透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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あと少しでパヴァーヌが終わる……終わってくれェェェ!!

エデンに行くんだァァァァ!!
そしたら神楽新八と合流出来るんだァァァァ!!


第五十五訓 遅れてやってくるのはヒーローいや……腐れ縁って奴だ

トキの巨体が空中で体勢を整え、再びネルと桂に向けてガトリングを展開する。

 

「目標、ネルおよび桂……攻撃を再開します。」

 

轟音と共に放たれる無数の弾丸が、二人を包囲するかのように降り注ぐ。

 

「チッ……!」

 

ネルが必死に身をかわし、遮蔽物を使いながら攻撃を回避する。しかし、トキの弾幕はその隙を与えず、徐々に追い詰められていく。

 

桂もまた、刀を手に近接戦闘を試みるが、トキの装甲の硬さとバリアの防御によって決定打を与えられないままだった。

 

「攻撃の隙を狙いたいが……このバリアが厄介だな。」

 

桂が冷静に判断する一方で、ネルは額に汗を滲ませながら歯を食いしばる。

 

「クソッ……本当にしぶとい!」

 

その時、トキの右肩部の砲塔がネルに狙いを定める。

 

「ネル殿、!」

 

桂が叫び、ネルに駆け寄るが、トキの放った高エネルギー弾が遮蔽物を粉砕し、ネルを追い詰める。

 

「ぐっ……!」

 

瓦礫に足を取られたネルがよろめき、

 

トキ「全く……何度やっても意味がないというのがなぜ分からないのですか?」

 

トキの巨体が地面に崩れ落ちる直前、その機械的な声が最後の問いを発した。

 

「なぜ……これほどまでに不利な状況で……諦めないのですか……?」

 

その問いに、ネルが肩で息をしながら、ツインドラゴンを下ろして静かに答えた。

 

「なぜかだぁ……?」

 

彼女の目には、疲れきった身体の中に燃えるような炎が宿っていた。

 

「そりゃあ、私たちが――仲間だからだよ。」

 

ネルはトキの無機質な瞳をまっすぐ見つめながら続ける。

 

「私たちにとっちゃ、アリスも、この戦場にいる全員も――大切な仲間なんだ。」

 

桂が隣に立ち、刀を軽く鞘に納めながら静かに口を開いた。

 

「そうだ。勝てるかどうかじゃない……守るべきものがある限り、我々は諦めるわけにはいかないのだ。」

 

トキがわずかに揺れながら言葉を返す。

 

「それは……非合理的な……感情……。」

 

ネルが笑みを浮かべる。

 

「感情ってのはな――データには収まりきらないもんだ。」

 

彼女はツインドラゴンを肩に担ぎ、振り返ると仲間たちを見渡した。

 

「私たちがこうして戦えるのも、みんながいるからだ。支えてくれる仲間がいるから、どんなに不利でも、諦めるなんて選択肢はねぇ。」

 

 

 

桂が静かに頷き、トキを見ながら言葉を締める。

 

「諦めない限り、希望は消えない。……それが、我々の信じる道だ。」

 

 

その瞬間、ネルが口元に不敵な笑みを浮かべながら、挑発するように叫んだ。

 

「それに………私らばっかりに気を取られていいのか?」

 

トキが一瞬動きを止める。

 

「……?」

 

トキの背後から、不意にアスナの声が響く。

 

「その通りだよ!」

 

振り返ったトキの視界に映ったのは、アスナがユズを肩車している姿だった。ユズは両手に奇妙なカラクリ装置を握りしめている。

 

「ユズ、いける!?」

 

アスナが声をかけると、ユズは頷き、カラクリ装置をトキに向かって投げつけた。装置が吸着するようにトキの装甲に取り付き、瞬時に羽根のような回転機構が展開される――まるでタケコプターを彷彿とさせる奇妙なカラクリだ。

 

「……これは……?」

 

トキが警戒する間もなく、装置が作動し、トキの巨体が高速で上下に振動し始めた。

 

「機体が――! 高速移動……マッハ20……!? 演算が追いつかない……!」

 

トキの安定した制御が完全に崩壊し、演算エラーが続出する。機体が上下に激しく揺れ、バリアが完全に機能しなくなる。作戦会議にて

トキとの決戦を前に、銀時たちは緊張感に包まれながら作戦会議を開いていた。

 

金時が腕を組みながら深刻そうな表情で呟く。

 

「エレベーターが使えないとなると……代わりに何を使う?」

 

アカネがため息をつきながら答える。

 

「正直、エレベーター以外で同じような効果を出せるものなんて、普通はないんじゃ……。」

 

その言葉に、黙って聞いていた桂が静かに立ち上がり、背負っていた荷物を取り出す。

 

「エレベーターが使えないなら……これを使う時ではないのか?」

 

彼が手にしていたのは、どこか見覚えのある奇妙な装置――源外がミレニアムプライスの時に発明した「スパライラルタケコプター弐号機」だった。

 

「テレレリラッタラー!!スパライラルタケコプター弐号機!!」

 

桂が堂々と装置を掲げて宣言すると、部屋中が微妙な空気に包まれる。

 

銀時が即座に声を荒げる。

 

「おィィィィ!!それ、ミレニアムプライスで源外の爺さんが出したタケコプ◯ーの劣化品じゃねぇか!!それになんだよ弐号機って! 初号機はどこ行ったァァァァ!!」

 

桂は銀時のツッコミを完全に無視し、平然と続ける。

 

「覚えていない者もいるだろう。ここで改めて説明しておこう。」

 

桂が胸を張りながら装置を指差し、熱弁を始める。

 

『これはなんと! 頭につけるだけで空を飛べるという夢のような道具だ!』

 

銀時は耐えきれずに再びツッコミを入れる。

 

「やっぱ何も変わってねぇじゃねぇか!! ふざけてんのか!?」

 

アカネが怪訝な顔を浮かべながら手を挙げる。

 

「ちょっと待ってください、それじゃただのタケコプターじゃ……。」

 

銀時が被せるように叫ぶ。

 

「そうだよな! 俺もそう思った!」

 

桂が口元に笑みを浮かべ、装置の根本部分を指差した。

 

「甘いな、アカネ殿。これには隠し機能がある。」

 

全員が黙り込む中、桂はそのまま語気を強めて続ける。

 

『根本の赤いボタンを押すと、急上昇と急下降を繰り返す――それもマッハ20のスピードでだ。』

 

その言葉に、一同が絶句する。

 

「マッハ20……!?」

 

銀時が大声で叫ぶ。

 

「殺せんせーか!!」

 

桂は真顔で一言返す。

 

「暗殺!」

 

だがその瞬間、銀時の拳が桂の顔面を吹き飛ばす。

 

「何進化させねぇで良いところを進化させてんだよテメェは!! そんなスピード出されて耐えれんの、禿頭のヒーローかキノコ頭の魔法使いかタコ型の先公しかいねぇよ!!」

 

「いっそ頼みに行ってくるか?このタケコプ◯ー試してくださいって……ちょうどウサギの子達となんか勝負してるらしいしィ」

 

ミドリ「銀さん……それ誰の話?」

 

銀時「ジャンプの後輩にして、この世界の先輩っていうふざけた脳筋キノコキャラのことだよ」

 

ミドリ「銀さん……ここと違う世界線の話出すのはやめようね……」

 

 

 

桂は立ち上がりながら、涼しい顔で付け加える。

 

「だからこそ、この道具はトキのような巨大兵器相手にこそ真価を発揮するのだ。」

 

 

ウタハが冷静に作戦を整理する。

 

「じゃあ……カリン、アカネ、コトリは源外師匠との連絡や誘導を担当。」

 

「銀さんと金さんは必殺技の準備。」

 

「桂さんとネルはトキの相手をして時間を稼いで。」

 

アスナが手を挙げる。

 

「私はどうする?」

 

ウタハが装置を持ちながらアスナを見つめる。

 

「アスナはその勘で攻撃を回避しながら、このタケコプターをトキにつける役。」

 

ネルがそれを遮るように言った。

 

「待ちな。」

 

全員がネルに注目する。

 

「タケコプターの役はユズにやらせな。」

 

モモイが驚いたように問いかける。

 

「な、なんで?」

 

ネルが少し笑みを浮かべながらユズを指差した。

 

「今回の作戦の立役者はコイツだ。つまり、こいつが今回の仕事の鍵を握らなきゃなんねぇ。」

 

ユズが目を丸くしながらネルを見つめる。ネルはその視線を受け止めながら続ける。

 

「それに……コイツはビビりながらも、敵だった時に私に声をかけ切ったガッツがあるしな。」

 

ユズは少し戸惑いながらも、小さく頷いた。

 

「が、頑張ります。」

 

ネルがその言葉に笑みを浮かべる。

 

「それでいい。」

 

こうして、「スパライラルタケコプター弐号機」を使った作戦が決定されたのだった――。

 

 

機能不全を起こしたトキをゲーム開発部のメンバーが勝利を噛みしめていた。

 

モモイがトキを見下ろしながら感嘆の声を上げる。

 

「凄いや……本当にあの作戦が成功するなんて。」

 

ミドリがユズの方を向いて微笑む。

 

「ユズ、お手柄だね。」

 

ユズが少し照れくさそうに笑いながら答える。

 

「えへへ……みんなのおかげだよ。」

 

ウタハが装置を見つめながら呟く。

 

「それにしても、あの発明品がこんなところで役に立つなんてね。」

 

ヒビキが眉をひそめながら疑問を口にする。

 

「いや、そんなことより――なぜあれを桂さんが今だに持っていたのかの方が気になるけど。」

 

モモイが吹き出しそうになりながら小声で呟く。

 

「桂さん、本当にどこからそんなものを持ってきたんだろ……?」

 

 

トキが無理やり機体を安定させようとブースターを噴射するが、タケコプターの力で制御が狂い続ける。

 

その隙をネルが逃さず、正面からツインドラゴンの連射を叩き込む。

 

「ほらよ! お前の大事な装甲、何発持つかなぁ!?」

 

弾丸が装甲をかすめ、火花を散らす。その衝撃でトキの動きがさらに鈍くなるが、それでも完全には止まらない。

 

桂が横から素早く接近し、関節部を狙って刀を振り抜く。

 

「斬ッ!」

 

関節部から火花が散り、トキの片腕が一瞬だけ動きを止める。

 

「右関節、軽度損傷……行動に支障なし。」

 

トキが冷徹な声を発しながらも、動きは確実に鈍化していた。

 

ネルが肩で息をしながら再び叫ぶ。

 

「おい桂! 次は左を狙え! 関節を潰せばあの巨体も動けなくなる!」

 

桂が即座に頷き、刀を握り直して左側に回り込む。

 

トキは動きを修正しようとするが、再びタケコプ◯ーの影響で制御が狂い、狙いが定まらない。

 

 

その頃、別動隊として源外の爺さんを迎えに行っていたアカネたちは、彼を急いで戦場に連れて行こうとしていた。

 

アカネが焦った表情で源外を急かす。

 

「源外さん、もっと早く! 戦場が大変なことになってます!」

 

源外がニヤリと笑いながら、自慢げに道具を指差す。

 

「そんなに急がなくても大丈夫さ。俺のこの発明品があれば、勝利は確定したも同然だ。」

 

カリンが少し疲れた声で答える。

 

「それを早く届けないと意味がないんだよ!」

 

コトリが必死に源外をサポートしながら、ようやく戦場への最後の道を駆け抜ける。

 

 

戦場では、ネルと桂が再びトキを追い詰めつつあった。

 

「動きが鈍いな! 今だ、桂!」

 

ネルが叫ぶと、桂が最後の一撃を狙って刀を振りかざす。しかし、その瞬間、トキのブースターが一気に最大出力を発揮し、距離を離す。

 

「機体制御、臨界突破。最大出力にて迎撃を開始します。」

 

トキの腕が大きく開き、中から高エネルギー砲の砲口が展開された。

 

「ネル殿! 下がれ!」

 

桂が叫ぶが、ネルはそのまま突進を止めない。

 

「下がれるかよ! ここで止めなきゃ意味がねぇ!」

 

しかし、トキの砲撃がネルの体に直撃する。

 

「ぐぁっ――!!」

 

ネルの身体が大きく吹き飛ばされ、瓦礫の中へと叩きつけられる。

 

「ネル殿!」

 

桂が駆け寄るが、その間にもトキは再びエネルギー砲をチャージし、次の攻撃を準備していた。

 

「…… しっかりしろ!」

 

倒れたネルが辛うじて笑みを浮かべながら答える。

 

「まだ……まだやれるさ……。なんってたってあの攻撃一度あのチビから喰らってんだからな」

 

ネルが瓦礫の中からゆっくりと起き上がろうとする。全身に傷を負いながらも、その瞳にはまだ炎が宿っていた。

 

「こんなとこで……止まれるかよ……。」

 

桂が刀を構え直し、ネルの前に立ちはだかる。

 

「無茶はするな、ネル殿。ここからは俺が――」

 

その言葉を遮るように、突如として場に響く老人の声が戦場に飛び込んできた。

 

「おいおい、お前ら! まだ死ぬには早ぇぞ!」

 

 

瓦礫の陰から現れたのは、笑みを浮かべながら堂々と戦車に乗る源外だった。戦車の上には巨大な装置が据え付けられ、その異様な存在感が戦場を支配している。

 

「待たせたな。この俺様特製の最終兵器で、全部ぶっ壊してやるよ!」

 

銀時が虚式を発動させながら、すかさず怒鳴る。

 

「おせぇんだよ!!クソジジイ!!」

 

金時も苛立ちながら叫ぶ。

 

「これ以上はアイツらも持たない! 早く間に入ってくれ!!」

 

源外が戦車の上で装置を起動しながら、ニヤリと笑う。

 

「慌てるな。こいつを撃てば、全て終わるさ。」

 

戦車の砲台と銀時の虚式と金時の虚式が並ぶとまるで二つの玉と一本の棒が組み合わさった、どこか下品なフォルムの兵器となった。

 

アカネが即座に声を上げる。

 

「ちょっ!ちょっと待ってください!!何ですか?そのフォルムは!!」

 

銀時が真顔で答える。

 

「何ってネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だよ見たらわかんだろ?」

 

源外も続けて

 

「その通りだコイツがカラクリの結晶だ」

 

カリンがさらにツッコミを入れる。

 

「どこがだよ! カラクリの結晶っていうより、ただの変態の結晶だろうそれ!」

 

源外たちは無視して砲台をトキに向け、叫ぶ。

 

「おいカラクリ娘!お前は低資金で作られた俺たちには勝ち目がないとか抜かしてたな?」

 

「低資金じゃなんじゃあってそんなもん俺たちの絆の前じゃはほんの少しの壁にすぎねぇんだよ!!」

 

「今から見せてやるぜ……江戸一番のカラクリの力をな……」

 

 

「「「行くぞ! ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロングマスター源外砲、発射!!」」」

 

 

銀時と金時の虚式のエネルギーを吸収しながら砲台から放たれた巨大なエネルギー弾が、轟音と共にトキへと突き進む。その威力は圧倒的で、周囲の空気すら震わせる。

 

トキもまた、エネルギー砲を展開し、全力で応戦する。

 

「エネルギー砲、全出力で迎撃します。」

 

二つのエネルギーが激突し、戦場を包むような眩しい光が広がる。しかし、トキのエネルギー砲は徐々に押し負け、やがて砲台から放たれたエネルギー弾がトキの巨体を直撃した。

 

「システム……異常……機体、制御不能――。」

 

トキの巨体が崩れ落ち、完全に沈黙する。

 

 

戦闘が終わった瞬間、戦場には不自然な静けさが訪れた。全員がようやく息をつくが、次の瞬間――。

 

「……ただの下ネタじゃねぇかァァァァ!!」

 

声を張り上げて全員がツッコミを入れる。

 

モモイが顔を真っ赤にして叫ぶ。

 

「何よあれ! 下品にもほどがあるでしょ!」

 

ミドリが恥ずかしそうにうつむきながら同意する。

 

「そうだよ! 何であんな形に……!」

 

だが、桂が真剣な表情で口を開く。

 

「何を言っている。棒には玉がつきものだろう?」

 

全員が一瞬沈黙し、ミドリが真っ赤な顔で叫ぶ。

 

「そういう意味じゃない!!」

 

銀時が肩をすくめながらため息をつく。

 

「やれやれ……最後は円満にありそうだったんだからそれで良いじゃねぇか……。」

 

源外が満足げに装置を撫でながら笑う。

 

「まぁ、勝ったんだ。文句は言わせねぇよ。」

 

全員が呆れながらも、勝利の安堵に浸るその時だった――。

 

銀時たちがトキを打倒し安堵している中、チヒロが緊迫した声で通信を入れる。

 

『みんな、安堵している時に悪いんだけど……リオ会長との通信が回復したから繋ぐわね。』

 

画面に映し出されたのは、無表情のリオ会長だった。

 

「………」

 

モモイがその姿を見て声を上げる。

 

「会長……!」

 

全員がリオを鋭く睨みつける。緊張した空気がその場を包む中、ネルが口火を切った。

 

「まだ戦うつもりかよ、リオ?」

 

リオは静かに首を振り、唇を噛みしめるように言葉を紡いだ。

 

「いいえ……トキが倒れた時点で、私が持っている手札はすべて消えた。」

 

リオは一呼吸置き、瞳を閉じたまま続ける。

 

「認めましょう……私の負けよ。」

 

その言葉に、銀時が少しだけ眉をひそめながら問いかけた。

 

「リオ……。」

 

リオは画面越しに銀時たちを見据えながら、かすかな微笑みを浮かべた。

 

「本当に……あなたたちはここまで来たのね。」

 

「近い将来、キヴォトスの威になることが確定しているあの子を救うために……。」

 

 

モモイが一歩前に進み、強い口調でリオに答える。

 

「当たり前だよ! 最初からそう決めてたからね!」

 

リオの瞳が一瞬だけ揺れ、静かに問いかける。

 

「アリスが、キヴォトスに終焉を招くとしても?」

 

その問いに、モモイは驚いたように目を見開いたが、すぐに怒りのこもった声で反論した。

 

「急に何? アリスのこと、そんな風に言わないでよ!」

 

ネルも続けて言葉を投げかける。

 

「それに……あのチビが暴れた時は、今回みたく全員で連れ戻せば良いだけだしな。」

 

リオは視線を少し下げながら、言葉を落とすように呟く。

 

「私はただ……。」

 

 

銀時が木刀を肩に担ぎながら、リオを真っ直ぐ見つめて言葉を投げた。

 

「おいリオ……テメェになくて、俺たちにあるもの……それが今回の戦いの勝敗を決めたんだ。」

 

リオが僅かに顔を上げ、興味深そうに問い返す。

 

「………それは何?」

 

銀時が少し口角を上げ、はっきりと答える。

 

「仲間だよ。自分が間違った道に進んだ時には全力で止めに行って、協力してほしい時、一人で行き詰まった時には手を貸してくれる仲間を持っていたかいなかったか……ただそれだけだ。」

 

リオはその言葉を飲み込みながら沈黙する。

 

銀時は少し肩をすくめて続ける。

 

「まあなんだ……天才でも、凡人が集まればそれ以上の力を発揮できるってことだな。」

 

 

チヒロの声が緊迫したトーンで響いた。

 

『アリスの場所がわかった。会長のいる近くの隔離室に電力が集中する施設があるはず。アリスはそこにいる。』

 

モモイがすぐに声を上げた。

 

「ミドリ! ユズ!」

 

ミドリが頷き、勢いよく答える。

 

「うん! お姉ちゃん!」

 

ネルが立ち上がろうとするが、ユズがすかさず彼女に肩を貸す。

 

「私が肩を貸します。」

 

ネルが少し驚きながらも笑みを浮かべる。

 

「……すまねぇな。」

 

銀時が全員を見渡し。

 

「まあ、この話はまた今度だな。」

 

リオが視線を落としながら何かを言おうとしたが、銀時たちはアリスのいる隔離室に向けて歩き出した。

 

その時、リオのいる管制室の電源が突然落ち、暗闇に包まれた。

 

「何!?」

 

全員が立ち止まり、辺りを見回す。暗がりの中で不気味な静寂が広がり、唯一動いているのは点滅するモニタの光だった。

 

その光が青白い色から徐々に紫へと変わり、画面にはノイズが走る。

 

 

銀時の持つタブレットから、焦りのこもったアロナの声が響いた。

 

『先生ッ! エリドゥの内部ネットワークに大規模な障害が発生しています!』

 

その報告を受け、銀時たちの表情が一気に険しくなる。明らかに異常事態が起きようとしていた――。

 

「っ!?」

 

 

突如、中央のホログラムに映し出されたアリスの姿が変化を見せる。

 

彼女は唐突に目を見開き、まるで眠りから覚めるかのようにゆっくりと上体を起こす。その動作はどこか機械的で、普段のアリスの柔らかさとは程遠いものだった。

 

モモイがそれを目にし、一瞬驚きに目を見開く。次いで歓喜の色を滲ませ、声を張り上げた。

 

「あっ、アリス、目が覚めて――ッ!?」

 

だが、アリスの口から発せられたのは予想だにしない言葉だった。

 

「現在、『王女』の表層人格は内部データベースの深層部に隔離されています。強制的に接続を解除した場合、記憶データ及び人格領域に取り返しのつかない損傷が生じる可能性が極めて高いでしょう。」

 

モモイの表情が一変し、動揺の色を帯びる。

 

「あ、アリスちゃん……?」

 

 

その声――そして口調――は、普段のアリスとは明らかに異質だった。それを聞いた全員が、何かが違うことに気づく。

 

ユズが恐る恐るアリスの名を呼ぶ。

 

「アリスちゃん……?」

 

だが、彼女はユズの呼びかけに一切反応を示さない。

 

普段は空のように澄んだ色をしていた彼女の瞳は、今は深紅に染まり、暗闇の中で鮮烈に輝いていた。

 

その異様な光景を目にしたミドリが数歩後退り、青ざめた表情で叫んだ。

 

「違う、お姉ちゃん……! 『コレ』、アリスちゃんじゃないッ!」

 

その言葉に応えるかのように、アリス――否、Keyがゆっくりと首を傾けた。

 

「アリス――確かあなた達が私達の王女を呼ぶ際の名称でしたね、ソレ。」

 

 

目覚めた彼女――Keyは、複数の視線をその紅い瞳で見返す。そして、自身の首元に手を当て、静かに撫でつけるような仕草を見せた。その動作はあまりに大人びており、普段のアリスにはない冷たさが漂っていた。

 

Keyはゆっくりと掌を見つめながら、ハッキリとした口調で断じた。

 

「王女に名は不要。名前は存在の目的と本質を乱します。」

 

その言葉を聞いたモモイが困惑しながら声を荒げる。

 

「ほ、本質? 目的? 何を、何を云っているの……!? ねぇ、貴女は誰!? アリスを、アリスちゃんを返してッ!」

 

だが、Keyはその悲痛な叫びに応えることなく、淡々とした声で言葉を続ける。

 

「――そうですね。私の表層人格に名称があるとすれば……」

 

彼女は視線を前方へと向け、誰の目も見ようとせず、静かに告げた。

 

「個体名は【Key】。王女を助ける無名の司祭達が残した修行者であり、彼女が戴冠する玉座を継ぐ鍵そのものです。」

 

 

Keyは虚空に手をかざし、冷徹な声で語る。

 

「少々手間取りましたが、ただ今よりエラーの修正作業に入ります。本来あるべき玉座に【王女】を導き戴冠する。それこそが私の存在理由。」

 

その言葉を聞き、リオが何かを察して口を開く。

 

「ッ、まさか――!?」

 

だが、Keyはその言葉を遮るかのように虚空を彷徨う手を止め、一言告げた。

 

「――現時刻を以て、プロトコルATRAHASISを実行します。」

 

 

瞬間、中央管制室に大音量のアラートが鳴り響く。

 

警告表示が紫色に塗り替えられたモニタには、見慣れない文字列が次々と浮かび上がる。「Divi:sion」という名の表示が点滅し、管制室全体が異様な振動に包まれる。

 

全員が臓物が浮き上がるような衝撃に襲われ、思わず立ち止まる。

 

Keyの冷徹な声が室内に響き渡った。

 

「コード名、アトラ・ハシースの箱舟、起動プロセス開始……プロセスサポートの為に、無名の守護者Divi:sionを起動――転送開始。」

 

その言葉に銀時たちの表情が一層険しくなる。

 

「おいおい今度は一体何が始まるってんだよ……?」

 

Keyはまるで神のように悠然と手を広げ、冷酷な微笑みを浮かべながら宣言する。

 

「この地には新たなる【サンクトゥム】が聳え立つだろう。」

 

彼女の瞳に映るのは、終焉の序章――全ての神秘がアーカイブ化され、滅びの未来が訪れるという不吉な未来だった。

 

 中央管制室に鳴り響くアラートは、止むことなく空間を震わせていた。リオは鬼気迫る表情でコンソールを叩き続ける。周囲に次々と現れるホログラムモニタには、要塞都市エリドゥ内部で異常発生が続いている映像が映し出されていた。

 

映像には、何もない空間から次々と現れる無数の『守護者』たち――それは、空間を塗り替えるようにして形を成し、見る間に数を増やしていく。

 

リオは険しい表情のまま状況を確認し、必死に迎撃手段を模索する。

 

「エリドゥ各地で守護者の出現……! 防衛設備の稼働、いえ中央システムが稼働していない状況でそれは、ドローンもAMASも、手持ちを全部吐き出しても……!」

 

コンソールに表示される情報を次々と目で追うリオの顔色は、時間の経過と共に悪化していく。演算するまでもなく、彼女の優秀な頭脳は答えを導き出していた。

 

――不可能だ。

 

不安と絶望が彼女の中で混じり合う中、リオは低く呻くように言葉を漏らした。

 

「……どうすれば良いの……?」

 

 

突然、銀時の鋭い声がその混乱を切り裂くように響く。

 

「リオ!」

 

リオはその声に一瞬びくりとし、振り返る。その表情は、青ざめたまま動揺の色を濃くしていた。

 

「せ、先生、私は――」

 

銀時は彼女を真っ直ぐに見つめ、低く問いかける。

 

「――トランスフォーム都市が、奪われたんだな?」

 

リオは言葉を詰まらせた。彼女は答えることができず、代わりに震える手でぎこちなく頷いた。

 

そのまま目の前のモニタに映る状況を見つめ、呟く。

 

「……私はキヴォトスに来る終焉に備える為、私個人が動員できるミレニアムの技術、力、エネルギー、それらを支える資源を集約し、この要塞都市エリドゥを建設したわ……。」

 

しかし、その言葉の最後は苦々しく、唇を噛みしめるような響きを帯びていた。

 

「けれど――たった今、それが仇となった。」

 

 

リオの目に映るのは、エリドゥの資源、技術、エネルギーが次々と敵に奪われ、箱舟アトラ・ハシースを構成するリソースへと変換されていく現状だった。

 

彼女が用意した防衛設備が、今や敵の戦力となり、逆にキヴォトスの終焉を加速させている。

 

「先生、終焉の発端は――たった今、【エリドゥ】に移った。」

 

リオはコンソールに両腕を叩きつけた。その衝撃でモニタが揺れ、ノイズが走る。

 

「私の過ちが……予想されていた終焉を招いてしまった……!」

 

彼女の声は悲鳴に近いものだった。

 

Keyの冷たい声が響き渡る。

 

「箱舟顕現に必要なリソース確保、二十三パーセント。」

 

その言葉に、リオは歯を食いしばりながら拳を握る。

 

 

リオは拳銃を抜き放ち、鋭い動作で弾倉を確認する。安全装置を外し、コンソールに再び手を置いた。

 

銀時がその姿を見て声を投げかける。

 

「リオ、何を――!」

 

リオは振り返ることなく、鋭い声で断言する。

 

「このままエリドゥのリソースを奪われてしまえば、キヴォトスは決して避けられない終焉を迎えるわ! 今、この場で決断を下さなければならない……!」

 

その言葉に桂が口を挟む。

 

「しかしそれでは、リオ殿は――」

 

リオは彼を遮るように話を続けた。

 

「この都市は既に変貌し始めている。数分の内にエリドゥは箱舟という新しい概念に歪曲され、支配されるでしょう。そうなれば、このキヴォトスは――」

 

その言葉を飲み込むように、リオは小さく震える肩を押さえた。

 

 

リオは力強い声で続ける。

 

「私の責任よ。この都市を建造し、備え、独断で動いた私の――私自身の選択がこの結末を招いた。」

 

そして、強い意志を込めた瞳で銀時を見つめる。

 

「私の命ひとつで世界の終焉を防げるのなら、そうするわ――そうしなければならない。」

 

その言葉は、彼女の覚悟を物語っていた。

 

 

銀時に向かってリオは叫ぶ。

 

「先生、彼女たちを連れて離脱して!」

 

脇に開かれた緊急脱出口を指し示し、さらに続ける。

 

「タワー最上階に脱出艇を用意してあるわ。操縦は自動化されているからミレニアム中央区まで素早く戻れる筈よ……! 彼女たちを連れてエリドゥを離れて!」

 

銀時はリオの懇願を真っ直ぐに受け止め、その姿に言葉を失う。

 

リオは最後の力を振り絞るように叫んだ。

 

「だから逃げて、先生! 貴方の生徒を連れて……ッ!」

 

銀時の瞳には、必死に懇願するリオの姿が映っていた。

ーーーーーーーー

 

ザッザッザッ――。

 

何かが迫ってくる重い音が不気味に響き渡る。その音に反応して、銀時たちが振り返ると、暗闇の向こうから現れたのは奇妙な球体の大軍だった。

 

球体は滑らかで無機質なデザインをしており、金属光沢を放ちながら地面を滑るように移動してくる。その姿を目にした瞬間、エンジニア部のメンバーは一様に表情を強張らせた。

 

「この機械はッ!」

 

ウタハが硬い声で叫ぶと、コトリが唖然とした表情で続けた。

 

「確か、ヴェリタスが発見したとか云う……!? でも、なんでここに!?」

 

球体は一瞬の静止の後、突如として無数の光線を放つ。

 

「伏せてくださいッ!」

 

アカネが鋭く叫び、皆の前へと飛び出す。彼女はすばやく背負っていた巨大なケースを地面に投げ下ろし、展開して盾代わりにする。一拍遅れて、球体群の放ったレーザーが周囲を襲った。

 

バシュン!バシュン!

 

鋭い音を立てて光線が飛び交い、外壁やガードレール、地面を容赦なく削り取る。アカネの展開したケースにも幾つかが着弾し、金属が焦げる臭いと共に火花を散らした。

 

アカネは咄嗟に身を潜めた面々を守るように構え直し、周囲を確認する。

 

 

ケースの影で縮こまるエンジニア部の面々。レーザーの合間にモモイが不安げに声を上げた。

 

「ハワワワ………!」

 

ミドリは周囲を見渡し、横たわるネルに目を向ける。

 

「ネル先輩……ネル先輩は大丈夫……?」

 

ネルは額に汗を滲ませながら、苦笑を浮かべて答えた。

 

「すまねぇ……。健も切れてるし、さっきの戦闘で全身ボロボロだ。動くこともままならねぇよ……。」

 

モモイが悲痛な声を漏らす。

 

「そんな………ネル先輩……!」

 

 

コトリが必死の表情で金時に呼びかける。

 

「金時さん! こういう時は順転でエネルギーを集めれば――!」

 

だが、すでに金時は肩を落としていた。普段の陽気な様子は消え、彼は悔しげに呟く。

 

「……すまない。今回の戦いで、俺のエネルギーは全部使い切っちまった。」

 

ウタハが驚いた声で問いかける。

 

「えっ、ど、どうしたんだい金さん!? そんなのって――!」

 

さらに源外が自分の戦車を叩きながら、ため息混じりに言葉を続けた。

 

「俺のコイツもダメだな。戦車もエネルギー切れだ、動かせそうにねぇ。」

 

ヒビキが状況を冷静に見渡しながら、唇を噛む。

 

「そうなると……。」

 

ウタハが肩をすくめるように、静かに呟いた。

 

「……万事休すってとこだね。」

 

ーーーーーーーー

 

 

「だから逃げて、先生! 貴方の生徒を連れて……ッ!」

 

リオの懇願が響く中、銀時は微かに目を細め、そしてゆっくりと首を振った。その仕草を目にしたリオは、驚きと動揺で息を呑み、言葉を失う。

 

銀時は静かに腰の木刀を抜き放つと、迫り来る追跡者たちに向き直る。

 

「おいおい、勝手に全部背負ってカッコつけんなよ。」

 

その言葉には苛立ちと呆れが滲んでいたが、同時に、深い決意が込められていた。

 

 

追跡者の大軍が押し寄せる中、銀時は力強く木刀を振るい、一体また一体と叩きのめしていく。その一撃一撃は重く、容赦がない。

 

「先生……!?」

 

リオが驚きの声を上げるが、銀時は振り返ることなく言葉を続ける。

 

「お前一人で止める? ふざけんな、俺が言ってんのはそういうことじゃねぇんだよ!」

 

次々と襲い来る追跡者たちを薙ぎ倒しながら、銀時の声は力強く響いた。

 

「確かに俺たちはアリスのためにここまで来た……だがな。」

 

木刀が炸裂するたび、追跡者のボディが砕け散る。銀時はその間も、リオに向かって言葉を紡ぐ。

 

「聞いちまったんだよ。テメェが一人で何もかも抱え込んで、悪役を演じてるってことを。」

 

 

リオの瞳が揺れる。彼女は何かを言いかけたが、銀時の言葉が続いた。

 

「先生として……いや、それ以前に、これは俺ひとりの侍として言わせてもらう。」

 

追跡者たちの大軍に囲まれながらも、銀時は一歩も引かずに戦い続ける。その目には強い覚悟が宿っていた。

 

「世界がどうなろうと、敵だろうが何だろうが――誰一人として死なせるなんて、許さねぇ!」

 

リオはその言葉に息を呑む。

 

「っ、先生の優しさや信念は理解しているわ……けれど、今は――!」

 

 

『リソース確保――六十八パーセント』

 

冷たい声が響き、モニタには箱舟の進行状況が映し出される。カウントダウンは無情にも進み、要塞都市エリドゥの崩壊が始まっていた。

 

桂は一瞬モニタを見上げると、力強い口調で告げた。

 

「それに俺達は一人でここに立ってる訳じゃない。」

 

その言葉に、リオは一瞬目を見開く。

 

「……?」

 

 

 

桂の声は静かだが、その響きには確かな信頼が感じられる。

 

 

その時、背後から微かな駆動音が響く。

 

「ヒマリ殿」

 

桂が名を呼ぶと、暗がりから現れたのは車椅子に身を預けた白い影だった。彼女の姿を目にした瞬間、リオやゲーム開発部のメンバーたちは驚愕に目を見開いた。

 

「ヒマリ……!?」

「ヒマリ先輩!? な、何でこんな所に!?」

 

車椅子に座るヒマリは、微笑みを浮かべながら片目を瞑り、指を一本立てる。

 

「ふふっ、それは超天才清楚系美少女のなせる業、とでも言っておきましょうか。」

 

銀時が呆れ顔でぼやく。

 

「え?あれが天才のヒマリの自己アピール?、なんか長えよな?……。」

 

桂が軽く首を振りながら付け加える。

 

「言うな、あれはもう治らん。」

 

ヒマリはそのやり取りを微笑ましげに聞き流しつつ、素早くコンソールを操作し始める。その動きは一分の隙もなく、目を見張るほど洗練されていた。複数のウィンドウを操作し虚空に向かって口を開いた。

 

 

「システムは既に掌握済みです、パスはそちらに――チーちゃん」

『了解、ユウカ』

『確認したわッ! ノア、全部落としてッ!』

『はい――システムシャットダウン、実行します』

 

ヒマリの指示と共に、車椅子に搭載されたスピーカーからノアの冷静な声が響き渡る。直後、エリドゥ全体を覆っていた不快な警告音がピタリと止み、紫色に染まっていたモニタは一斉に青へと切り替わった。

 

「ッ、これ、は――?」

 

警告音が消えた瞬間、ホログラムのアリス――Keyの身体に異変が起こる。瞳にノイズが走り、けたたましい音と共に彼女の身体がびくりと跳ねたかと思うと、そのまま寝台へと崩れ落ちる。

 

「あっ、アリス……!?」

 

モモイが手を伸ばそうとするが、ミドリがその手を掴み、静止する。

 

「お姉ちゃん、危ないよっ!」

 

普段のアリスとはあまりにも違うその様子に、全員が息を呑む。再び横たわるアリスの瞳には、以前の澄んだ光はなく、代わりに冷たい赤が残っていた。

 

 

「これで時間稼ぎは出来るでしょう。少なくとも、プロトコルを実行するには再度権限を奪取し、システムを立ち上げる必要があります――ふふっ、次の手を打つ猶予が出来た訳ですね」

 

ヒマリは自信満々に胸を張り、涼しい笑みを浮かべた。しかしその直後、彼女の言葉を遮るようにホログラムモニタが点灯し、映し出されたのは画面いっぱいに顔を寄せたユウカだった。

 

『リオ会長!』

 

「っ、ユウカ……?」

 

リオが驚きと共に声を上げる。だが、ユウカは容赦なく怒声をぶつけてきた。

 

『漸く見つけましたよ、会長ッ! 勝手に居なくなったと思ったらこんな大問題を起こして、重要項目は全て片付けたつもりかもしれませんけれど、細々とした業務だって沢山残っているのに!』

 

画面に映るユウカは怒り心頭だ。その剣幕にリオは数歩後退り、思わず視線を逸らす。

 

『それとミレニアムタワーのセキュリティ周り、勝手に弄りましたよね!? ガードロボットが稼働して、一体何だと思ったら停止命令も聞かずに全力で戦闘を始めちゃたんですけれどッ!』

 

リオは小さく肩を縮めるが、ユウカの怒りは収まらない。

 

『何より問題なのは、セミナーの予算を横領してこんな幾ら掛かるかも考えたくない大規模都市を勝手に建設した事と、アリスちゃんを無理矢理誘拐した事と、先の件と今回の先生に対する仕打ちとっ……! あぁもう、本ッ当に云いたい事は、沢山ありますけれど……ッ!』

 

止まらない怒涛の言葉。だが、ユウカは一旦息を吸い込み、冷静さを取り戻したように叫ぶ。

 

『今は兎に角、状況の打開が先です! ただし、帰ってきたら覚悟して下さいッ! お説教だけじゃ済みませんからねッ!』

 

「ああ怖い怖い……この世界には何体あのババア(お登勢)の分身がいれば気が済むんだよ」

 

銀時が肩越しにぼやくと、隣でアスナが呆れたように言う。

 

「それは銀さんがだらしないから~……って銀さん!! そんな悠長なこと言ってる場合じゃないよ~」

 

アスナの叫び声に振り返ると、追跡者の大軍がさらに迫りくる様子が目に飛び込んでくる。

 

銀時と桂、そしてわずかに戦えるメンバーたちは迎撃を続けているが、敵の数は一向に減らず、むしろ増加しているかのようだった。

 

「おいおい、どういうことだよ……こんなんじゃキリがねぇだろ!」

 

銀時が木刀を振るって追跡者を次々と叩き潰すが、それでも押し寄せる敵の数に少しずつ追い詰められていく。

 

「どうするんだ、ヅラ!? これ以上は持たねぇぞ!」

 

「……ヅラじゃない桂だ今は一体でも多く叩き潰すしかない。だが、早く打開策を講じなければ――!」

 

桂も刀で必死に敵を迎え撃つが、追跡者の攻撃を完全に防ぎ切れる状況ではなかった。

 

あと少しで押し負ける。その時

 

 

「ドカァァァァァァン!!」

 

追跡者の一群を吹き飛ばす轟音が響き渡り、周囲に砂煙が舞い上がる。爆発の余韻が残る中、銀時たちの前に現れたのは、黒い制服に身を包み、腰に刀を挿した男たち。そしてその中にはバズーカーを担いだ隊士の姿も――。

 

「おい! 何こんな奴ら相手に遅れを取ってやがる!」

 

力強い声と共に前に出たのは真選組局長・近藤勲。銀時の目が驚きに見開かれる。

 

「お、お前ら……!」

 

一瞬の静寂の後、状況を理解する間もなく――。

 

 

カリンがポツリと呟く。

 

「ゴリラだ……」

 

その一言に、近藤を知らないメンバーたちが次々に推測を口にする。

 

アカネ「いえ、ゴリラはゴリラでもローランドゴリラかと……」

 

コトリ「いや……あの特徴だとマウンテンゴリラでしょう!!」

 

ヒビキ「いや……ここは間をとってドンキーコングに……」

 

近藤が微妙な表情を浮かべながら一歩前に出る。

 

「あのーすいませんゴリラじゃないんだけどねぇお嬢さん方……かっこよく登場したんだから雰囲気を壊さないでいただけると」

 

 

そんな近藤の肩を、真選組副長・土方十四郎が叩きながら冷静に言う。

 

「ドンキー近藤……もう諦めた方がいいぞ……」

 

「トシ……お前まで俺をゴリラ扱いするのか?」

 

そのやり取りを聞きながら沖田総悟がバズーカーを構えたまま、軽口を叩く。

 

「全くその様子しっかりしてくだせぇ……その様子じゃ……マリオとルイージ、そしてピーチ姫のサイン貰えねぇじゃねぇですか」

 

 

「は? マリオ? ルイージ? 何を言って……それにどうしてテメェらがここに……」

 

銀時が真選組を睨みつける中、視界の隅に奇妙な格好をした人影が映る。振り返ったその先には――。

 

桂が真っ赤な帽子とオーバーオールを身に着けた、マリオそのものの姿で立っていた。

 

その後ろからは、緑の帽子とオーバーオールを着たルイージ風のエリザベス、さらにピンクのドレスを纏ったピーチ姫風のヒフミが堂々と登場する。

 

「……」

 

そのシュールな光景に、一瞬の沈黙が訪れた。

 

銀時が呆然としたまま、震える声で呟く。

 

「おい……何だよその格好は……?」

 

桂が堂々と胸を張り、指を立てて宣言する。

 

「我々は――新しい戦いに備えた、最強の兄弟と姫だ!」




次回
真選組のテロ活動防止運動24時特別版

銀時「え?関係あるんだよね?あるんだよね?」

エルイージ『あります』

フーミ姫「うう……どうしてこんなことに……」

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
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