透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
なんかお気に入り数増えた気がするんですけど……それとも映画のおかげ?
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想い寄せれば 桜ひらひら
こぼれ落ちる僕たちの涙
いついつまでも交わした笑顔
君との約束 全ての時よ輝き続けて
旅立つ日の君に何も言えなかった
「さよなら...」想い出の場所
空っぽの春空 満ち溢れた心
わかっていたはずなのに
とめどなく刻み行く日々
繋ぎ止めたい想いを
想い寄せれば 桜ひらひら
こぼれ落ちる僕たちの涙
いついつまでも交わした笑顔
君との約束 全ての時よ輝き続けて
二人約束した桜の木の下であの日の君を探した
茜色 暮れていく空
忘れられない想いを
振り向けばほら 桜ひらひら
蘇る共に過ごした日々
歩んだ道は 色鮮やかに
僕のとなりに君は居ないよ 永久に降り積もれ
君に会いたくて会いたくて 桜が散る前に...
巡る季節の中 きらめいた君が居たこと
想い寄せれば 桜ひらひら
君を探して空を見上げた
もう一度だけ 出会えるのなら
君に伝える言葉があるよ 花びらにのせて
夜風が暖簾をふわりと揺らし、三味線の物悲しくも艶やかな音色が、百鬼夜行の深い帳(とばり)へと溶け出していく。
客の喧騒が嘘のように引いた茶屋『ひのや』。その慌ただしい一日の営業が、静寂と共に終わりを告げようとしていた。
「それじゃあ、今日はこれで失礼します……」
見習いの和装から地味な私服へと着替えたサクラが、帳場に向かって深く、そしてどこかぎこちない動作で頭を下げた。
「うん、今日もご苦労様。ゆっくり休むんだよ」
日輪は、夜の闇に咲く向日葵のような、底抜けに温かく慈愛に満ちた微笑みでサクラを労った。その母性すら感じさせる温もりに触れ、サクラは狐の面の下でわずかに目を伏せ、逃げるように足早に店を後にした。
その華奢な背中には、血の匂いを纏う『暗殺者』としての鋭い棘は影を潜めている。そこにあったのは、ただ冷たい夜の街で居場所を求める、迷子のように脆く不器用な少女の姿だった。
しかし、その脆い背中を見送る者たちの瞳は、決して穏やかなものではなかった。
客足の途絶えた薄暗い広間の片隅。新八、神楽、そして月詠の三人は、息を潜めるようにして車座になっていた。
「……で、月詠さん。さっきの話、いったいどういう意味なんですか?」
新八が、張り詰めた声で重い沈黙を破る。
サクラが百華を襲った下手人だという確信。それだけでも十分に衝撃的だったが、月詠の言葉には、さらに深い闇の底を覗き込むような『裏』があった。
月詠は長く細いキセルを艶やかな唇から離し、ふぅ、と紫煙を宙に漂わせた。煙は生き物のように形を変えながら、百鬼夜行の深い闇へとゆっくり溶けていく。
「実はな……先日から百鬼夜行連合学院を騒がせている百華の連続襲撃事件。あの被害に遭った者たち……全員、瀕死の重傷を負わされてはいたが、皆、辛うじて生きておったんじゃ」
「え……?」
新八の目が、驚愕に大きく見開かれる。
「でも、テレビのニュースの放送で見たあの現場の映像……」
神楽が定位置で酢昆布を握る手を止め、怪訝な顔で首を傾げた。
「ものすごい出血の量だったアルよ。あの血の海を見て、生きてるなんて信じられないネ」
「そうじゃ。あの惨憺たる血溜まりを見れば、誰もが凄惨な殺人事件だと思うじゃろうな」
月詠の鋭い瞳が、キセルの火種のように赤く、そして冷たく光った。
「じゃが、それこそが奴の……サクラの**『カモフラージュ』**じゃ。急所を紙一重で意図的に外し、出血量だけを多く見せかけて殺害を偽装しておった。……暗殺者としての技術は間違いなく一流じゃが、その心までは、冷徹な人斬りに染まりきっておらん証拠じゃな」
新八はごくりと唾を飲み込み、開いたままの店の入り口へと視線を向けた。冷たい暗殺者の仮面の下で、彼女がどれほどの葛藤と罪悪感に苛まれていたのか。その重さが、ひのやの静寂に重くのしかかっていた。
一方、その頃。ーーーーーーーーー
百鬼夜行の煌びやかな喧騒から少し外れた裏路地。むせ返るような熱気と、焦げた鉄の匂いが重く立ち込める鍛冶場があった。
「んーーー……」
額に滲む汗を拭い、防護用のゴーグルを押し上げた刀鍛冶の少女、鉄子(てつこ)は、作業台の上に置かれた『一本の刀』を食い入るように見つめ、低く唸り声を上げていた。
いや、厳密にはそれは本物の刀ではない。
「どうだ? 作りもんにしちゃあ、よく出来てるだろ?」
腕を組んで土壁に背を預けていた銀時が、得意げに鼻を鳴らす。
「本当だ……。まさか、造形だけでもここまで完璧に再現できるなんて……」
鉄子は、刀身の反り、刃文の微細な乱れ、柄の緻密な装飾に至るまでを虫眼鏡で舐め回すように確認し、感嘆の息を漏らした。
「これも全て、ウチのポンコツAI……もとい、アロカス(アロナ)の『クラフトチェンバー』のおかげだな」
銀時が自身の持つiPadのような端末(シッテムの箱)をトントンと指先で叩くと、画面の中にホログラムの少女――アロナがパッと姿を現した。
『えっへん! 先生の記憶データと精細なスキャン情報から、物質生成システムをフル稼働させて頑張りました!』
画面越しに、アロナがドヤ顔で元気よくピースサイン(ブイッ)を決める。
サクラから奪った本物の妖刀を直接持ち歩くのはリスクが高いと判断した銀時は、シッテムの箱のオーバーテクノロジーを借りて、寸分違わぬ『完璧なレプリカ』を生成し、この鍛冶場に持ち込んでいたのだ。
しかし、鉄子の表情はすぐさま、職人としての真剣で険しい顔つきへと戻った。
「で……この刀身から『水が出ていた』というのは、本当なんだね?」
鉄子の探るような、どこか得体の知れないものを恐れるような問いかけ。
「銀さん、嘘は言わねェよ。確かに柄を握った瞬間、水飛沫がジャブジャブ吹き出してきやがった。で? プロの目から見て、どうだった?」
銀時の死んだ魚の目が、スッと鋭く細められる。
鉄子はコクリと一つ重く頷き、鍛冶場の熱気を切り裂くような重々しい口調で語り始めた。
「この刃の特殊な形状、鍔(つば)に刻まれた紋様……そして、刀身から水が湧き出るという特異な性質。もしそれが事実なら、間違いない」
ゴクリ、と鉄子が唾を飲み込む音が、静かな鍛冶場に響く。
「それは……**『妖刀・村時雨(むらしぐれ)』**だ」
「村時雨……?」
銀時が眉をひそめ、その聞き慣れない古風な名を舌の上で転がす。
「銀さん、ここキヴォトスは、昔から生徒たちが銃火器を携行する『銃社会』だ。刀剣なんてものは、時代遅れの美術品か、一部の好事家の趣味でしかない。……しかし、ここ百鬼夜行連合学院の歴史の裏において、過去にただ一本だけ、常軌を逸した力を持つ刀が打たれたことがあった」
鉄子は作業台のレプリカを指差し、ひどく熱を帯びた瞳で銀時を見上げた。
「サクラという子が持っていたその刀こそが、村時雨。持ち主の感情と呼応して水の勢いを増し、その水刃であらゆる『穢れ』を祓い清めると言い伝えられている、伝説の名刀さ」
「穢れを祓う、ねェ……」
銀時は皮肉げに口角を深く歪めた。
「その清らかな名刀様が、今は暗殺者の小道具として、同郷の血を啜ってやがるってわけか、皮肉なもんだねぇ」
「……その刀を打ったのは、普通の刀鍛冶じゃないんだ」
鉄子は銀時の言葉を遮るように、さらに声を一段落として、最大の核心を突いた。
「その妖刀を打ち上げたのは……かつて百鬼夜行に存在したとされる、あの**『クズノハ』**と呼ばれる少女だ」
「――クズノハ?」
「おい……『クズノハ』って、お前……」
その名を聞いた瞬間、銀時の脳裏に、かつて経験した奇妙で神秘的な記憶が鮮烈にフラッシュバックした。
エデン条約を巡る、あの凄惨な死闘の最中。生死の境を彷徨った深く薄暗い夢の底で、彼はお茶会を開く一人の狐耳の少女――トリニティの預言者、百合園セイアと出会った。
星の見えない虚無の空間で、彼女は確かにその名を口にしていたのだ。
百鬼夜行の歴史の影に潜み、神出鬼没にして謎に包まれた大預言者、『クズノハ』と。
※なお、この小説内では尺の都合上、及び大人の事情により、セイアさんの流麗かつ非常に長〜いありがたいお言葉(セリフ)は全カットされております。
事の真相と、彼女の美しい語り口をどうしても確認されたい方は、是非ご自身のスマートフォンに『ブルーアーカイブ』をインストールし、重厚なエデン条約編のストーリーをその目でお確かめください――。
赤熱する炉の火明かりを背に、鉄子(てつこ)は作業台の上の『妖刀・村時雨』のレプリカからゆっくりと視線を外し、重く首を横に振った。
「すまないが、私もこれ以上詳しいことは知らないんだ……。何せ、お伽話や歴史書にしか出てこないような、伝説の人物だからね」
だが、と鉄子は言葉を継ぐ。その瞳には、刀鍛冶としての義憤と、底知れない闇に対する警戒の色が濃く滲んでいた。
「これほどの業物(わざもの)を扱う少女を、ただの『人斬りの道具』として使い潰し、平然と殺しを命じる連中だ。奴らは間違いなく、彼女の命や意思よりも……この妖刀の持つ『力』そのものに、異常な執着を抱いていると言っていいだろうね」
銀時は無言のまま、死んだ魚のようだった瞳の奥に、静かで鋭い修羅の光を灯した。
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百鬼夜行の煌びやかな喧騒から遠く離れた、静寂が支配する一角。
サクラが帰還した『家』は、かつては名家としての威容を誇ったであろう広大な豪邸であった。しかし、手入れの行き届いていない庭木は亡霊の腕のように好き勝手に枝を伸ばし、立派だった土壁も所々が崩れ落ちて無残に朽ちている。
それはまるで、没落していく一族の命運そのものを体現しているかのような、寂れ果てた姿だった。
ギィ……と、悲鳴のような軋む音を立てて重い引き戸を開ける。
サクラは手にした薬包をギュッと握り直し、足音を殺して奥の薄暗い寝室へと向かった。
「……ただいま、タキ」
襖を静かに開けると、万年床の上に横たわる小さな影が、微かな衣擦れの音を立ててモゾモゾと動いた。
「お姉ちゃん……」
「ごめんね、遅くなって……。今からご飯を作って、すぐにお薬を飲ませてあげるからね」
サクラは、顔を覆っていた冷たい狐の面を外し、暗殺者としての殺気を完全に脱ぎ捨てた。慈愛に満ちた、ただの『姉』の顔に戻り、タキの枕元にそっと膝をつく。熱を帯びた幼い額を、外気でひんやりと冷えた手で優しく撫でた。
しかし、タキは布団から半分だけ顔を出し、熱に浮かされた虚ろな目ではなく、ひどく澄んだ不思議そうな瞳でサクラを見つめ返してきた。
「………お姉ちゃん。最近、何か……いいことあった?」
「え?」
予想外の問いかけに、サクラの手がピクリと凍りつく。
「ど、どうしたの? 急に……」
「………なんだか、最近のお姉ちゃん……すごく、嬉しそうに見えるから」
タキの純粋無垢な瞳が、サクラの堅く閉ざされた心の奥底を、真っ直ぐに見透かそうとしていた。
(嬉しそう……私が?)
サクラは無意識に、自身の頬へと指先を這わせた。
人を斬り、同郷の血に塗れた修羅の道を歩いているはずの自分が。
脳裏を過ったのは、あの『ひのや』での騒がしくも温かい時間だった。銀時たち万事屋の面々に無茶苦茶に振り回され、日輪に太陽のような微笑みで見守られ、晴太や忍術研究部の子たちと共に汗を流した、あのささやかで眩しい日常。
その記憶が、分厚い氷で覆われていた彼女の心を、本人が自覚していないほどに深く、優しく溶かしていたのだ。
「…………少し、席を外すね」
これ以上の動揺を悟られまいと、サクラは逃げるように立ち上がった。
「うん……」と力なく頷くタキを残し、冷たい板張りの廊下へと出る。
縁側に立ち、夜風を肺の奥深くまで吸い込んだ。
「はぁ……」
その温かい記憶の余韻を、胸の奥で静かに噛み締めようとした。
まさに、その刹那だった。
――ヒュッ、ダンッ!!
鋭い風切り音と共に闇夜から飛来した一本の矢が、サクラの顔のすぐ横をすり抜け、縁側の太い柱に深々と突き刺さった。
「…………ッ!」
サクラの全身の毛穴が瞬時に開き、温もりかけていた血が、再び『暗殺者』としての絶対零度の冷たさへと凍りつく。
柱に刺さった矢には、見覚えのある忌まわしい封蝋が施された文(ふみ)が括り付けられていた。
それは、あの陰陽面の男からの絶対の『召集令状』。
標的である坂田銀時を始末せず、あろうことか敵方に潜り込んでいた裏切りを嗅ぎつけられ、呼び出されたのだと本能が即座に理解した。
サクラは文を力任せに握り潰し、底知れない暗い庭の奥を見つめた。
そして、誰に聞こえるでもなくポツリと、血を吐くような悲痛な声で呟いた。
「………ごめん、タキ。お姉ちゃん……もう帰れない、かも」
ようやく見つけた温かな日常への切符は、残酷な現実によって、音を立てて破り捨てられたのだった。
百鬼夜行の華やかな街並みから完全に切り離された、忘れ去られた区画。
放棄された広大な空き地の奥に、巨大な墓標のようにひっそりと佇む廃工場跡があった。
サクラは一切の迷いを見せることなく、枯れ草を踏み躙りながら空き地を横断し、工場の内部へと足を踏み入れた。
かつては精密機械の駆動音が響き、多くの従業員が活気に満ちて動き回っていたであろう工場棟は、今や冷たい風が吹き抜けるがらんどうの空間と化している。コンクリートの壁には無数の蔦が蛇のように這い回り、錆びついたトタン屋根の大穴からは、青白い月光が冷酷なスポットライトのように差し込んでいた。
人工物が自然の浸食に敗北しつつあるその場所は、裏切り者の『死に場所』として、これ以上なくお似合いだった。
「出てきてよ。……言われた通り、連れは誰もいないから」
サクラの凛とした声が、静寂の廃工場に反響する。
同時に、彼女は腰の鞘に手をかけ――チャキッ、と鋭く冷たい金属音と共に『村時雨』を抜刀した。
刀身からポタポタと滴る水が、乾いたコンクリートの床に濃いシミを作っていく。彼女は両手でしっかりと柄を握り締め、腹の底から湧き上がる死の恐怖を、決死の覚悟で必死に抑え込んでいた。
数秒の、永遠にも似た重苦しい沈黙。
やがて、頭上の暗闇が音もなく蠢いた。
トンッ……。
一切の足音を立てず、工場の錆びた鉄骨の遥か上空から、黒ずくめの装束に身を包んだ『陰陽の仮面の男』が、ふわりと漆黒の羽のように舞い降りた。
月光を背に受けるその男の姿は、まさに命を刈り取る死神そのものだった。
「────……なぜ呼ばれたか、分かっているか?」
男の低く濁った、絶対的な冷酷さと暴力を孕んだ声が、サクラの鼓膜を直接震わせる。
そして、男は狐の面の下で唇を血が滲むほど噛み締める彼女に向かって、暗殺者としての名ではなく、彼女の背負う重い『呪い』そのものを宣告した。
「……『春王サクラ』」
廃工場のひんやりと冷え切ったコンクリートの空気を震わせるように、鉄骨の上から見下ろす陰陽面の男の、低く濁った声が響き渡った。
「サクラ……お前には、話したはずだ」
それは、彼女の心を長年縛り付けてきた呪いのような言葉。男は絶対的な支配者の立ち位置から、まるで虫けらに冷酷な真理を説くように語りかける。
「一生というものは、よく水に例えられる。生きとし生けるもの、その全ては本来『弱者』なのだと。弱者は、抗うことなく強き者に流され、身を委ねることで初めて生をもたらされる……と」
逆らうな。自我を持つな。ただ淀んだ流れに従い、命じられるままにその手を血で染めろ。
男の言葉の裏にある粘着質な支配欲が、冷たい夜風に乗ってサクラの足元へ這い寄り、彼女の身体を縛り上げようとする。
しかし、かつてならその呪詛に震え、絶望して平伏していたはずのサクラは、今夜は違った。
彼女は両手で握りしめた紺碧の刀――『村時雨』の柄に、さらに強く、白くなるほど力を込める。
狐の面の下にある瞳には、かつての怯えや諦めはない。あの騒がしくも温かかった茶屋での記憶が、そして情けなくも絶対に逃げなかった銀髪の侍の背中が、凍てついていた彼女の心に、小さな、しかし決して消えない確かな炎を灯していたのだ。
「……別に、忘れたわけじゃない」
サクラの凛とした声が、男の這い寄る呪詛を真っ直ぐに切り裂いた。
「でも、もうこの手を……師匠が遺してくれた刀を、これ以上、誰かの血で穢したくない!」
それは、暗殺者としての血塗られた道を完全に拒絶する、彼女自身の意志による初めての明確な『反逆』だった。
しかし、その決死の覚悟を聞いた男の反応は、怒りでも驚きでもなく、ただの酷薄な嘲笑であった。
「フン……」
陰陽の面の下から漏れた、酷く冷たく、底意地の悪い鼻で嗤(わら)う音。
「一度も人を殺したことがないくせに、よく言う」
「ッ……!」
サクラの息がヒュッと止まり、瞳が驚愕に極限まで見開かれた。
百華への襲撃。カモフラージュの致命傷。殺害の偽装。
完璧にやり遂げ、誰にもバレていないと思っていた、己の甘さと、命を奪うことへの強烈な罪悪感の隠蔽。
「……気づいていないとでも思っていたのか?」
男が鉄骨から音もなく飛び降り、サクラの数メートル先へと着地する。白黒の太極図を模した陰陽の面が、青白い月明かりに不気味に浮かび上がった。
「貴様のくだらない甘さなど、とうに知れていた。だからこそ、あのふざけた『先生』の暗殺を、貴様が暗殺者として完成するための最後のチャンス(試金石)として命を下してやったというのに……まんまと我らを裏切りおって」
全ては、この男の手のひらの上だった。
彼女の抱えていた葛藤も、殺しへの恐怖も、そして裏切りすらも、この男には端から筒抜けだったのだ。圧倒的な実力差と、残酷なまでの情報差を突きつけられ、サクラの額にじわりと冷や汗が滲む。
だが、彼女は決して後ずさりせず、その視線を逸らさなかった。
「ねぇ、あなた……。こんなことをして、一体何をしたいの?」
サクラは絞り出すような声で、長年胸の奥に抱えていた最大の疑問を真っ向からぶつけた。
少女ひとりの人生を狂わせ、百華を襲い、キヴォトスの闇で血を流し暗躍する、その『真の目的』を。
男はピタリと足を止め、傲慢に、そしてひどく芝居がかった動作で首を傾げた。
「お前のような、すぐ死ぬような弱者に語る言葉など無駄だ」
その濁った声には、先ほどまでの冷徹な響きとは違う、得体の知れない『狂信的』な熱が混じり始めていた。
「我らは、神の復活を望むのみ……故に!」
シャキッ――!!
鋭く冷たい金属音が、静寂の夜気を切り裂いた。
男の漆黒の袖口から抜き放たれたのは、日本刀よりも短く、しかし暗殺と近接戦闘において無類の凶悪さを誇る、冷たい輝きを放つ『小太刀(こだち)』だった。
「裏切り者には、死の裁きを下す!」
明確な、そして濃密な殺意が、物理的な重さとなってサクラの全身に圧しかかる。
常人ならば、その圧倒的な死の気配に呑まれ、呼吸すら忘れて腰を抜かしていただろう。
だが、サクラの心に浮かんだのは、圧倒的な恐怖の象徴である眼前の男の姿ではなかった。
自らを襲った自分を受け入れてくれた大人の姿だった。
サクラは震える膝に力を込め、村時雨の切っ先を男に向けたまま、ふっ、と小さく息を吐いた。
そして――かつての絶対的な支配者に向かって、真っ向から挑発的な言葉を投げつけたのである。
「……あなたに、出来るの?」
「…………」
男の動きが、ピタリと止まる。
「暗殺の依頼を、その『弱者』である私なんかに任せきりにして……自分だけ安全な場所に腰を下ろして、結果が出るのを待っていただけの……ただの逃げ腰の大人(あなた)に」
それは、ただの強がりではない。男の歪んだ支配構造と、その奥底にある『自身の手を汚さない臆病さ』を的確に抉り出す、何よりも鋭利な刃(言葉)だった。
狐の面と、陰陽の面。
二つの仮面が、冷たい月光の下で静かに、そして決定的に睨み合う。
「……最後の言葉は、それでいいか?」
男の限界を超えた殺気が爆発した。
死神の宣告と共に、小太刀の鈍い光がサクラの首筋を目掛けて、一直線に襲い掛かった。
死の風が吹き抜ける。
常人であれば、その圧倒的な殺気を前に恐怖で足がすくみ、あるいは反射的に後ずさりして死を受け入れていただろう。
しかし――。
「!」
陰陽面の奥で、男の目がわずかに驚愕に見開かれた。
サクラは退くどころか、己の首を狙う死の刃を迎え撃つように、自ら男の『懐』へと深く踏み込んだのだ。
剣術における絶対の真理。刀剣が最も遠心力を生み、威力と鋭さを発揮するのは『切っ先(先端)』である。恐怖に駆られて半端に距離を取れば、その最速の刃の餌食となる。
それもスピードで動きが決定されたならば尚更、
それを本能で、感じ取ったサクラは、極限の恐怖をねじ伏せ、死地のさらに一歩奥へと飛び込んだ。
(ここッ!)
空を切る小太刀の刃鳴りが、狐の面のすぐ横を掠める。
死の軌道を紙一重で潜り抜け、男の懐(安全圏)へと侵入したサクラは、自身の身体のバネを限界まで引き絞り――男の腹部を目掛けて、渾身の蹴りを叩き込んだ。
ドスッ! という鈍い衝撃音が、廃工場に響く。
それは単にダメージを与えるための打撃ではない。体格と筋力で圧倒的に勝る男の体勢を崩し、同時にその蹴りの『反動』を利用して、自身は後方へと大きく跳躍する。
タンッ、と枯れ草を踏んで軽やかに着地したサクラは、男の小太刀が届かず、己の持つ打刀『村時雨』が最も活きる完璧な間合い(距離)を確保した。
圧倒的な死の淵から一転、決死の体捌きで主導権を奪い取った、見事な反撃。
しかし――。
「……足癖の悪い女子(おなご)だ」
土煙が晴れた先で、男は微かに上体を揺らしただけで、平然と立ち尽くしていた。
陰陽の面の下から漏れたのは、焦りも痛みの欠片もない、ひどく冷酷で平坦な声。男は蹴りを受けた腹部の汚れを、忌々しそうに左手で軽く払う。
その流れるような動作には、サクラの命懸けの反撃すらも「児戯」と断じる、絶対的な傲慢さが満ちていた。
(……っ、効いてない!)
サクラは奥歯をギリッと噛み締め、紺碧の刀を正眼に構え直す。彼女の焦りと高ぶる感情に呼応するように、刀身から水がとめどなく溢れ出し、青白い月光を反射して輝いた。
「距離を取り、主導権を握ったつもりか? 浅ましい」
男が再び小太刀をゆったりと構える。その瞬間、男の周囲の空気がドロリと重く歪み、先ほど以上のどす黒い殺気が廃工場を満たした。
「人を斬る覚悟も、己の運命を受け入れる覚悟もない。そんな刃に迷いのある小娘の剣など、我には届かん。……見ろ、その刀が泣いているぞ」
「……うるさいッ!」
サクラは地を蹴った。言葉による呪縛を断ち切るための、真っ向からの先制攻撃。
村時雨の刀身から迸る水飛沫が、鋭い紺碧の軌跡を描いて男の首へと迫る。
「無駄だ」
男の小太刀が、最小限の動きでそれを迎え撃つ。
キィィィンッ!!
火花と水飛沫が同時に弾け飛び、硬質な金属音が廃工場の夜を切り裂いた。
サクラの繰り出す水の連撃。しかし、男は一歩も引くことなく、その全てを冷徹に、そして容易く捌いていく。重すぎる実力差が、刃を交えるたびにサクラの両腕を、そして心を削り始めていた――。
「……そろそろ、飽きてきたな」
男の底冷えのする低い声が、廃工場の重い空気に溶け込んだ。
その瞬間。
(……気配が、消えた!?)
サクラの背筋に、氷柱を突き立てられたような悪寒が走る。
目の前にいたはずの漆黒の装束が、月光の作り出す影の中に完全に融けて消えたのだ。
防御の姿勢を固めるより早く。
――ビュッ!!
風切り音すら置き去りにした不可視の刃が、サクラの全身を駆け抜けた。
ドクン、と心臓が一つ大きく跳ねる。
直後、身体のあちこちに、信じがたい熱を帯びた斬り傷が走り――皮膚が裂け、真っ赤な鮮血が音を立てて噴き出した。
それは、彼女自身の肉が裂け、千切れるという、キヴォトスの住人にとってはあまりにも非現実的で生々しい音だった。
「ぁ……っ!?」
灼熱の激痛が、全身の神経を無慈悲に焼き尽くす。
サクラは狐の面の下で悲鳴を噛み殺し、もつれそうになる足を必死に動かして後退した。
(斬られた……!? そんなの、ありえない! キヴォトスの外の人間ならまだしも、私たちの身体に、こんな深い傷をたった一太刀で……!)
パニックになりかける思考。
キヴォトスの生徒たちは、神秘の加護によって銃弾やロケット弾すらも耐え抜く強靭な肉体を持っている。それが常識だ。しかし、この得体の知れない陰陽面の男は、その常識(ルール)を無視し、いとも容易く彼女の人体を切り裂き、壊しているのだ。
「ふっ──────!!」
激痛に霞む視界の中、再び死神の刃が迫る。
サクラは血反吐を吐くような思いで、重くなった村時雨の柄を握り直し、渾身の力を込めてその凶刃を迎え撃った。
ガキンッ!!
「ほう……その傷で、我の斬撃を受け止めるか」
男が陰陽の面の奥で、ひどく冷酷に、しかしわずかに感心したように目を細めた。
「ーーーっ!!」
歯を食いしばり、鍔迫り合いに耐えるサクラ。血の気が引き、膝が限界を訴えて震えている。
「そんな貴様の手向けに、もう一度だけ機会(チャンス)をやろう」
男の顔が、サクラの耳元へと近づく。
「我らに下れ。そして、あの男(銀時)を始末しろ」
甘く、そして毒のように絡みつく誘惑。だが、サクラの瞳の奥で小さく燃える炎は、まだ消えていなかった。
「……お…お断…」
「────……そうか」
ズブッ。
「────……う゛ぐあっ!?」
鈍い音。サクラの腹に、男の小太刀が容赦なく深々と突き立てられた。
気管から空気が漏れ、狐の面が苦痛に歪む。
「貴様は、一体何を夢見ている?」
男は刃を突き立てたまま、サクラを見下し、哀れむように嗤った。
「命を奪っていないだけで、あの連中と『仲良しこよし』出来るとでも思っていたのか?」
「あ……っ、がっ……!」
「奴らは、貴様の血塗られた素性を何も知らない。……本当の貴様を知れば、皆、貴様を忌み嫌い、軽蔑し、最後には追い出すに決まっている」
男の言葉は、小太刀の刃以上に鋭くサクラの心の臓を抉った。
それは、彼女自身が最も恐れ、最も直視したくない残酷な現実だったからだ。
「我らは、そんな偽善と欺瞞に満ちた愚鈍な社会を消し去り、『0』に還すために活動しているのだ」
男はそう言い放つと、サクラの身体をゴミでも捨てるように乱暴に放り投げた。
コンクリートの床に叩きつけられたサクラに、無慈悲な斬撃の雨が降り注ぐ。
「あ……ぎっ、あああああああああ……っっ!!?」
絶叫が廃工場に谺(こだま)する。
鮮血が飛び散り、紺碧の刀・村時雨は彼女の力無い手から遠くへと弾き飛ばされた。
「………我らの大義に賛同できない、愚かな娘よ」
血溜まりの中に倒れ伏すサクラを見下ろし、男はゆっくりと小太刀を振り上げた。
「いまここで、楽にしてやる」
サクラの瞳から、ついに光が失われた。
痛みに霞む視界。頭に浮かぶのは、タキの顔と、もう二度と帰れないあの温かい日常。
(…師匠…タキ……みんな………ごめんなさい……)
彼女はただひたすらに、心の中で懺悔を繰り返した。
死神の一太刀が、彼女の命を刈り取ろうと無慈悲に振り下ろされた――まさに、その時!!
ドゴォォォォォンッ!!!
廃工場の分厚いトタン壁が、爆発でも起きたかのような轟音と共に、派手にぶち破られた。
濛々と舞い上がる土煙とコンクリートの破片。
その粉塵の中から、凄まじい殺気を纏った『一つの影』が、ゆっくりと姿を現した。
「ーーーっ!」
陰陽面の男が、その圧倒的な気迫に小太刀の軌道を止め、初めて後退りする。
舞い散る土煙が晴れた先。
そこには、愛用の木刀を肩に担ぎ、死んだ魚のような瞳に修羅の怒りを滾らせた男――坂田銀時が立っていた。
「おい……」
地獄の底から響くような、低くドスの効いた声。
「ウチの生徒に、何してくれてんだ? テメェ……」
「ぎ……銀、さん……」
薄れゆく意識の中で、サクラの瞳から、堪えきれずに一筋の涙が溢れ落ちた。
銀時が、ゆっくりと、しかし確かな殺意を纏って足を踏み出す。
コンクリートの破片を踏み砕く「ジャリ……」という無機質な足音が、死の静寂に支配されていた廃工場に重く、そして異様な威圧感を持って響き渡った。
陰陽面の男は、分厚いトタン壁を易々とぶち破って現れた闖入者(ちんにゅうしゃ)を品定めするように、面の下の瞳を細める。
「……貴様が、シャーレの『先生』か。あの娘が仕留め損なったという」
男の濁った声には、強者特有の明らかな侮蔑と、下等生物を見下すような嘲笑が混じっていた。
「わざわざ己から死地に足を踏み入れるとはな。しかも、銃火器も持たず、そんな木の棒切れ一本で……愚か極まりなーーッ!」
「――ぐッ!?」
男の傲慢な台詞は、最後まで紡がれることはなかった。
縮地すら超える神速の踏み込み。先ほどまで数メートル先にいたはずの銀時の姿がブレたかと思うと、一瞬にして男の死角である懐へと潜り込んでいたのだ。
「誰の許可得て、何ダベってやがる……」
地を這うような、死神の底冷えする声。
ドォォォォォンッ!!!
銀時が横薙ぎに一閃した木刀は、男が咄嗟に防御姿勢をとったにも関わらず、空気を叩き割るような轟音を立てて男の身体を吹き飛ばした。
ズサァァァッ!! と、男が工場の太い鉄柱に激突し、濛々たる粉塵が視界を完全に奪う。
(……姿が見えねェな)
銀時は木刀をだらりと下げたまま、死んだ魚のような瞳を鋭く左右に走らせる。
吹き飛ばした確かな手応えはあった。だが、直前で致命傷を避けた気配。そして今、男は瓦礫の影はおろか、呼吸音や殺気すらも周囲の闇に完全に『消去』していた。
「!?」
直感。あるいは、数多の死線を潜り抜けてきた白夜叉の第六感が強烈に警鐘を鳴らした。
死角となる遥か上方、錆びついたクレーンの上部から、目にも止まらぬ速さで一条の閃光(弾丸)が銀時の眉間を正確に撃ち抜こうと飛来する。
それを、銀時は『見ず』に躱した。
片手で木刀を握りしめたまま、空いた手すら地面につくことなく、バネの弾けるような一切の無駄がないバク転で後方へと跳躍する。
タタタンッ! と、先ほどまで銀時の頭があった空間を複数の銃弾が空しく通り過ぎ、コンクリートの床を抉り飛ばした。
「まさか……ただの木の棒切れを持つ人間に、ライフルまで使わされる羽目になるとはな……」
粉塵が晴れた鉄骨の上。そこに降り立った男の手には、先ほどの小太刀ではなく、無機質な黒光りをする最新鋭の狙撃銃(スナイパーライフル)が握られていた。
キヴォトスという銃社会において、それは最も合理的で冷酷な殺戮の手段。男は暗視スコープ越しに、着地したばかりの銀時の心臓に再び照準を合わせた。
必殺の引き金が引かれる、その刹那。
「!?」
ギィィィィンッ!!!
火花が激しく散り、甲高い金属音が廃工場の夜を切り裂いた。
「……何ッ!?」
男の陰陽面の奥で、二度目の驚愕が見開かれる。
発射されたはずの超音速の弾丸。それは、銀時の心臓を貫く直前――まるで弾道の先読みをしたかのように振り上げられた銀時の『木刀』によって、真っ向から弾き飛ばされていたのだ。物理法則を完全に無視した、まさに化け物の剣技。
銃弾を弾き落とした勢いそのままに、銀時は高く跳躍し、男の潜む鉄骨へと肉薄する。
「オラァァァッ!!」
凄まじい怒りを乗せた斬撃の嵐。男は咄嗟にライフルを盾にして防ぐのが精一杯だった。
ガキィンッ! と銃身がひしゃげ、男の姿勢が大きく揺らぐ。
(なるほど……流石は我らが部隊の一部を倒しただけのことはあるな。……!)
薄れゆく意識の中、血溜まりに倒れ伏すサクラは、信じられない光景を目の当たりにしていた。
キヴォトスの神秘を宿す生徒の身体を容易く切り裂く、あの絶対的で無慈悲な男を相手に。神秘もヘイローも持たないはずの一人の大人が、ただの木刀一本で、圧倒的な殺気と共に押し込んでいるのだ。
(ぎ、銀……さん……)
サクラの視界に映るその背中は、泥酔してくだを巻き、情けない悲鳴を上げていた男の背中ではない。
誰かのために迷わず死地に立ち、どんな理不尽な暴力にも絶対に屈しない、ひどく大きくて不器用な、本物の『侍』の背中だった。
男もライフルを捨て、再び小太刀に切り替えて応戦する。
ギンッ! ガァンッ! と、何度も何度も刃と木刀がぶつかり合い、凄まじい衝撃波が鉄骨を軋ませる。
しかし、両者一歩も退かず、一向に決着がつかない。
その時、男の背後から鋭い風切り音と共に、数本のクナイが飛来した。
「ッ!」
男が小太刀でクナイを弾き落とした先。
工場の入り口には、キセルをふかす月詠と、息を切らした万事屋の面々、そして忍術研究部の少女たちが駆けつけていた。
「サクラさーん!!」
「サクラちゃん!!」
新八と晴太の悲痛な叫びが廃工場に響く。
「ちょっと! ちょっと! これかなりヤバイんじゃない!?」
「ま、周りの敵はイズナちゃんと神楽ちゃんが相手してくれてるから……今のうちに、サクラちゃんを……っ!」
ミチルが慌てふためき、ツクヨが身を挺してサクラの元へと駆け寄ろうとする。
「増援とは……。それでも、真っ向勝負を主する侍の――」
男が余裕の態度を崩さずに言い放とうとした瞬間。
「うるせぇよ」
銀時が、男の言葉を重い一撃と共に叩き折った。
「俺ぁ、ここに喧嘩しに来たんじゃねェ……。テメェら、斬りに来たんだ……」
一切の揺らぎのない、絶対零度の殺意。
「フン………!」
男は木刀の重い一撃をいなし、大きく後ろへと跳躍して距離を取った。
ひしゃげたライフル。想像以上に侮れない銀髪の侍。そして、現れた多数の増援。これ以上の近接戦闘は、己の命に致命的な危険を及ぼすと男の直感が告げていた。
「今宵は見逃す……だが、裏切り者、そして我らの邪魔をする者には必ず天罰を下す」
ドスッ、と男の足元に、真っ黒な煙玉が叩きつけられる。
「坂田銀時……。我らの前に立ち塞がるというのなら、次はその命、神への供物として頂こう」
「オイ、待ちやがれッ!!」
銀時が一足飛びで煙を切り裂いて踏み込むが、そこには既に男の姿はなかった。
「……チッ!!」
夜風に乗って不気味な声の残響だけが虚しく響き渡り、後には咽せ返るような血の匂いと、静寂を取り戻した廃工場だけが残された。
「……サクラ! しっかりしろ、サクラ!!」
銀時は木刀を放り投げ、血溜まりに倒れるサクラの元へと駆け寄った。
そこでサクラは意識を手放した。
深く、暗い泥水のような意識の底から、自分を呼ぶ声が聞こえた。
「サクラちゃん!」
「しっかりしてくださいよ!」
「目を覚ましてくださーー!!」
遠くで響いていたその声は、次第に輪郭を持ち、焦燥と祈りを帯びた鮮明な音となって鼓膜を震わせた。
サクラは重く張り付いた瞼を、微かな呻き声と共にゆっくりと押し開ける。
「「「あっ!!」」」
「…………ん……、んぅ?」
ぼやけていた視界が、次第に焦点を結んでいく。
鼻を突くのは、清潔な真新しい包帯の匂いと、微かな薬草の香り。そして目に飛び込んできたのは、ベッドを囲むようにして身を乗り出している、見慣れた顔ぶれだった。
「サクラ! 目が覚めたアルか!」
神楽がパァッと顔を輝かせて身を乗り出す。
「良かったよ〜っ! 三日三晩も目を覚まさないから、オイラ、このまま死んじゃうかと思った!」
晴太が涙目で鼻水をすする。
「コ、コラ晴太! サクラ殿がそんな簡単に死ぬわけないでしょ!?」
忍術研究部のミチルが慌てて少年を嗜めるが、その声も安堵で微かに震えていた。
「だって、あんなに血まみれだったんだよ!? いくらなんでもあんな酷い傷……」
「あ、あのー……みなさん、怪我人に響くので、もう少し静かにしといた方がーー」
背の高いもう一人のツクヨ(忍術研究部)が、オロオロとしながらヒートアップする面々を落ち着かせようと手を振っている。
(三日……三晩……?)
サクラの霞んでいた脳髄に、その言葉が引っかかった。
自分が陰陽面の男に切り裂かれ、廃工場の冷たい床に倒れ伏したあの夜から、三日も経っているというのか。
その事実を認識した瞬間、サクラの全身の血が逆流するような感覚に襲われた。
(タキ……!)
たった一人で家に取り残された、熱を出して寝込んでいるはずの幼い妹。
三日間も放置されていれば、どうなっているか分からない。
「!」
ガバッ!!
「タキ! タキは無事なの!? いっーーっ!!」
サクラは毛布を跳ね除け、激痛を訴える身体の警告を無視して無理やり上体を起こそうとした。
しかし、その瞬間、縫合されたばかりの全身の傷口が焼け焦げるような鋭い痛みを放ち、サクラは悲鳴を上げてシーツの上に崩れ落ちた。
「ああもう、無茶するから……! まだ傷が塞がりきってないんですよ!」
新八が慌てて駆け寄り、サクラの肩を優しく支えてベッドに寝かせ直す。
荒い息を吐きながら痛みに耐えるサクラの耳に、静かで、しかし不思議と安心感を与える低い声が届いた。
「安心するといい。主の妹も、とうに保護して入院させた……」
紫煙の匂いと共に現れたのは、長いキセルをふかす百華の頭領――月詠だった。
彼女はベッドの傍らに立ち、かつて自分たちに刃を向けたはずの暗殺者に対して、一切の憎しみを感じさせない穏やかな眼差しを向けていた。
「つ、月詠さん………」
サクラは驚きに目を見開いた。
自分が裏切り、手を下した組織のトップが、自分を責めるどころか、最も案じていた妹の命まで救ってくれていたのだ。罪悪感と感謝が胸の中でぐちゃぐちゃに混ざり合い、サクラの瞳から熱い涙が滲み出そうになった。
――その、感動的な空気をぶち壊すように。
「ちょっと、何勝手に人の手柄ぶんどって美味しいとこ持ってってんの?」
部屋の入り口の襖に寄りかかり、これ以上なく気の抜けた声で文句を垂れる天然パーマの男。
「銀、さん……」
サクラの瞳に、あの日、絶望の淵から自分を救い出してくれた不器用な侍の姿が映る。
壁に寄りかかっている銀時は、小指で器用に鼻をほじりながら、面倒くさそうに口を開いた。
「安心しな。お前もお前の妹も、命に別状はねェよ。……ただまぁ、キヴォトスの最新医療をフルコースで受けさせたせいで、目ン玉飛び出るようなバカ高い請求書が届いてな。入院代もろもろは、姫さん(そよ姫)に泣きついて、なんとか……」
「何言ってるアルか!!」
銀時が「俺が何とかしてやった感」を前面に押し出して語り終えるか終えないかのうちに、ドゴォォン! という音と共に、神楽の容赦ない飛び蹴りが銀時の脇腹にクリーンヒットした。
「ぐはぁッ!?」
「そよちゃんに土下座して頼み込んで、なんとかしたのは私ネ!! 銀ちゃんこそ、平然と人の手柄ぶんどるなアル!」
「いや、土下座してないし、なんなら酢昆布食べながらお願いしてよね?」
吹っ飛んでいく銀時と、仁王立ちしてふんぞり返る神楽。ツッコミを入れる新八。
先ほどまでのシリアスで感動的な空気は一瞬にして霧散し、病室はいつもの騒がしくも温かい、万事屋のドタバタ劇へと塗り替えられていく。
そのあまりの落差とくだらなさに、サクラは痛む身体を庇いながら、狐の面の下でふふっ、と小さく、本当に久しぶりに、心からの安堵の笑みを溢すのだった。その様子を見ていた吹き飛ばされたはずの銀時が、ボリボリと頭を掻きながらゆっくりと口を開いた。
「で、アイツは何だ?」
「?」
唐突に投げかけられた問いに、サクラは目を瞬かせた。
銀時の瞳には、先ほどまでの気の抜けた色は微塵もない。廃工場で陰陽面の男と対峙した時と同じ、底知れない修羅の光が静かに宿っていた。
「お前さんの持ってるあの日輪刀も、知り合いの鍛冶屋にみてもらったがね。……伝説の預言者がどうのこうのって、ぶっちゃけ何が何だかさっぱりだ。だが、只事じゃねェ厄介事だってのは分かった」
その言葉に、サクラの肩がビクッと跳ねた。
村時雨の正体。そして、それが単なる美術品ではなく、キヴォトスの歴史の深い闇に根ざした呪わしい代物であることを、この男はすでに掴んでいたのだ。
「主が誰も殺していないこともちゃんと知っておる……」
「隠してることを全て話せ。」
銀時の言葉を引き継ぐように、月詠が静かに宣告した。
艶やかな唇からふぅと吐き出された細い紫煙が、サクラの逃げ道を塞ぐように病室の空気を満たしていく。一切の誤魔化しを許さない、百華の頭領としての有無を言わせぬ重圧。
「…………」
サクラはギュッと唇を噛み締め、痛む身体を庇うようにシーツを強く握りしめた。
話せるはずがなかった。
これ以上、こんな底抜けにお人好しな人たちを、自分の血塗られた運命に巻き込むわけにはいかない。
「これ以上…あなたたちに迷惑ーー」
これきりの縁にするべきだ。そう決意して絞り出した拒絶の言葉は、しかし、銀時の低くドスの効いた声によってあっさりと叩き折られた。
「迷惑だぁ?」
「!」
弾かれたように顔を上げたサクラの目に映ったのは、呆れたように、けれど確かな熱を帯びた眼差しでこちらを見下ろす銀髪の侍の姿だった。
「人のことを襲い、ここまで連れて来させた挙句、訳のわからねぇ奴からお前ら助けて、こんだけの迷惑かけといて今更何言ってやがる……」
それは、突き放す言葉のようでいて、その実、これ以上ないほど温かく不器用な『救いの手』だった。
お前が背負っている闇がどれほど深くても、もうとっくに首を突っ込んでいる。乗りかかった船から今更降りるつもりはないという、万事屋としての揺るぎない覚悟。
銀時はシーツを握りしめて震えるサクラの小さな手から視線を上げ、真っ直ぐに彼女の瞳を射抜いた。
「ネタはもう上がってんだよ、さっさと話せ」
逃げることは許さない。一人で全てを抱え込むことも許さない。
圧倒的な安心感と、強引すぎる大人の気遣いを前にして、サクラの心に張られていた頑なな氷の壁は、ついに音を立てて崩れ落ちていくのだった。
サクラは、きつく握りしめていたシーツからゆっくりと手を離した。病室の白い天井を見つめるその瞳は、今ここではない、遠く薄暗い過去の景色を映し出していた。
「私たち二人には、身寄りがなかった。物心ついた時から……その日食べるものすらなくて、路地裏で物乞いをして生きていたの」
冷たい雨が降る、石畳の記憶。
『お願いします、お願いします……っ!』
泥だらけの小さな手。すり減った草履。
『少し、ほんの少しでいいですから……何か、食べるものを……っ』
道行く大人たちの足元にすがりつく幼いサクラ。しかし、返ってくるのは冷ややかな視線と、獣人の男の心無い言葉だけだった。
『見知らぬ小汚いガキに恵んでやるほど、こちとら酔狂なお人好しじゃねぇんだよ。シッシッ!』
無情にも払いのけられ、泥水の中に転がる。
『………ッ!』
隣で、飢えと寒さに震えていた幼い妹、タキの小さな肩がビクッと跳ねた。限界だったのだろう。サクラはどうしようもない現実に絶望しボロボロと涙をこぼす、その様子を見ていたタキはあてもなく雨の路地へと走り出してしまう。
『ま、待って、タキ……!』
(タキだけでも……妹だけでも、楽にさせてあげなきゃいけないのに。私がしっかりして、困らせちゃいけないのに……っ)
無力な自分を呪いながら、泥だらけで妹の背中を追いかけた絶望の日々。
「……そんな、明日の命も知れなかった私たちを拾い、育ててくれたのが……年老いた狐の獣人、師匠である『春王』さんだった」
サクラの声に、微かな温もりが宿る。
「春王さんは、私たちを本当の孫のように可愛がってくれた。ご自身は、『一族が栄華を誇っていた時代と違って、袖も振れない貧乏暮らしですまない』って、いつも申し訳なさそうに嘆いていたけれど……」
サクラは小さく首を横に振った。
「私たちからしてみれば、雨風を凌げる屋根があって、温かいご飯があって……育ててくれただけで、それだけで十分すぎるくらい幸せだったの」
しかし、そのささやかな幸せも長くは続かなかった。
『師匠……!』
色褪せた畳の上。病の床に伏す春王の命の灯火は、今にも消えようとしていた。
『わしは……もう歳だ。もう、長くはない……』
『そんな……嫌だよ、春じい!いかないで……っ!』
タキが春王のしわがれた手にしがみつき、泣きじゃくる。サクラもまた、必死に涙を堪えながら恩人の傍らに縋り付いた。
『悪いな……。お前たち二人に、碌なものを残してやる事もできず……』
『そんなこと……ありません……!』
サクラの目から、大粒の涙がボロボロとこぼれ落ちた。
『私たちを、我が子のように愛して、育ててくれたじゃないですか……! 私はまだ、師匠に何も返せてないのに……っ』
『………は、ハハ。……それが聞ければ、わしは十分だ……』
春王は力なく、けれど優しく微笑み、震える手を枕元の『刀』へと伸ばした。
『ホレ、コレをお前にやろう……』
『コレは……師匠の刀……』
紺碧の柄を持つ、美しい打刀。
『我が春王の一族に、代々伝わってきた代物だ……。こんなものしか、与えられんが……』
春王は、最後の力を振り絞るようにサクラの手を強く握った。
『サクラ。わしには何も返す必要はない……。ただ、その刀で、妹のタキを守れ。お前の、大事なものを守り抜くんだ……っ!』
そして、泣きじゃくる妹へ優しい視線を向ける。
『タキ、お前は病弱だから、身体に気をつけなさい……。わしのところに早く来るような真似は、絶対にしてはいけないよ……』
「そう言って……師匠は、亡くなってしまった」
病室のサクラの頬を、一筋の涙が静かに伝い落ちる。
「私は、師匠の最後の言いつけ通りに、タキを生かす為に必死に働いた。でも……」
サクラは自嘲するように、自らの震える両手を見つめた。
「……ここキヴォトスは、銃火器が全てを決める社会。教養も学歴もなく、ただ師匠から習った『剣術の腕』しか持たない私には、まともな仕事も、大したお金も入らなかった。タキの薬代どころか、日々生きていくのもやっとで……追い詰められてた」
ギリッ、とシーツを握る手に力がこもる。
病室の空気が、再びドロリと重く冷たいものへと変貌した。
「……そんな時だよ、絶望の底にいた私の前に……『彼』が現れたのは」
陰陽の面。甘く、そして毒のように絡みつく呪い。
サクラの瞳が、再び薄暗い過去の闇へと沈んでいく。
病室の空気が、ドロリと重く冷たいものへと変貌した。
『誰……?』
雨上がりの屋敷。飢えと寒さに震えていた幼いサクラの前に、音もなく降り立った漆黒の影。白黒の太極図を模した『陰陽の面』が、薄気味悪い月明かりに浮かび上がっていた。
『その刀……』
男の濁った声が、サクラの背負う紺碧の柄――村時雨に執着するように絡みつく。
『この刀は、渡せないよ……師匠から託された、大事なものだから……』
サクラは泥だらけの身体で刀を奪われないように抱き抱えた。
『………ならば、我に下れ』
男は強奪するでもなく、甘い毒のような提案を囁いた。
『今のような惨めな貧乏暮らしよりは、幾分マシな暮らしをさせてやろう……。我が手足となれ』
病室のサクラは、きつく唇を噛み締めた。
「怪しいとは思ってた……。あの男が最初から、この『刀』を目的に近づいてきたことも、薄々分かってた」
サクラは、悔恨に満ちた声で吐き捨てるように言った。
「でも……あの時の私には、タキを生かすためには、師匠との約束を守るためには……その汚い手を取って、引き受けるしか道がなかったの」
選べなかったのだ。飢えて死ぬか、悪魔の手足となるか。
「初めこそ、どこかの怪しい取引の『護衛』みたいな仕事だった。でも、私が剣術の腕を見込まれれば見込まれるほど、要求される任務はどんどんエスカレートしていって……」
「百華を襲え、そう命じられたわけじゃな」
月詠の鋭く、しかし静かな声が、サクラの言葉を断ち切った。
「…………っ」
サクラは顔を伏せ、沈黙でそれを肯定した。同郷の治安維持組織に刃を向けることの重圧と罪悪感は、どれほど彼女の心を蝕んだことだろう。
「……して、その陰陽面の男は、一体何者じゃ?」
月詠がキセルを細くふかしながら、核心を突く。
サクラは顔を上げ、恐ろしい呪いの言葉を吐き出すように、その名を口にした。
「……『景虎(かげとら)』」
「「「景虎?」」」
聞き慣れない、しかしどこか不吉な響きを持つ名前に、新八やミチルたちが怪訝な顔を見合わせる。
「……景虎、か」
その時、病室の入り口から、ひどく重々しく、そして場違いなほどにくぐもった声が響いた。
ヨレヨレのスーツに身を包み、トレードマークのサングラスを少しズラした男――バカイザー・MADAOが、腕を組んで立っていたのだ。
「お前は……! 海水浴場で出会った、マダオ二号!」
神楽が指をビシッと突きつけて叫ぶ。
「ぐっ……誰が二号だ」
痛いところを突かれたマダオが、顔を顰める。
「どうしてこんなところに?」
新八が驚いた様子で尋ねた。
「貴様らのせいでライフセーバーの仕事をクビになった後、紆余曲折あって……今はそよ姫様のところで下働きをしてるんだよ。……今日はその関係(お使い)で、たまたま姫さんの使いで来ただけだ」
哀れな元エリートの身の上話はさておき、銀時が鋭い眼差しでマダオを睨みつけた。
「……おい、お前。その『景虎』って名前、何か知ってんのか?」
マダオは周囲を警戒するように声を潜め、重々しく頷いた。
「コレでも、元カイザーコーポレーションの理事だ。会社が裏で手を結び、協力関係にあった巨大組織の幹部の名ぐらい、嫌でも耳に入っておるわ」
マダオはサングラスの奥の瞳を細め、ベッドで小さくなっている少女へと視線を向けた。
「そこの……えっとーー」
「サクラちゃんだよ、マダオ」
晴太がすかさず訂正を入れる。
「サクラ、か……。お前を縛り付けていたその男が、本当に『景虎』ならばーー」
マダオの声は、恐怖に微かに震えていた。
「最悪だ。ひどくまずい状況だな」
「何がまずいんだよ?」
銀時が焦れたように首の後ろを掻きながら、先を促す。病室の空気が、一気に限界まで張り詰めた。
「カポネ・アル。……この組織名に、貴様ら聞き覚えはないか?」
マダオの口からひねり出された不気味な響きに、病室の空気が一層重く沈む。
「鴨ね〜アルか?」
神楽が首を傾げ、全く緊張感のない、自身の語尾と鳥の名前を混ぜたようなすっとぼけた返答をする。
「違うよ神楽ちゃん。というか、それ半分アンタの口癖混ざってるし……」
すかさず新八の冷静なツッコミが入るが、その声もどこか強張っていた。
「あ、あの……それって確か……」
オドオドと手を挙げたのは、忍術研究部のツクヨだった。長身を縮こまらせながらも、忍びとして集めた情報を脳内から引っ張り出す。
「キヴォトスの裏社会で名を馳せる、超巨大な犯罪シンジゲートですよね……?」
「その通りじゃ」
ツクヨの言葉を肯定するように、百華の頭領である月詠がキセルをコンと鳴らした。
「最近、キヴォトスのあちこちで厄介な麻薬の密売をやっておったという黒い噂が絶えん。あらゆる自治区に、その汚い手が水面下で伸びておるそうじゃ……」
月詠の鋭い視線が、紫煙の向こうでマダオを射抜く。
マダオはズレたサングラスを指で押し上げ、ベッドの壁に寄りかかる銀髪の男へと視線を移した。
「シャーレの『先生』よ。貴様の場合は、特に知っているんじゃないか?」
その問いかけに、病室の視線がにわかに銀時へと集まる。
それもそのはずだ。以前、銀時は『便利屋68』の面々や、なぜかキヴォトスに迷い込んでいたヅラ(桂小太郎)と共に、ハロウィンの喧騒に紛れてその麻薬密売部隊をすでに一度、ボコボコに撃退しているのだから。(※この時のドタバタ麻薬調査劇の詳細を知りたい読者は、是非本作品の『ハロウィン回』を再読していただきたい)
しかし、当の銀時はといえば、天井のシミを見つめながら小指で耳をほじり、ひどく面倒くさそうに吐き捨てた。
「さぁな、仮装してハム子追いかけたぐらいの記憶しかねぇや」
過去の激闘(と奇行)を一切合切、忘却の彼方へ放り投げたような銀時の態度。新八が「ハム子って誰だよ!」と心の中で激しくツッコミを入れたのは言うまでもない。
「で、その巨大組織と……景虎とやらがどう関係しておるんじゃ?」
月詠が、脱線しかけた空気を強引に本題へと引き戻す。
マダオは、ゴクリと重い唾を飲み込んだ。
「大アリだよ。……何せ奴は、ここ百鬼夜行連合学院自治区の裏で活動している『カポネ・アル』の精鋭部隊を率いる、最高責任者(トップ)なんだからな」
その言葉に、サクラの肩がビクッと跳ね、恐怖に顔を歪めた。
「奴の素性は、裏社会の人間ですら誰も知らない。……だが、一度奴の忌まわしい目にとまったら最後、気づかれない間に背後から始末されるという。……まるで、暗い物陰に潜み、一撃で獲物の喉笛を食いちぎると言われている。まさに『虎』の如くな」
バカイザーの語る景虎の底知れぬ恐ろしさが、冷たい呪いのように病室を這い回る。
サクラを支配し、キヴォトスの神秘を無視して刃を突き立てたあの圧倒的な暴力の正体。それが、巨大犯罪組織の最高幹部という事実。
「…………」
銀時は、無言だった。
耳をほじる手を止め、だらりと腕を下げたまま、ただ静かに床を見つめている。
しかし、その背中から立ち昇る気迫は、先ほどまでの「気の抜けた大人」のそれではなかった。血の匂いと硝煙が渦巻く死線を潜り抜けてきた、本物の修羅の静寂。
その瞳の奥で、底知れない怒りの炎が静かに、しかし激しく燃え上がり始めているのを、付き合いの長いマダオは瞬時に察知した。
「……行くのか?」
MADAOが、恐れを含んだ掠れ声で問う。
巨大組織を敵に回すという暴挙。相手は、キヴォトスの常識すら通じない底知れぬ化け物だ。
しかし、銀時はこちらを振り返ることなく、ただ一言の返答も発しなかった。
「…………」
雄弁すぎるその沈黙こそが、彼の確固たる『答え』だった。
理不尽な暴力に泣かされている不器用なガキがいるなら、相手が巨大組織だろうが暗闇の虎だろうが、そのふざけたツラを真っ向からぶっ飛ばす。それが、坂田銀時という男のたった一つの決まりなのだから。
病室に立ち込めていた重苦しい空気を、真っ先に切り裂いたのは新八だった。
「行かない理由が、どこにあるんですか?」
ズレたメガネを中指でクイッと押し上げ、そのレンズの奥に揺るぎない決意の光を宿して言い放つ。
「ある訳ないネ」
定位置で酢昆布をかじっていた神楽も、ニヤリと好戦的な笑みを浮かべて同意した。巨大な悪意だろうが化け物だろうが、万事屋の辞書に「逃げる」という文字は最初から存在しない。
「お、おい……! 行けばタダでは済まないぞ!? 相手はキヴォトスの裏社会を牛耳る最凶の……」
常識人(?)として必死に引き留めようとするマダオの警告を、
「そんなのーー」
月詠が静かに遮ろうとした、まさにその時だった。
「百も承知だよ!!」
大人たちの声を押し除けるように、病室に響き渡った甲高くも力強い声。
それは、今まで大人しく事の成り行きを見守っていた少年、晴太だった。
「晴太……」
月詠が驚いたように目を見開く。
晴太の小さな両拳は、白くなるほどに固く握り締められていた。その瞳には、かつて吉原の炎の中で見せたような、純粋で、ひたむきな怒りの炎がメラメラと燃え上がっている。
「サクラちゃんを……こんな酷い目に合わせたんだ! オイラが、オイラもアイツらをぶっ飛ばさないと、絶対に気が済まないよ!!」
少年の口から飛び出した、熱すぎるほどのヒロイズムと防衛本能の爆発。
「せ、晴太くん……?」
ベッドの上で、サクラは目を丸くした。
自分よりもずっと年下で、背も小さな少年に、こんなにも真っ直ぐに庇われ、怒ってくれている。その事実が、彼女の冷え切っていた胸の奥をじんわりと温かくさせていた。
感動的で、胸が熱くなるようなシリアスな光景。
――しかし。
「…………!」
壁際に寄りかかっていた銀時の顔から、先ほどまでの「頼れる大人の侍」のオーラが、スゥゥゥッと音を立てて消え失せた。
代わりに彼の口元に浮かび上がったのは……口角を限界まで吊り上げ、ニヤニヤといやらしさ全開に歪んだ、**この世の物とは思えないほど『嫌〜な笑顔(ゲス顔)』**であった。
銀時は無言のまま、音もなく晴太の背後へと忍び寄る。
そして、ガシッ! と少年の首に情け容赦なく腕を回し、ヘッドロックの体勢のまま、ズルズルズルッ! と病室の隅っこ(サクラから一番遠い場所)へと高速で引きずっていった。
「ちょっ……! 痛い痛い! 何すんだよ銀さん!?」
感動の決意表明の真っ最中に突然拉致され、ジタバタと暴れる晴太。
銀時はそんな少年の耳元に顔を寄せ、サクラたちには聞こえないギリギリの、ひどくねっとりとした小声で囁いた。
「お前さ〜。……ひょっとしてだけどさ〜」
「な、なんだよ……っ」
銀時の真顔が、さらに邪悪さを増す。
「お前、サクラに『惚れた』?」
その時、晴太の時が止まった。
純情な少年からすれば、致死量に等しいクリティカルヒットなからかいだった。
「は、はァ!? ほ、惚れてないし!! ぜっんぜんそんなんじゃないし!!」
声量を抑えようと必死に声を潜めるせいで、逆に不審極まりない裏返った悲鳴になる。晴太はぶんぶんと両手を振り回し、顔を引き攣らせながら必死の弁明を試みた。
「お、オイラはただ! 同じ両親がいなくて苦労してきた似た者同士として、あの……ほら、放っておけなかったっていうか! 見て見ぬふりができなかっただけであってだな! 決してそういう不純な……っ!」
しどろもどろになりながらも、紡がれる言葉には確かに、似た境遇を持つ者への深い共感と、彼なりの優しさが滲んでいた。
しかし、そんな少年の健気な本心など、目の前の天然パーマには最高の酒の肴(からかいの種)でしかない。
「いやいや〜、無理しなくていいってェ〜。隠さなくていいってェ〜」
銀時は晴太の首に腕を回したまま、さらにねっとりとした小声で耳元に囁き続ける。その顔は完全に、近所の世話焼きババアか、あるいはラブコメの展開を特等席で野次馬するゲスいオッサンのそれである。
「大丈夫大丈夫、銀さん分かってるから。もし万が一、そういう『イイ感じ』の雰囲気になっちゃっても、この銀さんが責任持って上手いことプロデュースしてやっから。なんなら今絶賛放映中の『僕ヤバ』みたく、画面の前の視聴者が身悶えするくらい極上に甘〜い青春ラブコメ展開に仕上げてみせるからサァ……」
「だから違うって言ってんだろォォォ!! しかも急に他局のラブコメ作品の名前出すなよ! 怒られるから!!」
耐えきれなくなった晴太が、顔を真っ赤にしてついにツッコミと共に吠えた。
しかし、その必死の抗議も虚しく、病室の反対側からカツン、と甲高い足音を立てて近づいてくる影があった。
「……何をしておるんじゃ、主(ぬし)ら?」
呆れと冷ややかさが半々に混じった声。
細く吐き出された紫煙と共に現れたのは、百華の頭領たる月詠であった。彼女はベッドから遠く離れた部屋の隅で、ヘッドロック状態でもみ合っている天然パーマの大人と真っ赤な顔の少年を、ジト目でねめつけたままたたずんでいる。
「つ、月詠ねぇ!!」
地獄で仏に出会ったかのように、晴太の顔にパァァッと希望の光が差した。吉原の頃から自分を実の弟のように可愛がり、守ってくれている自慢の姉貴分。彼女なら、この理不尽な大人から自分を救ってくれるはずだ。
「聞いてよ! 銀さんがさっきから変なことばっかり言ってオイラをーー」
「聞いてくれよォ、ツッキー」
しかし、晴太の涙ながらの訴えは、圧倒的な大人の汚さ(スピード)によって無慈悲に上書きされた。
銀時は晴太の首をホールドしたまま、空いたもう片方の腕で月詠の肩をスッと抱き寄せ、三人の頭がぴったりとくっつくような『完全な密談(スクラム)体勢』を強制的に作り上げたのだ。
ベッドにいるサクラや、少し離れた新八や神楽たちからは、部屋の隅で三人がヒソヒソと謎の円陣を組んでいるようにしか見えない絶妙な距離感。
銀時はその極小のサークルの中で、ひどく深刻そうな、それでいてどこか芝居がかったねっとりとした小声で月詠の耳元に囁いた。
「実はオタク晴太くんがぁ、サクラちゃんと『大人の関係』になって、熱〜いランデブーをキメたいって、俺に思春期特有の切実な恋愛相談を持ちかけてきてぇー」
「…………ちょっと銀さん!!?」
晴太の心臓が、文字通り口から飛び出そうになった。
からかいの範疇を完全に超えた、悪魔のような捏造申告。よりにもよって、教育に一番厳しそうな(そしてある意味一番厄介な)月詠に向かって、思春期男子にとって社会的な死を意味する大嘘をぶち込んだのだ。
(終わった! 月詠ねぇにクナイで全身ハリネズミにされるぅぅぅ!!)
晴太は絶望に目をギュッと瞑り、来るべき制裁の痛みに身を固くした。
しかし。
数秒待っても、怒号も、鋭い刃の痛みも飛んでこない。
恐る恐る薄目を開けた晴太の視界に映ったのは、キセルをふかしながら、どこか遠くを見るような、ひどく感慨深げな表情を浮かべる月詠の横顔だった。
「……ほう。晴太」
「えっ……?」
月詠はゆっくりと視線を落とし、晴太の顔を真っ直ぐに見つめた。その瞳にあるのは怒りや軽蔑ではなく……まるで、立派に成長した我が子を見るような、不器用で、しかし大真面目な『慈愛』の光だった。
「主も、ついに『男』になったということか」
「………え?」
斜め上すぎる反応に、晴太の思考回路が完全にショートした。
「何も恥じることはない。吉原にいた頃から、いつかこういう日が来るじゃろうとは思っておった。……」
月詠は、どこか保護者めいた微笑みを浮かべ、晴太の肩にポンと手を置いた。
「心配することはないぞ、晴太。……『夜の方』は、わっちら(百華)が手取り足取り、基礎からみっちりと教えてやろう」
「………………は?」
吉原の自警団トップとしての、純度100%の遊郭ジョーク(本人は大真面目)。
「わっちにしてみればもう天仙とやらなんやらで性転換してあっちの知識は豊富ーー」
「いや月詠ねぇも他の作品名だすのぉォォォ!?」
『大人の関係』という単語を、真っ直ぐすぎる吉原メソッドで解釈し、あろうことか百華総出での「実技指導」を提案してきたのだ。
それも大人気作品のネタまで出してまで
晴太の顔面はトマトを通り越して、もはや茹で上がったタコのように真っ赤に爆発した。
「ちがッ! 違うから! 月詠ねぇ、完全に吉原の常識で話進めないでよ!? オイラそんなこと一言も言ってないし、そもそもサクラちゃん相手にそんな不純なこと考えてないからァァァ!!」
声を出せば病室の全員に聞こえてしまうため、晴太は必死に声を殺しながら、涙目で手足をバタバタと振り回して無実を訴え続ける。
「おいおい、男になれって晴太ぁ。ツッキーもああ言ってくれてんだし、まずは木馬の乗り方から――」
「銀さんはもう黙っててくんない!?この悪魔! 鬼! サディストォォ!」
部屋の片隅で、声にならない悲鳴を上げながら銀時の着物を引っ張る少年と、それをニヤニヤとあしらう天然パーマ、そして「まずはどの遊女をあてがうべきか」と大真面目に腕を組んで思案し始める金髪の女。
「……ねぇ、あの人たち、さっきから隅っこで何コソコソやってるの?」
ベッドの上で、サクラが不思議そうに首を傾げる。
「放っておくヨロシ。どうせろくでもない大人たちの、ろくでもない教育的指導アル」
神楽が酢昆布をモチャモチャと噛みながら、呆れたように吐き捨てた。
重く張り詰めていた病室のシリアスな空気は、隅っこで行われている声なきカオスなコントによって、すっかりと毒気を抜かれていくのだった。
病室の隅で繰り広げられていたカオスなコントから一転、新八の冷静な問いかけが、再び部屋の空気を本来のシリアスなものへと引き戻した。
「で、その景虎って人の根城はどこにあるんですか?」
ズレたメガネを直し、新八が真っ直ぐにバカイザー(マダオ)を見据える。巨大な犯罪シンジケートを叩くなら、まずは敵の心臓部を知らなければ話にならない。
しかし、頼みの綱であるはずの元悪徳企業理事は、サングラスの奥で気まずそうに視線を泳がせた。
「それは、その……」
言葉を濁し、口ごもるマダオ。その煮え切らない態度に、周囲の少女たちから容赦ない非難の矢が次々と飛んできた。
「ええっ? もしかして、知らないのですか!?」
忍術研究部のイズナが、ピンと立てた狐耳をパタンと寝かせ、心底ガッカリしたような目を向ける。
「ちょっとちょっと、元理事とかドヤ顔してた割には、肝心なところで全く使えないわねぇ」
ミチルも腕を組み、やれやれと大げさなため息をついた。
「そんな使えない大人だから、バカイザーとかマダオ二号とか呼ばれて、夏は海でクラゲみたいに漂う羽目になるんだヨ。給料泥棒」
神楽に至っては、定位置で酢昆布をかじりながら、マダオの尊厳を粉々に粉砕するほどの痛烈な毒舌を吐き捨てる。
「し、仕方ないだろ! わしはあくまで上層部の人間として組織の『名前』を知っていただけで、あんな得体の知れない奴らと直接関わったことなんて一度もないんだ!!」
四面楚歌の状況に、マダオが涙目で必死の言い訳を叫んだ。
その情けない声が病室に響き渡った、まさにその時だった。
「……島原」
ぽつり、と。
病室の喧騒を凍りつかせるような、ひどく静かで、どこか虚ろな声が落ちた。
「「「え?」」」
全員の視線が、声の主――ベッドの上で身を固くしているサクラへと一斉に集まる。
サクラはシーツをきつく握りしめ、かつて自分が縛り付けられていた恐怖の震源地を、絞り出すように口にした。
「闇市が広がる無法地帯……**『島原獄楽島』**ーー」
その異様な字面(なまえ)の響きだけで、病室の温度が数度下がったような錯覚に陥る。極楽ではなく、地『獄』を楽しむ島。
「百鬼夜行連合学院の華やかな自治区とは陸離れしている……海に浮かぶ、完全に孤立した島よ。独自のルールと暴力だけが支配する、絶対的な治外法権の場所」
サクラの瞳に、深い絶望の色が過る。
「……そこに、彼(景虎)はいる」
ーーーーーーーーー
百鬼夜行の煌びやかなネオンの光が決して届かない、淀んだ黒い海。
その洋上に、巨大な墓標のように浮かぶ孤島があった。島原獄楽島――。
法も秩序も届かないその島は、毒々しい提灯の灯りと、欲望に塗れた黒い霧にすっぽりと覆い隠されている。
その島の最深部。豪壮にして陰惨な空気が漂う水上屋敷の広間に、冷たい夜風が吹き込んだ。
「景虎様……おかえりなさいませ」
広間の入り口で平伏していた使いの者が、恭しく頭を下げる。
しかし、闇の奥から姿を現した漆黒の装束の男――景虎は、一言も発することはなかった。
「………」
男は無言のまま、上座に置かれた豪奢な座椅子へと重く腰を下ろした。
白黒の太極図を模した『陰陽の面』からは一切の感情を読み取ることはできない。しかし、その全身から立ち昇るどす黒い殺気と、ひしゃげたまま放り出されたスナイパーライフルが、彼がただならぬ『屈辱』を味わってきたことを如実に物語っていた。
「……景虎様? いかがなさいましたか?」
尋常ではない主の気配に、使いの者が恐る恐る顔を上げ、問いかける。
「……仕留め損なった」
地鳴りのように低く、怒りがドロドロと煮えたぎる声が、静寂の座敷に響いた。
「な、なんと……! あの小娘一人に後れを取ったと申されるのですか!?」
使いの者は驚愕に目を見開いた。キヴォトスの神秘を物ともしない実力を持つ景虎が、任務を完遂できなかったなど、前代未聞であった。
「申し訳ございません! すぐさま我々精鋭部隊を向かわせ、今度こそあの裏切り者めを確実に始末致しましょうか!?」
使いの者が血気盛んに進言する。
しかし、景虎は陰陽の面の奥で鋭く目を光らせ、低く手を掲げてそれを制止した。
「……いや、よい」
「は……?」
「放っておいても、奴らは自らこちら(死地)へ足を運んで来るであろう。……あの、ふざけた銀髪の男がな」
景虎の脳裏に、廃工場の分厚い壁をぶち破り、圧倒的な修羅の気迫で迫ってきた坂田銀時の姿がフラッシュバックする。
あの男は、決して逃げない。あの小娘を助けた以上、必ずこの獄楽島へと攻め込んでくる。景虎の直感がそう告げていた。
「……『宴』の準備をしておけ」
景虎の声から、先ほどの怒りが消え、代わりに底冷えのするような残酷な歓喜の色が混じり始めた。
「ハッ……! 承知いたしました」
使いの者は、その言葉の真意――つまり、島全体を使った『最凶の迎撃罠(トラップ)』を仕掛けるという命令――を瞬時に理解し、深く頭を垂れた。
誰もいない広間。
景虎は立ち上がり、朱色の欄干越しに、眼下に広がる黒い海を見下ろした。
「……裏切り者には死を」
狂気すら孕んだ、粘着質で低い呟き。
男は両手を広げ、見えない虚空の『何か』に向かって、熱に浮かされたような狂信的な祈りを捧げた。
「全てを、我らが神に……ッ!!」
カポネ・アルの幹部が放つ怨念と狂信の声が、獄楽島の淀んだ闇の中へと深く、深く吸い込まれていった。
次回予告
銀時「おいおい、聞いてねぇぜ?こんな賑やかな祭りが開催されてたなんてよ」
月詠「わっちらはもう敵の流れに乗せられた小舟じゃ」
サクラ「私はもう握れない……」
晴太「サクラちゃん自身、自分がどうしたいかもう決まってるんじゃないの?」
次回
【挿絵表示】
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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銀時
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新八
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神楽
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沖田
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土方
-
山崎
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高杉
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桂
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定春
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エリザベス
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ホシノ
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シロコ
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ヒナ
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アコ
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ミカ
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ナギサ
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セイア
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ユウカ
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ノア
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近藤