのマダムがそんな授業受けさせるはずないし……仕方ないよね」

ミカは短く息を吐き、静かに目を伏せた。

そして、ふと微笑む。

「コハルちゃんが身を挺して守ってくれた時かっこよかったなぁ。コハルちゃん物語のお姫様みたいだった……」

「あの後先生が木刀を投げて助けに来てくれて、私もそういうお話が好き。」

「窮地に陥ったお姫様を運命の人が救うそんな御伽話。」

子供の頃に憧れたような、胸がときめく物語。

だがそれは、自分には決して与えられないものだと知っている。

「私もそんな物語の主役になりたかった」

「でもーーわかってる私にそんな資格はないって」

唇に小さな苦笑が浮かぶ。

「先生に聖女を倒す魔女がいてもいいよね?なんて言ったけど」

「『魔女』がハッピーエンドを迎える物語なんて存在しないもの」

それでも。

「これで最後になるかもしれないけど……私みんなのために祈るね」

「多分アツコを救えてもあなたたちのその先は苦難に満ちているだろうけど……それでもあなたたちには未来がある。」

「あなたたちの未来には光明がある。だからーー」

「あなたたちのその行く先に幸いが祝福があらんことを」

その瞬間。

動かなかったはずの蓄音機から――柔らかで荘厳な旋律が響き始めた。

「……あれ? あははっ、壊れてたはずじゃなかったの?」

驚きと共に、ミカは微笑んだ。

「これはーー慈悲を求める歌」

「別にこの歌が好きなわけじゃないけど」

 

同じ頃、バシリカへと聖徒会の兵たちが雪崩れ込む。

その行軍を遮るように、柔らかな声が響いた。

「あは⭐︎何をそんなに急いでいるのかな?」

「言ったはずだよあなたたちは通れないって」

「ここからは救済の戦いを繰り広げる主人公の舞台」

「私たちみたいな悪役には許されていないの」

ミカの頭上で、淡い光の輪――ヘイローが静かに輝きを放つ。

「さぁ先生、あの子達を、鎖から解き放ってあげて」

愛銃を構え、彼女は立ち上がった。

そして歌う。アリウス生徒たちの祝福を願って。

「――Kyrie eleison」

その声は祈りとなり、祝福の旋律はバシリカへと響き渡った。

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

ベアトリーチェの哄笑が響き渡る中、不意に荘厳な旋律が空気を震わせた。

――"Kyrie eleison"。

慈悲を求める歌声が、大聖堂を満たす。

アリウス生徒たちが息を呑み、互いに顔を見合わせた。

「これは……」

ミサキの瞳が大きく見開かれる。

「この歌は"Kyrie eleison"……?」

異三郎も驚愕を隠せず、かすれた声を漏らした。

「慈悲を求める歌ですか……こんなところで聴けるとは思ってもみませんでしたが……」

だが、ただひとり――ベアトリーチェだけがその響きを拒絶する。

「なりません!!」

彼女の声は悲鳴のように大聖堂を揺らした。

「私の領地で慈悲を求める歌を響かせるなど!!」

「一体どのような手段をーー!」

「楽器も蓄音機も全て壊したというのに、まさか奇跡が起きたとでも!!」

血走った目で辺りを見渡し、憎悪をむき出しに叫ぶ。

「なりません!生徒は憎悪を軽蔑を……呪いを謳わなければなりません。」

「お互いを騙し傷つけ合う地獄の中で私たちに搾取されるべき存在であるべきなのです!!」

そのとき。

「黙れ、」

銀時の低く荒んだ声が、ベアトリーチェの絶叫を切り裂いた。

彼の目は炎のように燃え、血に塗れた姿でなおも立ち上がる。

「さっきからギャーギャー薄汚ねぇ口で戯言吐きやがって……うるせぇんだよ」

「テメェの教育方針なんざ知るかって話だ。」

刃を構え直し、一歩ずつ迫る。

「それにテメェ火種どうとか抜かしてたが消せやしねぇよもう誰も」

「たとえか細い火種でも集まれば闇も照らせる。」

「一つでも火種が残っていればまた火を灯せる。」

「テメェなんぞに俺たちの火種は消せねぇよ」

「何度消そうたって無駄な話だ。」

銀時の声は叫びとなり、心を震わせる。

「俺にはとっておきの火種があるんだ」

「絶対に消えねぇ火種がついてんだ。」

「俺ぁ何度消されても何度でも燃え上がる」

その瞬間。

曇天を覆っていた雲が裂け、空が一気に晴れ渡る。

光が溢れるかのように差し込む。だが、それはただの陽光ではなかった。

――天より落ちる巨大な影。

それは隕石だった。

ーーーーーーーーーー

ティーパーティーの行政官が声を震わせる。

「ナギサ様、あの隕石は……?」

ナギサは確信に満ちた眼差しで空を見上げた。

「間違いありませんあれはミカさんの神秘によるものです。」

ーーーーーーーーーーー

大聖堂の巨大なステンドグラスを突き破るように、光が流れ込む。

七色に砕け散る輝きが、戦場を染めた。

銀時はその光を背に立ち、刃を掲げて吠える。

「お前なんぞにーー」

「この光は消せやしねぇ!!」

ベアトリーチェの顔が恐怖に歪む。

「な、何が起きているんですか!!」

「まさか!この光は!!」

――朝日だった。

長く隠されてきた太陽が、ついに姿を現したのだ。

「させてたまるもんですか!!」

怒声と共に、ベアトリーチェは銀時に向けて両手を伸ばし、力を放たんとする。

しかし、その瞬間。

乾いた銃声が鳴り響き、弾丸が彼女の腕を撃ち抜いた。

「一体どこからーー」

銃口の先から姿を現したのは、一人の少女。

ヒヨリが鋭い眼差しでスコープを覗き込み、低く告げる。

「私のこと忘れていましたね?」

アツコの傍らを離れず、ずっと機を伺っていたスナイパーの一撃。

その弾丸が、マダムの集中を断ち切った。

「こ、このままではーー」

そのとき、耳に届く声があった。

ミカの祈るような囁き。

『先生、マダムの鎖を断ち切って』

「ウォォォォ!!」

銀時の咆哮が大聖堂を揺るがす。

両手に握った二刀を突きの形に重ね、全身全霊の力で前へ。

その一撃は鎖を断ち切る刃となり、ベアトリーチェを押し出し、ステンドグラスの向こうへと叩きつけた。

空から落ちてきた巨大な隕石が、まるで裁きの鉄槌のように彼女を押し潰す。

閃光と轟音が交錯し、大地を揺らした。

こうして、ベアトリーチェはミカの神秘が生み出した隕石の下に沈んだ。

 

 




次回 我々は陽の下でそれぞれの道を歩む


銀時「オイ、テメェら姫さんに何をやってんだクソガキィィ共!!」

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

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