透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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銀時「よーし今日はハロウィンだ。ってことで今日はハロウィン回にしまーす」

新八「いや!前回の次回予告の内容完全に新しいストーリーに入ろうとしてたじゃん!!読者のみんなを期待させて何やってんですか!」

銀時「何言ってんだパッツァン。銀さんにだって間違いぐらいあるって、ほら弘法も筆の誤りって奴だよ」

新八「いやアンタの場合は誤りすぎて筆折れちゃってますから!弘法どころか、筆が折れたただの……」

神楽「マダオアル‼︎」

銀時「おいおいそこまで言わなくてもいいだろ?そんなことより、今回の話のボスの声は中尾隆聖さんをイメージしてくれ」

神楽「被害者の方はみんな元に戻るから心配しなくていいアル」

新八「えっとどうやってみんな元に戻るんですか?」

銀時「それは……あれだ。小説やらマンガやらの前回の話のいいところだけが反映する能力が働いて……」

新八「もういいです。さっさと始めましょう。茶番が長すぎます。」

神楽「確かに長すぎたネ」

銀時「それじゃ」

万事屋「トリックオアトリート!どうぞ!」



第四十三訓 ハロウィンのお菓子はなんでもいいってわけじゃない

とあるハロウィンの夜、場所は豪華なオペラハウスの前。ハロウィンパーティーが開催され、その会場に潜入しようとしているのは、便利屋68のメンバーたちだ。彼らはそれぞれ仮装をして任務に挑むことになっている。

 

アルは、長い黒いローブに先が尖った帽子をかぶり、魔女の仮装をしていた。彼女の手には魔法の杖を模した小道具が握られ、目つき鋭くも冷静な表情でオペラハウスを見つめている。風が吹くたびにローブがふわりと揺れ、彼女の魔女姿を一層際立たせている。

 

その隣に立つカヨコは、黒猫の仮装をしていた。、猫耳のついたカチューシャを装着し、腰には長い尻尾がついている。、時折ピクピクと動かす尻尾は、彼女の楽しげな心情を反映しているかのようだった。

 

一方、ムツキはというと、スーツ姿で額と腕に赤いインクで血のような模様を描き、ゾンビの仮装をしていた。スーツはわざと破れたように切り裂かれ、インクがこぼれた痕が不気味に見える。彼女のいつもとは違う冷ややかな表情と無造作な動きが、まるで生き返ったばかりのゾンビそのものだった。

 

そしてハルカは、額に大きな黄色のお札を貼り付け、キョンシーのような仮装をしていた。足元はぴょんぴょんと跳ねるように進む様子が、まるで本物のキョンシーのように見えた。しかし、彼女の顔には不安の色が隠せない。

 

「いよいよね…久しぶりのまともな仕事よ。失敗しないようにしないと…」と、アルは冷静に語りかけ、目の前のオペラハウスの扉を鋭く見据えていた。

 

「クフフ、任せてよアルちゃん」とムツキが笑いながら答える。彼女は目の前の状況に対して何も恐れる様子を見せず、その赤いインクで描かれた傷跡が一層不気味に見える。

 

しかし、ハルカは心配そうに自身の姿を見下ろして言った。「目立たないような格好をするために仮装したんですよね?でも…私、頭にお札しか付けてないですけど…大丈夫ですかね?」

 

彼女の声は震えており、自己不安を抱えているのが明白だった。そして一瞬、彼女はショットガンを取り出し自分に向けた。「やっぱり目立ちますよね?…死にます!」そのまま引き金に指をかける。

 

「死ななくていいから……それに、こんな会話をパーティー会場の前でしてる時点で怪しいから、早く会場に入らないと…」カヨコが冷静に状況を整理し、慌てるハルカを制止した。

 

その時、突然、重い雰囲気を一変させる声が響いた。「そうそう、こんなとこでチンタラせずに、早く麻薬人のボスを◯しちゃって、ソウルソサエティに返してやらねぇとな!」振り返ると、そこに立っていたのは、一目で禍々しいオーラを放つ、木刀を黒く塗った男――最後の月牙天衝姿の銀時だった。

 

彼の姿はハロウィンの仮装とは思えないほど、本気でコスプレしたように見える。黒い衣装は彼の鋭い目つきと相まって、まるで今にも敵を討ちにかかるかのような雰囲気を醸し出していた。

 

「ん、どうしたぁ?ぼぉーっとした顔してよ」と銀時が軽く声をかけるが、アルはすぐに状況を察して緊張した声でハルカを呼んだ。「ハルカ……」

 

「はい、アル様……」ハルカは無言で応答すると、手に持ったショットガンを急に銀時に向けて、ためらうことなく連射を開始した。

 

「バッバッバッバッバッバッバッバッ!!」

 

銃声が響き、銀時は必死にその銃撃をかわし続ける。音速に近いスピードで飛んでくるショットガンの弾丸を、どうにか身をひねって回避していた。

 

「ちょっ!お前ら急に何すんだよ!!」銀時は困惑しつつも、どうにか弾丸の嵐をかわしながら叫ぶ。

 

「何じゃないわよ!なんで潜入捜査だってのに、そんな禍々しいオーラ放ったガチコスプレして来てんのよ!それに、あなた、なんで依頼の内容と日時を知ってるわけ!?」アルが激しい口調で問い詰める。

 

銀時は一瞬何かを思い出すような仕草を見せるが、すぐに面倒くさそうな顔をして、「それは……あっー!めんどくせぇ!口で説明すんのダリィから、回想シーンで説明するわ。それじゃホワホワホワーン」と両手を広げ、回想シーンに突入する仕草を見せる。

 

「回想シーン突入の音出さなくていいから!」と、アルは呆れながらその場でため息をつく。

 

シャーレ部室――10月28日朝、日の光が窓から差し込む静かな空間。部屋の中には、仕事に向けて準備を整えている便利屋68のメンバー、カヨコと銀時がいた。カヨコは部屋の隅に座り、何かを考え込むような表情を浮かべながら銀時に話しかける。

 

「あー……銀さん、ちょっといいかな?」カヨコが控えめな声で切り出す。

 

銀時はその瞬間、目を閉じてため息をつき、椅子にゆっくりともたれかかった。彼の顔には深い疲労の色が浮かんでいる。「あ、何?俺今、2日酔いで参ってるんだよ。勘弁してくれ」頭を軽く押さえながら、だるそうに答えた。

 

カヨコはため息をついて、冷たく言い返す。「うん。自業自得だし話すね……」そのまま、彼の様子を一瞥して、いつもの調子で続ける。

 

「ちょっと見てほしいものがあるんだけど……」カヨコの声が少し落ち着いたトーンに変わり、その場に立ち上がると、急に銀時に向かってゆっくりと歩み寄り始めた。彼女は無言で目を瞑りながら、距離を詰めてくる。

 

銀時は不意を突かれたように目を見開いた。彼の手元にあったジャンプを慌てて閉じ、緊張が走る。

 

『えぇー!嘘!コレマジですか?マジのやつですか!?生徒と先生の禁断の恋ってやつゥゥゥ‼︎』銀時の心の中は、思わぬ展開に混乱していた。頭の中で、次々にシナリオが流れ込み、いくつもの妄想が膨らむ。

 

しかし、そんな彼の頭をよぎる考えを無視するように、カヨコはさらに近づいてきた。「ちょっと待て!コレはいろいろと問題が……」銀時が口を開き、何かを言いかけたその時、カヨコが不意に言葉を口にした。

 

「…トリックオア」

 

「え?」銀時は呆然とした表情で彼女を見返す。彼の顔には、全く予想外の展開が広がっていた。

 

「…トリート?」とカヨコは、突然かわいらしく猫のポーズを取っ、まるで黒猫のような動作を真似て見せる。

 

その瞬間、沈黙が部屋を支配した。銀時は言葉を失い、しばし固まっていた。

 

「その反応…やっぱりちょっと違うよね…」カヨコは落ち込んだ表情を浮かべ、肩をすぼめる。期待していた反応とは違うことに気づいたのだ。

 

『全然違いましたァァァァ‼︎想像してたのと全然違いましたァァァァ‼︎』銀時の内心は、再び激しく叫び始める。先ほどまで抱いていた妄想とは、全く異なる現実に直面しているのだ。

 

『いや仕方ないじゃん!目を瞑って近づいて来たら普通はそういう反応になるじゃん!顔に出てないよね?カヨコに変な顔見せてないよねェェェ!?』銀時は焦りながら、自分が動揺していないか確認しようとするが、その動揺は隠しきれていない。

 

「ど、どうしたんだよ……?突然」と、銀時はようやく口を開き、何とか状況を整理しようとする。

 

「いや…今度依頼でハロウィンパーティーに潜入するんだ」カヨコは少し恥ずかしそうに、目を伏せながら説明を始める。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

回想の中の、さらに奥深い記憶の断片。

 

静けさを切り裂くように――

カコン。

庭先の鹿威しが、張り詰めた空気をはじいた。

その音は、まるで時を遡る合図のように、今では遠いあの日のやり取りを呼び覚ます。

 

苔むした石畳を雨のしずくが飾る、初夏の昼下がり。

軒先に座る男の声音には、かすかに苛立ちと不安が混じっていた。

 

「……いや、今までも二日三日、家を空けることはあったんだがね……」

と、依頼人は呟くように口を開いた。

 

「さすがに一週間ともなると……さすがに……」

 

彼の声が消え入りそうになった時、脇に立つカヨコが、隣で身を乗り出していたアルの耳元にそっと囁く。

 

「ちょっと、落ち着ついてよ社長。久々の依頼で浮かれるのは分かるけど」

 

だがアルの瞳は、すでに冒険の匂いに煌めいている。

 

依頼人はため息をひとつ挟み、続けた。

 

「連絡は一切ないしな。友人たちにも聞いて回ったが、誰も居所を知らんときた」

 

手の中に取り出したのは、一枚の写真。

 

「親の私が言うのもなんだが、まあ……見目麗しい娘でね……だからこそ、何か悪いことに巻き込まれているんじゃないかと……」

 

差し出されたその写真を見た瞬間、室内の空気が微妙に変わった。

金髪を逆立て、濃すぎるアイメイクに彩られた顔。厚底の靴、露出の多い服――世間で「ギャル」と呼ばれる類の、どこか浮世離れした少女がそこに写っていた。

 

しばしの沈黙のあと、ムツキが含み笑いを漏らす。

 

「クフフ……そーだねェ、たとえば……こう……巨大なハム製造機に巻き込まれちゃったとかさ?そんなんじゃないの?」

 

依頼人は目をしばたたかせ、困惑を滲ませながら言い直す。

 

「いや、そういう意味じゃなくて……なんというか、その、事件に……巻き込まれてるんじゃないかと……」

 

「事件……事件ですか!?」

ハルカが乗っかるように叫ぶ。

「もしかしてーーハム事件とか!?」

 

「ちょっと、みんな」

カヨコが静かに皆を躾ける。

「いい加減にしてくれない?せっかく来た仕事、パーにする気?」

 

そして少し冷静な声音で、依頼人に問い直す。

 

「でも本当に、私たちでいいの?こういうの、ヴァルキューレ(警察)に任せるべきじゃ――」

 

依頼人は静かに首を振った。

その仕草には、長年染みついた誇りと、時代遅れなまでの気高さが宿っていた。

 

「そんな大事にはできん。……我が家はこの地で代々名を成した、由緒正しい家柄だ」

 

「娘が、夜な夜な遊び歩いているなどと知れたら……それこそ、一族の恥だ」

 

「だからこそ……内密に、誰にも知られぬよう連れ戻してほしいんだ」

 

再び、カコン。

鹿威しが静寂を断ち切った。

それはまるで、何かの幕が上がる音にも似ていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「仕事だからちゃんとしないといけないんだけど、こういうのってちゃんとしないといけないし……」彼女は語るにつれて少しずつ声が弱まっていく。

 

「ほら、こういうの慣れてないし……」カヨコは少しうつむき、彼女が今まで感じていた不安を口にした。潜入任務というプレッシャーに、仮装という非日常的な状況が重なり、不安が増していたのだ。

 

『いや…なんか男をおとす手の方は結構手慣れてそうでしたけど‼︎違う意味で驚かされましたけど‼︎』銀時の心の中では、さっきの猫ポーズがまだ頭に残り続けていたが、何とか心を落ち着けようと努力していた。

 

銀時は深呼吸をして、冷静を取り戻す。心の中で整理がついたところで、ゆっくりと笑みを浮かべ、頭をかきながら話し始める。「ったく、お前らのことだから、また無茶な依頼受けることだろうとは思ったけどよ……」いつもの調子で、少し軽口をたたく。

 

「仮装の心得とか、場数とかそんなの関係ねぇんだよ。やるなら、堂々とやりゃあいいんだ。ビビることなく、俺たちでそのパーティーひっくり返してやろうぜ!」銀時はいつも通りの自信に満ちた口調で、カヨコに向けて励ましの言葉を送る。

 

カヨコは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに彼の言葉に安心したように微笑みを浮かべた。「まぁ、銀さんがそういうなら……」彼女は少し肩の力を抜いた様子で、頷いた。

 

「で、そのパーティーはいつどこであるんだよ?」銀時は真剣な表情で、次の重要な情報を尋ねる。彼は任務に関しては常に真剣で、カヨコの不安を取り除いた後は、すぐに次のステップへと進もうとしていた。

 

カヨコは一歩銀時に近づき、小声で情報を伝えた。「ある大物麻薬密売人が、10月31日夜8時にハロウィンパーティーを開くの。その場で重大な不正取引が行われるって聞いてるわ。私たちは、その密売人を始末するよう依頼されているんだけど、怪しまれないように練習してたってわけ」

 

その情報を聞いた銀時は、しばらく考え込んだ後、顔にニヤリとした笑みを浮かべた。「しゃーねぇな、手伝ってやるよ」彼の軽い口調に反して、その目には鋭い決意が宿っていた。

 

オペラハウスの前、豪奢なハロウィンパーティー会場を目前にして、便利屋68のメンバーたちは戸惑いの色を隠せずに立ち尽くしていた。空は夜の帳が降り始め、パーティー会場のライトが不気味に輝いている。そんな中、銀時は軽い調子で今までの経緯を語り終える。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ってわけだよ」と銀時は肩をすくめる。

 

彼の話を聞いた一同は、しばし沈黙に包まれた。しかし、その沈黙は一瞬で破られることになる。

 

「な、なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」アルが突然声を張り上げ、その場で思わず飛び跳ねるように驚きの声を上げた。彼女の大きなリアクションに、周囲のメンバーは一瞬驚いたが、すぐにカヨコに視線が集中する。

 

アルは眉を寄せ、額に汗を浮かべながらカヨコを指さし、「カヨコォ!普段は常識人で、絶対に情報漏洩なんかしないあなたが……なんで今回に限って銀ちゃんに話しちゃったのォォォォ!!!」と、混乱気味に問いただす。

 

カヨコは申し訳なさそうに視線を落とし、指先で髪をいじりながら小声で答えた。「ごめん………銀ちゃんなら話してもいいかなって思って……」

 

しかし、アルはその言葉に納得できない様子で、再び声を上げる。「いやいや、銀ちゃんよ!あの銀ちゃんよ!銀ちゃんに話すってことは、誰かに話してもおかしくないってことじゃな……」

 

「はぁ……」アルは深いため息をつき、疲れた様子で眉間に手を当てた。「いつもなら銀ちゃんを頼るのが良いんだけど、今回のクライアントは情報漏洩が命取りなのよ……。バレたら全てオジャンだし……」

 

「まぁまぁ〜アルちゃん、そんなこと言っても仕方ないよ。今は捜査に集中しなきゃ」とムツキが軽やかな調子でアルをなだめる。彼女は周囲の緊張感を和らげようと、いつも通りの笑顔を見せる。

 

「それに〜バレても全員ドッカァァァン!!ってやっちゃえばいいし、それこそアウトローってもんでしょ?」ムツキはニヤリとしながら続けた。

 

アルはその言葉に眉をしかめ、「ねぇ、ムツキ?何でもかんでも『アウトロー』って言えばつれると思ってない?」と、少し呆れたようにツッコミを入れた。

 

ムツキは悪戯っぽく笑いながら、「クフフ、バレた〜?」と返す。その笑顔は、相変わらずの無鉄砲さを隠そうともしない。

 

「そうはいくもんですか!! 私だって、仕事人としての誇りが……」とアルが言いかけたその時、再びハルカが彼女の袖を引っ張った。

 

「アル様は……いつもアウトローになってると思います」と、無表情ながらも静かに指摘するハルカ。

 

その言葉に、アルはしばし沈黙した。

 

 

オペラハウスの内装は豪華で、天井から吊るされたシャンデリアがきらびやかに光を放ち、来場者たちの華やかな衣装がその光に映えていた。そんな会場内に足を踏み入れたアルたちだったのだが、

「俺たち連れてきてるじゃん!結局、アウトローって言葉で丸め込まれてるじゃん!」銀時が大声でさっきのアルのセリフとの矛盾を指摘する。

 

その隣で、顔を真っ赤にして俯くアルが、何も言い返せずにモジモジとしている。ムツキはそんなアルをニヤニヤと見つめている。

 

「し、仕方ないじゃない!部下にあんな顔で言われたら、丸め込まれるでしょ!?普通!」アルはムツキと銀時に対して苦しい言い訳をするが、その言葉はあまりに弱々しかった。

 

ズンズン――ズンズン――

低音のリズムが床板を伝い、天井のシャンデリアさえ微かに揺れているようだった。

まばゆい照明と混ざり合う音の洪水、熱気、笑い声。

ここは、夜の街にぽっかりと空いた異世界――パーティー会場。

 

ズン、ズン、ズンズン……

 

重低音に合わせて踊る光と人影のなか、場違いにも真剣な顔をした数人が、カウンター席に詰め寄っていた。

 

「……あァ?」

カウンター越しにグラスを磨いていた鳥頭の男が、眉間にシワを寄せながら顔を上げる。

「知らねーよ、こんな女」

 

乱暴に差し出されたスマホの画面には、例の金髪ギャルの写真。蛍光灯の反射が彼女の濃いメイクを一層異質に映し出していた。

 

「この店によく遊びに来てたって聞いて来たんだけど〜」

ムツキが唇を尖らせて甘ったるく話しかける。

「おじさん、な〜んか知らな〜い?」

 

「んなこと言われてもよォ、嬢ちゃん」

鳥頭の男は肩をすくめ、グラスをトンと置いた。

「JKの顔なんていちいち覚えてられっか。名前とかは?」

 

「え、えーと……」

ハルカが咄嗟に視線を泳がせながら口にした。

 

「ハ……ハム子……です」

 

「……ウソつくんじゃねェ!!」

男が勢いよくカウンターを叩く。

「明らかに今テキトーにつけただろ!?そんな投げやりな名前つける親がいるか!!」

 

「まぁまぁ、忘れちゃったけど、なんかそんな感じだったような〜」

とムツキが鼻歌交じりに加勢する。

 

「オイぃぃぃ!!ほんとに捜す気あんのかァ!!?」

 

そのやり取りの横で、腕を組んでいたカヨコがため息を漏らす。

 

「銀ちゃんに社長……この二人に任せてたら、永遠に仕事終わらない気がするけど……」

 

「いいんだよ、もう」

奥のソファで胡坐をかいていた銀時が酒を飲みながらぼそりと呟いた。

「どうせ、どっかの男の家にでも転がりこんでるんだろ。あのバカ娘……」

 

「アホらしくてやってられるかよ。ハム買って帰りゃ、依頼人のオッサンもごまかせるだろ」

 

「ごまかせるわけないでしょ!」

アルが鋭くツッコミを入れる。

「ていうか、どれだけハムにこだわる気なのよ!!」

 

カヨコが深く長いため息を吐いた。

 

「……はぁ………」

 

銀時は立ち上がり、片手で頭をかきながらゆっくりとトイレの方へ向かっていく。

 

「じゃ、あとは適当にやっといて〜」

 

「ちょ、銀さん!!」

アルが席をガタッと立ち上がり、その背を追おうとする。

 

そのとき――

カヨコがすぐ横で、誰かとドンッと肩をぶつけてしまった。

 

「――あっ、すみません」

 

ぶつかった相手は眼鏡をかけた男。

整ったスーツ姿、やけに無機質な表情。

彼は無言でポンポンと肩を払い、そして冷ややかな声を放った。

 

「……アバズレ」

 

「どこに目ェつけて歩いてんだ」

 

一瞬、空気が凍った。

 

男はカヨコにスッと手を伸ばす。

その手の動きに、カヨコの体がわずかに震えた。

 

「肩にゴミなんぞ乗せて、よく恥ずかしげもなく歩けるな」

 

男は口元を歪め、軽蔑と嘲笑の混じった声で続けた。

 

「少しは、身だしなみに気を配りやがれ……」

 

不快感と不安が背筋を伝う。

 

……なんだろう、あの人……

 

その時。

 

「カヨコちゃ~~ん!」

背後からムツキの陽気な声が、空気をかき混ぜるように飛んできた。

 

「もう、めんどくさいから、これでごまかすことにしたんだ〜いいアイディアじゃない?」

 

カヨコは振り返り、ムツキが抱えていたものを見て目を見開いた。

 

「全く……ムツキ、少しはしゃぎすぎだよ」

 

「大体、これでごまかせるわけないでしょ」

 

「えぇ〜なんでぇ?」

 

「なんでって……それ、ハム子じゃなくてハム男!!性別入れ替わってるじゃない!!」

 

ムツキが得意げに掲げる人形のようなオブジェには、名前の札がついていた――“ハム男”。

 

「むぅー、ハムなんか、どれ食べたって同じじゃん!」

 

「何?反抗期!?」

 

――そのとき。

 

ドサッ。

 

唐突に、ハム男が音を立てて床に崩れ落ちた。

 

「――!」

 

「ハム男さァァァァァん!!」

ハルカの絶叫が、重低音に揺れるパーティーホールを震わせた。

まるでドラマの主役のように、彼女はハム男に駆け寄る。

 

「ちょっと!駄キャラが無駄にシーン使ってんじゃないわよ!!」

アルが苛立ちを込めて叫ぶ。冷静さを欠いたその声が、騒音の中でも妙に耳に残った。

 

ムツキはと言えば、相変わらずのんびりとした調子で、

「ハム男、あんなに飲むから〜」と他人事のように言っていた。

 

その時――カヨコが息を呑んだ。

 

「……!」

 

この人――おかしい。

 

床に倒れたハム男は、鼻水を垂らし、泡を吹きながら白目を剥いていた。

なのに、その口元だけは不気味に緩んでいる。

「エヘへ……」と、意味のない笑いを浮かべながら、意識の境界をさまよっている。

 

――酔ってるんじゃない。これは明らかに異常だ。

 

「もう、いいから、いいから」

鳥頭の男が手を振ってカヨコたちを制した。

「あと俺がやるから。お客さんは、あっちいってて」

 

そして彼は、面倒そうにため息をつきながら呟いた。

 

「ったく、しょうがねーな……どいつもこいつも、シャブシャブシャブシャブ……」

 

カヨコの耳が鋭く反応した。

 

「シャブ……?」

 

「この辺でなァ、最近新種の麻薬が出回ってんのよ」

男は眉をひそめ、声を潜める。

「見た目はただのグミだけど、中身は……相当ヤバいって話だ」

 

「お客さんたちも気をつけなよ。下手すりゃ戻ってこれねぇぞ」

 

**

 

「ア"~~~~~~~~~……パーティーだからって飲みすぎた」

 

ザパァァァァァ――。

 

個室のトイレの中で、水を流しながら銀時が嘆くように叫んだ。

 

「もう二度と酒なんて飲まねェ……」

 

「いや、毎回言ってるけどな」

便座に座りながら、一人ツッコミを入れている。

 

「……今回はホント、マジで誓うよ。誰に誓おう……」

 

しばしの沈黙。

 

「お天気お姉さんに誓おう」

 

その時、個室の扉がコンコンとノックされた。

 

「……?」

「ハイ、入ってますけ……」

 

「いつもの、ちょうだい。」

 

耳慣れぬ、焦燥に満ちた女の声だった。

 

「はァ?」

 

「早くって言ってんでしょ!!いつものがないと私……もうダメなの!!」

 

ドア越しに吐き出された声は、どこか壊れていた。

 

「い、いつものって言われても……水っぽいですけど……」

 

「何しらばっくれてんのよ!!金のない私は、もうお払い箱ってわけ!?」

 

「ふざけんじゃないわよ!アンタらのこと警察にタレこむから!!」

 

銀時の眉がピクリと動いた。

 

「……お前、警察に言う?」

 

「別にいいけど、何を?って言われるよー多分」

 

――その瞬間。

 

ダンッ!!

 

と、鈍い衝撃音がトイレ全体に響き渡った。

 

「……!!」

 

「誰に話しかけてんだ、ボケが。」

 

「てめーにはもう用はねぇよ、ブタ女」

 

その言葉を聞いた銀時の目が静かに据わる。

 

ゆっくりと立ち上がると、木刀を手に、ドカンと音を立てて個室のドアを開けた。

 

「……!!」

 

男――あの眼鏡の男が、目を細めて銀時を見た。

 

「なんじゃ、お前……」

 

**

 

その頃、ホールでは。

 

「遅いね〜銀ちゃん」

ムツキが退屈そうにグラスを揺らす。

 

「……まぁ、あの人だし大丈夫でしょ」

アルはそう言いながらも視線をドアに注いだ。

 

「カヨコ、どうかしたの?」

 

「……どうも、嫌な感じがする」

 

カヨコの声には、これまでにない緊張が宿っていた。

 

「この場所、早く出た方がいい。何かが近づいてる……」

 

その言葉が終わるか否か、ハルカが席をガタと立とうとした瞬間――

 

「てめーらか」

低く、刺すような声が場を切り裂いた。

 

「コソコソ嗅ぎ回ってる奴らってのは」

 

アルが反射的に声を上げる。

 

「なっ……何なの?あなたたちは?」

 

「とぼけんじゃねぇよ」

男が一歩踏み出すたび、床が軋んだ。

「最近ずーっと俺達のこと嗅ぎ回ってたよな、あぁ?」

 

「そんなに知りたきゃ教えてやるよ」

 

「ギャング界の帝王と呼ばれる、カポネ・アルの……恐ろしさをな!」

 

**

 

同時刻、トイレの床では――

 

血に染まった手が、ズズ……と這うように動いていた。

 

ハム子。

彼女はもう、まともに立つこともできず、口元からこぼれる血の味を噛みしめながら懇願した。

 

「ちょうだい……」

 

「アレを、早く……お願い……」

 

**

 

銀時はゆっくりと彼女に近づき、深く息を吐いた。

 

「……ハム子ォ」

 

「……悪かったな、オイ」

 

「男は男でも、お前……」

 

「エライのに引っかかってたみてーだな」

 

その言葉には、いつもの軽さがなかった。

 

の洗面台に水がジャァアアと流れる中、一人の男が無言で腕を擦り続けていた。

 

眼鏡の奥で冷たい瞳を細め、男ーー陀絡(だらく)は、新調したばかりのスーツの袖にこびりついた血の痕をハンカチでゴシゴシと力任せに拭っていた。

 

「……クソが。とれねぇ……」

 

低く湿った声が厠のタイルに反響する。身だしなみに対する執着が伺えるその仕草は、まるで自らの肉体に巣食った穢れを削り落とすようだった。

 

「この汚ねぇメス豚の血が……ベットリつきやがって」

 

彼の口から吐き出される言葉には、嫌悪と侮蔑が込められていた。白いハンカチはすでに赤黒く染まり、腕の皮膚には擦りすぎで赤みが浮いていた。

 

黒服の側近が慎重な口調で声をかけた。

 

「陀絡さん……なんか、妙なのが混ざっちまいましたけど、どうします?」

 

しかし返答はない。陀絡はなおも水音と共に、擦り続ける。

 

「ちょ、ちょっと聞いてますか?」

 

その瞬間、ドンッという重い音と共に側近の身体が壁に弾かれた。陀絡の無慈悲な蹴りだった。

 

「言ったろうが……身だしなみ整えてる時は、声かけんなってよォ」

 

地面に咳き込みながら転がる側近を一瞥もせず、陀絡は冷たく言い放つ。

 

「なんか困った事があったらとりあえず殺っときゃいいんだよ。……パパッと殺って、帰るぞ」

 

「夕方から、見てぇドラマの再放送があるんだ」

 

その冷淡な言葉に、背後から別の声が重なる。

 

「奇遇だな。俺もだ」

 

銀時だった。個室の扉を開け、木刀を肩に担ぎながら、ニヤリと口元を歪めていた。

 

陀絡の目が細まり、声が鋭くなる。

 

「……俺は元来、そんなに人嫌いの激しいタチじゃねぇ。だが、これだけは許せんというのが三つあってな」

 

「一つ目は、仕事の邪魔をする奴。  二つ目は、便所に入っても手を洗わん奴。  三つ目は、汚らしい天然パーマの奴だ」

 

沈黙。銀時は肩をすくめ、ニヤッと笑った。

 

ピキィッ……

 

陀絡の表情が怒気に歪む。

 

「全部該当してんじゃねェかァァァァ!!」

 

ドゴォン!!

 

陀絡の叫びと共に厠の空気が爆ぜたような衝撃が走る。銀時は木刀をダンと床に突き刺すように構える。

 

「そいつァ光栄だ。ついでに俺の嫌いな奴三つも教えてやろうか?」

 

銀時がズンズンと迫る。

 

「ひとーつ!!学園祭準備にはしゃぐ女子!」ガゴン!

 

「ふたーつ!!それに便乗して無理にテンション上げる愚の骨頂、男子!」ズドン!

 

「みーっつ!!それらをすべて包容し、優しく微笑む教師!!」ゴキッ!

 

敵の男たちが次々と吹き飛び、血しぶきと共に床に崩れ落ちた。

 

陀絡は呆れ顔で、スーツの襟を整えながらぽつりとこぼす。

 

「てめぇ、要するに学園祭が嫌いなだけじゃねぇか」

 

銀時は肩をすくめて笑う。

 

「てめーほどじゃねぇよ。いい歳こいて便所でスーパッパかよ」

 

「もっとも、テメェらが好いてるのは……シャレにならねぇハッパみてーだがな」

 

その時ーー

 

「ちょうだい……あれを……」

 

厠の片隅から、血まみれの手がズズ……と床を這う音が聞こえた。

 

そこにいたのは、ハム子だった。虚ろな目で何かを求めながら、血にまみれた爪で床を引っ掻いている。

 

「お願い……お願い……」

 

陀絡は薄く笑った。

 

「たぶらかす? 勝手に飛びついてきたのは、その豚だぞ。望み通りに用意してやったのに、ギャーギャー騒ぎやがって、こっちが迷惑してんだよ」

 

銀時はゆっくりとハム子の肩に手を置き、低くつぶやいた。

 

「……バカ娘が迷惑かけて悪かったな。連れ帰ったら説教するからよ」

 

その時、キィィ……と扉が開いた。

 

「こんにちはァ〜」

 

場違いなほど明るい声が厠に響く。

 

銀時が振り返る。

 

「……オイオイ、みんなで仲良く連れションですか?便器足んねーよ……」

 

「オラッ!ちゃちゃっと歩かんかイ!!」

 

暴力的な怒号が飛び、アルたちが引きずられるように現れた。

 

「なっ……お前ら!!なにがあったんだよ!!」

 

銀時が駆け寄ろうとする。

 

「……お前、目障りだよ」

 

陀絡が静かに呟いた次の瞬間、ドガン!!という音と共に、銀時は窓の外へと吹き飛ばされた。

 

「っ!!」

 

彼は反射的にハム子を庇い、二人はガラスを突き破り落下する。

 

ゴオアシャアァァァァン!!

 

冷たい夜風と割れた硝子が銀時の背を裂いた。

 

陀絡は面倒くさそうに血に染まった袖を見下ろした。

 

「……チッ。また血ィついちまったよ。ダメだこりゃ。新しいの買おう」

 

―――――――――――――――

 

暗転。

 

―――――――――――――――

 

ザッ……ザッ……

 

「……オイ、ふんばれ。絶対死なせねェから……俺が必ず助けてやるからよ」

 

銀時の声は、震えていた。

 

だがその目の前にはーー

 

アル、カヨコ、ムツキ、ハルカ。その他、ここで出会った生徒たちの、動かない姿が転がっていた。

 

「……おい、どうしたんだよ?……冗談、だろ……?」

 

「冗談などではないーー」

 

背後から声。そして、鋭い痛み。

 

銀時の胸元から血が滲み、目が見開かれる。

 

「これが、いつか見ることとなる光景」

 

――ガバッ!!

 

「はぁ……っ、はぁ……っ……!」

 

銀時が息を荒げながら飛び起きると、桂が静かに言った。

 

「起きたか……随分とうなされていたが、悪夢でも見たか?」

 

「ヅラ…?なんで、てめーが……」

 

銀時はうつろな目をこすり、混濁する意識の中で目の前の男を見据えた。

 

「そうだ!!」

 

唐突に思い出したように銀時が身を起こそうとした瞬間——

 

ズキッ!!

 

鋭い痛みが左胸から脇腹に走る。思わず顔を歪め、呻き声を漏らす。

 

「無理は、せぬがいい」

 

桂は冷静な声音でそう言った。彼の声には、どこか疲れた優しさがあった。

 

「左腕は使えぬ上、肋骨も何本かいってるそうだ」

 

銀時は抵抗するように息を吸ったが、身体は言うことを聞かず、ボフッと布団に倒れ込んだ。重力が容赦なく彼を地に引きずり戻す。

 

「向こうは、もっと重体だ」

 

桂の声が、淡々と、しかしどこか感情を押し殺すように続いた。

 

「お前が庇ったおかげで外傷は少ないが…麻薬にやられている。……死ぬまで廃人かもしれん」

 

銀時は奥歯を噛み締めた。拳を握る力さえ入らない。

 

「クソガキめ……やっぱやってやがったか」

 

吐き捨てるように言いながらも、心のどこかに後悔の色が浮かんでいた。

 

「というか貴様、なんであんな場所にいた?」

 

「つーか、なんで俺が……お前に助けられてんだよ」

 

疑念と苛立ちの混じった問い。だが、返ってきたのは一つの問いではなく、無言の答えだった。

 

桂はポンと何かを投げてよこした。

 

それは——小さなビニール袋。中には雪のように純白なグミが入っていた。

 

「……?」

 

「これを知っているか?」

 

桂は静かに言葉を紡ぐ。

 

「“転生郷”と呼ばれる麻薬だ」

 

その名を口にした瞬間、空気が凍りついたようだった。

 

「辺境の地にのみ咲くという希少な植物を原料にし、嗅ぐだけで強烈な快楽をもたらす。だが、その代償は大きく、依存性も極めて高い」

 

桂の目は鋭く細められ、まるで罪を告発する裁判官のようだった。

 

「流行に敏感な若者たちの間で密かに広まっていたが、最期は誰もが破滅するしかない」

 

言葉の合間に挟まる沈黙が、何より重かった。

 

「我々もその根絶を目指して動いていた……そんな中で、お前が空から降ってきたらしい」

 

桂は肩をすくめ、どこか呆れたような口調になった。

 

「エリザベスが見つけていなければ、今ごろ死んでいたぞ」

 

銀時は視線を逸らし、天井を睨む。

 

「っていうか……あいつらは、一体何なんだよ?」

 

その問いに、桂は一呼吸おいて答えた。

 

「“ギャング界の帝王”……カポネ・アル」

 

「キヴォトス最大規模の犯罪シンジケートだ」

 

その名が持つ威圧感が、室内の空気をさらに重くした。

 

「奴らの主な収入源は非合法薬物の売買。ブラックマーケットを牛耳り、警察などまるで歯が立たん」

 

「……貴様がここまで追い詰められるとは、奴らは想像以上に強大かもしれんな」

 

桂が憂いを込めて目を細めたその時——

 

「……オイ」

 

 

「……聞いているのか」

 

その目は、どこか決意に満ちていた。銀時はゆっくりと、だが確かに着流しを手に取る。

 

「……奴らが拉致られた」

 

「ほっとけるわけ、ねェだろ」

 

声に宿るのは、ただの怒りではなかった。そこには守るべきものへの強い意志があった。

 

「待て、策もなしに突っ込めば、やつらの思う壺だ」

 

桂が制止の声を上げる。

 

「じゃあ、てめェに何か案があんのかよ」

 

銀時の吐き捨てるような問いに、桂はふと空を見上げて言った。

 

「……そういえば、今日はハロウィンだったな」

 

その一言に、銀時の表情がピクリと動いた。

 

次の瞬間、部屋に不気味な沈黙が流れる。

 

銀時の口元が、ゆっくりと、悪戯を企む子供のように、歪んでいく——

 

カヨコの意識は、どこか靄のかかった世界を彷徨っていた。床は硬く冷たく、空気は乾ききって喉が焼ける。思考はぼんやりと霞み、何が現実か曖昧だった。

 

(…ここは、どこだろ)

 

目を細め、天井を見上げる。視界に映るのは無機質なコンクリートの壁。剥がれた塗装が剣呑な影を落としている。

 

(私は今、何をやってるんだろう?)

 

思考に追いつく前に、足音が響いた。

 

「ザッ」

 

鋭い靴音が静寂を引き裂くように響き、そして姿を現したのは漆黒のスーツを纏った男——堕絡だった。

 

「こ奴らが、ぬし達の周りをかぎ回っていた連中か?」

 

連中の一人が恭しく頭を下げる。

 

「ええ。最近、少々こうるさくなってきたんで。網張ってたら簡単にかかりましてね。大方、探偵事務所の真似事してる連中でしょう」

 

冷ややかな笑みを浮かべながら続ける男。

 

「もう一人、妙な侍がいましたが」

 

堕絡は、面倒そうに片眉を上げた。

 

「そっちの方は騒いだ客と一緒に始末しましたよ」

 

それは、銀時のことだった。カヨコの胸に、何か冷たいものが走る。

 

堕絡は苛立ちを隠すことなく、連中に吐き捨てた。

 

「あまり派手に動くなと言ったろう」

 

「こちらも察の連中をおさえこみ見て見ぬフリをするにも限界がある」

 

「エエ、自由に商売できるのも旦那の協力あってのことです」

 

「おかげ様で"転生郷"による利益は莫大なものになってますよ」

 

堕絡はふっと笑いながら、天井を見上げた。

 

「ここの奴等は、ものの善し悪しを己で判断できねェようで…新しいものには、すぐ飛びつくバカばかりだ」

 

「まァそんなバカのおかげで旦那も俺も、たんまり稼がせてもらってんですが…まったく奴等にはもったいない都市よのう、キヴォトスは…」

 

その言葉に、部下が声を潜めて尋ねた。

 

「して、こ奴等の始末はどうつける?」

 

堕絡の口角が不気味に上がる。

 

「奴等の拠点を聞き出して潰しますよ。もう、これ以上、仕事の邪魔はされたくないんでね」

 

無機質な機械音が響いた。

 

「ウィーン」

 

部下が控えめに近づく。

 

「陀絡さん、ちょっと」

 

「?」

 

「表に妙な奴等が来てまして」

 

「妙な奴等?」

 

堕絡はつまらなそうに顔をしかめる。

 

「適当に処理しとけ。俺ァ今忙しいんだ」

 

場面は変わり、外。

 

連中の一人が声を張り上げる。

 

「だァーからウチはそーゆの、いらねーんだって!!」

 

そこに立っていたのは、海賊のコスチュームに身を包んだ銀時。

 

「つれねーな」

 

気だるげな笑みを浮かべながら続ける。

 

「俺達も海賊になりてーんだよ~~連れてってくれよ~~な?ヅラ」

 

その隣で眼帯をつけ、誇らしげに仁王立ちする男が応じる。

 

「ヅラじゃない、キャプテンカツーラだ」

 

銀時は拳を握り、少年のような眼差しで語る。

 

「俺達、幼い頃から海賊になるのを夢見てた、わんぱく坊主でさァ。失われた秘宝"ワンパーク"というのを探してんだ!な?ヅラ」

 

「ヅラじゃない、キャプテンカツーラだ」

 

連中は辟易した表情で呟く。

 

「しらねーよ勝手にさがせ」

 

銀時はしつこく食い下がる。

 

「んなこと言うなよ~~俺、手がフックなんだよ、もう海賊かハンガーになるしかねーんだよ~~」

 

「しらねーよ、なんにでもなれるさ、お前なら」

 

「とにかく帰れ。ウチはそんなに甘い所じゃな…」

 

その時——「カチャ」 

 

「!!」

 

銀時と桂は、振り向いた連中に刃を突きつけた。

 

銀時「面接ぐらい、うけさせてくれよォ」

 

桂「ホラ履歴書もあるぞ」

 

一方その頃。

 

カヨコの頬に冷水が叩きつけられた。

 

「バシャッ」

 

「オ〜〜イ起きたか小娘?おねむの時間はおしまいだよ〜〜」

 

醜く笑うギャングが見下ろしている。

 

「まったく、こんな若いのに。海賊に捕まっちゃうなんてカワイソ〜〜にねェ」

 

……ああ、そうなんだ。私…こいつらに捕まったんだ。

 

「!!」

 

目を凝らすと、磔にされたアルたちの姿が視界に飛び込んできた。

 

「社長みんな!!」

 

堕絡の声が不快に響く。

 

「オジさんはねェ、不潔な奴と仕事の邪魔する奴が大嫌いなんだ。もう、ここらで邪魔な鼠を一掃したい」

 

「お前らの巣を教えろ。意地張るってんならコイツ死ぬぞ」

 

冷たい指がカヨコの髪を掴み、強く引き上げる。

 

「指示を出したやつは、どこにいんだ!!」

 

カヨコは叫んだ。

 

「なに言ってるの、あなたたちは。私たちはヴァルキューと何の関係もないし、指示を出した人なんてしらない!!」

 

その瞳には強い光が宿っていた。

 

「みんなを離して!!そうじゃないとーー私たちの先生が牙を剥くよ」

 

「先生だァ?」

 

「そんなもん、もう、ここにゃいねっ…」

 

だがその時、アルたちがニカッと笑った。

 

「!!」

 

次の瞬間、ハルカが放った一蹴りが、堕絡の頭をゴッと捉える。

 

「うわァァァァァ!!」

 

「ハルカ…!!」

 

ムツキはいたずらっぽく笑った。

 

「ごめんね〜私たちにも意地ってものがって、ただ負けただけじゃやなんだよね〜」

 

アルも勝ち気に続く。

 

「そういうこと、じゃ地獄で会いましょ?」

 

(内心『いやァァァァァ!!まだ死にたくないわよォォォ!!』)

 

三人は海に落ちかけ、絶体絶命——

 

「待てェェェ!!」

 

銀時の叫びが、空気を引き裂いた。

 

「待て待て待て待て待て待て待てェェェ!!」

 

ドドドドドと駆けてきた銀時は、木刀を駆使して四肢で三人をすくい上げる!

 

「ふんがっ!!」

 

最後は身を翻し、空中で回転しながら

 

「バッ!!」

 

ゴオアアシャッと、勢いそのままに船へと突っ込んでいった——。

 

カランカラン……

 

鈍い音を立てて、銀時の腕に付けていたフックが床へと転がり落ちた。次いで、鉄製の仮面——カラカンと響く金属音を残し、それも静かに沈黙する。

 

銀時は肩で息をしながら、ゆっくりと上体を起こす。体中に刻まれた傷から、再び血が滲み出していた。

 

「…いでで、傷口ひらいちゃったよ」

 

それでも、彼は飄々とした声を崩さない。乱れた髪を片手でかき上げ、片目をしかめながら周囲を見渡した。

 

「……あのォ、面接会場は、ここですか?」

 

緊張した空気を吹き飛ばすような、のらりくらりとした声が船の甲板に響いた。

 

「こんにちは、坂田銀時です。キャプテン志望してます」

 

くしゃくしゃと頭を掻きながら、銀時は片手を上げて自らを名乗った。

 

「趣味は糖分摂取。特技は目ェ開けたまま寝れることです」

 

その一言に、張り詰めた空気が一瞬、緩んだ。

 

「銀さん!!」

 

アルが叫び、磔にされていた少女たちの表情が一斉に希望に色づいた。

 

「クフフ〜やるね〜さすがは先生って感じ」とムツキ。

 

「た、助かりました……」とハルカも涙をこらえて声を震わせた。

 

「銀ちゃん………」

 

カヨコは、心の底から搾り出すように銀時の名を呟いた。

 

だがその空気を切り裂くように、堕絡が顔をゆがめて吠える。

 

「てめェ……生きてやがったのか……!」

 

その直後——

 

ドドン!!

 

船の奥、格納庫の方角から地鳴りのような爆音が響き渡る。

 

「!!」

 

堕絡が目を剥くと、部下が青ざめた顔で駆け寄ってきた。

 

「陀絡さん!! 倉庫で爆発が!!」

 

「転生郷が!!」

 

炎が立ち昇り、黒煙が夜空に伸びていく。船内では《転生郷》と呼ばれる装置が激しく燃え、火の粉が闇を染めていた。

 

その時、甲板の手すりの上にひらりと舞い降りる影があった。

 

「俺の用は終わったぞ」

 

桂が刀を鞘に収めながら静かに言い放つ。

 

「!」

 

銀時が顔を上げると、桂は風を背に、堂々と立っていた。

 

「……あとはお前の番だ、銀時。好きに暴れるがいい」

 

その瞳は、かつての戦友を信じる色で満ちていた。

 

「邪魔する奴は俺がのぞこう」

 

「てめェは……桂!!」

 

堕絡が歯を食いしばるが——

 

「違〜〜〜う!!」

 

桂がダッと駆け出し、軽やかに宙を舞った。

 

「俺はキャプテンカツーラだァァァ!!」

 

そう叫ぶや否や、手に持った爆弾をギャングたちの集団に向けてドォンと放り投げる。

 

ドォン!!

 

轟音と閃光。ギャングたちは思わず身を伏せた。

 

「うオオ!!」

 

「やれェェェ!!やつを撃ち殺せ〜!!」

 

次の瞬間、怒号とともにギャングたちが一斉に桂へと殺到した。

 

――その混乱を尻目に、堕絡は冷たい目で銀時たちを睨みつける。

 

「てめーら……終わったな」

 

「完全に俺たちを敵にまわしたぞ」

 

「今にキヴォトス中に散らばる俺たちの仲間が、てめーらを殺しにくるだろう」

 

その言葉にも、銀時はわずかに鼻を鳴らしただけだった。

 

「知るかよ」

 

木刀にそっと手を添える。

 

チャカ——

 

「終わんのは、てめーらだ」

 

視線は鋭く、声は低く静か。だが、その奥には確かな怒りが燃えていた。

 

「いいか……てめーらがどこで何しよーと、かまわねー」

 

「だが俺の、この剣——」

 

木刀をゆっくりと抜きながら、銀時は続けた。

 

「こいつが届く範囲は……俺の教室だ」

 

「無粋に入ってきて、俺のモンに触れる奴ァ——」

 

「将軍だろーが、ギャングだろーが……隕石だろーが——」

 

ガキィィィン!!

 

一閃。銀時の木刀が堕絡の剣をはじき、次の瞬間——

 

ズバッ!!

 

その刃が堕絡の胴を裂いた。

 

「ブッた斬る!!」

 

堕絡はよろめき、膝をついた。だが、その口元には奇妙な笑みが浮かんでいた。

 

「クク……」

 

「オイ……てめっ……」

 

血の気が引いていく顔で、震える指先を銀時へと伸ばす。

 

「便所で手ェ洗わねーわりに……けっこうキレイじゃねーか……」

 

その言葉に、銀時は静かに木刀を収めた。

 

風が吹いた。海風が戦場を一瞬、浄化するように通り抜けていった。

 

その瞬間、回想は幕を下ろした。

「やれやれ、ひとまずは危機を乗り越えたってことだな。まあ、次はもう少し楽な仕事が来てほしいもんだ。」と、銀時は肩の力を抜いて言った。大きな達成感を感じながら、今までの緊張が一気に解けていくのを実感する。

 

「銀時、こいつをどう処理するか、何か良いアイディアはないか?」桂が冷静に尋ねる。彼の視線は、捕まえた堕絡に向けられていた。

 

「そいつは後で私たちが依頼者を通してヴァルキューレに渡すから心配無用よ」と、アルが元気に応じた。任務が成功したことで、明るい表情を浮かべている。

 

「そうかい」と銀時は軽く頷く。「そんじゃ、さっさと片付けちまおうぜ。」

 

「ふんふんふーん♪」と、アルは楽しそうに鼻歌を歌いながら、その場を明るくする。任務が成功したことに満足感を隠しきれない様子だった。

 

「アルちゃん、騒ぎおこしちゃったから報酬は全部ないと思うけど?」ムツキがニヤニヤしながら指摘する。

 

「なななな、なっ、何ですってーーーーーーー!!!???」アルは驚愕の表情を浮かべ、まるで心の底から驚いているかのように声を張り上げる。

 

「そんな……」ハルカも同様に唖然としている。

 

「はぁ………」カヨコは肩を落とし、ため息をつく。

 

「そんな………あんなに頑張ったのに…」アルは目に涙を浮かべ、やるせなさを感じていた。

 

「おいおい、そんな落ち込むなって」と銀時は優しい声で励ます。「まだまだこれからだろうが。次があるさ。」

 

「銀時の言う通りだアル殿。君たちの今回の経験は必ず後の仕事の助けになるはずなのだからな」と、桂は微笑みながら続ける。その言葉には、彼が経験豊富な先輩としての温かさが込められていた。

 

「そんなこと言ったって私たち、今月は家賃で全て消えるのよ!片栗虎さんから貰った給料だって底をつくの!」アルは焦りの表情で訴える。

 

「ったく、しゃあねぇなぁ」と銀時は口を尖らせ、ちょっと困ったような顔を見せる。

 

「ほら、もう一度あれを言え!」と銀時はにやりと笑みを浮かべ、メンバーに指示を出す。

 

「え?あれ?」と、メンバーは戸惑いながら返事する。

 

「さっき全員でやったあれだ」と桂が促す。

 

『トリックオア……』エリザベスがプラカードを掲げ、みんなの気持ちを一つにする。

 

「トリート!」メンバー全員が声を揃える。

 

「ほら、これだ」と銀時が笑いながら取り出したのは、用意していたお菓子だった。

 

「お、お菓子です!」ハルカが目を輝かせる。

 

「やったー、ありがとう♪銀ちゃん」とムツキが弾むように飛びついてくる。

 

「一応今日はハロウィンだろ?給料もねぇ、何もねぇなんて虚しいからな。そいつは俺たちからの送りもんな。」銀時は明るい声で言った。

 

「銀ちゃん……桂さん」とアルは感謝の気持ちを込めて言った。

 

「それに困ったら俺たちに言えこれでも何でも屋の先輩だ。俺が先生である間は、テメェらからは金は取らねぇからよ」と銀時は自信に満ちた表情で告げる。

 

「分かったわ……」とアルは少し安心した様子で答える。

 

「それじゃ、ハッピーハロウィーン!また今度な」と銀時は大きな声で言い、仲間たちと共にハロウィンを祝うように笑顔を見せた。

 

銀時の言葉に、メンバーは心の底からの笑顔を浮かべ、これからの仕事に向けての活力を感じたのだった。

 




次回予告?

銀時「今んところアイドルユメ生存が半数を超えてるらしいから
出場するアイドルパーティーを紹介しまーす」

ダイヤモンドパキューム ヒナ&ホシノ&キサキ プリキュアお登勢とキャサリン(噛ませ) シロコ&神楽&お通  ウタハ&タマ&?(初音ミク 単独でもあり) イタズラ⭐︎ストレート 残りはストーリーに登場したメンバー 特別ゲスト 桂&銀時オッカマーズ(銀時は知らない)

(以上)変更してほしい点などはコメントまで

歌詞などがない時は演出のみを描くこととする。(代案可)

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
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