透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
神楽たちは、梅花園の生徒に運ばせた荷物の後を追い、密かに指定された倉庫へとたどり着いた。倉庫は外見こそ古びたものの、内部には新しい木箱や荷物が雑然と積まれ、誰かが最近出入りした跡がはっきりと残っている。入り口付近に置かれたランタンの弱い光が、広がる影を際立たせていた。
神楽たちは、物陰に身を潜めた。薄暗がりの中、二人がテーブル越しに座り、低く抑えた声で話し込んでいるのが見える。二人とも全身黒ずくめ、顔を隠すようにフードを深くかぶっていた。声がはっきり聞こえる距離ではなかったが、神楽たちは耳をすませて、彼らの会話の断片を拾い始めていた。
「……」
一瞬の沈黙が流れ、どちらともなく口を開いた。
「黄鶴は一度飛び去って……」
声は冷たく低い。まるで誰かに聞かれることを恐れているかのようだ。
「二度と帰らない……」
もう一人が応答する。二人の間に張り詰めた緊張感が漂っている。合言葉らしいこの言葉に、神楽は息を潜め、彼らの次の行動を見守った。
「跡をつけられてはいないだろうな?」
一人が疑念を含ませて尋ねた。その声にはわずかな焦りが見え隠れしている。
「ああ、もちろん。そちらこそ大丈夫だろうな?」
もう一人が軽く笑いながら答えたが、その笑みは本心からのものではない。互いに信頼を欠いていることが、会話の端々から読み取れる。
「こちらも問題ない。怪しい動きは見られなかった。」
一人がそう言って安心させようとするが、どこか気まずさが残る。二人とも周囲を警戒し、何かを恐れているのは明らかだった。
「それで、わざわざ呼び出した理由を教えてくれないか?」
一人が苛立ちを押し隠しながら言った。その声には焦燥感が滲んでいた。
「自分でも分かってるだろう。」
冷たく返すもう一人。その鋭い視線は、まるで相手の内心を見透かそうとしているかのようだ。
「何が言いたい。」
苛立ちを抑えきれない声が返る。
「しらを切るつもりか?取引の基本は借用だということを忘れるとはな。」
皮肉を込めた声。一向は眉をひそめた。この二人、ただならぬ関係にあることは確かだった。
「こうして信用を損ねては……『五塵の猫猴』が黙ってはいないだろうな。」
「まさか……『五塵の猫猴』を裏切るつもりか?」
声がかすかに震える。相手がそれに対してどれほどの恐怖を抱いているかが、言葉の端々から伝わってきた。
「バカを言うな。誰がそんなこと考えるか。」
しかし、その否定の言葉にも確信は感じられない。
「私たちの忠誠心を疑っているのか?」
声には怒りと不安が交錯している。
「いや、それは知っている。だからこそ、疑問に思ってな……なぜか突然……」
その瞬間黒ずくめの男の言葉が止まった。何かに気づいたのだろう。テーブルの上に並べられた箱の一つを指差し、声を低くして続けた。
「ただの人参を送ってきただろう。」
「何の話だ?私たちは人参どころか、何も手配してないが。」
もう一人が不信感を露わにし、険しい表情を浮かべた。
「それじゃあ、梅花園を通じて送られてきた、あの荷物は……」
不安が増す中、二人はお互いの目をじっと見つめ合う。徐々に状況の異常さに気づき始めたその時だった。
「待て、何かがおかしいぞ……?」
その言葉が落ちた瞬間、暗がりの中から冷たい声が響いた。
「とうとうしっぽを掴んだわよ。」
お妙がその場に現れた。月明かりに照らされた彼女の姿は、まるで影のように静かでありながら、確かな存在感を持っていた。彼女の瞳には鋭い光が宿り、口元には自信に満ちた微笑が浮かんでいる。
「誰だ!」
二人は同時に立ち上がり、警戒の色を隠しきれない。しかし、すでに遅かった。彼らの計画は、すでに神楽たちの手の中で崩れ始めていたのだ。
ミナが冷静に前に進み出て、鋭く言葉を放つ。「天は見守り、地が言葉を受け止める。そして、お前達自身を——この私が知っている。」
黒ずくめの2人は驚愕と恐怖の表情を浮かべる。
「まさか……?」 ミナは冷静に続ける。
「英雄は夢見る必要などない。ただ、自分に恥じぬ生き方をしたかっただけ。」
「お前達は何のために謳い——何のためにその生を全うするのか?」ミナの冷徹な声が響く。
「ただ漫然と生きているだけでは足りない。私たちは皆、何者かに成ろうと願うのだ!」
その場が一瞬静まり返り、ミナが最後の言葉を放つ。「玄龍門の執行部長、近衛ミナだ!動くな!」
「玄龍門だと!?」2人は一層驚き、後ずさり、
「くそっ!逃げないと……!」
逃走しようと動くが、その瞬間、神楽が動いた。
彼女の手には、いつもの傘が構えられ、素早く機関銃が展開された。
「逃げられないアルよ!」
銃口から弾丸が発射され、黒ずくめの人物たちの足元に弾き飛ばされる。逃げる道を塞がれ、立ち止まる。
ルミは淡々と続ける。「逃げようとしても無駄だよ。周辺にも人を手配しているからね。」
彼らが逃げ場を失ったことを知り、焦りを露わにする。
そんな2人にレイジョと新八が前に出て、静かにそれぞれ構えながら言い放つ
「先に進みたければ——」
「僕たちを倒してからにしてください。」
2人は一瞬顔を見合わせる。「玄龍門と玄武商会が一緒にいるなんて……そんな、馬鹿なことが……!?」
「私としても、不本意だったがな。」ミナの声は冷たく、彼女の心の中の葛藤を示していた。
「さぁ、正体を明かせ!」彼女の指示は力強く、相手に対する強い意志を感じさせる。
「くっ…」黒ずくめの二人は互いに視線を交わし、静かにフードを脱いだ。正体は、ひとりは無機質な金属の光を放つロボットの男、もうひとりは薄暗い影をまとった玄龍門の下級幹部だった。
「待て、お前は……!?」ミナは驚愕に目を見開く。
「あの格好は……!」レイジョも呆然とした様子で声を上げる。
「まぁ、そんなとこだろうと思ってたけどね。」ルミは半ばあきれたように言いながら、冷静さを保とうとしていた。
「ココナちゃんには後で謝っておかないと。黙って巻き込んじゃったわけですし。」ルミの言葉には、仲間への思いやりが垣間見えた。
「そうアルな。私たちもココナ教官を利用したことに違いないアルからな。」神楽は悔しさを滲ませつつ、責任を感じているようだった。
「シュン教官にも誤っておきましょう。」レイジョが同意する。彼らは仲間を裏切ったことへの後悔を深めている。
「玄龍門の幹部ともあろう者が……」ミナは怒りを抑えつつ問い詰める。「何故こんなことを……」
沈黙が流れ、下級幹部はしばらくの間、視線を逸らしていた。彼の心には複雑な思いが渦巻いている。
「答えろ!何故だ!」ミナの声が鋭く響く。
「お前のせいだ!近衛ミナ!」下級幹部がついに口を開く。彼の声には恨みがこもっていた。
「私、だと……?」ミナは信じられない様子で反応する。
「あぁ、前々から目障りだったんだ。」下級幹部の言葉は、憎悪に満ちていた。
「どうにかしてお前を陥れようと思ったが、協力を集めるには金が必要でな。」彼は冷酷に続けた。
「そんな時に、ちょうど「萬年参」を欲しがっているとある人の存在を知ったのさ。」下級幹部の目がギラリと光る。
「金払いは良かったし、悪い取引じゃなかった。玄武商会の犯行に偽装すれば、矛先が向かう目算もあったしな。」彼の口調には自信がにじんでいた。
「…お前に何かした覚えはないが?」ミナは冷静に問いかけた。
「玄龍門の執行部長でありながら、門主様直属の護衛も務めている……」下級幹部の声は冷たく響いた。「お前がどう思ってるかは知らないが、事実上の玄龍門ナンバー2に他ならない。」
「だが…門主様を思う気持ちは、私の方が上に決まっている!」彼の言葉には、歪んだ愛情が混ざっていた。
「ああ、お可愛い門主様……私の方が執行部長に相認しいというのに!……分かったか、私以上に門主様を愛してる者などいるはずがない!!」下級幹部は激情に駆られて叫んだ。
「そんな理由で子ども達の善意を利用し、山海経の伝統に泥を塗ったのか……?」ミナは呆れた声で問いかける。
「「そんな理由」だと!?私の門主様を愛する気持ちが、お前に分かるわけないだろう!!」下級幹部の言葉は憤怒に満ちていた。
その瞬間、新八は耐え切れず、下級幹部の鼻に指を突っ込んだ。「うがァァァァ!!」
「お前いい加減にしろ!門主様への愛は誰よりも勝っているだぁ!?」新八は激しい感情をぶつける。
「うぐぐ」と呻く下級幹部。
「なら!門主様親衛隊隊規第39条を言ってみろ!!!」新八の声は挑発的だった。
「し、知らないぞ!それに、門主様親衛隊なんてそんなもの聞いたことすらないんだからな!!!」下級幹部は怯えた様子で反論した。
「そうか……なら教えてやろう。」新八は冷静に続けた。「本当に門主様を愛しているなら、門主様や周りの人々を傷つけるのではなく、門主様が望む道を守り、誇りを持ってその道を歩むべき!これに違反した者は門主と面会及び同じ息を吸うことすら禁止とする!」
「そ…んな」下級幹部は驚愕の表情を浮かべる。
「そんな事も知らない貴様に門主様を愛していると語る資格なんてあるわけない!!」新八は厳しい目で見据えた。
「くっ」と呻く下級幹部は、言い返す力も失っていた。
「よって貴様に……鼻フックデストロイヤーの刑に処す‼︎」
「うわァァァァ!!」下級幹部は恐怖に震えながら絶叫する。
ドカァァァァァン‼︎
新八の鼻フックデストロイヤーが炸裂し、下級幹部は吹き飛ばされて気絶した。
「バカな話なのだ。そんな理由で、こんな事を?」もう一人の仲間が唖然とした様子で呟く。
「誰だ!」声が響く。
「密輸がどうとかはどうでもいいのだ。」別の声が加わる
。「ぼく様が知りたいのは、裏で計画を企てたのが誰なのか。そこで一」
「錬丹術研究会も参戦するのだ。」突然の声に、全員が驚く。
「薬子サヤ…!?錬丹術研究会も呼んでいたとは、玄武商会め……」倒れたリーダーの代わりに新たな構成員が現れ、冷ややかな口調で続ける。
「いや、あたし達も来るなんて聞いてないよ!?」ルミは驚愕し、目を大きく見開く。
「私が呼んだのよ。」お妙が自信満々に答える。
「え?でもお妙ちゃんとサヤは仲が悪かったはずだけど……」ルミは疑問を口にする。
「錬丹術研究会をナメてもらったら困るのだ!薬に関することなら、なんでもやるし、玄武商会の情報網にも負けないのだ!」サヤが威厳を持って宣言する。
「それに、今こうして、犬猿の仲の玄龍門と玄武商会が手を取り合っているなら、僕様にも出来ないわけないのだ。」サヤは自信に満ちた目で周囲を見渡す。
「そうなのですね!?」レイジョが目を輝かせながら尋ねる。
「助かるよ!ありがとう、お妙ちゃん!サヤ!お礼に新作料理をまた作ってあげる!!」ルミは嬉しそうに笑顔を見せる。
「楽しみなのだ!….って、今はそんな話をしてる場合じゃないのだ!」サヤは焦りの表情を見せる。
「こいつ等の裏にいるのが、ぼく様の推測通りだったら……」サヤは真剣な表情に戻り、危機感を募らせる。「山海経の一大事なのだ!」サヤの声は緊迫感に満ちていた。彼女の心には、この状況が持つ重大さが深く刻まれていた。
「……」ロボットの男と玄龍門の構成員は、サヤの言葉に耳を傾けながら沈黙を守った。彼らの顔には、一瞬の不安と緊張が走る。
「…どうする?」ロボットの男がつぶやく。彼の声には冷静さを保とうとする意志が見え隠れしていた。
「アイツ等を全員倒せば、目撃者をなかったことに出来る。」玄龍門の構成員は鋭い目で周囲を見回し、決意を固めた。
「リーダーがあんな状態だが、やるしかない!」彼の言葉には覚悟がにじんでいた。
「ちっ…仕方ない!」ロボットの男は一瞬ためらったものの、結局は決断を下した。
「レイちゃん。今日こそ修行の成果を見せる時ネ。」神楽はその瞬間、戦う意志を燃え上がらせた。
「はい!神楽師匠、そのお言葉を待っていました。」レイジョは明るい声で応じ、戦闘への興奮を隠しきれない。
「玄龍門の名にかけて!」ミナは前方を見据え、気合を込めた。彼女の心には仲間を守るという強い決意があった。
その瞬間、緊張が一気に高まる。玄龍門の構成員たちとロボットの男が立ち向かう準備を整え、彼らの周囲には戦う意志が満ちていた。
薄暗い場所に響く緊張感の中、戦闘が始まった。新八は木刀を構え、鋭い眼差しで敵を見据えている。
「行くぞ!」新八は叫び、敵に向かって突進する。彼の動きは軽快で、木刀を大きく振りかぶり、敵の首を狙う。下級幹部はそれをかわそうとするが、新八の一撃はまるで空気を切り裂くような音を立てる。
その後ろから、神楽が猛然と駆け出していく。彼女は体術を駆使し、しなやかな動きで敵を翻弄する。「ホアタァァァ!」と叫びながら、神楽は敵の懐に飛び込むと、華麗な蹴りを繰り出す。その威力は凄まじく、まるで鉄のような足が敵に直撃する。
「私に任せて!」お妙は薙刀を振りかざし、敵の攻撃をかわしつつ、素早く反撃を行う。彼女の動きは洗練されており、まるで流れるようだ。敵が「くそっゴリラのくせに!」と叫ぶと、彼女の攻撃力が増し、さらに力強い一撃が放たれる。「あんな獣と一緒にするなァァァァ!」とお妙は叫びながら、薙刀を一閃。敵の腕が思いっきり叩かれ変な方向に腕が曲がり、痛みの悲鳴が響く。
レイジョは緊張した面持ちで、銃を構えつつ、先輩たちの動きに目を凝らしていた。しかし、銃の扱いは苦手で、彼は体術を使う決意を固める。「神楽師匠いきます!」と気合を入れ、カンフーの構えを取る。敵に飛び込むと、彼は素早く回し蹴りを放ち、敵の顔面に直撃する。まるで弾丸のように、鋭い一撃が敵を捉えた。
その間に、サヤは薬を手に取り、急いで敵に向かって投げつける。「これをくらえ!」彼女の目は真剣そのもので、投げた薬は敵の目に直撃。敵は一瞬、混乱し、反応を遅らせる。
その瞬間、ルミが後ろから援護射撃を行う。銃を構え、冷静に狙いを定める。敵の一人が倒れ込む。
「行け、新八ィィィィ!」神楽が叫ぶ。新八は再び前に出て、木刀を振り上げた。「これで決める!」強烈な一撃が敵の頭に直撃し、相手は力なく倒れた。
「やった!」と新八は喜ぶが、周囲の敵はまだ残っている。新八は冷静さを取り戻し、次の敵へと目を向けた。
「もっと来るといいネ、鬼の皆さん!私たちがここにいる限り、勝ち目はないアル!」神楽は戦う意志を燃え上がらせ、敵を挑発する。
再び戦闘は激化し、仲間たちの技が光る。サヤは次々と薬を投げつけ、神楽とレイジョは体術で敵を圧倒し、お妙は薙刀で華麗に舞うように敵を倒していく。新八も負けじと木刀を振り回し、敵の攻撃をしっかりと受け止めていく。
「このまま、押し切るぞ!」ミナが叫び、銃を撃ちまくる。
「流れるように!」レイジョがカンフーを駆使して敵に飛び込み、素早い動きで敵の攻撃をかわしながら反撃。彼女の体術は驚くほどの成長を見せていた。
周囲に残る敵は次第に追い詰められ、混乱の中で仲間たちの連携が見事に発揮される。サヤが薬を投げつけると、神楽がその隙を突いて敵に飛びかかり、お妙が薙刀を振るい、新八が木刀で最後の一撃を放つ。
「これで決まりだ!」新八の声が響く中、彼の木刀が光り、敵を打ち倒した。
そして、最後の一撃が放たれ、静寂が訪れる。仲間たちは息を整え、勝利の余韻に浸りながら、敵の残骸を見つめる。
「ルミ会長、制圧完了しました。」レイジョは手を払いながら冷静に報告した。
「はぁはぁ……酷い腕だな。銃が泣いてるぞ?」ミナは息を切らせながら、鋭く相手の腕前を皮肉る。
「そちらこそ、そんな体力でよく執行部長が務まりますね。」レイジョが少し笑みを浮かべ、反撃する。
「カンフー映画しか見てないような脳筋に言われて堪るものか!」ミナは肩で息をしながら、相手に食ってかかる。
「私には神楽師匠もいますし、あなたこそ、どうせマフィア映画ばっかりのくせに!」レイジョも負けじと応戦する。
「よしっ。これで一件落着、かな。」ルミは軽く息をつき、戦いの終息を告げた。
「サヤ、聞いておきたいことがあるんだっけ?」彼女は優しく問いかける。
「あっ、そうだったのだ。」サヤが思い出したかのように、口を開く。
「お前たちは、誰の指示で動いてるのだ?」彼女の視線は厳しく、相手を見据えている。
「!?」下級幹部とロボットの男は一瞬驚愕し、明らかに狼狽する。
「しっ知らない!本当だ、何も知らないっ!!」下級幹部が必死に否定する。
「……」サヤはしばし沈黙し、じっと彼らの挙動を観察する。
「いや、お前たちが言わなくても分かってるのだ。」サヤの声が低く響く。「五産の蒲」ー申谷カイだろう」
「……!」下級幹部とロボットの男はさらに表情を強張らせる。
「なっ、何のことだか….ッ!」ロボットの男は声を震わせながら弁解しようとするが、その反応は明らかに動揺を示している。
「その反応じゃ、正解だと言ってるようなものなのだ。」サヤは冷たく微笑み、彼らを追い詰める。
「いったい誰なの?その『五塵の獼猴』って。」ルミが好奇心を示し、サヤに問いかける。
「私も初めて聞きますね。」レイジョも眉をひそめ、言葉の意味を探る。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」ロボットの男が焦りの色を隠せないでいる。
「五塵の獼猴だと!」ミナが驚きの声を上げる。「かつて、錬丹術研究会の会長だった……あの申谷カイのことか?」
「知ってる人がいて良かったのだ。」サヤは安心したように微笑む。「そう、錬丹術研究会の元会長で『七囚人』の1人」だと告げる。
「秘薬の密輸に関与した容疑で、永久に山海経から追放されたのだ。」
「七囚人ってなんですか?」お妙が不思議そうに問いかける。
「私たちにも詳しく教えるアル!」神楽も興味津々に前のめりになる。
「元々はヴァルキューレ警察学校やSRT特殊学園によって捕縛、連邦矯正局に収監されていた凶悪な囚人達だったんだけど、連邦生徒会長が失踪したことで各学園や連邦生徒会の施設各所が混乱した隙に脱獄したって話だったかな。」ルミが事情を説明しながら思い返す。
「ちなみに彼女達が脱獄したのは、ちょうど君たちが現れた日だった気がするけど……。」
「えぇーーー!!」全員が一斉に驚きの声を上げた。
「そんな偶然なこともある時があるなんて驚きアル。」神楽が呆れたように呟く。
「そのうちの1人が、今回の事件の黒幕とは……。」ミナが深刻な顔で口にする。
「私たちが想像していたよりも、規模が大きくなってきましたね。」レイジョも険しい表情で事態の深刻さを理解する。
「さあ、白状するのだ!申谷カイと、どんな取引をしたのだ!」サヤが鋭い視線を彼らに向け、尋問を続ける。
「….私たちも、詳しくは知らない。」ロボットの男は視線を落とし、歯切れが悪い。
「受け子に過ぎないからな。指定の場所まで『萬年参』を運んで、報酬を受け取っただけだ。」彼は震えながら答えるが、内心の焦りは隠しきれない。
(カイさんのことは話したらマズイよな?) (当たり前だろ!それだけは何としても隠し通さないと、私たちの身が……)
「うう……こいつ等、絶対に何か知ってるはずなのだ!」サヤは苛立ちを抑えきれず、拳を握りしめる。
「ここは妾に任せよ。」突然の声に全員が振り返る。
「も、門主様かよォォォォ!!」新八が驚愕の表情を浮かべた。
「なんでまだここにいたんですか!?
「何?ことの次第が気になっただけじゃ。」キサキが悠然と答えながら歩み寄る。
「門主様!」と突然何も言わずに出ていったキサキに少し怒っているミナ。
「すまぬ。だがこれで最初で最後にしよう。ハメを外すのは……。」キサキは冷ややかに言い放つ。
「其方らよ。申谷カイについて話さぬのなら……これを食べさせ無理矢理にでも吐かせるとしようかの?」キサキは手に暗黒物質を握りしめ、構成員とロボットの男に近づく。
「まっ、待ってください!門主様!」下級幹部は恐怖に駆られ、後ずさりするが、キサキの冷たい視線は揺るがない。
「其方は妾への愛する気持ちは誰にも負けぬのであろう?ならば妾の命に従うはずじゃ……さぁ」キサキが一歩ずつ、暗黒物質を揺らしながらさらに近づく。
「うわァァァァァァァァ!!」ロボットの男と下級幹部は絶望に顔を歪め、震えあがる。その光景は凄まじく、周りで見ている者たちも思わず息を呑んだ。
「キサキちゃんを怒らせたらものすごく怖いアル……」神楽が顔を青ざめさせながら、そっとつぶやく。
「見てるこっちも辛くなってきました……」新八も同様に顔を引きつらせ、思わず後ずさる。
「フッ……玄龍門の名を汚した者の末路にはふさわしい最後だったな。」ミナが冷淡に笑い、構成員たちを見下ろす。
「何か言うべきことを忘れていませんか?」レイジョが冷静な声で指摘する。
「な、なんの事かな?」ミナは少しばかり驚きながらも、しらばっくれる。
「結局、『萬年参』の密輸犯は、玄龍門の構成員だったわけですが……」レイジョは眉をひそめ、厳しい視線を向ける。
「それなのに何の責任もとらないってどういうつもりアルか?ハードボイルドさ〜ん」神楽が茶化すようにミナに迫る。
「そ、それは……玄龍門にも事情があってだな……」ミナは一瞬戸惑いながらも、すぐに冷静さを取り戻す。
「ミナよ……今回の件は完全に妾たち玄龍門の失態にやるものじゃ。」キサキは深く息をつき、しっかりと頭を下げる。
「頭を……下げた?」レイジョは驚きの声を漏らす。
「も、門主様……」ミナも戸惑いを隠せない。
「玄龍門は、玄武商会に対して公式に謝罪しよう。」キサキは真剣な表情で語り始める。「確たる証拠もなく玄武商会を犯人であると述べ、汚名を被せたこと。そして、妾の目が行き届いておらぬこと。山海経に混乱を招いた責任は、すべて妾にある。」
「玄龍門の門主として、かような事は二度と起こさぬと約束しよう。これが玄龍門の門主、罨輩キサキの裁決じゃ。」キサキの言葉は重く、彼女の責任感が伝わってくる。
「しかし……」ミナが口を開きかけたが、それを遮るようにキサキが言葉を挟む。
「ミナよ……二度は言わぬ。」キサキの言葉に、ミナは肩をすくめ、口を閉じる。
「はっ、申し訳ございません。」ミナは頭を下げた。
「ルミ会長、私は納得できません!」レイジョが再び声を上げる。「門主様が責任を取るのはわかりますが、あのエセハードボイルドには謝罪どころか反省の色すら見えないじゃないですか!」
「良いか悪いかで言ったら微妙だけど……まあ、これで一件落着ということで。」ルミは落ち着いた口調で、場を収めようとする。
「そうですよ。レイジョさん、いつまでも相手を憎んでも仕方ないじゃないですか。」新八が笑みを浮かべて促す。
「さ、この話はこれで終わりにしよっか。」ルミは軽く手を振り、会話を締めくくる。
「キサキの考えは分かったし……玄武商会としては、またお客さんが安心して来られるようになるなら十分。」ルミはそう言い、柔らかな笑顔を見せる。
「いくら門主とはいえ、生徒会である以上、どうしようもない事情はあるからね。」ルミの言葉にレイジョはしぶしぶ頷いた。
「うーん……分かりました。今日のところは、会長の意志を尊重します。」レイジョは少し納得がいかない様子ながらも、引き下がることを決めた。
「何かしっくり来ない終わり方だったアルな……」神楽が小さな声で呟く。
「一つ、其方らと玄武商会にお願いがあるのじゃが。」キサキが突然、真剣な表情で切り出す。
「もちろん」お妙が優しく答える。
「礼を言う。どうやら、今回の騒ぎを聞きつけた生徒たちが不安を抱いているようでの。」キサキは深刻な表情を見せた。
「彼女らの不安を払拭するのも、玄龍門の大事な役目じゃ……そこで、力を貸してはくれぬか?」
「これは、玄龍門の門主からの……正式な依頼じゃ。」キサキは静かに頭を下げ、頼み込む。
「も、門主様!?」ミナが驚きの声を上げる。
「くどいぞ。ミナ、玄武商会も山海経じゃ。」キサキは冷たく言い放つ。
「そう……ですね。分かりました、門主様。」ミナは納得したように頷き、従う。
「ざまぁないアルな。マヌケボイルド。」神楽が軽口を叩く。
「神楽ちゃん!」新八が慌てて彼女をたしなめる。
「それで、依頼って何?どんな内容でも受けるつもりだけどね。」ルミがにっこりと微笑みながら尋ねる。
「それは重畳……では、宴の準備を頼めるかの?」キサキは穏やかな笑みを浮かべ、静かにお願いする。
「え?」新八が思わず聞き返す。
「うたゲー?やりたくないアル。」神楽が首を傾げる。
「うたゲーじゃなくて、宴ね。てかそれは普通音ゲーっていうでしょ!それにさっきの流れのどこに音ゲーの要素があったんだよ!」新八が思わず突っ込む。
「山海経の全生徒……そして、万事屋の皆を招待して執り行う、盛大な宴じゃ。」キサキは堂々とそう宣言する。
「僕たちもいいんですか?」新八が驚きながら尋ねる。
「私たち、いろいろと派手にやっちゃいましたけど?」お妙も少し心配そうに言う。
「自覚あったんかいィィィィ!」新八が勢いよく突っ込むが、キサキは微笑を崩さない。
「無論。何を言う、其方らは此度の事件を解決に導いた立役者じゃろうて。」キサキは優雅に頷く。
「この機会に、『山海経』の『おもてなし』を存分に味わうが良い。」
「やったアル!またご馳走が食べられるネ!」神楽が嬉しそうに小躍りする。
「費用なら心配せずとも良い。全て、玄龍門が負担しよう。」キサキは自信に満ちた表情で胸を張る。
「それとも……妾のお願いなど、引き受けるに値しないと?」
「ううん、そんなわけないよ!あははっ、楽しくなりそうだね。」ルミは微笑みを浮かべ、喜びの声を上げた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
山海経のどこか、薄暗い部屋で申谷カイはモニターに映し出された映像をじっと見つめていた。そこには、先ほどの戦闘で「萬年参」の密輸を暴き出したルミたちの姿が映し出されている。
「そうか……『萬年参』の密輸が、もう見つかってしまったとは。」カイは低い声で呟く。彼女の唇は微かに笑みを浮かべ、どこか愉快そうだった。
「それにしても、あの子たちがねぇ……ククッ、成長しているようで、先輩としては喜ばしい限りさ。」カイはモニター越しにルミたちの活躍を見つめながら、まるで子供の成長を見守るかのように微笑む。
「いや、それとも……最近来たシャーレの『先生』の仲間……いや、万事屋としての力なのかね。」カイの言葉には皮肉の色が混じっていた。彼は、この事態が単なる偶然ではなく、外部からの影響も絡んでいることを察していた。
「でも、残念なことに後一歩遅かったな。」カイは肩をすくめながら、静かにため息をつく。「すでに新薬の実験は終えたところさ。欲を言えば、もう少しばかり実験データを集めたかったところではあるけど……」
彼女は再びモニターに視線を戻す。「まあ、構わないさ。これもまた一興。後輩たちの成長に免じて、大人しく引き下がろうじゃあないか。」
彼の指は机の上をリズミカルに叩きながら、次の一手を考えているようだった。「今度来る時は、シャーレの『先生』と仲間たちが揃った時にしようか……『先生』との出会いが、一体どんな化学反応を起こすのかも気になるところだねえ。」
彼女はかすかに笑いながら、ふと思い出す。「万事屋銀ちゃん……か。いつ以来だろうか、こんなにも心が踊るのは――ククッ。」
カイの瞳には冷酷さと共に、かつて感じたことのない高揚感が宿っていた。彼女にとって、この勝負はまだ始まったばかりに過ぎなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後日
玄武商会では、賑やかな宴が盛り上がり、たくさんの生徒たちが料理を楽しんでいた。
「まずはこれを食べてみて!」と、玄武商会の職人が大きな声で料理をすすめる。「レッドウィンター風のスープに、ワイルドハント風の蒸し肉とぶどうを加えた特製料理だよ!」
「スープがピンク色なんだが、本当に食べられるのか…?」生徒の一人が不安げに尋ねる。
「色は強烈だけど、香ばしくて甘酸っぱい味わいが絶品なんだ!蒸し肉は口の中でホロホロ崩れるくらい柔らかくてさ!」玄武商会の職人が自信満々に説明すると、周りの生徒たちは興味深げにスープをすくいあげ、口に運ぶ。
「はい、みなさん!」会場の中心で、シュンが園児たちに向けて声をかける。「これは玄龍門と玄武商会の方々が開いてくれた宴会ですよ〜。いっぱい楽しんでください!ですが周りに迷惑をかけないよう、気をつけてくださいね?」
「はーい!」と、元気よく返事する園児たち。
「食べ終わったら、ちゃんとごちそうさまを言うんですよ!」ココナはしっかり指導を続け、「それと、家に帰ったら歯磨きも忘れないことっ!」とさらに念を押す。
「ココナちゃんも歯磨きしなきゃダメだよ!」と園児たちが無邪気に言い返すと、ココナは真顔になって訂正する。「ココナちゃんじゃなくて、ココナ教官ですっ!」
その後すぐに、シュンとお妙が対面していた。お妙は、シュンの胸を見つめ、険しい表情を浮かべている。
「あなたがシュンさんですか……」お妙の冷たい声が響いた。
「あー、貴方がお妙さんですね。今回の件はどうも……」シュンが挨拶をしようとしたその瞬間、ムギュッと音がして、お妙の手がシュンの胸に伸びた。
「え?」シュンが驚くも、お妙の顔は怒りに燃えていた。
「今まで我慢してきたけど……こんな風に晒されたら腹が立つ!」お妙は力を込め、シュンの胸をさらに強く掴み捻り上げた。
「これは私に対しての侮辱かしらァァァァ!」お妙が激昂しながら叫び、シュンは悲鳴を上げる。
「お妙さんっ!お、落ち着いてください!も、もげますぅぅ!」シュンが必死に抵抗するが、お妙の怒りは収まらない。
「シュンお姉ちゃんが一番迷惑かけてる……」園児たちは目を丸くして、その光景を見ている。
「何やってんですか!姉上、ここは宴会ですし、園児の前ですよ!何歌舞伎町のいつもの調子で暴れてるんですか!」新八が慌ててお妙を止めに入る。
「止めないで新ちゃん!これは女としての戦いよ!」お妙は新八をにらみつける。
「いや、今姉上がやってるのはただの八つ当たりですから!自分の胸が小さいことへの八つ当たりしかしてないから!」新八が本音を口にすると、場の空気が凍りつく。
「どうやら新ちゃん……貴方も死にたいらしいわね!」お妙が不気味な笑顔を浮かべ、怒りの矛先を新八に向けた。
「マズイネ!みんなで姉御を止めるアルよ!」神楽が声を上げると、宴会に参加していた生徒たちが一斉に立ち上がり、暴れ出したお妙を止めにかかった。
「おぉー!」会場全体が騒がしくなり、喧騒が広がっていく。
**
「何やら騒がしいな。」ミナは腕を組みながら、宴会の様子を見守っていた。
「ハハ、宴会はこうでなくちゃね。」ルミが笑いながら答える。
「いや、あれはムードを上げるとかのレベルを超えてると思うんですが……。」レイジョが困惑した表情を浮かべ、状況を観察する。
「ふふふ、あやつらがいると退屈せんの〜。」キサキは楽しそうに笑い、微笑ましげに彼らの喧騒を眺めていた。
**
みんなが笑いながらお妙を抑えている中、少し離れたところで、新八はルミとキサキが楽しげに会話している様子を見つめていた。彼の心には複雑な思いが広がる。
(組織同士の問題は、すぐに解決とはいかないかもしれない……)
宴会の賑やかな声と笑顔が広がる中、新八は再びルミとキサキに目を向ける。
(それでも、この二人がいれば、きっと……)
新八は静かに微笑み、心の中でその可能性を信じていた。
龍魂同舟 完
次回予告
将軍様「片栗粉キヴォトスで民がどのような暮らしをしているのか見てみたい」
片栗粉「はぁ将ちゃんもものずきだねぇ〜」
片栗粉「ってことでお願いするわ〜」
アル「な、ななななんですてぇぇぇぇ!!!」
近藤さん「ゴリラ13準備完了」
沖田「ドs13いつでもOKですぜ」
次回 将軍は民の事をしないと
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
-
銀時
-
新八
-
神楽
-
沖田
-
土方
-
山崎
-
高杉
-
桂
-
定春
-
エリザベス
-
ホシノ
-
シロコ
-
ヒナ
-
アコ
-
ミカ
-
ナギサ
-
セイア
-
ユウカ
-
ノア
-
近藤