透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

133 / 154
読者様からのご要望回をこの度アリウス曙光篇の最終回とさせていただきます。なんやかんやあってバブルス星のゴリラたちこの世界に来てるからよろしく〜ではどうぞ。

ーーーーーーーー反抗声明ーーーーーーーー
天真爛漫、バカまじめ
三大要素をかき混ぜて
偏見、丸ごとぶち壊せ
バナナ!サラダ!ホウ・レン・ソウ、Yeah!!!

You see 私らの事見て
You think? 青二才、小娘
偏見、丸ごとぶち壊せ
今に!見てろYO!こんちきSHOW!

本気出させたらオレ、キレキレ
充電完了、I'M ELECTRIC! OH!
I'M! 半導体!

なんと言われたって
いつでもrockin'
Whoa oh oh~
荒波を起こして
激しくjumping
Whoa oh oh~
壁に立ち向かって
繰り出すpunching
Whoa oh oh~
見くびるなよhey boy!
全力で行こう!
Whoa oh oh~

(反・抗・声・明 反・抗・声・明 反・抗・声・明)
バナナ!サラダ!ホウ・レン・ソウ、Yeah!!!


第百十九訓 終わりよければ全てよし、じゃなくてゴリラ

まるで絵に描いたように雲ひとつない空。

 降り注ぐ陽光は、トリニティー総合学園の白亜の壁をきらめかせ、心地よい朝の空気を漂わせていた。

 そんな中、銀時たちは学園のテラスに腰を下ろしていた。

 涼やかな紅茶の香りと、遠くで響く鐘の音。穏やかなはずの場に、しかし妙な空気が混じっている。

「はぁ?……アレからミカの様子が変?」

 銀時が湯気を吐きながら椅子にだらしなく腰掛け、眉をひそめる。

「えぇそうなんです。」

 ナギサは端正な仕草でカップを置き、しかし表情は硬い。

「実はあの後、いくらミカさんが改心して行動したとはいえ、やった事はやったことだからと聴聞会が開かれたのですがーー」

 紅茶の水面に揺らめく顔は沈痛で、声は次第に細くなる。

「アレからずっと夜遅くに出掛けていて、戻ってきたと思ったら顔も合わせずそのまま着替えてどこかへ行ってしまったんです。」

「ナギサぁ、そういう時はな、黙って赤飯炊いてやれ〜」

 銀時は菓子をひょいと口に放り込み、軽口を叩く。

「せ、………」

 ナギサの手が震え、カップから紅茶がこぼれ落ちる。

「あらら、またショックのあまり紅茶垂れ流してるよ」

 神楽が呆れ顔で指さした。

「ちょっと銀さんやめてくださいよ。全然笑えませんよ。」

 新八が慌ててハンカチを差し出す。

「そ、そうです冗談はやめてください! ミカさんは結婚するまでそんな事は無いですから!!」

 ナギサは顔を真っ赤にして叫び、ロールケーキを手に構える。

「口にロールケーキぶち込みますよ!!」

「将来結婚すると決めた相手なら分かんねぇだろ。口にぶち込みますよ〜」

 銀時はにやりと笑い、挑発するように身をのけぞらせる。

「そんな方はいません! 認めませんから! ヒフミさんであろうと認めませんから!!」

 ナギサの声は震えていた。それは怒りか、焦りか、あるいは恐れか。

 銀時は片手をひらひらと振り、軽く肩をすくめた。

「友情もいいけど、相手の決断も尊重してあげなさい。」

「そもそもね、ミカな奴がお前と同じで百合好きとは限らないんだよ。」

 言葉は軽くとも、視線だけは真剣だった。

「ミカもようやくお前という重い枷を解いて歩み出そうとしてるんだから、そこは応援してやろうや」

「つまりだ。こういう時親友のお前は、大人しく赤飯製造マッシーンになるしかねぇだろ。泣きながら赤飯製造マッシーンだよお前。」

「銀ちゃん、私はいつになったら赤飯食べられるアルか?」

 神楽がじと目で首を傾げる。

「あなたは大人しくロールケーキでも食べていてください。」

 ナギサは吐き捨てるように言い、ロールケーキを突きつけた。

「ムググ………」

 神楽は頬を膨らませ、甘味を頬張る。

「そういうところからミカさんが逃げたんじゃないんですか?」

 新八の冷静な一言が場を射抜いた。

「新八さん、あなたもロールケーキいりますか?」

 ナギサは淡々とロールケーキを掲げる。

「いえ! 間に合ってます、すいませんした!!」

 新八は慌てて両手を振った。

 ナギサの視線はふと遠くを見つめ、声が小さくなる。

「本当に誰なんでしょう……一体、誰が………」

――――

 その頃。

 

学園の回廊を並んで歩いていた二人。

 ミカはそっと視線を上げ、耳の奥がひくりと震えた。

「アレ?」

 ぽつりと声を漏らす。

「ミカ、どうかしたのか?」

 隣を歩くセイアが優雅に首を傾げる。

「いや、その〜今なんか私の話をされてる気がして………」

 ミカは頬をかきながら目を泳がせる。

 セイアは小さく笑い、ひときわ柔らかい声音で言った。

「なんだ、もしかして緊張、していたりするのかな?まぁ無理もないね。お見合いなんて初めてだもんね。」

「……え?」

 ミカは耳を疑った。

 しかしセイアは続ける。まるで舞台の幕を開けるように、さらりと。

「実はわたしの両親もお見合い結婚だったらしくてね。耳がずっとビンビン動いて、緊張していたらしいよ。」

 懐から取り出した一枚の古びた写真。

 その上で、彼女のケモ耳がピョコピョコと愛らしく動く。

「それも会ってみたら、写真よりもすごくハンサムでつい舞い上がってしまったらしい。」

 瞳を細め、少し恥ずかしそうに笑うセイア。

「実際のところ、見合い写真なんて意味ないのさ。百聞は一見にしかず、会ったら目がハートに早変わりさ」

 ミカは訝しげにその写真を覗き込む。

「写真上ではゴリラっぽいけども、実際はスラッとして凛々しいハンサムさんだよミカ」

「ゴリラっぽいというかゴリラじゃんね。純然たるゴリラそのものじゃんね。」

 セイアは口角を上げ、首を振る。

「全く君は分かっていないね。こういう正式な写真を撮る時っていうのはね、結構強張ってしまうものなんだ。その結果ゴリラっぽくなっちゃっただけだよ、きっと」

「強張って毛だらけになるゴリラって何なのさ!? 全身毛だらけになる強張り方って何なの!?」

 ミカの突っ込みが虚空に響く。

 セイアは立ち止まり、真剣な眼差しで言った。

「いい加減腹を決めるんだミカ。これは聴聞会で決まったゴリランダー学園との政略結婚。」

 その言葉は、氷の刃のように突き刺さる。

「ミカの処遇について罰するのはあまり気乗りしないとのことで、以前から来ていたゴリランダー学園の学園長の息子さんとの婚約を受け入れようとなったのさ」

 間を置き、口角を僅かに吊り上げる。

「目に目を、ゴリラにはゴリラをさ……」

「ねぇそれって私がゴリラってことにならない?ねぇなるじゃんね?」

 

「とにかく君が思うより三倍はハンサムだから、絶対に堕としてくるんだよミカ」

 セイアは一気に押し切り、扉の前に立った。

「よし、じゃあ行くよ。失礼します」

 重い扉を開け放った瞬間。

―――ドォォォォン!!

 部屋に轟く圧。壁が軋み、床が震える。

 視界を覆うのは、巨躯。筋肉の稜線。大地を歩く獣そのもの。

 その瞬間、ミカの心の叫びが迸った。

『予想より三倍もデカいゴリラがいるじゃんね!!』

 声は悲鳴とも笑いともつかぬ調子で、天井にまで反響していった。

 

「ちょっとセイアちゃん、これどういうことなの?全然話しと違うじゃんね。というかなんか私ずっとじゃんねって言ってるじゃんね?」

 ミカは半ば泣きそうな声で、部屋いっぱいに広がる巨影を指差した。

「何を言ってるんだ?じゃんねは君の専売特許だろうに」

 セイアは涼しい顔で言い返す。

「原作でじゃんねは一回しか言ってないじゃんね!あっ、またじゃんねって言っちゃったじゃんね……」

 ミカは頭を抱え、己の口癖に追い詰められていく。

 その横で、セイアは堂々と紹介を始めた。

「安心して大丈夫だよミカ、彼の名はロバート・ゴリニーJr.。バブルス学長の息子さんだよ。」

「いやそういう問題じゃ………」

 ミカが反論する間もなく、目の前の巨人が胸を叩き、天地を揺るがす雄叫びを上げた。

「ウホー!!」

(お嫁だぁ! 僕のお嫁さんだぁ!!)

 その熱烈すぎる求愛の気配に、ミカは顔を引きつらせた。

『何か嫌だ! 何かすごく興奮されてるみたいですごく嫌じゃんね!』

 ーーーーーーーーーーー

 

――そして、その前を通り過ぎる二つの影があった。

 一人は肩を落とした男。もう一人は、その横に寄り添う巨躯のシルエット。

 近藤勲である。彼もまた、ミカと同じくゴリラと共に歩いていた。

 ただし事情は少し異なる。彼の場合、相手に懇願された末に結婚を迫られているのだ。もちろん背後で糸を引くのは、あの片栗虎である。

「おい、どうしたんだ?近藤ぉ〜」

 とっつぁんが呑気に声をかける。

「ウホ?」

 隣を歩くのは、逞しい肢体に艶やかな毛並みを誇る雌ゴリラ。名をアーニャ・ゴリララー=ジョイ。バブルス学長の愛娘だ。

 近藤は額の汗を拭い、遠くの空を仰いだ。

「いやぁ……ゴリラ同士のお見合いを見た気がして……」

「なぁに言ってんだ。ゴリラ同士のお見合いはお前たちもだろ? さっさと結婚式の準備するぞ近藤ぉ〜」

 片栗虎は酒臭い息を吐きながら、背中をどんと押した。

「ウホッ!」

 アーニャは嬉しげに胸を叩き、瞳を輝かせた。

「あ、ああ……そうだな………」

 近藤は力なく笑い返す。だが、その心の奥底では別の名前が叫ばれていた。

――さらば、お妙さん………

 その別れの言葉は、心の中で小さく木霊しながら、彼の肩をさらに重く沈めていった。

 

そして、互いにソファーに座って

 

「……あの〜、そういえばアーニャ・ゴリララー=ジョイさんは、ご趣味とかは?」

 近藤はぎこちない笑みを貼りつけ、乾いた声を絞り出した。

「ウホッ?」

 アーニャが首を傾げる。その仕草は愛嬌に溢れているはずなのに、筋骨隆々の巨体でやられると威圧感しかなかった。

「いやぁ、いいですよね〜アレ! なんかこう……色々とドカーンとしてて……こう……」

 自分でも何を言っているのか分からない。語彙力が地底に落下していく。

(ヤバイ分からん……全然分からん! この会話、大丈夫なのか? 通じてんのか!?)

(というか……不機嫌になってる……気がする! あ、いや逆にご機嫌か? 笑ってる? いや……牙見えてるだけ!?)

 見極めようとすればするほど、アーニャの表情は謎に包まれる。いや、そもそもゴリラの表情筋の読み取り方など近藤は学んだことがない。

 その時――。

ギュルルルル……。

(ヤベェ……緊張で腹が限界だ! ウンコしたくなってきやがった!!)

(どうする? 今ここで席を立つのは失礼だが……いや、このままじゃもっと失礼になる!!)

(……よし、アレだ! さっきからウホって言ってるジェスチャー使えばなんとかなる! 言葉は分からなくても、心は通じるはずだ!!)

 近藤はケツを押さえながら、そろりと立ち上がった。

「ウホッ!」

(※ちょっと庭にでも出て散歩に行かないか? というつもり)

 アーニャが満面の笑みを浮かべた。近藤はその笑顔を「理解してくれた!」と受け取る。だが――。

ドス、ドス、ドス。

 振り返ると、巨体がぴたりと後ろに張り付いていた。

「ちょっと!? なんでついてくんの!?」

 必死に手を振ってごまかす近藤。だがアーニャはご満悦の表情で、しっかり後をついてくる。

「嘘だろこれ……やだこ……れ?」

 その先に広がっていたのは、さらなる地獄絵図だった。

「ウホッ! ウホッ! ウホッ!!」

(お嫁! お嫁! おーれのお嫁!)

 庭先で仁王立ちするゴリニー。その腕に縋られ、必死にスカートを押さえる少女の姿。

「もうヤダァァァァァ!! スカート引っ張るのやめてって言ってるじゃんね!!!」

 悲鳴を上げるミカ。

 近藤は絶句した。

(ゴリラ×2……お見合い修羅場のツープラトンだと!?)

 

「ウホッ!」

アーニャが仁王立ちになり、太い指をゴリニーに突きつける。

「ウホウホウホウホーウホホ!!」

(大事なお嫁さんに、一体なんてはしたない真似してるのよお兄ちゃん!)

ゴリニーがきょとんと首を傾げる。

「ウホッ、ウホウホウホウホーウホ?」

(え? だって母さんが“お嫁さんはたくさん愛してあげなさい”って言ってたんじゃなかった?)

「ウホッウホウホッウホウホ。ウホウホウホーウホホ」

(それとこれとは話が別よ! とにかく早く婚約者に謝って!!)

 その場にいる全員が、目の前で繰り広げられる“高度なゴリラ語会話”を呆然と見守っていた。

(な、なんだコレ……!?)

近藤の額には汗が滲む。

(ただの修羅場じゃねぇ……まさかゴリラ同士の兄妹ゲンカに俺まで巻き込まれるとは……)

(いや、待てよ……それどころじゃなかった! 俺の腹がもう……いやケツが……いやウンコが!!)

 必死に太ももを擦り合わせ、漏れそうな衝動を誤魔化そうとする近藤。しかし、神は残酷だった。

「うわぁァァァァァ!!!」

 突然、上空から甲高い叫び声。次の瞬間――。

ドォォォォン!!

 新八がまるで流星のごとく降ってきて、ゴリニーとアーニャの頭に同時直撃。二体の巨体が見事に沈み、地面にめり込んだ。

「し、新八くん!? アーニャ!! にゴリニーJr.!!」

 近藤の悲鳴が空に響く。

「な、なんで新八君が上からァァ!?」

「あ〜っすいませ〜ん。紅茶中毒が暴走して投げ飛ばしちゃったんですぅ。あれ?」

 呑気にテラスから顔を覗かせる銀時。

神楽も続いて顔を出す。

「あっ、ゴリラ4匹」

 その何気ない一言が、近藤の心にトドメを刺した。

「ゲッ……!」

 顔が青ざめる。次の瞬間――。

ブリュリュリュ……。

 抑えきれぬ運命の奔流がついに決壊し、袴の下がモリュッと膨れ上がった。

「えぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」

 近藤勲、婚約の場にて無念の大失態――。

 

「た、助かったの?」

 ミカは肩で息をしながら呟いた。だが、その安堵は一瞬で掻き消える。

 頭を抑えながらゆっくりと立ち上がる二つの影。ゴリニーとアーニャ。額には巨大なたんこぶ、そして怒りを示す の印。二匹のゴリラの双眸がギラリと光り、場の空気を一変させた。

「アーニャ、ゴリニー! だ、大丈夫ですか!?」

(ヤベェよ……完全にキレちまってる……)

 恐怖に震えながらも後方に視線をずらす近藤。そこで彼は、己のさらなる地獄を目撃する。

「あっ……」

 袴の隙間から、黄土色のモヤがふわりと立ち上っていた。

(ケツの方も……完全にイッちまってる……! 一本、丸々……イッちまったよこれ!!)

 羞恥で心臓が握り潰されそうになる中、追い打ちをかけるように。

「セイッ!」

「ホッ!」

 軽快な掛け声とともに、銀時と神楽がテラスから飛び降りてきた。神楽は後ろでジタバタ暴れるナギサを小脇に抱えている。

近藤(最悪だ……よりにもよって、この最悪な連中と鉢合わせしちまったぁぁ!!)

 銀時が欠伸まじりに口を開く。

「おいおい、ゴリラが集まって何やってんだぁ? 動物園でも開園したんですかぁ?」

神楽が畳み掛ける。

「女にモテないからって、ついにゴリラと交際開始アルか?」

「言い過ぎだぞ神楽?」銀時は真顔で諭すように言いながら、しかし口元はにやけていた。

「冗談でも言っていいことと悪いことがあるだろ。兄妹か何かじゃねぇの?」

(いえねぇ……ゴリラとお見合いしてたなんて、ケツが裂けても言えねぇ……いや、今もう裂けかけてるけど!!)

 そんな中、ナギサがハッと声を上げた。

「あれ……ミカさん?」

 銀時の目がミカに向く。

「あぁ、なるほどな。結婚式直前ってわけか。じゃあお前……ゴリラとお見合いか? 良かったなぁ、お望み通り本当のお姫様になれて」

「ゴリラのだけどな!」と神楽が毒を吐く。

「全然良くないじゃんねぇぇぇ!!」ミカは悲鳴混じりに抗議した。

 銀時はさらに視線を移し、近藤を指さす。

「つーことは……ゴリラ(近藤)?」

「おいおい冗談はやめてくれよぉ〜」近藤は必死に愛想笑いを浮かべる。

「こ、これはペットだよ! ペット!」

「ペットぉ? マジでか? こんなデケェの?」銀時は眉をひそめ、ゴリラを見上げた。

「そうそう! 最近流行ってんだよ、ゴリラ同士が目を合わせたら始める“ゴリランバトル”ってやつ! そこのミカ君とちょっとバトルしてただけだって!」

「そ、そうだよ!」ミカも必死に頷く。「もう先生ったら冗談もほどほどにしてほしいじゃんね!」

(すまん二人とも……言葉が通じねぇのが唯一の救いだぁ……)近藤は心の中で手を合わせた。

 だが、その淡い希望はすぐに粉砕される。

「ウガァァァァァ!!」

 咆哮が響いた。近藤が顔を上げると、そこには――。

 銀時と神楽が、アーニャの肩をよじ登りながら飛びかかり、ナギサは青筋を浮かべながらゴリニーに何やら得体の知れない物体をぶち込もうとしていた。

「は……? な、何やってんだお前らぁぁぁ!!」

神楽がゴリラの頭を撫でながら、猫なで声で囁いた。

「よーしよーし良い子良い子ーー。良い子にはご褒美あげないとね〜あっ」

ふと両手を探り、眉をひそめる。

「銀ちゃん、バナナがないヨ」

ナギサがすかさず言葉を挟む。

「そういう時はロールケーキでもぶち込めば良いんですよ!」

「ちょっ、ちょっとナギちゃん!?」ミカが青ざめた声を上げる。

近藤は額から冷や汗を垂らしながら叫んだ。

「ゴリラにロールケーキってお前、元王女で学園長の子供になんてことしてんの!?」

銀時は呆れ顔で首を傾げる。

「王女?学園長?誰よそれ?」

「い、いや……その……」近藤は言葉に詰まる。

そこでミカが必死に割り込んだ。

「ゴリラのランク名だよ。」

「ランク?」銀時が目を細める。

「そ、そう。ほらゴリランバトルってプレイヤー同士で戦うけどもちろん公式戦みたいなのもあって、その時にランクに応じたマッチングがあるの。ね?」

「あ、ああ。」近藤はぎこちなく相槌を打つ。

「下からーービギナー、ゴリランボール、界王星、王女、学園長の順にランクマッチがあるのさ」

「へぇ〜そうなんだ。」銀時は感心したように頷く。

「なんかポケ◯ンに似てるアル。」神楽が口を尖らせる。

「そんなことないよ。気のせい気のせい。あと二人ともお腹空いてないから……」近藤は必死に笑顔を貼りつける。

だが、アーニャ・ゴリニーは「ブホォ!!」と音を立て、突っ込まれたロールケーキを吐き出した。

「ほら、吐き出しちゃったじゃんね。だからそのそろそろ……」ミカが慌てる。

「食べ物をーー」銀時の声が低く響く。

「ロールケーキをーー」ナギサがそれに続く。

「粗末にすんじゃねぇ〜!!(しないでください!!)」

二人の叫びと同時に飛び蹴りが炸裂した。アーニャ・ゴリニーは「がァァ!!」と呻き、地響きを立てて転がった。

「ちょっと! 本当もうやめて!」近藤が悲鳴を上げる。

「色々と問題になっちゃうじゃんね!」ミカも涙目で訴えた。

銀時は肩をすくめる。

「ああ? 何言ってんだ。もしかして動物愛護法のこと心配してる?」

「ダメだよそんなもんに恐れて甘やかしちゃ、」

「そうだヨ。」神楽がニヤリと笑った。

「マミーも若い子にほど旅をさせろって言ってたネ。」

「もう分かったから! ちゃんと躾するから! もう離して!!」近藤はゴリラたちを庇いながら必死に頭を下げる。

ミカと近藤はゴリラを連れ、その場を立ち去ろうとした。

(いかん……これ以上何かあれば……)近藤の脳裏に最悪の未来が過ぎる。

(セイアちゃんたちに迷惑かけちゃう……じゃんね)ミカもまた心を固くしていた。

「コレから俺たちランクマッチに出かけるからーー」

その時だった。

ポロン、と不吉な音を立てて、袴の下から茶色の物体が床に転げ落ちた。

「アレ〜何それ?」銀時が眉を上げる。

「あっウンコアル。」神楽が即答した。

「なっ!?」近藤の顔が蒼白になる。

(しまったぁぁぁ!! 今日はトランクスの上に袴だった!!)

ナギサの目が細められ、疑念が鋭く突き刺さった。

「ミカさんまさか………?」

「違うから! 私じゃないから!!」ミカは顔を真っ赤にし、両手をぶんぶんと振った。

ナギサはため息をひとつ。

「大丈夫ですよ……ティーパーティーの権限で情報統制しておきますから」

その言葉にミカはさらに慌てる。

「だから違うってばァァァ!!!」

銀時が視線をすっと横に滑らせる。

「いや、今ゴリラのお前の袴から出なかった?」

神楽は靴の裏を見せつけるように片足を上げた。

「一回踏んだヨ。オペ室で遺言コースアル」

「ゴリラーー!!」近藤が絶叫した。

「だからーー!」

ミカと近藤は、反射的に二匹のゴリラへ同時に蹴りを叩き込んだ。

ドガァン!

凄まじい衝撃音を立て、二匹の巨体は宙を舞い、壁にめり込む。石材がぱらぱらと崩れ落ちた。

「どこでもウンコすんじゃねぇ!!」近藤は怒声を響かせる。

「違うって言ってるじゃんねェェェ!!」ミカも涙目で叫んだ。

近藤は額の汗を拭い、言い訳を重ねる。

「ホントもうどこでもウンコ垂れて困ったやつだよホント。てんてこ舞いだよホント」

「いや、お前(近藤)の袴から出てきた……」銀時の冷ややかな突っ込みが飛ぶ。

「ちょっとちょっと坂田くん。俺年いくつだと思ってんの?もう三十路よ?な訳ないじゃん」近藤は必死に笑みを貼り付けた。

「ナギちゃんも私じゃないから! この子がしたから!」ミカは必死に否定する。

その時、神楽が地面を指差した。

「おい三十路、味噌の道出来てんぞ?」

近藤が振り返ると、彼の通った道に沿って、無惨にも茶色い残骸が点々と続いていた。

「違うから! コレは……また迷わないように“かりんとう”置いてきただけ!!」

「もう迷ってんだろ?」銀時の目が細く光る。

「人という名の尊厳と糞の間で」

ガラガラガラガラ……

鈍い音を立て、壁にめり込んでいた巨影が動いた。

アーニャ・ゴリニーの瞳に、怒りの炎が灯る。

「ウガァァァァァァ!!!」

獣じみた雄叫びとともに、瓦礫を蹴散らし、鋼のような腕を振り上げて襲いかかってきた。

新八のまぶたがゆっくりと開いた。

「アレ……僕、何を………?」

頭に残るのは、強烈な衝撃と暗転する視界。どうやらゴリラに激突した時に気絶していたらしい。ぼんやりとした視界がはっきりしていくと――

「「「「うわァァァァァ!!!」」」」

阿鼻叫喚の叫び声が耳をつんざいた。

新八が上体を起こした瞬間、目に飛び込んできたのは地獄絵図。

巨体のアーニャ・ゴリニーが暴れ狂い、学園の石畳を砕きながら銀時たちを追い回していたのだ。

銀時が逃げながら怒鳴る。

「おい、アレお前のゴリラなんだろ? 何とかしろよ!」

近藤は必死に袴を押さえつつ、涙目で叫ぶ。

「無理! いやだってアレ学園長のーー」

ナギサは絶望的な眼差しでミカに縋りついた。

「ミカさん! 何とかしてください! 同じゴリラとして何とか!!」

「いや……だって私今聴聞会でーー」ミカの声は裏返る。

「ミカ!!!」ナギサが叱咤する。

「もう無理じゃんね〜!!」

涙声と共に、ミカは頭を抱えて逃げ出した。

その場は、暴れるゴリラと人間たちによる命懸けの追いかけっこ。

石畳が割れ、柱が倒れ、逃げ惑う声がテラスに響き渡る。

新八はただ呆然と立ち尽くす。

「何……コレ」

現実感が霧散し、まるで悪夢を見ているかのようだった。

――一方その頃。

テラス奥の広間からは、まったく別の空気が流れていた。

片栗虎が酒を片手に破顔一笑。

「いやぁ〜愛の追いかけっこするまで仲良くなっちまうなんて! やっぱやる時はやる男だな近藤ぉ〜」

その隣でセイアが優雅にティーカップを持ち上げ、細めた瞳で騒ぎを眺める。

「全く……嬉しいからとはしゃぎすぎだと思うが。やはり写真は飾りにすぎないね」

片栗虎は満足げに頷き、ゴリラの咆哮など気にも留めない。

「さぁておじさんたちも式の準備を頑張るとしますかッ!」

――こうして式場設営はうまくことが運んでいき……

 

司会者の張り上げた声が、式場全体を震わせた。

「新郎新婦、入場です!」

 直後、荘厳なパイプオルガン……否、何処かで聞いたことのある『スターウォーズ』風の重厚な旋律がホールに響き渡る。
 天井のシャンデリアが輝きを増し、参列者たちが一斉に扉へと視線を注いだ。

 重々しい扉がゆっくりと開かれる――そこから姿を現したのは、黒々とした体毛に覆われた巨大な影。
 人ではない。圧倒的な肉体、隆々とした筋肉を持つゴリラ。名をロバート・ゴリニー・Jr。
 その大きな掌に導かれるように、もう一人の新婦が姿を見せた。

 トリニティーピンクゴリラこと、聖園ミカ。
 だが、その瞳は光を失い、まるで虚ろな人形のように前を見据えたまま歩みを進めていた。
 彼女のピンク色のドレスが、まるで皮肉めいた冗談のように艶やかさを添えている。

 会場の片隅――。
 銀時、神楽、新八は列席者に紛れて並んでいた。三人の手には、なぜかバナナ。
 それを片手に握りしめ、異様な光景を呆然と見送っていた。

「……あの、銀さん」
 新八が眉をひそめ、声を絞り出す。


「これ、どういう状況なんですか?」

 銀時はまるで悟った僧侶のように厳かに答えた。


「まずホグワーツに行って、アラゴグの森でゴリラ好きのケンタ“ウス”を捕まえる」

「いやゴリラ好きのケンタウスって何!? ケンタウロスじゃないんですか!? というかどんな“ウス”!?」
 新八のツッコミが会場に虚しく反響する。

 銀時は意にも介さず、次の工程を淡々と語る。


「次にゴリラが主治医を務める“オペ”室に連れて行って――」

「バナナ(チ◯コ)を取ります」

「どんなオペだァァァァァ!!!」
 

新八の叫びが割れるほどの声量で響いたが、周囲の参列者は誰一人として動じない。まるでこの式自体が異界の幻のように進行しているのだ。

 銀時は肩をすくめ、最後の決定打を告げた。


 

「最後にゴリラ好きのオペウスの遺言を聞いたら――」

「こうなった」

「だからどんな遺言!!?」
 新八が絶叫した瞬間、ロバートが荘厳な咆哮を上げ、会場のシャンデリアが震え、ミカの手が強く握られた。

 虚ろな花嫁と獣じみた新郎。
 誰も止められぬ婚礼は、今まさに始まろうとしていた――。

会場の荘厳な空気に反して、最前列では銀時が頬杖をつきながら、まるで退屈そうにバナナを弄んでいた。

ナギサが苛立ちを隠せぬ声で囁く。

「先生、笑い事じゃないですよ。」

「笑ってねぇよ。大丈夫むしろ悲しくなってきたから……あっ涙出てきた。」

銀時は片目を拭い、バナナの皮を涙で濡らす。

「そりゃそうでしょ、プトティラ以上の惨劇ですよコレ! 殺意丸出しの式ですよコレ!」

新八が震える声で吐き出した。

ナギサは眉間を押さえ、必死に言葉を続ける。

「何とかなりませんか? この式はセイアさんに聞いたところ顔合わせみたいなものだって……。このあとゴリランダー学園で正式な婚礼を挙げれば、晴れてミカさんもゴリラの仲間入り」

「もう二度と実装することはありません。」

「へぇ〜そいつは大変だ。ミカゼミが泣き止まなくなっちまう。」

銀時は飄々と返すが、その声音にはどこか冷たい諦念が混じっていた。

ナギサは焦りを募らせる。

「チャンスは今夜のみなんです。本当に何とか出来ませんか?」

銀時は鼻で笑い、肩をすくめる。

「いやいや元々披露宴壊れてるもんだろ? ゴリラだらけだもん」

「それはねぇぜ旦那〜」

低く響く声。振り返れば沖田総悟が悠然と姿を現していた。

「あっドSバカ……お前もゴリラの式に呼ばれたアルか?」

神楽が毒を吐く。

「そうだよ。全く面倒なことしやがるジジイでさぁ」

沖田は面倒くさそうに肩を回し、指先で向こう側を示した。

「見てくださぇ、反対側でもーー」

視線の先、アーニャ・ゴリララー=ジョイと近藤勲が並んで座っていた。

近藤は額に青筋を浮かべ、だが式の進行に逆らえず座り込んでいる。

「ホントだ。あっちでも笑えない披露宴が………」

新八は乾いた笑みを浮かべた。

そのとき――

銀時の懐から、電子的な音が響いた。

ピピピピ――。

銀時のシッテムの箱が点滅する。

『先生通信が届きました。緊急のようらしいので繋げますね、どうぞ〜』

アロナの無機質な声。

映し出されたホログラムに、必死の形相のミカが現れた。

『あっ先生! 良かった通じて……ねぇお願いだからこの式ぶっ壊してほしいんだけど、どうぞ』

続いて近藤の顔が割り込む。

『お前らこういうの先輩特許だろ? さっさとぶち壊してくれどうぞ!』

『ご馳走食わすために呼んだんじゃねぇんだぞ! どうぞ!』

銀時はバナナを指で弄びながら鼻を鳴らした。

「ご馳走ってここバナナしかないじゃんね……」

「そんなんで先生買収できると思うなじゃんね〜どうぞ〜」

『じゃんねの使い方違うじゃんね……! そんなこと言っても聴聞会での決定事項だから私暴れられないし!』

ミカは涙目で抗議する。

「そうだ。俺も派手に動けん……なぜなら松平とっつぁんに逆らえば俺たちこの世界で職を失う! マダオに成り下がるんだよ!!」

近藤の叫びは悲鳴のようだった。

原因を作ったセイアと片栗虎はというと――。

舞台袖でバナナを次々と口へ放り込み、頬をパンパンに膨らませていた。式を挙げられた者たちの気持ちなど露知らず、猿山の宴のように。

「良いんじゃね。マダオで……」

銀時がつぶやく。

「は!?」

近藤が目を剥く。

「ちょうどマダオ枠が欲しいな〜って思ってたんだよ。ラビット来るまでの間にやりたいことあるから、とりあえず穴埋めはクソ漏らしゴリラでよろしくぅ〜どうぞ。」

「そんな言い訳で納得できるか! さっさとぶち壊してくれって言ってんだよ!! どうぞ!!」

ナギサが手を挙げる。

「ここには紅茶もロールケーキもないんですか? どうぞ」

『ナギちゃんロールケーキも紅茶も今はいいから、どうぞ!』

ミカの怒号が響く。

銀時は腹を押さえ、苦笑いを浮かべた。

「ヤベッちょっとトイレ行きたくなってきたじゃんね、便所どこ?」

「旦那俺が案内しますぜ。」

沖田が淡々と応じる。

『通信でわざわざ言わなくて良いじゃんねどうぞ!』

ミカの絶叫が虚しく反響する。

――そして二人の心に、同じ諦めがよぎった。

(ダメだ。みんな全然やる気ないじゃんね……どうぞ……)

ミカ・近藤の声は同時に震えていた。

式場には、誰も望まぬ滑稽な沈黙が降りた。

司会者がマイクを握り、朗々と声を張り上げた。

「それでは新郎新婦、それぞれ前へ!」

 ざわめく会場。拍手と口笛が飛び交い、バナナの甘い香りが空気に漂う。

「皆様、大変長らくお待たせいたしました。では、これより夫婦初めての共同作業に移らせていただきます!」

 その瞬間、式場の奥からゴロゴロと運び込まれたのは――常軌を逸した巨大なベッド。純白のシーツに、整然と並べられた枕が二つ。

 異様な光景に、近藤とミカは息を詰め、同時に絶叫した。

「かーーーー!」

 ドン引きの声が式場を突き抜ける。

 だが、ゴリラたちは臆することなく振る舞う。

アーニャはふんぞり返りながらベッドに飛び乗り、仰向けになって両手を広げる。受け入れる構えは、もはや儀式的というよりも直球すぎる誘惑そのものだった。

「フン!」

 そしてロバート・ゴリニーJr.は――。

「ウホッ!」

 ミカを軽々と抱え上げ、そのままベッドへ放り投げた。

「え、ちょッ……!」

 ミカは悲鳴を上げ、シーツの上で跳ね返る。

 ロバートは胸を叩き、雄叫びをあげた。

「ウホーー!!」

 獣の気配に、会場は一瞬ざわめき、しかしすぐに拍手と歓声が渦巻く。

 近藤は青ざめ、心の中で絶叫した。

(え、ェェェ!!またバナナ入刀!?何でゴリラとの結婚式の共同作業が毎度毎度バナナ入刀!!)

(少しは歳の差考えてくれ!いや種族的に考えてくれ!!)

 一方ミカも必死に頭を抱える。

(いやいや種族とか関係なしにあり得ないじゃんね! 確かに共同作業だけど!)

(ちょっと!!彼もうヤル気まんまんじゃんね!!)

 二人の視線は同時に助けを求めた。

(とっつぁん!・セイアちゃん!)

 返ってきたのは、あまりに無情な答えだった。

 片栗虎は酒気を帯びた顔でグラスを掲げる。

(近藤〜コレは子孫繁栄を重んずるゴリランダー学園に伝わる婚礼の伝統行事だ……漢を見せろ)

 セイアは頬を紅潮させ、手を振る。

(ミカ……ゴリランダー学園のバナナはかなりすごいらしく、すぐに天に昇るとか……後は相手がリードしてくれるから安心したまえ)

 二人は揃って――親指をグッと突き上げていた。

「なんだそのグッとサインは!!ヤレってか今この場でヤレってか!」

近藤は心の中で叫ぶ。

「私も我慢の限界……セイアちゃんたちの指折っちゃうじゃんね!」

ミカは涙目で奥歯を噛みしめる。

「ふざけんな! どこぞのマニアックなビデオでもなければR18版の小説じゃねぇんだよ!」

「R15の小説じゃんね!!」

「加藤じゃねぇんだよ! 鷹じゃなくてスズメなんだよ! 俺みたいなもんは!!」

「それに何!? 何でこんなにみんなガッツリと見ようとしてるの!?」

「さっきまでバナナに夢中だったのに!」

 絶望の縁で、近藤は最後の希望に縋った。

(新八くん助けてくれ!!)

 その瞬間、新八は静かに立ち上がり――タッパーを手にバナナを詰め込んでいた。

「残りは持って帰ろ」

――ミカは心の中で絶叫した。

(ツッコミ放棄してるじゃんね!!)

 近藤もまた涙目で訴える。

(タッパーはいいから!!どこまで家庭的なんだ君は!!)

 だが二人の嘆きは、式場の混沌の序曲に過ぎなかった。

 その頃。

 銀時たちはトイレから戻る途中で、くだらない会話に興じていた。

「あー痛ててて、腹下しすぎてケツから崩れたソフトクリームが出来ましたぁどうぞ〜」

 銀時が苦々しい顔で腹を押さえる。

「そりゃあ良かった。そいつを絵の具で塗って土方のマヨネーズボトル詰めますんで手伝ってくださぇどうぞ」

 沖田は平然と毒を吐く。

 ふと彼が問いかけた。

「旦那〜つかぬことをお聞きしますが、あの女抱いてお姫様宣言したって本当なんですかい?」

「ブゥーー!!!」

 銀時の喉が派手に鳴った。

「オイ、テメェ一体いつだれからそんなこと聞いたんだよ。」

「旦那のとこのチャイナ娘ですよ。あっでもですね。大層にカッコよくて誰もが認める王子様だったとかってのはーー」

「……あいつのブログみたいの裏アカから見つけたんですけどねい。」

「かーーーー!」

 銀時の額に青筋が浮かぶ。

「沖田くん〜コレって何かのフラグじゃ………」

 その瞬間――。

「先生、」

 ナギサが柔らかく微笑み、鋭い光を帯びた瞳で彼を見据えた。

「少しお時間いただけますか?」

 銀時は、思わず息を呑む。

「あっ………」

 一方その頃、式場。

「ウホッ!」

 アーニャとゴリニーが同時に立ち上がるや否や、それぞれ近藤とミカを両腕で掴み――天空へと放り投げた。

「お妙さん………最後に君の笑顔をもう一度見たかった……」

 宙を舞う近藤は、走馬灯のように思いを馳せる。

「先生と一緒に帰りたかったな………」

 ミカもまた目を閉じ、胸に去来するのはただ一つの願いだった。

 ビューンッ!!

 その刹那、式場の天井を裂くように何かが走り抜けた。

 薙刀――それは近藤の白い羽織を貫き、背後の壁に突き刺さる。

 そして日本刀――ミカの制服を貫き、彼女を壁に貼り付ける。

 投げ放ったのは――。

「お妙さん!!」

「先生じゃんね!!」

「姉上に銀さん!!」

 そこには、凛とした姿のお妙。そしてめんどくさそうに頭を掻く銀時の影があった。

「「「「姉御ォォォ!!!」」」」」

 真選組ノアの一員たちが立ち上がり、熱狂の叫びをあげる。

「「「「「先生!!」」」」」

 ティーパーティーの少女たちも一斉に立ち上がる。

「ついに!ついに局長と夫婦になる決意を!」

 山崎の目は潤み、声は震えていた。

「先生もついにミカ様の本当の王子様になられる決意を!!」

 行政官の頬は紅潮し、瞳は星のように輝く。

 その熱狂に、ゴリラたちも負けじと咆哮を上げた。

「ウホッウホッウホッウホーーーー!!!!」

「ゴリラ共が!!」

 山崎が叫ぶ。

「構う必要はない。我らが局長。近藤勲の婚礼を邪魔する者をーー」

 鴨太郎の声が響き渡る。

「我らが上様のご友人に危害を加えようとする者をーー」

 ナギサもまた立ち上がり、指を突き出す。

「「押さえつけろ!!(てください!!)」」

 轟音のような歓声が、式場全体を揺さぶった。

「「「ウォォォォ!!!」」」

「俺たちの局長の嫁は俺たちで決める!!」

「切り拓くのです!先生とミカさんのーー」

「「愛の道をォォォ!!!!」」

 ――その瞬間、式場は祝宴から戦場へと変貌した。

 怒号、咆哮、歓声、そして歓喜。

 愛と混沌が交錯するこの空間で、もはや誰も止められない“婚礼乱戦”が幕を開けたのだった。

 

続いて片栗虎とセイアが飛び蹴りでゴリラを倒す。二人は着地して、周囲の空気を一瞬で引き締めた。床の振動がまだ残り、式場のざわめきが風に引きずられて消える。

「全くミカ君ってやつは……どうして好きな人がいると先に言わないのかな……」

「近藤ぉ〜!!そういうことは早めに言っとくもんだ!!年寄りが余計なことしちまったぜ!」

二人は、目に見えない何かに拳を固めるようにして互いに合図を送った。場の空気はそれを受け、ひとつの声となって弾ける。

グッとサイン

「「幸せになりな!!」」

その合図を受け、会場の片隅で近藤は震え、心の奥で呟いた。ミカもまた、胸の内の堰を切るようにして声にならないなにかを吐き出す。

(とっつぁんみんな)

(セイアちゃん………)

近藤とミカは、互いの存在の重みを確かめるように手で顔を覆い、嗚咽をこらえきれずに泣いた。嗚咽は、静かに、しかし確実に式場に広がっていく。

(帰りたい……私みんなのところに帰りたい!)

(わたし………やっぱ……お姫様とか……危機に陥ったところを王子様が助けに来てくれる、そんな物語が私は好き……!)

だがその瞬間、天井いっぱいに響くような声が炸裂した。威勢のよい、凛とした合いの手が二人を包む。

「「ウォォォォ!!!!」」

その声は鬼の形相のごとき迫力を伴い、緊張を笑いへ、恐れを祝福へと変えていく。

「お妙さん!」

「先生!」

「テメェ!ナニしてくれてんだ!!」

「俺のおーーー」

(お、夫!?)

(お、お姫様!?)

ーーーーーーーー

場面は一瞬切り替わり、トイレの薄暗がりで男たちが何気ない会話をしている。そこには俗っぽい諦念が漂っていた。

「で、土方さんアレって一体どうなんですかい?」

「おい、総悟う◯こマヨネーズの件はどう処理つもりだぁコラ?」

男たちのやり取りは下世話で、けれど妙に真実味を帯びている。

「まぁいい。ホントお前は恋愛とやらに疎いな。」

「惚れてる嫌よ嫌よも好きなうちっていうだろ。ありゃ間違いなく惚れてる」

言葉は乱暴で、しかし土方の眼差しは鋭く、恋心を言い当てる冷静さがあった。

ーーーーーーーー

式場に戻れば、空気はさらに一段と張り詰めていた。

「おーーー弟に」

「おーーーおトイレの時間に」

二人の声が重なり、次の瞬間には尋常ならざる動きが起こる。

「ナニとんでもねぇもん見せてくれとんのじゃ!!」

「ナニ邪魔人使いに出してくれたんだゴラァ!!!」

お妙と銀時は、怒りのまなざしを切っ先に変えて、ゴリラごと顔面に蹴りを見舞った。衝撃が壁を割り、会場は一瞬、土煙と破片に包まれる。

ドォォォォン!!!

砂煙が舞い上がり、視界はかき乱される。混乱の中でお妙は新八の手を力強く引き、場外へ向かって走り出す。

「あ、姉上!?」

「おい、帰るぞ!」

「え、銀ちゃん!」

その声に応えるように、真選組の者たち、ティーパーティーの面々が次々と叫ぶ。

「姉さん!!」

「先生!!」

彼らの叫びは、追いかける者と逃げる者の境界線を引き直す合図となった。

ーーーーーーー

式場の外、混沌の余波が届くところで、ひとつの静かな場面があった。外では喧騒が遠く、夕暮れの空にまだ光が残る。

「あの……お名前だけでも」

サオリは、手に抱えた小さな包みを差し出す。表情は静かで揺るがない。

「気持ちだけ渡しに来ただけだ。」

「ですが、こんなにたくさん……」

振り返れば、後ろの空間ではバナナが放物線を描き、ゴリラが飛び回っている。だがサオリの目は、その喧噪をひとつも気にしていない。

「いいんだ。たくさん迷惑をかけたからな………それにーー」

彼女の声は、遠くで走る足音と叫びを背景にして、確かな輪郭を成す。

「目指すべき姿もこの目で見れた。」

その言葉の余韻を残しつつ、式場内ではゴリラの追いかけっこがなお続いていた。近藤は沖田と土方に抱えられ、ミカはセイアとナギサの三人で身を寄せながら逃げ回る。新八は転びそうになり、神楽は相変わらずバナナを頬張る。後方からは、なおもゴリラの足音が追ってくる。

逃げ惑う群像の中、お妙は笑顔を崩さず、銀時はわずかに口端を持ち上げて式場を駆け抜けた。その姿は、混乱の中にある種の穏やかさを残す。

カシャッ!——。誰かの手がシャッターを切った。瞬間、奔走する群像の一枚が新しい思い出として結晶した。

コトッ。

ティーパーティーのテラスの上に、その写真がそっと置かれる。

 

エデン条約・アリウス曙光篇 完




ちょこっと銀八先生!!

銀八「はぁーい今日はみんなに伝えないといけないことがあります。」

「人気投票回というの作ろうと思うんで投票の方をよろしくお願いしま〜す。」

「投票内にないキャラクターはコメント欄に書いてくれたらカウントするんで」

「え?衣装が複数あるやつはどうするのか?そんなの好きな衣装を着てる想定で入れりゃいいだろ。」

「あっ、いいすきの方もよろしくぅ〜」

次回予告

銀時「あーあ木刀どうするかな〜」

新八「ネットで売ってないんですか?」

銀時「アレじゃねぇとダメなんだよ。他のはすぐダメになる」

アロナ「先生!同じものなら作れますよ。」

「クラフトチェンバーで!!」

「「「マジでか!?」」」

次回 クラフトチェンバーで望んだ家具が来たことほとんどない

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。