透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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ある時

ドオォォォン!!次元が割れた。

???「ヘドロ兄さん」

ヘドロ「おお、来ましたか」

???「やっぱヘドロ兄さんはすごいや、拳一つで次元に穴を開けちゃうなんて」

ヘドロ「いや、すごくありませんよ。むしろ後で空間に謝っておかないと」

???「流石兄さん!」

ヘドロ「では手筈通りにーー」

「皆さん散らばって布教してください!花の美しさを」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

???「へへ、今回の任務って姫ちゃんじゃないといけないんですか?い、痛いですよね苦しいですよね」

???「仕方ないんだ。マダムからの命令に背くわけには」

???「結局操り人形なのは変わらないんだね」

???「これも生き残る為だ」

「姫。」

ガスマスクの少女「………」

???「無理はするなよ」


第七十二訓 花粉症はきついけどガスマスクはやりすぎじゃない?

スナックお登勢にて——

 

銀時が酒を片手にくつろいでいると、突然鼻がムズムズと刺激され、勢いよくくしゃみをした。

 

「ぶぇくしょん!!」

 

まるで爆弾が炸裂したかのような音が店内に響く。すると、それに呼応するように、お登勢もくしゃみを放った。

 

「はくしょん!」

 

まるで老舗の花火職人が競い合うかのように、二人のくしゃみが続いた。

 

「マイケルジャクソン!!」

 

突如飛び出した謎のワードに、銀時は鼻水を垂らしながら突っ込む。

 

「オイ、マイケルジャクソンはないだろ!それはお前くしゃみじゃーー」

 

「じゃねっとそん!!」

 

「マエダタイソン!!」

 

——こうして、店内はもはやくしゃみとボケが交錯するカオスな空間と化した。

 

「うるさいよアンタら!!静かにしてな!!」

 

彼女の怒声が銃声のように響き、場の空気を瞬時に制圧する。

 

その傍らで、タマが無機質な声で尋ねた。

 

「皆様、花粉症ですか?」

 

カウンターの隅で皿を拭いていたソラも話に加わる。

 

「今年の花粉は酷いらしいですからね〜」

 

お登勢は腕を組みながら、町の異常事態について語る。

 

「なんか町中のみんな花粉にやられてるらしいじゃないかい。どうなってんだいこりゃ」

 

すると銀時が、涙目になりながら語った。

 

「スギ花粉じゃねーらしいよ今年は」

 

「なんかどこだかの星の植物らしいブェークション!!」

 

彼はまるで火山の噴火のごとく盛大なくしゃみをし、テーブルの上の皿がガタガタと揺れる。

 

「あーチクショこの作品は…」

 

「フィクショーン!!」

 

「…です。実在の人物・団体・事件にはいっさい関係ありません」

 

タマが冷静に反応する。

 

「データに書き加えておきます。」

 

「この作品はーー」

 

「いるか!そんなデータ!!」

 

お登勢はカウンターをドンと叩き、苛立ちを露わにする。

 

「アンタも余計な気を回せる気力があるならさっさと借金返さんかい!」

 

銀時はどこか遠くを見つめながら答える。

 

「いや〜無理だよ。まだ家直ってねぇんだもん。あんな穴だらけの家に戻ったら花粉に死刑執行されちゃうよ」

 

彼の家——万事屋。そこには依然として巨大な穴が空いていた。

 

(片栗虎にロケランをぶち込まれてからというもの、修復の気配は一向になかった。)

 

キャサリン「トウブンノアイダハソトニデラレソウニアリマセンネ」

 

彼女はまるで機械仕掛けの猫のように、鼻をすすりながらつぶやいた。

 

その瞬間、彼女の手にあったティッシュの箱が空になり、虚無が訪れる。

 

「アッティッシュキレタァ。シンジンのガキ」

 

「はい。」

 

キャサリンが箱をソラに差し出しながら指示を出す。

 

「このティッシュ外の世界に出て買ッテコイヨ」

 

しかし、ソラは顔を引きつらせながら尋ねた。

 

「あの…さっき外に出られないって話どうなったんですか?」

 

その時——

 

ガラガラガラガラ

 

店の戸が開く音が響き、店内の全員の視線が入口へと集まる。

 

そこに立っていたのは——

 

「おいおい冗談じゃねぇよ、ただでさえ花粉がひでぇ時にーー」

 

ガスマスクをつけた少女。

 

彼女の姿は、まるで終末世界の生存者のようだった。全身を黒いコートで包み、その顔は完全にガスマスクで覆われている。

 

沈黙。

 

少女は何も言わず、ただじっとこちらを見つめていた。

 

銀時は、そのガスマスクを凝視しながら、渇望するような目をする。

 

「それ、俺にくれない?」

 

少女は、一瞬の間を置いた後——

 

ぶんぶんぶんぶんぶん!!!

 

首を左右に振りまくる。

 

その動きは、まるで命懸けで拒否するかのように激しかった。

 

銀時は顔をしかめ、肩を落としながらつぶやく。

 

「いやいやいや、そんな全力で拒否するゥ? 俺だって必死なんだけど!?……」

 

しかし、少女は再び首を振り、銀時の要求を断固として拒否する。

 

店内に重苦しい沈黙が漂う。誰もが目の前の異質な存在を見つめていた。

 

カウンターの向こう側で腕を組みながら、お登勢が眉をひそめる。

 

「誰だいこの子は……アンタの知り合いかい?」

 

銀時は片方の鼻をすすりながら、ガスマスクの少女を指差した。

 

「しらねぇよ。こんな『世紀末を生き抜いてます』的なノリの格好した厨二病患者。」

 

ガスマスクに覆われた顔からは何の感情も読み取れない。しかし、その奥に光る二つの瞳は、じっと銀時を見据えていた。

 

キャサリンが不意に口を開く。

 

「デモーー」

 

「坂田サンのコトジット見テマスケド?」

 

銀時は困惑しながら、鼻をすすりつつ少女を見返した。

 

「ねぇお嬢ちゃん、さっきから俺のこと見て何してんの?」

 

「……………」

 

微動だにしない。その姿は、まるで風もない深夜に静かにたたずむ案山子のようだった。

 

銀時は苛立ちを隠しきれず、頭をガシガシとかく。

 

「いや答えてくれないと困るんだけど〜」

 

「……………」

 

まるで世界の音がすべて消えたかのような静寂。

 

銀時の眉間に青筋が浮かぶ。

 

「なんか話せよ!!俺たちただでさえ花粉症で頭に血が昇って活火山活動中なんだけど!!噴火警戒レベル5くらいイライラしてんだけど!!」

 

その場にいた全員が一瞬「本当に噴火しそうだな……」と距離を取る。

 

しかし、少女は依然として無言。

 

そんな中、ソラがぽつりとつぶやく。

 

「もしかしてですけど………」

 

「あ?」

 

「その人、喋れないんじゃないですか?」

 

銀時の表情が一瞬で変わる。

 

「え? そうなの?」

 

すると——

 

ガスマスクの少女

 

ブンブンブンブンブン!!!!!!

 

まるで風車が嵐に吹き荒れるように、激しく頭を縦に振る。

 

それは、まるで「全身全霊で肯定してます!!!!!」と言わんばかりの動きだった。

 

少女の髪がふわりと揺れ、ガスマスクのレンズがわずかに光を反射する。

 

銀時はその様子を見て、鼻水をすすりながら言う。

 

「いや、全力すぎんだろ!? なんかこう、もうちょい落ち着いた頷き方とかできねぇの!?」

 

少女は止まらない。まるで壊れたオートマタのように、首を縦に振り続けている。

 

静寂の中で、ガスマスクの少女がふいに手を動かし始めた。

 

その指先は、まるで空中に見えない文字を刻むかのように滑らかに舞う。まるで風に乗せて秘密の呪文を唱えているかのようだった。

 

「えっと何それ……なんかの呪術?」

 

銀時は鼻をすすりながら、一歩後ずさる。

 

「いやちょっと待て、お前もしかして異世界から来た魔法少女? 今から俺に呪いでもかけんの?」

 

タマが冷静に応じる。

 

「銀時さま、それは手話です。」

 

銀時の顔が一瞬固まる。

 

「……手話?」

 

言葉の意味を咀嚼するように、彼は少女の指先に視線を戻した。

 

お登勢が腕を組みながら呆れたようにため息をつく。

 

「なんだいアンタ、そんなことも知らないのかい」

 

カウンターの向こうでキャサリンが鼻で笑う。

 

「マ、所詮ハタダノバカデスカラネ」

 

銀時がすかさず反論しようとしたが、その前にタマが話し始めた。

 

「ここでこんな小説を読みにくる暇な読者様方に分かりやすいように説明しますね」

 

彼女は機械的な精密さで淡々と語る。

 

「手話は、手指動作と非手指動作を同時に使う視覚言語の一種であり、音声言語と並ぶ言語──いわゆるボディランゲージの一形態のことです。」

 

銀時は腕を組みながら、じっくりと考え込む。

 

「つまりーー」

 

彼は一拍置いて、深刻そうな表情でつぶやいた。

 

「……聖闘士星矢のダンスシリーズの下位互換ってこと?」

 

その瞬間、店内の空気が凍りつく。

 

お登勢の目が鋭く光り、キャサリンが鼻を鳴らし、タマの目が僅かに暗くなる。

 

——そして、次の瞬間。

 

「馬鹿かアンタはァァァァァァァ!!!!」

 

お登勢の強烈な飛び蹴りが銀時の額に炸裂した。

 

まるで狙撃のごとく正確に打ち込まれたそれは、銀時の頭を後方へ吹き飛ばす威力を持っていた。

 

銀時は椅子ごと後ろに倒れ、「いでぇぇぇぇぇ!!」 と情けない悲鳴をあげる。

 

お登勢は腕を組んだまま、鬼のような形相で吐き捨てる。

 

「手話ってのはな、言葉を話せない人たちが使う立派な言語なんだよ!!アンタみたいな鼻水垂らしたバカが軽々しく言っていいもんじゃないよ!!」

 

銀時は額を押さえながら涙目で反論する。

 

「いやいやいや!!俺別にバカにしたわけじゃねーって!!ただ単に分かりやすく言い換えただけで——」

 

「その言い換えが致命的に間違っております。」

 

タマの冷静な一言が、銀時の心に深く突き刺さる。

 

その間も、ガスマスクの少女は変わらず静かに手を動かしていた。

 

彼女の指先は、まるで夜空に星座を描くように優雅で、それでいて何かを必死に伝えようとする強い意志を感じさせた。

 

銀時は改めて、真剣な表情で少女の手元に視線を向ける。

 

「……で、結局何を言いたいわけ?」

 

ガスマスクの奥に隠された瞳が、じっと彼を見つめる。

 

そして、少女の手がゆっくりと動く。

 

ここからはタマさんの翻訳版でお送り致します。

 

ガスマスクの少女『突然訪ねてごめんなさい。訳あってこのガスマスクも、会話も出来ない状態なので飲み込んでくれると助かります。』

 

その瞬間、スナックお登勢にいた全員の動きがピタリと止まる。

 

「「「「「………………」」」」」

 

銀時だけが、眉をひそめながら首を傾げた。

 

「いやどういうことォォォ!?」

 

ガスマスクが外れない? 喋れない?

 

まるで運命に抗うかのような設定のオンパレードに、銀時の脳内の処理能力がオーバーヒートしそうになっていた。

 

「ガスマスクが外れないって何!?喋れないって何!?あっ、もしかしてーー」

 

彼の脳裏に、一つの可能性がよぎる。

 

「文豪ストレイドッグスの銀って妹キャラに憧れてーー」

 

——ドガァ!!

 

突如として、少女の拳が銀時の顔面に炸裂した。

 

鋭い一撃が放たれた瞬間、銀時の体はまるで紙くずのように宙を舞う。

 

「恋柱!!」

 

一陣の風となり、彼は吹き飛ばされる。

 

カウンターの向こうから、お登勢が冷めた目で呟いた。

 

「全く、何やってんだいあいつはーー」

 

バーカウンターの下に突っ伏した銀時は、ピクリとも動かない。

 

お登勢は溜息をつきながら、再びガスマスクの少女へと視線を戻した。

 

「で、アンタここに何の用できたんだい?」

 

少女は沈黙したまま、ただ静かに立っている。

 

しかし——

 

ーーーーーーーーーーー

 

???「いいか姫。今回の任務は、我々の計画の妨げになるであろう坂田銀時のスパイだ。」

 

「出来るだけ多くの情報を得て帰ってくるんだぞ」

 

ーーーーーーーーーーー

 

その言葉が脳裏をよぎる。

 

少女の手は、ピクリと動きかけた。しかし、何も言わない。

 

「なんだい、ダンマリかい」

 

キャサリンが腕を組みながら鋭い目を向ける。

 

「コイツ怪シイデスヨ、お登勢さん!」

 

そう言った瞬間、彼女の目が店のレジへと移る。

 

「お前ニハ渡サナイ!ココノお金ハ私ノマンダ!!」

 

——バシッ!!

 

お登勢の平手打ちが、キャサリンの頭を正確に捕らえる。

 

「アンタのもんでもないんだよ」

 

キャサリンが頭を押さえながら「イテテ……」と涙目になっている中、少女はただ静かに立ち尽くしていた。

 

しかし、その沈黙の中に、小さな落胆が混じっているのを、誰も気づかなかった。

 

自分は突然現れた、それも覆面を被った怪しい存在。

 

所属する学園も不明。

 

そんな者の言葉なんて、絶対に信じない——

 

……そう、思っていた。

 

しかし——

 

「…………ふぅ。」

 

彼女はゆっくりと、ため息をついた。

 

そして、店内を見渡しながら、優しく口を開く。

 

「ソラ、タマ、なんでもいいから飲み物と食い物出してあげな。」

 

その言葉に、少女の肩がピクリと揺れる。

 

『!?』

 

予想外の展開に、彼女の思考が一瞬止まる。

 

ソラがにっこり笑いながら、元気よく答えた。

 

「はい!」

 

タマも静かに頷く。

 

「おまかせを」

 

お登勢はちらりと二人を見やり、釘を刺した。

 

「もんじゃは出すんじゃないよ。」

 

少女は、戸惑いながら手話を使う。

 

『私のこと、追い出さないの?』

 

お登勢は、少女の言葉をじっと見つめた。

 

やがて、ゆっくりと微笑み、力強く答える。

 

「何言ってんだい。人には一つや二つくらい、話せない秘密くらいある。」

 

「それにアンタ、あんま飯食ってないだろう? 食べてきな。食べ盛りのうちに。」

 

少女の中に、何かが静かに揺らぐ。

 

まるで長年閉ざされていた扉が、ほんの少しだけ開かれたような感覚だった。

 

しかし、その温かい雰囲気をぶち壊すように——

 

「ババア俺には酒とイチゴ牛乳をーー」

 

「つけ! アイツに付けとくから金の心配もしなくていいよ。」

 

「何勝手に決めたんだクソババア!!」

 

 

しばらくしてテーブルの上には、湯気を立てる白飯と、澄んだ水をたたえたコップが置かれていた。

 

ガスマスクの少女は、その光景をじっと見つめたまま動かない。

 

……こんな食事、どれくらいぶりだろう。

 

いや——もしかしたら、こんなにまともな飯を食べるのは、生まれて初めてかもしれない。

 

彼女の世界では、食事とはただの「生存のための行為」にすぎなかった。

 

乾燥しきったパン、砂粒が混じった硬い塊。歯を立てればパキリと音を立て、噛むたびに口の中の水分を根こそぎ奪い取っていく。喉を通るたび、ひび割れた地面に水を垂らすように痛みが走った。

 

水すら、決して清らかなものではなかった。濁った液体をろ過もせずに啜る日々。口に含むたび、腐った金属のような味が広がり、胃の奥から拒絶するような吐き気が込み上げる。

 

それが、彼女にとっての「食事」だった。

 

しかし——

 

「……っ」

 

目の前にあるのは、あまりにも異質なものだった。

 

白米はふっくらと炊き上がり、湯気が立ち昇っている。米粒一つ一つが艶やかに光り、まるで純白の宝石のように輝いて見えた。

 

水は透き通っており、曇りひとつない。グラスを傾ければ、光が反射して小さな虹が揺れるほどだった。

 

少女は、まるで幻を見るように震える手で箸を取り、そっと白飯をすくった。

 

口に入れた瞬間——

 

「……!!」

 

熱が、広がる。

 

それは、今まで食べてきたものとはまるで違う、「生きている食べ物」だった。

 

ほのかな甘みと、柔らかくほどける食感。舌の上で温かさが広がり、胃へと流れ込むその感覚は、まるで冷え切った体を優しく包み込む毛布のようだった。

 

少女は無意識のうちに、もう一口、もう一口と箸を動かしていた。

 

——止まらなかった。

 

まるで何かに取り憑かれたように、彼女はがむしゃらに白飯を口に運んだ。

 

炊き立ての米が、乾いた心と体を満たしていく。

 

コップの水を一気に流し込む。

 

喉を通った瞬間、少女の体が小さく震えた。

 

冷たく、それでいて滑らか。雑味もなく、まるで清流そのもののように体の隅々まで染み渡る。

 

ただの水なのに、こんなにも美味しいものだったのか——。

 

気づけば、彼女の目元が熱を帯びていた。

 

何も考えず、ただがむしゃらに食べた。

 

食べて、食べて、食べて——

 

銀時やお登勢、キャサリンたちは、黙ってその様子を見守っていた。

 

そして、少女が一息ついたあと少女は、ゆっくりと顔を上げた時お登勢が静かに言った。

 

お登勢の目には、優しさが滲んでいた。

 

「アンタが今まで何を食べてきたのかは知らないけどね。」

 

「食事ってのは、生きるためだけにするもんじゃないんだよ。」

 

「人間ってのは、食って、笑って、そんでまた食って……そうやって生きてくもんだよ。」

 

少女の喉が、小さく鳴った。

 

その言葉が、どこか心の奥深くに響いた気がした。

 

だが、彼女はまだ何も言えない。

 

だから、再び箸を持ち、黙って食べ続けた。

 

銀時は腕を組みながら、ボソリと呟く。

 

「本当にお前……どんなとこから来たんだよ。」

 

少女の手が、ピタリと止まる。

 

沈黙が落ちた。

 

彼女は、箸を握ったまま、ゆっくりと手話をする。

 

ガスマスクの少女『それもーー言えない。』

 

銀時は、深く息を吐いた。

 

店内に、静かな時間が流れていた。

 

カウンターの向こうから、お登勢がじろりと銀時を睨んだ。

 

「銀時」

 

その声音は、まるで刀を鞘から半分だけ抜いたような鋭さを帯びていた。

 

銀時は、気怠そうに目を細めながら返す。

 

「ああ!?なんだよババア」

 

お登勢はぐいと腰に手を当て、一歩前に踏み出す。

 

「この子を連れて街でも歩いてきな。」

 

銀時の表情が一瞬にして凍りつく。

 

「……おいババア、ふざけてんの?」

 

彼は眉間に皺を寄せ、震える手で自分のマスクを指差した。

 

「今の外はな、魔界そのものなんだよ!?花粉が空を覆い尽くし、呼吸するだけで即死レベルの地獄!!」

 

「それなのに俺を外に放り込もうってのか!?なんならガスマスクのガキは無傷で、俺だけ生身のまま突撃しろってか!?これマジでサバイバルホラーだからねコレ!?」

 

銀時の怯えっぷりは、まるで極寒の海に放り込まれた猫のようだった。全身を震わせ、わずかでも外気を感じたら即座に死を悟るとでも言わんばかりの顔をしている。

 

しかし、お登勢はそんな彼の狼狽を一蹴するように、ドスの利いた声で言い放った。

 

「銀時、これは依頼だよ。腐っても万事屋(シャーレ)やってんなら引き受けなこの依頼。」

 

その瞬間、銀時は口を開けかけたまま固まった。

 

彼女の目は鋭く、ギラリと光っていた。まるで獲物を仕留める寸前の猛禽類のように——。

 

それに、銀時はすぐに察してしまったのだ。

 

これは「交渉」ではなく「宣告」だと。

 

それでもなお、彼は抵抗を試みる。

 

「不公平だろ!?このガキはガスマスク装備で、花粉の“か”の字も受け付けないATフィールド張ってんのに!!」

 

「俺はこんなペラッペラな紙装甲のマスク一枚で突撃しろって!?バカか!?銀さんの頭が花粉で爆発しちゃうって!!」

 

まるで処刑を待つ囚人のように必死に訴える銀時。

 

しかし、お登勢は悠然とした笑みを浮かべ、まるで最後のトドメを刺すかのように——

 

「一ヶ月分の家賃滞納の借金及び娘のツケのチャラ」

 

その一言を放った。

 

その瞬間、銀時の脳内で警報が鳴り響いた。

 

——家賃滞納分、ゼロ。ツケ、ゼロ。未来、希望に満ち溢れる。

 

彼は目をカッと見開き、すぐさま直立不動の姿勢を取り——

 

「快く引き受けさせていただきます!!!」

 

ビシッと敬礼まで決め込んだ。

 

——あまりの変わり身の早さに、店内の空気が一瞬沈黙した。

 

「ちょろい」

 

「ちょろいです」

 

「チョロいデスネ」

 

三人の冷静すぎるツッコミが飛び交う中、銀時は気にも留めずガスマスクの少女の方を向いた。

 

少女はそんな一連のやり取りを、静かに見つめていた。

 

(……この人、本当に変な人だ。)

 

銀時の表情はさっきまでの必死な形相から一変し、なぜか妙にキラキラしていた。まるで人生の勝者になったかのような顔をしている。

 

ガスマスク越しの少女の目が、微妙に呆れた色を帯びた。

 

彼女の中で、「坂田銀時」という人物に対する認識が、「なんだかよくわからない変な大人」へと書き換えられた瞬間だった。

 

銀時のくしゃみが外に響き渡る。

 

「ブェークション!!」

 

花粉に侵された彼の顔は、今にも崩れ落ちそうなほど疲弊していた。目は充血し、鼻は完全にキャパオーバーで機能停止状態。涙目になりながらガスマスクの少女を振り返る。

 

「で、どうするよ。ガスマスク。」

 

少女がきょとんと首を傾げる。

 

『私?』

 

銀時は白けた顔でため息をついた。

 

「お前以外の誰がガスマスクなんてガチ装備してると思ってんだよ。見ろよ、ここにいる連中は全員、生身のまま地獄の業火……もとい花粉の猛攻を受けてるんだぞ。」

 

店内ではキャサリンはティッシュの山に埋もれ、ソラは目をこすりながら鼻水をすすっている。タマはロボットのため無傷だが、それが逆に腹立たしい。

 

ガスマスクの少女は、少し考えるように手話を交えた。

 

『………何があるのか分からない』

 

銀時はしばらく彼女を見つめた後、肩をすくめた。

 

「ねぇ、本当にお前どこから来たんだよ?」

 

少女は黙る。

 

その沈黙が、妙に重かった。

 

銀時は、ふっと視線を逸らし、深々とため息をついた。

 

「…………はぁあ」

 

そして、軽く髪をかきあげながら言った。

 

「ついてこい」

 

———

 

パフェの店

二人がたどり着いたのは、こぢんまりとした甘味処だった。

 

店内に入ると、ふわりと甘い香りが鼻をくすぐる。チョコレートの濃厚な香り、バニラの優しい甘さ、フルーツの爽やかな匂いが混ざり合い、まるで夢の中にいるような心地にさせる。

 

ショーケースには、宝石のようなケーキがずらりと並び、カラフルなゼリーやシュークリームがまるで客を誘惑するかのように輝いていた。

 

少女の目が、かすかに揺れる。

 

この光景は、あまりにも——自分のいた世界とかけ離れていた。

 

銀時は適当にメニューを開くと、店員に声をかけた。

 

「すいません、特盛パフェひとつ。」

 

少女が驚いたように手話をする。

 

『そんなに食べられない』

 

「は?お前の分じゃねぇよ。俺の分だよ。」

 

『……じゃあ、私は?』

 

銀時はニヤリと笑うと、メニューをトンと指で叩いた。

 

「お前は、これ。」

 

少女が視線を向けると、そこには——

 

「チョコバナナパフェ」

 

彼女はしばらくじっとメニューを見つめた後、無言で銀時を見た。

 

銀時は椅子の背にもたれかかりながら、気怠げに言う。

 

「花粉にやられた時はな、甘いもんが一番効くんだよ。」

 

「……まぁ、ただ俺が食いたかっただけってのもあるけどな。」

 

注文を終えると、店内の静かな空間に心地よいクラシック音楽が流れ始める。

 

ほどなくして、店員がパフェを運んできた。

 

「お待たせしました〜特盛チョコレートパフェと、チョコバナナパフェです。」

 

テーブルに置かれた瞬間、甘い香りがふわりと広がる。

 

特盛パフェは、グラスの中にぎっしりと詰まったチョコレートアイスと生クリームが美しく層を成していた。トッピングには削られたチョコレートが散りばめられ、まるで芸術作品のように仕上がっている。

 

一方のチョコバナナパフェは、グラスの縁に沿って並べられたバナナスライスが特徴的だった。バナナの優しい甘みと、ほろ苦いチョコレートソースが絡み合い、絶妙なバランスを作り出している。

 

ガスマスクの少女は、そっとスプーンを持ち、バナナとアイスを一緒にすくう。

 

恐る恐る口に運ぶと——

 

「……!」

 

口の中で、甘さと冷たさが一気に広がった。

 

バナナの自然な甘みがチョコの濃厚さと絡み合い、まるでハーモニーを奏でるように滑らかに溶けていく。

 

それは、彼女にとって初めての感覚だった。

 

今まで食べてきたものとは、あまりにも違う。

 

——こんなに優しい味が、世の中にはあったのか。

 

銀時はそんな少女の反応を横目で見ながら、特盛パフェにスプーンを突っ込んだ。

 

「……な?美味いだろ。」

 

少女は言葉を発することなく、小さく頷いた。

 

その仕草がどこか幼くて、銀時は思わず笑ってしまう。

 

少女が再びパフェを口に運ぶ。

 

その表情は、どこか柔らかくなっていた。

 

銀時はそんな彼女を見ながら、ぽつりと呟いた。

 

「……そういや、ガスマスク。」

 

「お前、笑うことあんのか?」

 

少女の手が止まる。

 

しばしの沈黙の後——

 

『…………わからない』

 

静かに、手話でそう答えた。

 

銀時はそれを見て、ふっとため息をついた。

 

「……ったく。」

 

「甘いもん食っても笑えねぇとか、人生損してんぞ、お前。」

 

そう言って、銀時は大きくスプーンをすくい、パフェを頬張った。

 

それはまるで、「お手本を見せてやる」と言わんばかりの食いっぷりだった。

 

ガスマスクの少女は、そんな銀時をじっと見つめた。

 

彼の言葉が、どこか胸に引っかかる。

 

「笑うこと」

 

それがどういうものか、彼女にはまだわからなかった。

 

でも——

 

甘いものを食べていると、不思議と心が少しだけ温かくなる気がした。

 

それが、「笑うこと」の始まりなのかもしれない——。

 

少女は、再びスプーンを口に運ぶ。

 

銀時はそんな彼女をちらりと見て、何も言わずにパフェを食べ続けた。

 

外は相変わらず花粉の嵐だったが、店内だけはどこか穏やかな時間が流れていた。

 

「さてと、次はーー」

 

銀時が立ち上がり、気だるげに伸びをしたその瞬間だった。

 

「おや、万事屋さんではないですか?」

 

その声が耳に届いた瞬間、銀時の全身が硬直した。

 

「ビクゥ!!」

 

不吉な予感が全身を駆け巡る。

 

恐る恐る声のした方向へと視線を向けると——

 

そこに立っていたのは、まるで地獄の門番のような異形の男。

 

2メートルを超える巨体は岩のようにごつごつとしており、戦いの歴史を刻んだかのような無数の傷が皮膚に走っている。

 

しかし、その皮膚の色は異様な**“緑”**。

 

まるで苔むした墓石のようにざらつき、光を反射しないその肌。

 

額には鋭く湾曲した二本の黒い角が突き出ており、その存在感は否応なく目を引く。

 

漆黒のライオンのような長髪と、絡み合うように生えた長い髭が、その異形の男の獣性をさらに際立たせていた。

 

口元からは、牙のように鋭い犬歯が二本、獲物を求めるかのようにのぞいている。

 

だが、何よりも恐ろしいのは、その目だった。

 

通常、白目であるはずの部分が、禍々しい**“漆黒”**に染まり、そこに浮かぶ瞳は、血のように深い紅。

 

まるで奈落の底から生まれ落ちたかのようなその眼差しは、人の理性を容易く飲み込みそうなほどの不気味さを放っていた。

 

この世のものとは思えない存在——

 

その名は、

 

「ヘドロ」。

 

ガスマスクの少女も、思わず震え上がる。

 

小さな肩が微かに揺れ、彼女の手がテーブルの端をぎゅっと握りしめる。

 

銀時は喉を鳴らし、顔を引きつらせながら、無理やり笑顔を作る。

 

「いやーこんなところでお会いするとは奇遇ですね〜僕たちもびっくりですよ。ハハハ……」

 

その笑みは、もはや恐怖に打ち震える獲物の愛想笑いでしかなかった。

 

しかし、ヘドロは意にも介さず、ニッコリと笑った。

 

その笑顔が、さらに恐怖を煽る。

 

「それは私も同じこと。新天地でこうしてまた万事屋さんに会えるなんてーー」

 

ふと、ヘドロの視線が銀時の隣の少女に移る。

 

銀時の背筋がピンと張る。

 

「おや?そちらの方は?」

 

ヘドロの紅い瞳が少女をじっと見つめる。

 

まるで、新たな獲物を品定めするかのように——。

 

ガスマスクの少女は、まるで凍りついたように動けない。

 

銀時は、無意識のうちに少女の前に立ちふさがるように一歩前に出た。

 

「今、俺、この子が今まで人生楽しめなかったらしいから生きていて楽しいってことを実感させているところでして」

 

できる限り自然な口調を装う。

 

だが、内心では心臓が悲鳴をあげていた。

 

(ヤバイヤバイヤバイ!!! なんでこんな悪魔が普通に街中を歩いてんだよ!!)

 

ヘドロはゆっくりと頷き、満足げに微笑んだ。

 

「それはそれは、流石万事屋さんだ。いつも街の人たちの為にーー」

 

「私が出来るのはせいぜい兄弟たちと花の美しさを皆さんに伝えることしか出来ませんから」

 

(花の美しさじゃなくて恐怖を教えてんだろこの人ォォォ!!)

 

銀時は心の中で絶叫する。

 

何より、そのビジュアルで「花屋」と言われても脳が処理を拒否する。

 

鋭い牙、赤黒い瞳、異様な皮膚の色——

 

(どう見ても花より恐怖の種を撒き散らしてるって!!)

 

ガスマスクの少女も怯えたまま、身を縮めている。

 

それを見た銀時は、冷や汗をかきながら何とか話題をそらそうとする。

 

「へ、へぇ兄弟。みんなで花屋を?」

 

ヘドロは満足げに頷いた。

 

「ええ、それぞれ各地に散らばって、それぞれで花屋を営んでいます。」

 

銀時は、引きつった笑みを浮かべながら、乾いた唾を飲み込む。

 

(全国に散らばってんのかよ!? キヴォトスはもう終わりだよ!!終焉迎えちゃってるよ!!)

 

彼の頭の中では、新聞の一面が浮かんでいた。

 

「謎の花屋集団『ヘドロブラザーズ』、全国に進出」

 

「花粉より怖い!? 街を恐怖に陥れる花屋たち」

 

「緑色の皮膚の花屋、異常繁殖中!!」

 

しかし、ヘドロは本当に純粋に花を愛しているようだった。

 

その表情はどこか満足げで、彼にとって花とは、純粋に人々へ幸福を届ける手段なのだろう。

 

問題は、その外見が、幸福とは真逆の恐怖を与えているということだが。

 

銀時はガスマスクの少女をちらりと見た。

 

彼女は未だに怯えたままだった。

 

(ダメだこりゃ。このままじゃトラウマになる)

 

銀時は無理やり笑顔を作りながら、会話を切り上げることにした。

 

「いやぁ、素敵なお仕事ですね〜。俺も花とか好きっすよ、ええ。ほんとに。」

 

「じゃ、俺たちこれから予定があるんで! すいませんが失礼しますね!!」

 

そう言うと、銀時はガスマスクの少女の手を引っ張り、その場から逃げるように歩き出した。

 

このまま振り返らずに駆け出せば、きっと何とかなる——!

 

しかし、その願いもむなしく、

 

「待ってください!」

 

ドカァン!!

 

轟音が響き渡った。

 

銀時は思わず悲鳴をあげ、全身が震え上がる。

 

まるで爆弾が炸裂したかのような衝撃。

 

(うわあああああ!! ついにコイツ、俺たちを始末する気かぁぁぁ!?)

 

恐る恐る振り返ると——

 

そこにいたのは、相変わらず不気味な笑みを浮かべるヘドロだった。

 

「いやぁ、危なかった。」

 

ヘドロはゆっくりと腰をかがめ、地面を指差した。

 

そこには、小さなてんとう虫が、のんびりと這っている。

 

「危うく、てんとう虫を踏むところでした。」

 

ヘドロは慈しむようにその小さな昆虫を手に乗せ、優しく草むらに逃がす。

 

そして、満足げに微笑んだ。

 

「殺生はいけない。」

 

銀時は生まれて初めて、血の気が引くという感覚を味わった。

 

「は、はいそうですね……」

 

(毎回思うけど何なのこの人!? 見た目、百匹くらい殺してきた鬼なのに、やたらピュアすぎるだろ!?)

 

そんな銀時の混乱をよそに、ヘドロはふと思い出したように手を叩いた。

 

「そうだ! 人生の楽しみを教えているのでしたら、私の花屋に来ませんか?」

 

「好きな花、なんでもプレゼントしますよ。」

 

銀時の背筋に冷たい汗が伝う。

 

(無理無理無理!! こんな恐怖の花屋、ホラー映画の舞台じゃん!!)

 

ちらりと横を見ると、ガスマスクの少女も、明らかに**「行きたくない」**というオーラを全身から放っていた。

 

彼女が静かに首を横に振ろうとした、その瞬間——

 

ガシッ!!

 

銀時が肩を鷲掴みにした。

 

「ここは堪えろォォォ!! お前がまだ人生を歩みたかったらな!!」

 

少女は小さく肩を震わせ、静かに頷いた。

 

(絶対行きたくないけど、ここで逆らったら確実に“摘まれる”)

 

ーーー

 

「いやー驚きましたよ。まさかーー」

 

「ここでも万事屋さんちとお隣さんだったなんて」

 

銀時の中で、全ての点が線で繋がる。

 

「やっぱり」

 

彼の脳裏に、これまでの異常気象がフラッシュバックする。

 

春になれば、毎年のごとくこの街に襲いかかる異常な花粉量。

 

鼻水の洪水、目のかゆみ、果てには呼吸困難で倒れる者まで出る始末。

 

この数年、花粉の猛威は増すばかりだった。

 

そして今年は——

 

「やけに効果やべぇなって思ったんだよ!!」

 

銀時は恐る恐る目の前の「花屋」を見上げる。

 

店先には、色とりどりの花が**モンスターのごとく生い茂り、**異様なエネルギーを放っていた。

 

まるで、ジャングルの奥地から発掘された未知の植物群のように、異常なほどの生命力を誇っている。

 

見たことないような花々何不気味な雰囲気を出していた。

 

周囲には、尋常ではない濃度の花粉が舞っており、それがゆっくりと人々の鼻腔へと侵入していく。

 

銀時は確信した。

 

「この花粉の正体、お前の花が原因かいィィィィ!!!」

 

ヘドロはそんな銀時を気にせずに花の話を進める。

 

「ここの花たちは特別に育てたものですからね!生き生きしてるでしょ」

 

「薬草としても使えますし、何より——花粉(生命)の広がりが素晴らしいんですよ。」

 

銀時の中で、すべてが合致する。

 

(コイツ、絶対世界滅ぼしに来ただろ!!!!)

 

(絶対に “無自覚” でやべぇことしてる奴の目だよ!!!!)

 

(俺たち、確実にこの “死の花畑” に誘い込まれてるよ!?)

 

ヘドロは満面の笑みを浮かべながら、店の扉を開いた。

 

「さあさあ、中へ。」

 

「好きな花を選んでください。」

 

銀時はガスマスクの少女をちらりと見る。

 

少女は、完全に**「助けて」**という目をしていた。

 

銀時は深く息を吐き出し、決意を固めた。

 

(くそっ……ここで花を選ばなかったら、どうなるか分からねぇ……!)

 

(腹を括るしかねぇ!! ここは “地獄の花屋” だ!!)

 

二人は恐る恐る、一歩を踏み出した——。

 

ガスマスクの少女は、静かに花を眺め続けていた。

 

ガラス越しに差し込む淡い陽光が、彼女の肩に柔らかく降り注ぎ、まるで花々と彼女を繋ぐ細い糸のように光を散らしている。

 

銀時は、そんな彼女を横目で見ながら、ヘドロに問いかけた。

 

「ヘドロさん、やっぱここって宇宙産の花ってもんも扱ってたりー?」

 

ヘドロは嬉しそうに頷く。

 

「えぇ、こちらでは宇宙産、地球産・キヴォトス産まで、ありとあらゆる種類の花々を売っていますよ。」

 

銀時の脳内に、警報のベルが鳴り響いた。

 

(キヴォトス産って何ィィィィ!?)

 

この世には、地球とキヴォトスってほぼ同一扱いなんじゃないの!?初めて聞いたよキヴォトス産って言葉!!

 

銀時の混乱をよそに、ヘドロは指をさす。

 

「たとえばほらーーあの、他の草花に“種”と称して銃のように乱射しているのがキヴォトス産ですよ。」

 

銀時の顔が引きつる。

 

(生徒だけじゃなくて草花の治安も悪いんかいィィィィ!!)

 

店の奥では、見慣れぬ植物が種子を弾丸のように**バシュン! バシュン!**と飛ばしていた。

 

まるで、戦場のような光景。

 

(どんだけ世紀末!? 舞台が北斗の銀みたいになっちゃうよ!!)

 

ヘドロはさらに続ける。

 

「ちなみに名前は『ゲヘナゲヘゲへトリツブス』です。」

 

銀時の心は大爆発した。

 

(ここでもトリニティーと仲悪いのォォォ!?)

 

(マジでこんなんで大丈夫!? エデン条約なんか始まろうとしてるけど、こんなんじゃ「Hell条約」の始まりだよ!?)

 

(地獄に変わっちゃうよ!!)

 

ーーー

 

そんな銀時が一人で悶絶している間も、ガスマスクの少女は真剣に花を選び続けていた。

 

ふと、彼女の手が止まる。

 

ヘドロが優しく問いかけた。

 

「どうかされましたか?」

 

ガスマスクの少女は、両手を使って静かに手話を紡ぐ。

 

『親友や家族に渡すのに、いい花って……』

 

ヘドロの顔に柔らかな微笑みが浮かぶ。

 

「手話ですか、若いのにすごいですね〜。」

 

「あっと、いけない。まずは質問に答えてあげないと。」

 

「そうですね〜」

 

ヘドロは店内を歩きながら、いくつかの鉢植えを指差して説明し始める。

 

「まずは『カランコエ』。花言葉は「たくさんの小さな思い出」。誰でも簡単に育てられますよ。」

 

小さな星のような花が、鮮やかなオレンジ色に輝いている。

 

「あとは『クロッサンドラ』。花言葉は「友情」「仲良し」。」

 

可憐なオレンジ色の花が、太陽の光を吸い込むように咲き誇っていた。

 

「『サンザンクロス』。花言葉は「願いを叶えて」「まだ見ぬ君へ」「光輝」「遠い思い出」。」

 

薄紅色の花が、風に揺れながら優しく舞っている。

 

「家族というなら『サルビア』もオススメですよ。」

 

深い赤に染まった花が、まるで温かい愛情そのもののように揺れていた。

 

ガスマスクの少女は、しばらく悩んだ後、慎重にいくつかの花を選ぶ。

 

ヘドロは優しく頷いた。

 

「いい花を選びましたね。大事にしてください。」

 

ーーー

 

銀時が、鼻をかみながら声をかける。

 

「おーい、決まったか〜?」

 

ヘドロは、ふと思いついたように手を叩いた。

 

「あっそうだ! 万事屋さんにもお礼の花を一つプレゼントしてはどうですか?」

 

「今回は、花言葉などは気にせずに。」

 

ガスマスクの少女は、少し考えてから、一輪の花を手に取った。

 

それを、そっと銀時に差し出す。

 

「おっ、花?」

 

彼女は手話で言った。

 

『今日はありがとう。生きているって実感を、初めて持つことができた。』

 

『またーー』

 

銀時は、少女の手を取ろうとした瞬間、彼女が踵を返そうとするのを見て、慌てて声をかけた。

 

「おい! ちょっと待ちな」

 

少女が驚いたように振り返る。

 

銀時はポケットから、一枚の紙を取り出し、それを彼女に手渡した。

 

名刺だった。

 

「困った時には連絡するなり、来るなりしな。」

 

「俺たちは、いつでも歓迎してやるからよ。」

 

少女は少し驚いたように銀時を見つめた。

 

その視線は、どこか戸惑いと、ほんの少しの温かさを含んでいた。

 

静かに頷くと、彼女は再び背を向け、歩き去っていく。

 

銀時は、名残惜しげにその背中を見送りながら、ふと、自分の手の中に残された花を見つめた。

 

ヘドロが、その花をちらりと見て、静かに呟く。

 

「万事屋さん。その花はーー」

 

銀時は、首をかしげる。

 

「ん? この花がどうかしたのか?」

 

ヘドロは、少し遠い目をして言った。

 

「その花は『カモミール』です。」

 

「花言葉は『逆境に耐える』『逆境で生まれる力』。」

 

銀時の目が、少しだけ大きくなる。

 

ヘドロは続けた。

 

「彼女、万事屋さんのことを知っていたんでしょうか……」

 

銀時は、しばらくその花を見つめていたが、ふっと力を抜き、ゆるく肩をすくめる。

 

「さぁな。」

 

空を見上げると、いつの間にか花粉が落ち着いていた。

 

鼻がムズムズしない春の日差しが、銀時の髪を揺らしている。

 

彼は、カモミールをそっと袖にしまい込んだ。

 




大型予告編



エデン条約篇開幕!!
ナレーション「これは、銀春史上最も破天荒で、最も常識をぶち壊す物語――」

================
銀時「えぇっと、これからー」

ドドドドドドドドドド!!!!(謎の爆発音)

「「「「「………………」」」」」

銀時「水着でスイミーと会話してもらおうと思いまーす」

桂「拍手ゥゥゥ!!」

「「「「「………………」」」」」

コハル「いやどういうことォォォ!!?」

================
ナレーション「戦場はトリニティ!銀時、教師になる――!?」

ナギサ「銀時先生、あなたには補習授業部の担任をやってほしいのです」

ナレーション「その任務――トリニティの落ちこぼれ共を指導すること!!」

ナギサ「トリニティーのゴミーー追加指導が必要な子羊のために」

銀時「今ガッツリと心の声ゲロったのが聞こえたけど……」

================
ミカ「ナギちゃんも困るよね〜あんな言い方じゃ分からないって」

銀時「何が言いてぇんだよ。」

ナレーション「忍び寄る裏切り者の影!!」

ミカ「裏切り者教えてあげよっか?」

================
ナレーション「そして、奴らもやってきた……!」

近藤「ゴリラ13!」

沖田「ドS13!」

「「準備完了!!」」

土方「なんの準備だァァァァァ!!」

片栗虎「栗子ォォォォォォ!!」

================
ヒフミ「皆さん真面目にしてください!!」


ヒフミ「テストに合格しないとーー」

「みんな学校から追放されちゃうですよ!!」

ナレーション「試験に落ちれば、学校追放――!?」

銀時「え?」

================
ナレーション「そして次なる戦場は……地獄!」

ハナコ「ヒフミさん、次の試験会場はーー」

「ゲヘナです」

アズサ「してやられたな」

ナレーション「ナギサの野望が、銀時たちを追い詰める――!」

ナギサ「すいませんね先生。私は私のやり方を貫き通します」

コハル「これじゃもう勝ち目がーー」

栗子「何を諦めてるのでござりまするか?」

「ここにはーー」

「マヨラー星の王子とその部下の方がいるじゃないですか!」

土方・銀時「いやそっちィィィィ!!」

================
ナレーション「戦場はついに、人外魔境へ――!」

お妙「あなたがキヴォトスのお姫様なら私はキヴォトスの女王様」

「ひれ伏しなさい!私がキヴォトスの頂点に立つものよ」

ミカ「アハハ⭐︎無理無理⭐︎」

ドカァン!!!辺りが吹き飛ぶ

================
ナレーション「そして、因縁の対決が幕を開ける!!」

高杉「お前らはーーただの道具にすぎねぇよ」

銀時「高杉ィィィィ!!」

================
ナレーション「銀魂×ブルーアーカイブ――史上最もカオスな長編ストーリー!!」

ナレーション「勝つのは補習授業部か!?それとも、ティーパーティか!?いや、どっちも勝たねぇ気がする!!」

ナレーション「《エデン条約》、近日公開!!」



銀時・桂「レロレロレロレロレロレロ」


イオリ「へ、へ、………」


ナレーション「最後の何ィィィィ!?」

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
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