透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

63 / 154
遅れてすいません。
なかなか戦闘シーンやアバンギャルドの登場が難しいかったので長引きました。

ブルアカライブの銀時たち

神楽「パジャマパーティー楽しそうアル‼︎」

新八「いずれこのイベントも僕たちやることになるかもしれませんね」

銀時「ぇぇぇやだよあのイベントやるのだってあの映像完全にホラゲーじゃねぇか!!」

銀時「太ももとミステリアス女から逃げるなんて……俺あれになっちゃうよロッカーに隠れてガタガタたけしになっちゃうよ」

神楽「心配無用ネ銀ちゃんホラー回はいつもガタガタたけしアル」

新八「それにしても石足りませんね周年まであと少しですし貯め時ですかねぇ」

銀時「そうだな長谷川さんも爆死したって聞いたし……」

ノア「銀さん?」

銀時「ひっ!な、何のようだよお前ら………」

ユウカ「銀さんまだお金ありますよね?パチンコに使うくらいなら……」

銀時「……あれぇぇぇユウカちゃん?君そんな無駄遣いを推進するような子じゃ……」

ノア「ユウカちゃんのも引くということは私のも引くということでいいですね?」

銀時「ランナーウェイ!!」

ユウカ「あっ!コラ待ちなさァァァァい!!」

ノア「面白そうですね」
ーーーーーーーーーーーーーー
クリスマス

銀時「俺今年彼女とクリスマスパーティに行くんだ〜。とか」

銀時「クリスマスという聖夜を利用して仲良くなった女子に告白して成功しましたとか」

銀時「クリスマスでイチャイチャラブラブしてる奴ら……」

銀時「来年から全員死刑!!」

銀時「そんなネタはなぁ〜。聖夜とラブコメが誕生している時から使い古されてんだよ」

銀時「もうウンザリなんだよ!!彼女いるアピールしてニヤケる高校男子の顔!!どうせすぐ別れるってのに」

銀時「辞めるべきだろこんな悪習!!辞めるべきだろこんな茶番!!」

銀時「てなわけで来年から彼女いた奴ら全員死刑に処すからファナルアンサー!!?」

新八「ファイナルアンサァァァァ!!」

神楽「銀ちゃんの彼女いなくて寂しいアピールもとことんウザいから辞めるヨロシ」

アロナ「あそこの独り身の廃れた考えを持っている方に変わって挨拶しますね♪」

アロナ「メリークリスマス!!」


第五十訓 美的センスは磨かないと恥ずかしい

「オラオラッ! どうした後輩、そんなモンかよ!?」

 

ネルの叫びが、まるで戦場を切り裂くように響く。

C&Cの最前線に立つ彼女の姿は、小柄ながらも圧倒的な存在感を放っていた。縦横無尽に跳ねる銃弾、それぞれの弾丸が放つ光の筋が戦場を縫い、まるで狙い澄ました獣のようにトキを追い詰める。

 

トキの視界には、無数の危険察知アラートが次々と点滅していた。頭の中で警鐘が鳴り響き、脳内の演算システムがフル稼働する。彼女は瞬時に跳弾の軌道を読み、安全圏を算出しながら無駄のない動きで回避を続ける。

 

「ッ――!」

 

軽やかに空間を舞い、僅かな隙間を縫うトキ。だが、迫るネルの攻撃は止む気配を見せない。狭い屋内の戦闘では死角が増え、彼女の回避行動を余計に制限する。全身を覆う高性能な武装が彼女を支えているとはいえ、集中力と肉体的負荷は極限状態だった。

 

――近い、さらに近づいてくる。

 

ネルの素早い動きが、トキの視界の隅を捉えた。その距離は、徐々に詰まっていく。

 

「これなら、どうかなっ!?」

 

トキがネルに集中している隙を突くように、横合いからアスナの声が響いた。

 

アスナはガードレールを潜るように滑り込んできた。その滑らかな動作は躍動感に溢れ、まるで一瞬の隙すら許さない。スライディングを終えると同時に、彼女の愛銃サプライズパーティーから閃光が瞬く。

 

パンッ――!

 

弾丸が光の筋を描きながら、一直線にトキを目掛けて飛来する。

 

「アスナ先輩……!」

 

咄嗟にトキは飛び上がり、弾丸の軌道をかわす。しかし、背後で電子掲示板が弾痕を刻み、鋭い破片が飛び散る。それらを被りながら、トキは空中で体勢を整えた。だが、まだ安心できる状況ではない。

 

――カチリ。

 

足元から小さな音が響いた。

 

トキが一瞬視線を落とすと、そこには周囲に設置されたプラスチック爆弾が光っていた。

 

「あぁ、その場所ですが――足元に御注意を」

 

アカネの冷静な声が響く。

 

「くッ……!」

 

トキが即座に動こうとした瞬間、爆弾が炸裂した。

 

ドォン――ッ!

 

爆風が空気を裂き、火炎が周囲を包む。猛烈な熱波がトキの体に襲い掛かったが、彼女のレッグギアがその場から瞬時に彼女を引き離した。

 

空中に舞うトキの視界には、炎の向こう側で鈍く光る銃口が見えた。

 

「その体勢では、躱せないだろうッ!」

 

カリンだ。トキが振り返ると同時に、彼女の愛銃ホークアイから発射された弾丸が重低音と共に放たれた。

 

ズドン――!

 

巨大な弾丸がまっすぐトキの胸元へと飛来する。空中で体勢を崩したトキは、回避を諦め、防御を選択した。

 

「ぅッ……!?」

 

両腕を重ねて弾丸を受け止めると、その凄まじい衝撃がトキの体を後方へ弾き飛ばした。

 

トキの体は地面に叩きつけられ、ゴロゴロと転がった末にガードレールに衝突した。

ガードレールが激しくたわみ、金属音が響き渡る。

 

「……腕部装甲に被撃、損傷軽微」

 

地面に凭れ掛かるようにしたまま、トキはゆっくりと顔を上げ、淡々と状況を確認した。

 

「チッ、上手く逸らしたか」

 

カリンが舌打ちをしながらコッキングを行う。排出された空薬莢が地面に落ち、乾いた音を立てた。

 

確かに着弾したはずだが、トキは空中で角度を調整し、衝撃を逃がすように被弾していた。その技術は異次元と呼ぶに相応しい。

 

「テメェら!!何アイツとのタイマン邪魔すんだよ!!」

 

ネルが叫ぶ。彼女の声は怒りを滲ませていた。

 

「銀時に言われた。目の前の敵に集中しろと……」

 

カリンは冷静に返す。

 

「部長? あなたの敵が後輩に向いているのと同じように、私たちも同様にあの後輩に目が向いているのです」

 

アカネの言葉に、ネルはさらに顔を歪める。

 

「テメェら……」

 

「銀ちゃんについては心配しないで、多分ドローンとか薙ぎ倒しながらあと少しでアリスちゃんがいる中心部に辿り着くと思うから」

 

「ほら、目の前の敵に集中しないと」

 

アスナがネルを諭すように微笑んだ。その言葉にネルは一瞬肩をすくめ、息を吐き出す。

 

「……相変わらず速ぇな後輩、だが……避けてばっかりじゃ私たちを倒せないし……チビも取られちまうぞ」

 

ネルは静かにトキを見据えた。

 

一方、トキはたわんだガードレールを支えに立ち上がり、付着した砂埃を払う。彼女の瞳には微かな疲労が滲んでいたが、それ以上に冷静な光が宿っていた。

 

「……流石先輩方、ですが――」

 

そう呟きながら、彼女は深く息を吐いた。視線の先には、未だなお余裕を見せるC&Cの姿があった。

 

――だが、此処は要塞都市エリドゥ。私たちのグラウンドです。

 

トキは静かに腕を凪ぎ、都市全体を巻き込む大きな仕掛けを動かした――。

 

トキの策略が動き出す。

 

トキは冷静に、そして確信を持って右腕を大きく横に凪いだ。その瞬間、周囲の空気が変わった。

 

「……此処は要塞都市エリドゥ。私たちのグラウンドです」

 

告げられたその言葉と同時に、足元から低く重い振動が響き始めた。

 

ドォォォン――!

 

大地そのものが鳴動するような轟音と共に、街並みがゆっくりと動き出す。C&Cのメンバーたちの足元が揺れ、全員が不安定な姿勢を余儀なくされた。

 

「おわっ、何だ!?」

「振動……!? 地震か?」

 

カリンが銃を構えながら振り返り、アカネが不安げに周囲を見回す。

 

「――ううん、違うッ!」

 

唯一気づいたのはアスナだった。彼女の目が鋭くなり、遠くから迫り来る巨大な影を捕捉する。

 

「部長、避けて!」

 

アスナが警告の声を上げる。

 

「アスナ――? ッ!」

 

ネルが顔を上げたその時、横合いから巨大なビルが水平方向に迫ってきていた。

 

ゴゴゴゴ……!

 

まるで都市そのものが生きているかのように動き出し、地形が大きく変化を始める。足元の舗装されたアスファルトが次々とスライドし、建物が軋みながら移動する。

 

ネルは目を見開き、咄嗟に身を投げ出した。

 

ガァン――ッ!

 

寸前で避けたネルの背後を、巨大なビルが押し潰していく。その衝撃で砂塵が舞い上がり、視界が瞬く間に覆われた。

 

「何だよ、これ……!?」

 

ネルは悪態を吐きながら立ち上がり、周囲の状況を確認する。建物が次々と動き出し、巨大な障壁がせり上がる。C&Cの他のメンバーもそれぞれの場所で避けざるを得ず、徐々に分断されていく。

 

「まさか、建物が動くなんて……!?」

「一体どういう構造をしているんだッ!?」

 

カリンとアカネが驚愕の声を上げるが、その間にも地形は容赦なく変化を続ける。

 

「皆、こっち側に……ッ!?」

 

アスナが声を上げるが、ネルの近くにせり上がった巨大な隔壁が行く手を完全に遮った。その高さは到底飛び越えられるものではない。

 

ネルは隔壁を見上げ、再び舌打ちする。

 

「……クソ、これが狙いかよ」

 

冷たい声が、背後から響く。

 

「――一帯の都市構造を変更し、他の先輩方と分断そして、先生の位置を中心部から離させて頂きました」

 

振り向いたネルの視線の先には、再び整然とした姿勢を取り戻したトキが立っていた。彼女の表情には、微塵の乱れもない。

 

「……お前、本当に性格が悪いな」

「お忘れですか、エリドゥは本来侵入者を迎撃する為の要塞都市、その役割上この様な芸当も可能です」

 

トキの冷静な声が響く中、周囲には動き続ける建造物の騒音が轟いていた。彼女は微かに腕を振り、アームギアの指先から小さな紫電を放つ。その行動を見つめるネルの目が、さらに鋭く光る。

 

「……だからって建造物丸々迎撃施設に組み込むかよ、普通?」

 

ネルは皮肉を込めて答えるが、トキはその挑発に一切動じない。

 

「此処は普通では対処出来ない危険を抑える場所ですので」

 

さらりと返しながら、トキの姿勢は微動だにしない。だが、ネルの体勢が変化する。足元に垂れた鎖が静かに音を立て、地面に僅かな罅を刻む。

 

トキはまっすぐネルを見据え、静かに告げる。

 

「現在の私には、各区画の変動権限も付与されております。このエリドゥに於いて地の利は常に私達の味方です」

 

「……へぇ」

 

ネルは短く息を吐き、興味を惹かれたような素振りを見せるが、その瞳にはわずかに怒りが滲んでいる。

 

「C&Cはチームで動く事によって戦闘力を何倍にも跳ね上げている、しかしそれはあくまでチームとして機能すればの話――単独であればネル先輩、貴女の勝率は限りなく低下します」

 

淡々と断言するトキ。その計算された言葉にネルはピクリと眉を動かす。

 

「はぁ……ったくよぉ、勝率だ何だ、作戦が何だ、ゴチャゴチャと――」

 

ネルは肩を脱力させ、大きく息を吐き出す。その声には疲労とも、苛立ちともつかない感情が込められている。

 

「まぁ何だ、つまりてめぇは、こう云いてぇ訳だ」

 

その声色が少しずつ鋭さを増し、トキは警戒心を高めた。

 

 

突然、ネルの足元で鎖が激しく音を立てた。地面を叩きつけるように響くその音に、トキの瞳が一瞬揺らぐ。

 

「あたし単独なら、自分一人でケリを付けられる――てなァッ!」

 

ネルが放った怒声と共に、その小柄な身体が凄まじい勢いで加速する。

 

「ッ……!」

 

トキは咄嗟にシークレットタイムを盾のように構える。しかし、その瞬間、ネルの蹴りが愛銃を正面から捉えた。

 

「ざけんじゃねェぞッ! 一回あたしを組み伏せた程度でつけ上がりやがって! アァッ!?」

 

ネルの怒りが爆発するような叫びと共に、蹴りの衝撃がトキを後方へと押しやる。愛銃のフレームが軋む音がトキの耳に届き、彼女は体勢を崩しながらも必死に持ちこたえた。

 

「っ、重い……ッ!?」

 

その威力に驚愕しつつも、トキはすぐにレッグギアの出力を上げてネルを振り払う。横合いから放った蹴りがネルの側頭部を狙うが――。

 

「甘ぇんだよッ!」

 

ネルは反応速度で上回る。まるで身体を沈めるように身を反らし、蹴りを紙一重で回避する。そのまま地面に仰向けになると、両手を地面につき、逆立ちのような体勢から鋭い蹴りを放つ。

 

「なッ!?」

 

予想外の動きにトキは防御の構えすら取れない。ネルの蹴りが下から突き上げるように顎先を直撃する。

 

ズン――!

 

トキの身体は軽く浮き上がり、数歩後退する。その姿を見て、ネルは勝ち誇ったような笑みを浮かべた。

 

「はっ、漸く真面マトモに一発喰らったな!」

 

顎先を押さえながら膝をつくトキ。その視界はわずかに揺れ、鉄の味が口内に広がる。震える手で口元を拭うと、指先には鮮やかな赤が滲んでいた。

 

ネルはそんなトキを見下ろし、挑発するように両手を広げた。

 

「立てよ後輩、今からそのいけ好かねぇ性根叩き直してやるからよ――!」

 

「……出力制限、解除要請」

 

トキは小さく呟きながら、アームギアに視線を向ける。紫電が周囲に走り、ギアの出力が徐々に上がっていく。

 

「――対応、再開ッ!」

 

銃口をネルに向け、トキが引き金を引いた。その視線には明確な覚悟が宿っていた。

その一方で

 

「はっ、ひっ、はふっ……!」

 

「ユズちゃん、大丈夫?」

 

「う、うん、なんとか……!」

 

ユズは必死に息を整えながら、目の前の道を見据える。だが、その表情には焦燥がにじんでいた。ミドリとモモイが心配そうに彼女を振り返るが、ペースを落とすわけにはいかない。今ここで止まれば、中央タワーへの道がさらに遠ざかってしまう――それだけは避けなければならなかった。

 

しかし、彼女たちの周囲には異様な光景が広がっていた。直線だったはずの街路はその姿を歪め、建物が意図的に配置換えされたように見える。狭く、複雑に入り組んだ通路――まるで迷路のようだ。

 

「……そういえば……何で建物がこんな風に移動したの?」 モモイが困惑した声を漏らす。周囲の異常さを目にしても、現実感が湧かない。

 

「多分……エリドゥの迎撃システムか……」 ウタハが鋭い目で周囲を見渡す。声には疲労が滲んでいるが、その言葉は冷静だった。「おそらく、侵入者を惑わせるための仕掛けだね……こうなると、中央タワーまでの最短ルートは使えない……」

 

「そ、そんな……」 ユズが目の前の景色に絶句する。最初に見たとき、中央タワーは確かに視界にあったはずだ。しかし今、その姿は高い建物の陰に完全に隠されてしまっている。

 

ミドリは苛立ちを隠せず、拳を握りしめた。「ここまで頑張って走ったのに! どうしてこんな……!」

 

その場の空気が停滞しかけた瞬間、モモイが明るい声で言い放つ。 「大丈夫、金ちゃんがいる! きっとドローンを全部機能停止させながら、もう少しでアリスちゃんのところに辿り着いてるよ!」

 

その言葉に一瞬だけ空気が軽くなる。しかしユズは疲れた顔のまま呟いた。 「でも……金さんとも離れ離れになっちゃったし……これからどうやって……」

 

「安心して! 私たちだってここまでやってきたんだよ!」モモイがユズの肩を軽く叩く。その笑顔にはどこか無鉄砲な力強さがあった。「エンジニア部だってついてるんだから、どんな敵が来てもなんとかなるって!」

 

「なんかフラグが立った気がするけど……なんとかするしかないね……」 ユズが小さく頷くと、全員が意を決したように足を踏み出す。建物の移動によって複雑に変化した道を前に、彼女たちは改めて目標を見据える。

 

「よし……迷ってる暇はない。行こう!」

 

疲労は極限に達している。けれども、仲間たちの信頼を胸に抱き、彼女たちは再び走り出した。

 

またその頃

 

街全体が大きく移動した直後のエリドゥ。静寂が広がり、その中で時折聞こえる金属音や瓦礫が転がる乾いた音が、奇妙な孤独感を煽っている。街路は複雑に入り組み、まるで誰かが意図的に作り変えたような迷路と化していた。銀時は木刀を強く握りながら、周囲を警戒するように歩いている。

 

「おいおい、これじゃまるで都市のトランスフォームじゃねーか……。アリス救出どころか、自分がどこにいるのかも分からなくなりそう何だけど……」

 

ぼやきながら角を曲がり、薄暗い路地へと進む。だが、どの方向を見ても風景は似たり寄ったりだ。高いビルが作る影が道を覆い、風すら通らない。まるでこの街そのものが敵となり、彼を閉じ込めようとしているようだった。

 

「ったく、案内くらいしやがれよ……アロナ! お前何とかしろ!」

 

通信機越しに怒りをぶつける銀時に、アロナの澄ました声が返ってくる。

 

「すいません先生。この都市についての情報が少なく、地図の登録ができていないため案内はできません」

 

「はぁ? 使えねぇな。石消費したのに、青封筒送りつける暇があったら、地図くらい登録しとけよ!」

 

「それは先生も同じでは……?」

 

痛烈な返しに銀時は肩を落とし、頭を掻いた。

 

「……ったく、俺らだけ迷子ってのは勘弁だぞ。早くアイツらのところに行かねぇと、俺らまで置き去りにされそうだ」

 

ぼそりと呟きながら進む銀時の耳に、不意に瓦礫を蹴る荒々しい足音が届いた。その足音は徐々に近づいてくる。

 

「……誰だ?」

 

銀時は立ち止まり、足音のする方向を鋭く睨む。次の瞬間、煙の中から金色の髪が現れた。

 

「おーい、銀時! ここにいたのかよ!」

 

金色の髪を靡かせながら、金時が笑顔で手を振りつつ駆け寄ってきた。その背中には破壊されたドローンの残骸が散らばっており、体中に戦闘の痕跡が見える。

 

「あぁ? 金時、お前ここで何してんだよ? それに、アイツらはどうしたんだよ!」

 

驚きつつも木刀を腰に挿し、銀時は彼を迎える。金時は息を整えながら答えた。

 

「こっちのセリフだろ! 建物が勝手に移動しちまって、気づいたらはぐれたんだよ! それで、ドローンどもを片付けてたらお前に出くわしたってわけさ」

 

その言葉に銀時は鼻で笑いながら答える。

 

「なるほどな。お前も迷子になったってわけか。……まぁ、こうして合流できただけでも良しとするか」

 

「おいおい、迷子とか言うなよ。俺様はちゃんと計算してこっちに来たんだっての!」

 

自信たっぷりに胸を張る金時。銀時は半眼で彼を見つめた。

 

「ほーん、計算ねぇ……その割には背中にドローンの残骸なんて背負ってるみたいだけどよ?」

 

「うるせぇ! ドローンくらい片手で片付けたんだよ。お前も道案内くらいしてくれりゃ完璧だろ!」

 

「悪りぃな。お前頼みの綱のナビゲーションがこの都市の地図を持ってないらしくてな。アロナ?」

 

アロナの声がタブレットから響く。

 

「……監視カメラを一部ハッキングして、生徒さんたちの位置を特定することなら……可能です」

 

その言葉に金時の顔がパッと明るくなる。

 

「お、ナイスだアロナ! 俺、カメラの位置から場所を把握できるぜ」

 

「お前、何でもできるな……」

 

銀時が呆れ気味に言うと、金時は得意げに胸を張った。

 

「だろ? だって俺さ……」

 

「あーもういい、もういいから。さっさとアイツらと合流するぞ〜」

 

銀時は面倒くさそうにセリフを吐き、金時を促す。二人は再び歩き出し、

銀時「アロナメイドの奴らは心配いらねぇからゲームの奴らの監視カメラをハッキングして見せろ」

 

「はい了解しました!」

 

「ありゃりゃ……疲れてんなぁ」

 

映像に映し出されたエンジニア部の面々が死にかけている、振り返って後続を見たモモイは思わず表情を引き攣らせた。ユズも額に汗を流し、真っ赤な表情で走り続けているが、エンジニア部の三人に関しては若干表情が蒼褪めている。

 酸欠――ではないと思いたいが、正直な所分からない。殆ど死体の様な動きで駆ける三人、それでも足は緩めないと云うのだから心意気だけならば正にマイスター、彼女達の精神、その頑強さが分かるというもの。

 蒼褪めた表情で冷汗か脂汗かも分からないそれを拭い、ウタハは挑む様な笑みを浮かべる。

 

「はっはっは………私たちは歩みを止めてならない……他ならぬ友人のために……」

『色々限界が近いみたいだけれど、出来ればもうちょっと頑張って、中央のタワーまで後もう少――……』

 

 端末越しにナビゲートを行っていたハレ、その投影されていたモデルが不意にざらつく、まるで砂嵐の様に掻き乱される映像。それは明確なノイズだった、先頭を行くモモイが違和感を覚え徐々に足を緩める。直ぐ後ろを走っていたミドリも、何やら異変に気付き目を瞬かせた。

 その内、彼女の告げる音声すら不明瞭となってしまう。

 

「あ、あれ、何だろう……?」

「お姉ちゃん、通信にノイズが入っていない?」

「うん、急に通信状態が――」

『モモイ? 何か、通信――……悪化し―……』

『これは、まさ――……カウンタークラッ――……!』

『マズいよ! 皆、気を付け――……! 会長――勘付か……ッ!』

 

 まるで出来の悪い粘土細工の様に引き延ばされ、攪拌される投影映像。それを呆然と見つめる事しか出来ないゲーム開発部の三名。その背後からエンジニア部が追いつき、荒い息を繰り返しながらホログラムに目を向ける。

 

「はぁっ、ハッ……一体どうした、ハレ? コタマ? マキ……?」

「な、何? も、もしかして、通信が……?」

「ひっ、ふっ、ま、まさか、此処に来て非常時事態、ですか?」

 

 大量の汗を流しながらも異変に気付いたエンジニア部は、それぞれが自身の端末を確認する。だがやはりヴェリタスとの通信は繋がらない、耳元のインカムも同じく――何かが起こっている、そう確信すると同時に端末とインカム、両方から凍える様な声が響いた。

 

『――あぁ、やはり貴女達だったのね』

『ッ……!?』

 

 その声を耳にした瞬間、全員の身体が跳ねる。声は聞こえずとも、端末越しにヴェリタスの面々が息を呑むのが分かった。乱れたホログラム映像は軈て再び形を取り戻し、そこには先程とは異なる人物が佇んでいる。

 

『此処までの道のりを切り開いたのはヴェリタスかしら? 流石は、あのヒマリの後輩達と、そう云っておきましょう』

 

 タブレットを片手に、何処までも冷徹な瞳で以て一行を見つめる生徒――リオ。

 彼女の出現にモモイ達は浮足立ち、端末を持つ手を揺らしながら思わず叫ぶ。

 

「こ、これって、通信が乗っ取られたの……!?」

「……これは、そういう事になるのかな」

 

 顎先を伝う汗を拭い、険しい視線でリオ会長のホログラムを見つめるウタハ。このタイミングで気付かれる事は、正直に云えば予想外も良いところだ。まだアリスを見つける所か、中央タワーにすら到達出来ていない。作戦段階で云えば序盤も序盤、最低でもタワー内部に侵入を果たしてから発見されたかったが――どうやら向こうの方が上手であったらしいと、ウタハは内心で臍を噛む。

 

『予想はしていたけれど、本当に此処まで来てしまったのね……やはりあの時の言葉だけで、貴女達を説得する事は出来なかった』

 

 或いは彼女は予期していたのだろう、ゲーム開発部がこうしてアリスを取り戻しに来る事を。どれだけ言葉を尽くしても、論理的に語って聞かせたとしても、彼女達が頷き受け入れる事はない。薄々だが、彼女はそれを感じ始めていた。だがそれを理由に自身の合理正しさを曲げる事は出来ない――故にリオは自身のそれを証明すべく、再び口を開いた。

 

『――貴女達は、トロッコ問題をご存知かしら?』

「と、トロッコ問題……?」

『えぇ、至って簡単な話よ――故障し、止まる事が出来なくなってしまった列車トロッコがレールの上を走っている時、大多数を生かす為に一人を犠牲にするのか、或いは一人を生かす為に大多数を犠牲にするのか、そういう選択を迫る問題』

 

 唐突に語られたその内容に、全員が面食らい目を白黒させる。

 トロッコ問題――レールを走るトロッコが制御不能になった時、そのまま直進すれば前方に居る五人が轢き殺されてしまう。しかし、レールの分岐器の傍に立っていた人物が進路を切り替えれば、直線上で作業を行っていた五人は助かる。

 代わりに、分岐先で作業を行っていた一人が死ぬ。

 障害物の設置や脱線、緊急停止、あらゆる手段は封じられ、分岐器を切り替えるかでのみこれらの人物を助けられるか決定される時。

 この時、レールの分岐器を操作する事が正しいのか? それとも操作しない事が正しいのか?

 この行為は許されるのか、それとも許されないのか。

 

 ――五人キヴォトスを救う為に、一人アリスを犠牲にする事は許されるのか正しい事なのか。

 

『これの答えは明白よ、そして誰かがレバーを引く役割を担わなければならない……私はただ、その役を引き受けようとしているだけ』

 

 リオは淡々と、それこそ自身の内側で決まり切っていた答えを口にした。悪意も敵意も、彼女は端から持ち合わせてなどいない。

 分岐器を切り替えるか否か、彼女の答えは勿論――『切り替える』、だ。

 ましてやその対象が五人ではなく世界そのもの、そして犠牲となる対象が一人のままであるのならば、迷うべくもない。たった一人を犠牲にする事で世界を、キヴォトスを救えるのならば彼女は喜んで泥を被ろう。

 それは、正しい行い正義である筈だ。

 

『私はただ、皆を――』

「難しい話は分かんないよッ! そういうのは良いから、さっさとアリスを返してッ!」

『………』

 

 ホログラム、リオへと向けられる余りにも明瞭な叫び。

 私の友人であり、仲間であるアリスを犠牲になどさせない――彼女の返答は、一貫して変わらない。

 リオへと指を突きつけたモモイは、胸を張って言葉を続けた。

 

「そもそもずっと思っていたけれど、あの時は云えなかった事があるの! キヴォトスの脅威だとか何だとか理由を付けて会長はアリスを誘拐したけれど、そんなのスケールが小さすぎるんだよ! 普段私が書いているシナリオの規模の方がず~っと! ずぅ~っと大きいしッ!」

 

「お、お姉ちゃん……」

 

 そこ張り合う所なの、とミドリは思わず疑問を口に出し掛けた。しかし、どうやらモモイとしては譲れない一線らしく、鼻息荒く言葉を続ける彼女は天を指差し叫ぶ。

 

「それこそ世界を救う何て云うのなら、宇宙におっきな宇宙戦艦でも飛ばして、巨大な空中要塞に突っ込んで最終決戦位派手な演出してみせてよッ! 私達ゲーム開発部の物語はいつだって鮮烈で、ド派手で、夢と希望に溢れているんだからッ! こんな鬱々としていて、物悲しい展開なんて嘘だよ! 認められない!」

『………』

「アリスの居ない結末未来なんて――絶対に嫌だッ!」

 

 それは合理的判断ではない。リオは何かを口にしようとして、やめた。それは彼女の主義主張に対し一定の正しさを認めたからだとか、そういう事ではなかった。自身を見つめる瞳が余りにも強く、輝きを放っていたからだ。それはいつか、部室棟の廊下で出会った時よりも強く、より強固に。

 

 ――だが、感情一つで世界は救われない。

 

 微かに視線を険しくさせ、ホログラムに映らない手を握り締めるリオは想う。それは、現実という困難を前に余りにも無力な代物の筈だ。

 

「……ちょっと横から失礼するよ」

 

『――貴女は』

 

 不意にモモイの肩を掴む手があった。はっとした表情で振り返れば、額に汗を滲ませたウタハがモモイの肩越しにホログラムを覗き込む。リオは画面に映る見覚えのある顔に、その表情を微かに変化させた。

 

「私達エンジニア部がこうして協力する事も、想定していたのかな、リオ会長」

『……そうね、選択肢の一つとしては考えていたわ』

「そうか、流石は――と云っておくべきなのかな」

 

 肩を竦め、苦笑を零すウタハ。だがその口元から零れる言葉には、妙な硬さが残っていた。それはリオに対する彼女の立ち位置、スタンスから来るものなのだろう。改めて姿勢を正したリオは、画面に映るエンジニア部を一瞥する。ウタハの横合いからヒビキ、コトリの両名もまた顔を覗かせた。

 

「私も工房でモノばかり作っていたから、会話は苦手なのだけれどね、ただ今回の一件についてはどうにも黙って居られなくて付いて来てしまった」

「……アリスの事も、」

「しかし、言葉を交わさなければ分からない事もあります! 説明はいつだって疑問を氷解させる第一歩です!」

『………』

 

 聞こえて来る言葉に、リオは唇を引き締める。それがどういった感情の表れなのかエンジニア部には分からなかった――或いは『全知』と呼ばれる彼女であれば、その内面を悟る事も出来たのかもしれないが。ウタハそう考え、冷静を装いながらリオ会長へと問う。

 

「リオ会長、今回の一件、何故こうも性急に事を運んだ? 強引に事を進めれば、こうして反発が起きるのは目に見えていただろうに」

 

『……そうするべきだと思ったからよ、それ以上でも以下でもないわ』

 

「ミレニアムだけの話じゃない、もし会長の話が真実であるのならば尚更、他の学園――それこそ連邦生徒会に掛け合う選択もあった、そうすればミレニアムだけでは取れない選択肢も、新しく浮かんできた可能性がある」

 

『連邦生徒会に事を相談した所で事態は好転しない確率の方が高いわ、現在の連邦生徒会の体たらくは、エンジニア部である貴女達も知っているでしょう』

 

「それは――」

 

 リオの吐き捨てる様な冷たさを孕んだ反駁に、ウタハは思わず口を噤んだ。現在の連邦生徒会、その実情を断片的ながらもウタハは把握していた。

 

『もしこの話が通ったとしても、連邦生徒会が非常対策委員会を設置して、実際に防衛都市やそれに準ずる設備、計画の為に動き出すのはいつになるのかすら不明瞭……行政委員会も一枚岩ではないわ、ましてや連邦生徒会長が失踪中の今、総括室もその統制力を失いつつある、仮に協力を呼び掛けたとしても各学園が従うかどうかも未知数』

 

「………」

 

『シャーレの先生が赴任する直前まで連邦生徒会直轄地区であるD.U.シラトリ区がどんな状態にあったのか、忘れたとは云わせない』

 

「……だから、単独で事を起こしたと?」

 

『えぇ、そして私は唯一協力体制を取れる相手――連邦生徒会ではなく、連邦捜査部シャーレに協力を要請した』

 

 尤も、それも断られてしまったけれど。

 呟き、リオは顔を伏せる。元より彼女は何度もシミュレーションを重ねた上でこのやり方を選んだ、当然行われた演算の中には連邦生徒会やその他あらゆる学園と協力関係を結んだ場合のシチュエーションも存在する。

 だがそもそも協力関係が築けない、敵対関係に至る、最終目標の不一致から足並みが揃わない、此方の提案を聞き入れられない――そう云ったネガティブな結果が殆どであった。

 

 唯一、それらを解決出来るキーマンが『先生』であったのだ。彼の協力が得られれば、各学園との協力関係でさえ現実的なものになるという演算結果を得ていた。

 故にこそ、彼女は先生にだけはどうにか理解を得られるようにと、言葉を重ねたつもりであったが――。

 しかし、既に賽は投げられた。その結果を後悔するには遅すぎる。故に彼女の結論は変わらない。ホログラムの中に佇むリオは顔を上げ、ウタハを真っ直ぐ見つめながら断言する。

 

『単独で事を起こす、これが最も合理的な判断であった、私はそう考えているわ』

 

「……それは、独善だよ会長」

 

『――そうね、今直ぐ貴女達に納得して貰うのは難しいでしょう、その事は私自身十分理解しているもの』

 

 悲し気に告げられた言葉に、リオは吐息を零した。だからこそ彼女達は仲間を引き連れ、この場所に立っている。自分の持てる力を全て結集し、仲間を救わんと奮闘している。理論や理屈で納得できるのであれば、彼女達はこの場にこうして立ってはいまい。

 

 

銀時と金時は監視カメラ越しに、リオとモモイたちのやり取りを静かに見つめていた。

モモイの必死な叫びやリオの冷徹な返答。それぞれの言葉が画面越しにも緊迫感を伝えてくる。

 

「……トロッコ問題、ねぇ」

 

銀時がぽつりと呟く。その声にはいつもの軽薄な調子は微塵もなかった。画面に映るリオの瞳をじっと見つめる。

 

「おい、あの会長の言ってること、どう思う?」

 

金時が問いかけるが、銀時はすぐには答えなかった。

 

「一人を犠牲にして全員を救う、か……」

 

銀時は木刀を腰に挿し直し、軽く顎を指で掻きながら考え込む。画面の中ではモモイが、アリスを返せと必死に叫んでいる。それに対するリオの冷静な反応が、どこか胸に刺さった。

 

「合理的な判断だってよ。そりゃ、自己犠牲の塊のような奴はそう考えるんだろうさ」

 

「……合理的っちゃ合理的だがな。でも、それで誰かを犠牲にするのが当たり前みたいに言われると、……」

 

金時が言葉を濁す。それを聞いていた銀時は、静かに息を吐き出した。

 

「……けどよ、合理的だからってそいつが正しいかどうかは別の話だろ」

 

金時が銀時の顔を振り返る。銀時の表情には珍しく真剣さが浮かんでいた。

 

「アイツの言ってることは分かる。分かっちゃいるが、そうやって抱え込んだ奴はどうなるんだ? 誰にだって「仕方ない」って思える保証なんてどこにもねぇだろ」

 

画面に映るリオが静かにホログラム越しに語り続ける。その姿を見ながら銀時は木刀を握り直した。

 

「たった一人でも、そいつが笑えなくなるなら、救われねぇんだよ。どんだけ大層な理屈を並べたところでな」

 

金時は少し驚いたように銀時を見つめる。

 

「お前にしては真面目なこと言うじゃねぇか。」

 

「何言ってんだよ。俺はな、いざという時は輝くから問題ねぇの!」

 

銀時はキレながら、画面に映るリオから視線を逸らさずに答える。

 

「だから俺らのやることは……その選ばれた一人も、選ばれなかった全員も、どっちも救えるようにあがくことだろうが」

 

その言葉に金時は黙り込んだ。画面の中ではモモイがなおも声を荒げ、リオに食い下がっている。

 

「合理的だろうが、非合理的だろうが関係ねぇよ。俺たちはアリスを………あの自己満会長も救ってやる。」

 

銀時はそう言って金時を振り返る。その目には、いつもの飄々とした軽薄さはなく、ただ真っ直ぐな決意だけが宿っていた。

 

「アイツらの得意な理屈や計算でどうにかなるなら、俺は黙って見ててやるよ。けど、それでもどうにもならねぇなら――木刀一本で全部ぶっ壊してでも前に進む。それが俺のやり方だ」

 

「……やっぱバカだろ、お前」

 

金時が呆れたように言いながらも、肩をすくめて笑う。

 

「まぁ……そういうバカがいねぇと、俺たちは前に進めねぇよな」

 

「まぁついてってやりますか」

 

 

「おい、なんか嫌な予感するぞ。会長の切り札ってやつ、そろそろ出てくんじゃねぇか?」

 

金時が腕を組み、真剣な目つきでカメラの映像を睨む。

 

「おい! あの会長、なんか出そうとしているぞ!」

 

銀時は深く息を吐き、木刀を握る手に力を込めながら映像を見守る。その視線の先、リオの口がゆっくりと動き、決定的な命令を下した。

 

『――アバンギャルド君、発進』

 

その瞬間、重低音の轟音が響き渡り、カメラの映像に大きな影が映り込む。瓦礫を蹴散らしながら現れたのは、巨大な機械――その異様な姿に、銀時と金時はしばし言葉を失った。

 

「だせぇぇぇぇぇ!!!」

 

同時に発せられる二人の叫び声。

 

「え? ちょっと待って? 何? 何なのコレ?」

 

銀時が目を丸くしながら画面を指差し、困惑した声を上げる。

 

「どういう意図でデザインしたんだよ? 新手の先行者か何かか?」

 

画面の中、アバンギャルド君は履帯で地面を踏みしめながら進み出る。上半身は人型のフォルムを模しているが、その無骨なデザインはどこか古臭く、近未来的な都市エリドゥの景観から大きく浮いていた。

 

金時が腕を組み、真剣な顔で呟いた。

 

「いや、銀時……キヴォトス人の感覚だと、これがカッコイイって思われてる可能性もあるだろ?」

「だめだあああああああ!!ドン引きしてるううう!!!」

銀時と金時が声を揃えて叫ぶ。映像に映るエンジニア部とゲーム開発部の反応を見て、さらに実況を始める。

 

「なにこれ?『ダサッ!』って顔しちゃってるよ!!」

銀時が言うと、金時が目を細めてリオのホログラムに映る顔を指差した。

 

「嬉しそうだあああ!!クールを装ってるけど、ニヤケ顔が外に出ちゃってるよ! 自分の作ったモノが登場してニヤケ顔になっちゃてるよアレ!」

金時が追い打ちをかけるように言い放つと、リオのホログラムがふっと笑みを浮かべた。

 

『……素晴らしすぎて声も出ないって感じかしら?』

その言葉に、銀時は画面を指さして反論を始める。

 

「いやアンタの作った機械の見た目にドン引きしてんだけど!!感心の“か”の字も見当たらないんだけどー!!」

激昂したように言う銀時。リオは動じずに言葉を続けた。

 

『それだけじゃないわ……アバンギャルド君には黄金長方形を模した最強の盾があるのよ?』

堂々と説明を始めるリオ。その瞬間、銀時は木刀を画面に向かって振りながら叫ぶ。

 

「なんなのそのこだわりは? おまえの美的センスどうなってんのォォォォ!!?」

 

一方で、映像の中ではウタハが目を丸くしながら呟いていた。

「あの会長なんか……すごいもの作りましたね。私たち唖然とするしか……」

 

「最大限のフォロー!!確かにこれ以上のフォローのしがいないけど……」

金時が苦笑いを浮かべながら実況を続けると、リオは静かに言った。

 

『………ありがとう』

その言葉を聞き、銀時は椅子から転げ落ちそうになりながら顔を押さえた。

 

「もう感極まってるよリオちゃん! 多分、一生懸命作った盾を評価してくれたと勘違いしてすごい嬉しそうだよリオちゃん!」

銀時の言葉に、金時も小さく頷く。

 

その頃、ゲーム開発部のモモイが腹を抱えて笑い出した。

「あははははははは! なにあれダサッ!!」

 

隣のミドリも眉を下げながら言う。

「たしかに、あんまり可愛いデザインじゃないけど……」

 

銀時はモモイたちの反応に思わず椅子を蹴飛ばし、画面に向かって叫んだ。

「ちょっとやめなさいよ女子ィ! リオちゃん泣いちゃうでしょ!」

『……理解されないのなら、もう良いわ。そのままでも構わない。重要なのは機能と実力だもの――さぁ、彼女達を撃退しなさい、アバンギャルド君』

 

リオが冷たく言い放つと同時に、アバンギャルド君の目が不気味な光を放った。ぎしぎしと金属音を鳴らしながら体勢を整え、その巨大な手に握られた銃口をじわりと一行に向ける。まるで戦車の主砲にも匹敵しそうなその口径が、彼女たちのすぐ目の前に迫ってきた。

 

「拗ねちゃったよリオちゃん……完全に拗ねちゃったよ」

監視カメラを見ていた銀時は、リオの目元に影を落とした表情を見て、嘆息混じりに呟く。

 

 

 

 指先で目元を拭い指示を口にするリオ、その表情は影になって伺えない。途端アバンギャルド君の目が光り手にした銃口を一行へと突きつける。凡そ戦車の主砲にも匹敵し得る口径を持つそれを突きつけられ、彼女達は悲鳴染みた声を上げた。

 

「く、来るよ!?」

「あわわっ……!」

「くっ、見た目は何とも云えないが――油断はしない方が良い!」

 

 見た目は兎も角、彼のビッグシスターが設計・開発したという戦闘ロボット、尋常な代物ではないという予感がある。ウタハの声に頷きながら、慌てて陣形を組むゲーム開発部とエンジニア部。ヴェリタスとの通信が途絶した今、戦闘支援は期待出来ない。独力でこのアバンギャルド君を――延いてはリオを退ける必要があった。

 

「さぁ、戦闘開始だ……!」こうして戦場は完全に火蓋を切られた。

 

その頃

 

「侵入成功――特に防衛システムが稼働している様子もない、桂、出てきて良いよ」

 柔らかい声色だが、その響きには冷静さが混じっている。エイミは端末を操作しつつ、一瞬たりとも視線を周囲から外さない。言葉の裏には「今は安全だけど、油断しないで」という慎重さが漂っている。

 

 

「……あぁ」

 短い返答ながら、どこか重みを感じさせる低い声。桂はコンテナの縁に手を置きながら顔を覗かせ、警戒心を持って周囲を見渡す。彼の目には一瞬の迷いが浮かぶが、それはすぐに消えた。エイミの言葉を信じたのだろう。

 

 

「此処がエリドゥか」

 コンテナから降り立つと、桂は周囲を見回しながら呟く。その声には、初めて敵地に足を踏み入れた緊張感と、未知の地に挑む覚悟が混ざり合っている。

 

 

「正確に云うと地下搬入口だけれどね」

エイミは 端末から目を離さず、淡々と説明を続ける。言葉遣いは軽いが、情報を整理する声には一切の無駄がない。

「此処を出ると外郭地区が見えて来る筈、少なくともマップデータ上ではそう」

 指先で画面をタップしながら、マップを桂に見せる。エイミの口調は普段通りだが、その目は注意深く周囲を警戒している。

 

 

「それにしても凄いね、殆ど戦闘なしで此処まで来れちゃった」

 感心した様子で肩をすくめ、少し笑みを浮かべる。その笑顔は柔らかいが、目の奥には緊張の色が残っている。

「多分リオ会長も侵入に気付いていないんじゃないかな……」

 そう言いながら、一瞬視線を遠くに向ける。まるで、気配を探るように耳を澄ませているかのようだった。

 

 

「舐めてもらっては困る。これでも何度も真選組の追跡を逃れているのだからな」

 胸を張り、自信を漲らせるように声を張る。その目は鋭く、過去の経験が彼に裏打ちされた確信を与えているのだろう。

 

 

「初めは低クオリティで心配したけどね……」

 彼の誇らしげな様子に、少し冗談めかした調子で返す。けれども、その言葉にはどこか和らいだ空気が含まれている。

 

 

「エイミ殿、ヒマリ殿が拘束されている場所に心当たりは?」

 桂は真剣な表情で尋ねる。その声には、仲間を助けることへの強い責任感が宿っている。

 

 

「うーん、多分だけれど、アリスが捕まっている場所と同じか、比較的近い場所、同ブロックだと思う」

 考え込むように唇を軽く噛みながら答える。その声には確信が持てない焦りがわずかに滲んでいるが、冷静さを保とうと努めている。

「少なくともリオ会長なら効率的な配置をするはずだし、中央タワー周辺のどこかに収容施設が集中していると思う」

 言葉を紡ぎながら、エイミは端末を操作し、マップを拡大して桂に見せる。

 

 

「そうなると、周辺を虱潰しに探すしかないか」

 眉をひそめながら低く呟く。その声には焦りと諦めが混じっているが、最後には覚悟が勝っている。

 

 

「部長の反応が探知出来れば直ぐだから、近くに行けば分かるよ」

 確信に満ちた調子で応えるエイミ。彼女の中で、部長が無策で捕まるとは思えないという信念が根付いているのだろう。

「信号が完全に遮断されていたらちょっと大変だけれど、部長なら多分何らかの手段は持ち込んでいると思う」

 そう言い切る彼女の声には、相手への信頼が感じられる。

 

 不意に響いた爆発音が、会話を断ち切るように二人の耳元に届く。その低い震動が、金属製の床を通じて体に伝わる。

 

 

「……C&Cとゲーム開発部、どっちも交戦状態にあるみたい」

 端末を確認しながら冷静に状況を報告するが、声の奥にはかすかな緊張感が漂う。

「随分派手にやっているね」

 

 

「桂は心配じゃないの?」

 少し困惑した様子で問いかける。その瞳には、軽い不安が揺れている。

 

 

「案ずるな。銀時がついている以上失敗はない!」

 大きく息を吸い込み、自信に満ちた声で答える。その様子はまるで、自分だけでなく相手をも鼓舞しようとしているかのようだ。

 

 

「それに……強力なライバルも後で来るのだからな」

 その言葉に含まれた余裕の笑みは、どこか張り詰めた空気を緩める役割を果たしている。

 

 

「?」

 エイミは少し首を傾げる。その表情には「何を言っているの?」という純粋な疑問が浮かんでいる。

 

 

「さぁ!立ち止まっている暇などない!行くぞ」

 桂は声を張り上げ、勢いよく歩みを進める。その姿勢からは、彼の中にある揺るぎない意志が見て取れる。

 

 

「はぁ……すごい人仲間に引き込んだね……部長」

 軽いため息をつきながら、エイミは彼の後を追う。その表情には少し呆れつつも、どこか楽しんでいる様子がうかがえる




次回

ヒフミ「……あのォエリザベス様?」

エリザベス『どうしたペロ?』

ヒフミ「私重要人物化して来てると思うんですが……大丈夫ですか?」

エリザベス『大丈夫!!公式でも重要キャラになっちゃったって書いてた!!』

ヒフミ「こ、公式とは?」

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。