透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
新八「え?また僕がナレーションをするのか……はぁ。わかりましたよ」
新八「えーっと、前回は…そうそう、朝起きたら神楽ちゃんがレイジョさんに謎の試練を課してて、俺が慌てて止めに行ったんだよな。でも結局、神楽ちゃんがレイジョさんを『弟子にする資格があるアル!』って勝手に認めちゃってさ…。その後、ルミさんが玄龍門っていう生徒会組織からの嫌がらせについて話してくれて、僕たちは玄龍門の本拠地、『六和閣』に向かったんだよ。
そこでは、門主の龍華キサキさんっていう、ちょっと古風な喋り方をする子に会ったんだけど、商会が密売に関与してるっていう疑惑がかかっててさ、証拠まで見せられちゃってさ…。でも僕たちはルミさんがそんなことするわけないって信じて、真実を証明するための時間をもらったんだ。
それで玄龍門の構成員とまた戦いになったんだけど、神楽ちゃんが圧倒的な力で倒して、僕も…まぁ、やるしかなかったって感じでさ。最後にキサキさんが現れて争いを止めてくれて、一旦は話がついたんだけど、まだ問題は解決してないんだよね…。
で、玄武商会に戻ってこれからどうしようって話してたら、神楽ちゃんが天心のおかわりを頼んで、全員ズコーッとこけたってところまででしたね。ほんっとに、タイミングってもんを考えてくれよォォォォ…!」
神楽「最後のはなかったことにしてほしいアル。じゃあ本番どうぞ」
第三十七訓 メスゴリラにはご注意を
錬丹術研究会
山海経高級中学校の部活の1つ。不老不死の霊薬を作ることを目的としているが、真の目的は神仙へと至る「仙丹」を造る事。その過程で様々な効能を持つ怪しげな霊薬の開発や研究を行っている。
成果物の霊薬は常識外れの効能を持つものが多いが、あまり有難くない効能だったり、許容し難い副作用を伴うものがほとんどで実験台にされた面々からの評判は悪い傾向にある。一応、副作用などに関しては随時解毒薬などが無料で処方されており、深刻な事態には至っていない。
また山海経における医療分野の一翼を担っているともとれる描写がある。
ちなみに、今のところ不老不死の霊薬の作成には成功していない。
かなり歴史のある部らしく、施設の外観は古くてみすぼらしい。
山海経内では「要求しないから干渉するな」といった相互不干渉の立場をとっており、どの組織の利害関係からも独立しているとされている。
その錬丹術研究会に新八たちは来ていた。
「ここが錬丹術研究会ですか。」
新八は、その場所を見渡しながら声を漏らした。錬丹術研究会の建物は、古びた中国風の建築で、歴史を感じさせる重厚な佇まいだ。周囲には、珍しい薬草が植えられた花壇や、錬丹術の道具が整然と並べられており、静かで神秘的な雰囲気が漂っている。
「ええ、『萬年参』を使いそうな場所の一つです。」
レイジョは腕を組みながら、錬丹術研究会の建物をじっと見つめる。その目は鋭く、まるで何かを見透かそうとしているかのようだ。彼女の言葉には確信がこもっており、ここに何か重要な手がかりがあると感じているのが伝わってくる。
「あたしもさすがに『萬年参』を料理に使ったことはなくてさ。」
ルミは、軽い調子で笑いながらも、その声には微かな緊張感が滲んでいた。彼女の手には、調理道具がぎっしり詰まったカバンが握られており、いつでも料理を始められるように準備万端でいる。そんな姿を見た新八は、少し呆れながらも、ルミの職人魂に感心せざるを得なかった。
「どちらかというと薬に使われることが多いイメージかな?料理に使う人がいるのも、欲しがる人がいるのも事実だけど……とりあえず、一番使ってそうなところに来てみたってわけ。」
ルミの目が鋭くなり、錬丹術研究会の建物を見つめる。彼女の言葉には、経験に裏打ちされた自信があり、その落ち着いた態度が仲間たちにも安心感を与えていた。
「武術研究部とか京劇部あたりの、身体を鍛えてる人たちを頼ろうかとも思ったけど……」
ルミは少し首をかしげ、考え込むように言葉を続ける。彼女は武術や演技で体を鍛える部のことも頭に浮かべていたが、どこか違和感があった。
「そっちは特性とか効能に詳しいとは思えなくて。ほら、身体にいいものは、とりあえず食べちゃおうって感じの人が多いからね。」
彼女の言葉に、みんなが納得したように頷いた。武術や演技を極める部の連中は、確かに身体に良いものならば、効能など気にせず食べてしまいそうだ。そんな考えに、新八も少し笑いをこらえた。
「なるほど……ルミ会長、つまり『萬年参』を食べれば強くなれる、と。もしかして『萬年参』はーーカンフーのために存在しているのでは?」
レイジョの真剣な顔に、新八は思わず突っ込みたくなった。その目はキラキラと輝き、まるで『萬年参』を手に入れれば自分も強くなれるかのように期待しているようだ。
「いや……誰もカンフーの話はしてないから。そのセリフ聞くと犯人って疑われても仕方なく思えるんだけど。」
新八の冷静なツッコミが、場の空気を少し和らげた。彼はレイジョの熱意に少し引きながらも、同時に彼女の思考の飛躍に少し笑いをこらえている。神楽も少しニヤリとしながら、新八をチラリと見た。
「うるさいと思ったら、玄武商会に……誰なのだ?それに一体どうしたのだ?」
突如、どこからか現れたサヤの冷たい声が響いた。彼女の姿は鋭く、視線には不信感が込められている。新八たちに対する疑念の色が見え、険しい表情で睨みつける。神楽が肩をすくめ、新八に向かって無言のまま視線を投げかける。
「紹介するよ。この赤い子が神楽ちゃん。この人間を掛けた眼鏡の子は新八君。そしてこの人が新八君のお姉さん、お妙ちゃん。私たちの問題を解決してくれるいい人たちだよ。」
ルミは朗らかに笑いながら、それぞれの仲間を紹介した。その紹介の仕方には、どこか冗談めいたところもあったが、全員がしっかりした役割を持っていることが暗に伝わるように、サラリと言った。
「よろしくアル、サヤちゃん。」
神楽はいつもの調子で、明るく元気にサヤに向かって挨拶をした。しかし、その無邪気な態度はサヤにとっては少し予想外だったのか、少し驚いた表情を見せた。
「そのツッコミ飽きたので省略しますね。よろしくお願いします。」
新八は少し肩の力を抜き、丁寧に頭を下げた。神楽のいつもの突拍子もない言動には慣れているが、それを流す術も身についているようだ。
「よろしくお願いします。」
お妙は優雅に微笑みながら、静かに挨拶をした。彼女の落ち着いた雰囲気が、その場に一瞬だけ平穏をもたらす。サヤは彼女を見つめながら、少しだけ顔を和らげた。
「よろしくなのだ……ぼく様、なんだか嫌な予感がするのだ。玄武商会の問題ということは……つまり……」
サヤは突然険しい顔つきに戻り、言葉を絞り出すように言った。彼女の目には、不安と警戒心が浮かんでいる。
「みんなには申し訳ないけど、帰ってほしいのだ……。」
その言葉は突如として冷たく響き、新八たちの周囲に緊張が走った。サヤの急な態度の変化に、全員が戸惑いを隠せない。
「何故アルか?」
神楽は無邪気に質問を投げかけるが、その声には少しだけ警戒心が含まれていた。サヤの突然の態度に、何か隠された理由があると直感しているかのようだ。
「玄武商会と玄龍門の争いなんて、ぜ〜ったいに巻き込まれたくないのだ!それに錬丹術研究会は、今日も不老不死の霊薬開発で忙しいのだ!」
サヤは強い口調で言い放つ。彼女の目は新八たちを警戒しながら、明らかに彼らを追い返そうとしている。しかし、その言葉の裏には、何か別の意図が隠されているようにも感じられた。
「そこを何とか。」
お妙が穏やかな声でサヤに頼み込む。その声には、相手に安心感を与えるような優しさが含まれており、サヤも一瞬だけその表情を緩めたが、すぐに冷たい態度に戻った。
「あの暗黒物質を作り出したメスゴリラの相手をしてる時間もないのだ!」
サヤは苛立ちを隠すことなく、ぶっきらぼうに言い放つ。その言葉に、新八と神楽は息を飲み、一瞬で空気が張り詰めた。
「へぇ、私のいる前でその態度?」
お妙の声が静かに低く響く。彼女は無言で薙刀を構え、冷たい笑みを浮かべながらサヤをじっと睨む。その鋭い視線は、まるで獲物を狙う猛獣のようで、場の空気が一瞬で緊張に包まれた。彼女の背筋はピンと伸び、全身から圧力が放たれている。まさにその瞬間、お妙の内に秘められた怒りが沸き上がりつつあった。
「姉上!」「姉御!」
神楽と新八は、すぐに暴走寸前のお妙を止めようと必死に動く。神楽は彼女の腕を掴み、いつもの冗談交じりではない、真剣な表情でお妙に訴えかける。新八も一緒に、何とか彼女を落ち着かせようとするが、お妙の力はあまりにも強く、二人では抑えるのが精一杯だった。
「ゴリラに狩られる覚悟はいいかしら?ネズミが…(ドス黒い声)」
お妙の声は冷たく低く、まるで地の底から這い上がってくるような恐ろしい響きだった。その言葉に、サヤは一瞬背筋が凍るような感覚を覚え、無意識に後ずさりしてしまう。新八と神楽は、お妙の勢いをどうにかして止めようと、さらに力を込める。
「やばいアル!このままだと姉御が暴れ出すアル!」
神楽は焦りながらも冷静に状況を判断し、早急に何か策を考えなければならないことを悟る。しかし、お妙の怒りを鎮める方法が思いつかず、焦燥感が募るばかりだった。
その時、場の緊張を感じ取ったルミが、機転を利かせて動いた。
「おっと!チーズ南煎丸子をかけた焼き削麺が、こんなところに……」
ルミは笑顔を浮かべながら、持っていた料理をさっと取り出し、テーブルに置いた。香ばしい香りが広がり、その場の空気が一気に柔らかくなる。チーズが溶けて香ばしい焼き麺と共に、絶妙な香りが漂い、緊迫した状況に一瞬の安らぎをもたらした。
「どう?香ばしいコクとチーズが調和した一品、気にならない?」
彼女の言葉はあくまで軽やかで、状況を楽しむかのように聞こえたが、その機転の利いた行動は、明らかに場の空気を変えようとする意図が感じられた。
「気になるアル!食べていいアルか?」
神楽はよだれを垂らしながら、食欲に負けた様子でルミに問いかけた。その表情は先ほどまでの緊張感を一瞬で忘れさせるほどに無邪気で、場を和ませる。
「またかいィィィィ!!いい加減にしろよ!ルミさんが機転を効かせてくれてるってのに!それに神楽ちゃん、ここに来る前にも天心たらふく食べたでしょ!」
新八は苛立ちながら、神楽に声を張り上げた。彼の疲れた顔には、神楽の食欲に対するツッコミが何度目なのかが滲み出ていた。
「私の胃袋はブラックホールネ。まだまだ足りないアル。」
神楽は口元を拭いながら、まるで当然のように言った。その言葉に新八は頭を抱えるが、どこかでこれ以上突っ込んでも無駄だと諦めている。
「いいよ、沢山あるからみんなで食事しながらでも話できるわけだしね。」
ルミは柔らかく微笑み、皆に料理を勧めた。彼女の料理の香りが再び広がり、場の空気が少しずつ和らいでいく。お妙もその香りに一瞬心を奪われ、手にしていた薙刀を少し下ろす。サヤもまた、険しい表情から徐々に落ち着きを取り戻していった。
「はぁ……すいません。」
新八はため息をつきながら、皆が料理に手を伸ばすのを見守った。彼の顔には疲れと安心が入り混じっていたが、何とか最悪の事態を回避できたことにほっとしている様子だった。
皆がルミの用意した料理を食べながら、自然と会話が戻っていく。サヤと神楽は特に料理に夢中になり、顔から笑みがこぼれ、食事を楽しんでいる様子だった。特に神楽は、食べる手を止めることなく、次から次へと口に運んでいく。
「それで……『萬年参』?なんであんな扱いにくい植物について知りたいのだ?」
サヤが急に真剣な顔つきで、新八たちに問いかける。料理の話から急に本題に戻るその態度に、新八も少し緊張感を取り戻す。
「え?そんなに扱いにくいんですか?」と新八が尋ねる。
サヤは頷きながら、少し苦い表情を浮かべた。
「涼しくて湿度が十分な土地じゃないと根付かないから、植生地が部の山頂付近くらいしかないしー。」
彼女の声には少しの憂いが込められていた。育成が難しい植物だということが、いかに手間がかかるのかを示している。
「収穫まで少なくとも6年はかかるのだ。それに、10年は待たないと十分な効能が期待できない上に、環境の変化にも敏感だから……100個タネを蒔いても、まともに収穫できるのは10本にも満たないのだ。」
その説明を聞いて、新八は驚きの声を漏らす。そんな手間のかかる植物が、どれほど貴重であるかが一瞬で理解できた。レイジョや神楽も、その話に興味を示して耳を傾けている。
「随分と扱いにくいわね。貴方みたいに。」皮肉を込めた言葉でお妙はサヤに言った。
お妙の言葉に、サヤはムッとした表情を浮かべる。そのまま彼女も、すぐに返すように口を開いた。
「あと……舌が痺れるほどの苦味で有名なのだ。どこかの誰かさんみたいに料理みたいに。」
サヤはじっとお妙を睨みながら、彼女の料理を暗に皮肉る。再び、2人の間で視線が火花を散らし、場の空気が緊張に包まれた。
新八は再びため息をつき、2人を引き離すように間に入る。
「まぁまぁ、2人とも落ち着きましょうよ。」
新八はお妙を別室に移し、何とかその場の緊張を収めた。
「でもそんな味なら料理に使うのは難しくないですか?」
新八は再びルミに話を振り、話題を戻す。
「そうだね、あたしも同感。」
彼女は少し首をかしげながら、考え込むような表情を浮かべる。
「ちょ〜っと味見してみただけだよ。お妙ちゃんのよりはかなりマシだったけどね。」
ルミは、軽く笑いながら答えたが、その笑顔の裏には挑戦的な気持ちも感じられた。彼女がどんなに困難な素材でも一度は試してみたいという冒険心を持っているのが、その言葉からもよく伝わってくる。
「試すまでもなく、分かりきってますよ……」
新八は青ざめた顔で、困惑しながら呟いた。彼の表情からは、過去にお妙の料理で受けたトラウマがよみがえっているようだった。隣にいる神楽も同じく、青白い顔で小さく頷いている。
「そうアル。姉御の料理よりマシって言われても、ほとんど地獄に変わりないネ……」
神楽の言葉に新八は同意し、二人で苦笑いを浮かべながら恐怖の記憶を思い出している。
「あははっ、あたしは自分の舌で試してみないと気が済まない性格だからね。」
ルミは自分の料理への自信と、未知の食材に対する興味を誇らしげに語った。その表情はどこか好奇心で満ちており、常に新しい挑戦を求める料理人の顔だった。
「そ、そうですか……ルミさんは本当に勇気がありますね……」
新八は冷や汗をかきながら言葉を返した。彼の心の中では、もし彼が同じ状況に置かれたら、決して試そうとは思わないと強く感じていた。
「とにかく、良薬は口に苦しって言うでしょ?『萬年参』もそんな感じだと思うんだよ。」
ルミはしっかりとした口調で、再び真剣な顔つきになった。彼女の言葉には説得力があり、単なる食材ではなく、効能を求める薬草としての『萬年参』に対する興味を持っていることが伝わってくる。
「危険で複雑な工程を繰り返すことで、一つの『ある効能』を持った成分が抽出できるのだ。」
サヤはルミの言葉に頷き、専門的な知識を加えて説明を続けた。彼女の声には自信があり、その知識の深さが皆に伝わった。新八やレイジョ、神楽は一斉にサヤの方に注目する。
「その効能って何ですか?」
レイジョがサヤに問いかけると、サヤは少し間を置いてから答えた。
「短期的に集中力が大きく高まるのだ。意識が覚醒し、疲労が一気に吹き飛んで、ダイエット効果まで期待できる。さらには筋力と瞬発力も大幅に上昇するのだ。」
その説明を聞いて、レイジョの目が輝いた。彼女の瞳の中には、その効能をどうにかして手に入れたいという強い欲望が見え隠れしている。
「さらに、並外れた動体視力も手に入ると言われている。飛んでくる銃弾すら見えるようになるとか。」
その言葉に、レイジョの顔はさらに興奮を増し、目を見開いた。
「それってすごい!まさに私が探していたものです!……」
しかし、その言葉が口から出る前に、ルミが素早く制した。
「ダメだからね、レイジョ。そんな薬に頼って強くなろうとするのは本当の強さじゃないよ。」
ルミの言葉には厳しさがあったが、それと同時に、レイジョに対する優しい忠告でもあった。彼女は、道具や薬に頼らず、自分の力で成長することの重要性を説いている。
「それ、普通にできるアル。」
神楽は当然のように言った。彼女にとっては、銃弾を見て避けることは特に驚くべきことではなく、当たり前のことのように思えた。サヤは神楽の言葉に驚いた表情を浮かべた。
「私たちなら銃弾くらい見えるし、避けることもできるアル。そんな平凡な薬、何の意味もないネ。」
神楽の無邪気な一言に、その場の空気が少し和んだ。新八も苦笑いを浮かべながら、神楽の特異な能力に感心しつつも、彼女の言葉には常に驚かされる。
「……確かに神楽師匠の言う通りですね。道具に頼る脆い強さより、自分を鍛えた方が心も体も強くなりますよね。」
レイジョは少し落ち着きを取り戻し、神楽とルミの言葉に納得したように頷いた。
「……なるほど。メリットがあるように見えても、そんなに簡単に強くなれるものじゃないんですね。」
新八は冷静に話を続け、薬の効能に頼ることの危うさを理解し始めたようだった。彼の言葉にサヤも軽く頷きながら、新たな話題に移った。
サ「でも、そんな薬を欲しがる生徒があちこちにいるみたいなのだ。特に試験や受験の時期に……。」
サヤの言葉には軽い嘆きが込められており、それを聞いた新八は驚きを隠せなかった。試験や受験にまで薬の力を求めるとは、想像もしていなかったのだ。
「あたしは、あの苦味がコクを出してくれると思ったんだけどね。」
ルミは再び冗談めかして、料理に繋げようとしたが、新八は呆れた表情で彼女を見つめた。
「そこでも料理に繋げるのか……ルミ会長らしいといえば、らしいけど……」
彼女の言葉には少しの皮肉が込められていたが、それでもルミの料理に対する情熱はどこか羨ましくも感じられた。
「とにかく、ぼく様には理解できないのだ。そんなに気になるなら、みんな試してみれば分かるのに。」
サヤは淡々と言い放った。彼女の言葉には、何か試してみたくなる好奇心が隠されているようにも感じられたが、同時にそのリスクを全く考慮していない無鉄砲さも垣間見えた。
「いや……そんな簡単に試せるものではないですから……それが原因で僕たちが追われているんですけど。」
新八は苦笑しながら、再びため息をついた。彼にとって『萬年参』が絡む問題は、いつもトラブルの種でしかないと感じているようだった。
「それに、試験なんて、前日に教科書に目を通しておいたら……よっぽどイジワルな問題が出されない限り、満点が取れるものじゃないのだ?」
サヤは無邪気な顔で言い放ったが、その言葉は新八を驚かせた。彼女にとって、試験で満点を取ることがいかに簡単なことであるかが、自然と口に出てしまったのだ。
「それが出来るの、たぶんサヤくらいだよ。」
ルミは笑いながら言い、サヤの才能を軽く褒めた。彼女はサヤの天才的な頭脳に敬意を示しながらも、どこか無頓着でもある。サヤの天才的な頭脳と、試験での無敵さが彼女自身にとっては自然なことであり、特別視していないように見えた。
「そ、そうなのか……」
サヤは驚いたものの。
「たしかに……それなら、『萬年参』を欲しがる生徒がいるのも納得なのだ。」
サヤは自分の言葉に頷きながら、考え込むように話を続ける。『萬年参』が試験の際に効果的なサポートになることは確かだが、彼女のように天才的な人物からすれば、それすら無意味に感じるのかもしれない。
「気になるのは、そんな面倒なことを一体誰がするのか……」
新八は再び本題に戻り、犯人像を考え始める。『萬年参』のような貴重で扱いにくい植物を使った何かを企てる者は、一体どんな人間なのか。彼の疑問はさらに深まるばかりだ。
「危険な溶媒が必要で、厳密な温度管理も求められるし……」
サヤは専門的な知識を淡々と語りながら、その困難さを強調した。新八や他のメンバーは彼女の話を真剣に聞き入り、思わず息を呑む。サヤの説明は、まさに『萬年参』の危険性とその難易度を如実に物語っている。
「蒸留するだけじゃなく、複雑な工程がいくつも続くものなのに……」
サヤは複雑な錬丹術の工程を言葉にしながら、その困難な作業ができる人物がいることに驚きを隠せない。
「そんな完璧な薬効を引き出すには、高度な専門設備が必要なはずだけど……」
新八は自分なりに推測しながら、錬丹術研究会以外の場所でそんな高度な設備があるのか疑問を抱いていた。どんなに優れた人間でも、専門的な設備なしには『萬年参』を活用することはできないはずだ。
「錬丹術研究会以外の場所にそんな設備があるのなら、ぼく様の耳に入っているはずなのだ。」
サヤは自信たっぷりに言い切る。その言葉に、全員が彼女の言うことに納得するように頷いた。サヤの知識と情報網は広く、彼女が知らないことはほとんどないといっても過言ではない。
「それだけの設備が運び込まれていたら、玄武商会にも情報が入ってくるはずだよ。」
ルミも冷静に話しながら、玄武商会の情報網を持ち出して説明を補強する。彼女の言葉には説得力があり、彼女もまた、玄武商会が関与していないことを確信しているようだ。
「さすがアルな、2人とも。」
神楽は感心したように二人を見つめ、彼女たちの鋭い分析に感銘を受けている。神楽の無邪気な反応に、ルミとサヤは軽く微笑んだ。
「山海経の中で、ぼく様より薬に詳しい人はいないのだ!あれもこれも、結局、不老不死の霊薬作りには役に立たなかったけど……」
サヤは少し肩をすくめながら、これまでの自分の試みが上手くいかなかったことを振り返っている。しかし、その表情にはどこか余裕があり、まだまだ新しい発見があることを確信しているようだった。
「"前から気になってたんですけど" 不老不死の霊薬にこだわる理由、何かあるんですか?」
新八は少し疑問を抱きながら、サヤに問いかけた。彼にとって、不老不死を追い求める理由がいまいち理解できなかったのだ。
「それが不可能だからなのだ。」
サヤは即座に答えた。その声には強い決意と情熱が込められていた。新八はその答えに驚きつつも、彼女が挑戦し続ける理由を少し理解し始めた。
「主らにはこのロマンが分からないのだ?不可能だからこそ、挑戦する甲斐があるというものなのだ!」
サヤは目を輝かせながら言葉を続ける。彼女にとって、不老不死の霊薬作りは単なる夢物語ではなく、挑戦する価値のある目標だった。その情熱が伝わり、新八は彼女の真剣さに感心せざるを得なかった。
「目標は高く!そして険しく!」
レイジョもまた、サヤの情熱に感化され、同調するように力強く言った。彼女もまた、困難な目標に向かって挑戦することに喜びを感じているのだろう。
「不可能な問題に挑戦している内に、新たな気づきもあるのだ!」
サヤの言葉には確信が込められていた。その目には、挑戦し続けることの大切さがはっきりと映し出されていた。
「ふうん、なかなか良いこと言うんだね?霊薬にしか興味ないのかと思ってたよ。」
ルミは少し意外そうな表情を浮かべながら、サヤの言葉に感心した様子で微笑んだ。彼女の中で、サヤのイメージが少し変わったようだった。
「そ、そんなことないのだ……。」
サヤは少し照れくさそうに言葉を濁しながら、視線を逸らした。彼女の言葉には素直さが感じられ、その態度はどこか可愛らしい。
「でも、霊薬作りが一番の目標なのだ。手段と目的が入れ替わっちゃう人は多いけど……少なくとも錬丹術研究会は、そうならないように気をつけてるのだ!」
サヤは改めて自分の立場を強調し、錬丹術研究会としての誇りを示した。その真剣な態度に、新八は再び感心し、錬丹術研究会の活動を見直した。
「なるほど、錬丹術研究会って結構真面目にやってるんですね。でもさ……もし本当に不老不死の霊薬ができたとして、それで永遠に生き続けたら、一体何のために生きるんだろう?限りがあるからこそ、人生には意味があるんじゃないかな……。永遠に時間があると、かえって何も大切にできなくなる気がするんだ。」
新八は少し遠くを見つめながら、静かに言葉を紡いだ。彼の言葉には、深い思索が感じられ、永遠に生き続けることの虚しさを想像しているようだった。
「な、何なのだ…急に。例えそうなったとしてもぼく様はちゃんとその効果を無くす薬も作るのも同時進行するから。それに、『萬年参』の具体的な使われ方は知らないし、完成まで程遠い……。あれ?」
サヤは言葉を急に切り、少し考え込むように黙り込んだ。彼女の表情が一瞬固まる。何か思い出したかのように、口元を押さえるサヤの様子に、新八はすぐに反応した。
「何か心当たりが……あるんですか?」
サヤは顔を曇らせたまま、慌てて首を振った。
「い、いやっ、何でもないのだ!ただの独り言なのだ!」
彼女の様子は普段の自信たっぷりの態度とは違い、何かを隠そうとしているかのように見えた。
(そういえば、『萬年参』の成分を利用して、脳を覚醒させる研究があったような……でも、あれは……)とサヤは内心で思い出しながら、言葉を飲み込んだ。
「サヤさん、何か思い当たることがあるなら教えてくださいよ。僕たちはこれからどう動くか決めなきゃならないんです!」
サヤは新八に押されつつも、頑なに何も話さなかった。彼女は明らかに何か知っているが、それを言うべきか悩んでいる様子だった。そんな中、ルミが空気を変えるために、軽く肩をすくめた。
「とりあえず、『萬年参』が栽培できるのは崑崙山だけなんだよね。」
ルミの一言で、一同は再び現実に戻り、行動の話題に移る。崑崙山に行くことが確定的な流れになる中、神楽がすぐに反応した。
「なら、早速出発するネ!ありがとうサヤちゃん!」
神楽は元気よく言い、すぐにその場を飛び出そうとする。彼女の勢いに新八は少し戸惑いながらも、その行動力に感心している様子だった。
「……ぼく様は何も知らない、何も言ってないのだ。さっきまでのは、ただの独り言なのだ。」
サヤは少し気まずそうに視線を逸らし、明らかに何かを隠している態度を取っていた。しかし、それ以上の追及はできず、ルミが笑顔で話を締めた。
「あはは、分かったよ。あたし達の秘密ってことで。」
ルミの明るい言葉に、その場の雰囲気が少し和み、一同は崑崙山へ向かう準備を進めることになった。
険しい山道を前にして、新八はすでに息を切らしていた。崑崙山の急勾配は想像以上で、体力に自信がない彼には過酷な道のりだった。肩で息をしながら、崖のような急な道を見上げる。
「新八君、大丈夫?」
ルミは心配そうに新八の横顔を見つめた。彼女の声には優しさが込められており、新八を気遣う思いが滲んでいた。
「こんな急勾配だなんて……聞いてないんだけど……!」
新八は苦しい息を吐きながら、不満げに答える。山道の険しさに加え、まだ道半ばにもかかわらず、すでに体力は限界に近づいていた。神楽がその姿を見て、肩をすくめながら言う。
レイジョ「新八さん、容疑が晴れたら私と一緒に神楽師匠の修行をしませんか?」
レイジョの明るい提案に、新八は驚いた表情を浮かべる。彼女の提案は唐突だが、いつもの調子だと分かっていても、新八にはその言葉がまるで罰のように聞こえる。
「たしかに、それは名案だね。」
ルミが冗談交じりに笑いながら同意する。彼女の目には、新八がもっと鍛えられるべきだという意図が見て取れた。彼女自身も厨房での過酷な環境で鍛え上げられたことを知っているため、その発言には重みがあった。
「何事にも体力は欠かせませんからね。料理をするのにも、長時間立ちながら鍋を振るい、厨房の暑さに耐える必要があります。」
レイジョはまるで当たり前のことのように言う。彼女の言葉は、神楽自身がこれまで培ってきた修行の一環として、新八にも同じように厳しい訓練を期待しているようだった。
「それは、万事屋の仕事にも通じる事だと神楽師匠に言われました。」
レイジョが神楽を指しながら説明すると、新八は完全に言い返せなくなった。確かに、日々の仕事にも体力は欠かせないと痛感する。
「……」
新八は何も言わず、ただ肩で息をしながら険しい山道を睨む。体力の限界が近づいているが、それでもこの先にある『萬年参』の謎を解くために、足を止めることはできないと自分に言い聞かせていた。
「考えるより行動せよ。行動しない者は敗北する……」
お妙は、まるで古典の名言を引用するかのように、新八に対して叱咤激励を送った。彼女の言葉には強い意志が込められており、新八の心にじわりと響いていた。
「まさに、今の新ちゃんのためにあるような言葉じゃない?」
お妙が笑いながら新八に言う。新八は自分が追い込まれているのを感じながらも、これ以上言い返す元気も残っていなかった。
「姉上まで……」
新八はため息をつきながら、険しい山道を再び見上げた。足元はすでにガクガクと震えているが、彼は一歩一歩前に進むことを決心した。
「歓迎するアルよ、新八君。レイジョと一緒に鍛えてあげるネ!!」
神楽はニコニコしながら新八をからかう。その無邪気な笑顔は、新八にとっては地獄とも感じられたが、今の体力では反論する気力も残っていない。
そんな軽口を叩きながら進んでいると、崑崙山の険しい道を登り切った先に、一人の人物が立ち塞がっていた。玄龍門のトレードマークであるストライプのジャケットを着た男が、山頂の入口で待っていたのだ。肩には龍の柄が入ったマフラーを羽織り、その冷徹な目つきで一行を睨んでいた。
「遅かったな、玄武商会。……って、お前は!」
その声には鋭い怒りが含まれており、ミナと呼ばれるその構成員は一行をじっと見つめていた。お妙に視線を向けると、すぐに近づきざまに怒りをぶつけた。
「門主様にあんな物を献上するとは!やっぱり玄武商会は信用できん!」
彼女の言葉には、明確な敵意が込められている。新八は突然の事態に驚き、反論する隙を見失っていた。
「どういうことですか?」
お妙はその場を冷静に見つめながら、ミナに問いかけた。彼女の表情には、これ以上の無用な争いを避けたいという意図がはっきりと感じられるが、同時に相手の無礼な態度に対しては、決して引かないという強い決意も感じられる。
「お前が作った料理をお毒見したところ、私は記憶喪失になりかけたんだぞ!門主様がサヤを呼んでくれなければどうなっていたことか!」
ミナは苛立ちを隠せない様子で、激昂しながら言葉をぶつける。彼女の顔は明らかに怒っており、まさに今にも爆発しそうな勢いだった。その怒りに、新八たちは思わず息を呑むが、特にお妙はその言葉を一瞬で受け止め、冷たい笑みを浮かべながら返答する準備をしている。
「お前、あんな暗黒物質、人に渡そうとするなんて、力だけでなく頭もゴリラなんだろう!」
「な、なんですって…!?ゴリラだなんて!私のことをゴリラ呼ばわりするなんて…!覚悟しやがれ!!若造がァァァァ!!」
お妙の静かな怒りが一瞬で爆発した。彼女の拳がギュッと握りしめられ、その視線はミナをまるで狩りの獲物を見るかのように鋭く睨みつける。お妙は怒りに満ちた声を上げ、そのままミナに向かって突進しようとした。
「姉上、落ち着いて!やめてください!」
新八は慌ててお妙を止めようと飛びつき、神楽もすぐに動き出す。二人がかりでお妙を必死に押さえようとするが、彼女の強い力に押し返されそうになる。お妙の怒りは抑えきれず、まるで暴風のように荒れ狂う勢いだ。
「やめるアル!姉御!姉御が暴れたら、この場所が更地とかすネ!ヤバいアル!」
神楽も必死にお妙をなだめようとするが、お妙の怒りは簡単には収まらない。ミナの言葉が彼女の心に火をつけたようで、神楽も新八も押さえるのに苦労していた。
「ゴリラゴリラって…私の料理にケチつけるのもいい加減にしろや!そんなこと言うなら、お前に今すぐこの料理全部食べさせてやろうか!!」
お妙はさらに怒りの声を上げ、ミナに対して挑発的に言い返した。彼女は料理を取り出そうとする動きを見せ、その目には本気でミナに報復しようとする意思が宿っている。
「やれるもんならやってみろ!お前の料理がどれだけ危険か、この場で証明してやろう!」
ミナもまた挑発に乗り、強い言葉を返す。その言葉に神楽と新八は再び慌てて動き、何とか二人の衝突を避けようと必死になる。
「姉御、ちょっと待つアル!あいつはただの意地悪な人間ネ!そもそも、姉御の料理が悪いのは原作から分かってた話アル!」
神楽は冗談交じりに言いながらも、何とかお妙をなだめようとするが、その言葉はかえってお妙の怒りを増幅させてしまう。
「いや、神楽ちゃん……それむしろ姉上を馬鹿にしてるよね?」
新八は呆れながら神楽に言い返すが、その瞬間お妙の怒りがさらに激化した。彼女は新八の言葉にも反応し、さらに暴れそうになる。
「こんなにバカにされて、私だって黙ってられないわ!」
お妙は全身の力を使って新八と神楽を押しのけようとする。彼女の怒りはまさに限界に達しており、今にも大暴れしそうな勢いだった。
「ゴリラ料理の真価が試される時アル!でも、あいつはゴリラに失礼なこと言ってるアルね。このゴリラを止められる人はもういないネ!」
神楽は軽口を叩きながらも、お妙の力強さに驚いている。彼女自身も普段は冗談を飛ばすが、この状況では冗談を言っている余裕がない。
「神楽ちゃん、もうゴリラの話はやめて!みんな、冷静に!」
新八は必死に場を収めようと叫んだが、依然としてお妙の怒りは収まらず、神楽もまた興奮気味だった。場の緊張感が一層高まる中、突然、ミナが不敵な笑みを浮かべながら話し始めた。
「まぁ門主様が、『使えるな』と言っていたから今回は不問とするが……」
彼女の言葉は、まるで皮肉めいたものだった。まさにこれから何かを企んでいるかのように、その声には冷たさと同時に、何かしらの裏の意図が感じられた。
「え?ちょっと待ってください。あの暗黒物質、何に使うつもりなんですか?」
新八はミナの言葉に反応し、すぐに問いかけた。ミナの言葉には何か重大な事実が含まれているように思えたからだ。新八の問いに、ミナは少し間を置いてから答える。
「なんか門主様はそれを持って地下牢に向かっていたから、多分拷問器具として使うつもりなのだろう。」
その言葉を聞いた瞬間、場の空気が一気に凍りついた。新八や神楽、ルミまでもが驚愕の表情を浮かべ、身体が強ばった。
「拷問器具アルか!?冗談で言ってるネ?」
神楽は半ば呆れたように問い返したが、ミナの表情からは冗談でないことが明らかだった。彼の目には冷徹さが宿り、その言葉の真実味がひしひしと伝わってきた。
「自己紹介がまだだったな。玄龍門の執行部長、近衛ミナだ。」
ミナはゆっくりとした口調で自己紹介を始めた。彼の態度は冷静でありながらも、どこか威圧感を感じさせる。自らの立場を誇示するその姿勢には、玄龍門という組織の力を背負っている自信があふれていた。
「執行部長が顔を出したってことは、キサキの命令だと思っていいのかな?」
ルミは玄龍門の動きを見極めようと、冷静に問いかけた。彼女の目には疑念が浮かんでおり、ミナの背後にある勢力がどう動くのかを探ろうとしている。
「さてな……ご想像にお任せしよう。」
ミナは軽く肩をすくめ、答えを濁した。その態度には余裕があり、全てを掌握しているかのような雰囲気が漂っていた。
「犯人は再び犯行現場に現れるものと相場が決まっている。私はそれをこの目で確かめるべく、待っていたまでだ。」
ミナは再び冷たく言い放ち、その鋭い視線を新八たちに向けた。彼女の目には、何かしらの確信があるように見えた。
「犯人は現場に戻ってくるって…僕たちが犯人だと言いたいんですか?」
新八は、ミナの発言に対して反論した。自分たちが疑われていると感じた新八は、苛立ちを隠せず、いつもの冷静さを保つことができなかった。
「フッ、すべての物事は繋がっているというものだ。君たちの動きも玄武商会と結びついていると見ている。」
ミナは不敵な笑みを浮かべ、言葉の裏にある意図を読み取らせまいとする。彼の目は冷たく鋭く、常に相手を試すかのような視線を投げかけていた。
「うかつな確信を、世間では『不注意』と呼ぶんですよ。」
レイジョは鋭く反論しながらも、その場の緊張感を解くことなく言葉を続けた。レイジョと新八の心の中では、どうにかして自分たちの無実を証明しなければならないという焦りが募っていた。
「私は不注意など犯さない。玄龍門では常に完璧な準備をしている。」
ミナは胸を張り、自信満々に答えた。その態度は、自らが玄龍門の一員であり、全ての行動において失敗を許さないという誇りを感じさせた。彼の言葉に、新八はさらに苛立ちを覚える。
「過剰な自信は、時にその目を曇らせるわ。」
お妙は冷静にミナに警告を発し、その言葉にはどこか冷ややかさが感じられる。彼女の目は、ミナの自信過剰な態度を見透かし、慎重にその裏にあるものを探ろうとしていた。
「そこは責任感と言ってくれ。」
ミナは笑みを崩さずに返答し、再び冷徹な態度を見せる。彼の言葉には誇りと確信が混じっており、まるで自分の推理が絶対的な真実であるかのように語っていた。
「今度こそ、決定的な証拠が見つかるかもしれないんですか?」
新八は再び疑念を抱きながら、ミナに問いかける。彼は、この状況をどこかで打破しなければならないと焦っていたが、同時に冷静さを失ってはいけないと感じていた。
その時、ミナはポケットからタバコのようなものを取り出し、ゆっくりと口元に持って行く。その動作は、何かを暗示しているようであり、まるで何かの前触れであるかのような不気味さを感じさせた。
「おいィィィィ!タバコなんて吸ってんじゃねーよ!今はそんなことしてる場合じゃないだろ!」
新八は苛立ちながら大声で突っ込んだ。ミナの落ち着き払った態度に、新八の焦りがさらに募る。だが、ミナはそのままタバコを口に運び、ゆっくりと煙を吐き出す。
「新八さん、落ち着いて。あれは『ココアシガレット』だから大丈夫。」
レイジョが冷静に、相手に聞こえないように新八に教えた。ミナが口にしていたのは、実際にはお菓子のココアシガレットだった。それを見た新八は、しばし呆然としながらも肩を落とした。
「くっ……バレてしまったか……。」
ミナはわざとらしく悔しがりながら言葉を漏らすが、すぐに冷静な態度に戻り、その場を再び支配するように立ち振る舞った。
「フッ、ハードボイルドは挫けてはいけない。例えどんな無様な失敗だったとしても、失敗を認めなければ前に進むことはできない。それが真のハードボイルド精神だぞ。カミュ」
ミナの言葉は、まるで彼女自身を慰めるかのように響いた。しかし、彼の言葉に新八は我慢できず、さらに大声を上げる。
「何がカミュだァァァァ!!」
新八の叫びに、周囲は一瞬の静寂に包まれる。彼の声が山間に反響し、険しい山道の空気が一層冷たく感じられた。その場の空気が一瞬で変わったことに気づいたミナは、冷たい目を新八に向ける。
「しかし、受けた屈辱はそのまま残る。私たちは破壊されるために生まれたというのか……!」
新八は目の前のミナが一体何を言っているのか理解できず、困惑しながら返答する。
「何が言いたいんですか……?」
ミナの言葉には意味不明な部分があり、それが何を意図しているのか新八たちには分からない。彼の言動はどこか狂気じみたものを感じさせ、ただの口論で済ませられる問題ではないように思えた。
「まったく……そろそろ本題に入るアルか?」
神楽は冗談めかしながらも、場を取り仕切るように口を挟んだ。彼女の目には、早く本題に移るべきだという焦りが感じられた。
「本題……そうだな。私は玄武商会と錬丹術研究会が接触している報告を受けて、ここで張っていたのだ。」
ミナはようやく核心に迫る話題を持ち出し、その場の空気が再び緊張に包まれる。玄武商会と錬丹術研究会が関わっている事実が明らかになる中、新八たちはその繋がりがどこにあるのかを探り始めた。
「接触していた?それがどういう意味か説明してください。」
新八は落ち着きを取り戻し、ミナにさらに詳細を求めた。彼の言葉の裏に隠された意図を理解しなければ、次の行動に移ることはできない。
「フッ……『萬年参』のことだ。玄武商会と錬丹術研究会が関わっているといるということだろう?」
ミナは不敵な笑みを浮かべ、新八たちを試すように問いかけた。その言葉に新八はハッとし、『萬年参』に関する情報を聞き出しに錬丹術研究会と一緒にいることを知られたことを感じ取った。
「錬丹術研究会と玄武商会が繋がっているって……証拠があるんですか?」
新八はさらに問い詰めるように言葉を重ねた。彼の中には、まだ全ての真実が明らかにされていないことへの苛立ちがあったが、それ以上に何か重大な事実が隠されているような感覚があった。
「フッ、そう焦るな。錬丹術研究会と玄武商会が先ほど共に絡んでいたというだけで十分な証拠だろう。」
ミナの冷笑に、新八たちはさらに緊張を高めた。彼女の言葉はあやふやだが、明らかに自信を持っていた。お妙もその態度に苛立ちを隠せず、鋭い視線をミナに向けた。
「その証拠がただの憶測なら、私たちを疑う理由にはならないわ。具体的な証拠があるなら見せてちょうだい。」
お妙の声には冷徹な意志がこもっていた。彼女は決してミナの挑発に乗るつもりはなく、冷静に相手の言葉を引き出そうとしている。
「証拠か?そうだな……『萬年参』が見つかったのが、玄武商会の箱の中だったという事実をどう説明する?」
ミナはゆっくりとした口調で言いながら、その言葉をあえて引き延ばすかのように語る。彼の目には、すでに自分が勝利したかのような自信が漂っていた。
「意義ありアル!そんなことじゃ、玄武商会の犯行を証明できないネ!」
突然、神楽が大声で叫び、ミナの言葉に割り込んだ。彼女の目はキラリと輝き、その口調には鋭さが感じられる。新八も驚きながら、神楽の発言に耳を傾けた。
「ダンボールの1つや2つ、どこでも手に入るアル!玄武商会のダンボールに入ってたってだけじゃ、誰でも偽装できるアルよ!」
神楽は腕を組みながら、ミナの根拠の薄さを指摘した。その論理は的を射ており、ミナも一瞬顔を曇らせる。しかし、彼はすぐに冷笑を浮かべ直し、神楽に対抗するように答えた。
「フッ、弁護士ごっこはよそでやれ。だが、確かにダンボールだけでは弱い証拠かもしれないな。しかし、その他の状況証拠を考えれば、玄武商会が『萬年参』の密輸に関与していることは明白だ。」
「どんな状況証拠ですか?それがなければ、ただの言いがかりですよ!」
新八も神楽の勢いに乗って、さらに追及を加えた。彼はすでにミナの言葉が空論に過ぎないことを見抜きつつあり、どこか余裕を持ってミナの反応を待っている。
「フッ、君たち万事屋は玄武商会の肩を持つのか?」
ミナは眉をひそめながら、新八たちを挑発するように問いかけた。その声には不穏な響きがあり、まるでこれ以上の追及をすれば、さらなる問題を引き起こすと言わんばかりだった。
「寝言は寝て言うネ。マヌケボイルド」
「私たちは事実を知りたいだけよ。それが玄武商会の仕業だとしても、私たちは公平に対処するわ。」
お妙と神楽の毅然とした言葉に、ミナは一瞬たじろぐが、すぐに冷静さを取り戻す。そして、何か考えを巡らせているかのように一瞬黙り込んだ。
「う〜ん……玄武商会と玄龍門って、互いにずっと睨み合ってるよね?そう簡単に片方が密輸なんてできるとは思えないけど。」
ルミは軽く頭をかしげながら疑問を呈した。彼女の言葉は理にかなっており、玄武商会が常に玄龍門の監視下にある状況で、密輸を行うのは極めて難しいはずだ。
「そうアル。犯人の立場になって考えてみると、どっちも騙しながら密輸するのは難しいはずアル。」
神楽の言葉に、新八も同意するように頷いた。確かに、常に互いを牽制している両者が、簡単に密輸を成功させるというのは疑わしい。
「つまり、どちらの目も欺く別の第三者がいるんじゃないですか?」
新八の提案に、ミナは一瞬驚いたように目を見開いた。しかし、すぐにその表情を引き締め、再び冷たい視線で新八を見つめる。
「何を言っている……山海経には、玄龍門と玄武商会の二大勢力以外にそんな影響力を持つ者はいないはずだ。」
ミナは断定的に答え、第三者の存在を否定した。その言葉に新八は少し首をかしげながらも、なお疑念を抱き続ける。
「でも、もし本当に誰かがその両方を欺いているなら、普通のやり方じゃ考えられないことだよね。」
ルミは新八の考えを支持するように続けた。彼女の目は何かに気づきかけているようで、いつもの軽い調子とは違って真剣そのものだった。
「う〜ん……確かに、玄龍門も玄武商会もお互いに目を光らせてるなら、どっちも騙す必要があるアルね。でも、どうやって……?」
神楽は腕を組み、真剣に考え込む。しかし、その答えは簡単には出てこない。
「どちらの目も届かない場所がある……?」
新八は思案顔で呟く。彼の頭の中には何かが引っかかっていたが、それが何なのかはまだはっきりしない。彼がその言葉を口にした瞬間、ルミの目がキラリと光った。
「そうか……もしかして……」
「何だ、何か心当たりがあるのか?」
ミナは鋭い目つきでルミを睨みつけた。彼の声には警戒心が滲んでいる。ルミはその視線を感じながらも、ゆっくりと口を開いた。
「でもあの子たちまで巻き込んでいるとしたら……山海経は終わりだね」
彼女は思わせぶりな言葉を残しながらも、その後に続く言葉を慎重に選んでいるようだった。そして、新八がすかさずその続きを促した。
「あそこって、どこですか?」
新八の問いかけに、ルミはしばし沈黙した後、深いため息をついた。そして、意を決して答えた。
「うーん、じゃあ…・・・・結論から言うと、存在するよ。どちらの干渉も受けない組織がね」
「でも、あそこだけは普通は想像できない。きっと、嘘だと思うはず。
…・・・・・あたしも間違いであってほしいよ」
「山海経で、最も純粋な場所一山海経訓育支援部、梅花園。」
その言葉を聞いた瞬間、一同は驚愕した表情を浮かべた。梅花園――それは教育支援を行う平和な場所として知られていた。しかし、ルミの言葉には、その裏に何か企てが隠されているような響きがあった。
次回
ココナ「あれ?玄龍門のミナさんと玄武商会のレイジョさんにルミ会長珍しい組み合わせですね?」
神楽「わあ子供がたくさんいるアル!ココナちゃんって言うアルか?」
ココナ「子供扱いしないでください!私はココナ教官です!」
ルミ「ごめんごめんところでなんか変わったことはなかった?」
ココナ「そういえば最近箱の配達など仕事が増えてきた気がしますが」
一同「!?」
次回 龍魂同舟 手を取り合って
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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銀時
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新八
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神楽
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沖田
-
土方
-
山崎
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高杉
-
桂
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定春
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エリザベス
-
ホシノ
-
シロコ
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ヒナ
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アコ
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ミカ
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ナギサ
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セイア
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ユウカ
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ノア
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近藤