透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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深い不快足掻いて参上
苦い願い 砕いて無情
暗いCRY 湿っぽい現状
幼気な理想は一体どこ?
心の負傷
常にロードショー
夢と現実のズレで「チクショー」
そろそろでしょ?
反撃の狼煙上げましょう
したり顔する曲者たちを今度こそ返り討ちにしてやれ
LAI LAILA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAILA LAI LAI
魂を
LAI LAI LA LAI LAI
燃やしていけ!
万の宴で舞い踊って
互い違い 迷ったダンジョン
伝え難い 孤高の焦燥
うざいくらい上がったテンション
「控えめに言って、マジ、神だね」
そう言われるほど斬新な
0点か100点のイメージ携えて切った張ったの浮世で
やんちゃに自分(おのれ)奏でましょうや

LAI LAI LA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAI LA LAILAI
熱い血を
LAI LAI LA LAI LAI
たぎらせて!
破綻した思想を剥ぎ取る
爆ぜるか否か
覚悟を決める
その決意が本当の刃したり顔する曲者たちを今度こそ返り討ちにしてやろう
さぁさぁ皆の衆!
やっちゃって!
LAILAI LA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAI LA LAI LAI
魂を
LAI LAI LA LAI LAI
燃やしていけ!
万の宴で舞い踊って





第百四十一訓 千里の道もドSから

 

【挿絵表示】

 

 

「てわけで、お前らのとこに売りに出した次第だ」

まるで夕方のテレビショッピングで、型落ちの掃除機でも紹介するかのような気の抜けた声だった。

銀時は小指で鼻をほじりながら、背後に控える四人の少女——RABBIT小隊を親指で指し示し、ドヤ顔で言い放った。

「言い値で譲る。買え」

「帰れェェェ!!」

鬼の土方の、鼓膜を劈くような怒声が空気を震わせた。

鬼の副長の眉間には見事なまでの青筋が浮かび上がり、咥えていたタバコからポロリと灰が落ちる。しかし、そんな威嚇を意に介す様子もなく、銀時はキョトンと首を傾げた。

「え? 買ってくれないの?」

「よく見てみ。えらい掘り出しモンだよ。どうよ、組織に一匹。今ならお買い得だよ?」

「何、一家に一台みたいなノリで売りつけようとしてんの!?買わねぇし飼わねぇから!さっさと帰れ腐れ天パ!!」

土方の鋭いツッコミが炸裂する。

「大体なァ、俺たちゃ不良少女の更生施設じゃねぇんだ! どうしても預けんなら、同じキヴォトス産の正実(正義実現委員会)に預けんのが筋ってモンだろーが!」

正論極まりない土方の怒鳴り声を他所に、当の『商品』として売りに出されているRABBIT小隊の面々は、居心地の悪さに身をよじっていた。

「オイ……アイツに乗せられてここまで来たが、本当に大丈夫か?」

サキはヘルメットを深く被り直し、冷や汗を流しながらヒソヒソと囁いた。

「なんかさっきから、『売り出す』とかなんとか聞こえた気がするんだが……人身売買の現場じゃないよな、これ」

「文句を言っても仕方ありません。今はこれしかないんですから」

ミヤコは腕を組み、あくまで冷静さを装って答えた。だが、そのウサギの耳は不安げにピクピクと揺れており、彼女の優秀な頭脳がいかにこの理不尽な状況を処理しきれていないかを物語っている。

「まぁ、私は爆弾さえ扱えられればなんでも良いかな〜」

モエは一人、どこ吹く風で両手を後頭部で組み、つまらなそうに空を眺めている。

「う、うぅ……ここでも私は、忘れられるんだ……」

そしてミユは、完全に背景と同化しながら、一人どんよりとした負のオーラを放って体育座りをしていた。売買交渉のテーブルにすら乗せられていない自身の影の薄さに、彼女の精神ゲージはすでに赤点滅を起こしている。

「とにかく、ウチは無理だ……他を当たれ!」

土方がイライラとタバコの煙を吐き出し、交渉を打ち切ろうとした、その時だった。

「あ、来た来た……お待ちしてましたよ、旦那」

ズルッ、ズルズルッ……。

不気味な摩擦音と共に、薄暗い路地の奥から歩み出てきたのは、真選組一番隊隊長・沖田総悟だった。

その整った甘い顔立ちには、見る者の背筋を凍らせるような、嗜虐的で無邪気な笑みが貼り付いている。

「あ、沖田くん。ちょうど良いところに」

銀時が片手を挙げて挨拶を交わす。

「待ちすぎて、少々躾(しつけ)しすぎちゃいましたぜ」

沖田は手元の『リード(紐)』をクイッと引いた。

「あの……あれって、なんですか?」

ミユが、震える指で沖田の足元を指差す。

ミヤコたち三人の視線も、自然とその『紐の先』へと誘導された。

「……あ、あぐぅっ……! ひ、卑劣な……っ!」

そこには、四つん這いになり、首に紐を巻かれ、涙目でプルプルと震えながら地を這うゲヘナ学園風紀委員会の行政官——天雨アコの無惨な姿があった。

エリート行政官としての威厳など微塵もない。完全に『飼い犬』として屈服させられ、精神的に追い詰められたその姿は、見る者の倫理観を激しく揺さぶる劇薬だった。

(と、と、とんでもないドS野郎だったァァァ!!)

サキの頭の中で、警報(サイレン)が鳴り響いた。

(なんだあの男!? 風紀委員のトップ層を、あんな首輪つけて散歩させてるぞ!? ていうかあの女の人も、泣きながらどこか満更でもない顔してるのは気のせいか!? ここはどうなってるんだ、トリニティーじゃないのか?ここはゲヘナ?いやここは地獄か!?)

エリート特殊部隊として培ってきたサキの常識が、音を立てて崩壊していく。

ウサギたちが顔面蒼白になって固まる中、沖田は品定めをするように、赤い瞳でRABBIT小隊の面々を舐め回した。

「お話にあった、奴らはこいつらですかい?」

沖田の口角が、ニィッと吊り上がる。

純白のウサギたちを見るその目は、完全に『新しいおもちゃ』を見つけた捕食者のそれだった。

「……中々、生きがいいのが揃ってるじゃねぇか」

ヒッ、とミユが短い悲鳴を上げてミヤコの背後に隠れる。

「オイ総悟……お前また何やってんだ?」

真土方の、呆れたようなツッコミが辺りに沈む。

先程までの『万事屋への苛立ち』などという些末な感情は、一瞬にして宇宙の彼方へと吹き飛んでいた。目の前で繰り広げられているのは、間違いなく国際問題(学園間抗争)待ったなしの、コンプライアンスの欠片もない地獄の光景。鬼の副長の胃壁が、今まさにマッハの速度で削られ続けている。

「土方さん、何って見たら分かるでしょ、散歩ですよ散歩」

「この世界のどこに紐つけてJKと散歩する奴がいるんだ?」

対する沖田は、悪びれるどころか、ひどく涼しい顔で小首を傾げた。

「こいつがわざわざ学園跨いでまで道端でキャンキャン吠えて『風紀を乱すな』ってうるせェから、この学園の風紀(ルール)に従って、大人しく首輪つけて散歩に付き合ってやってるだけですよ。……なぁ、アコ公?」

クイッ、と。

沖田が容赦なくリードを引っ張ると、首輪の金具がチャキッと冷たい音を立てた。

「あ、アコ公って……! ひ、ヒナ委員長に報告しますからね! こんな屈辱……っ、は、早く引っ張るのをやめ……ひぅっ!」

首が締まり、涙目で喘ぐ天雨アコ。

ゲヘナ風紀委員会のエリート行政官としての威厳を取り戻そうと、彼女は必死に声を荒げる。しかし、四つん這いでリードに繋がれ、地面を這いつくばっているという圧倒的な視覚的情報が、その抗議のすべてを台無しにしていた。

さらに言うなら、その震える声には恐怖と屈辱だけでなく、どう見ても隠しきれない『未知の扉』を開きかけた危うい響きが混ざり込んでしまっている。

(ダメだ、エリートとかそういう次元の話じゃない! 完全に関わっちゃいけないタイプの狂気だ!)

サキの顔面から急速に血の気が引き、ヘルメットの下で滝のような冷や汗が流れ落ちた。

軍事訓練やサバイバル術、爆発物の処理なら完璧にこなせる彼女たちRABBIT小隊。だが、「人間の尊厳を完膚なきまでに破壊する」という異次元のドSプレイを前にしては、いかに優秀な戦術頭脳であろうとも完全にショートしてしまう。

「お、落ち着いてくださいサキ……!」

パニックに陥ったサキの肩を、ミヤコが強く掴んだ。彼女のウサギ耳もブルブルと激しく震えているが、小隊長として必死に自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。

「これは……高度な心理的尋問のシミュレーション……いえ、ただの変態による凶悪犯罪の現場です! ドS野郎に対する対応を学ぶためのボランティアの一環です! 私たちも、まずは紐に縛られて餌付けされるところから……っ!」

「いや、まずお前が落ち着け!! そういうキャラだったかお前!?」

サキの渾身のツッコミが、空気を切り裂いた。

真面目すぎるが故の致命的な論理の飛躍。エリート小隊長が自ら進んで首輪をつけられようとする異常事態に、サキは本気で頭を抱えた。

「どうよ」

その惨状を見下ろしながら、銀時は腕を組み、さも敏腕プロデューサーのようなドヤ顔で頷いた。

「ツッコミの腕も上々だ。この理不尽な世界(キヴォトス)で生きていくための術は、もう十分に揃ってる。後は、このイカれた連中の中にキャラを馴染ませるだけなんだよ」

「いや、世界に馴染ませるつーか染めてんのお前ら!!」

土方の血を吐くような正論が飛ぶが、悲しいかな、この空間において常識人の声は誰の耳にも届かない。

「分かりました。じゃあ一番隊はそこの二人(サキとモエ)で引き取りまさァ」

沖田はアコのリードを片手に持ったまま、無慈悲な顔で勝手に人事配置を決定した。

「分かってねぇだろ! ボランティアの目的完全に変わってるだろー!」

土方の制止を完全に無視し、沖田の品定めは続く。

「そこのゴミ箱女(ミユ)は、山崎のところに配属しようと思ったんですがね……あまりにも影が薄すぎて、あいつと完全にキャラ被りしそうだ。仕方ねェ、無口な終(さいとう)兄さんのところにでも突っ込んどきましょう」

「ひぐっ……!」

名前すら呼ばれず「ゴミ箱女」として処理されたミユが、ビクッと肩を跳ねさせて咽び泣いた。

「おい、じゃあこのリーダー(ミヤコ)は?」

銀時が、未だに縛られる覚悟(?)を完了しつつあるミヤコを指差す。

「あー、こいつは……近藤さんにでも話しておきますよ。ゴリラとウサギなら、案外動物同士で気が合うかもしれねェし」

沖田は悪魔のような薄笑いを浮かべると、クルリと銀時の方へ向き直った。

「そんじゃま、後のことは俺たちに任せて。旦那は二日後、迎えに来てくだせェ」

それは、ただの預かり業務の完了報告ではなかった。

沖田は冷酷な赤い瞳をスッと細め、純白のウサギたちを舐め回すように見つめると、底知れぬサディスティックな笑みを深めた。

「次会う時までに……たっぷり躾けて、ブヒブヒ言わすメスにしとくんで」

コンプライアンスも人権も、果ては放送コードすらも完全にガン無視した、極悪非道なドS宣言。

キヴォトスの未来を担うべき純真無垢な少女たちが、悪魔のような警察官の毒牙にかけられようとしている、まさに絶体絶命の危機——。

「……そうか」

しかし、彼女たちの保護者(仮)であるはずの坂田銀時の口から飛び出したのは、今日の晩飯のおかずを聞いた時よりも遥かに軽い、一切の感情が欠落した二文字だった。

「じゃ、約束の日まで——」

銀時は踵を返し、ひらひらと右手を振りながら、一切の躊躇も未練もなく背中を向けた。

「三度寝しまーす」

「ちょっ!?」

ミヤコの頭頂部にあるウサギ耳が、驚愕でピンと限界まで逆立った。

「待てェェェェェ!!!」

サキの血を吐くような、いや、文字通り魂の底からの絶叫が、屯所内に轟いた。

沈みゆく泥船から決死の形相で助けを求める少女たち。しかし、銀時は一度として振り返ることなく、風のように去っていく。

エリート部隊としてのプライドなど、とうの昔に消え失せていた。

後に残されたのは、アコのリードを握りしめて嗜虐的な笑みを深める沖田と、完全に退路を断たれ、ガクガクと膝を震わせる四匹の哀れな子兎たちだけだった。

——場面は変わり、トリニティー総合学園の一角に急造された真選組の仮設屯所。

「なるほど……。つまり、こいつらを社会的に復帰させるために、俺たちの元でボランティアとして働かせたいと」

腕を深く組み、ドカッと胡座をかいて座る大柄なゴリラ——近藤勲は、重々しい声で深く頷いた。

その逞しい肉体と、歴戦の猛者であることを思わせる精悍な顔つき。そして何より、ならず者の集団である真選組をまとめ上げるだけの、海のように広くて温かい包容力が全身から滲み出ている。

「そういうこった」

傍らに立つ土方が、疲労困憊といった様子でタバコの煙を深く吐き出した。

「万事屋の野郎が勝手に持ち込んできた厄介事だが……放っておけば、このガキ共はマジでキヴォトスの底辺に堕ちちまう。俺たちゃ更生施設じゃねェって断ったんだが——」

「まぁ、旦那の頼みってんで俺が引き受けたんですよ。社会の厳しさを叩き込むくらいはしてやれるだろうと思ったんでねィ」

飄々と嘯く沖田の言葉を聞きながら、壁際に一列に並ばされたRABBIT小隊の四人は、先程までの絶望の底から一転、微かな『希望の光』を見出していた。

(この人……ゴツいし、顔はゴリラみたいだけど、すごく話の通じそうな、まともな大人だ……!)

サキがヘルメットの奥で、感動に満ちた目を輝かせる。

(先ほどのサディスト(沖田)とは違う。局長というだけあって、確かな威厳と常識を持ち合わせている……! この人の下でなら、私たちも正当な労働による社会貢献が——)

「おっと、部隊の移動は受け付けねェ。せいぜい俺に飼われてな、子ウサギども」

「…………」

(お、終わった〜〜〜ッ!!)

サキの淡い希望は、沖田の無慈悲な牽制によって開始数秒で粉砕された。

とはいえ、ミヤコもまた、近藤の真剣な横顔を見て密かにホッと胸を撫で下ろしていた。ずっと震えていたミユも、少しだけ顔を上げて安堵の息をついている。

しかし、温室育ちの彼女たちはまだ知らなかった。

この『真選組』という組織において、常識の通用する人間など誰一人として存在しないという、残酷すぎる真実を。

「よし、事情はよく分かった! 未来ある若き子供たちのためとあらばひと肌脱いでやろうじゃねェか!」

近藤は力強く立ち上がり、四人の少女へ向かってニカッと人の良さそうな、太陽のような笑顔を向けた。

再び座布団にどっかりと腰を沈めた近藤は、熱情を帯びた眼差しでRABBIT小隊の面々を真っ直ぐに見据えた。

「いいか、君たち! 我々のような治安維持を担う組織が、最も重んじるべき理念はなんだと思う?」

その声は太く、腹の底から響くような力強さに満ちている。理不尽な大人たちに振り回され、すっかり摩耗しきっていたミヤコの乾いた心に、彼の真摯な言葉は慈雨のように優しく染み入った。

「それは……市民の安全と、平和な日常を守ること、でしょうか」

彼女は無意識にピンと背筋を張り、エリート指揮官としての矜持を込めて、汚れなき模範解答を紡ぎ出した。

「そうだ!」

近藤は分厚い掌で自身の膝を力強く打つと、太陽のように眩しい笑みを向けた。

「愛する者を陰ながら見守り、その平穏を誰にも知られず護り抜く。それこそが、我々真選組の……いや、法と秩序を守る者の本懐だ。君たちが学園で積んできた血の滲むような修練も、すべては『対象(ターゲット)の安寧を死守する』ためのものだったはずだ」

(ああ……なんて高潔で、誠実な志を持った人……!)

ミヤコの頭を飾る白い耳が、歓喜の震えを帯びる。

『人知れず見守り、護る』。それこそは、隠密作戦を本領とする特殊部隊の存在意義と完全に符合する哲学だった。

目の前に座る、猛獣のように屈強な男の胸には、海よりも深い慈愛と正義が渦巻いている。ミヤコの瞳には尊敬の星が瞬き、彼女の中で『近藤勲』という存在は、理想の指導者像の頂点へと駆け上がろうとしていた。

「はい……っ! 仰る通りです!」

感極まったミヤコは、声高らかに忠誠を誓う。

「私——いえ、RABBIT小隊は、近藤さんのその気高き精神に深く感銘を受けました! 私たちでお役に立てるなら、いかなる任務にも全身全霊で臨みます!」

ようやく巡り会えた。この混沌とした世界で、迷える自分たちを正しい光へと導いてくれる、真なる保護者に。

純粋な憧憬を向けるミヤコに対し、近藤は「おお、頼もしいねェ!」と相好を崩し、懐からガサゴソと『一枚の写真』と『重厚な軍用双眼鏡』を取り出した。

「というわけで、これが今回の絶対防衛対象(ターゲット)である、お妙さんのポートレートだ」

「……お妙、さん?」

手渡された写真に収まっていたのは、おしとやかな微笑みを浮かべる美しい女性の姿。しかし、その構図はどう好意的に解釈しても、『コンクリートの電柱越しに、超望遠レンズで隠し撮りされたアングル』であった。

「君たちのその卓越したステルス技術を駆使して、彼女の本日の行動ルートと、誰にも見つからない完全無欠の監視スポット、そして……湯上がりの姿を拝める究極の覗きポジションを、俺と一緒に確立してほしい」

「………………はい?」

ミヤコの脳内で頂点に達していた近藤の評価額が、音を立てて底抜けし、奈落の底へと急転直下していく。

「いや〜、最近はお妙さんのガードが固くてなァ。俺一人じゃ、完璧な監視網を構築しきれず難儀してたんだ! 君のようなプロが加わってくれれば、まさに鬼に金棒——」

ドゴォォォォォンッ!!!

局長がその情熱的な演説を終えるより刹那早く、土方の全体重を乗せた凶悪な飛び蹴りが、近藤の顔面に深くめり込んだ。

大柄な肉体が宙を舞い、仮設屯所のベニヤ壁を盛大に粉砕して、薄暗い路地裏へと吹き飛ばされる。

「ただの犯罪者じゃねェかああああああ!!!」

土方の怒声が、ゲヘナの空気をビリビリと震わせた。

「若者の未来がどうとか綺麗事並べといて、純真なガキに何の手伝いさせようとしてんだこの発情期ゴリラァ! テメェの存在が一番の風紀の乱れなんだよ! とっととブタ箱にぶち込まれて、便所掃除から人生やり直してこい!!」

大穴の開いた壁の向こうで、白目を剥いてピクピクと痙攣するストーカー(局長)と、般若のような形相で怒髪天を突く副長。

その地獄絵図を前に、ミヤコは手渡された『犯罪の証拠品(写真)』と『双眼鏡』を抱えたまま、ピクリとも動けなくなっていた。

(大人が……)

ミヤコの宝石のような双眸から、生命の輝きがスゥッと抜け落ちていく。

(この街には……真っ当な大人が、本当に一人も存在しない……ッ!!)

彼女の心の中で辛うじて踏みとどまっていた『希望』という名の脆い彫刻が、音を立てて砂のように崩れ去っていった。

「さーて。それじゃあ俺たちも行こうか、子ウサギども」

局長の暴走によってミヤコの精神が塵と化していくその傍らで、沖田総悟の薄い唇が弧を描いた。その端正な顔立ちに浮かんでいるのは、毒をたっぷりと含んだ果実のような、甘く冷酷なサディストの微笑である。

「まずはその頭に乗っかってる生意気なウサギ耳を引きちぎって、代わりに犬の耳でもつけ直してやろうかねィ」

「ふざけるな! 誰が貴様なんかに——ひぐっ!?」

牙を剥いて猛反発しようとしたサキだったが、次の瞬間、彼女の喉元で言葉が完全に凍りついた。

沖田が懐からスッと取り出したのは、手錠でも捕縛ロープでもない。用途は不明だが、確実に対人用の苦痛を伴うであろう『禍々しい光沢を放つ金属器具』だったからだ。

サキの危機察知能力が、かつてない最大級の警報を鳴らす。目の前にいるのは「取り締まる側の人間」ではなく、倫理観のタガが外れた「純粋な捕食者」なのだと。

しかし、そんなサキの張り詰めた恐怖など我関せずとばかりに、隣のモエは至極不満そうに小首を傾げていた。

「え、爆弾は?」

張り詰めた空気を読まない、極限まで間延びした声。

「爆弾使わせてくれるなら、ワンでもニャンでも言うけど。というか、その器具って起爆装置? スイッチ押していい?」

恐怖心をどこかに置き忘れてきた彼女の瞳は、沖田の持つ拷問具(?)に興味津々で釘付けになっている。

「ほぅ」

沖田の赤い瞳の奥で、嗜虐の炎が嬉しそうに揺らいだ。

「だったらお前には特別に、導火線付きの首輪を用意してやるァ」

「お前みてぇなやられ慣れてるやつにゃ少し変わったプレイがお似合いだ。ってわけで土方撃ってこいメス犬。」

「サイテーだなお前!!」

破綻した者同士の奇妙な意気投合。サキの悲痛極まりないツッコミも虚しく、二人の少女は「特別指導室」という名の暗黒空間へと、ズルズルと容赦なく引きずり込まれていった。

そして、喧騒が遠ざかった屯所の片隅。

そこだけ空気の重さが違うような、ぽつんと取り残された最後の一人がいた。

「…………」

「…………あ、あの」

どんよりとした影を背負い、ゴミ箱の底に沈むような猫背で立つミユ。

彼女の視線の先にそびえ立つのは、巨大なアフロヘアと虚無の表情を浮かべた真選組第三隊隊長・斉藤終(しまる)だった。

「ごめんなさい……私なんかの、お世話任されて……」

この世に存在していること自体を懺悔するような、消え入りそうなミユの声。

それに対し、極度の対人恐怖症を抱える斉藤は、アフロを微かに揺らしながら、プラカードで答えた

『……よろしくたんだZ(ゼット)』

「えっと、その……Z?」

「…………Z」

重度のネガティブ思考で己の気配を極限まで薄める少女と、極度の人見知りでアルファベットの末尾に縋る無口な剣豪。

二人の間に交わされるのは、もはや言語としての体裁すら成していない、極小の波長による『Zの共鳴』のみ。蝉時雨が降り注ぐゲヘナの片隅で、その一帯だけが真空地帯のようにシュールな沈黙に包まれていた。

乾いた風が、ぽっかりと空いた無残な壁の穴から吹き込んでくる。

宙を舞う石膏の粉塵の真ん中で、ミヤコはまるで精巧な彫像のように硬直していた。

両手には、先ほどまで「高潔な任務の証」と信じて疑わなかった『ストーカーの七つ道具(盗撮写真と双眼鏡)』が、今は呪われたアイテムのように握りしめられている。彼女の明晰な演算処理能力は、「尊敬すべき指導者=ただの変態犯罪者」という致命的な論理エラーを引き起こし、未だに再起動の目処すら立っていなかった。

「……オホン」

痛いほどの静寂を切り裂いたのは、土方十四フォローのひどくわざとらしい咳払いだった。

彼は乱れた黒い隊服の襟を乱暴に引っ張って直すと、真新しいタバコに火を点ける。その切れ長の瞳には、終わらない激務と現在進行形の頭痛がブレンドされた、底知れぬ疲労の影が落ちていた。

「……今見たことは、すべて忘れろ。アレは局長じゃねェ。お嬢様方の裏方の熱気にあてられて発狂した、ただの野生のゴリラだ。法と秩序を重んじる俺たち真選組とは、何の関係もねェ」

苦し紛れにも程がある隠蔽工作。さらに十四フォローは、これ以上の精神崩壊を防ぐため、立て続けに強引な予防線を張る。

「ついでに言うなら、あのサド野郎(沖田)もアフロ(斉藤)も同様だ。アレは真選組の皮を被った別の未確認生物だ。即刻、今すぐにでもお前の脳内フォルダから完全消去しろ」

「じゃねぇと生徒不覚悟で切腹だ」

「土方、副長……」

ミヤコは、光を完全に失った虚ろな瞳を、ギギギ……と錆びついた機械のような動きで土方へと向けた。

「この世界における『正義』とは……一体、何なのでしょうか。私たちは、決して……善良な市民をストーキングし、犯罪者の手先となるために、あの血を吐くような厳しい訓練を積んできたわけでは……」

エリートとしてのアイデンティティが音を立てて崩壊し、底なしの暗黒面(ダークサイド)へと堕ちかける純白のウサギ。その悲壮感たっぷりの哲学的な問いを前に、土方は胃薬のボトルを水なしで丸呑みしたいという強烈な衝動に駆られていた。

「だからアレはイレギュラーだっつってんだろ! 頼むから俺まで一緒にしないでもらえます!?」

ただでさえ問題児しか存在しない組織の中で、たった一人で常識枠とツッコミの激務を担っている十四フォローの胃壁は、もはや千切れんばかりの限界を迎えていた。あの天然パーマ(銀時)がゲヘナに持ち込んできた厄介事は、いつだって土方の想像の斜め上をいく面倒くささだ。

土方は深く紫煙を吐き出すと、己の精神をかろうじて平常運転へと戻し、壁の穴の向こうで気絶している局長に向かって無情な蹴りを放った。

「おい、近藤さん。いつまでも寝てねェで起きろ。子ウサギ連れて見回りに行くぞ」

「ふぁ、ふぁい……っ」

顔面に靴跡をつけたまま、近藤はピクピクと這い上がる。

そこから、ミヤコにとっての長く、そして常識がゲシュタルト崩壊を起こす「真選組との一日」が幕を開けた。

エリート特殊部隊であるSRTの教範には、『市街地における模範的な治安維持活動』のプロセスが克明に記されている。

しかし、キヴォトス随一の無法組織、真選組の行動理念には、戦術やマニュアルといった概念は1ミリも存在していなかった。

ある時は、喧騒渦巻く商店街での見回り。

ある時は、火器を振り回す不良生徒たちへの、問答無用の物理的な鎮圧。

ある時は、捕縛した容疑者に対する、カツ丼と脅迫を交えた独特すぎる尋問。

そしてある時は——局長の個人的な欲望に基づく、キャバ嬢への隠密尾行(ストーカー)。

(※なお、最後の項目についてミヤコは「私は一切加担していません。断固として否定します」と、虚無の瞳で強く供述している)

砂埃と爆音、そして怒号。

一日中トリニティーを駆け回ったミヤコの身に叩き込まれたのは、警察組織の洗練されたスマートさなどではなく、血と汗と泥に塗れた『真選組』という獣たちの、あまりにも生々しい生き様そのものだった。

やがて、硝煙と熱気に包まれていたトリニティーの空が、深い夜の闇へと沈んでいく。

一日のパトロールを終え、仮設屯所の縁側に腰を下ろしたミヤコは、泥で汚れた制服の裾を払いながら、深く、ひどく重たい疲労の溜息を吐き出した。

「どうだ、俺たち真選組の一日は」

隣から聞こえてきたのは、夜風を浴びながら豪快に笑う近藤の声だった。

顔面には土方に蹴られた痣が残り、隊服も土埃にまみれているというのに、その横顔には不思議と晴れやかな充足感が漂っている。

ミヤコはジトッとした、半ば呆れ果てたような赤い瞳を局長へと向けた。

「……なんというか、はちゃめちゃです。あんな組織立った戦術も何もない動きで……あれでは警察というより、ただのチンピラです」

それは、エリートとしての矜持を持つ彼女からの、一切の忖度を含まない辛辣な評価だった。

しかし、そんな容赦のない毒舌を浴びせられても、近藤は怒るどころか、さらに愉快そうに腹を抱えて笑った。

「はははっ! 違いねェ!」

あっけらかんと肯定してみせるその豪快な笑い声に、ミヤコは微かに眉根を寄せた。

(……この人は、ストーカーで、ゴリラで、どうしようもない大人なのに)

ミヤコの視線が、近藤の分厚く頼もしい背中から、遠くで未だにギャーギャーと口論を繰り広げている土方や沖田たちの姿へと移る。

あんなにも自分勝手で、協調性のかけらもない狂犬たち。そんな彼らが、ただ一人、この男の元にだけは集い、見えない太い鎖で結ばれているように一つにまとまっているのだ。

(なぜ……あんな破綻した人たちが、この人を『局長』として慕い、うまくまとまっているんでしょうか……?)

ゲヘナの夜風が、熱を帯びた一日の名残を優しく撫でていく。

縁側に腰を下ろしたミヤコは、両腕でぎゅっと膝を抱え込み、夜の闇に沈む仮設屯所の庭へと視線を落としていた。

「どうした、浮かない顔して」

ミヤコはすぐには答えず、ただじっと庭の惨状を見つめていた。そこでは、隊士たちが『どちらのアイドルが尊いか』『マリーは卑しいか、卑しくないか』『新pv出たあの子は巨乳か、貧乳か』という宇宙規模でどうでもいい議題を巡り、青筋を立てて日本刀を振り回す、抗争一歩手前の乱闘を繰り広げている。

「……………」

数秒の沈黙の後、ミヤコはぽつりと唇を開いた。

「……どうして、皆さんは近藤さんについていくんでしょうか」

「ん?」

「失礼を承知で言います」

ミヤコは顔を上げず、理性の奥底で燻っていた純粋な疑問を言語化した。

「近藤さんは戦術的な指揮を執るわけでもなく、時にはストーカー行為に走るなど、規律という点においては到底上に立つ人間とは思えません」

絶対的なルールがあり、優れたリーダーが手綱を握らなければ、集団というものは維持できない。そう教え込まれ、信じてきた彼女にとって、目の前で騒ぐ狂犬の群れと、それを野放しにしている男の構図は、自らの戦術理論を根底から破壊する『理解不能なエラーコード』だったのだ。

それは単なる批判ではない。己の未熟さゆえに小隊を空中分解させてしまった『元・小隊長』としての、血を吐くような切実な問いであった。

そんなミヤコの痛切な迷いに触れても、近藤は怒ることも誤魔化すこともなかった。

ただ、星の瞬く夜空を見上げ、ふっと包み込むような微笑みを浮かべる。

「俺はな、ミヤコちゃん。アイツらを『まとめよう』なんて大層なこと、今まで一度も思ったことはねェ」

「え……?」

予想外の言葉に、ミヤコは弾かれたように顔を上げた。

「トシも総悟も、ウチの連中はみんな、帰る場所もねェ、真っ当な生き方もできねェ、不器用で意地っ張りなはぐれ者の集まりだ。そんな野良犬どもに首輪をつけて無理やり飼い慣らそうとしたって、すぐに噛みついてどっかへ行っちまう」

近藤はゴツゴツとした無骨な掌で、自身の頭をガリガリと無造作に掻いた。

「だから俺は、ただ真っ直ぐ立って、大口開けて笑ってるだけさ。アイツらが迷った時に『ここがお前らの帰る場所だ』って、いつでも見つけてもらえるようにな。……俺ァ、アイツらが自由に暴れ回るための、ただの泥臭い『的(標識)』でしかないんだよ」

規律という名の鋼の鎖で縛るのではなく、ただ、丸ごと受け入れる。

どんなに泥に塗れようと、どれほど世間から爪弾きにされようと、決して揺るがない絶対的な『居場所』として、そこに在り続ける。

それが、近藤勲という男の持つ、計り知れない器の大きさ——真なるリーダー論だった。

「……ッ」

ミヤコの瞳が、微かに、けれど激しく揺さぶられた。

視界が滲む。

(そうか……私たちは)

私たちRABBIT小隊は、『SRT特殊学園』という強固な看板を守ることばかりに必死になっていたのだ。

エリートとしての高邁な誇り。小隊長としての重い責任。完璧であるべき戦術。

それら『目に見える規律』で互いの柔らかな心を縛り付け、絶対的なシステムが失われた途端に、脆くもすれ違ってしまった。

サキの焦燥も、モエの強がりも、ミユの怯えも。仲間の本当の弱さを丸ごと受け止めるだけの『泥臭い覚悟』が、自分には決定的に欠落していたのだと、彼女は今、深く悟った。

「立派な看板なんてなくても、互いの魂の形さえ分かってりゃ、人はいつだって繋がっていられる。ミヤコちゃん、君たちもきっとなれるさ」

ぽん、と。

近藤の大きくて温かい掌が、ミヤコの華奢な肩を優しく叩いた。

その手のひらから伝わる熱が、凍てついていた彼女の心をゆっくりと溶かしていく。

「君たちのその立派なウサギの耳は、仲間たちの発する小さなSOSを、決して聞き逃さないためにあるんだろう?」

「いや、これは——」

「だったら、もう大丈夫だ。君はもう、立派なリーダーだ」

ゴリラのように厳つく、時にはどうしようもなく情けない、けれど誰よりも広くて優しい大人の言葉。

ゲヘナの夜風の中、ミヤコは胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていた。エリートとしての重圧から解放され、等身大の自分を受け入れてもらえた安堵感。彼女は潤んだ瞳で、目の前の男を見上げた。

「近藤さん……!」

感動に打ち震えるミヤコ。近藤はそんな彼女を、まるで菩薩のような、慈愛に満ちた完璧な笑顔で見守っている。

傷ついた少女と、それを導く大きな器を持った大人。キヴォトスの夜空の下で結ばれた、一枚の絵画のように美しい師弟の絆のワンシーン——のはずだった。

(……ん?)

ミヤコは、自身の右の掌に『明確な違和感』を覚えていた。

いつの間にか、近藤の手からそっと握らされていた謎の物体。冷たくて、ぷるぷるとした妙な弾力があり、あろうことかその中央には、何かの用途を暗示するような『意味深な切り込み』がスッと一直線に入れられている。

感動の波が急速にサーッと引いていき、代わりに極寒の冷や汗がミヤコの背筋を駆け下りた。

「……あの、近藤さん」

ミヤコは光を完全に失った虚無の瞳で、隣の菩薩(ゴリラ)をジトッと見据えた。

「良い話の最中に、『こんにゃく』を差し出してくるの、やめてもらえませんか?」

「ギクッ!!」

近藤の分厚い肩が、文字通り弾かれたように大きく跳ねた。その額からは、慈愛の笑みを押し流すほどの滝のような冷や汗が噴き出している。

なぜ、こんな卑猥な加工が施されたこんにゃくを常に懐に忍ばせているのか。そしてなぜ、それを感動的なムードの中で女子高生に握らせたのか。ミヤコの優秀な頭脳が、そのおぞましい「答え」を弾き出そうとした、まさにその時だった。

「局長ォォォォォ!!」

バンッ!!と障子が激しく引き開けられ、屯所の奥から血走った目をした真選組の隊士たちが、鬼の形相でなだれ込んできたのだ。

「またか!! また『ナニぞや』に使った使用済みこんにゃくを、俺たちの晩飯の鍋に放り込みやがったなァァァ!!!」

悲痛な、あまりにも悲痛な男たちの絶叫が夜空に轟いた。

その瞬間、ミヤコは自らの右手に握らされている『こんにゃく(使用済み)』の正体と、それにまつわるすべての猟奇的な事象を完全に理解した。

「ヒッ!?」と短い悲鳴を上げ、彼女は反射的にそのこんにゃくを縁側の外の茂みへと全力で放り投げた。全身の鳥肌が一斉にスタンディングオベーションを起こしている。

自らの性癖と凶行が露呈し、怒り狂う部下たちに包囲された近藤。

絶体絶命の窮地。しかし彼は、決して慌て騒ぐことなくスッと立ち上がると、夜風に髪をなびかせながら、ミヤコに向けてどこまでも爽やかな笑顔を向けた。

「……認めよう、ミヤコくん」

その声は深く、渋く、まるで大河ドラマの最終回のような重厚感に満ちていた。

「君こそが……今日から、この真選組の新たなリーダーだと!」

それは、勇者に伝説の剣(局長の座)を託すかのような、完璧な『良い話風』の締めくくり。すべての責任を女子高生になすりつけ、美しいBGMと共にその場からフェードアウトしようとする、大人として最低の逃避行動だった。

「良い話風にまとめて逃げるんじゃねェェェ!!」

隊士たちの怒りの刃が、逃亡を図る局長へと一斉に振り下ろされた。

「返せ!! 俺のした(舌)の清潔さを返せェェェ!!」

「出汁がよく染みてて美味ェとか言っちゃった俺の純情をどうしてくれるんだこの発情期ゴリラァァァ!!」

感動と尊敬は、わずか数分で阿鼻叫喚の地獄へと姿を変えた。

ゲヘナの夜の闇に、野郎どもの悲鳴と怒号が虚しく響き渡る。

ミヤコは必死に右手を衣服で擦りながら、先程「この世界にはまともな大人が一人もいない」と悟った己の直感が、真理であったことを改めて痛感するのだった。

あれから、地獄のような二日間が経過した。

トリニティーの仮設屯所に、気怠げな銀時の声が響く。

「で、分かったか? テメェら、治安組織の『心構え』ってやつがよ」

腕を組み、さも過酷な試練を乗り越えた教え子を労う熟練の教官のような、堂々たるドヤ顔。

しかし、その言葉を受けた新八とミヤコからは、間髪入れずに血の滲むような反論が飛んだ。

「いや、この二日間のどこを見たら『警察の要素』があったんですか!?」

「そうです!! 局長のストーカー行為の片棒を担がされたり、得体の知れない使用済みこんにゃくの隠蔽工作(後処理)をさせられるのが、市民を守る警察の仕事なんですか!?」

ミヤコの瞳には、エリートとしての理性的な輝きなど微塵も残っていない。そこにあるのは、完全に常識の崩壊を経験し、精神の限界(サニティ・ゼロ)を迎えた少女の痛切な叫びだった。

「お前らなぁ……それは単なる価値観の違いってやつよ」

銀時はやれやれと首を振り、小指で鼻をほじりながら見事なまでの詭弁を振るい始める。

「あのゴリラは決してストーカーなんて卑劣な犯罪をしてたわけじゃねェ。愛するメスゴリラの安全を守るための『24時間体制の厳重な生態監視』を行ってたんだよ。あのこんにゃくの一件だってな、己の尊厳を犠牲にしてでも奉仕活動を全うするという、究極のメタファー(暗喩)を身体を張って諭してくれたんだ。……なぁ、ゴリラ局長?」

「そうです! 万事屋の言う通りです!」

隣に立つ近藤が、爽やかな笑顔と共に力強く親指を立てる(サムズアップ)。その白く輝く歯と、一切の罪悪感を持たない澄み切った瞳が、ミヤコの神経をさらに逆撫でした。

「いや、一体全体どんな奉仕活動ですか!? 年頃の女子になんて破廉恥な真似をさせようとしてるんですか!!」

ミヤコはついに声を裏返らせ、頭を抱えて激しくウサギ耳を揺らした。

「大体、こんな劣悪で非道徳的な環境で、私たちの何が成長したって言うんですか!! ただトラウマが増えただけじゃ——!」

「心配するこたぁありませんよ。成長してます。……ちゃーんと、な」

ミヤコの悲痛な訴えを遮るように、薄暗い屯所の廊下の奥から、ひどく甘く、そして背筋が凍るほどに冷酷な声が響いた。

「お、来た来た」

銀時が呑気に手を叩く。

ジャラッ……ズルズルッ……。

不気味な金属音と、床を這うような摩擦音を響かせながら、ゆっくりと姿を現したのは真選組一番隊隊長・沖田総悟だった。

「旦那ァ。言われた通り、きっちりと手塩にかけて『エスコート』しときましたぜ」

悪魔のような薄笑いを浮かべる沖田。その手には、二本の革製のリードがしっかりと握られている。

「——サキ! モエ!」

ミヤコは弾かれたように駆け寄ろうとし——次の瞬間、視界に飛び込んできたあまりにも惨たらしい光景に、全身の血液が完全に凍りついた。

「んぅぅぅーっ!! んぐぅっ!!」

「あはっ……なにこれ、ちょっと熱いかもぉ……」

そこにいたのは、かつてキヴォトス全土にその名を轟かせた、誇り高きSRT特殊学園・RABBIT小隊の精鋭たちであった。

……であったはずなのだが。

後方支援を担うモエの首には、厳重な革の首輪がはめられ、その喉元には真っ赤な液体が波打つ『超小型爆弾(致死量のデスソース入り)』が括り付けられている。

そして前衛を担うサキに至っては、口には球状の猿轡(さるぐつわ)を噛まされ、両手両足を太いロープで厳重に縛り上げられていた。

二人は共に視界を黒い布(目隠し)で奪われ、四つん這いで床を這いつくばっている。

さらにミヤコを絶望のドン底へと叩き落としたのは、屈辱と恐怖に塗れているはずの二人の顔が、茹でダコのように真っ赤に染まり、荒い息を吐きながらどこか未知の扉を開きかけた表情(トランス状態)に陥っていたことだった。

たった二日間。

たった二日で、最高峰のエリート少女たちは、一人のドS野郎の手によって、コンプライアンスの欠片もない完全なる『メス豚』へと調教され果てていたのである。

あまりの光景に、ミヤコは白目を剥いて泡を吹き、完全に魂が口から抜けかけていた。

その地獄のような惨状を前にして、新八の喉が裂けんばかりの、そしてこの世界のすべての常識を代弁するような特大の絶叫ツッコミが炸裂する。

「エスコートっていうより、ただの『ドS』コートだろうがァァァァァ!!!」

「何があったァァァ!! このたった四十八時間で一体全体何をしでかしたんだ、このドSバカ!!」

ゲヘナの屯所を激しく揺るがしたのは、窓硝子を粉砕せんばかりの悲鳴だった。

変わり果てた『元・精鋭』たちの無惨な姿を前に、新八の限界を超えた理性がついに決壊する。彼は常軌を逸した凶行に及んだ一番隊隊長の前に詰め寄り、その黒い隊服の胸ぐらを、指の関節が白く抜け落ちるほどの力で握りしめた。

しかし、当の沖田総悟は胸ぐらを掴まれながらも瞬き一つせず、ひどく退屈そうに肩を竦めた。まるで蝶の羽を毟って遊ぶ無邪気な子供のように、その顔に罪悪感という概念は1ミリも存在しない。

「何って……旦那たちがあまりにも過保護に喚くもんですからねィ。俺ァただ、こいつらの切実な『要望』に、親身になって寄り添ってやっただけですよ」

「どこが!! 寄り添うベクトルが完全に地獄へ向かって突き抜けてんだろ!!」

新八の悲痛なツッコミを心地よいBGMのごとく聞き流し、沖田は涼やかな流し目で、足元に這いつくばる二つの物体を見下ろした。

「こっちのヘルメットのガキは、『もっとストイックな生活がいい、私たちを甘やかすな』って粋がるもんでね。ご要望通り、全身を雁字搦めにして、無駄に高い自尊心を塵一つ残さず粉砕してやりました。そっちの火薬狂いの変態は、『爆弾を扱わせろ、スリルが足りない』ってピーチクパーチクうるせェから……」

沖田はトドメとばかりに、薄い唇を三日月のように歪める。

「喉元に致死量のデスソース付き爆弾首輪をセットして、いつでも天国(あのよ)へ昇天できる極上のスリルをプレゼントしてやったんですよ」

語ると同時、沖田の手首が手品のように僅かに動いた。

チャキッ、と無機質な鎖の音が鳴る。

「んんぅっ!?」

「あはっ……やば、また首筋がピリピリしてきたぁ……」

条件反射。調教され尽くした生々しい反応が、即座に足元から返ってきた。

「ほら、聞きなせェ。見事に需要と供給のバランスが取れてるじゃありませんか」

沖田は手元のリードを撫でながら、一切の非の打ち所がないとでも言わんばかりに言い放つ。

「つまりこいつは、俺の責任じゃありません。こいつら自身が招いた『自己責任』ってやつです」

「どこが!おもくそアンタらの責任でしょ!!」

完璧に構築された、倫理観ゼロのサイコパス詭弁。

それを論破するだけの語彙を、新八の優秀なツッコミ中枢は持ち合わせていなかった。彼はわなわなと血の気の引いた唇を震わせ、鼻眼鏡になりかけた自らのフレームを、幽霊でも見たかのように震える指で押し上げるのが精一杯だった。

一方。

そのおぞましい「ドSの錬金術」を最初から最後まで見せつけられた小隊長・ミヤコの精神は、すでに現世への未練を完全に断ち切っていた。

「……あは、は」

カサカサに乾いた笑い声が、砂となって虚空に溶ける。

彼女の瞳孔は完全に開ききり、その視線は目の前の惨状ではなく、はるか彼方の三途の川に咲く美しいお花畑を捉えているようだった。

「そう、ですよね。私たちエリートは、決して甘えを許容してはいけない。……これもすべて、愛するキヴォトスの市民をお守りするための……極めて重要で神聖な、戦術行動(ボランティア)の一環……」

己の狂気を正当化し、静かに、そして美しく壊れていく純白の少女。自己防衛本能が限界を超えた結果の、完全なる思考の放棄だった。

「ミヤコさぁぁぁん!? 戻ってきて!こっちに戻ってきてェェェ!!」

新八の涙声が空間を引き裂く。

「完全に精神のピントが『あちら側の世界』に合っちゃってるから!! 誰か、誰か早くこの子を現世に引き留めてェェ!!」

凄惨な地獄絵図を前に、膝から崩れ落ちていた新八の視界に、真っ白な画用紙がスッと差し込まれた。

『大丈夫。まだ生き残りがいるZ』

太いマジックで書かれたその文字を見上げると、そこには巨大なアフロヘアを揺らす真選組第三隊隊長・斉藤終が、一切の感情を排した虚無の瞳で佇んでいた。

「斉藤さん……ッ!」

新八の顔に、分厚い絶望の暗雲を突き破る一筋の陽光が差し込んだ。

(そ、そうか! ミユさんはあの極悪ドS(沖田)の担当じゃなくて、斉藤さんが預かってたんだった! 極度の対人恐怖症だけど、根は誰よりも真っ直ぐで優しい斉藤さん。ならきっと彼女の繊細な心に寄り添った、適切なボランティア指導をしてくれたはず……! よかった、これで小隊の全滅だけは免れーー!)

救世主の降臨に感動の涙を滲ませながら、新八は斉藤の背後へと回り込んだ。

そこにはきっと、エリート狙撃手としての誇りを僅かに取り戻した、気弱だが凛々しい少女の姿が——。

「…………え?」

ズリッ。

新八の丸眼鏡が、鼻梁を虚しく滑り落ちた。

斉藤の背後、本来ならミユが立っているべきその空間に鎮座していたのは、少女ではなかった。

キヴォトスの裏路地にでも転がっていそうな、幾度となく蹴飛ばされてベコベコに凹んだ、塗装の剥げたスチール製のダストボックス(ゴミ箱)だったのだ。

カコン。

乾いた金属音が鳴り、ダストボックスの蓋がほんの数ミリだけ持ち上がる。

そして、その暗く淀んだ深淵の底から、あるプラカードが這い出してきた。

『……ゴミ箱じゃ、ありません。ミユです、G』

ズガァァァァァンッッ!!!

新八の脳天に、見えない特大の落雷が直撃した。

間違いない、そのあのゴミ箱からしてあれはミユそのものだ。しかし、マントルを突き抜けて地球の裏側まで到達しそうなほどに沈み切った自己肯定感の低さと、何より語尾にへばりついた『謎のアルファベット』は、目の前に立つアフロの剣豪と完全に同じ不治の病(コミュニケーション障害)に感染している何よりの証拠であった。

「おー、よかったじゃねェかゴミ箱女」

その惨状を見て、銀時がパンパンと気の抜けた拍手を送る。

「自己主張が背景のモブより薄いのがタマに瑕だったが、これで少しはキャラが立ったじゃねェか。おめでとう」

「良くねェよ!!! 完全にこのアフロとキャラ被り起こして大事故になってんでしょーが!!」

新八はついに肺活量の限界点を突破し、顔面を真っ赤に紅潮させて大絶叫を轟かせた。

「ていうか『G』って何!? Zの次はG!? 一体なんの頭文字なのコレ!? ゴミか!?ゴミ箱のGか!? それとも黒光りするあのG(ゴキブリ)のことかァァ!?」

『…………違います。社会のゴミ(ゴミ)の、GですG』

「結局ゴミじゃねェか! 自己肯定感が底辺のまま、まんじりとも成長してないよ! たった二日間で、アフロとどれだけ深い精神的共鳴(シンクロ)を果たしちゃってんの!?」

新八の魂のツッコミに対し、ダストボックスの中から『私は、この二日間で知りました。斉藤さんが一日の中で、一体何をしているのかを……。そして、指導(ボランティア)の本質を……』

深く澱んだミユの独白と共に、セピア色の記憶の扉が静かに開かれる。

【回想】

それは二日前、薄暗い屯所の一室でのことだった。

冷たい畳の上に置かれた古びた机を挟んで、二人の『極度のコミュ障』が対峙していた。

アフロヘアの巨漢・斉藤終の放つ圧倒的な無言のプレッサーに圧し潰されそうになりながらも、ミユは震える手を膝の上でぎゅっと握り締め、意を決して顔を上げた。

「……その、RABBIT小隊でスナイパーやってます、ミユです……よろしくお願いします」

蚊の鳴くような、今にも消え入りそうな声。しかし、その瞳にはエリートとしての、そして万事屋の銀時に背中を押された者としての、確かな決意の炎が灯っていた。

「この……この私を、成長させてください!」

自分を変えたい、変わらなければ学園の未来はない。少女の悲壮なまでの懇願。

それに対する斉藤終の返答は——

「……………………」

沈黙だった。

終は彫刻のように微動だにせず、ただじっと机の木目を見つめ、時折ミヤコと顔を合わせる(視線を彷徨わせる)だけだった。

(チュン……チュン……)

窓の外から、爽やかな朝の鳥のさえずりが聞こえてくる。

二人の間には、一切の会話がない。ただ、静寂だけが部屋を支配していた。

(カァ……カァ……)

気がつけば陽は傾き、不穏なカラスの鳴き声がゲヘナの空に響き渡る。

しかし、二人はまだ同じ姿勢のまま、ピクリとも動いていなかった。

(リン……リン……)

やがて夜の帳が下り、静まり返った屯所に寂しげな秋の虫の鳴き声が輪唱を始める。

暗闇の中、ただ二人の気配だけがそこにあった。発せられた言葉は、ゼロ。

——そして場面は唐突に変わり、深夜の便所の前。

「……………………」

暗い廊下に、無言で用を足し、ジッパーを上げる金属音だけが虚しく響く。

その間も、ミユは忠実なボディーガードのように、あるいは背景の壁紙の一部になりきって、外でただじっと無言で待機し続けていた。

用を足し終え、のっそりと出てきた斉藤終。彼はミユの姿を視界に捉えると、深く、満足そうに目を閉じ、そのまま微動だにしなくなった。

「…………Z」

立ったまま、寝た。

限界を超えた対人ストレスの果てに、アフロの侍は立ったまま完全に意識を飛ばした(睡眠モードに移行した)のである。

「…………」

それを見つめるミユの瞳に、未だかつてない深い『悟り』の光が宿る。

——何も言わなくていい。何もしなくていい。ただそこに存在し、世界のノイズを消し去る。それこそが、この無口な達人の領域なのだと。

【回想終了】

ガコン、と再びゴミ箱の蓋が揺れる。

『……これが、私たちの「成長」だったですG』

胸を張って(ゴミ箱の中で)言い放たれた、あまりにも壮大で、果てしなく中身の無い二日間の成果。

「ただの暇な時間じゃねェかァァァァァ!!!」

新八の裂けんばかりの絶叫ツッコミが、ついに屯所の天井を突き破った。

「何が『成長』だ! 何が『ボランティアの本質』だ! ただお互いに喋る勇気がなくて丸二日完全フリーズしてただけでしょ!!」

ゼェゼェと肩で息をする新八。

しかし、そんな彼の魂の咆哮などどこ吹く風。

カコン、と乾いた音を立ててゴミ箱の蓋が少しだけ持ち上がった。

そこから、泥棒のようにキョロキョロと覗くミユの怯えた瞳と共に、真っ白なプラスチック製の四角い板——プラカードがスッと突き出される。『丸投げしてませんG。私は、知ろうとしたんですG。無口な彼が、どうやってこの過酷な世界で存在(キャラ)を確保しているのかを——』

「いやプラカードォォォ!!」

新八は、ゴミ箱から生えてきたその見覚えのありすぎる意思疎通ツールに絶叫した。

「君いつからそれ持ってんの!? ていうか喋ってくれません!!」

そんな新八の叫びを完全に無視し、ゴミ箱の奥底に潜む少女の記憶は、静かに深夜へと巻き戻っていく。

【回想シーン】

しんしんと更けゆくゲヘナの夜。

屯所の片隅で、アフロ・斉藤終は完全に立ったまま意識を飛ばしていた。

彼の頭上には、まるで漫画の効果音のように、律儀なアルファベットの羅列が浮かび上がっている。

「ZZZZZZZZZ」

そしてその足元。

ひしゃげたダストボックスの暗闇の中から、完全にシンクロする形で、寝息の代わりに不気味な文字列が漏れ出していた。

「G G G G G G G」

ただひたすらに、無音のまま静かに世界からログアウトしていく二つの生命体。そこには、意思の疎通も、成長の兆しも、何一つとして存在していなかった。

【回想シーン終わり】

カチャカチャと慌ただしくゴミ箱の中で音がしたかと思うと、一瞬で裏返されたプラカードが再び突き出される。

『……何を話しかけても、Zしか返ってこなかったんですG』

「お前も『G』としか返してねェだろー!!」

新八のツッコミのキレが、疲労と共にさらに鋭さを増していく。

「何が『話しかけても』だ! 夢の中でZとGが縄張り争いしてただけだろ! 会話のドッジボールすら始まってねェよ!!」

しかし、ミユのプラカードによる猛抗議(?)は止まらない。

『でも、彼は一日中寝ているわけではありませんG』

『いつも、その大きな手にしっかりと握り締めていましたG。それこそが——』

『プラカードでしたG』

「じゃねェだろォォォォォ!!!」

新八は喉がちぎれんばかりに大絶叫した。

「アンタらに関しては、プラカードでしか意思疎通できない、あの謎の白い怪物の系譜(エリザベス)を勝手に受け継いじゃっただけだから!! 何が『Zの共鳴』ですか!ただの紙とマジックの無駄遣いだよ!!」

そう。思い返せば、このアフロ侍とゴミ箱少女は、登場したその瞬間から一言も声を発していなかった。地の文でどれほど重々しく描写されようとも、二人の間で行われていたのは、ただの「無言の板の提示」だったのである。

そんな新八の魂のツッコミを涼しく受け流し、ミユはどこか誇らしげに次の板を掲げた。

『私と彼は、別にキャラが被っているわけじゃありませんG』

『いつも寝ているわけでもないG』

『彼は、私が『キャラとして弱い』ことに、きちんと進むべき道を示してくれたんですG』

「え……?」

あまりにも真剣なそのメッセージに、新八はほんの一瞬だけ毒気を抜かれた。

セピア色に染まる、二人の『本当の指導(ボランティア)』の記憶が、再び映し出される。

【回想シーン】

屯所の薄暗い一室。

沈黙の限界を迎えた机を挟み、斉藤終はかつてないほど真剣な眼差しでミユを見つめていた。

そして、その無骨な手で、サラサラと迷いのない筆跡でプラカードを書き上げ、静かに提示した。

『副官。キャラが弱いなら、まずは他のキャラが『持っていないもの』を持つことが大事だZ』

(あ……)

新八は、思わず胸の内で声を漏らした。

(ア、レ……? なんか、めちゃくちゃまともなことを言っている感じがする……。さすがは数々の修羅場を潜り抜けてきた真選組の隊長。個性が爆発するキヴォトスという世界において、キャラの薄いミユちゃんが生き残るための、本質的な自己アピール論を説いている……!?)

終のプラカードは、さらに熱を帯びていく。

『話すことに抵抗がある、恥ずかしいと思うなら——』

ごくり、と新八が固唾を飲んで、その先の『答え』を待った。

無口なスナイパーが、この残酷な世界で輝くための、究極の戦闘理論。達人が授ける至高の戦術とは——。

『プラカードで会話をし、語尾にアルファベットをつけるといいと思うZ』

「ただの感染源じゃねェかァァァァァ!!!」

新八の絶叫が、トリニティーの屯所を爆破せんばかりの勢いで炸裂した。

「何がプロデュース論だ! 自分の奇行を後輩に押し付けて、完全なるディストピアを生み出しただけだろ! そんな道、誰も進みたくねェよ!!」

カコン、と再び小気味よい音を立てて蓋が持ち上がり、ゴミ箱の暗闇からスッと新たなプラカードが突き出された。

『見てください。私にツッコミが飛んできたG。私のキャラがたってきた証だG』

「何が『キャラがたってきた』!!!???」

新八の丸眼鏡が、蓄積された怒りと精神的疲労のあまり、今にも臨界点を突破してレンズが四散しそうな勢いでズレ上がった。彼はゴミ箱の前に膝をつき、狂ったように床を叩きながら絶叫する。

「それ! ツッコミっていう名の『純然たる困惑と拒絶』だからね!? ただの公害に対する真っ当なクレームだから! っていうか何そのオーラ!? スポットライトを浴びて完全燃焼したトップアイドルみたいな、やり切った感をゴミ箱の隙間から醸し出すのやめてもらえます!? 全然キラキラしてないから! ただの自治体に回収を拒否された不法投棄だからそれ!!」

ゴミ箱の中から漏れ出る、謎の達成感に満ちた熱い吐息。

肉体的に調教されたサキとモエ、そして精神的にバグったミユ。RABBIT小隊の全滅を確定させる「Gの衝撃」の前に、新八の喉はとうに悲鳴を上げていた。

しかし、その絶叫が木霊する喧騒のすぐ隣で——。

一帯の空気が、まるで真冬の氷河のように一瞬で凍りついた。

「……知ってますか? 新八さん」

「ひっ……!?」

新八の背筋に、ゾクゾクとするような戦慄が駆け走る。

恐る恐る振り返った先。

そこには、白い灰のようになった抜け殻のまま、ゆらりと幽霊のように佇む小隊長・ミヤコの姿があった。

「ウサギは……寂しがり屋で、死んじゃうんですよ」

不気味なほどに凪いだ、抑揚の一切ない声音。

彼女のルビー色の瞳からは完全にハイライトが消え失せ、底知れぬ漆黒の深淵へと変貌していた。頭上の純白のウサギ耳は力なく垂れ下がり、まるで主の精神の崩壊と同期するように、ピク、ピクと弱々しく不規則な痙攣を繰り返している。

「SRTの看板を失い、大人の都合に振り回され、ようやく見つけたボランティアの旅路の果てに……仲間たちはみんな、私を置いて遠い世界(ドMと爆弾魔とゴミ箱)へ行ってしまいました……」

ミヤコは壊れた人形のようなぎこちない動作で、自身の胸元をきつく締め上げた。

「寂しいです、新八さん。胸が、とっても痛いんです。あはは……これじゃあ私……本当に死んじゃいますね……」

あまりにも切なく、あまりにも理不尽な、絶望の脳内変換。

過酷な現実に心が耐えきれなくなった結果、優秀な戦術指揮官の頭脳が弾き出したのは、自らを悲劇の童話の主人公へと仕立て上げる、あまりにも悲痛な自己防衛システム(現実逃避)だった。

「ミヤコさぁぁぁん!! 現実(リアル)に帰ってきて! お願いだからそっちの三途の川を渡らないで!!」

新八が涙を流しながら叫ぶ。

エリート少女たちの尊厳を木っ端微塵に粉砕した真選組の面々と、その原因を作った天然パーマの男。

地獄絵図のド真ん中で、坂田銀時は「あ、これマジのやつだわ」とばかりに、引き攣った顔で激しい冷や汗を流し始めるのだった。

「いや待て早まるな! まだ人生諦めるにゃまだまだ早いって! ほら、お前もさっさとそっちの『向こう側』に行っちまえば楽になれるから! これ、これ持ってさァ!!」

この期に及んで、坂田銀時という男のクズの本能は、いささかも鈍ってなどいなかった。

大滝のような冷や汗を流して慌てふためきながらも、彼は着流しの懐へと手を突っ込み、あろうことか先ほどミヤコが全力で茂みへと不法投棄したはずの**『一直線に切り込みの入った半透明の物体(使用済み)』**をスッと差し出したのだ。どこで拾い直してきたのか、そのぬらぬらとした質感は夜目にも明らかだった。

「ほら、これを持っていっそのこと『こんにゃくの妖精』として新たなキャラを確立させれば、寂しくなんかねェだろ!? ウサギじゃなくなれば死なねェから! むしろこれでお前が新たな真選組のナンバーワンに——」

「ただの元凶じゃねェかァァァァァ!!!」

新八の、もはや怨嗟の呪いとも思える特大の絶叫が、ゲヘナの夜空の星々を撃ち落とさんばかりの勢いで炸裂した。

彼はすっ飛んだ眼鏡を片手でギリィと掴み直し、狂ったように銀時の襟髪を掴んで激しく前後に揺さぶる。

「何が『早まるな』ですか! 何が『妖精として確立』ですか! 救いの手を差し伸べるフリをして、純真な女子高生に最後の致命傷(トドメ)を刺そうとしてんじゃねェよ!! アンタがやってることはただのセクハラ付きの死体蹴りだからね!? この地獄のドミノ倒しを始めた張本人が、どの面下げてアドバイス送ってんだこの天然パーマァァァ!!」

「痛っ、痛てぇよ新八! 襟が、銀さんの大事な首元が締まって——げふっ」

「締まりきってそのまま社会的に抹殺されてろ!」

怒り狂う眼鏡の猛攻を受けながら、銀時は泡を吹いて白目を剥き始める。

しかし、そんな二人の決死のドタバタ劇が繰り広げられてる中突如としてエリートな革靴の足音が響き渡った。

真選組の黒い隊服とはあまりにも対照的な、夜の闇に白々と浮かび上がる純白の外套。その男は、手元の携帯端末の画面を無表情で見つめ、親指をせわしなく動かしながら、抑揚のない声で言葉を紡いだ。

「おや? 何をやっているのですか? 皆さん」

「……佐々木……ッ!!」

土方が噛み潰したタバコを地面に吐き捨て、即座に腰の刀の柄へと手をかけた。親指でハバキを押し上げるカチリという金属音が、張り詰めた空気を切り裂く。その顔には、近藤の変態行為を見た時とはまた違う、ドス黒いまでの嫌悪と、一分の隙もない本能的な警戒の色が混じった青筋が浮かび上がっていた。

「テメェ……何しに来やがった……!」

現れたのは、名門出の「エリート」のみで構成された治安維持組織・見廻組の局長、佐々木異三郎であった。

「しに来たではありませんよ、私たちエリートはあなた方に用があったのではない。彼らメル友に用があって来たのです」

土方の放つ、喉元を突き刺すような明確な殺気を、佐々木は浴びるほどに受け流す。そして、画面から一切目を離さないまま、トントンと高速でメールを打ち続け、その淡々とした声を万事屋へと向けた。

「坂田さん。話と違うじゃありませんか。エリートであるはずのSRTのウサギさんたちのボランティア(育成)は、我々見廻組が請け負う手筈だったでしょう?」

ピキィィィン、と。

銀時の背筋に、この日最大級の戦慄が走った。

「あ、アレ? そうだっけ? おかしいなァ、銀さん最近ちょっと物忘れが激しくてさ……。いや、俺としてはね? そっちの小綺麗なエリート組織に行くよりも、まずはこっちの泥臭い職場でキャラを立たせる方が、今後の芸能界(キヴォトス)を生き抜くために大事だと思ったんだよ、ハハ、ハ……」

あろうことか、この天然パーマは真選組と見廻組の双方にRABBIT小隊の身柄を売り込み、二股をかけて利益を得ようとしていたのだ。冷や汗を滝のように流しながら、のらりくらりと言い訳を並べる銀時。

しかし佐々木は、感情の読めない冷徹な瞳をようやく画面から離すと、へにゃりとウサギ耳を折って壊れかけているミヤコへと視線を移した。

「ほんと、頼みますよ坂田さん。見てください、あなたたちが下品な泥水を飲ませるから、せっかくの最高級ブランド(エリート)が台無しだ」

佐々木は片手で携帯をポケットに収めると、感情を一切排した声で、しかしどこか確信犯的な響きを乗せて言い放った。

「知ってますか?ウサギというのは、寂しいと死んじゃうんですよ? ……まぁ、うちのメールの受信箱(センター)に比べれば、いくらかマシな寂しさでしょうがね」

「そこ!? 最後の最後で自分のメル友がいない自虐(悲哀)ぶっ込んでキタよこの人!!」

新八の鼓膜を破らんばかりの咆哮が、見廻組局長の登場によって氷点下まで凍りついていた屯所の空気を、力任せにひっぺがした。

「何が『センター問い合わせ』ですか! 格好良く純白の外套なびかせて登場しといて、自分の受信箱の寂しさをウサギの命と天秤にかけないで! メールが一件も届かないのは世界や時代のせいじゃなくて、ひとえにアンタの性格とコミュ力に致命的な問題があるからだからね!?」

しかし、佐々木は新八の血の滲むような魂の叫びなど一瞥もせず、ただ淡々と携帯のキーを親指で叩き続けている。パチパチ、パチパチとプラスチックが擦れ合う無機質な高音が、異様な静寂に包まれた屯所に妙に大きく響き渡った。

「……おい、万事屋ァ」

地を這うような、極低温の殺気を孕んだ声。

土方が青筋を幾条も浮かべた顔を、ギチギチと軋むような不気味な動作でゆっくりと銀時に向けた。噛み締めた奥歯が今にも砕け散りそうなほど、その表情には怒りの劫火が燃え盛っている。

「テメェ……俺たちを都合のいい更生施設扱いした挙句、あっちのエリート気取りの白ブタ(見廻組)にまで二重で身柄を売りつけるだぁ? 人の胃壁をマッハで削りながら、裏でえげつねェ二重帳簿つけて私腹を肥やしすたぁいい度胸してるじゃねぇか……」

「いやいやいや! 違うのよ落ち着いてトシさん聞いて?これには海より深く、宇宙より広大な大人の事情というか、ほら、ここに読みにくるのってもう本編終わらした暇人ばっかだろ?そんな暇人を暇させないためにもオリジナル要素強めの話にしようとした結果がコレーー!!」

「ただの作者のえごじゃねぇか!」

銀時はいつものように飄々とした様子で落ち着かせようとするも、土方ひ止まらず、じりじりと後ずさりして出口を探し始める。だが、背後を振り返った瞬間、彼の希望は潰えた。いつの間にか無言で抜刀した真選組隊士たちが、一寸の隙もない人間の壁を築いていたからだ。退路は、完全に断たれていた。

「見苦しい言い訳は受信箱(ゴミ箱)の奥底にでも捨てておきなさい、坂田さん」

佐々木が冷徹な視線をようやく携帯から外し、精神の境界線で佇むミヤコの前へと一歩踏み出した。純白の外套が夜風にひらりと翻る。

「フン……あのような薄汚れた野良犬の群れに預けるから、最高級の血統書付き(サラブレッド)たちが、ただの駄馬に成り下がるのです。ミヤコさん、でしたね。安心しなさい。本物の『エリート』の何たるかを、エリートの中のエリートである我々のチームがエリート的かつスマートに教育して差し上げましょう。まずは手始めに私と、朝の起床挨拶から夜のパジャマの柄の報告、さらには一日のドーナツの感想の提出まで、密なメールのやり取り(業務連絡)から始めます」

「メールの頻度と内容が過剰すぎ!エリートじゃなくてただのネカマのストーカーだよそれ!!」

新八が間髪入れずに鋭い楔を打ち込む。

しかし、その「エリート」という、今の彼女にとってあまりにも甘美で救いのある響きに、崩壊寸前だったミヤコのルビー色の瞳が、ピクリと僅かに焦点を結んだ。

「エリート……。本物の……組織……」

ミヤコは折れ曲がったウサギ耳を力なく揺らし、暗闇の中で蜘蛛の糸を見つけた罪人のような目で、佐々木の白い制服をじっと見つめる。

「そうです……私たちはSRT特殊学園……泥水を嬉々としてすする万事屋や、こんにゃくを執拗に押し付けてくる発情ゴリラとは違う……選ばれた存在……。あの、佐々木さん、私を……私たちの小隊を、真っ当な光の世界へ導いてくれますか……?」

「ええ、もちろんです。我がチームの教育は完璧かつまさにエリートそのものですよ」

佐々木は感情の一切ない鉄仮面のような顔のまま、ポンと携帯の送信ボタンを押した。

その直後、屯所の影から、まるであらかじめそこに存在していたかのように、もう一人の見廻組の影がヌッと音もなく現れた。

「……異三郎。エリートのドーナツ、買ってきた。もしかして新入り?」表情を一切変えないままドーナツを小さく一口齧り、モグモグと口を動かしながら、奈落の底を這うような平坦な声でぼそりと呟いた。

「……異三郎。あのウサギたち、もう手遅れ。脳みそがゴリラ(真選組)の出汁で、ドロドロに茹で上がってる」

 

「だからこそですよ、信女さん。ここでエリートの中のエリートである我々が、彼らを社会復帰させることで、凡人たる彼らとの絶対的な差を見せつけることができる」

暗闇に浮かび上がる携帯のブルーライトが、佐々木異三郎の無表情な顔を冷たく照らし出している。

彼の親指は狂いなき精密機械のようにキーパッドを打ち続けながら、淀みないトーンでエリート論を語り続けた。

「どれほど泥水に塗れ、野良犬どもの悪臭が染み付こうとも……我が完璧(スマート)な教育プログラムの手にかかれば、彼らは瞬時にして高潔なサラブレッドへと生まれ変わる。それこそが、神に選ばれしエリートの義務であり、あの隊服にマヨネーズを親の仇のようにぶっかけることしか脳のない未開人どもに対する、圧倒的な格の違いの証明(マウンティング)となるのです……っと」

ピッと。

暗闇に、軽快な送信音が鳴り響く。

「よし。今の一連の高尚なセリフ、メル友の募集掲示板に投稿完了です」

「何がエリートだ!! ただの寂しがり屋のぼっちだろうがァァァ!!!」

土方の喉が張り裂けんばかりの怒声が、ゲヘナの空気をビリビリと震わせた。

己のアイデンティティであり魂の栄養源でもあるマヨネーズを「未開人」と貶された怒りが、導火線に完全に火をつけてしまった。額に幾重もの青筋を浮かべ、腰の刀を今にも引き抜かんとする鬼の副長。

しかし、佐々木はその沸騰する殺気をそよ風のように受け流し、悠然と携帯を懐へと仕舞い込んだ。

「そういうわけなので、彼らの身柄は我々エリートが請け負います。あなた方のような野蛮な組織では、このウサギたちは本当に死んでしまいますからね」

「おい待て!! 散々俺たち真選組をコケにしておいて、このままタダで下がれると思ってんのかァァ!!」

チャキッ!!

真選組隊士たちが一斉に抜刀し、見廻組の二人を完全に取り囲む。一触即発。ゲヘナの路地裏が、文字通り血の雨が降る戦場へと変貌しようとした——その時だった。

「まぁまぁまぁ! 土方くんもそんなにキレないキレない。マヨネーズの過剰摂取で血圧上がってんだから、ここで血管切れたらマジで死んじゃうよ?」

先程まで二重契約がバレて絶体絶命の窮地に立たされていたはずの坂田銀時が、突如として胡散臭い揉み手をしながら、土方の前にスッと立ち塞がった。

そして、光の速さで手のひらを返し、佐々木に向かって見事なまでの営業スマイル(ゲス顔)を向ける。

「オタク、引き受けてくれるんでしょ? いやァ助かった! 実は俺も、この泥臭いゴリラの集会場に可愛いウサギちゃんたちを預けるのは、教育上どうかと思ってたところなんだよねェ!」

「アンタが連れてきたんだろうがァァァ!!」

新八と土方のツッコミがハモるが、銀時は全く意に介さない。

自分に降りかかるであろう真選組からの制裁と、今月の家賃の支払いをすべて見廻組に丸投げできると踏んだこの男の「逃げ足の速さ」と「クズさ」は、まさにキヴォトスのどの兵器よりも凶悪であった。

「……あ、あははは。……私は……」

「んんーっ! んんっ!」(縛られたままジタバタ)

「あは……起爆スイッチ……」

『見廻組には行かないG。ゴミ箱は私の絶対領域G』

精神が崩壊しきったミヤコ。

肉体を拘束され、調教されかけたサキとモエ。

そして、ゴミ箱という名の永遠の揺りかごからプラカードを掲げるミユ。

彼女たちが求めていたのは、学園の再建と、正義の証明だったはずだ。

しかし、大人の事情と理不尽な世界(万事屋)に巻き込まれた結果、RABBIT小隊は今、ドS警察(真選組)からメル友募集警察(見廻組)という、新たな地獄の釜の底へと移送されようとしている。

果たして、誇り高きウサギたちは、この常識が一切通用しない狂った大人たちの手から逃れ、無事に正義を取り戻すことができるのか?

それとも、このままキヴォトスの底辺で、完全なるお笑いキャラ(ギャグ時空の住人)として魂を売り渡してしまうのか!?

——RABBIT小隊の明日は、どっちだ。

 

 





差出人sasaki. elite20240908@ Gintama.com
Re: 次回予告

皆さん、お待たせしました。次回よりエリートによるエリートのためのエリートな教育をお見せしましょう。

絶対読みに来てね

じゃないと私、死んじゃいますよ?


【挿絵表示】

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
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  • ナギサ
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