透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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銀時からのお願い 部屋を明るくして画面から離して脊椎伸ばして読むんだぞ〜


第七十四訓 ティーパーティーってお菓子やらなんやら出るけど日本の茶会と似ていろいろ作法があって安易に楽しめないのが実情だから安易にしようと思えない

――トリニティ総合学園。

 

そこはキヴォトスにおいて、最も格式高く、秩序を重んじる学び舎。

白亜の校舎が並ぶ清らかな街並み、優雅に祈りを捧げる生徒たち、そして学園の頂点に君臨する**「ティーパーティ」**。

 

柔らかな陽光が降り注ぎ、静謐な空気に包まれたテラス。

 

そこには、白を基調とした優雅なティーテーブルが鎮座していた。

繊細な彫刻が施されたティーカップ、香り高い紅茶を注ぐティーポット、

その周りを彩るのは、美しく並べられた手作りの焼き菓子とふわりと甘いロールケーキ。

 

控えめに飾られた、香りのない白い花々がこの茶会の格式を象徴するように佇んでいる。

 

そんな中、その格式を破壊するかのような、軽やかな声が響いた。

 

「ねえナギちゃ〜ん」

 

無邪気な声が、テラスの静寂を破る。

 

「……」

 

無視するナギサ。

しかし、それでもめげずに、さらに距離を詰めて声を掛ける。

 

「ナギちゃんてば〜〜!」

 

ついに、観念したようにナギサは小さくため息をつき、

面倒そうに視線を上げた。

 

「…なんですか、ミカさん」

 

ナギサの対面に座る少女――聖園(みその)ミカは、満面の笑みを浮かべていた。

 

彼女の淡い桃色の髪が陽光に照らされ、まるで天使のような印象を与える。

しかし、その天真爛漫な微笑みの裏には、誰よりも鋭く、

そして人を試すような"意図"が込められているのを、ナギサは知っていた。

 

トリニティ総合学園・ティーパーティ。

 

それは、この学園における絶対的な権力を持つ生徒会であり、

秩序と格式を重んじるトリニティの象徴でもある。

 

その中枢にいるのが、この場に座る二人。

 

ナギサ――桐藤(きりふじ)ナギサ。

冷静沈着であり、知性と品格を兼ね備えた生徒会長みたいな人。

 

そして、ミカ――聖園ミカ。

 

言うまでもないゴリラである。

 

二人は、いつものようにティーテーブルを囲んで座っていた。

 

ナギサの背筋は自然と伸び、テーブルマナーに忠実な所作でティーカップを持つ。

一方のミカは、対照的に気楽に椅子に身を預け、足を軽く揺らしながら座っている。

 

「やっと反応してくれた! 無視なんてひどい……傷ついちゃうぞ?⭐」

 

ミカは、どこか拗ねたような口調で言うが、

その瞳には悪戯っぽい光が宿っている。

 

「……それは申し訳ありません。しかし、これからシャーレの先生との会談なんですよ? 少しは緊張感を持ってください」

 

ナギサが眉を寄せ、静かに忠告する。

 

しかし、ミカはどこ吹く風といった様子で、肩をすくめるだけだった。

 

「そんなに緊張しなくても大丈夫だって〜」

 

「何が大丈夫なんだか……この茶会に、エデンの存続がかかっていると言っても過言ではないのですよ?」

 

ナギサの言葉に、ミカは少しだけ目を細めた。

 

「協力か〜……本当にやってくれるのかな?」

 

「……どういう意味です?」

 

ミカは、少し身を乗り出し、ナギサを覗き込むようにして言った。

 

「だってさ? 話によればその先生………ゲヘナの子とも結構仲がいいみたいじゃん?」

 

その瞬間。

 

ナギサの手が、ピタリと止まる。

 

ミカの口調が、鋭くなる。

 

 

それは、火と水ほどに相容れない存在。

 

そして、その確執の中でミカは最もゲヘナを嫌っている一人だった。

 

ゲヘナの名前を出すだけで、彼女の表情は明らかに険しくなる。

ナギサは、それを理解していた。

 

「ゲヘナの子なんかと仲良くしてる先生……ほんとに私たちに協力してくれると思う?」

 

「……」

 

「あっ、もしくは協力すると見せかけて、トリニティの情報を盗んでゲヘナに――」

 

「ミカさん」

 

ピシャリ。

 

ナギサの声が、ミカの言葉を遮る。

 

先ほどまでの穏やかなトーンとは違う、

冷たく、鋭い声。

 

「それ以上は……わかりますね?」

 

それ以上、その話題を続けるな。

 

そう言っているのが、はっきりと伝わる。

 

ミカはナギサをジト〜っと睨むように見つめると、

ふて腐れたように、ティーカップを手に取り、一口。

 

「ぶー…わかりましたよーだ」

 

ナギサは静かに目を閉じ、小さくため息をついた。

 

「……頼みますよ。せめて先生の前でその言動は控えるように」

 

「でもでも〜ー」

 

ナギサは、理解していた。

 

ミカがどれほど"危うい"存在であるかを。

 

だからこそ、彼女が暴走しないようにセーブし続ける。

それが、ナギサの役目だった。

 

ミカは、手元の報告書を取り上げ、ペラリと一枚めくる。

 

「この報告書ってさー…どう考えても嘘っぱちでしょ?」

 

「戦車を木刀で破壊!とか、あのミレニアムの会長の謀略を抑えた!とか、……そんなわけないじゃん(笑)」

 

「……確かに信憑性は極めて薄い。関わりのある正義実現委員会の話も、あまり信じられるものではありませんし」

 

「でしょでしょー?」

 

ミカは、足をぶらんぶらんとしながら、呑気に言う。

 

ナギサ自身も、その報告書の内容が信じられなかった。

 

なぜなら――

 

目の前にいる男は、銀髪、死んだ魚のような目、着崩した着流しーー

 

坂田銀時。

 

彼は、何の躊躇もなくティーカップにイチゴ牛乳を注ぎ、目の前のマカロンを手づかみで頬張っていた。

 

紅茶の香りに溶け込むはずの繊細な甘さが、彼の無作法な咀嚼音によって無惨にも台無しにされる。

 

まるで、この場が高級ティーパーティの場ではなく、

ただの駄菓子屋の片隅であるかのように。

 

ナギサは、そっと目を閉じた。

 

(……本当に、この人で大丈夫なのでしょうか……?)

 

理知的な彼女も、この光景には不安を隠せなかった。

 

ーーそんな中、銀時はのんびりとした口調で言った。

 

「あの〜挨拶もなしに食いもん平らげちゃって笑いだけどー」

 

 

「あっ!ようやく口を開いたね⭐︎」

 

聖園ミカが、にこりと笑って身を乗り出す。

 

「お前ら誰だっけ? 1人は知ってるよ、トリニティー三大ゴリラの1人、ミーー」

 

ドカァン!!!

 

突如として、空気が破裂したような音が響いた。

 

その瞬間、銀時の体が弾かれ、ティーパーティの優雅なテラスの端まで吹き飛んでいく。

 

まるで風に舞う木の葉のように、あるいは、

ゴリラの拳で撃ち抜かれた哀れな流れ星のように。

 

銀時「うにいくら!!」

 

彼は着地すらままならず、地面に転がった。

 

ミカは、にこやかに拳を握る。

 

「ん〜。今なんて言ったのか聞こえなかったな〜?教えてくれる?次は聞こえるように⭐︎」

 

銀時は、仰向けのまま腕を震わせる。

 

「いや絶対に聞こえてたよね!?ゴリラって言ったの聞こえてたよね!?」

 

彼が叫ぶより早く、ミカの蹴りが空を裂いた。

 

ドカァン!!!

 

今度は正確無比な飛び蹴り。

 

その一撃は、まるで獲物を捉えた鷹のように、鋭く、そして容赦がなかった。

 

銀時「グハッ!」

 

勢いよく吹き飛ばされ、今度はティーテーブルに激突する。

 

その衝撃で、繊細なティーセットがわずかに揺れた。

 

ミカは満足そうに頷くと、クスクスと笑った。

 

「アハハ⭐︎この先生面白い。おもちゃとして持って帰っていい、ナギちゃん?」

 

ナギサは、こめかみを押さえながらため息をついた。

 

「やめて差し上げなさい。その人が壊れてしまいます。」

 

「え〜、じゃあ壊れない程度に遊ぶ〜?」

 

「そういう問題ではありません。」

 

ナギサの静かな声が響く。

 

銀時はティーカップを手にしながら、痛む頬をさすった。

 

目の前には、相変わらず品のある微笑を浮かべたナギサと、楽しそうに銀時の周囲を歩き回るミカがいた。

 

ナギサが、しなやかな仕草で手を組む。

 

「では――改めまして、ティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します」

 

その表情は冷静そのものでありながら、どこか銀時を値踏みするような目線を向けていた。

 

「そしてこちらは、同じくティーパーティーのメンバー、聖園ミカさんです」

 

ミカは銀時の周りをくるくると歩き回りながら、にこりと笑う。

 

「――やっほ、先生」

 

銀時は、じとっとした目で彼女を見やった。

 

「よくいうぜ。人のことあんだけぶん殴っといて」

 

ミカはクスクスと笑いながら、肩をすくめる。

 

「それは先生が私のことを化け物扱いするからでしょ〜?」

 

「事実だろうが。お前の拳、間違いなく「岩砕き」レベルの破壊力だったぞ。普通、人を吹っ飛ばしてからなんて自己紹介しねぇよ」

 

そんな銀時の愚痴をよそに、ナギサは淡々と続ける。

 

「すいません。ミカさんはポイント火力に全振りしていて頭が残念になっているんです」

 

「ナギちゃん、何そのゲームみたいな説明⭐︎」

 

ミカは頬を膨らませながら、それでもなお銀時の周囲を歩き回る。

 

彼女の淡い桃色の髪が、ふわりと揺れ、足取りは軽快そのものだった。

 

まるで獲物の周囲を嗅ぎ回る猫のように、時折鼻歌を鳴らしながら銀時を観察している。

 

銀時は、胡散臭そうに彼女を睨んだ。

 

「おい、何してんだよ。新手の威嚇か?」

 

しかしミカは、それに答えるでもなく、ふんふんと何かを確かめるように頷いた。

 

そして、興味深そうにナギサへと振り返る。

 

「へー、なるほどー、ふーん……うん、私は結構良いと思う! ナギちゃん的にはどう?」

 

ナギサは、銀時に一瞥をくれたあと、小さくため息をついた。

 

「……ミカさん、初対面でそういった行動はあまり礼儀がなっていませんよ。愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね」

 

ミカは一瞬考え込む素振りを見せ、少しだけ気まずそうに頬を掻いた。

 

「あー、うん、それはまぁ……確かに?」

 

流石に、自分の行動が問題ありと自覚しているのか、珍しく素直に謝る。

 

そして、改めて銀時の前に立ち、手を差し出した。

 

「先生、ごめんね? 何か先生を見ていると落ち着かなくてさ……まぁ取り敢えず、これからよろしくって事で!」

 

銀時は、差し出された手を見つめ、ふぅ、と長く息を吐いた。

 

「ああ、俺の方もその剛腕でいつ殴られるか心配で落ち着かないよ〜ホントに」

 

そう皮肉を込めながらも、その手を握る。

 

しかし、ミカの手を握った瞬間――

 

ググググ……!!

 

まるで握手のつもりが握力測定でもしているかのような力強さ。

 

銀時の指がギチギチと音を立てる。

 

彼は顔を引きつらせながら、ミカの無邪気な笑顔を見上げた。

 

(やべぇ、骨が悲鳴上げてる……)

 

銀時はまだ微妙に痛む指をさすりながら、イチゴ牛乳を一口啜った。

 

ナギサが落ち着いた声で語り始める。

 

「……トリニティ外部の方が、このティーパーティーに招待されたのは、幹部職など以外であれば先生が初めてだったと思います。普段はトリニティに所属する一般生徒達も簡単には招待されない席でして」

 

彼女の言葉は、どこか誇りを感じさせるものであった。

 

銀時は、ふーん、と鼻をいじりながら肩をすくめる。

 

「へぇ、それはまた、光栄なことで。」

 

――適当な反応だった。

 

すると、ミカがすかさず割り込んできた。

 

「あー、何それナギちゃん、ちょっといやらしい、恩着せがましい感じ~!」

 

ナギサは、目を細めてミカを見た。

 

「……んんっ、失礼しました、先生、そういう意図はなかったのですが――ミカさん?」

 

「え? あー……うん、大人しくしているね? 出来る限り、たぶん」

 

「……では改めて」

 

ナギサは、小さく咳払いをして体勢を正す。

 

どこか浮足立ったミカを静かに笑顔で見つめると、ミカは視線を逸らした。

それを確認したナギサは、両手をそっと膝の上で組み、真っ直ぐに銀時を見据える。

 

「――こうして先生をご招待したのは、少々のお願い事がありまして」

 

銀時は、予想通りとばかりに肩をすくめる。

 

「まぁ、そんな事だろうとは思ったよ。で、どんな依頼だ?」

 

ナギサはゆっくりと頷き、

優雅にカップを持ち上げながら、重々しく口を開く。

 

「はい、とても大切な事です」

 

しかし、その瞬間ーー

 

ミカがバッと身を乗り出し、

手をバタバタさせながらナギサにツッコミを入れた。

 

「おぉ~……ナギちゃん、いきなりだね!? もうちょっとこう、アイスブレイクとか要らないの? 小粋な雑談とかは? 天気が良いですねとか、昨日は何を食べたのですか、とか、そういうのは挟まないの? ほら、ティーパーティーって基本的には社交界なんだし?」

 

ナギサは、深く息をつくとミカに静かに目を向ける。

 

「――ミカさん……?」

 

「そんな綺麗な目で睨んでも、これはティーパーティーとしての在り方の問題なんだからダメー! こういうのは、きちんとしないとっ!」

 

ミカは腕を組み、ぷんすかと頬を膨らませる。

 

しかし、ナギサは微塵も表情を崩さず、

まるでミカの抗議を冷静に流すように、淡々と答える。

 

「ミカさん、そういった事はあなたがホストになった際に追求してください。今は一応、私がホストですので、私の方法に従ってくださいな」

 

ミカは、口を尖らせながら「ぶーぶー」と不満を漏らす。

 

ナギサは、それを軽く窘めるように言った。

 

「そのヤジはおやめなさい」

 

銀時は、それを見ながら肩をすくめ、ティーカップを置いた。

 

「ホントだよ。ナギちゃんの言う通りだ。ゴリラはゴリラらしくウホウホって鳴かないと〜」

 

一瞬、静寂が訪れる。

 

ナギサは、静かにカップを置き直し、

ミカは無表情のまま、拳を握りしめた。

 

次の瞬間ーー

 

ドカァン!!

 

ミカの拳が銀時の脇腹に炸裂し、

彼は椅子ごと吹き飛び、テラスの床に叩きつけられた。

 

「ぐはっ!?」

 

仰向けになったまま、彼は空を仰ぐ。

 

「先生? ゴリラは禁止。いいね⭐︎?」

 

太陽を背にしたミカが、無邪気な笑顔で見下ろしていた。

しかしその笑顔は、あまりにも悪魔的だった。

 

銀時は顔を引きつらせながら、条件反射的に答える。

 

「……はい。」

 

その瞬間ーー

 

バンッ!!

 

突如、ティーテーブルが跳ねた。

 

ソーサーの上のカップがカチャリと鳴り、皿の上に並んでいたスイーツが軽く宙を舞う。

ほんの僅かに漂っていた上品なティーパーティーの雰囲気は、いまや木っ端微塵だった。

 

テーブルの向こう側で、ナギサの額に青筋が浮かぶ。

 

静寂の中、冷え冷えとした声が響く。

 

「ミカさん……?」

 

ミカの表情が、みるみるうちに青ざめる。

 

すかさず彼女は、銀時の背中に身を隠した。

先ほどまでの余裕はどこへやら、まるで雷に怯える子猫のように震えている。

 

「はひ…」

 

ナギサは優雅な仕草でティーカップを置くと、微笑みを浮かべながら拳を握った。

 

「今、私が説明をしているんですよ!? それなのにさっきからずっとッ!? 横からぶつぶつぶつとォッ!!」

 

彼女の声は、一気に爆発した。

 

「どうしても黙れないというのでしたら、その小さな口にロールケーキをぶち込みますよッ!?」

 

「ナギちゃん怖い! 怖い怖い!」

 

ミカは悲鳴を上げながら、銀時を盾にしようとする。

 

しかし、銀時はすでにテーブルに戻り、

何食わぬ顔でロールケーキを頬張っていた。

 

「うめぇ」

 

ティーカップを手に取るナギサは、一呼吸置き、ゆっくりと口を開く。

 

「……あら、私ったら何という言葉遣いを。失礼しました、先生。ミカさんも。」

 

ミカは怯えながらも、じりじりと銀時から離れる。

 

銀時も、まだほのかにロールケーキを咀嚼しながら肩をすくめる。

 

「いやもう遅いよ。キャラ見せちゃったもん。本性見せつけられちゃったもんアンタに。」

 

ナギサは微笑みながら、手元のカップを傾ける。

 

「……さて、そろそろ本題に入りましょうか。」

 

テーブルの上には、上品な紅茶の香りが漂っている。

ついさっきまでの怒号と殴打の応酬が嘘のように、ティーパーティーらしい優雅な空気が戻っていた。

 

「私たちが先生にお願いしたいのは、簡単なことです。」

 

ナギサが淡々と話し始める。

 

「簡単だけれど、重要なことだよ。」

 

ミカも続けて言葉を添える。

 

しかしーー

 

銀時は、わざとらしくため息をつきながら、

呆れ顔でソーサーにカップを置いた。

 

「いやじゃあさっさと話そうよ。なんでここまで引っ張ったの? 無駄な尺取るんじゃないよ、アニメじゃないんだから。」

 

ミカは目を細め、

スプーンでカップの中の紅茶をかき混ぜながら呟く。

 

「先生が暴れたのが原因だけどね。」

 

ナギサは、じっとミカを見つめる。

 

「……それ、ミカさんが言いますか?」

 

銀時は、ぼりぼりとマカロンを齧りながら、

内心「どっちもどっちだろ」と思っていた。

 

三人が揃って席に着き、

一度ブレイクタイムを設けて空気の入れ替えを行う。

 

甘味を摘まみながら、銀時がナギサを見る。

 

「で、結局、この銀さんにお願いしたいことって何なんだよ?」

 

ナギサは、再び背筋を正し、静かに微笑んだ。

 

そして、厳かに口を開く。

 

「――補習授業部の、顧問になって頂けませんか?」

 

銀時は、スプーンを落とした。

 

「は?」

 

あまりに突拍子もない提案に、

思わずマカロンを喉に詰まらせる。

 

ナギサとミカは、じっと銀時を見つめていた。

 

「いやいやいやいや、待て待て待て待て待て!!」

 

椅子をガタリと鳴らしながら、全力で両手を振る。

 

「俺が補習授業部の顧問!? いやいや、ない!絶対にない! 何かの冗談だよなコレェ!?」

 

ナギサは微笑んだまま、首を横に振る。

 

「冗談ではありません。私たちは真剣です。」

 

ミカも頷きながら、マカロンを口に放り込む。

 

「うんうん、先生ってこう……適当だし、やる気なさそうだし、ダメ人間オーラすごいし」

 

「悪口になってるぞコラ」

 

「でも、なんか不思議と生徒に慕われそうな雰囲気あるよね〜?」

 

ミカがニヤニヤと笑いながら肘をつく。

銀時は心底嫌そうな顔をした。

 

「ちょっと待て、俺よりもっと適任の先生がいるだろ?

ほら、もっと教育熱心で優秀なヤツらがさ?」

 

ナギサは首を傾げる。

 

「例えば、どなたでしょう?」

 

銀時は腕を組んで、思案顔をする。

 

「うーん……そうだな……例えば……」

 

そして、指を立て、したり顔で言い放った。

 

「月を破壊した超生物のタコーー」

 

ナギサ「それーー」

 

ミカ「殺せんせーだよね?」

 

銀時「だってあいつめっちゃ良い先生してただろ? 超高速移動で授業は分かりやすいし、生徒の悩みにも親身に対応するし、何よりスキンケアバッチリのぬるぬる触手持ちだし!」

 

ナギサ「……スキンケアは必要でしょうか?」

 

銀時「いやいや、大事だって! 先生が乾燥肌だったら、生徒が相談に来た時もカッサカサで信用されねぇだろ!」

 

ミカ「そんな基準で顧問決めるの先生ぐらいじゃない?……」

 

銀時「じゃあ、鬼の手を使うあの教師とか どうよ? 」

 

ミカ「それ地獄先生ぬ〜べ〜!!」

 

銀時「なんか補習授業部って聞いて、オカルト系の問題児ばっか集まるイメージあるんだよね」

 

ナギサ「……別に霊的な問題は抱えておりませんが?」

 

銀時「いやいや、でも補習って響きがもう何か取り憑かれてそうじゃん? 学力低すぎて怨念が蓄積してるヤツとかいそうじゃん?」

 

ミカ「……何それ怖いんだけど」

 

銀時「そんな時、鵺野先生がいたら安心じゃん! 霊も悪霊もまとめてオーバーキルだし、ついでに学力まで上げてくれるし、俺より100倍適任だって!」

 

ナギサ「ですが……」

 

ナギサはカップを置き、銀時の目を真っ直ぐに見つめた。

 

「残念ながら、月をやれる超生物タコ教師も鬼の手持ちの地獄先生も、私たちの世界には存在しません。」

 

銀時「……」

 

銀時「……そっかぁ……」

 

銀時は遠い目をした。

彼らがいない世界……それはつまり、自分が逃げ場を失った世界。

 

ナギサ「ですので、銀時先生が顧問になるしかないのです。」

 

ミカ「諦めよ、先生⭐︎」

 

銀時「……いやいやいやいや!! 俺はやんない!俺は絶対にやらねぇからな!!」

 

銀時は立ち上がり、全力で逃げる体勢に入る。

 

しかしーー

 

「あ、待ってください先生。逃げたらミカさんが飛び蹴りをお見舞いしますよ?」

 

ナギサが、紅茶を飲みながら、微笑みつつ予告した。

 

銀時「え?」

 

ミカ「え、いいの? やっていいの?」

 

ナギサ「えぇやっちゃってください」

 

銀時「いや、やらなくていいから! 何そのデフォルト暴力装置!!」

 

ミカ「じゃあ大人しく座ってね⭐︎」

 

 

 銀時は大きくため息をつきながら、椅子に深く座り直した。

 

「もう分かった、分かったから。バカどもの先生やってやるから」

 

 もはやこれ以上逃げても無駄だと悟ったのか、観念したように頭をガシガシと掻く。

 

「ありがとうございます」

 

 ナギサは優雅に微笑み、銀時に向かって小さく一礼した。

 

「やった〜! やったねナギちゃん⭐︎」

 

 ミカは勢いよく立ち上がり、両手を振り上げる。

 

「面倒事を任せられそうになって!」

 

「……面倒事なんて云ってはいけませんよ、ミカさん」

 

 ナギサは紅茶を口にしながら、ゆるりと微笑んだまま、冷たい眼差しを向ける。

 

「トリニティのゴミーー……追加指導が必要な子羊のためにと言わないと」

 

「今ガッツリと心の声ゲロったのが聞こえたけど……?」

 

 銀時は眉をひそめながらミカを見る。

 ミカはそっぽを向きながら口笛を吹いている。

 

「――まぁ兎に角! お願いしますよ」

 

 ナギサはそう言いながら、ティーテーブルの隅に置かれていた分厚いファイルを手に取る。

 それはトリニティ総合学園の校章が表紙に描かれた、見るからに重要そうな書類だった。

 

 彼女はそれを銀時の前に静かに差し出した。

 

「……何コレ?」

 

 銀時は不審そうにファイルを手に取る。

 

「補習授業部に入部することとなる、対象の生徒達の名簿と生徒情報です」

 

 ナギサは淡々と説明する。

 銀時はファイルを開き、ざっと中を見た。

 

 そこにはズラリと並んだ、問題児たちのプロフィール。

 

 ページをめくるたび、規律違反の記録や、授業放棄、学力不足、トラブル履歴などがぎっしりと記載されている。

 

「つまりトリニティの厄介――」

 

「その表現は愛が足りませんよ、ミカさん」

 

 ナギサは淡々とミカを制する。

 

「こう云いましょうか。トリニティのあばずー……トリニティに於ける『愛が必要な生徒達』と」

 

「おーいまた心の声が漏れてるよ〜! ドス黒い心のガソリンが流れ出ちゃってるよ〜!」

 

 銀時は額を押さえながら、ナギサを指さした。

 

「どうせ『どうしようもない奴らだけど、一応トリニティの名誉もあるし、完全に見捨てるのもアレだから、テキトーに面倒見てくれる奴がいないか探してたら、お前が捕まった』って話なんだろ?」

 

 ナギサは一瞬だけ視線を逸らし、紅茶をひと口飲む。

 

「……そんなに間違ってはいませんね」

 

「いや合ってんのかよ!」

 

 銀時は机をバンッと叩いた。

 するとティーカップが軽く跳ね、小さな波紋が広がる。

 

「ていうか、どいつもこいつもやべぇプロフィールしてんだけど!? これ俺に面倒見ろってレベルじゃねぇぞ!? もはや警察かカウンセラーの仕事じゃね!?」

 

「まぁまぁ、先生も楽しめばいいじゃん⭐︎」

 

 ミカが笑顔で銀時の背中をバンバンと叩く。

 ……力が強すぎて銀時の身体が前のめりに揺れる。

 

「いやいや、楽しめるかこんなの!!

『水着で外を徘徊』って何!?

『生徒への暴力行為』ってのが二重線で消されて『武勇伝』って書き直されてんだけど!? これもう教育の域超えてるじゃねぇか!!」

 

「うんうん、でもそれ先生がなんとかしてくれるんでしょ?」

 

「……いや、しねぇよ? というか出来ねえよ!??」

 

 銀時は全力で首を振る。

 だがナギサは、ゆったりと微笑んだまま銀時を見つめていた。

 

「先生、貴方には“経験”があるでしょう?」

 

「経験……?」

 

 銀時は訝しげに眉をひそめる。

 

 するとナギサはカップを持ち上げ、ゆっくりと紅茶を啜りながら、言った。

 

「かつて貴方が守った者たちと、今この学園にいる生徒たち……」

 

「本質的には、似ていると思いませんか?」

 

 銀時の表情が、一瞬だけ強張る。

 ナギサはその変化を見逃さなかった。

 

「……フン、言ってくれるじゃねぇか」

 

 銀時はファイルをパタンと閉じると、足を組み、椅子の背もたれに身を預けた。

 

「まぁ、どいつもこいつもバカそうだしな。バカの面倒を見るのは嫌いじゃねぇよ」

 

「そうこなくちゃ⭐︎」

 

 ミカが満面の笑みで拳を突き上げる。

 

「では、先生……よろしくお願いします」

 

 ナギサは静かに微笑みながら、銀時に頭を下げた。

「……しゃーねぇな」

 

 銀時は立ち上がると、ファイルを片手に持ち、もう片方の手で頭を掻いた。

 なんだかんだで引き受けてしまったが、どう考えても面倒な仕事だ。

 だが、もう腹を括るしかない。

 

「まずはこのプロフィールに書かれてるバカどものところでも、家庭訪問してやるかー」

 




次回 

銀時「全く……なんだよこの生徒たち……」

ヒフミ「桂さんたちとペロロ様のイベントに……」

近藤「ハナコ君。脱ぐなら最後まで脱ぎなさい!」全裸

ハナコ「分かりました……これが◯Pの条件ならーー」水着

コハル「脱がなくていいから!!Hなのダメ死刑!」

ガスマスク「すごいな……催涙弾がなくても抵抗できるとは」

桂「んまい棒を常備しておけば真選組など恐るるに足りん!さぁこの学園の夜明けを共に見ようではないか!」


銀時「捌き切れるかァァァァァ!!」

次回 補習授業をみんな強制されたんだけど学生も先生も疲労感が募るから長期休みくらい休みたい

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
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