透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
サンクトゥムタワー
キヴォトスの青い空を突き刺すように聳え立つ、超高層の巨塔。
この学園都市の行政、司法、インフラ、あらゆる機能を管理する中枢神経であり、かつては連邦生徒会長がその頂点から世界を見守っていた場所だ。
主の不在という異常事態の中、現在は先生(銀時)が手にした「シッテムの箱」の権限譲渡により、辛うじて連邦生徒会が制御権を維持している状態にある。
その無機質で洗練されたロビーに、およそ似つかわしくない集団がいた。
黒い隊服の男たち、白い制服の男と少女。そして、気怠げな着流しの男。
時代劇の撮影現場からタイムスリップしてきたような彼らを、連邦生徒会行政委員会・首席行政官の七神リンが、氷のように冷徹な表情で出迎えた。
「先生、および……その他のご友人の方々。お待ちしておりました」
リンはタブレット端末から視線を上げ、事務的に告げる。
その堅苦しい空気を打ち破ろうとしたのか、あるいは単にデリカシーがないのか。銀時がニヤニヤしながら片手を上げた。
その声音は事務的で、一分の隙もない。
だが、その鉄壁の空気を読まない男が一人。
「おっ、出迎えご苦労さ~ん。いやぁ、リンちゃ〜ん、元気してた? 銀さんがいなくて寂しくて枕濡らしてたんじゃな――」
ボカッ!!
鈍く、重たい打撃音がホールにこだました。
リンが持っていた分厚いファイル(角)が、正確無比に銀時の脳天を直撃した音である。
「二度と『リンちゃん』とは呼ばないように。……不愉快です」
「……すんません」
銀時は白目を剥き、痙攣しながらその場に崩れ落ちた。
リンは倒れた銀時を一瞥もせず、まるでゴミでも跨ぐかのように無視して、背後に控える男たちへと向き直った。
「本題に入りますが……あなた方は、先生のいた世界で警察組織に属しており、何らかの要因で突然この世界に転移してしまったと……そういう認識でよろしいですか?」
組織のトップである二人に問いかける。
「はい、その通りです。ご迷惑をおかけして申し訳ない」
近藤勲が誠実に頭を下げる。その横で、佐々木異三郎が眼鏡(モノクル)を光らせ、澄ました顔で答えた。
「まぁ、そういうことになりますね。エリートとしては不本意なトラブルですが」
「そうですか……」
リンは深く、重たい溜息をついた。
ただでさえ問題山積みのキヴォトスに、これ以上「濃い」戦力が追加されたことへの頭痛が痛いといった様子だ。
「では、あなた方にここにいる間に所属していただく部署、および処遇について説明しますので……連邦生徒会・防衛室長とその『顧問』が来るまで、少々お待ちください」
「防衛室長……ですか?」
「ええ。あなた方の力は強大すぎます。野放しにするわけにはいきませんので、管理下に置かせてもらいます」
リンは時計を確認すると、忙しなく踵を返した。
「私は別の決裁がありますので、これで失礼します。……先生、彼らの監視をお願いしますよ。特にそこの床で伸びている天然パーマの監視を」
そう言い残し、リンは書類の山を抱えて颯爽と去っていった。
広いホールに、静寂と男たちが残される。
しばらくして、床の染みとなっていた銀時が「痛ってぇ……」と呻きながら、ゾンビのように起き上がった。
「ったく……これだからDV系女子は……」
銀時は頭のタンコブをさすりながら、真選組の面々を振り返った。
「で? なんでお前らまで、こんなお偉いさんたちの城に呼ばれたわけ?」
銀時の問いに、土方が煙草を取り出しながら、面倒くさそうに口を開く。
「まぁ……話せば長くなる。二回前の話からの続きになるんだがな……」
「メタいな! お前らもそっち側の住人かよ!」
土方は銀時のツッコミを無視し、トリニティでの顛末を語り始めた。
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【回想:トリニティ総合学園 救護騎士団・病室】
近藤がツルギの愛の鉄拳(アッパーカット)によって星となり、その後、騒ぎを聞きつけた正義実現委員会のモブ隊員たちによって保護された後の話である。
救護騎士団。
トリニティ総合学園が誇る、医療と奉仕を信条とする部活動組織。
白亜の制服に身を包んだ彼女たちは、日々、怪我人の治療に奔走している。特に、血の気の多い正義実現委員会や自警団が運び込まれてくることは、ここの日常茶飯事であった。
消毒液の匂いが漂う清潔な一室。
土方と沖田に連れられ(あるいは引きずられ)、近藤は治療を受けていた。
「これで……よし。もう大丈夫ですよ」
手際よく包帯を巻き終えると、少女は安心させるように微笑んだ。
ピンク色の髪に、おさげのように垂れた小さな羽根。頭上には看護師帽(ナースキャップ)のようなヘイローが浮かんでいる。
「ありがとう。……いやぁ、可愛らしいお嬢さんに手当てしてもらえるなんて、殴られた甲斐があったもんだ。……あの、あなたは?」
「セリナです。救護騎士団の、鷲見セリナといいます」
「あ、セリナさんっていうのか。俺は近藤勲。こっちは連れの……」
近藤が自己紹介をしようとすると、セリナは少し真剣な表情になり、近藤の顔――顎のあたりをまじまじと見つめた。
「……あの、本当に『あの』ツルギさんと戦ったんですか?」
セリナの声には、隠しきれない驚愕が混じっていた。
彼女の知る限り、正義実現委員会の委員長・剣先ツルギと交戦した者が、顎のかすり傷程度で済むはずがないのだ。
「いや、あの娘とやり合ったのは俺じゃなくて……」
近藤は視線を横へ流す。
そこには、パイプ椅子に座り、退屈そうに貧乏揺すりをしている沖田がいた。
「そいつは俺でさぁ」
「!?」
セリナは目を見開き、沖田を見た。
見たところ、外傷は皆無。制服に多少の汚れはあるものの、呼吸も乱れていない。
「信じられない……。ツルギさんと戦って、ほとんど無傷だなんて……」
セリナはゴクリと喉を鳴らす。
「今までツルギさんと本気で戦って担ぎ込まれてきた方は……皆さん、『プレス機にかけられた空き缶』と形容されるほど徹底的に叩きのめされていました。身体的な傷だけでなく、その恐怖からPTSDを発症してしまう方もいらっしゃったほどで……」
ツルギは『歩く戦略兵器』。その破壊力はトリニティ内でも別格だ。
それを聞いて、沖田は鼻で笑った。
「へぇ~……。あんなのが最強格ってことは……じゃあ、ここにいる連中はそこまで強くねぇってことですかい? 案外、縛りがいのねぇ世界なのかもしれませんねぇ」
その言葉には、明らかな侮蔑と、自身の強さへの絶対的な自信が含まれていた。
「総悟! やめろ! すいませんセリナさん、コイツは相手を蔑むのが癖でして! 性根が腐ってるんです!」
近藤が慌てて沖田の頭を叩き、頭を下げる。
命の恩人(治療してくれた人)に対してあまりに失礼な物言い。近藤の胃がキリキリと痛む。
しかし、セリナは怒る様子もなく、むしろ穏やかに微笑んだ。
「ふふっ。いえいえ、それも総悟さんの『個性』ですからね。元気があって良いと思います」
「て、天使だ……! ここに天使がいるぞトシ!」
「アンタはうるせぇよ。……黙って治療受けてろ」
土方が呆れ顔で煙草を取り出し、すぐに此処が禁煙であることを思い出して舌打ちをする。
セリナはそんな三人の様子を興味深そうに観察していた。
「ところで……みなさんは、どこの学園の方なんですか? 制服を見てもゲヘナに似てはいますが、少し模様が違いますし……何より、皆さんには『ヘイロー』がありませんので」
セリナの純粋な疑問。
近藤たちは顔を見合わせた後、自分たちの身の上――遠い異世界『江戸』から来たこと、そこで『真選組』という警察組織をやっていたことを簡潔に話した。
「なるほど……異世界のお巡りさん、だったのですね」
突拍子もない話だが、セリナは素直に受け入れたようだった。
「なら、ひとまず『正義実現委員会』の本拠地に行ってみてください。先ほど連絡が入ったのですが、そこであなた方と同じ格好をしたみなさんが保護……いえ、お待ちしているそうです」
「本当ですか! はぐれた隊士たちがそこに!」
「はい。あそこなら、皆さんの処遇についても何か解決策を考えてくれるかもしれません。ハスミ先輩――副委員長の方もいらっしゃいますから」
「そうですか! セリナさんありがとう。恩に着るよ!」
近藤はガバッと立ち上がり、セリナの手を両手で握りしめて感謝を伝えた(セリナは少し驚いたが、嫌がりはしなかった)。
「行くぞ! 総悟! トシ! 隊士たちが待ってる!」
「へいへい」
「まったく、人騒がせな局長だ」
三人は救護騎士団の病室を後にする。
目指すは正義実現委員会の本拠地。そこには、はぐれた真選組の隊士たちと、新たなトラブルの予感が待っていた。
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正義実現委員会 本部会議室
静謐な空気が流れる会議室。
普段は怒号と銃声が絶えない現場に身を置く彼女たちにとって、ここは数少ない理性の聖域である。
だが今日、その空気は困惑と疑念で満たされていた。
「えーーーと……報告まとめますけど」
仲正イチカは、手元の報告書をペラペラと捲りながら、信じられないと言いたげに細い糸目をさらに細めた。
「デモ集団と戦っていた君らを助けたのが、着流し姿でタバコを吸っていた男性で……。落ちてきた数トンの看板と、突っ込んでくる戦車を『刀一本』で破壊。さらに……」
イチカはそこで言葉を区切り、チラリと部屋の隅で体育座りをしている委員長に視線をやった。
「ツルギ先輩にアッパーを喰らわされたゴリ……コホン、男性が、嵐のような銃弾をこれまた刀一本で、しかも涼しい顔で防いだ……と」
イチカは報告書を机に置き、深く溜息をついた。
「……嘘、では無いですよね?」
「はい! この目で見ました! 間違いありません!」
報告に来た一般隊員が、直立不動で声を張り上げる。
その横で、一年生の静山マシロが眉をひそめていた。生真面目な彼女にとって、物理法則を無視したその報告は到底受け入れられるものではない。
「信じられません……。ヘイローも持っていない人間が、なぜそんな芸当を? 普通なら即死です」
「まあ、あの方々でもそれぐらい出来ると思いますが」
副委員長の羽川ハスミが、紅茶を啜りながら冷静にコメントした。
「なんで納得してるんすか、ハスミ先輩」
「少し前に話しましたよね? シャーレの先生……坂田先生が、木刀一本でクルセイダーちゃんを両断したって」
「あー……あれ、マジだったんすね……」
イチカは頭を掻いた。あの先生と同類の「規格外」が、他にも存在したということか。
ハスミはカップを置き、部屋の隅で小さくなっているツルギに優しく声をかけた。
「ツルギ。あの方々なら、事情を話せばきっと許してくれますよ。そんなに落ち込まなくても」
「……」
ツルギは膝を抱えたまま、ボサボサの髪の隙間から、血走った――しかし今はひどく潤んだ瞳を覗かせた。
「……なぜ……そう言える? 勘違いで、私は……あの人たちを襲った……。殺そうとした……。それなのに……」
ツルギの身体が小刻みに震える。
罪悪感。それは間違いない。だが、彼女をここまで情緒不安定にさせている要因は、もう一つあった。
「そっ……」
「そ?」
「……そ……そそそ、それに……わた、わたわたわたわたししししししは……あ、あの人の手を……ギュッて握って……お姫様抱っこされて……守られて……////」
ツルギの脳裏に、近藤の逞しい腕と、至近距離で見た精悍な顔立ちがフラッシュバックする。
「あうぅ……//// そ、それなのに……アッパー!! ……カットをして……空へ……あぅぅぅ……」
顔を真っ赤にして身悶えるツルギ。
守ってくれた王子様を、照れ隠しで星にしてしまったのだ。乙女として、これ以上の失態はない。
「んー、相変わらず乙女っすねぇ、先輩」
イチカはニヤニヤしながらツルギを突っついた。
「でもどうします? ハスミ先輩はそう言ってますけど、いくら優しい方といえど、自分を殺しに来た相手をそう簡単に許すとは思わないんっすけど」
「…………うぅ……」
ツルギがさらに小さくなる。
だが、ハスミは静かに微笑んでいた。
「いいえ。あの方々からは……そんな狭量な気配は感じませんでしたよ」
その時だった。
コンコン。
控えめなノックと共に、会議室の扉が開かれた。
「どうも、こんにちは」
入ってきたのは、顎に絆創膏を貼った近藤勲と、その後ろに続く土方、沖田、山崎たちだった。
部屋の空気が一瞬にして張り詰める。ツルギがビクリと肩を跳ねさせた。
ハスミはすぐに立ち上がり、深々と頭を下げた。
「……お待ちしておりました。すいません、デモ活動を阻止してくれた方々に対して……まずは謝罪を。この度は、うちの委員長……ツルギが、大変な無礼を働きました」
ハスミの謝罪に続き、マシロやイチカも頭を下げる。
部屋の隅で、ツルギがおずおずと立ち上がりかけ、しかし合わせる顔がないのか俯いて震えている。
そんな彼女たちを見て、近藤はキョトンとした後、豪快に笑い飛ばした。
「ハハハ! 別に謝らなくてもいいですよ?」
「……え?」
ハスミが顔を上げる。
近藤は、部屋の隅にいるツルギに優しい視線を向けた。
「だって、ツルギさんは俺たちが街を破壊している奴らだと思って攻撃したんですよね? あの状況じゃ無理もない」
「……は、はい……」
ツルギが消え入りそうな声で答える。
「なら、ツルギさんは自分の仕事をしただけだ。街を守ろうとして、正義を貫こうとした。……立派なことじゃないですか。気にしなくてもいいですよ」
近藤は真顔で、心からの言葉としてそう告げた。
彼の中では、喧嘩を吹っかけたのは身内の沖田であり、むしろ自分たちに非があると思っている。それに何より、近藤勲という男は、女性と子供には海よりも広い心を持つ男なのだ。アッパーの一発や二発、彼にとっては愛のスキンシップ(誤解)に過ぎない。
「あ……ぅ……」
ツルギの瞳から、ポロポロと涙がこぼれ落ちる。
恐怖でも、狂気でもない。安堵と、新たな感情の涙だった。
「それよりも、俺たちどうしたらいいですかね? このままここに居座るのも、あなたたちが困るでしょう?」
近藤はポリポリと頬を掻きながら、今後の身の振り方を相談した。
行く当てもない異世界での無職。切実な問題である。
ハスミは少し考え込んだ後、どこかへ電話を掛け始めた。
数分間の話し合いの後、受話器を置いたハスミは、安堵の表情で近藤たちに向き直った。
「みなさん。今回の件で私たちも助かりましたし、そのお詫びとお礼も兼ねて……この学園都市を治めている『連邦生徒会』に、貴方たちの仕事を用意していただけることになりました」
「本当ですか!?」
「ええ。話は通しました。2日後に、あの街の中心にある『サンクトゥムタワー』に行ってください。そこで正式な手続きをすれば、ここにいる間の生活も安定すると思いますので」
ハスミが窓の外、天を突く巨大な塔を指差す。
それは、迷い人である彼らにとって、この世界での最初の道標となった。
「ありがとう、恩に着るよ!」
近藤の明るい声が、会議室の重い空気を拭い去っていく。
その様子を、ツルギは顔を真っ赤にしながら、指の隙間からじっと見つめ続けていた。
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「――とまぁ、こんなことがあったわけだよ」
近藤が長きにわたる回想(尺稼ぎ)を終え、満足げに腕を組んだ。
その瞬間、サンクトゥムタワーのエントランスに、銀時の絶叫が響き渡った。
「長げぇぇわァァァァァ‼︎」
銀時は充血した目で近藤に詰め寄る。
「お前らの回想長いんだよ! 尺取りすぎなんだよ! もっと短く出来ただろ! 『ゴリラが天使に恋して空を飛んだ』、これ一行で済む話だろォが!!」
「だ、旦那、無理は言わないでくだせぇ。こちとら未知の学園で、問題児共の指導が大変だったんですから」
沖田が耳をほじりながら気怠げに反論するが、銀時はその指をへし折らんばかりの勢いで噛みついた。
「知らねぇーよ! それに回想見た感じ、お前が一番の問題児だっただろうが! 半分はお前の暴力シーンじゃねーか!」
「いやぁ、俺はただの正当防衛で……」
「どこがだよ! ロケランぶっ放す正当防衛がどこの世界にあんだよ!」
ギャーギャーと騒ぎ立てる真選組と万事屋。
神聖な連邦生徒会の本部が、一瞬にして歌舞伎町の居酒屋のような喧騒に包まれる。
それを見かねた佐々木異三郎が、やれやれとモノクルを押し上げた。
「皆さん、暇なのは重々承知していますが……少々騒がしいですよ。ここは前までいた江戸のゴミ溜めとは違い、私たちは仕事を紹介していただく身なのですから。我々エリートのように、静かにし――」
「あぁ、何だ。お前らか」
佐々木の説教を遮るように、聞き覚えのある、渋く、そしてどこか適当な声が割り込んできた。
「!」
全員の動きが止まる。
自動ドアが開き、二人の人物が入ってきた。
一人は、連邦生徒会の制服を着た、理知的だがどこか冷たい目をした女性。
そしてもう一人は、ハードボイルドを気取ったサングラスのオッサンである。
「ねぇ〜カヤちゃん? オジサン、生活に困っている美少女がいるって聞いて飛んできたんだけ〜ど? むさ苦しい男しかいないじゃな〜い」
オッサン――松平片栗虎は、タバコをふかしながら不満げにぼやいた。
「別に良いではありませんか、片栗粉さん。前はあなたの部下であった方々なのでしょう? 困っているなら、手を差し伸べてあげましょうよ」
隣を歩く女性――不知火カヤが、冷ややかな笑顔で諭す。
「いやいやカヤちゃん。オジサン、美女のためならいくらでも貢ぐし助けてあげるけど、こんな血なまぐさい連中のために手なんて差し伸べてはあげね〜よ。加齢臭が移っちゃうよ」
まるでキャバクラの同伴のような会話を繰り広げる二人。
その緊張感の無さに、銀時の我慢の限界(リミッター)が外れた。
「おい! いつまで俺たち置いてけぼりにするつもりだよ! ここシリアスな場面じゃねーの!?」
「おや」
カヤは銀時たちに向き直ると、事務的な笑みを浮かべた。
「これは失礼しました。私は連邦生徒会・防衛室長の不知火カヤと申します。そしてこちらは、私の特別顧問の……」
「俺の紹介はしなくていい〜よ」
片栗虎が手をひらひらと振る。
その態度に、近藤が額に青筋を立てて叫んだ。
「おい、とっつぁん! 何シレっとしてんだ!?」
「冗談だよ冗談。心が狭いねぇゴリラくんは。……ただ、この件に関しては、ちょーっと面倒くさいことが絡んでくるんだけどなぁ」
片栗虎がサングラスの奥で目を細める。
「それは……何ですか?」
佐々木が問う。
「それは『エデン条約』という条約が関わるのですが……詳しいことは、近い内に各学園の方に聞いて下さい。今はまだ、時期尚早です」
カヤは意味深に言葉を濁した。
そして、居住まいを正す。
「そして、あなた方の仕事についてですが……」
「私が任命しよう」
その声は、凛として、それでいて温かみのある、絶対的な響きを持っていた。
カヤでも、片栗虎でもない。
奥の通路から響いてきたその声に、真選組と見廻組の全員が戦慄した。
「ま、まさか……」
「その声は……」
カツ、カツ、カツ……。
静寂の中、歩み出てきたのは、髷を結い、ジャージのような服の上から羽織を羽織った、あまりにも見覚えのある人物。
「元征夷大将軍・今は連邦生徒会特別将長、徳川茂茂だ」
彼は真顔で、しかし威厳たっぷりに告げた。
「将長だから、将ちゃんでいい」
その瞬間、――全員の心が一つになった。
(((しょ、しょ、将軍かよォォォォォォォォォ!!!!)))
銀時の脳内で、常識という名のダムが決壊する。
(なんでここに将軍がいるんだよ! あの時、御役目終えて安らかに眠ったはずだろ〜! 俺たちの涙を返せよ! 膝枕で眠ったあの感動のラストはどうなったんだよ!なんで異世界転生してピンピンしてんだよ! というか『将長』ってなーに!?あやふやな ポジション追加されちゃってるよ!!)
全員が顎を床に打ち付けるほどの衝撃を受けている中、異三郎と近藤が震える声で問う。
「ど、どうして将軍様までこちらに!?」
「なぜ将軍様がここに!?」
茂茂は、全く動じることなく、いつもの無表情で答えた。
「我にも分からぬ。気づけばここにいた。……が、今はそんなことより、そなた等の所属する部署についての話のほうが重要ではないか?」
その器の大きさ(天然ボケ)に、二人は反射的に平伏し、頭を下げた。
将軍の命は絶対である。
「では、命じる」
茂茂の声が、ホールに厳かに響く。
「近藤勲以下、真選組を**『トリニティ総合学園 特別治安維持部隊 真選組』に。
佐々木異三郎以下、見廻組を『ゲヘナ学園 特別見廻組』**に命じる」
「ははっ!!」
二人が拝命する。
茂茂は満足げに頷くと、片栗虎の方を向いた。
「あと、松平」
「へいへい。……あー、近藤。トリニティには俺の娘もいるからよぉ。そういうわけだから、よろし〜く」
片栗虎がニヤリと笑いながら、指鉄砲を近藤に向けた。
「!!?」
近藤の顔色が土色に変わる。
松平片栗虎の娘・栗子がトリニティにいる。それはつまり、トリニティでの任務は、常に「娘に虫がつかないように監視する親父(破壊神)」の視線に晒されるということを意味していた。
(死んだ……俺、戦う前に死んだ……)
近藤が絶望に打ちひしがれる中、銀時はこっそりと後ずさりしようとした。
(ヤベェ……ここに関わったら負けだ。俺は関係ねぇ。俺はただの通りすがりの糖分王だ……)
しかし、運命の歯車は既に回り始めていた。
将ちゃんが、カヤが、そして松平のとっつぁんが、キヴォトスに新たな伝説(トラブル)を刻もうとしている。
こうして、彼らはトリニティとゲヘナ、二つの学園の治安維持という、果てしない泥沼へと足を踏み入れることになったのである。
次回予告
アロナ「先生!ミレニアムサイエンススクールのゲーム開発部から要請が来ました。」
銀時「ゲーム開発?前回みたいな面倒なやつじゃなさそうだな」
アロナ「なにせクソゲーしか作れておらず廃部の危機らしいですよ」
銀時「ごめんやっぱ行くのや~めた」
アロナ「せ〜ん〜せ〜い」
次回ゲームは一日一時間
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
-
銀時
-
新八
-
神楽
-
沖田
-
土方
-
山崎
-
高杉
-
桂
-
定春
-
エリザベス
-
ホシノ
-
シロコ
-
ヒナ
-
アコ
-
ミカ
-
ナギサ
-
セイア
-
ユウカ
-
ノア
-
近藤