透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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深い不快足掻いて参上
苦い願い 砕いて無情
暗いCRY 湿っぽい現状
幼気な理想は一体どこ?
心の負傷
常にロードショー
夢と現実のズレで「チクショー」
そろそろでしょ?
反撃の狼煙上げましょう
したり顔する曲者たちを今度こそ返り討ちにしてやれ
LAI LAILA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAILA LAI LAI
魂を
LAI LAI LA LAI LAI
燃やしていけ!
万の宴で舞い踊って
互い違い 迷ったダンジョン
伝え難い 孤高の焦燥
うざいくらい上がったテンション
「控えめに言って、マジ、神だね」
そう言われるほど斬新な
0点か100点のイメージ携えて切った張ったの浮世で
やんちゃに自分(おのれ)奏でましょうや

LAI LAI LA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAI LA LAILAI
熱い血を
LAI LAI LA LAI LAI
たぎらせて!
破綻した思想を剥ぎ取る
爆ぜるか否か
覚悟を決める
その決意が本当の刃したり顔する曲者たちを今度こそ返り討ちにしてやろう
さぁさぁ皆の衆!
やっちゃって!
LAILAI LA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAI LA LAI LAI
魂を
LAI LAI LA LAI LAI
燃やしていけ!
万の宴で舞い踊って






第百四十訓 自分の主張を語るなら、まず相手の信頼を得てからにしなさい!

 

【挿絵表示】

 

 

「——連邦生徒会長直轄の、特殊治安組織部隊」

冷え切った警察学校の廊下の奥から、ピンと張り詰めた、しかし酷く冷ややかな声が鼓膜を打った。

全員の視線が一斉に声の主へと向く。そこに立っていたのは、一糸乱れぬ制服に身を包み、計算し尽くされたような冷徹な笑みを浮かべる少女だった。

「『S』PECIAL(スペシャル)『R』ESPONSE(レスポンス) 『T』EAM(チーム)」

彼女はコツン、と静かな廊下にヒールの音を反響させながら優雅に歩み寄る。そして、底知れぬ野心を秘めた瞳を細め、銀時を真っ直ぐに見据えた。

「略して、SRT特殊学園ですよ。……先生」

「そ、その声は——」

カンナは弾かれたように声の主へ振り向いた。その狐の耳がピンと張り詰め、公安局局長としての冷静な仮面が僅かに揺らぐ。

彼女の強張った表情が、現れた少女の持つ権力の大きさを無言のうちに物語っていた。連邦生徒会防衛室室長、不知火カヤ。キヴォトスの中枢において、巨大な権謀術数を巡らせる存在である。

周囲に走った緊張感を甘露のように味わいながら、カヤは足を止めた。

完璧な角度で作られた余裕の笑みを浮かべ、芝居がかったねっとりとした声色で口を開く。

「お久しぶりですね……坂田先生?」

彼女の言葉には、自分こそがこの場の支配者であり、絶対的な自信が満ち溢れていた。この得体の知れない銀髪の男の素性も、その実力も、すべて自分の掌の上にあるのだと誇示するように。

冷たい廊下に、重く、息を呑むような沈黙が降りた。

カンナが息を詰め、新八がゴクリ唾を飲み込む。

カヤは口角を上げたまま、彼から発せられるであろう「警戒」や「動揺」、あるいは「気の利いた皮肉」を優雅に待ち構えていた。

対する銀時は、着流しの懐に手を入れたまま、死んだ魚のように濁りきった赤い瞳で目の前の少女をじっと見つめ返している。

「……………」

五秒。十秒。

永遠にも似た、ドラマチックで重厚な空白の間。

やがて男は、まるで鼻の頭に止まったハエを追い払うかのような、極限まで気の抜けたトーンでポツリと呟いた。

「ごめん、お前誰?」

ズコーッ!! という新八たちの盛大なズッコケ音が幻聴として聞こえてきそうなほど、見事なちゃぶ台返しだった。

完璧にセットアップされた劇的な再会シーン。張り巡らされた伏線。権力者としての威厳。

それらすべてが、銀時の『絶対零度の無関心(マジで覚えていない)』によって、まるで安い飴細工のように一瞬にして粉砕されたのである。

冷徹だったカヤの顔に貼り付いていた計算高い笑みが、ピシリと音を立てて凍りついたのは言うまでもなかった。

「防衛室長ですよ! 連邦生徒会における治安組織のトップ。言うなれば、私たちヴァルキューレの事実上の上司にあたる方——」

カンナは、銀時の耳元で悲鳴のようなひそひそ声を上げた。

公安局局長としての冷静さを保とうとしてはいるものの、その耳は焦燥感からピンと張り詰め、額には冷や汗が浮かんでいる。キヴォトスの治安を司る最高権力者を前にして、この得体の知れない大人が致命的な不敬を働かないか、カンナの胃壁は今まさにギリギリと削られ始めていた。

しかし、必死のレクチャーも虚しく、銀時の顔面には『完全なる無』が貼り付いたままだ。

(ダメだ、この顔……これでも微塵もピンと来てない!)

「ちょっとちょっと銀さん! どーするんですか!?」

見かねた新八が、反対側の耳元に口を寄せて小声で囁く。

「それに、カンナさんの焦り方を見るにかなり偉い人っぽいですよ!?」

「んなこと言ったって、覚えてねぇんだから仕方ねぇだろ?」

銀時はひそひそ話す気すら一切ない大声で、堂々と開き直った。

「本編(ブルアカ)でどれだけ爪痕残してたとしても、こっち(クロスオーバー)じゃ全然爪痕残してねぇし」

「所詮は独房送りにされた哀れな超人もどきネ」

神楽に至っては、酢昆布をモチャモチャと噛みながら、メタ発言とネタバレを盛大に織り交ぜた致死量の毒を吐き捨てる。

「自称『超人』なら、少しの出番で読者にインパクト残せヨ。キャラが薄いアル」

「先生! 仮にも彼女は治安組織のトップですから……! もう少し態度などは改めて——」

これ以上の暴言はヴァルキューレ警察学校の存続に関わると判断し、カンナは冷静を装いながら取り成そうとした。しかし——。

「良いですよ、カンナさん」

カヤの声は、春風のように穏やかだった。

完璧な角度を保った微笑み。優雅に組まれた両手。しかし、その額の隅には、くっきりと太い青筋が脈打っていた。

「……キレてませんか?」

「キレてません」

「いや、でも顔に凄い青筋が浮かんで——」

「キレてません」

即答だった。声のトーンは一定だが、その瞳の奥には『これ以上踏み込んだら消す』という暗黙の殺意がドロリと渦巻いている。カンナは短く息を呑み、静かに口を閉ざした。

カヤは深呼吸を一つして、乱れたペースを強制的に軌道修正する。彼女はあくまでスマートなエリート官僚として、再度優雅に一礼した。

「改めて自己紹介を。連邦生徒会、防衛室を担当しています不知火カヤで——」

「「ふーん」」

銀時と神楽の声が見事にハモった。

それは相槌ですらなかった。ただ息を吐き出すついでに漏れたような、絶対零度の無関心。

ピキッ、と。

カヤの中で、エリートとしての矜持を支えていた何かの糸が切れる音がした。

彼女の優秀な頭脳は、正攻法(ブルアカの世界観)ではこの理不尽な宇宙人たちに太刀打ちできないことを瞬時に悟る。背に腹は代えられない。彼女は奥歯をギリッと噛み締めると、屈辱に震える声で付け加えた。

「……顧問に、片栗虎がついている部署の担当の不知火カヤです……」

その瞬間、銀時の死んだ魚のような目に劇的な光が宿った。

「あー! あそこね! はいはいはい、キャバのじいさんのところの! なるほどね、最初からそう言えっての!」

手のひらをドリル級の速度で返した銀時が、突然馴れ馴れしくカヤの肩をバンバンと叩く。

「で? 毎日どうよ。あの破壊神の元で、胃薬ボリボリかじりながら頑張ってんの?」

「毎日、目隠し鬼ごっこでもしてるアルか?」

神楽も嬉々として便乗し、物騒極まりない江戸の警察トップの日常を推測する。

「いや、神楽ちゃんそれいつの時代の話!? どこの原始人の遊びなのそれ!?」

カヤの払った莫大なプライドの犠牲をよそに、取調室の前にはいつもの『万事屋の日常』の空気が無遠慮に広がっていくのだった。

「——足りるわけないでしょ!!」

鼓膜を劈くような、悲痛な絶叫だった。

先程まで貼り付けていた「完璧な超人」としての冷徹な笑みは、もはや見る影もない。不知火カヤは、糸の切れた操り人形のように天を仰ぎ、両手で頭を抱え込んだ。

「アイツのせいで……ッ! 私がどれだけ、何度反省文を書かされたと思っているんですか!」

キヴォトスの防衛を担うトップの口から滝のように溢れ出したのは、ただの泥臭い愚痴だった。

「やれキャバクラじゃー、やれドンペリじゃーと経費を湯水のように使い込み、挙げ句の果てにはロケランによる破壊行為まで……っ! あんな無法者の顧問の尻拭いを、私が何度したか分かったものじゃない!」

エリート街道を歩んできた彼女のプライドは、江戸からやってきた『破壊神(松平片栗虎)』という名の理不尽な暴力によって、日々粉々に打ち砕かれていたのだ。その計り知れないストレスとトラウマが、決壊したダムのように溢れ出す。

「こうなれば……やることは一つだけです——」

カヤの雰囲気が、唐突に変わった。

俯いていた顔をゆっくりと上げると、その瞳にはどこか虚無的な、それでいて狂気を孕んだ昏い光が宿っていた。彼女の背後に、ドス黒いオーラが渦巻いているようにすら錯覚させる。

「私はただ壊すだけだ。この腐った社会を——!」

どこかで聞いたことのあるような過激派テロリスト(包帯を巻いた高杉某)の台詞。

取調室の空気が、突如としてシリアスな復讐劇のワンシーンへと塗り替えられた——かのように見えた。

「ちょっと〜。主語がデカいよ、主語が」

しかし、そんなカヤの渾身のダークオーラを、銀時は耳をほじりながら一瞬で吹き飛ばした。

「なんか、犯行声明みたいアル」

神楽も酢昆布をモチャモチャと噛みながら、冷めた目で同調する。

「……防衛室長。その辺で」

これ以上の醜態はヴァルキューレの、いや、キヴォトス全土の威信に関わると判断したカンナが、胃の痛みに顔を歪めながらたまらずストップをかけた。

「あ……」

カンナの静かな制止の声に、カヤはハッと我に返った。

己がいま、得体の知れないチンピラ共の前で『世界を憎む復讐鬼』のポーズをとっていたという事実に気づき、サァッと顔から血の気が引く。

「あ、ああ……。私としたことが、つい、はしゃぎすぎてしまったようです」

カヤはわざとらしく咳払いをし、必死に乱れた前髪と制服の襟を正した。どうにかして先程までの『冷徹なエリート室長』の仮面を被り直そうとするが、その頬は羞恥で微かに朱に染まっている。

「はしゃぎっていうか、ただ厨二病発症しただけ——」

「さて。本題に入りましょうか」

銀時の鋭い追撃の言葉を、カヤは鋼の意志で強引に遮った。

これ以上この話題を引っ張れば、今度こそ自分の精神が崩壊すると悟ったのだ。彼女は先程までの醜態を自らの脳内から完全にデリートし、氷のように冷たい、本来の威厳ある声色を取り戻して前を向いた。

「彼女たちがSRTに固執する理由。それは、SRTの『特殊性』にあるのでしょう」

先程までの乱れを完全に隠蔽し、不知火カヤは再び冷徹な防衛室長としての顔を取り戻していた。蛍光灯の光が、彼女の冷ややかな開いてるか開いてないかわからない眼で鋭く反射する。

「特殊性? SRTとヴァルキューレって、同じ警察組織じゃないんですか?」

新八が素朴な疑問を口にする。キヴォトスの複雑な政治機構は、外部から来た彼らにとって未だに全容が掴みきれない代物だった。

「そうですね。ヴァルキューレ警察学校については基本、私たち防衛室の指示で動いているのですが……」

カヤはわざとらしく言葉を区切り、その特異性を強調するように声を潜めた。

「SRT特殊学園は防衛室どころか、行政委員会の管理からも離れた、完全に独立した治安組織なんです」

カヤのヒールが、冷たい床をコツンと叩く。

「ご存知かと思いますが、ここキヴォトスの各学園自治区は基本的に、連邦生徒会の干渉をさほど受けません。そして各自治区には、独自の治安を担当する組織があります。例えばゲヘナ学園で問題を起こした生徒は連邦生徒会ではなく、ゲヘナの風紀委員会、または真選組によって罰を受けますよね?」

「しかしそれ以外の場所……例えばこのD.U.(連邦生徒会直轄区)もそうですが、そういった場所での犯罪は基本的にヴァルキューレの管轄となります」

理路整然と語られるキヴォトスの地政学と法解釈。

「ですが、その生徒が別の学園自治区に逃げ込んだり、どこかの生徒会と結託したりすると、途端に自治権の壁に阻まれ、逮捕が難しくなってしまうのです」

なるほど、と新八が感心しかけた、その時だった。

「あー、でも〜」

極めて真面目な世界観の解説を、銀時の間の抜けた声が真っ二つにへし折った。彼は死んだ魚のような目で宙を見つめながら、小指で耳をほじっている。

「最近のイベントって、そういう設定忘れられてね?」

「えっ」

「いやだって、みんな普通に学園間の壁とか無視して行き来してるし。なんなら他校の生徒同士でキャッキャウフフしながら水着で無人島行ったりしてるじゃん。自治権の壁、仕事してなくね?」

息を吐くように放たれた、次元の壁を越える恐るべきメタ発言。それに乗っかるように、神楽が酢昆布を指差しながらしたり顔で頷いた。

「銀ちゃん、銀ちゃん。大人は都合合わせのための口実が欲しいだけヨ。前のゴリラ原作者と同じで、設定なんて使える時に使って、捨てる時はポイ捨てする。典型的なブラック企業のやり方ネ」

「ちょっとォォォ!! いきなり大人の事情とかブラックな裏話すんのやめてくれません!?」

新八の悲痛なツッコミが取調室に木霊する。

シリアスな政治的課題が、突如として「運営のガバガバ設定」という身も蓋もない次元へと引きずり下ろされてしまった。

「……………」

カヤは無言だった。

彼女の表情は、まるで能面のようにピクリとも動かない。いや、動かせなかったのだ。ここで彼らの「メタ発言」に突っ込めば、自分という存在の根幹(キャラクター設定)すらも崩壊しかねないと、彼女の優秀な防衛本能が警鐘を鳴らしていた。

カヤは何事もなかったかのように解説を強行した。

「……彼女たちは、連邦生徒会長によって、犯罪が発生した際にはいつでも、どこであっても即時の対応が許されています」

一切のノイズを遮断したカヤの声が響く。

「そのためSRT特殊学園の選抜は非常に厳しく、徹底したエリート意識を持った集団となっています。装備もキヴォトス最高レベルです。その結果の一つとして、SRTの3年生部隊——『FOX小隊』は以前、キヴォトスの悩みの種だった災厄の狐、『ワカモ』を逮捕することに成功。それ以外にも順調に成果を挙げていったのです……」

「おっ」

『ワカモ』という単語が出た瞬間、銀時の濁った瞳にカッと光が宿った。

「そうか〜! じゃあ復活だ! 即時復活させたらいい!」

彼はバンッと机を叩き、前のめりになってカヤに迫った。

「はやくあのストーカー狐(ワカモ)を檻に閉じ込めねぇと、俺の平穏な日常(パチンコライフ)が脅かされて気が休まらねぇんだよ! ほら、早くその何とか小隊呼んでこい!」

「銀ちゃん、アイツ今百華の牢の中アル」

「あ、そっか。月詠のところにブチ込んでたんだった」

神楽の冷静なツッコミで、自身のストーカー被害が一時的に解決済みであったことを思い出す銀時。

そんな彼らの身勝手な主張を、カヤは冷ややかな、そしてすべてを見下すような氷の微笑で一刀両断した。

「——それが、そうはいきません」

絶対的な権力者の顔。

カヤの目の奥で、決して覆ることのない冷酷な決定事項が、鋭く冷たい光を放っていた。

「連邦生徒会長が失踪してしまったことにより、SRTに関する責任の所在は完全に宙に浮いてしまいました」

彼女は言葉の重みを乗せるようにゆっくりと顔を伏せた。

「そうなっては、非常に危険な火薬庫も同然。……そんなSRT特殊学園について、自ら進んで責任をとろうとする者は現れませんでした。私たちとしてもどうにかしようと思ったのですが……彼女たちのその最先端の装備ゆえに、戦力としての投入や扱いも難しく……結果として、身動きが取れなくなってしまったのです」

「なるほどな」

それまで生返事を繰り返していた銀時が、ふと顎に手を当てた。普段の死んだ魚のような濁った瞳の奥に、幾多の修羅場を潜り抜けてきた男特有の、鋭く冷たい光が宿る。

「そんだけ力と実績があって、おまけに何者にも縛られない自由な戦闘部隊だ。上の連中からすりゃ、そんな危険な火薬庫を放っておくはずがねぇ……。もちろん、部隊として丸抱えして利用しようと企んだ奴もいただろうが、今回のデモの一件が影響で、その話もご破算になって白紙に戻った。……そういうことだろ?」

大人の汚い権力闘争の核心を、一切の躊躇なく抉り出す銀時の推察。

カヤは僅かに目を見張り、すぐさま感嘆の笑みを浮かべた。

「まぁ、大体そんなところです。……しかし、今回以外にも問題はあったんです」

カヤの声音が、一段と低く、冷ややかに沈む。

「それが先月……SRTの3年生部隊である『FOX小隊』の彼女たちは、自分たちの学園閉鎖を支持する者を襲撃しました。その結果、連邦生徒会は少なからず打撃を受けたのです。彼女たちは逃走し、今も行方をくらましています」

静かな声で語られた、エリート部隊によるクーデターという衝撃の事実。

しかし、カヤはすぐに毒を含んだ甘い微笑みを浮かべ直し、銀時へと向き直った。

「坂田先生。あなたのキヴォトスでの活躍は、私の耳にも入っています。このままですと、『RABBIT小隊』の彼女たちは学籍データを完全に抹消され、どこの学園にも所属できないまま、当てもなくキヴォトスを彷徨うことになってしまうかもしれません」

カヤはまるで慈愛に満ちた表情に悲しげに瞳を伏せてみせる。

「彼女たちは、SRT特殊学園の過酷な入学試験を通過した、紛れもないエリートたちです。その稀有な能力が無為に捨てられてしまうのは、キヴォトスにとってもかなりの損失……。よろしければ是非、彼女たちを説得し、ヴァルキューレ警察学校に編入するように薦めていただけませんでしょうか?」

それは依頼という名の、極めて政治的な誘導だった。ーーーーーーーーー

「——とはいってもな〜」

取調室を出て、ヴァルキューレ警察学校の廊下を歩きながら、銀時はひどく面倒くさそうに天然パーマの頭をボリボリと掻き毟った。

「やっぱり、無理そうですか?」

隣を歩く新八が、溜息まじりに問いかける。

「あの頑固な子兎どもを、どう説得しろっつーんだよ」

銀時は天井を仰ぎ見て、やれやれと首を振った。

「互いに一歩も譲らぬ平行線だ。武力組織を自分の管理下に置きたい上に、自分の正義を頑なに貫きたい部下……言うなればアレだよ」

銀時は突然立ち止まり、何故か深刻そうな、劇画タッチの顔つきを作って遠くを見つめた。

「秩序維持のために部下の戦力を利用してる世界政府と、『血の正義』……つまり『兵器として人を殺すことが正当化される場所』を求めて、殺戮に快感を覚えるロブ・ルッチみたいなドSキャラの関係なんだよ、アイツら」

「いやロブ・ルッチ、そんなゲスなこと考えてねェよ!!」

キヴォトスの政治的対立を、突如として『ONE PIECE』のCP9に例え始めた銀時に対し、新八の鼓膜を劈くようなツッコミが廊下に炸裂した。

「百歩譲ってルッチが『殺しが正当化されるから』って理由で政府にいるのは事実ですけど! あの子兎ちゃんたち、殺戮に快感なんて微塵も覚えてないですから! むしろ市民の平和を守りたいだけの純粋な子たちですからね!?」

冷徹な暗殺組織と、正義感に空回りする純白の少女たち。

あまりにも両極端な銀時の暴論をなんとか軌道修正しようと、新八の優秀なツッコミ器官はフル稼働していた。しかし、ひとしきり叫んだ後、彼の表情にスッと濃い疲労と焦燥の色が影を落とす。

「……大体、彼女たちの処分を僕らが任されたってことは、実質的に彼女たちを『管理しろ』ってことじゃないですか」

新八は腕を組み、廊下をウロウロと歩き回りながら眉間を深く揉みほぐした。

「相手は泣く子も黙るSRTのエリートですよ? こっちの言うことなんて素直に聞くわけがない。懐柔するにせよ説得するにせよ、何かこちらのペースに巻き込める確たる『材料』を持っておかないと——」

「さっきからうるさいアル」

真面目に今後の展望を語り、プロットを進めようとする新八の努力を、チャイナ服の少女の無慈悲な一言が真っ二つにへし折った。

神楽は壁に背を預けたまま、酢昆布をモチャモチャと噛みちぎり、三白眼で鬱陶しそうに新八を睨みつけている。

「そんなにグダグダ言うなら、新八も自分で打開策出すヨロシ。文句ばかりいっちょ前のダメメガネアルな。これだから本体がメガネのやつは……」

「メガネ関係ないでしょ!! ていうか神楽ちゃんも手伝うんだよ、これ万事屋の仕事なんだから!」

「うるさいネ! 私の仕事は三食昼寝付きで酢昆布食うことヨ! 子兎のお守りなんてマダオにやらせとけばいいヨ!」

「そのマダオが一番頼りにならないから言ってんでしょーが!!」

ギャーギャーギャーギャー!!

突如として始まった、江戸の長屋と何ら変わらない不毛な口喧嘩。

ここはキヴォトス最高峰の警察機関の中枢であるにも関わらず、廊下の空気は完全に『かぶき町の路地裏』のそれへと変質してしまった。甲高い少女の罵倒と、思春期特有の裏返った少年のツッコミが、騒音となって激しくぶつかり合う。

しかし、そんな二人の喧騒など、当の本人にとってはどこ吹く風だった。

「——もしもーし」

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ヴァルキューレ警察学校の広々としたロビー。

清潔すぎるほどに磨き上げられた大理石の床と、白く無機質な蛍光灯の光が、泥と疲労にまみれた少女たちの姿を容赦なく照らし出していた。

「あ……みんな、無事でしたか」

パイプ椅子から立ち上がったミヤコが、小走りで駆け寄る。

そこには、それぞれの取調室から解放されて合流したサキ、モエ、そしてミユの姿があった。

「なんだ、ミヤコもいたのか」

サキはヘルメットを小脇に抱え、忌々しそうに舌打ちをした。

「ミヤコちゃん……っ」

ミユは今にも泣き出しそうな顔で、力なくミヤコの背中にすがりつく。

「私のとこなんて、飴ちゃんほとんど持ってかれちゃったよ〜。もうこりごり……」

モエはロビーのベンチにどっかと腰を下ろし、だらけきった様子で両足を投げ出した。あの恐ろしいチャイナ服の少女(神楽)に大事なおやつを強奪されたトラウマからか、その表情にはいつもの不敵な笑みはない。

「さっさと帰りたいんだけど〜」

「そんな悠長なこと言ってる場合か」

現実逃避を試みるモエに対し、サキが冷や水を浴びせるように鋭く言い放つ。

「私たちの処分については、これから言い渡されるんだろ? あの大人たちの感じだと……まぁ、最低でも『退学』くらいは覚悟しないとな」

『退学』。

その重い二文字が、ロビーの空気を一瞬にして凍らせた。

「そんなこと言ったって、どうせSRT特殊学園はもう無いんでしょ。退学処分になったところで、何も変わらないじゃん」

モエは唇を尖らせ、強がるように嘯(うそぶ)いた。

「で、でも、それが『最低』ってことは……」

ミユのウサギ耳が、恐怖でブルブルと震え始める。

「もっとヤバい可能性もあるよね」

モエが面白半分に、わざと声を潜めた。

「地下の怪しい施設に連れて行かれて、一生タダ働きさせられるとか……得体の知れない新薬の実験台にさせられるとか……」

「!?!? も、もうダメだ……おしまいだぁ……!」

ミユは完全にパニックを起こし、頭を抱えてその場にうずくまってしまった。

最悪の想像が膨らみ、小隊の空気がどん底へと沈んでいく。

その惨状を見つめていたミヤコの胸を、ギリギリと締め付けるような罪悪感が襲った。

「……すみません」

ミヤコは深く俯き、震える声で懺悔した。

「私があんな見え透いた嘘に……簡単に騙されさえしなければ、こんなことには……」

優秀な指揮官であるはずの自分が、三流の当たり屋の芝居に引っかかり、部隊を崩壊させてしまった。その事実が、彼女の誇りをズタズタに引き裂いていた。

しかし、そんな彼女の痛切な謝罪を、サキは冷徹な一言で切り捨てた。

「……おい、どうしてお前が謝るんだ?」

「え……?」

「なに、一人で責任とか感じてるの?」

サキの瞳に宿っていたのは、怒りではなく、ひどく乾いた虚無感だった。

「ミヤコ、勘違いするな。学園の閉鎖が決まったあの瞬間から……お前はもう、私たちの『小隊長』でもなんでも無い」

その言葉は、冷たい氷の刃となってミヤコの胸に深く突き刺さった。

「なのに……一人で責任とか勝手に感じられても困る。別に今は、そんなこと期待してないし」

サキは目を逸らし、突き放すように言い捨てた。それは彼女なりの不器用な慰めだったのかもしれないが、全てを失いかけている今のミヤコには、存在意義そのものを否定されたかのように響いた。

「それは……でも、私は……」

ミヤコの目から、ポロリと大粒の涙が零れ落ちそうになった——その、極限まで張り詰めたシリアスな空気のド真ん中に。

「『爆弾っ子を守りたかったんだ』って感じですかァ〜? いや〜、素晴らしいねぇ」

ロビーの柱の陰から、耳をほじりながら現れた銀髪の男が、空気を読まない拍手と共に乱入してきた。

「その自己犠牲の心意気で、銀さんたちの安らかな睡眠も守って欲しかったよ。マジで」

「っ!? あ、お前はさっきの……!」

サキが弾かれたように構えをとる。ミヤコも涙を引っ込め、ウサギの耳をピンと逆立てて男を睨みつけた。

「いつからそこで盗み聞きしていたんですか!」

ミヤコの詰問に、銀時は「いや、盗み聞きっていうか最初からベンチの裏でジャンプ読んでたんだけど」と面倒くさそうに首を鳴らした。

その後ろから、新八と神楽、そして疲労困憊のカンナが姿を現す。

「お前ら、センチメンタルなごっこ遊びの最中に悪いんだけどよ」

着流しの懐をゴソゴソと探り、銀時はペラペラに薄い封筒を取り出してひらひらと振って見せた。

「たった今、偉いさんからお前らの『処分』についての通達を預かってきた」

その一言で、RABBIT小隊の四人に再び強烈な緊張が走った。

退学か、投獄か、それとも名もなき地下施設での非人道的な人体実験か。最悪の想像が少女たちの脳内を駆け巡り、静まり返ったロビーに、ミユがゴクリと唾を飲み込む音がやけに大きく響き渡る。

「お前らの処分は——」

銀時はわざとらしく重々しい動作で封を切った。中の書類に目を落とし、ひどく勿体ぶった間を空けてから、ニヤリと底意地の悪い笑みを口元に浮かべる。

「——釈放ってことで」

「……」

「…………」

「…………は?」

極限まで張り詰めていた弓の糸が、プツリと間抜けな音を立てて切れた。

ミヤコの口から漏れたのは、安堵でも歓喜でもなく、完全に理解の範疇を超えた事象に対する純粋な疑問符だった。

「よかったな野うさぎども。さっさとお家に帰って、ニンジンやらスバルやらなんやら食ってこい」

「は、はい?」

銀時が書類をヒラヒラさせながらあくびを噛み殺す横で、モエが目を白黒させている。

「……釈放? 処罰は?」

「待て」

サキが弾かれたように一歩前に出た。その瞳に、一筋の光明を見出したかのような強い期待の光が宿る。

「つまり私たちは……SRTに戻れるのか?」

しかし、そのささやかな希望の光は、銀時の冷ややかな一言によって無慈悲に吹き消された。

「何言ってんだ。誰が『戻れる』なんて言ったよ」

「っ……なんだ、期待して損した」

サキは忌々しそうに舌打ちをし、深く被ったヘルメットの鍔を押し下げた。

「大体、戻ったところで今まで通り動けるわけねぇだろ……」

銀時は先程までの飄々とした態度をスッと消し去り、死んだ魚のように濁っていた瞳に、鋭く冷たい光を宿した。それは、幾多の修羅場を潜り抜けてきた『大人』としての、誤魔化しのきかない絶対的な眼差しだった。

「いいか。治安部隊がデモ起こして、公共の公園を不法占拠したんだ。警察やらなんやらの治安組織ってのはな、力でも権力でもなく、『民衆の信頼』の上で成り立ってるんだよ。それなのに、お前らみたいな手におえない暴れウサギに、一体どこの誰が『守られたい』と思うよ」

静かな声だったが、その言葉は重い鉛のように少女たちの胸にのしかかった。

「もちろん、そんな得体の知れない奴らに、国がデカい武器を預けたいとも思わねぇ。今のお前らは、守るべき市民たちから完全に『警戒される対象』に成り下がってんだよ」

正論という名の鋭利な刃。

SRTとしての誇り高き正義が、世間からは単なる「暴徒のワガママ」としか見られていないという残酷な事実。

「………しかし!」

ミヤコは両手を強く握り締め、真っ赤に潤んだ瞳で銀時をキッと睨み返した。

「こうでもしなければ、私たちの意見は……私たちの正義は、誰にも届かないじゃありませんか!」

子供の、あまりにも切実で悲痛な叫びだった。

だが、世界はその純粋さをすくい上げてくれるほど甘くはない。

「お前らの一方的な八つ当たりに耳を傾けてくれるほど、世界は優しくねぇの」

銀時は一切の同情を交えることなく、冷徹にその現実を突きつけた。手段を間違えれば、どれほど崇高な正義もただの暴力に成り下がる。大人の勝手に振り回された被害者であろうと、社会は彼女たちの行いを容認しないのだ。

張り詰めた沈黙が流れる。

ミヤコが唇を噛み締め、俯いた。その緊迫した空気を破るように、サキが前へ出る。

「……そんなに言うなら、何か案があるのか」

「そうだよ」

モエも身を乗り出し、すがるような、それでいて挑発するような視線を銀時に向けた。

「そこまで私たちの現状を分析できてるなら、何か打開する意見があるんだよね?」

三人の視線(と、ミユの怯えた視線)が銀時の一挙手一投足に集中する。

失われたエリートの誇り。底辺まで墜ちた民衆からの信頼。この絶望的な状況から、一体どんな魔法のような奇策を提示してくれるのか。

銀時はゆっくりと着流しの袖をまくり上げ、真っ直ぐに彼女たちを見据えて、重々しく口を開いた。

「民衆からの信頼を完全に失ったお前らが、再び世間の奴らに耳を傾けてもらえるだけの存在になるには——」

ゴクリ、と。誰かが息を呑む音がした。

「——ボランティアだな」

「……はい?」

ロビーの時が、再び完全に停止した。

四人の少女の口から、寸分違わぬタイミングで、極限まで間の抜けた声が漏れる。

そして次の瞬間、張り詰めた沈黙が爆発した。

「ボランティアァァァ!?」

ミヤコの頭頂部にあるウサギの耳が、根元から千切れるのではないかというほどの猛烈な勢いで前後に激しく揺れた。彼女はパイプ椅子を蹴立てるように立ち上がり、信じられないものを見る目で銀時へと詰め寄る。

「何を……何をふざけたことを言っているんですか!? 私たちはSRT特殊学園です! 対テロリズム、人質救出、高度な戦術行動を骨の髄まで叩き込まれた、キヴォトス最高峰のエリート集団なんですよ!? それが、ボ、ボランティア!?」

「ふざけるな!」

横からサキが顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げた。その瞳には、エリートとしての矜持を泥靴で踏みにじられた強烈な屈辱が燃え盛っている。

「私たちに必要なのは戦果だ! 連邦生徒会に有無を言わさぬ交渉材料を手に入れることだぞ! 町内会の草むしりやゴミ拾いで、どうやって学園を再建しろって言うんだ!」

顔を真っ赤にして猛抗議するウサギたち。

だが、そんな彼女たちの血の滲むような訴えを前にしても、銀時は小指でほじった耳をフッと吹き飛ばし、柳に風とばかりに全く動じる様子を見せなかった。

「戦果ァ? 誰相手の戦果だよ。公園のハトか? それとも町内会の会長相手にC4でも仕掛けて制圧する気ですかコノヤロー?」

「それは……っ!」

「いいか、よく考えろ」

銀時は着流しの袖をゆっくりと腕まくりし、諭すような、それでいて現実の残酷さを容赦なく突きつけるような声色で語り始めた。

「今のテメェらは、世間から見ればただの『銃火器を持った危険な家出少女』だ。そんな連中がいくら『正義』だの『学園の復活』だの叫びながらドンパチやったところで、市民からすりゃ『あーあ、また不良が暴れてるよ。早く警察(ヴァルキューレ)呼ばなきゃ』で終わりなんだよ」

その身も蓋もない正論の弾丸に、サキがぐっと言葉を詰まらせる。

「だがな。もしその重武装した危険な家出少女たちが、朝から晩まで公園のゴミを拾い、迷子のおばあちゃんを背負って歩き、泥まみれでドブさらいをしていたらどうなる?」

銀時はニヤリと底意地の悪いペテン師の笑みを浮かべ、人差し指をスッと立てた。

「市民はこう思うはずだ。『あらやだ、あの子たち見た目は物騒だけど、案外良い子たちじゃない。あんなに一生懸命働いてるのに、学園を取り上げられちゃったなんて可哀想にねぇ』……ってな」

「!」

ミヤコのルビーのような赤い瞳が、ハッと大きく見開かれた。

それは、徹底的な合理主義と高度な戦術理論のみで構築された彼女の優秀な頭脳には、これまで一切存在しなかったアプローチだった。

『武力』ではなく『奉仕』で世論を味方につける。連邦生徒会という巨大で強固なシステムに対抗するために、そのシステムを根底で支える基盤(市民の感情)を揺さぶる。極めて泥臭く、しかし最も確実で恐ろしい盤外戦術。

「……えぇ〜、でもさぁ」

しかし、そんな銀時の見事な名案(?)に、ベンチで寝そべっていたモエが不満げに唇を尖らせた。

「爆弾も使えない、銃も撃てないなんてつまんないよ。ただの地味な肉体労働じゃん。そんなの、ドMじゃないとやってられないって」

「あ、あの……」

その時、ずっと身を縮めて気配を消していたミユが、おずおずと控えめに手を挙げた。

「私、ゴミ箱の中に潜むのは得意だから……ゴミの分別くらいなら、お役に立てるかも……」

「ほら見ろ! ゴミ箱女がもう適性見せてんじゃねェか……良かったな〜即戦力だぞ」

「ただのトラウマの産物だよ! やめたげて!かわいそうだから変な方向に褒めて伸ばそうとするのやめてあげて!」

すかさず新八の鋭利なツッコミが、銀時の暴走を的確に撃ち抜く。

「……本気、ですか」

ミヤコは僅かに震える声で、再び銀時の顔を見上げた。

「エリートである私たちが、そんな……何でも屋みたいな真似を……」

「万事屋(ウチ)を舐めんじゃねェぞ」

銀時はふと、先程までのふざけた態度を消し去り、静かで、酷く真剣な眼差しでミヤコの言葉を遮った。

「泥水すすって、他人が嫌がる仕事を引き受けて、そうやって汗水垂らして得た『ありがとう』って言葉にはな……最新鋭のアサルトライフルなんかよりも、よっぽど重てェ弾丸が詰まってんだよ」

その言葉には、ただの机上の空論や屁理屈ではない『確かな重み』が宿っていた。

幾多の厄介な依頼人と向き合い、かぶき町という混沌の底で泥まみれになりながら生き抜いてきた男だけが持つ、実感を伴う凄み。

「看板がなくなったくらいで折れる正義なら、最初から捨てちまえ。だが、テメェらの中にまだ『SRT』って誇りが残ってんなら……まずはその足元から綺麗に掃除してみせろ」

シン、と。

ロビーに、先程までとは違う、深く澄み切った静寂が落ちた。

サキは反論の言葉をグッと飲み込み、ヘルメットの奥で静かに目を伏せた。

モエはつまらなそうにそっぽを向きながらも、それ以上文句を垂れることはなかった。

ミユは、見えないゴミ箱の蓋を握りしめるように、胸の前で両手をギュッと固く握り合わせている。

そして、ミヤコは——。

「…………分かり、ました」

ゆっくりと、しかし確かな意志を込めて顔を上げた。

そのウサギの瞳からは、先程までの迷いや絶望の靄は完全に消え失せている。代わりに宿っていたのは、新しい戦場(ボランティア)へと向かう、SRTのエリートとしての強靭で揺るぎない光だった。

「ただし! これは決して、あなたのような不真面目な大人の指図に従うわけではありません! あくまで、私たちRABBIT小隊の戦術的判断として、市民との融和を図るための一環であり——」

「はいはい、わーったわーった。ツンデレは間に合ってまーす。じゃあ早速、栄えある第一の任務(ミッション)だ」

決意を新たに胸を張る小隊長に対し、銀時は鼻をほじりながら、世界で一番気の抜けた声で下知を飛ばした。

「不良警察(真選組)と共に、1日ゲヘナで働いてきなさーい」

「……はい?」

再びロビーの時が止まる。

規律の欠片もない狂犬の群れ(真選組)と、キヴォトス随一の無法地帯(ゲヘナ学園)。

エリートウサギたちが最も忌み嫌うであろう『混沌の極み』へと放り込まれるという、あまりにも理不尽で絶望的な初任務の宣告が、無情にも響き渡った。




次回予告

銀時「すいませ〜んこのアバズレどもエスコートしてくれない?」

ミヤコ「だからその呼び方やめてくださいって何度もーー」

土方「おいそりゃなんの冗だーー」

沖田「良いですぜ、旦那。こっちでちゃんと躾けておくんで」

「次会うときにはブヒブヒ言うこと聞くメスになってますよ」

新八「いやそれドSコート!!」

次回 
【挿絵表示】

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
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