透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
キサキちゃんも登場させたいな
【ミレニアムタワー某所・C&C 待機区画】
「────なるほどな」
ミレニアム最強のコールサイン『ゼロゼロ』――美甘ネルは、深く息を吐き出すと、背中に金色の龍が舞うスカジャンを壁の柱に預け、苛立たしげに腕を組んだ。
彼女の鋭い視線の先には、たった今、信じ難い敗北の報告を終えた3名のエージェントたち――アカネ、アスナ、カリンが、メイド服の裾を乱すこともなくきっちりと並んで立っていた。
部長であるネルが、外郭の用事でタワーを不在にしていた、ほんのわずかな隙。その間にセミナーから下された緊急の防衛依頼と、それに伴う異常すぎる事態。
「木刀でマッハの弾丸を弾き返す天然パーマの男」「プラカードでロボットを粉砕する巨大な白い鳥」「炎を吹き出す江戸のからくりメイド」――あまりにもカオスで理解不能な情報共有をすべて聞き終え、ネルは眉をひそめた。彼女の好戦的な顔つきには、怒りよりもむしろ、微妙な困惑が滲んでいた。
「『ゲーム開発部』、か。……ミレニアムにそんな弱小部活があったなんて名前すら聞いたこともねェが……結局、そいつらのハッタリと盤外戦術に、ウチの精鋭が見事に一杯食わされたってことか。……ついでに、そのシャーレの『先生』たちにもな」
「……申し訳ありません」
ネルの言葉に、アカネが静かに、しかし深い悔恨を込めて深々と頭を下げた。丸眼鏡の奥の瞳は伏せられ、いつもの余裕に満ちた微笑みは完全に消え去っている。
「不在のリーダーに代わり、この依頼を受け、迎撃の作戦を立案・指揮したのは全てこの私です。……結果として、無敗を誇るメイド部の名に、そしてC&Cの輝かしい戦果に、拭いようのない泥を塗ってしまいました。この失態、罰は何なりとお申し付けください」
自らの采配ミスを責め、全責任を一人で背負い込もうとするアカネ。
しかし、ネルはその悲痛な謝罪を、鼻で笑って軽く一蹴した。
「────んなこたぁ、どうでもいい」
「……え?」
アカネが弾かれたように顔を上げる。
ネルは冷静な表情を崩さず、アカネたちを咎めることも、激昂して罰を与えようとすることもなかった。それどころか、彼女の口元には、どこか呆れたような、それでいて微かに面白がるような笑みが浮かんでいたのだ。
「それに、あたしがここに戻ってきた直後に、リオから直接連絡があったんだよ」
「調月会長から、ですか?」
ミレニアム生徒会『セミナー』のトップにして、絶対的な権力者である調月リオ。その名前が出た瞬間、三人の空気がピリッと張り詰める。
「ああ。……『今回の防衛任務は撤回する。全て、最初から無かったことにしろ』だとさ」
「ッ!? ……それは、一体どうして……?」
アカネたちは驚愕し、目を見開いた。
施設を物理的に破壊され、重要な押収品を奪われたというのに、セミナーのトップが直々に下した「任務の取り消し」指示。いくら何でも不自然すぎる。そんな重大な被害の事実を、どうして突然覆したのか、エージェントたちの優秀な頭脳をもってしても理解が追いつかない。
「アタシの知ったこっちゃないさ。……でも、多分」
ネルは目を細め、脳裏に浮かぶ二人の天才――冷徹な会長と、全知のハッカーの顔を思い浮かべた。
「リオも、あのヒマリも……最初から『確かめたかった』んじゃねェのか?」
「……ゲーム開発部の、力量をですか?」
「惜しいな。アイツらがわざわざウチの部隊を当て馬にしてまで確かめたかったのは、その『アリス』とかいう得体の知れねェ新入部員と……シャーレの『先生』だ」
「あーっ! 銀ちゃんたちのこと!?」
アスナが、弾んだ声で納得したように大きく頷く。
確かに、シャーレの先生とその一派(銀時たち)のデタラメな実力は異次元だ。常に最悪の事態を想定するリオ会長が、その底知れぬ実力を警戒して、C&Cという「最強のモノサシ」を使って計測しようとするのは不思議ではない。
だが、なぜそこに、ただの新入部員であるアリスまで含まれているのか。
「確かに……。あの大人たちの実力は、異次元と言っても過言じゃありません。リオ会長が裏で動く理由も分かります。……が、なぜアリスという少女まで?」
アカネの鋭い疑問に、ネルは一切興味なさそうに肩をすくめた。
「さあな。その辺の小難しい事情や陰謀は、アタシの知ったこっちゃねェよ。アタシは小難しい計算式よりも、目の前のブッ飛ばし甲斐のある奴にしか興味がねェからな」
ネルは、背中を預けていた柱からゆっくりと身体を離し、アカネに向かって新たな指示を与えた。
その表情は、敗北への怒りでも、組織への不満でもない。ただ純粋に、血沸き肉躍るような「強敵」の存在を知った、生粋の戦闘狂(ファイター)としての獰猛で柔らかな笑みだった。
「アカネ、徹底的に調べておけ」
「何を、ですか?」
「『ゲーム開発部』だ。所属してる連中も、その背後関係もまとめてな。……もちろん、シャーレの『先生』もだ」
「いきなり何故……。私たちメイド部としての『リベンジ』、ですか?」
「チッ、その表現はなんかアタシが根に持ってるみたいで癪だけどな。……まぁ、ただちょっと『興味が湧いただけ』だ。一通り情報が揃ったら、直接そいつらんとこに挨拶(カチコミ)に行くぞ」
ミレニアム最強の猟犬が、明確に銀時たちを「標的(ターゲット)」として定めた瞬間だった。
その言葉を聞いた瞬間、アカネの瞳の奥に、先ほどの悔恨を完全に焼き尽くすような、ドス黒くも美しい炎が灯った。
「……はい。望むところです」
アカネは、いつもの完璧なメイドの姿勢に戻り、自信満々に、そしてどこか嗜虐的な笑みを浮かべて一礼した。
「今頃あの子たちは、部室で『ミレニアム最強のメイド部に一泡吹かせた』と無邪気に喜んでいるはずです。ふふっ……次にお会いする時、絶望でどんな可愛い顔をしてくださるのか……今からとても楽しみですね」
恐るべきリベンジの意気込みを見せるアカネ。
その不敵な様子に当てられるように、他のエージェントたちも、それぞれの胸の内で熱い意欲を燃やし始める。
「うんうんっ! わくわくのリベンジマッチだね! アスナも、今度はもっといーっぱい銀ちゃんと遊べるように、しっかり準備しなきゃ!」
アスナが、今から遠足に行く子供のように両手を合わせてピョンピョンと跳ねる。
「……以前の戦闘では、己の未熟さゆえにスナイパーとしての役目を果たせなかった。次は、決して後れを取らない。あのエンジニア部のメイドごと、必ず私の手で仕留めてみせる」
カリンが、巨大な対物狙撃銃を握る手にギュッと力を込め、静かに、しかし苛烈な闘志を燃やして誓う。
こうして、ネルの号令のもと、C&Cとゲーム開発部(+万事屋)との再戦が、密かに、しかし決定的なものとして動き出した。
今度は、手加減も油断も一切ない。
ミレニアム最強の『矛』が、その持てる全ての力を引き連れて、平和なゲーム開発部の扉を物理的に蹴り破る日は、そう遠くない未来に迫っていた――。
――――――――――――――――――――――――
【同じ時刻――ミレニアムサイエンススクール・ゲーム開発部 部室】
普段なら、レトロゲームのピコピコという電子音と、少女たちの賑やかで楽しげな笑い声が絶え間なく飛び交うはずのその場所は……今日に限っては、まるで通夜の晩のような、息が詰まるほど重苦しい空気に支配されていた。
ブラウン管モニターの青白い光だけが、完全に生気を失い、どん底に沈んだ少女たちの姿を幽霊のように照らし出している。
「……こんなに落ち込むなんて……伝説のクソゲー、『テイルズ・サガ・クロニクル』のプロトタイプを誤ってネットにアップロードして、世界中から酷評された時以来だよ……」
部室の隅で膝を抱え、床の木目を虚ろな目でなぞりながら、ミドリが力なくぽつりと呟いた。いつもは冷静な彼女の背中には、目に見えるほどのどす黒いオーラが立ち上っている。
そして彼女の隣では、さらに凄惨な状態に陥っている双子の姉と、部長の姿があった。
「ふふっ……ふへへへ……。全部終わった! 全部おじゃんだ! もうおしまいだぁーっ!」
モモイは、半ば発狂したように床をゴロゴロと転げ回り、両手で頭を抱えて壊れたブリキのおもちゃのように笑い声を上げていた。その目に光はない。
そんな彼女たちを心配そうに見つめるアリスの切実な声も、今のモモイの耳には全く届いていなかった。
「モモイ……! 大丈夫ですか? HPゲージが真っ赤に点滅して、BGMがピンチの時の曲に変わっています!」
「ふへへへ……だめだ、もう終わりだよ……。バッドエンドだ……セーブデータも消し飛んだんだ……」
アリスの必死の呼びかけにも、モモイは天井を見つめたまま虚ろな笑いを繰り返すばかりだ。アリスはオロオロしながら、今度はミドリの方へと歩み寄った。
「ミドリ? その……大丈夫、ですか? アリスがホイミ(回復魔法)をかけましょうか?」
「アリスちゃん、ごめん……。今は、何も話したくない気分なの……」
ミドリもまた、精神的に完全に打ちのめされ、言葉を発する気力すら奪われていた。彼女の手元のモニターでは、繰り返しプレイしては失敗しているアクションゲームの【GAME OVER】の文字が、残酷に、そして虚しく点滅し続けている。
「えっと、それじゃあユズは──」
アリスが、最後の希望を求めてロッカーの方を振り向く。しかし、そこにはこの部室で最も深い闇に呑まれた少女の姿があった。
「嚇怒(かくど)、破滅、濫觴(らんしょう)、糜爛(びらん)、絶望、虚脱……。嗚呼、世界は今、ラグナロクの業火に包まれ、不可逆の破滅へと向かっているのですね……」
「ユズ!?」
ユズの壊れ方は、群を抜いて酷かった。
普段の恥ずかしがり屋な彼女なら絶対に口にしないような、辞書を引かなければ分からない暗黒の語彙(ポエム)を虚ろな瞳でブツブツと呟き続け、まるでこの世の終わりを幻視する暗黒預言者のような表情を浮かべていたのだ。
「うぅ……アリスには、状態異常『絶望』を回復するアイテムがありません……! どうしたらいいか……銀さんたちがいてくれれば、きっと力技でなんとかしてくれるのに……!」
アリスが涙目でそう零した、まさにその瞬間だった。
ガチャリ。
重苦しい部室の空気を物理的に切り裂くように、扉が無造作に開かれた。
そこに入ってきたのは、セミナーの冷酷な算術使い(ユウカ)に呼び出され、今回のタワー襲撃の件について「ねっちりたっぷりと」絞られ、事情聴取を受けてきた銀時と桂であった。
「……おいおい、なんだこの湿っぽさは」
銀時は、ボサボサの天然パーマを掻きむしり、ゲッソリとやつれた顔で部室を見渡した。
「ここで誰かの葬式でもやってんの? 伝説のゲーム作りの開始早々、パーティー全滅してお釈迦じゃねェか」
死んだ魚の目をさらに淀ませて呆れる銀時。
だが、その聞き慣れた気怠げな声が部室に響いた瞬間――床に転がっていたモモイが、弾かれたようにビターン!と跳ね起きた。
「銀ちゃ〜〜〜〜〜〜んっ!! と、桂さ〜〜〜〜〜〜んっ!!」
「うおっ!?」
「もうっ! 何もかも、終わりだよォォォォォーーー!!!」
モモイは、ロケットのような勢いで銀時の腰に泣きつき、顔をぐりぐりと押し付けながら、滝のような涙と鼻水を流して子供のように絶叫し始めた。
完全な絶望に包まれたゲーム開発部に、頼れる(?)大人たちがようやく帰還したのだった。
「……離せ」
銀時は、死んだ魚の目をさらにどんよりと濁らせながら、腰にコアラのようにしがみついてギャン泣きするモモイの頭をペチペチと叩いた。だが、絶望のどん底にいるモモイのホールド力は凄まじく、一向に離れる気配がない。
「どうしたのだ? ゲームのやりすぎでついに脳の処理落ちでも起こしたか?」
マリオの帽子を被ったままの桂が、腕を組んで深刻そうに頷き、明後日の方向から推理を披露し始めた。
「もしや……お前たちが血のにじむような努力で救い出したピー◯姫が、エンディングであんな事やこんな事をされてしまう『NT◯(ネトラレ)エンド』を見てしまったのか!許せん、PTAに抗議するべきだ!」
背後からひょっこり顔を出した桂が、何が起こっているのか全く理解できないまま、あまりにも偏った同人誌じみた知識を披露して混乱気味に問い詰める。
「ちょっとヅラ、お前のドロドロしたニッチな趣味話なんて誰も1ミリも興味ないから黙っててくんない? 空気読めよ」
銀時は、しがみつくモモイを引き剥がそうとしながら、呆れた様子で桂の肩をバシッと叩いてツッコミを入れた。
「どうせアレだろ? ピー◯姫がクッ◯に亀甲縛りで鞭に打たれて、完全にSMの快感に目覚めちゃって『もうマ◯オの世界には戻れないわ♡』みたいな、一部の層にしか刺さらないニッチなバッドエンド見たんだろ。どうせ」
「二人とも完全に自分たちの趣味の話全開なんだけどォォォ!?」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしたモモイが、顔を上げて強烈なツッコミを返す。
「SMプレイもNTRも、私たちには全く興味ないから!! そもそも全年齢対象のお話に何持ち込んでんのこの大人!!」
ミドリも、部屋の隅から青筋を立てて怒鳴り散らした。純粋な女子高生の部室が、一瞬で深夜のファミレスのような最低の空気へと成り下がる。
「ああ? じゃあどうしたってんだよ。この世の終わりみたいな顔しやがって」
銀時が、ようやくジャージからモモイを引き剥がし、ため息をつきながら本題を促した。
――モモイたちが、魂が抜けたようにここまで絶望しきっていた理由。
それは、他でもない。モモイの血と汗と涙の結晶である『数百時間のゲームデータ』を犠牲にしてまで手に入れた、伝説のゲーム開発の聖書(バイブル)……【G.Bible】のデータファイルにあった。
万事屋とゲーム開発部が、理不尽な最新鋭ロボット兵の大群を木刀で粉砕し。
ミレニアム最強のメイド部『C&C』との、マッハの弾丸が飛び交う死闘をくぐり抜け。
さらに、冷酷な算術使いの圧倒的な包囲網を、エリザベスのスネ毛ボレーシュートと桂の『キツツキ戦法』でひっくり返し……。
ヴェリタスから借り受けた解析ツール『鏡』を使って、ようやく、ようやくの思いでガチガチのパスワードを解除し、そのファイルを開いたのだ。
期待に胸を膨らませた少女たち。
これさえあれば、世界で一番面白い「神ゲー」が作れる。ユウカから突きつけられた廃部の危機も、全てが解決する。そう信じて疑わなかった。
しかし。
暗い部室のモニターに、ポツンと表示されたテキストファイル。
そこに書かれていたのは、ゲームのプログラムコードでも、究極のシナリオ術でも、美麗なグラフィックの制作技法でもなかった。
ただ、一行。
たった、一言だけだった。
『ゲームを愛しなさい』
…………それだけだった。
「…………」
「…………」
モニターの光に照らされたそのたった8文字を読んだ瞬間。
銀時の顔から表情がスゥッと消え去り、数秒の、永遠にも等しい沈黙が部室に落ちた。
そして。
「……『なるほどな〜! ゲームへの愛が一番のスパイスだったんだね☆』……ってなるかァァァァァァァァァアアア!!!」
ガシャァァァァァン!!
銀時はすかさず声を張り上げ、両手を大きく振り上げて、目の前にあったパイプ椅子を思い切り蹴り飛ばした。
彼の額には、今にも破裂しそうなほど太い青筋が何本も浮かび上がっている。
「なんだこのペラッペラのポエム!! アキバの裏路地で売ってる怪しい自己啓発本でももうちょっとマシなこと書いてあるわ!! 莫迦にしてんのか伝説!俺は今すぐこのクソデータをゴミ箱にぶち込んで完全消去を愛してやりてェよ!!」
銀時はモニターの画面を両手でガクガクと揺さぶり、隠しテキストがないかキーボードをデタラメに叩きまくったが、画面には無慈悲にその一言が鎮座しているだけだった。
「だ、だよね……!? 銀さんもそう思うよね!? 私の……私の息子たち(セーブデータ)を犠牲にして手に入れた結果がこれだよ!? もう、何から手を付けたらいいのか……」
モモイが、再び銀時の足元でうずくまり、ワンワンと泣き始めた。
「待つんだ銀時。よく見るんだ、これは何かの暗号かもしれん! 例えば『ゲ』はゲロのゲ、『ー』は……えーと、『ム』はムラムラしますのム……」
「解読でムラムラすんな!どこぞのゴリラかテメェは!!」
ポンコツな推理を始める桂を物理的に黙らせ、銀時はボサボサの頭を乱暴に掻きむしった。
横では相変わらずユズが「ああ……全ては虚無……電子の海の藻屑……」と暗黒ポエムを量産し続けており、ミドリは魂が抜けたまま壁を見つめている。
「ピロリン!」
しかし、そんなお通夜のような惨状の部室の中で、ただ一人。
140kgのレールガンを背負った純真無垢なAI少女だけが、モニターの文字を見て、瞳を星のようにキラキラと輝かせていた。
「『ゲームを愛しなさい』……。とても、とても良い言葉です! アリスは、ゲームを愛しています! モモイやミドリやユズと一緒にやるゲームが、大好きです!」
アリスは、胸に手を当てて、一切の曇りのない、真っ直ぐで力強い声で宣言した。
その言葉は、絶望の泥沼に沈んでいた部室の空気に、一筋の清らかな光のように響いた。
「アリスちゃん……」
泣き腫らした目で、モモイが顔を上げる。
「伝説の武器(G.Bible)には、隠された真理があったのです! きっと、魔法の呪文やチートコードではなく……『作り手の愛』こそが、プレイヤーの心を動かす最強の魔法なんだと、昔の勇者(開発者)は伝えたかったのです!」
アリスの無邪気で、しかし本質を突いた真っ直ぐな言葉。
銀時は、暴れるのをやめて頭を掻き、大きく息を吐き出した。
「……ま、このポンコツAIの言う通りかもしれねェな」
銀時は、倒れた段ボール箱を足で直し、そこにどっかりと腰を下ろした。
「チート級の神ゲーの作り方なんて、最初からこの世に存在しねェんだよ。もしあったとしたら、それはもう『ゲーム』じゃなくて、ただの『作業』。……どんなに理不尽なクソゲーでも、バグだらけのゲームでも、作ってる奴らがそこに『愛』を込めてなきゃ、遊ぶ奴の魂は震えねェ」
ダメな大人の、適当で、荒っぽくて、けれど何よりも背中を押してくれるその言葉が、少女たちの心に小さな、しかし確かな火を灯した。
「……銀さん」
「……どんなに理不尽なクソゲーでも、バグだらけのゲームでも。作ってる奴らが、その世界に『愛』を込めてなきゃ、遊ぶ奴の魂は震えねェ。小手先の技術より、そういう泥臭ェもんの方が案外、人の心には届くモンさ」
それは、数々の修羅場を越え、不器用にしか生きられないダメな大人からの、最高の慰めの言葉だった。
「銀さん……」
ミドリが、ハッとしたように銀時を見る。その瞳に、微かな光が戻り始めていた。
「G.Bibleが空っぽだったなら……答えは一つしかねェだろ」
銀時は、床に転がっていたモモイのパーカーの首根っこを掴んでグイッと引っ張り上げ、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「テメェらの手で、その空っぽの聖書(ファイル)に、てめェらだけの『神ゲー』の歴史を書き込んでやるんだよ。……愛、たっぷり込めてな」
薄暗い部室の中で。
ダメな大人の、適当で、荒っぽくて、けれど何よりも強く背中を押してくれるその言葉が、絶望に沈んでいた少女たちの心に、小さな、しかし決して消えない確かな火を灯した。
「……銀さん」
その言葉の重みと温かさを、モモイもミドリもユズも、心から感じ取っていた。彼女たちは、銀時と桂を見上げながら、袖でぐしぐしと涙を拭い、ゆっくりと、己の足で立ち上がった。
すると、部屋の隅から、白い謎の宇宙生物(エリザベス)が無言でスッとプラカードを掲げた。
そこに書かれていたのは、シンプルで力強い発破だった。
『いつまで泣いている。さっさと立ち上がれ! 神ゲー、作るんだろ?』
その文字を見た瞬間。モモイたちは互いの顔を見合わせ、そして、決意に満ちた表情で力強く頷き合った。
銀時が、ゴツゴツとした大きな右手をスッと前に差し出す。
そこに、桂の手が重なり、エリザベスの白いヒレが重なり、そしてアリスの小さな手が勢いよく乗せられた。
「私の夢は……」
普段はロッカーに引きこもっている、誰よりも臆病な部長――ユズが、震える声を振り絞って口を開く。
「私たちが作ったゲームを、みんなに『面白い』って言ってもらうこと……。だから……私は、この夢が終わらないで欲しい。絶対に、終わらせたくない……!」
ユズの決意に満ちた言葉に、モモイとミドリの目から、今度は悔しさではなく、熱い闘志の涙が滲んだ。
「うん……! まだ時間はある! やろう、やってやろう! 私たちが作りたいものを、最後まで意地でも作り上げよう!」
モモイが、いつもの太陽のような笑顔を取り戻して叫ぶ。
「うん! 絶対にユウカ先輩をギャフンと言わせる神ゲーを作ってやるんだから!」
ミドリが、双子の姉の手に自らの手を重ねる。
「はい! 勇者のパーティーは、決して諦めません!」
アリスが、満面の笑みで最後に手を重ねた。
モモイ、ミドリ、ユズ、アリス。そして銀時、桂、エリザベス。
種族も年齢も世界線も超えた彼らの手が、力強く、ギュッと握り合われた。
「よし。そうと決まれば、モタモタしてる暇はねェ! ミレニアムプライスの締め切りまで、死ぬ気で徹夜だテメェら!」
「「「おおーーーーっ!!!」」」
銀時の号令と共に、少女たちの元気な声が部室に響き渡る。
廃部の危機。空っぽの聖書。残された時間はあとわずか。
状況は最悪のままだが、彼女たちの目にもう迷いはなかった。ゲーム開発部の、己の魂と愛を賭けた本当の「神ゲー」制作への挑戦が、今、熱く幕を開けたのである。
次回予告
銀時「な、何とかゲームの開発は間に合ったな」
ユズ「銀さん、桂さん、エリザベスさん、ありがとう。こんなに楽しくゲーム開発出来たのは久しぶりだった」
ミドリ「でも大丈夫かな?パロディ入れまくって大変なことになってるけど…」
桂「案ずるなその時は銀時がスーツという戦闘服を着て関係各社に謝罪でもしてくれるさ」
銀時「何で俺だけなんだよお前も謝れ!」
ドカァァァァァン!
みんな「!?」
ネル「よぉ下克上仕返しにきたぜ?」
次回 ヤンキーは派手だが中身は優しい
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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銀時
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新八
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神楽
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沖田
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土方
-
山崎
-
高杉
-
桂
-
定春
-
エリザベス
-
ホシノ
-
シロコ
-
ヒナ
-
アコ
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ミカ
-
ナギサ
-
セイア
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ユウカ
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ノア
-
近藤