透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
縄文人になりてぇなぁ〜
「それでは改めまして……ゲーム開発部へようこそ! 私はシナリオライターのモモイ!」
モモイがビシッとポーズを決める。
「私はミドリ。イラストレーターで、ゲームのビジュアル全般を担当しています」
ミドリがぺこりと頭を下げる。
二人の自己紹介が終わったところで、モモイが少し声を潜めるように続けた。
「あと、今はここにいないけど……企画回りを担当している部長のユズって子がいるよ! 訳あって今は席を外してるけどね」
「訳?」
銀時が首を傾げると、モモイとミドリは顔を見合わせ、悲劇のヒロインのように瞳を潤ませた。
――――――――――――――――――――――――ー
【空想シーン(脳内BGM:『ハトと少年』のトランペットソロ)】
「私たちゲーム開発部は、今までずっと平和に、16ビットのレトロゲームとかを作って細々と暮らしていたんだけど……」
モモイの語り口調が、急に壮大なファンタジー映画のナレーションのように変わる。
銀時の脳内では、部室の背景がどこかの渓谷にあるパズーの家に、そして窓の外に見えるミレニアムのタワーが、雲海に浮かぶ天空の城へと変換されていく。
「ある日、私たち部活の生徒にとって宝に等しい『経費』を……この**ミレニアム(ラピュタ)を動かすための資金(飛行石)**にせんと、突如として現れた生徒会の四天王の1人……『冷酷の算術使い』と異名を持つユウカ大佐! アイツこそ全ての元凶なの!」
イメージ映像の中、ドアが乱暴に開かれ、黒服の男たち(C&Cではない)を引き連れたユウカ大佐が現れた。
その目には、色付きのサングラス。服装はいつもの制服だが、何故か漂うムスカ臭。
『ハッハッハッハッ! 私がユウカ大佐だ! このままゲーム開発部を廃部にし、**資金(飛行石)**を得ると本部に連絡しなさい』
ユウカ大佐は高笑いしながら、受話器片手に本部に連絡を入れる。
その後すぐに、土足で部屋に踏み込み、怯えるゲーム開発部の面々に無理矢理な交渉を持ちかけた。
『さぁゲーム開発部よ。さっさとこの誓約書にサインして廃部になっていただくわ! さもないと……』
「嫌だ! 私たちはそんな一方的な交渉には応じない! 廃部なんて絶対嫌だ!」
モモイが勇気を振り絞り、部活の存続を掲げて反抗する。
しかし、ユウカ大佐は冷酷に言い放った。
『言葉を慎みなさい! 君は**ミレニアム四天王(ラピュタ王)**の前にいるのよ!』
そう言うと、ユウカ大佐は指パッチン一つで空中にいくつものホログラムモニターを展開した。
そこに映し出されていたのは、予算を没収され、廃部へと追いやられた数々の部活の末路。
「素晴らしいわ! 最高の結果だとは思わない?」
ユウカ大佐が狂気的な笑みを浮かべて同意を求める。
だが、モモイたちの目は死んでいなかった。まだ抵抗の意志が残っている。
それを見たユウカ大佐は、つまらなそうに鼻を鳴らした。
「チッ……ならば、廃部にしなければこの娘をもらっていくわ」
「ユズ!!」
なんとユウカ大佐は、ロッカーに隠れていたユズを捕まえ、人質にとったのだ。
モモイとミドリの表情が絶望に染まる。
その様子を見て、ユウカ大佐は手鏡を取り出し、モモイたちに突きつけた。自分たちが今、どれほど情けない顔をしているのかを見せつけるように。
「見なさい! 部員がゴミのようだわ! はっはっはっは!!」
――――――――――――――――――――――――ー
「――と言う感じでユズは連れ去られ、今私たちは廃部の危機にあるの」
モモイが重々しく語り終える。
版権元から怒られそうなほどガッツリとラピュタのパクリだが、著作権ギリギリを生きてきた銀魂の住人には効果覿面だった。
「なるほどな……。つまりあの女、ユウカはイシヘンジンでもあり、ムスカ大佐でもあったわけか」
銀時は深く頷き、木刀を握りしめた。
日頃、予算管理でユウカに絞られている恨みと、今の荒唐無稽なストーリーが見事にリンクしたのだ。
「そりゃあ大変だな。今すぐにでも生徒会に乗り込んで、全員で滅びの呪文(バルス)を唱えるぞ! 目がぁぁぁ! って言わせてやる!」
銀時が生徒会へのカチコミを決意し、立ち上がったその時。
バァァァァァァァン!!!
部室のドアが、爆発したかのような轟音と共に開かれた。
そこにいた全員が、ビクッとして振り返る。
「そんなわけ……」
そこに立っていたのは、サングラスなどかけていない、しかし鬼のような形相をした早瀬ユウカ本人だった。
実はドアの前で、今のふざけた寸劇をずっと聞いていたのだ。
自分の扱いが悪役どころか、某大佐と混ぜられてネタにされていることに、彼女の堪忍袋の緒は音を立てて千切れた。
「無いでしょォォァガァァァアア‼︎」
言葉よりも先に、身体が動く。
ユウカは残像を残すほどのスピードで踏み込むと、美しいフォームの飛び蹴りを放った。
「ムスカッ!!」
運悪く(あるいは必然的に)、射線上にいた銀時がその蹴りをモロに受ける。
ドゴォッ!!
銀時は「親方ァ! 空から男の子が!」と言い残す暇もなく、壁のシミへと変わった。ズルズルと重力に従って床へと剥がれ落ちる。
その姿は、まるで長年放置され、風化して粘着力を失った古い選挙ポスターが剥がれ落ちるかのような、独特の哀愁を漂わせていた。
「……め、目がぁ……目がぁぁぁ……!!」
「蹴ったのは横腹です! 肋骨です! いつまでムスカごっこを続ける気ですか!」
ユウカは怒髪天を衝く勢いで、倒れた銀時を見下ろした。その背後には、不動明王も裸足で逃げ出すほどの怒りのオーラが、阿修羅の如く立ち昇っている。
モモイとミドリは、直立不動で震え上がり、互いに抱き合ってガタガタと歯を鳴らしていた。
「だ、大佐だ……本物の大佐が来た……」
「お姉ちゃん……バルス……バルス唱えよう……? 一緒に滅びよう……?」
「無理だよぉ! 計算と物理(キック)で殴ってくるタイプの大佐には効かないよぉ! 3分待ってくれないタイプだよぉ!」
「誰が大佐ですか! 誰がラピュタ王家の末裔ですか! 私はミレニアムサイエンススクール生徒会『セミナー』の会計、早瀬ユウカです!」
ユウカはビシッと指を突きつけ、断固として訂正を求めた。
だが、この場にいるもう一人の狂人が、それを許さなかった。
「フッ……往生際が悪いぞ、大佐」
白衣をバサリと翻し、Mr.カッツーラこと桂小太郎が優雅に進み出た。
彼は割れた丸メガネの位置を直し、あくまで科学者としてのポーズを崩さない。
「貴様がその強大な**軍事力(太もも)と財力(会計権限)**で、この哀れな少女たちを支配しようとしていることは明白。だが、科学の光は遮れんよ」
「誰の太ももが軍事力ですか! 重戦車みたいに言わないでください! セクハラで訴えますよ変質者!」
「変質者ではない、Mr.カッツーラだ」
「どっちでも構いません!」
ユウカのこめかみに青筋がピキピキと浮かぶ。
彼女は一つ大きく深呼吸をし、沸騰しそうな頭を冷やすと、努めて冷静な(しかしドスの効いた)声で言った。
「いいですか? 私は別に悪の組織の幹部でもなければ、世界征服を企んでいるわけでもありません。単に……」
ユウカは、散らかり放題の部室、山積みのレトロゲームソフト、そしてあちこちに散乱したスナック菓子のゴミの山を、絶対零度の視線で見渡した。
「活動実績もなく、部費をゲームとジャンクフードに浪費し、挙句の果てには電気泥棒まがいのことまでしているこの『ゲーム開発部』に、正当な監査と指導をしに来ただけです!」
「うっ……」
「それは……その……」
モモイとミドリが言葉に詰まる。
どんな反論も封殺する、ぐうの音も出ない正論だった。
「え? そうなの?」
復活した銀時が、きょとんとした顔で口を挟む。
「てっきり俺は、お前が世界を自分の色に染めようとしてるのかと……」
「そうですよ。……って違います! もう……危うく銀さんに誤解を与えるところでした……」
「誤解って?」
「な、なんでもありません! 私が悪役だなんて……銀さんにだけは思われたく……ない、ですから……///」
ユウカはほんの一瞬、頬を染めて視線を逸らした。その表情には、年相応の少女の可愛らしさが覗く。
だが、すぐに表情を引き締め、厳しい生徒会役員の顔に戻った。
「……まぁ、銀さんとは色々と話したい事もありますが、それはまた後にするとして……モモイ!」
「うっ、はいっ!」
「ここからが本題よ! 本当に諦めが悪いわね。廃部を食い止める為に、わざわざシャーレまで巻き込むだなんて……。けど、そんな事をしても無駄よ。例え連邦生徒会のシャーレだとしても……いえ、あの連邦生徒会長が戻ってきたとしても! 部活の運営については、概ね各学校の生徒会に委ねられてるんだから」
ユウカは冷徹に現実を突きつける。
それは、ただの脅しではなく、揺るぎない規則(ルール)だった。
「そもそも、なんで急に廃部通告なんてことになってんだよ? 別に前々からそんなこと言ってたわけじゃねぇだろ?」
銀時は、モモイたちの説明になんとなく胡散臭さを感じていたため、改めてユウカに尋ねた。
「……ええ」
ユウカは頷くと、タブレットを取り出し、ゲーム開発部の惨状を示すデータを銀時と桂に見せた。
「廃部にするには明確な理由があります。……ゲーム開発部はそもそも、部員数4人という規定も守れて無い上に、部活としての成果を証明出来るようなものも無いまま、何か月も経っているんです」
「なるほど……。部員不足に実績ゼロ、か」
桂が顎に手を当て、鋭い眼光をモモイたちに向けた。
「もしや……『ゲーム開発部』とは名ばかりで、これまで開発などせず、ずっとただ部室でゲームをしていただけなのではないか?」
「ギクッ!!」
核心を突かれた音がした。
ミドリは図星を突かれて目が泳ぎ、冷や汗を流している。
だが、モモイだけは違った。
「い、異議あり! 凄くあり! 私達だって全力で部活動してる! だからあの、何だっけ……上場閣僚? とかいうのがあっても良い筈!」
自信満々に胸を張り、盛大に言葉を間違えるモモイ。
「モモイ! そんな言葉も知らないの! 情状酌量よ! 上場してどうするのよ、内閣組閣するつもり!?」
ユウカの堪忍袋ゲージがまた一つ上昇する。
「そうだった。そうだった。えへへ」
「笑って誤魔化さない!」
モモイの能天気な態度に、ユウカの声色が一段低くなる。
「全力で活動してる……? よくもまぁ、そんなことが言えたものね。バカも休み休み言いなさい!」
「あちゃー……お前ら終わったな……これガチギレもんだよこりゃ、ふとももし」
銀時は戦慄した。
以前、パチンコ資金散財事件でユウカに本気で怒られた時のトラウマが蘇る。あの時の彼女は、鬼よりも怖く、そして母親よりも口うるさかった。
ユウカの口撃(計算)は止まらない。
「そもそも、貴女たちがこれまで何をしてきたか忘れたわけじゃないでしょうね?」
ユウカは指を折りながら、過去の罪状を列挙し始めた。
「校内に変な建物を建てたと思ったら、内装をまるでカジノみたいに装飾して違法ギャンブル大会を始めるし! 『レトロゲームの聖地を探す』とか言いながら、無関係な古代史研究会を襲撃して遺跡を荒らすし……!」
「うげぇ、マジかよ……」
銀時と桂は顔を見合わせた。
自分たちも大概だが、この子供たちも相当な無法者(アウトロー)である。
「おかしいでしょう!? 全力かもしれないけど、部活動としてはベクトルが間違ってるわよ! それにこれだけ各所に迷惑を掛けておいて、よく毎度のように部費なんか請求出来るわね! その神経の太さは装甲板並みよ!」
もはや、モモイの言っていた「ムスカ大佐」の方がマシに思えるほどの正論の雨あられ。
銀時と桂からも哀れな目で見られ、モモイは小さくなるしかなかった。
「うぐっ……」
「まあまあユウカ殿、少し落ち着こうではないか。血管が切れてはエリートの損失だ」
流石に見かねた桂(Mr.カッツーラ)が仲介に入った。
「ふぅ……すみません桂さん。少し頭に血が上ってしまって……」
ユウカは乱れた前髪を直し、冷ややかな瞳でモモイを見下ろした。
「それで? 真っ当な言い訳くらいしてみたらどうなの? 私を納得させられるだけの理由があるなら聞いてあげるわ」
「と、時には……結果よりも心意気を評価してあげる事も必要というか……プロセスを大事にするというか……」
モモイが震える声で、必死に言葉を紡ごうとする。
だが、ユウカはそれを一刀両断した。
「負け犬の言い訳なんて聞きたくない!」
「……」
一瞬の静寂。
そして、銀時がボソリとツッコミを入れた。
「おい。聞きたいの聞きたくないの? どっちなの? メンヘラの彼女かお前は」
「そもそもここミレニアムでは、結果が全てなの!」
ユウカの言葉は、鋭い刃のようにゲーム開発部の部室を切り裂いた。
だが、モモイは震える足で立ち上がり、精一杯の反論を試みた。
「け、結果だってあるもん! 私達だって、毎日真面目にゲームを開発してるんだから!」
その必死な様子に、銀時と桂も「お? 意外とやるじゃねぇか」と耳を傾ける。
「そ、そうですよ! 『テイルズ・サガ・クロニクル』はちゃんとあのコンテストで受賞、も……」
ミドリが姉の助太刀に参上する。
しかし、聞き慣れないタイトルに、銀時と桂の頭上には巨大なクエスチョンマークが浮かんだ。
「テイルズ・サガ・クロニクル? なんだそりゃ。テイルズなのかサガなのかクロニクルなのか、版権的にギリギリな名前だなオイ」
銀時がボソリと呟くと、ユウカがため息交じりに補足説明を入れた。
「……そうね。確かに『特別努力賞』みたいなものは受賞してましたね。銀さんと桂さんはご存じないようですが……『テイルズ・サガ・クロニクル』。これこそが、このゲーム開発部における唯一にして最大の『成果』です」
「へぇー。なんだ、ちゃんと作ってたのは作ってたんだな」
銀時は少しだけ感心したような声を出す。
だが、彼の長年の勘が告げていた。これで話が終わるはずがない、と。
「ふ、ふふんー♪ どうだ!」
モモイが得意げに胸を張る。
その姿を見て、ユウカは冷ややかな笑みを浮かべ、タブレットを銀時たちの前に差し出した。
「銀さん、桂さん。論より証拠です。このゲームのユーザーレビュー一覧を見てみてください」
そこに表示されていたのは、銀時の想像をはるかに超えた地獄絵図だった。
「レビュー……うわっ」
銀時の顔が引きつる。
桂もまた、メガネの奥の目を丸くしていた。
「……こ、これは……」
★☆☆☆☆(1.0)
★☆☆☆☆(1.0)
★☆☆☆☆(1.0)
> 『私がやってきたゲーム史上、ダントツで「絶望的」なRPG。いやシナリオの内容とかじゃなくて、起動した瞬間にPCがフリーズする完成度が絶望的』
> 『このゲームに何が足りないかを数えだしたらキリが無いけど……まぁ、開発者に一番足りてないのは「正気」だろうね』
> 『このゲームをプレイした後だと、あの伝説のクソゲー「デッドクリームゾーン」が名作に思えてくる不思議。ある意味悟りを開ける修行ツール』
> 『ヒロインちゃんの絵だけは可愛かったな! それ以外は産業廃棄物!』
>
「うわぁ……」
銀時と桂は、同時に顔を引きつらせてドン引きした。
「そんな顔しないでよ〜〜!! 私たちの魂の結晶なのにぃ〜!!」
唯一の味方だと思っていた二人にまで引かれ、モモイが涙目になる。
「つまりだ……。絵を描いたミドリと、プログラム組んだユズってのはきちんと仕事をしてて、シナリオとディレクション担当のモモイに才能がないってことだな。戦犯はお前だ」
銀時がバッサリと切り捨てる。
「は、はっきり言わないでよ〜! 心が折れちゃうよぉ!」
「わ、私達のゲームは……インターネットの悪意なんかには屈しな……」
モモイは涙を堪えながら反抗しようとするが、ユウカが容赦なく追い打ちをかける。
「例えユーザー数が無限にいたとしても、沢山の評価が収束すればそれは真実に一番近い結果よ。それに貴女達の持っている結果は……その『クソゲーランキング1位』という不名誉な称号だけでしょう?」
ユウカは冷徹に、そして的確に急所を突く。
「銀さん、一番上に表示されている、最も『参考になった』評価を音読してください」
「えーと……」
銀時は嫌々ながらも、画面の文字を読み上げた。
『世界設定、アイデアはまだいいと思います。キャラのイラストや敵のイラストなどはとても可愛らしくていいと思うのですが……選択肢のボタンを間違えただけで即死、説明のない謎の敵、突然現れて意味深なことだけ言って消える謎キャラ……さらにラストの「俺たちの戦いはこれからだ!」感全開のモヤっとした終わり方がとても残念でした。金返せ』
「…………」
部室に重い沈黙が流れる。
もう、ゲームとしてシナリオ担当のモモイが戦犯であることは確定事項だった。
「ね? 貴女達のような部活がこのまま活動していても、かえってミレニアムの名誉を傷つけるだけよ。それにその分の部費を他に回せば、きちんと意義のある活動をしている生徒達のためにもなるの! ……わかった?」
「「…………グスッ」」
あまりの正論と猛攻に、流石のモモイも心が折れたらしく、鼻をすすり始めた。
泣いているモモイをよそに、桂が白衣を正してユウカに向き直った。
「なぁユウカ殿。……何とかして、廃部は無かったことにならないだろうか? 若者の芽を摘むのは忍びない」
「そう言われても……。自分達の活動にも意義があるのだと主張したいのなら、『証明』してみせなさい! としか言えません」
ユウカは腕を組み、毅然と答える。生徒会の会計として、情に流されるわけにはいかないのだ。
「ヒグッ……証明って……?」
泣きじゃくるモモイが尋ねる。
「な、何度も言ったでしょう? きちんとした功績や成果を証明すれば廃部を撤回するって。例えばスポーツでのインターハイ優勝とか、エンジニア部の発明品の公表とかね……。『GOTY(ゲーム・オブ・ザ・イヤー)』、これさえ取れば少しは考えるかも」
ユウカの言葉に、モモイがガバッと顔を上げた。
「な、なら!」
「とはいえ、出せば何とかなるとも思えないわね。貴女達の能力は、あのクソゲーランキングが証明済みだもの」
希望を見せた直後に絶望へ突き落とす。ユウカの飴と鞭(鞭多め)に、モモイは再び黙り込むしかなかった。
「……」
才羽姉妹は今にもギャン泣きしそうな顔で俯く。
そんな二人の姿を見て、銀時の心の中で何かが動いた。
「どうせならお互い楽な形で済ませましょう? 今すぐ部室を空けて、この辺のガラクタも捨てて……」
「ガラクタじゃ無いもん!! 私たちの宝物だもん!!」
ユウカがレトロゲームの山を片付けようとすると、モモイとミドリが必死に抵抗する。
ユウカも本心では可哀想だと思っているのだろう。だが、心を鬼にして迫る。
「……じゃあ何なの? 何か結果が出せそうな物があるわけ!?」
「そ、それは……――分かった! 全部結果で示す!」
モモイが叫んだ。
「お?」
「その為の準備だってもう出来てるんだから!」
「え?」
ミドリが目を丸くする。そんな準備など聞いていない。
「そうなの!?」
ユウカも虚を突かれたように目を見開く。
「何でミドリが驚くのさ!? ……とにかく私達には切り札がある! その切り札を使って、今回の『ミレニアムプライス』に私達のゲーム……『テイルズ・サガ・クロニクル2』を出すんだから!」
モモイは驚くミドリを置き去りにし、高らかに宣言した。
だが、銀時は冷静にツッコミを入れた。
「売れてねぇゲームの続編出したって、売れねぇと思うんだけどねぇ……? 傷口広げるだけじゃね?」
「銀さん黙って!! 今いい流れなんだから!」
モモイが銀時の口を手で塞ぐ。
「所でユウカ殿、ミレニアムプライスとは?」
桂が尋ねると、モモイが代わりに答えた。
「ミレニアム中の部活が各々の成果物を競い合う、ミレニアムでも最大級のコンテスト! ここで受賞さえすれば、いくら何でも文句は言えないでしょ!」
「……まぁそうね。受賞出来たならの話だけど」
ユウカは少し考え込んだ後、厳しい現実を突きつけた。
「けどねモモイ。今貴女が言っているのは、地方予選一回戦負けの野球部が、いきなりメジャーリーグで優勝するとか、そういうレベルの話よ? 雲を掴むような話だって分かってる?」
あまりに無謀な挑戦。
だが、それを聞いてニヤリと笑う男がいた。
「テメェら……この部……残してぇか?」
銀時が低い声で問いかける。
「う、うん!」
「残したい!」
「何があっても逃げねぇと誓えるか? 地獄を見ても、コントローラーを離さねぇと言えるか?」
「うん!」
「分かった。……そんだけの覚悟があるんだったら、俺も力を貸してやらぁ」
銀時は木刀を肩に担ぎ、立ち上がった。
「ユウカ。そのミレニアムプライスまでは後どれくらいだ?」
「……2週間です」
「2週間か……。上等じゃねぇか」
銀時は不敵に笑う。
「わかった。じゃあそれまでに、完璧で究極の……『神ゲー』を俺たちで作ってやるよ」
「道は険しいですよ? 相当な茨の道になりますよ?」
ユウカが念を押すが、銀時は鼻で笑い飛ばした。
「どんなに高い壁だろうが、険しい道が待ち構えていようが知ったこっちゃねぇさ……。乗り越えなきゃ、明るいエンディングなんて訪れはしねぇからな」
銀時の瞳に、かつて白夜叉と呼ばれた頃の鋭い光が宿る。
彼は才羽姉妹の頭にポンと手を置き、力強く宣言した。
「俺がこの子達を……この『クソゲー製作所』を守ってやるよ!」
『…!』
ユウカは銀時の言葉に、思わず息を飲んだ。
だらしない大人のはずなのに、どうしてこうも格好良く見えてしまうのか。
「……わかりました」
ユウカは一つため息をつき、表情を緩めた。
「今日からミレニアムプライスまで2週間。この短い時間でどんな結果を出せるのか……楽しみにしています」
ユウカは背を向け、少しだけ顔を赤らめながら言った。
「それにしても……まさか銀さんの前で、こんな可愛くない所を見せてしまう事になるなんて……。ただこれも生徒会の仕事なので、次はもっと違った……落ち着いた状況でお会いしましょうね。それではまた」
そう言い残し、ユウカは足早に部室を出て行った。
嵐が去った部室に、静寂が戻る。
「銀さん……あの、ありがとう!」
モモイとミドリが涙目で礼を言う。
だが、銀時は余韻に浸る間を与えなかった。
「礼を言うのはまだ早ぇぞ。……お前ら、さっさと準備しな。廃墟に行くぞ」
「え? 廃墟?」
「そ、そうだね!」
「……え、本当に廃墟?」
「40秒で支度しな! ラピュタが崩壊する前に出発だ!」
「まだ引っ張るのそのネタ!?」
こうして、銀時たちとゲーム開発部の、無謀で過酷な2週間の戦いが幕を開けた。
次回予告
銀時「結局何で廃墟に行くのか分からず仕舞いだな」
ミドリ「お姉ちゃんがちゃんと説明しないから」
モモイ「悪かったって」
桂「あれは何だろうか」
謎のロボットたちの軍団
次回 遺跡探索での報酬で俺たちは悪くねぇ!
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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銀時
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新八
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神楽
-
沖田
-
土方
-
山崎
-
高杉
-
桂
-
定春
-
エリザベス
-
ホシノ
-
シロコ
-
ヒナ
-
アコ
-
ミカ
-
ナギサ
-
セイア
-
ユウカ
-
ノア
-
近藤