透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

57 / 154
銀時「あれ?今回俺の出番なし」


パヴァーヌ篇 約束と友情
第四十四訓 理想と逆理


ミレニアム自治区・郊外区画

とある武装組織が根城としていた、静寂に包まれたビルの一角。

薄暗い空間に響くのは、静音設計の車椅子が床を滑る音だけだった。

 

「……あら、超天才清楚系病弱美少女の来訪を、電気もつけずに迎えるなんて。来客をもてなす気がこれっぽっちもないという点――とても貴女らしいですね」

 

室内に一歩踏み込んだ少女が、淡々とした声で皮肉めいた言葉を投げかけた。

車椅子に座るその少女――ヒマリは、静かな笑みを浮かべつつ、闇に目を凝らしている。

 

暗闇の中で、ディスプレイの光だけが孤独に浮かび上がっていた。

その光に照らされていたのは、全身を黒で統一した装いの生徒――調月リオ。その白いタートルネックが、彼女の凛とした印象を際立たせている。

 

リオは、暗闇の中に足を踏み入れたヒマリを一瞥すると、ディスプレイの電源を落とした。

室内はさらに深い闇に包まれる。光源は非常灯と機材のランプのみとなり、ほとんどの輪郭がぼやける中、リオの靴音だけが近づいてきた。

 

 

 

「暗い部屋でモニターを見続けるなんて、目が悪くなりますよ――リオ」

ヒマリがわずかに眉を上げ、静かな声で指摘する。

 

リオは冷徹な声で返した。「万全を期しているだけよ。この会談が外部に漏れるわけにはいかない。そのためであれば、この程度問題ではないわ」

 

「全く……明かり一つ点けることすら徹底するなんて、相変わらずですね」

 

車椅子に座るヒマリがため息をつきながら、リオの姿を見上げた。

その視線を受けながらも、リオの表情には一切の揺らぎがない。

 

「どこに目があるかわからない以上、必要な措置よ。そして今回の訪問がデータベースに残ることはない。つまり、第三者がこの現場を目撃しない限り、記録上、私たちは会っていないことになるわ」

 

リオの冷静な説明に、ヒマリは口元を歪め、皮肉を込めた笑みを浮かべた。

「リオったら、本当に真面目なんですから……『貴女は私の姉なの?』くらいの軽口を返せないと、ユーモアとは程遠いですよ?」

 

リオが首を傾げる。「……貴女は私の姉ではないわ。急にそんな非合理的な話をするなんて、どうしたのヒマリ?」

 

「えぇ、えぇ、そうでしたね。貴女はそういう人でした」

 

ヒマリは肩をすくめ、心底呆れたように視線を逸らす。

 

 

 

「ユーモアを解さず『合理』だなんて……貴女の好きな表現でしたね、それ」

 

リオは淡々とした声で返す。「好悪の話ではないけれど、事実でしょう? この会合が秘匿されるべきものであることくらい、あなたも理解していると思っていたのだけれど……違うのかしら?」

 

その言葉に、ヒマリの目が僅かに鋭さを帯びた。

「それは挑発のつもりですか、リオ?」

 

「……そんなつもりはないのだけれど」

 

リオは相変わらず冷静そのものだったが、ヒマリはわざとらしく肩を落としながら呟く。

「はぁ――そもそも、人目を気にするのであれば、他の場所を選べばよかったのではありませんか? 例えば……」

 

車椅子の操作パネルに指を触れ、リオに意味深な視線を向ける。

 

「誰かさんがこっそり作っている、『要塞都市』とか。悪趣味ですよねぇ?」

 

鋭い指摘

 

その一言に、リオの眉が僅かに動いた。しかし、彼女はすぐに表情を元に戻し、淡々と答える。

「――本題に入りましょう、ヒマリ」

 

ヒマリは口元を手で覆い、小さく笑う。「あらあら、話を逸らすつもりですか? ふふっ……えぇ、構いませんけどね」

 

軽やかな笑い声とは裏腹に、その言葉にはどこか挑発的な色が含まれている。

ヒマリは目を細め、まるでリオの反応を楽しんでいるかのようだった。

 

 

 

リオは冷たい視線をヒマリに向け、静かに言葉を続けた。

「これから話す内容は、誰にも知られてはならない――全てはミレニアムのためよ。理解しているわね?」

 

ヒマリはわざとらしい仕草で頷きながら答える。

「もちろんですとも、リオ会長。それにしても……会長自らがわざわざ動くなんて、どんな秘密が隠されているのでしょう?」

 

その問いには答えず、リオはまっすぐにヒマリを見据えた。

「……必要な情報は全て共有するわ。だが、それをどう活かすかは貴女次第よ」

 

ヒマリは微笑みを浮かべ、まるで手のひらで転がすかのような表情を浮かべながら答えた。

「えぇ、えぇ……もちろんそのつもりですよ、リオ会長」

 

二人のやり取りが終わる頃、部屋には再び静寂が訪れる。

その先に待ち受けるのは、誰も予想できない未来――そしてキヴォトスの運命を左右する戦いだった。

薄暗い室内に、静かな声が響いた。

 

「まずは認識の擦り合わせを」

 

調月リオがそう切り出すと、車椅子に座るヒマリは微笑みを浮かべながら頷いた。

「その口ぶりからすると……前回の鏡を巡った一連の騒動について、ですね?」

 

リオは頷き、視線をヒマリに固定した。「えぇ、そうよ」

 

「私が鏡という手段を用意し、リオがC&Cという危機を提供する……珍しく、一つの目的のためにあなたと私が協力した出来事でしたねぇ」

 

「そうね。他ならぬ――AL-1Sアリスの正体を明かすために」

 

その一言に、短い沈黙が訪れる。互いの瞳が交差し、思考が静かに絡み合った。普段は疎み合う二人が、一つの目的に真剣に向き合う姿がそこにあった。

 

AL-1S アリス――その謎

 

AL-1S――ミレニアム中央区に持ち込まれた正体不明の人工身体。

 

だが、それを「人工身体」と呼ぶべきなのかすら疑問だった。その製造方法も、目的も、性能も、全てが謎。まるで人間のように考え、食べ、眠り、感情を持ち、共に生きる――そんな存在の前例など聞いたこともない。

 

何のために生まれたのか。誰が生み出したのか。

それを知るために、リオとヒマリは手を組んだ。

 

 

リオは、学園を守るためにアリスのリスクを測り、その脅威度を見極める必要があった。

ヒマリは、アリスの本質を解明したいという純粋な探究心から動いた。

 

二人が繰り広げたのは、アリスを追い詰めるための大掛かりな芝居だった。

 

適切な脅威を演出し、それに対するアリスの反応と行動を観察する。

仲間が危機に陥ったとき、アリスはどう行動するのか?

計画のために仲間を犠牲にできるのか?

他者に共感を示すことができるのか?

「あの一件で得られた情報は多岐に渡ったわね」とリオはタブレットを指で叩きながら呟く。

 

 

 

リオがヒマリに問いかける。「あれから随分と経つけれど、解釈の結論は出たかしら?」

 

ヒマリは車椅子の背もたれに体を預けながら、目を細めて答える。

「えぇ、勿論です」

 

「そう、良かった……なら結論を」

 

リオが息を整え、ヒマリと視線を交わす。二人の思考は一瞬のうちに重なり合い、同時に口を開いた。

 

 

 

「アリスの正体――それは」

 

リオの声が続く。

「無名の司祭が崇拝するオーパーツであり、遥か古代の記憶に存在する――」

 

ヒマリが冷静に付け加える。

「名も無き神々の王女」

 

その結論が重なった瞬間、室内に静寂が訪れる。

 

リオは一度肩から力を抜き、小さく息を吐いた。それは安堵であり、同時に確信でもあった。

「……そう、やはり同じ解釈になったようね」

 

ヒマリも軽く笑みを浮かべながら頷く。「えぇ、業腹ですが、そのようですね」

 

 

「ならばヒマリ、あの存在アリスの本質は理解しているでしょう?」

 

リオの問いに、ヒマリは片眉を上げながら楽しげに返す。

「勿論ですよ、リオ。既に結論は出ています」

 

「その言葉に少し安心したわ」

 

互いの解釈が一致した以上、導き出される結論もまた一つ――そのはずだった。

 

リオは静かに口を開く。「彼女、アリスは――」

ヒマリも微笑みながら続ける。「えぇ、あの子は――」

 

 

 

「世界を終焉に導く兵器。キヴォトスに於いて排除すべきリスクよ」

 

「私たちの可愛い後輩ですよね♪ 数多の生徒と同じ可能性を秘めた光」

 

 

 

互いの言葉を耳にした瞬間、二人の表情が一変した。

 

「………?」

「……あら?」

 

リオは眉間に皺を寄せ、ヒマリを凝視する。

ヒマリもまた、目を見開きながらリオを見返した。

 

「……リオ、今の発言、どういうつもりですか?」

「それはこちらの台詞よ。まさか、貴女がそんな解釈を持っているなんて」

 

互いの結論が正反対であることに気づき、困惑の色を濃くする二人。

不穏な気配と不気味な沈黙が室内に漂う。

互いの結論がまったく異なることに気づき、調月リオとヒマリは疑念の色を浮かべながら、鋭い視線を交わしていた。

 

「もしかして今口にした結論は、貴女の好きなユーモア冗談という奴なのかしら?」

リオが眉間に皺を寄せながら静かに問いかける。

 

ヒマリはわざとらしく笑みを浮かべて返した。

「あら、貴女にはそう聞こえたのですか、リオ?」

 

「えぇ、そうね。理解し難いけれど、もしそうなら――」

 

「そんな筈ないでしょう?」

ヒマリは淡々と言い放つと、肩をすくめながら皮肉たっぷりに続けた。

「全く、相変わらずドブの様な感性ですね」

 

リオは短い沈黙の後、大きくため息をついた。

薄々感じていた――こうなる予感はあったのだ。

 

 

 

「そう、それなら私達の同盟は此処で終わりということね」

リオの冷たい声が室内に響く。

 

ヒマリは余裕の笑みを浮かべながら肩を竦めた。

「えぇ、そうですね。ただの同盟ではなく休戦に過ぎませんでしたが」

 

リオの瞳に冷徹な光が宿り、その声はさらに冷たさを増す。

「――そういうことなら、容赦はしないわ」

 

彼女は手元のタブレットを操作し、室内の暗闇から赤いランプが次々と浮かび上がる。

 

「AMAS」

 

重々しい駆動音と共に現れたのは、リオの開発した自律ロボット群だった。

一輪駆動のボディに装甲を施し、既製品のSMGを備えたそれらは、ヒマリを包囲するように配置される。

 

 

 

室内の照明が突然点灯し、ヒマリは思わず目を細めた。明るさに慣れると、彼女を取り囲むAMASの姿が鮮明に浮かび上がる。

 

「これが噂の……最近貴女が作っている玩具ですね?」

ヒマリは嘲るように微笑みながら、一台一台を観察する。

「貴女がデザインしたにしては随分と無難な機体に見えますが……」

 

リオは冷静に言い返す。「玩具呼ばわりは心外ね。これでも実戦データは十分に収集してあるわ。そして、同盟を解除した以上、貴女をこのまま帰すわけにはいかない」

 

ヒマリはため息をつきながら肩をすくめる。

「結論が一致しなければ即座に武力対応……こんなか弱い病弱天才美少女相手に、よくもまぁ恥ずかしげもなく」

 

リオはヒマリの挑発に動じることなく、淡々と告げた。

「貴女の能力は私が一番よく理解している。だからこそ、計画の障害となり得る存在は事前に取り込んでおきたかった――けれど、それを拒まれたのなら」

 

「……まぁ、そうでしょうね。貴女ならば、そうすると思っていました」

 

 

 

リオが命令を下す。「AMAS、ヒマリを捕縛しなさい!」

 

『指示を確認、対応開始』

 

AMASが駆動音を響かせながら動き出す。その銃口がヒマリを捉えた瞬間、車椅子に内蔵されたコンソールから電子音が鳴り響いた。

 

「高嶺の花に、そう易々と触れられると思って?」

 

ヒマリが操作盤を叩いた瞬間、AMASの動きが徐々に鈍くなる。そして――。

 

『システムエラー、制御権喪失』

 

リオが驚愕の表情を浮かべる。

「ッ、ヒマリ、この一瞬で全個体の制御権を――」

 

ヒマリは余裕たっぷりに微笑みながら言い放つ。

「あら、流石にエンジニア部と同じ自爆機能はありませんか? それなら、これで十分ですね」

 

ヒマリが再び操作盤を叩くと、停止していたAMASが一斉にリオへと向き直った。

 

「――!?」

 

 

無数の銃口がリオを捉え、一斉に火を噴いた。

室内には凄まじい銃声とマズルフラッシュが響き渡り、雨のように弾丸が降り注ぐ。しかし、リオは素早くタブレットを操作し、足元から射出される防弾障壁を展開する。

 

降り注ぐ銃弾をすべて弾き返しながら、リオは耐え抜く。

 

軈て弾倉が尽きたのか、再び静寂が訪れる。

リオは防弾障壁の向こうから顔を覗かせた。

 

「……ヒマリは、もういないようね」

 

 

 

その頃、廊下を駆け抜ける車椅子の中で、ヒマリは余裕の笑みを浮かべていた。

 

「ふふっ、相変わらずですねリオ。まぁ、私を捕まえようなんて無理な話ですけど♪」

 

車椅子のコンソールには、リオのセーフハウス内の地形データが表示されている。

 

「さて、リオより先に接触を果たさないと……まず相談すべきは、先生かしら」

 

ヒマリの瞳に一瞬だけ憂いの色が宿るが、それはすぐに消えた。

ヒマリの車椅子が廊下を疾走する音だけが響く暗闇。

その背後、聞き慣れない足音が迫っていた。

 

「……?」

 

ヒマリは異質な気配に気づき、振り返る。背後の暗闇から近づいてくる硬質な音。それは機械的なものではなく、生身の者が床を駆ける足音だ。

 

「……誰ですか!?」

 

ヒマリが叫ぶが、返答はない。ただ影が、壁を蹴り、宙を舞い、彼女の車椅子の前方へと飛び出した。

 

 

暗闇の中でその姿が露わになる――

白いメイド服を模した制服に身を包み、片手にはミレニアム製の銃器を持つ少女。

 

その銃器にはミレニアムの紋章が刻まれ、彼女の冷たい青い瞳がヒマリを見据える。

 

「……まさか……五番目のC&C……!」

 

ヒマリの驚愕に、影は答えなかった。ただ、迷いのない動作で銃口を車椅子へと向ける。

 

「くっ……!」

 

ヒマリは急ぎ車椅子の操作盤を叩き、防御の準備を整える。しかし、敵の反応は早かった。

 

 

銃声が響き、放たれた弾丸が車椅子のコンソールと車輪を正確に撃ち抜く。

車椅子は制御を失い、ヒマリはバランスを崩して後方へ倒れ込む。

 

「きゃっ――!」

 

辛うじて手をついたものの、愛銃「高嶺の花」を抜く暇もないまま、影が一瞬で距離を詰め、ヒマリの首元を掴み押さえつけた。

 

 

「対象確保。このまま意識を奪います」

 

冷たい声が響く。影――五番目のC&Cは、首元にシリンダーを押し当てると、特殊な薬剤を投与した。

 

「っ……!」

 

ヒマリの体から力が抜け、視界がぼやけていく。抵抗しようとするも、既に筋力も判断力も奪われ、思考が揺らぎ始める。

 

「……エイ、ミ……先生……アリス……」

 

最後に呟いたその言葉を残し、ヒマリは完全に意識を失った。

 

 

 

C&Cはヒマリを担ぎ上げ、耳元の通信機に手を添えた。

 

「リオ様、対象の無力化、確保を完了しました」

 

『……良くやったわ。そのまま例の場所へと移送して、私も後から合流する』

 

「――イエス・マム」

 

通信を切り、冷静に室内を見渡す。暗闇の廊下で転がった車椅子を一瞥し、再び視線を前に向けた。

 

ヒマリを担いだまま、その小柄な体は音もなく廊下の闇に溶け込んでいく。

 

 

 

一方、セーフハウスの中でリオは復旧作業を進めていた。

停止したAMASの再起動を確認しつつ、無言でタブレットを操作する。

 

「……逃げ切れたつもりでいるのかしら?」

 

冷たい声を漏らし、ヒマリが破壊した車椅子のコンソールを見つめる。

 

「彼女が持つ知識と能力――本当に味方にしておきたかった」

 

リオの手が止まり、しばし思考に沈む。

 

「だけど……こうなった以上、もう迷う必要はない」

 

赤いランプが再び点灯し、復活したAMASたちが起動音を鳴らす。

 

「――ヒマリ。この戦い、最後に笑うのはどちらかしら」

 

彼女の瞳には、冷徹な決意が宿っていた。

 

 

 

暗闇の廊下を進む中、ヒマリは意識を取り戻しつつあった。

ぼんやりとした視界の中で、微かに聞こえるC&Cの足音。

 

「……まだ……負けないわ……」

 

彼女は決意を胸に、再び意識を覚醒させるべく力を振り絞る――。

 

 




次回

マキ「銀さん!聞いて世紀の大発見何あったの早く来て!!」

銀時「おいおいこれ俺たちが退治したガラクタじゃねぇか」

ミドリ「アリスずっと黙ってどうしたの?」


アリス?「……殲滅を開始します」
ーーーーーーーーーーー

源外「おい起きろ!このストーリーはお前さんがメインでもあるんだからな」

金時「ようやく俺の出番か」

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。