透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
大理石の床と無機質な調度品に囲まれたその冷たい執務室の中で、ヴァルキューレ警察学校の公安局局長・カンナは、直立不動のまま冷や汗を流していた。
「……………」
重苦しい沈黙が室内に淀む。
その沈黙を破ったのは、豪奢なデスクの向こう側で優雅に紅茶を傾けていた少女——連邦生徒会防衛室長の不知火カヤの、甘く、しかし温度の一切感じられない声。
「お疲れ様です、お待ちしてましたよ」
「………」
常に糸目のように閉じられたカヤの笑顔を前に、カンナは奥歯を強く噛み締める。公安局のトップとして数々の修羅場を潜り抜けてきた彼女でさえ、この少女の放つ底知れぬ政治的な威圧感の前では、蛇に睨まれた蛙も同然だった。
「カンナ、そんなに緊張しないでください。何もあなたを虐めたくて呼んだわけではありません」
カヤはティーカップをソーサーにコトリと置き、クスリと品良く微笑む。
「ただの進歩確認ですよ。それで、『子ウサギタウン』の建設についてはいかがですか?」
コウサギ公園一帯の再開発計画。
その進捗を問われ、カンナの背筋に冷たいものが走る。彼女は視線を僅かに彷徨わせ、絞り出すように口を開いた。
「それが、付近で野宿している者たちが多く……。建物の撤去作業が、少々遅れており……」
「……はい?」
その瞬間。
室内の空気が、重さを持って凍りつく。
常に和やかに閉じられていたカヤの両目が、スッと見開かれたのだ。
そこから覗く、冷酷さを宿した瞳が、カンナを真っ直ぐに射抜く。
「それはつまりこういうことですか? キヴォトスの治安を担うヴァルキューレ警察学校……その精鋭である公安局が、放浪者たちの立ち退きに苦労していると?」
「で、ですがその、どうやら普通ではあり得ないような銃火器で武装しておりまして……!」
カンナは必死に弁明を口にする。相手はただのホームレスの集団ではない。異常な戦闘力を持つ質量兵器として振り回される謎のサングラスのオッサンなど、常識の範疇を超えたイレギュラーがひしめいているのだ。
「こちらの装備では、なかなか対抗しきれず……。それに加え、あのSRTの生徒たちも先生と対立することなく公園に残り続けているため……」
「あら、それはつまり不測事態の想定されていなかった私のせいだと?」
カヤの首がコテンと傾く。
まるで弱者のような可憐な声音。しかし、それはカンナの逃げ道を完全に塞ぐ、致命的な誘導尋問だった。
「し、失礼しました! そのようなことは決して……!」
カンナは血相を変え、深く頭を下げた。これ以上の言い訳は、自身の首を文字通り絞めるだけだと悟る。
そんなカンナの必死の態度を見て、カヤはふぅと短くため息をつき、再びいつもの『優しい糸目の笑顔』へと表情を戻した。
「カンナ、私は責任感のある方が大好きです。此処の担当となったあの『キャバ親父』のような方はごめんなんです」
防衛室長としての権限を傘に好き勝手振る舞う、異世界から来た警察トップの顔を思い浮かべたのか、カヤの言葉には一瞬だけ生々しい嫌悪感に滲む。
しかし、彼女はすぐに声音を冷徹な官僚のそれへと戻す。
「私は私の、あなたはあなたの責任をそれぞれ果たしましょう」
「……ッ」
「万が一、その責任を放棄されてしまうと……。SRTみたいになってしまったとしても、私からは何も言えませんよ?」
静かな脅迫。
『成果を出さなければ、ヴァルキューレ警察学校もSRTのように解体に追い込む』という明確な意思表示だった。
「…………」
カンナの喉がヒュッと鳴る。もはや、彼女に反論の余地は残されていなかった。制服の袖を強く握りしめ、ただ無力感に苛まれながら俯くことしかできない。
その屈服を見届けたカヤは、満足げに口角を吊り上げる。
「ふふっ、では私から一つアドバイスを差し上げましょう」
紅茶の香りが漂う冷たい執務室で、カヤの毒を含んだ囁きが、カンナの耳へと静かに注ぎ込まれていった。
ーーーーーーーーーーーーーー
深い不快足掻いて参上
苦い願い 砕いて無情
暗いCRY 湿っぽい現状
幼気な理想は一体どこ?
心の負傷
常にロードショー
夢と現実のズレで「チクショー」
そろそろでしょ?
反撃の狼煙上げましょう
したり顔する曲者たちを今度こそ返り討ちにしてやれ
LAI LAILA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAILA LAI LAI
魂を
LAI LAI LA LAI LAI
燃やしていけ!
万の宴で舞い踊って
互い違い 迷ったダンジョン
伝え難い 孤高の焦燥
うざいくらい上がったテンション
「控えめに言って、マジ、神だね」
そう言われるほど斬新な
0点か100点のイメージ携えて切った張ったの浮世で
やんちゃに自分(おのれ)奏でましょうや
LAI LAI LA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAI LA LAILAI
熱い血を
LAI LAI LA LAI LAI
たぎらせて!
破綻した思想を剥ぎ取る
爆ぜるか否か
覚悟を決める
その決意が本当の刃したり顔する曲者たちを今度こそ返り討ちにしてやろう
さぁさぁ皆の衆!
やっちゃって!
LAILAI LA LAI LAI
どこまでも
LAI LAI LA LAI LAI
超えていけ
LAI LAI LA LAI LAI
魂を
LAI LAI LA LAI LAI
燃やしていけ!
万の宴で舞い踊って
台風が過ぎ去り、ようやく穏やかな晴れ間が戻ってきた子ウサギ公園。
すっかり水が引いた広場のベンチで、坂田銀時は死んだ魚のような目を胡乱に細め、目の前の光景を指差した。
「あの〜何で呼ばれたか聞いても?」
銀時の視線の先。
そこには、小隊長であるミヤコが、自らの膝の上に真っ白でふわふわな毛玉ーー小さな『ウサギ』を乗せ、親鳥のように大切そうに撫でている姿があった。
「何、そのウサギ。」
「はい、このウサギ、ぴょんこを飼うのでサポートをお願いしたいなと相談に」
「サラッと名前つけてるんだけど、メロメロなんだけどこの子。」
ミヤコは、ウサギの柔らかな背中を撫でながら、真面目なトーンで答えた。その表情は、普段の冷静沈着なエリート隊長のそれとは打って変わり、完全に『推し』を前にした限界オタクのようにとろけている。
「へぇ、ウサギを飼ったんですか。可愛いですね」
横から覗き込んだ新八が、笑みを浮かべて相槌を打つと、ミヤコの瞳にパァンッと光が宿った。
「分かりますか? ウサギは可愛い生き物なんです」
新八の何気ない感想に、ミヤコは身を乗り出して熱弁を振るい始める。
「あの可愛らしい前足と、ツンと立ってる耳……本当に一日中見てて飽きません」
目をキラキラと輝かせながら、ウサギの魅力を語るその姿には、一切の隙がない。
「公園近くのペットショップで、お迎えしたんです。お登勢さんのところで貯めていたお金を使って」
スナックでのアルバイトで稼いだ、貴重な給料。
それを、自身の生活費や装備の拡充ではなく、愛玩動物の購入という極めて個人的な欲求に全額ブチ込んだという、エリートらしからぬ衝撃の事実。
しかし、銀時はミヤコのウサギ愛に感化されるどころか、なぜか額に嫌な汗を滲ませ、ワナワナと唇を震わせ始めた。自分の中の「万事屋のアイデンティティ(マスコット枠)」が脅かされていると、謎の危機感を抱いたのだ。
「あっそ、そう? 可愛らしいね〜可愛いね〜」
銀時は焦ったように早口でまくしたて、大人気なく対抗心を燃やし始める。
「でも先生も負けてないから! 銀さんたちには定春がいるから、犬だから、犬派、猫派の犬だから断じて負けてないからね! 決してキャラ負けしてないからね!」
早口で謎の『犬派アピール』を連呼し、定春の優位性を必死に主張する、三十路手前の大人。
「ペット相手に何ムキになってんですか……」
新八が、頭を抱えながら心底呆れた声でツッコミを入れる。
ひとしきり張り合った後、銀時はふぅと一息つき、
「で、そのウサギ飼ったんだろ? じゃあそれでお終い。一体何の用があって………」
「実は、このぴょんこ。放し飼いをしてるんですけど、今危機的状況に置かれていましてーー」
白ウサギをギュッと抱きしめ、ミヤコは青ざめた顔で背後を振り返った。
その視線の先ーーテントの陰から、三つの異様な気配が、音もなく這い寄ってきていた。
「ウサギ鍋とか美味しそうネ」
よだれをダラダラと垂らし、目を血走らせる少女・神楽。
「ああ、ジビエ料理はキャンプの醍醐味。自給自足でメリットしかない」
サバイバルナイフをチャキッと鳴らし、獲物を品定めする狩人の目をしたサキ。
「クヒヒ……お肉。鍋、いい出汁が取れそう」
すり鉢とすりこぎを構え、舌なめずりをしながら邪悪な笑みを浮かべるモエ。
彼女たちの瞳に映っているのは、愛らしいペットなどではない。
連日の貧しい食生活によって限界を迎えた胃袋を満たすための、最高級の『新鮮な生肉(タンパク質)』でしかない。
背後から迫り来る肉食獣(プレデター)たちの凄まじい殺気に、ミヤコはぴょんこを庇うようにブルブルと震え上がる。
「一歩間違えたら食糧庫行きになりそうなんです」
「いや、一歩間違えなくても秒で鍋行きだよね? 目ェ血走っちゃてるよ!完全に野生の捕食者(プレデター)の目ェしちゃってるよ!!」
じりじりと包囲網を狭めてくる三人の飢えた猛獣を前に、銀時はたまらずツッコミの咆哮を上げた。
しかし、狩猟本能に火がついた彼女たちの耳には、そんな大人の正論など届かない。
「落ち着け、ミヤコ」
サキが、手にしたサバイバルナイフをチャキ、チャキと規則正しいリズムで鳴らしながら、語りかける。
「これはSRTの生存戦略の一つ。まだ鍋にすると決まってないから安心しろ。ただ食糧難になった時の想定をしてだな」
「いや、全く落ち着けないんですけど。準備満タンなんですけど、」
新八が、ギラギラと光るナイフの刃先から目を逸らしながら、引きつった声で震え上がった。
「容易に想定出来るんですけど……」
これ以上ここに置いておけば、間違いなくこの白ウサギはネギと一緒に煮込まれる運命にある。
銀時はやれやれとため息をつき、頭を掻き毟りながら極めて現実的な解決策を提示した。
「要するに放し飼いなんてするから、野生のウサギと間違えられて鍋にさせられるんだろ?」
呆れたようにミヤコを見下ろす。
「だったらババアんとこに預けりゃ良いじゃねぇか。あそこなら屋根もあるし、少なくともこいつらみたいに非常食扱いする奴はいねェよ」
しかし、ミヤコは腕の中の『ぴょんこ』をさらに強く抱きしめ、気まずそうに目を伏せた。
「それも考えてみたんですが……」
「流石に衛生管理上厳しいって……」
飲食店であるスナックでの動物の飼育は、保健所の指導的にもNGが出たらしい。それはもっともなはなしである。だが、ミヤコの言葉にはまだ続きがあった。
彼女はチラリと銀時を一瞥し、一切の感情を排した冷ややかな声で付け加えたのだ。
「先生のところは、その……色々と変な病気貰ってきそうな感じで選択にありませんし」
「…………」
数秒の、完全なる沈黙。
風が吹き抜ける公園で、銀時はゆっくりと首だけを新八の方へと向けた。
「おい、この子サラッと先生のこと貶した? 貶したよね? 今、バイ菌扱いしたよね?」
「はい、事実ですから」
新八がフォローを入れる暇もなく、ミヤコが即座に、コンマ一秒の躊躇もなく首を縦に振った。
「先生の足の臭いが移ったりしたら、ぴょんこが可哀想ですから」
「なにお前、銀さんの足の臭いどんだけ致死量の猛毒だと思ってんの? そんな臭くないからね!ちゃんと洗ってるからね!ファブ○ーズで除菌・消臭できるレベルの微香性だからね!?」
大人としての威厳をへし折られ、ただの汚物扱いされた銀時の堪忍袋の緒が完全に弾け飛ぶ。
彼は血走った目で背後を振り返り、自らの陣営にいる最強の捕食者へと容赦のない号令を下す。
「おい、此処に定春連れて来い」
「晩飯は『子ウサギ』だって伝えとけ」
「アイアイサー!!」
ウサギ肉(タンパク質)にありつけると確信した神楽が、顔面をヨダレまみれにしながらビシッと敬礼し、万事屋に向けて走り出そうとする。
「オイィィィ! 器小さすぎ!!」
慌てて新八が銀時の腰にすがりつき、全力で引き留めにかかった。
「受け止めようよ、これぐらい! 鍋のような大きい器で受け止めましょう!?」
「離せ新八! 俺の足は微香性だ! フローラルな香り漂う大人の足だァァァ!!」
「誰もそんなこと言ってませんよ! 三十路手前のおっさんが女子高生相手に何マジギレしてんですか!!」
ギャーギャーと醜い身内揉めを始める万事屋たち。
そんな大人たちの次元の低い争いを見下ろしながら、ミヤコはコホン、と小さく咳払いをした。
「とまぁ、冗談は置いといて」
「え、冗談だったんですか?」
新八がホッと胸を撫で下ろし、銀時も鼻で笑いながら肩の力を抜いた、その時だった。
ミヤコは瞳をスッと細め、真顔で言い放った。
「いえ、さっきのは4/3ぐらい本当です」
「100%超えてんじゃねェかァァァ!! 分子が分母ぶち抜くくらい汚物だと思ってんのかテメェは!!」
あまりの言い草に銀時は抗議するが、ミヤコはそれ以上銀時の足の臭い(微香性)について追及することはなく、真剣な面持ちで声のトーンを一段階落とした。
「……本当の相談内容は、」
ミヤコがアゴで指し示したのは、テントの裏手に無造作に転がされているブルーシートの山だった。
「まず、コレを見てください」
ミヤコがバサッとシートを捲り上げる。
そこには、全身を泥と擦り傷だらけにして、白目を剥きながらピクピクと痙攣しているボロボロのコートの男が倒れていた。
「…………」
「コイツはーー」
その顔を見た瞬間、銀時は目を剥いて指を突きつけた。
「マダオ二号機!!」
つい数日前、自分を酒で眠らせて拉致し、「所確幸」なる底辺の新興宗教に引きずり込もうとした、あのホームレスのリーダー・デカルトであった。
いつぞやの哲学的なオーラなど微塵もなく、今はただの行き倒れのガラクタと化している。
「どうしてコイツが、」
銀時が訝しげに眉を潜めると、ダストボックスの中からミユがスッとプラカードを掲げた。
『助けを求めにきたんですG』
「え? コイツが、」
銀時は間抜けな声を出し、デカルトとミヤコの顔を交互に見比べた。
「はい」
ミヤコは腕の中のぴょんこを撫でながら、静かに頷いた。
「今日の早朝、ボロボロの状態で私たちのテントに転がり込んできたんです。最初はまた食糧でも奪いに来たのかと思って、サキが首の骨を折ろうとしたんですが……」
「いや、食糧奪われる前に命(タマ)奪おうとしてません!? 大丈夫ですかソレ、防衛ライン越えて殺意の波動に目覚めてません!?」
新八が冷や汗を吹き出しながら、過激すぎるエリートの防衛本能に全力のツッコミを入れる。
「べ、別に良いだろ! 私は教本通りに動こうとしただけだ! それに、今は気にするべきはそこじゃない!」
サキが顔を赤らめながら反論し、強引に話題を軌道修正しようとする。
「そうそう。見てほしいのはコレ。このコートに空いた弾痕のとこ」
モエがしゃがみ込み、気絶しているデカルトのボロボロのコート——その脇腹あたりを掠めている、生々しい焦げ跡を指差した。
「ん? コイツがどーしたってんだ?」
銀時が小指で耳をほじりながら、欠伸混じりに言い放つ。
「弾痕なんて此処(キヴォトス)じゃ当たり前だろ。コンビニ行く途中で流れ弾に当たってアフロになるような世界観なんだ。今に始まった話じゃ……」
「違う。問題は弾痕の数じゃない、弾薬の『種類』だ」
サキが泥だらけのヘルメットの鍔を指で弾き、極めて真剣な戦術家の顔つきへと変わった。
「これは、HELAP(High Explosive Light Armor Piercing)って呼ばれる代物でね。この口径の物は滅多に生産されてないし、攻撃性が高くて、普通の個人や不良学生が持ってるような装備じゃないんだよね〜」
モエが、その焦げ跡の火薬の匂いを嗅ぐように顔を近づけ、軍事マニア特有の妖しい笑みを浮かべて解説を続ける。
「着弾と同時に内部で炸裂する、対装甲用の徹甲榴弾。要するに……小型の装甲車や頑強なバリケードなんかを、紙切れみたいにぶち抜いて破壊するための、完全な『軍事用』の弾だよ」
その物騒すぎる単語の羅列に、銀時の耳ほじりがピタリと止まった。
「……は? 装甲車をぶち抜く弾?」
「はい。キヴォトスでの日常的な戦闘の多くは、あくまで個人的なトラブルや小競り合いレベルのものです。ですが、コレはそういった用途で使用されるものではないということです」
ミヤコがルビー色の瞳をスッと細め、事態の異常性を静かに告げた。
「つまり……何かしらの本格的な『組織』が、デカルトさんを撃ったということですか?」
新八の声が、目に見えて強張る。
「話はそれだけじゃない」
サキが立ち上がり、周囲の木立を警戒するように睨みつけた。
「私たちは台風による連日の雨で、弾薬や通信機器など、装備のほとんどがダメになった。そこで武器の補充をしようと、モエのVIP会員の権限を使って『カイザーインダストリー』から入手しようとしたところ……」
『在庫切れと、断られたG』
ダストボックスの中から、ミユが不安そうに震える手でプラカードを掲げた。
「あの大規模な軍需企業が、突然すべての弾薬の流通をストップさせたんです。まるで、私たちへの補給路を完全に断ち切るように」
ミヤコの言葉に、ただならぬ緊張感が漂い始める。
「そして、それと同時にーー」
ザッ。
公園の入り口の土を踏み締める、重く、統制のとれた複数の足音が響く。
制服に身を包んだヴァルキューレ警察学校・公安局の生徒たちが、完全武装でズラリと立ち並ぶ。その異様な威圧感の中心で、部隊を率いる局長のカンナが、冷たく押し殺すような声で呟いた。
「……まだいたのか」
彼女の鋭い犬歯が覗き、獲物を射抜くような鋭い視線がテントの前に集まる面々を舐め回す。
「まぁ、広い公園内を探す手間が省けたと考えれば……」
これ以上ないほどのシリアスな空気。
キヴォトスの治安の要である警察組織と、元エリート特殊部隊による、一触即発の睨み合い。風すらも止まり、ヒリヒリとした緊張感が肌を刺す——はずだった。
「どなた様でしたっけ?犬のおまわりさんとかそういう名前出したっけ?」
その重苦しい空気を、銀時が信じられないほど気の抜けた声で、あっさりとぶち壊した。
彼は小指で鼻をほじりながら、公安局トップの顔をまるで初めて見る珍獣のように見つめている。
「犬か、猫か分かんないような見た目してるアル。ハッキリしろヨ」
神楽もまた、酢昆布をモチャモチャと噛みながら、カンナの頭に生えた特徴的な獣耳を指差して不満げに鼻を鳴らした。
「どっちつかずのあざといデザインしやがって。犬派と猫派、両方のケモミミ需要を取り込むつもりアルか? マーケティングの奴隷ネ」
「違いますよ! アレはヴァルキューレ警察学校の『狂犬』カンナさん!以前一緒に取り調べ室で会ったでしょう!?」
緊迫した状況下で繰り広げられる身内のメタなキャラクターデザイン批判に、新八が慌ててツッコミを入れる。
「狂犬……? あー、なんかそんなのいたっけ? 最近キャラ多くておじさんのハードディスク容量パンパンなんだよね〜」
「ポンコツなのは頭皮の毛根だけにしてください!」
場違い極まりない万事屋のコントが響く中、ミヤコがスッと一歩前へと進み出た。
彼女は腕に抱いていた白ウサギの『ぴょんこ』を背後のミユにそっと預けると、アサルトライフルを構える公安局の部隊を前に、一切の怯みを見せることなく堂々と立ち塞がった。
「何の用ですか?」
ミヤコの瞳が、真っ直ぐにカンナを睨み据える。
彼女たちをこの公園から追い出しに来たことは、火を見るよりも明らかだ。それでもミヤコは、一歩も退くことなく凛とした声で宣言した。
「以前、そちらにも話したはずです。私たちは、此処を立ち退くつもりはないと」
エリートとしての誇りと、守るべき『居場所』。
いかなる権力が相手であろうと、不器用な先生たちに泥を被ってもらってまで繋ぎ止めたこの拠点を、そう簡単に明け渡すわけにはいかない。
しかし。
そんなミヤコの決死の覚悟を前にしても、カンナの表情は微塵も揺らがなかった。
ただ、ひどく冷酷で、職務に忠実な『警察官』としての目を細め、静かに問い返す。
「……自分たちの行いを理解した上で、発言しているのか?」
「市民の使う公共の公園を不法占拠し、地域社会に不安をもたらす存在。……そう、以前も説明したはずだが」
カンナの冷徹な声が、泥にまみれた拠点に響き渡る。
その鋭い視線は、ミヤコだけでなく、背後に転がるブルーシートの残骸や、ずぶ濡れの万事屋たちをも『排除すべき障害物』として明確に捉えていた。
「何いってるアルか! 好き勝手いうのも大概にするネ!」
たまらず神楽が前に飛び出し、泥だらけの拳を振り上げて吠えた。一緒に泥水を掻き出し、この場所を守り抜く苦労を分かち合ったからこそ、その理不尽な物言いが許せなかったのだ。
「待って、神楽ちゃん!」
新八が慌てて神楽を制止し、冷や汗を流しながらもカンナへと歩み寄った。
「カンナさん、話が違いますよ。彼女たちSRTの処遇は僕たち(シャーレ)に委ねられて、この公園の使用も正式に認められてるはずです。別に、不法占拠してるってわけじゃ……」
新八は必死に理屈を並べ立てる。
超法規的機関であるシャーレ(に現在居座っている万事屋)が介入した時点で、彼女たちの公園での野宿は『黙認』という名の許可を得ていたはず。少なくとも、武力による強制排除を受けるいわれはない。
しかし。
カンナは表情一つ変えることなく、新八の必死の弁明を冷たく切り捨てた。
「……何か、勘違いをしているようだな」
「え……?」
「確かに、解体されたSRTの処遇はシャーレに委ねられた。それは事実だ」
カンナは一歩踏み出し、カチャリとアサルトライフルの銃口を僅かに下げた。武力ではなく、圧倒的な『理屈』で相手を制圧するために。
「だがーー連邦生徒会の防衛室長は、お前たちがこの公園に滞在して良いと『許可』を下した事は一度も無い」
「ただ、『貴様らの処遇を保留する』と……そう言っただけだ」
カンナから突きつけられたのは、あまりにも残酷な『官僚的言葉遊び(詭弁)』。
『処遇を保留する』。
それは決して「今のままでいていい」という許可ではない。単に「どう処分するかまだ決めていない」という状態の先延ばしに過ぎない。
防衛室長であるカヤは、最初からこの公園を明け渡すつもりなどなく、いつでも彼女たちを合法的に排除できるよう、あえて曖昧な言葉で罠を張っていたのだ。
「付け加えておくと、この子ウサギ公園の管理自体、連邦生徒会防衛室の管轄ではない」
カンナは、まるで引導を渡すかのように、決定的な事実を冷酷に突きつける。
「つまり、防衛室長がどう言おうと、公園の管理者から通報を受けた我々公安局の退去要求は、完全に『正当』であるということだ」
「なっ……」
サキが悔しげに歯を食いしばる。行政の縦割りと管轄の違いという、学生には到底覆せない大人の理屈。それを武器にされた以上、もはや言い逃れは不可能。
「要求に応じないというのなら、直ちに実力行使へと移行する。完膚なきまでに制圧することになるぞ」
カンナは鋭い犬歯を見せ、アサルトライフルの銃口をクイッと持ち上げた。
「……この『神様』のようにな」
カンナの合図と共に、背後に控えていた公安局の生徒たちが、ズルズルと『何か』を引きずり出してきた。
それは、幾重にもロープでぐるぐる巻きにされ、蓑虫のような無惨な姿と化したボロボロの着流しの男であった。
「ま、マダオォォォ!!」
「長谷川さん!!」
神楽と新八が、目玉が飛び出るほどの勢いで叫んだ。
「グホッ……」
地面に転がされた長谷川泰三(マダオ)が、カエルのような情けない呻き声を上げる。
公安局の隊員たちは「不法占拠者の過激派カルトの教祖」として彼を厳重に拘束したらしいが、実際にはただロープで縛られているだけで、これといった暴力は振るわれていない。ただ単に、長谷川自身の持つ『生まれついての敗北者オーラ』が、事態をより凄惨なものに見せているだけ。
「私たちは今回、とあるスポンサーを得て、部隊の装備を最新のものへと一新した」
カンナは、冷や汗を流して震えるマダオを踏みつけにはせず、ただ冷徹に見下ろしながらRABBIT小隊へと視線を戻した。
「だが、お前たちはどうだ? 先日の台風で、まともな装備も弾薬も残っていないだろう。……犬死にしたくなければ、よく考えてから発言することだ」
スポンサーからの最新装備で固めた完全武装の警察組織。
対して、台風で文字通りすべてを洗い流された、泥だらけの元エリート部隊と、木刀を持っただけの万事屋。
戦力差は火を見るよりも明らか。普通に考えれば、ここで白旗を揚げるのが唯一の生存ルートである。
しかし。
絶望的な状況下にあっても、ミヤコはルビー色の瞳の光を全く失っていなかった。
彼女は、捕らわれの身となったマダオを一瞥すると、ふんと鼻を鳴らした。
「……確かに、そちらに強力な『武器(長谷川)』を奪われたのは痛手ですが」
「いや武器ってなんですか! 長谷川さんはただの無職のオッサンだよ! 戦術的価値ゼロだよ!」
新八の的確なツッコミを華麗にスルーし、ミヤコはスッ……と、真横に立つ銀時の方へと顔を向けた。
「私たちには、まだ『とっておき』がありますよ」
その、一切の感情を排した、純度100%の「鈍器」として品定めするような恐ろしい視線。
「ちょっと? 何見てんの?」
銀時は背筋に尋常ではない悪寒を走らせ、後ずさりしながら木刀を構えて必死に防衛線を張った。
「やらないから、もう『人間バット』はゴメンだからね! 三十路手前の大人がJKに振り回されてぶっ壊れるとか、色々シャレにならないから!」
「RABBIT小隊は、いかなる状況下でも周りにある『全ての物』を駆使する訓練を受けています」
「そのセリフ持ちネタみたいに扱うのやめてくんない?」
緊迫した包囲網の中で、再び始まろうとする『人間鈍器』の攻防戦。
しかし、そんな茶番にいつまでも付き合ってくれるほど、狂犬は甘くはなかった。
チャキッ。
一斉に、公安局の隊員たちがセーフティを外す冷たい金属音が響き渡る。
「……ふざけている暇はない」
カンナの眼光が、一切の容赦を捨てた猛禽類のように鋭く細められた。
「さぁ、早く決めろ。大人しくこの公園を去るか、それともーー」
チャキッ、と無数の銃口が向けられる絶望的な包囲網の中。
銀時は極めて面倒くさそうに頭を掻きながら一歩前へと進み出た。
「まぁ待てよ、やさぐれ局長」
「……誰がやさぐれですか」
警察機構のトップに向かって放たれた不敬極まりないあだ名に、カンナの獣耳がピクリと不快げに揺れる。しかし、彼女はため息と共にその怒りを抑え込み、手にしたアサルトライフルの銃口を僅かに下げて銀時を睨み据えた。
「先生、一応言っておきますが……今回の件は、あなたであろうとどうしようもありません。『子ウサギタウン』への再開発は、既に上層部で決定されたことですから」
「あっそう。ウサギの穴だか、ケツの再開発だが知らねぇが、もう少し待ってくれねぇかい?」
決定事項という絶対的な盾を前にしても、銀時は悪びれる様子もなく飄々と交渉を吹っかける。
「……まだ時間をくれと?」
カンナの目がスッと細められる。圧倒的な武力と大義名分がこちらにある以上、時間稼ぎなど無意味だとその表情が語っていた。
銀時は小指で耳をほじりながら、背後で息を呑んでいるミヤコたちを親指で指し示した。
「悪いが、コイツらは『エリート』とか言っときながら、あちこち転々とするくらいの不良。引き取り先もなけりゃ、帰る居場所もない。そんな状態で、無理やりここから追い出してみろ?」
「……」
「反動で思いっきりツッパリ出しちゃうよ? 『この引越しをきっかけに、今日から私たちはツッパリデビュー!』とか言って、金髪リーゼントに改造制服で100倍返ししてくるよ?」
それは、昭和のヤンキー漫画を完全になぞった、あまりにも偏見に満ちた脅迫であった。
「お前も私たちをなんだと思ってるんだ!!」
自分たちをエリート特殊部隊どころか『転校を機にイキり出す昭和の不良』扱いにした銀時に対し、サキが顔を真っ赤にして怒号を飛ばす。
しかし、銀時はサキのツッコミを華麗にスルーし、真面目な顔でカンナへと視線を戻す。
「再開発中に、そんな完全武装したヤンキーウサギどもに暴走されても困るだろ?」
言葉の表面だけを見れば、ただのふざけた屁理屈だ。
だが、その奥に隠されているのは『行き場とプライドを完全に奪われた元・特殊部隊を野に放てば、最悪のテロリストと化して逆にキヴォトスの治安が崩壊するぞ』という、戦術的指摘に見せかけた脅迫。
公安局のトップであるカンナが、その裏の意図に気づかないはずがない。
銀時の死んだ魚のような瞳の奥に宿る鋭い光を受け、カンナは僅かに息を呑み、沈黙。
やがてーー。
カンナはふぅと深くため息を吐き出し、構えていたアサルトライフルの銃口を完全に下ろした。
「……良いでしょう」
張り詰めていた空気が、フッと緩む。
「先生には借りもありますので……今日は引き上がることにします」
カンナは、以前シャーレと共に事件を解決した際の恩義を口にし、自らの矛を収める理由とした。それは彼女なりの、権力側としてのギリギリの譲歩であった。
「おっ、話が分かるねェ。狂犬とか呼ばれてる割には、首輪のついたお利口さんだ」
銀時が軽口を叩きながら、背を向ける。
しかし、カンナの瞳から警察官としての厳しい光が消えたわけではない。
「しかし、いつまでも放置することはできません」
カンナの声が一段と低くなり、冷たい刃のような宣告が突きつけられる。
「来月。……来月までです」
その明確な期限(デッドライン)に、ミヤコたちの肩がビクッと強張った。
「それ以上はこちらも、本格的な武力行使に踏み切らせていただきます」
カンナは、背後に控える武装した公安局の隊員たちと、泥だらけの公園をゆっくりと見渡した。
「……こちらにも、『守るべきライン』がありますから」
それは、治安維持を担うヴァルキューレ警察学校としての、そして防衛室長・カヤからの圧力に挟まれたカンナ自身の、決して譲れない境界線だった。エリートの意地を貫こうとするRABBIT小隊と同じように、彼女にも背負っている責任があるのだ。
カンナは踵を返し、黒い制服の背中を向けると、部隊全体に響き渡る声で短く号令を下した。
「撤収!」
ザッ、ザッ、ザッ……!
カンナは踵を返し、黒い制服の背中を向けると、部隊全体に響き渡る声で短く号令を下し
嵐のように押し寄せた国家権力の圧倒的な暴力は、銀時のはったりとカンナの譲歩によって、ひとまずは潮が引くように去っていった。
その黒い背中が完全に見えなくなった瞬間、張り詰めていた空気が弾け、サキが地面の泥を力任せに蹴り上げた。
「前回はシャーレありきだったくせに……!」
キヴォトス全土を巻き込んだ騒動の際、銀時たちの助けがなければ何もできなかったヴァルキューレ警察学校。そのトップが、最新装備をチラつかせて偉そうに自分たちを見下してきたことに、エリートとしてのプライドが激しく反発したのだ。
「私、ちょっとしばいてくるネアイツら」
不穏極まりない言葉と共に、神楽が袖をまくり上げながらダッシュで追いかけようとする。
「待ってください」
ミヤコがスッと腕を伸ばし、彼女の突撃を冷静に制止する。
「気持ちは分かりますが……彼らの武装が強化されたのは紛れもない事実です。今の私たちが正面からぶつかっても、勝ち目はありません。」
「例え勝てたとしても私たちは信用を失ってしまいます。」
悔しさを押し殺し、小隊長として極めて冷静な状況判断を下すミヤコ。
彼女は大きく深呼吸をすると、改めて万事屋のリーダーへと向き直り、深く頭を下げた。
「先生、助けていただきありがとうございました」
「よせよ」
銀時は気恥ずかしそうに視線を逸らし、小指で耳をほじりながら、足元に転がっているマダオ(とデカルト)を顎でしゃくった。
「どうせ、お前らが俺に頼もうとした『仕事』ってのは、コイツなんだろ?」
「……はい」
ミヤコは目に切実な光を宿し、静かに頷いた。
「先ほどのお話のように、このままでは、来月には私たちはこの公園を去らなければいけません。対抗するにしても、今の私たちには肝心の装備がなく……」
「そうですね。でも、どうやってあの短期間で新装備を仕入れたんでしょう」
新八が、顎に手を当てて不可解そうに首を傾げる。つい先日まで、ヴァルキューレ警察学校にそこまでの予算や最新の軍事装備が配備されている様子はなかったはずだ。
『スポンサーとか言ってましたG』
ダストボックスの中から、ミユがスッとプラカードを突き出して補足する。
「企業から仕入れたってことか?」
サキが腕を組み、眉根を寄せる。
「でも、ヴァルキューレの公安局に、そこまでの資金があるのかな?」
モエもまた、先ほど見たHELAP弾の凄まじい火力を思い出しながら、怪訝な顔で同調した。軍事用のアサルトライフルを部隊規模で一新するなど、一個の警察機関の予算でどうにかなる額ではない。
「……それなら、俺に心当たりがある」
その時。
泥水の中でぐるぐる巻きにされ、蓑虫のようになっていた長谷川泰三(マダオ)が、突如としてハードボイルドな低い声で語り出した。
「リベートだ」
「リピート? ただ聞き流すだけで英語が喋れるようになるヤツ、アルか?」
神楽がポンッと手を打ち、謎の納得顔を見せる。
「それはスピードラーニング。 いつの時代の深夜のテレフォンショッピングの話してんの!」
新八が即座にツッコミを入れ、咳払いをしてから真面目な顔でウサギたちに向き直った。
「リベート……簡単に言えば『払い戻し』のことですね。業者に支払った代金の一部が、裏でこっそり発注者に還元されたり、あるいは見返りとして便宜を図ったりする……いわゆる、大人の汚いお金のやり取りです」
「なるほど」
サキがハッとして顔を上げる。
「先ほどの武器(HELAP弾)を見て考えるに、裏でヴァルキューレ警察学校……いや、連邦生徒会の防衛室とズブズブの関係を持っているのは、『カイザーインダストリー』か?」
カイザーインダストリー。
キヴォトス全土に影響力を持つ巨大な軍需企業であり、同時に、RABBIT小隊が武器の補充を断られた相手でもある。
点と点が、一本の黒い線として繋がり始める。
「でも、何の得があってカイザーがヴァルキューレに?」
モエが、納得がいかないというように小首を傾げた。利益至上主義の巨大企業が、見返りなしに警察機構へと高価な最新兵器をバラ撒くなど、到底考えられないからだ。
「奴らは、最初から手を組んだのさ」
泥水の中でぐるぐる巻きにされたまま、長谷川(マダオ)がやけにハードボイルドな低い声で、そのカラクリを解き明かし始めた。
「この『子ウサギタウン』の再開発を請け負っている『カイザーコンストラクション』と、兵器や装備を取り扱う『カイザーインダストリー』は、どちらも同じカイザーグループの子会社。」
長谷川は、泥だらけのサングラスの奥で鋭い光を放つ。
「つまり、『カイザーコンストラクション』が都市開発の利権で得る莫大な資金を、『カイザーインダストリー』がヴァルキューレの公安局に『最新装備の提供』という形で前払いする。そうやって、企業と警察の間で、法の目を掻い潜った資金と武力の横流しをするという裏契約(リベート)が結ばれていたとしたら……」
「なるほどネ」
神楽がポンッと手を打ち、結論を導き出す。
「犬どもはタダで最新の武器が貰える。その代わりに、カイザーの邪魔になるお前たち『マダオ』やウサギどもをこの公園から追い出して、都市開発をスムーズに進めてやればいい……そういうことアルか」
「えっ……でも、それって完全に違法なんじゃ……」
あからさまな癒着と利益供与の構図に、新八が顔を引きつらせる。
「はい、もちろん違法です」
ミヤコが、冷たい怒りを孕んだ声で即答した。彼女の瞳には、正義を司る者としての強い嫌悪感が浮かんでいる。
「本来、キヴォトスの市民に奉仕すべき警察学校が、特定の私企業(カイザー)の利益のために、その武力を行使して働いているわけですから。……到底、許されることではありません」
巨悪の輪郭が、完全に泥水の中から浮かび上がった。
連邦生徒会、警察機構のトップ、そして巨大悪徳企業による黒いトライアングル。それによって居場所を奪われようとしているホームレスたちと、元エリート少女たち。
「……じゃあ、やることは決まったな」
その重苦しい空気を切り裂いたのは、この場にいる誰よりも悪党に相応しい、ひどく楽しげで、極めて邪悪な声。
ミヤコたちがハッとして振り返る。
そこには、まるで悪代官を陥れようとする越後屋のような、ドス黒い笑みを顔いっぱいに浮かべた坂田銀時が立っていた。
「密着・不良警察24時。……裏でコソコソやってるその『不正取引』の決定的瞬間(証拠)をバッチリ押さえて、キヴォトス全土に公開処刑といこうじゃねぇか」
それは、主人公が口にするような綺麗事では断じてない。大人たちの汚い手口には、さらに汚い手口(やりかた)で倍返しにするという、徹底したチンピラの流儀である。
ジャンプらしからぬ、最高にゲスで、最高に頼もしい反撃の狼煙。
『居場所』を懸けた、万事屋とRABBIT小隊の容赦なき逆襲作戦が、今ここに幕を開ける。
次回予告
ミヤコ「先生、次回で私たちの出番終わりなんですか?」
銀時「あーそうだよ?そのつもりだよ?」
「エデン見たく見せ場少ないんだからこれぐらいで終わらないと読者も納得しないから」
「ってことで」
次回
【挿絵表示】
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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銀時
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新八
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神楽
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沖田
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土方
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山崎
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高杉
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桂
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定春
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エリザベス
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ホシノ
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シロコ
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ヒナ
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アコ
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ミカ
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ナギサ
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セイア
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ユウカ
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ノア
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近藤