透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
「はぁい、今回初登場銀八先生のコーナーだぜ」
「早速質問何故銀時はかめはめ波を撃てたんですか?」
「はいズバリお答えします。キヴォトス世界の銀時はアロナの充電を使ってエネルギーを自分に纏わせることで疑似的にかめはめ波を撃てるようになったわけです。それ以上もクソもありません。以上」
「はい何故エリザベスは語尾にペロとつける時とつけない時があるんですか?」
「えぇこれは、ヒフミとの関係を繋ぎ止めるために出来るだけペロロの真似をしようとするエリザベスの優しさからのものです。」
「銀さんは何故ホシノが腕をかわれていたことや黒服のことを知っていたんですか?」
「これは銀時は勝手に手紙の中身を見たからですね。事が落ち着いたら手紙の中身にも言及するでしょう。今日はこれで終わり!」
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質問があればコメントでお願いします。
地鳴りがした。
それは自然の驚異によるものではなく、暴力的なまでの「質量」が大地を蹂躙する音だった。
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ――。
一糸乱れぬ機械的な足音が、アビドスの乾いた大地に不吉なリズムを刻む。
砂塵を巻き上げ進軍するのは、カイザーPMCが誇る機械仕掛けの兵団。その数、およそ一万。
地平線を埋め尽くす鋼鉄の波の先頭には、小山ほどもある巨大戦車「ゴリアテ」が鎮座し、その背後から無数の銃火器が殺意の銃口をアビドスへ向けていた。
単なる正面突破ではない。左右に展開した別動隊が翼を広げるように進み、獲物を完全に包囲して圧殺する「処刑」の陣形。
その「ゴリアテ」の頂上、特等席に仁王立ちするのは、全身を無機質な義体に変えた巨魁――カイザー理事その人である。
彼のフェイスプレートは表情を作らない。だが、その駆動音と身に纏う空気は、余裕と狂気が入り混じった歪な高揚感に満ちていた。
「……ククク。まさか黒服から、あんな電話がかかってくるとはな……ハハハ! これで奴らも終わりだ。私の前で膝を屈する時が来たのだ!!」
彼の脳裏に、数時間前の会話が鮮明に蘇る。
――――――――――――――――――――
それは、理事が先の敗北による屈辱で焦燥し、無謀な進軍を計画していた時のことだった。
プライベート回線に、あの不気味な男――黒服からの通信が入った。
『――カイザー理事。早速本題に入らせていただきますが……小鳥遊ホシノさんを逃してしまいました』
「ま――待て!! 急になんだ!! なぜ小鳥遊ホシノを逃した!? 手を引いたというのは方便ではなかったのか!? ……まさか、奴か? あの坂田銀時が関わっているのか!?」
理事が唾を飛ばさんばかりに叫ぶと、黒服は変わらぬ冷静さで答えた。
『まぁ落ち着いてください。……その通りです。シャーレの先生、坂田銀時……今の貴方では、到底彼を止められません。侍という不確定要素は、我々の想定を遥かに超える』
「なんだと……!?」
『ですので、私から少し提案を。……貴方は全軍隊を率いて、彼と戦ってください』
「貴様――! 正気か!? それで我が軍が全滅してしまっては元も子もないではないか!!」
『カイザー理事……話はまだ終わっていませんよ』
黒服の声が、低く、甘美な毒のように響いた。
『恐らくですが……今まであそこの施設で「デカグラマトン」を発掘できなかったのは、衝撃(インパクト)が足りなかったのです』
「衝撃だと? あれだけ大量の爆薬を投下したのにか?」
『ええ。物理的な衝撃ではありません。……彼はただの先生ではなく、こことは違う理(ことわり)の世界から来た人間。いくつもの死闘を潜り抜け、魂で戦う歴戦の侍、「白夜叉」』
黒服は続ける。まるで実験を楽しむマッドサイエンティストのように。
『彼がその全霊をかけて暴れれば……その異常なエネルギーの干渉により、デカグラマトンが目覚める。そうすれば我々は発掘ができるし、邪魔な彼らも貴方の軍勢で始末できる。……一石二鳥というわけです』
「……なるほど。そういうことか」
『ええ。全力をぶつけてください。後は私が処理します』
プチっ。
通話が切れると同時に、理事の中で何かが弾けた。
「ふふ……ふふふふ……!」
彼は端末を握りつぶさんばかりに力を込める。
デカグラマトン? 発掘?
そんな企業の利益など、今の彼にはどうでもよかった。
『許さん……許さんぞ、坂田銀時……! 私の部下たちを蹴散らし! 長い年月をかけて増やした借金を半分も減らし! あまつさえ、この私をボールのように吹き飛ばしたッ!!』
『―――だが……それもこれも今回で終わりだ! 奴らの苦しむ姿が目に浮かぶ!! アッハッハッハッハっ!!』
壊れた。
彼の中で「理性ある経営者」としての回路が焼き切れ、復讐に燃える「怪物」だけが残った。
地位も、名誉も、コスト感覚さえも投げ捨て、ただ一人の男――坂田銀時を抹殺するためだけに、彼は全資産を投じてこの軍勢を動かしたのだ。
――――――――――――――――――――
「この日のために……全ての兵力を集めた! 数は一万を超え、最新鋭戦車、そしてこの地上戦艦ゴリアテも用意した!!」
理事はゴリアテの上で両手を広げ、虚空に向かって演説を打つ。
「仮に奴を倒せなかったとしても、他の生徒どもはやれる……。ハハハッ、そうだ! 最初からこうすればよかったのだ! 卑怯? 知ったことか! これが力だ! フハハハハ!!!」
その狂乱ぶりに、周囲の兵士たちは「完全におかしくなったな」と戦慄したが、命令は絶対だ。
やがて、軍勢はアビドス自治区の境界へと到達した。
『理事、間もなく残されたアビドス領地に入ります』
「あぁ、分かった。……誰にも出会わなかったな。結構。退去命令を守ってくれて何よりだ」
静まり返った廃墟の街。人の気配はない。
だが、理事にはそれが嵐の前の静けさではなく、敗走した敗者たちの沈黙に思えた。
「弾薬もタダでは無いからな……。だが、今日は大盤振る舞いだ」
理事は右手を高々と掲げ、攻撃開始の合図を送ろうとする。
「フハハハッ、さあ出てこい坂田銀時! お前の全てを――」
ドォォォォォォン!!!
「――終わらせ……は?」
理事が言葉を紡ぎ終えるより早く、後方で凄まじい爆発音が轟いた。
何事かと振り返る間もなく、通信機から悲鳴のような報告が飛び込んでくる。
『ほ、報告! と、突然エネルギー砲のような極太ビームによって! 後方に展開していた第三中隊が消滅! 陣形が崩壊しました! ぎゃぁぁ!!?』
「なっ……!?」
『ほ……ほう……こく! べ、別ルートから……挟撃のために動いていた、我々の左翼部隊が……ほ、ほぼ全滅!』
「ぜ、全滅だと!? 左翼には五千の兵を割いたのだぞ!? 一体何があった!」
通信機越しに、乾いた爆発音と、何か得体の知れないものが暴れまわる音が聞こえる。
『や、奴です! 変な奴が……変な長髪の男と、白い怪物が!!』
ブチっ!
通信が途絶えた。
「おい! 何があった! 応答しろ! ……まさか……あ、ありえん!」
理事はガタガタと震える手でコンソールを叩く。
反対側に展開していたのは、最新鋭のオートマタ五千体。一国の軍隊にも匹敵する戦力だ。
それを、たった数分で?
ピッピッピ!
突如として、狂乱する指揮系統の通信に、場違いなほど軽薄な電子音が割り込んだ。
それは悲鳴のような報告でも、腹に響く爆発音でもない。まるで休日の昼下がりに友人を遊びに誘うような、間の抜けた呼び出し音だった。
「何だ! どこの部隊だ! 状況を報告しろ!」
カイザー理事は苛立ち任せにコンソールを叩き、通信機を鷲掴みにした。
ノイズ混じりのスピーカーから返ってきたのは、戦場の硝煙とは無縁の、あまりにも気怠げな――そして今、理事が世界で最も憎悪する男の声だった。
『――もしもーし。プレゼントは受け取ってくれたか?』
「……ッ!?」
その声を聞いた瞬間、理事の思考回路が凍りついた。
忘れるはずもない。数時間前、己の顔面に屈辱的な一撃を叩き込んだ、あの死んだ魚のような、それでいて底知れぬ凄味を含んだ声。
「き……貴様……! 坂田、銀時ィィィ!!」
『耳元で大声出すなよ、キーンってなっただろ。鼓膜の予備パーツは持ってねーんだぞ。……で? どうよ。俺のツレからの「陣中見舞い」は。派手な花火だったろ?』
「花火……だと……?」
理事の視界の端、サブモニターに映し出された映像に、義体のセンサーが釘付けになる。
そこには、左翼と後方を固めていたはずの五千の精鋭部隊が、謎の爆撃と極太のビームによって、ただの鉄屑の山と化している惨状が映し出されていた。
五千の兵力が、一瞬で。
それをこの男は、「花火」と呼んだのか。
「おのれ……おのれぇぇぇ!! あれだけの兵力を、貴様らごときが……!! 何をした! 一体どんな手品を使った!!」
『手品も何も、ただの「掃除」だよ。……』
通信機の向こうで、銀時がフッと鼻で笑う気配がした。
『あんたが自慢のオモチャを並べてる間に、こっちは面倒なゴミ掃除を終わらせといてやったんだ。感謝して欲しいねぇ』
「ふざけるなッ!! 私の軍隊はゴミではない!! 貴様……どこにいる! どこから通信している!!」
理事は血走った電子の瞳(アイ)で、周囲の空間をなめ回すように索敵する。
後方か? 側面か? それとも、空からか?
恐怖と怒りでセンサーの感度を最大にするが、レーダーには反応がない。
『どこって……おいおい、冷てぇなぁ』
銀時の声が、温度を失った。
先ほどまでの軽口が嘘のように、低く、冷徹な刃のような響きへと変わる。
『プレゼントを渡すのに、わざわざ宅配便なんて使うかよ。……直接手渡しに来たに決まってんだろ』
「な……?」
『下を見ろよ、ポンコツ』
その言葉に、理事はハッとしてゴリアテの足元――進軍する巨大要塞の前方を見下ろした。
そこに、いた。
砂煙が舞う荒野の真ん中。
一万の軍勢と、山のような巨大戦車ゴリアテの進路を塞ぐように。
たった一人、木刀を肩に担ぎ、白いスクーターに腰掛けた銀髪の男が、悠然と待ち構えていた。
「よぉ。待ちくたびれたぜ、理事長さん」
圧倒的な質量差。
象と蟻ほどの違いがある。踏み潰せばシミになるだけの存在。
しかし、その男が放つ圧倒的な「個」としての圧力は、鋼鉄の要塞をも凌駕し、戦場全体の空気を支配していた。
「ば……馬鹿な……! たった一人で……このゴリアテの前に立ちふさがるだと……!?」
『別に一人ってわけじゃねぇよ。……なぁ、お前ら』
銀時が背後へ声をかけると同時に、砂塵の向こうから複数の影が揺らめき立った。
「うへぇ……。やっぱりデカいねぇ、これ。おじさん、ちょっと腰が引けちゃうかも」
巨大な盾を構え、気怠げながらも鋭い眼光を放つ小鳥遊ホシノ。
「ん。ターゲット確認。……いつでもいける」
愛銃のマガジンを叩き込み、静かに闘志を燃やす砂狼シロコ。
「ちょっと! 勝手に一人でかっこつけないでよね! 私たちもいるんだから!」
文句を言いながらも、その瞳には決して退かない決意を宿した黒見セリカ。
「さぁ、お掃除の時間ですね〜☆ 綺麗さっぱり、片付けちゃいましょう!」
ミニガンの銃身を空転させ、不穏なほどの笑顔を浮かべる十六夜ノノミ。
『上空より支援します! 皆さん、道を切り開いてください!』
通信機越しに響く、奥空アヤネの凛とした声。
アビドス対策委員会、全員集結。
たった五人の生徒と、一人の先生。
一万の軍勢に対し、あまりにも少ない数。だが、その背中はどんな城壁よりも頼もしく、揺るぎない輝きを放っていた。
「……フッ」
銀時はニヤリと笑い、愛刀「洞爺湖」の切っ先を、天を突くゴリアテへと突きつけた。
『さぁ、第2ラウンドと行こうぜ。……こっからは、大人の喧嘩(センソー)の時間だ』
――――――――――――――――――
「行くぞぉぉぉぉ!!」
銀時がアクセル全開で、五千の軍勢に向かって突っ込んでいく。
それに続くように、アビドスの生徒たちも散開し、各々の火器を放つ。
ドォォォォォン!! ダダダダダダッ!!
開幕こそ、銀時の木刀が戦車の装甲を砕き、シロコたちの精密射撃が前線のオートマタを吹き飛ばしていた。しかし――。
「チッ……! 斬っても斬っても湧いてきやがる! ゴキブリかテメェらは!!」
銀時が木刀で三体をまとめて吹き飛ばすが、その隙間を埋めるように新たな十体が押し寄せる。
圧倒的な「数」の暴力。
いかに個の力が強大でも、物理的な物量の差は徐々に、だが確実に彼らを追い詰めていった。
「くっ……弾薬が……!」
セリカが舌打ちをしてリロードする隙に、銃弾の雨が彼女を襲う。
「セリカちゃん!」
ホシノが盾で割り込み防ぐが、その盾さえも激しい火花で赤熱していく。
「ハハハハハ! どうした! 威勢がいいのは口だけか!」
ゴリアテの上で、カイザー理事が狂喜の笑い声を上げる。
「所詮は個人の武勇など、組織の力の前には無力! 磨り潰せ! 砂粒の一つになるまでな!!」
巨大戦車ゴリアテの主砲が旋回し、動きの止まった銀時たちに狙いを定める。
絶体絶命。疲労の色が見え始めたアビドス勢は、徐々に円陣を縮小し、防戦一方へと追い込まれていく。
「……そろそろトドメと行こうか。おい、便利屋68!!」
理事は通信機に向かって叫んだ。
金で雇った傭兵たち。彼女たちを側面から突っ込ませれば、それでチェックメイトだ。
「聞こえているな! 契約通り働きたまえ! 側面から奴らを強襲し、その首を差し出せ!!」
だが、通信機からはノイズしか返ってこない。
「……何をしている! 便利屋68! 陸八魔アル! 返事をしろ!!」
ズドンッ!!!
その瞬間、理事の足元を守っていた親衛隊オートマタの頭部が、正確無比な狙撃によって吹き飛んだ。
「なっ……!?」
理事が驚愕して視線を向けると、砂丘の稜線に、四つの人影が立っていた。
黒いコートを風になびかせ、ハードボイルド(気取り)なポーズを決める女社長、陸八魔アル。そしてその愉快な仲間たち。
「……あら、ごめんなさい。ちょっと回線が混み合っていて聞こえなかったわ」
アルは狙撃銃の銃口から立ち上る硝煙をフッと吹き、不敵に微笑んだ。
「き、貴様ら……! 何のつもりだ! 契約を忘れたのか!?」
「忘れてないわよ。……でもね、私たちが契約したのは『ビジネスパートナー』であって、『悪趣味な破壊活動』の手先じゃないの」
アルは髪をかき上げ、ビシッと理事を指差した。
『だいたいうるさいのよ!!あなたみたいに無茶苦茶言ってくる人に筋を通すよりも、無茶苦茶な事をするけどしっかりとしてくれる桂さん達の方がよっぽど信頼できた!それだけの話!』
『裏切りもアウトローなら当たり前……知ってるでしょ?』
『アハっ!覚悟してねカイザー理事!』
『か…桂さんの頼みなので……容赦は、しません』
「……(無言で頷く)」
ハルカ、ムツキ、カヨコも続き、一斉に理事の軍勢に向けて銃撃を開始する。
「お……おのれぇぇぇぇ!! どいつもこいつも、私をコケにしおってぇぇぇ!!」
裏切り。敗北。屈辱。
理事の中で、最後の理性の糸がプツンと切れた。
「ええい、もういい! 役立たずどもめ! 私が……私が直接貴様らをミンチにしてやる!!」
グワァァァァァァン!!!
理事はゴリアテの操縦席から飛び出した。
その鋼鉄の義体が、ジェット噴射によって加速し、恐るべき速度でアルたちのもとへ――いや、最も近くにいた銀時たちへ向かって落下してくる。
「死ねぇぇぇぇぇ!!」
数トンの質量を持った拳が、銀時の脳天を砕こうと迫る。
消耗した銀時が反応するより早く、その軌道上に「影」が躍り出た。
「待ちわびたぞ、その隙を!!」
キィィィィィィィン!!
澄んだ金属音が戦場に響き渡る。
理事の巨大な鋼鉄の拳を、たった一本の日本刀が受け止めていた。
「なっ……貴様は……!?」
「貴様じゃない、桂だ!!」
桂小太郎。
彼は刀で拳を受け流すと同時に、懐から無数の球体――爆弾をばら撒いた。
ドガガガガガガガガッ!!!
至近距離での連続爆破。
爆風と黒煙が理事の巨体を包み込み、吹き飛ばす。
「ぐおォォォォォッ!?」
煙の中から、焦げ付いた理事の義体が転がり出る。
桂は着地と同時に刀を払い、銀時に背中を向けた。
「銀時! 雑魚はエリザベスと便利屋殿が引き受けてくれている! 今こそ好機(チャンス)! 大将首、共に頂くぞ!!」
「へっ……遅ぇんだよ、ヅラ公!」
銀時がニヤリと笑い、木刀を握り直す。
爆煙が晴れ、焦げ臭い風が砂漠を吹き抜ける。
煙の中からよろめき出たカイザー理事は、片膝をつきながらも、憎悪に染まった電子の瞳をギラつかせた。
「おのれ……おのれぇぇぇ!! 私の計画を、私の資産を……!! よくもここまで愚弄してくれたなァ!! 許さん……絶対に許さんぞ!!」
その怨嗟の声に対し、砂煙を踏み越えて現れた銀時が、吐き捨てるように言い放った。
「許さない? それはこっちのセリフだってんだ、コノヤロー!」
隣に並んだ桂も、静かな怒りを湛えた瞳で理事を見下ろし、刀の切っ先を突きつける。
「シロコ殿達を騙し、危険な目に遭わせて……。かけがえのない青春を、たくさんの人の居場所を奪おうとした貴様に、その言葉を言う資格などない!」
二人の侍は歩みを進め、アビドスの生徒たちの隣に立つ。
ホシノ、シロコ、セリカ、ノノミ、そして通信越しのアヤネ。
ボロボロになりながらも、その瞳に決して消えない光を宿した少女たちと、それを護る大人たちが、一直線に並び立った。
それは、カイザーという巨大な悪意に対抗する、鉄壁の防波堤だった。
「……ッ、ふざけるな……ふざけるなよ……!!」
理事は頬の破損部分から火花を散らしながら、金切り声を上げた。
「……君らは私の家畜……いわば狩られる側の存在なんだよ! 弱者は強者に搾取される、それが世界の理だ! その獲物が! 私に牙を剥くだなどと……よくも!!」
「なら、どっちが狩られる側のウサギか……ここではっきりさせようか、カイザー殿?」
桂が冷徹に告げる。
その殺気に、理事はたじろぎ、言葉を詰まらせた。
「っ!」
「貴方達には言いたいことが、いーーっぱいあるけど!!」
セリカが愛銃を構え直し、睨みつける。
その横で、シロコが静かに、しかし確かな信頼を込めて銀時を見上げた。
「……ひとまず、銀ちゃんから一言」
全員の視線が、銀色の背中に集まる。
銀時はゆっくりと木刀『洞爺湖』を持ち上げ、その切っ先を震えるカイザー理事の眉間へとピタリと合わせた。
その瞳に宿る光は、気怠げな万事屋のものでも、ただの先生のものでもない。
かつて戦場を駆けた、修羅のそれだった。
銀時は、真剣な顔で告げた。
『お前らが向かうべきは極楽などではなく、』
一瞬の静寂。
そして、砂漠の夜空を引き裂くような咆哮が轟いた。
『地獄行きだコノヤロー!!』
ビシッ!
木刀が、最後の審判を下すように突きつけられた。
カイザー理事の電子頭脳(CPU)に、死の恐怖という名の致命的なエラーを刻み込むには十分すぎた。
「ひっ……!」
理事は無様に後ずさり、踵を瓦礫に引っ掛けて体勢を崩す。
目の前に並ぶのは、ボロボロになりながらも瞳を輝かせるアビドスの生徒たち、不敵に笑う便利屋、そして修羅の如き侍たち。
勝てない。
今の戦力では、この理不尽な暴力の塊のような集団には、絶対に勝てない。
だが――ここで終わるわけにはいかないのだ。
私にはまだ、最後の切り札がある。
「……く、くくく……」
喉の奥から、油切れの歯車のような、乾いた笑い声が漏れた。
「あぁ? 何がおかしい」
「……地獄、か。いいだろう、望み通り連れて行ってやるよ。……ただし、落ちるのは貴様らの方だがな!!」
理事は懐からスイッチを取り出し、迷わず押し込んだ。
ズドオオオオオオオン!!!
突如、理事と銀時たちの間の地面が爆ぜた。
攻撃ではない。巻き上がったのは、視界を完全に遮るほどの濃密な黒煙と、強烈な閃光弾(フラッシュバン)だ。
「うわっ、眩しっ!?」
「煙玉か!? 往生際の悪い!」
セリカとノノミが顔を覆う。
その隙を突き、理事の背部バーニアが限界まで噴射された。
「さらばだ、ドブネズミども! 次に会う時は、貴様らが神の御前で平伏している時だ!!」
黒煙を切り裂き、理事の巨体が空へと逃げ去っていく。
「あ! 待ちやがれこの野郎!!」
銀時が即座に煙を払って飛び出そうとするが、残存していたオートマタたちが、まるで主君を逃がす盾となるように一斉に自爆特攻を仕掛けてきた。
「チッ、どこまで鬱陶しいんだテメェらは!!」
――――――――――――――――――――
戦場から離脱し、採掘施設の最深部へと向かう空中で、理事は荒い呼吸(冷却ファンの音)を繰り返していた。
「ハァ……ハァ……! 危なかった……。まさか、あそこまで追い詰められるとは……」
残りわずかな兵力。
追い詰められた鼠は、猫を噛むどころか、世界の理(ルール)さえも食い破ろうとしていた。
「くっ! まだか! まだチャージは終わらんのか!!」
「理事、ダメです! 冷却が追いつきません! これ以上はオーバーヒートします!」
「――やむを得ん! リミッターを解除しろ! ここで奴らを迎撃するのだ!」
『は、はっ!』
「おい! こいつの準備は万端なんだろうな!」
「は、はい! 強制稼働ならすぐにでも撃てます!」
「ならばすぐに攻撃態勢に入れ! 狙いは……あの銀髪の悪魔と、アビドスのガキどもだ!!」
カイザー理事の絶叫と共に、巨大戦車ゴリアテが悲鳴のような駆動音を上げて再始動する。
その両腕に装備された巨大なガトリングガンが、凶悪な回転を始めた。
ブゥゥゥン……ガガガガガガガガガッ!!!
圧倒的な弾幕の暴風雨。
砂漠の砂が巻き上がり、視界が茶色く塗り潰される。
『前方にゴリアテを確認! 攻撃、来ます! 回避してください!』
アヤネの悲鳴に近い警告。
だが、歴戦の猛者たちは反応していた。
「ノノミちゃん、捕まって」
「はい♪」
ホシノは小柄な体で巨大な盾を構えつつ、ノノミの手を引いて滑るように砂上を駆ける。
「こっちだ!」
「ん!」
銀時はシロコの腰を抱え、銃弾の雨を紙一重でかわして岩陰へ飛び込む。
「セリカ殿、すまん!」
「にゃ!? ちょっと、どこ触って――」
桂はセリカを米俵のように小脇に抱えると、ニンジャの如き足捌きで爆風の中を疾走した。
ゴリアテは、彼らが逃げ込んだ岩陰に向かって、憎悪を吐き出すように鉛の雨を降り注ぎ続ける。岩が削れ、粉塵が舞う。
「あいつ、もう無茶苦茶になってない!? ただの弾の無駄遣いでしょ!」
セリカが桂の脇でジタバタしながら叫ぶ。
「そこまで追い詰められてるってことだよねぇ。……余裕のない大人は怖いねぇ」
ホシノが盾の隙間から戦況を窺う。
その時、ゴリアテの動きが変わった。
ガトリングの掃射が止み、代わりに頭部に備え付けられた巨大な主砲が、不気味な光を帯び始めたのだ。
『高エネルギー反応! ほ、砲弾が来ます! それも、着弾地点一帯を消し飛ばすほどの威力の!』
『フハハハハハハッ! 終わりだアビドス対策委員会! そして坂田銀時ィ!! 塵となって消えるがいい!!』
勝利を確信した理事の高笑いが響く。
遮蔽物ごと彼らを蒸発させる、必殺の一撃。
誰もが絶望するその刹那――。
一人の男が、岩陰からゆらりと歩み出た。
「……銀ちゃん!?」
驚くシロコの声を背に、銀時はゴリアテの正面に立つ。
そして、腰を低く落とし、両手を腰の位置で合わせる独特の構えを取った。
『――何だ、あの構えは?』
モニター越しにその姿を見た部下が、戦慄の声を上げる。
『り、理事! あの腰の落とし方! あの手の形! ……あ、あれは「かめはめ波」です! あの人間! 生身で「かめはめ波」を撃つつもりです!』
『馬鹿を言うな! あれは漫画の中の――』
だが、銀時の手の中には、確かに「気」が集束していた。
それも、いつもの青白い光ではない。
禍々しくも神々しい、深紅の輝き。
「ねぇ、銀ちゃんの手の光……赤くない?」
シロコが瞬きをする。
『え、ちょっと待ってください! 撃たないですよね!? 嘘ですよね!? 世界観どころか制作会社も局も違う他作品の技で決着つけたりしないですよね!? 訴えられますよ!?』
アヤネの常識的なツッコミがインカムを通して響き渡る。
だが、銀時の集中力は極限に達していた。
ピシッ!
空間に亀裂が走るほどのエネルギー密度。
「シィィィィィ……」
銀時は大地を蹴り、高く飛び上がった。
バックには満月。ポーズは完璧。
『ちょ、待て! ストップ! ストップです銀時さん! 』
アヤネの絶叫は、もはや悲鳴に近い。
「食いやがれ! こいつは……10倍ダァァァアアア!!」
『理事! た、退避――』
ドゴォォォォン!!!!
放たれた真紅の閃光は、ゴリアテの主砲弾ごとその巨体を飲み込んだ。
物理法則も、版権の壁も、すべてを粉砕するデタラメな威力。
鋼鉄の要塞は飴細工のように溶解し、大爆発を起こす。
『うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!』
理事の乗っていたコックピットブロックが、衝撃で遥か彼方へと弾き飛ばされた。
夜空にキラーンと光る星になる理事。
呆然とそれを見上げるアビドスの一同。
そして、静寂を取り戻した通信機から、アヤネの魂のツッコミが虚しく響いた。
『かめはめ波……いっちゃったァァァァ!!!』
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「ふぅ〜なんとかなったな•••••••」
「なんとかなってないですよ!大丈夫なんですかアレ!?版権とか世界観的に全然なんとかなってないんですけど!!」
アヤネの絶叫が通信機越しにこだまする。
瓦礫の山から湯気を立てて降り立った銀時は、悪びれる様子もなく小指で耳をほじった。
「おいおい、人聞きの悪いこと言うなよメガネ。あれはアレだ、かめはめ波じゃねぇよ。『可・愛・は・め・派』だ。可愛いは正義、そういうプリティな波動だ」
『どこがですか! ゴリアテ消し飛んでますけど!?』
「知ってたぁ?カルシウム不足でイライラしてると、幻覚が見えるらしいよ?牛乳飲め牛乳」
『もう……ツッコむ気力もありません……』
そんな漫才じみたやり取りの足元で、黒煙を上げる瓦礫の隙間から、何かが這い出そうとしていた。
「…ぅ…ぐ…逃げな…ければ、逃げて、また対策を―――!!」
全身の義体が半壊し、オイルを血のように垂れ流しながら、カイザー理事は無様に砂の上を這いずっていた。
プライドも、地位も、兵力も失った。今はただ、生存本能だけが彼を突き動かしていた。
だが。
「逃げ方がなっておらんな、理事殿?」
冷ややかな声と共に、目の前に影が落ちる。
「き、貴様は!」
顔を上げると、そこには抜身の刀を提げた桂小太郎と、木刀を肩に担いだ坂田銀時が、地獄の門番のように立ちはだかっていた。
その瞳に、慈悲の色は一切ない。
―――――――――――――――――――――――
「……クソッ! ここまでか……!」
理事は歯噛みし、背後を振り返る。
そこには、ホシノを先頭に、シロコ、セリカ、ノノミ、そしてアルたち便利屋68までもが、彼を完全に包囲していた。
「フン! そっちがどんな事をしてきてもね! こっちはそう簡単に折れたりなんてしないのよ!」
セリカが胸を張って言い放つ。
「その通り……。年貢の納め時だよ、カイザー理事」
ホシノが静かに宣告する。
四面楚歌。完全なる詰み。
その絶望が、理事の中のどす黒い感情を爆発させた。
「小鳥遊ホシノ、貴様が! 貴様がさっさと諦めてあそこから去ってさえいれば! ――坂田銀時、貴様もだ! 貴様さえ、ここに来なければ!!」
バッ!
理事は隠し持っていた大口径の拳銃を抜き放ち、至近距離から銀時の顔面に向けて引き金を引いた。
ダァァァァン!!
乾いた銃声が響く。
だが、銀時は瞬き一つしなかった。
銃弾は銀時の鼻先数センチのところで、突如現れた青白い幾何学模様のバリア――『シッテムの箱』のアロナが展開した障壁によって、弾き返されていたのだ。
「なっ……!?」
愕然とする理事を見下ろし、銀時は低い声で問うた。
「お前さん、今までどれだけの奴を泣かせてきたんだ? 一体、何人の人生をコケにして転ばせてきたんだ?」
「そ、そんなの……いちいち覚えているわけがないだろう!! 私は支配者だぞ!?」
その開き直った言葉に、銀時より先に桂が動いた。
「ならば一度、地に墜ちる痛みを知るべきだ。そうすれば、この世の重みを理解できるだろう」
「!!」
桂が理事の胸倉を掴み上げ、その体ごと空高く放り投げる。
同時に、懐から取り出した球体型の爆弾を、理事の足元へ向かって投げつけた。
「カッッッッ!!」
ドガガガガガッ!!
空中で爆発が起き、その爆風がブースターとなって、理事の体をさらに遥か上空へと打ち上げる。
「や、やめろ! 認めない、認めないぞ! この私が――この、私がァァ!!」
空の彼方で藻掻く理事。
そのさらに上。
月を背に、銀色の影が舞っていた。
「うぉぉぉぉおおおおお!!」
銀時は身体を捻り、全体重と遠心力、そして怒りのすべてを木刀『洞爺湖』に込める。
「教育的指導だ! 地面に埋まって反省しな!!」
ズドンッ!!
脳天への直撃。
音速を超えた一撃が、理事を地面へと叩き落とす。
『この私が……狩られる側だなんてぇぇぇぇぇぇぇっ!! 』
断末魔の叫びと共に、鋼鉄の塊が流星となって砂漠に激突した。
ドガァァァァァァン!!!!
凄まじい衝撃波が砂煙を巻き上げる。
やがて煙が晴れると、そこには――。
上半身を完全に地面に埋め、二本の足だけをV字に突き出した、見事な「犬神家」スタイルの理事の姿があった。ピクリとも動かない。
銀時はふわりと着地し、木刀を鞘に納めると、呆気にとられるホシノたちの方を振り返った。
「どうだ、少しはスカッとしたか?」
その問いかけに、少女たちは顔を見合わせ、満面の笑みで声を揃えた。
『とっても!!』
そう聞き、そう答えられ、銀時はフッと満足げな笑みを浮かべた。
これで終わった。そう、誰もが思った。
――――――――――――――――――――――――ー
その頃。
戦いの衝撃が伝播した、地下深くの空洞。
ゴゴゴゴゴゴッ……
地殻変動のような重低音が響き渡る。
暗闇の中で、無数の赤い光が灯り、機械仕掛けの神の眷属たちが蠢き始めた。
「■■■■――――!」
言葉にならぬ咆哮。
その地下で、アビドスの、いやキヴォトスの理を揺るがす「何か」が、ついに目覚めた。
次回次回守るべきものはここにある後編
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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近藤