透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい)   作:時代に遅れている

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すごく疲れたこの話書くの………

キャラを自由にさせすぎるとカオスに

型にハマりすぎるとそのままになってしまう

間をとるのが本当に大変でした。

近藤さんとハナコさん。関わっちゃいました


第七十五訓 補習授業をみんな強制されたんだけど学生も先生も疲労感が募るから長期休みくらい休みたい

 トリニティ総合学園の本校舎。

 その片隅にひっそりと存在する、一風変わった教室。

 ここが、補習授業部に割り当てられた"バカの巣窟"……もとい、銀時が新しく受け持つことになったクラスである。

 

「……ったく、なんで俺がこんなとこに来なきゃいけねぇんだよ……」

 

 溜め息をつきながらドアを開けると、そこには見覚えのある顔があった。

 

「あっ、銀さん! お久しぶりですねー! あっ……えっと、今日からよろしくおねがいしまーー」

 

 

 明るい声と共に、少女――ヒフミは満面の笑みを浮かべながら頭を下げる。

 だが、次の瞬間。

 

ガシッ!!

 

 銀時の手が容赦なく彼女の頭を鷲掴みにした。

 

「ぐひっ!?」

 

 ヒフミの体がわずかに揺れる。

 

「よぉ〜、これから夜露死苦!! 覆面水着団(強盗)の幻のリーダーのファウストさま?」

 

 にやりと笑いながら、銀時はそのまま頭を揺らし、

 皮肉たっぷりに名乗りを上げた。

 

「や、やめてくださいィ。その言い方まるで私、悪い人みたいじゃーー」

 

「悪いに決まってるだろうが。」

 

 銀時はため息交じりに、手を離す。

 

「この銀さんをお前らバカどもの子守りにした奴の1人なんだからな〜」

 

「で、でも〜」

 

「ああ分かった。そんなにお前が悪くないって思うなら納得のいく説明してみろ。」

 

「……は、はい?」

 

「三十字以内で簡潔にな……」

 

「さ、三十字以内は無理ですけど!?」

 

 ヒフミはしどろもどろになりながら、必死に言葉を探す。

 

「えぇと、こうなったやむを得ない事情というのは、ですね……」

 

「その、桂さんたちに誘われたペロロ様のゲリラ公演に参加する為に、テストをサボってしまいまして……」

 

「処刑執行!!!」

 

 銀時の怒号が教室内に響き渡った。

 彼の拳が机を叩き、机の上に置かれていた教科書がビクンと跳ねる。

 

「何がペロロのゲリラ公演だよ!? お前はバカですかバカーンですか!!」

 

「ち、違うんです! あの時はどうしても行かないといけない事情が――」

 

「だ、だって、ペロロ様の公演なんて滅多にないんですよ!? 幻のイベントなんですよ!? 行くしかないじゃないですか!!」

 

「言い訳するなァテストってのはな、人生の試練の縮図なんだよ。 それをサボるってのは、もうお前の人生ペロロ様の玩具コース一直線なんだよ!」

 

 

「別に構いませんけど……」

 

「構えよ!!」

 

「違うんです銀さん……! ちゃんと試験の日程は確認していたはずなんです、何かの間違いと云いますか、手違いと云いますか……!」

 

 ヒフミは涙目になりながら必死に弁明する。

 が、それを聞いていた銀時は、机に肘をつき、拳で頬杖をつきながら虚ろな目で彼女を見ていた。

 

「手違いだぁ?」

 

 銀時はゆっくりと体を起こし、腕を組む。

 彼の目はまるで、人生を諦めたような死んだ魚のような色をしていた。

 

「お前、それはつまりこういうことか? 『気づいたら試験が終わってました☆』って?」

 

「い、いや、そういうわけではなくて……!」

 

「つまり、お前は誘惑に負けて、学園生活という名の戦いに敗北したんだろうが」

 

 銀時は静かに、だが容赦なく現実を突きつける。

 その言葉は、ペロロ信仰に身を捧げた少女の胸に突き刺さった。

 

「あぅ……ご、ごめんなさい……」

 

 ヒフミはしゅんと肩を落としながら、小さな声で謝る。

 しかし、次の瞬間、彼女は思い出したように顔を上げた。

 

「あっ、それで、実はナギサ様に銀さんのサポートを頼まれていまして……!」

 

「サポート?」

 

 銀時は訝しげに眉をひそめる。

 

「は、はい」

 

 ヒフミは深呼吸を一つし、銀時の視線を真っ直ぐに受け止めながら、静かに語り始めた。

 

 

 

「前夜の決定」

 ティーパーティーの招待状が銀時の元に届く前夜。

 その頃、トリニティの学園内にある優雅なティーテラスでは、夜風に揺れるシャンデリアの光の下で、ナギサとヒフミが向かい合っていた。

 

 

 ナギサの青い瞳が、ヒフミを静かに見つめる。

 その視線の圧に、ヒフミの肩は強張り、緊張で笑顔もぎこちない。

 

 

「…という訳でヒフミさん、先生をお手伝いすると共に、補習授業部を導いて下さいませんか?」

 

 その提案に、ヒフミの思考は一瞬停止した。

 

「はい!? わ、私がですかっ!?」

 

 思わず椅子から乗り出して叫ぶ。

 

「はい、そもそもヒフミさんの様な優等生でないと出来ない事ですから」

 

「わ、私はそんな、優等生という程でもありませんし、そもそも成績も平均位で……今は落第の危機なのに――」

 

「ふふ、私はヒフミさんの『愛』を高く評価しておりますから、それに、今度はヒフミさんから私に『愛』をお返しして頂く番――ですよね?」

 

 ナギサは柔らかく微笑みながら、ティーカップを持ち上げる。

 その言葉に、ヒフミの全身が震えた。

 

 (これは……断れないやつだ!!)

 

 本能が警告を鳴らす。

 この申し出を断れば、自分の学園生活は危機的状況を迎えることになる――そう直感した。

 

「あ、あぅ……」

 

「ふふっ、そういう事ですので、宜しくお願いしますね、補習授業部の部長さん」

 

 

 

「――と言う……わけなんです」

 

 ヒフミの話が終わると、銀時は虚ろな目をしながら天井を仰いだ。

 

「成程な、それで部長に…」

 

「は、はい、あくまでも臨時の――ですが、補習授業部は特殊な形で限定的に作られた部活ですし、全員が落第を免れたら自然に部はなくなると思うので……」

 

 ヒフミは不安そうに銀時を見つめる。

 銀時はしばし沈黙した後、面倒くさそうに髪をかき乱しながら、重いため息をついた。

 

「ああはいはい分かった。分かった。」

 

「えっ、本当ですか!?」

 

「これ以上お前を叩いてもどうしようもねぇからな、」

 

「ありがとうございます!」

 

 

「あ、そういえば、補習授業部のメンバーには、まだ会われていないんですよね?」

 

「まぁなお前以外のバカとはまだ会ってねぇな」

 

「名簿を確認したところ、メンバーは私を含めて五人みたいですが……1人は午後からの合流となっていますから。ひとまず会いに行ける人たちとは会っておきましょうか、みんなでどうすれば落第せずに済むか計画を立てないと――」

 

 

銀時「そういうことならさっさと他のバカでも探しにいくぞ〜」

 

ヒフミ「なら、近場から行った方が良さそうなので私が案内しますよ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ヒフミ「――……此処、みたいですね」

 

 

 トリニティ総合学園の一角にある正義実現委員会の部室。

 装飾は厳格なデザインで統一され、机の上には整理された資料がずらりと並ぶ。

 壁には規則や倫理規範を記したポスターが貼られ、いかにも「風紀を守る者たちの拠点」という雰囲気が漂っていた。

 

 だが――

 

「あ、あぅ……あんまり来たくはなかったのですが……」

 

ヒフミは、入口の前で不安げに呟いた。

 

その表情には、明らかな気まずさが滲んでいる。

 

銀時は、そんな彼女を横目で眺めながら、

わざとらしく目を細め、怪しむような口調で尋ねる。

 

「どうした? はっ! もしかして、あの時盗んだお金をペロログッズにーー」

 

「違います!!」

 

ヒフミが即座に全力で否定する。

 

「ここはゲヘナで言うところの風紀委員会、キヴォトス全体で言うとヴァルキューレ警察学校のような場所なので、そんな違法活動は――」

 

「そうか〜、……」

 

銀時は、一瞬だけ真剣な表情を浮かべたかと思うと、

突然、喉を鳴らして**「わざとらしい」**咳払いをした。

 

そして――

 

「すいませーん! この子、以前強盗に手をーー!!」

 

「フン!!」

 

ヒフミの体が反射的に動いた。

 

彼女は、手に持っていたペロロの形をしたバッグを振り上げると――

 

全力で銀時の顔面に叩きつけた。

 

「ペロロ!!」

 

「ぎゃああああ!!?」

 

悲鳴とともに、銀時の身体は吹っ飛ぶ。

 

だが、ヒフミの一撃は思いのほか強烈だった。

 

「――お、おわっ!!?」

 

銀時の体は勢いのまま、

部室の扉を豪快に押し開き、そのまま室内へと転がり込んだ。

 

そして――

 

ドサッ!!

 

何か柔らかいものの上に落ちる感触。

 

「あれ?」

 

銀時は、一瞬何が起こったのか理解できず、

ぼんやりと自分の足元を見る。

 

そこには――

 

小柄なピンク髪の少女がいた。

 

彼女は大きく見開いた瞳で、

まるで**金縛りにあったかのように硬直しながら、目の前にのしかかる銀時を凝視していた。

 

そして、銀時もまた、彼女の顔を見つめたまま、

絶句する。

 

「えぇっと。どちら様で?」

 

しかし、その静寂は、ほんの一瞬で破られた。

 

ピンク髪の少女は、震える声で何かを呟き始める。

 

「男!? なんで!? トリニティに何で男がいるの!? それにこの体勢………はっ、ま、まさか!!」

 

彼女の脳内で、瞬時にいくつもの考えが駆け巡る。

 

――突然の侵入者。

――見知らぬ男。

――自分の上にのしかかる謎の男。

 

導き出される結論は、一つしかない。

 

「私を襲いに来たの!? ○○魔!!?」

 

「ちげぇよバカ!!」

 

銀時は、反射的にツッコミを入れる。

 

「つーか、お前なに!? お前のせいで冤罪で人生終了コース入る寸前なんだけど!?」

 

だが、ピンク髪の少女は、怯えと混乱の狭間で叫ぶように言い返した。

 

「う、うるさい!!

 

「こういうシチュエーション、私の読んだ本では全部そういう展開になってたの!!」

 

「だからこれは絶対に○○魔の犯行だわ!!」

 

銀時は、その言葉を聞いた瞬間――

 

彼女の顔を見つめながら、信じられないものを見る目をした。

 

そして、わなわなと震えながら叫ぶ。

 

「いやそれただのR18超えた同人誌の内容!!」

 

「どんだけ読んでんだよ!! どんだけ頭ピンクなんだよお前ェェェ!!?」

 

その言葉に、ピンク髪の少女は、

一瞬だけぎくりと動きを止めた。

 

しかし、次の瞬間――

 

彼女は顔を真っ赤にしながら、さらに騒ぎ出した。

 

「な、ななな何を言ってるのよ!? 私はただ勉強のために読んでいただけで!!」

 

「どんな勉強だよ!! つーか、そんなもん"読みすぎて"思考がバグってんじゃねぇか!!」

 

二人の言い争いが白熱していく中、

 

 

部室の扉が、ゆっくりと開かれる。

 

「だ、大丈夫です……か?」

 

そこに現れたのは、ヒフミだった。

 

だが、彼女の目に飛び込んできたのは――

 

ピンク髪の少女の上にのしかかる銀時の姿。

 

先ほどの衝撃で、銀時が転がり込んだ際に偶然できた体勢だったが、

誤解を招くには十分な状況だった。

 

一方、銀時のほうも、事態の深刻さにようやく気づく。

 

「……あっ。」

 

沈黙。

 

――その沈黙を破ったのは、ピンク髪の少女だった。

 

「何よ……」

 

彼女の目は鋭く、敵意に満ちていた。

 

その圧に気圧されたのか、ヒフミは思わず一歩退く。

 

「うぅ、えっと、凄く警戒されているみたいなんですが……私、何かしてしまったのでしょうか……?」

 

彼女は困惑した表情を浮かべながら、二人を交互に見つめた。

 

その問いに、銀時は皮肉たっぷりに肩をすくめる。

 

「うん、したね〜。」

 

「お前が吹っ飛ばしたおかげで、一部のお客様が喜ぶ逆馬◯りプレイが完成しちゃったんだから。」

 

一瞬の静寂。

 

「……」

 

ヒフミの顔が、みるみるうちに真っ赤に染まる。

 

「いや銀さんがすぐ離れれば良かった話ですよね!?」

 

彼女は、慌てたように手を振るが、その時すでに"最悪の事態"は起こっていた。

 

――ピンク髪の少女が、再び身を震わせる。

 

そして、銀時を指差しながら叫んだ。

 

「逆馬◯り……やっぱあたしを襲うつもりだったのね!!」

 

「誰がお前みたいな脳内ピンク頭に興奮したなんて言ったよ!!」

 

銀時のツッコミが炸裂するが、少女は聞く耳を持たない。

 

二人の言い争いがさらに激化する。

 

その様子を見ていたヒフミは、ついに堪えきれずに声を張り上げた。

 

「もうお二人とも落ち着いてください!!」

 

彼女の必死の制止によって、ようやく二人の間の空気がわずかに緩む。

 

ヒフミは、大きく深呼吸をしてから続けた。

 

「これには誤解があってーーー」

 

彼女は、言葉を選びながら慎重に説明を始める。

 

ピンク髪の少女の警戒心を解き、銀時の冤罪を晴らすために。

 

そして、ようやく――

 

沈静化したかに見えた空間には、なおも張り詰めた空気が漂っていた。

 

ピンク髪の少女――コハルは、ゆっくりと息を整えながら、

椅子に腰を下ろすと、鋭い視線を銀時とヒフミに向ける。

 

彼女の瞳は、まるで法廷の裁判官のように冷徹で、

それでいて、先ほどの混乱の名残が微かに残るものだった。

 

「そ、それで?」

 

「正義実現委員会に何の用!?」

 

彼女は腕を組みながら問いかける。

 

その声には、まだ先ほどの騒動を引きずった苛立ちが滲んでいた。

 

対するヒフミは、戸惑いながらも小さく咳払いをし、

なるべく穏やかに説明を始める。

 

「えぇと、実は探している方が居まして――」

 

しかし、その言葉を最後まで言い切る前に、

コハルは苛立たしげに声を張り上げた。

 

「はぁ、何それ!?」

 

「正義実現委員会に人探しの依頼をしに来たってこと?

 

「私たちのこと、ボランティア団体か何かだと勘違いしているの!? そんなに暇じゃないんだけれど!?」

 

彼女の声が響くと、部室の静謐な空気が一気に乱れる。

 

ヒフミは驚いて言葉を詰まらせたが、

そんな彼女の隣で、銀時がうんざりしたように肩をすくめる。

 

「うるせ〜な〜。」

 

彼は、大きく欠伸を噛み殺しながら、

まるでコハルの言葉など取るに足らないと言わんばかりに続けた。

 

「人の話は最後まで聞くもんだろうが……そもそも正義とかなんとかほざいておきながら、ムッツリとか恥ずかしいねぇホント。」

 

その瞬間――

 

「誰がムッツリよ!!!」

 

コハルが勢いよく立ち上がる。

 

彼女の顔は、まるで茹でダコのように真っ赤になっていた。

 

だが、それを横で見ていたヒフミは、

またしても事態が脱線し始めたことを悟り、

すぐに銀時を睨みつけた。

 

「銀さんは黙っててください!!」

 

銀時は、**「チッ」**と舌打ちしながら、

椅子にふんぞり返る。

 

その間にも、コハルは荒い息を整えながら睨み続けていたが、

ヒフミはなんとか話を戻そうと努力する。

 

「実は――探してる人は此処に閉じ込められているって聞いて……」

 

その言葉に、コハルは眉をひそめる。

 

「閉じ込め……はぁ?」

 

明らかに訝しむ表情を浮かべるコハルに対し、

ヒフミは慎重に言葉を選びながら続けた。

 

「ですから、えっと、その、良くないことをした方が此処に――」

 

「え、それって――」

 

コハルの表情が、一瞬にして険しくなる。

 

だが、そのやり取りの最中、突如として背後の扉が独りでに開いた。

 

――ギィィ……

 

その音に、三人の視線が一斉にそちらへ向かう。

 

そして、そこから現れたのは――

 

「――こんにちは。」

 

「もしかして、私のことをお探しでしたか?」

 

学校指定のスクール水着を身に纏った少女だった。

 

「はっ!?」

 

「えぇっ!?」

 

「おぉ。」

 

三者三様の反応が、同時に漏れ出る。

 

ヒフミは、目の前の光景に戸惑いを隠せず、

明らかに**「何故こんな所に水着の生徒が?」**という表情を浮かべる。

 

コハルは、目を大きく見開き、

信じられないものを見るような表情で**「どうしてコイツが此処に!?」**という驚愕を露わにする。

 

そして、銀時は――

 

純粋に、美しいものを眺めた時の感嘆だった。

 

スクール水着姿の少女は、

コハルと同じ淡いピンク色の髪を揺らしながら、

静かに歩み寄る。

 

その動きには、一切の戸惑いや躊躇いがなかった。

 

彼女の纏う雰囲気は、まさしくトリニティの淑女に恥じぬ気品に満ちていた。

 

その姿が、**「水着でなければ」**完璧だった。

 

トリニティ総合学園・正義実現委員会 部室

静寂を破るように、ピンク髪の少女――コハルが驚愕の声を上げた。

 

「え、は、何で!? あ、あんたどうやって牢屋から出たの!? ちゃんと鍵は閉めたのに……!?」

 

彼女の顔は、完全に予想外の事態に直面した者のそれだった。

両手を広げ、まるで幽霊を見たかのような怯えと驚きが入り混じった表情を浮かべている。

 

しかし――

 

その対象である水着姿の少女は、極めて落ち着いていた。

 

ゆったりとした動作で彼女は一歩前に進み、

しなやかな指先で髪を耳にかけながら、穏やかな微笑みを浮かべる。

 

「いえ、鍵は掛かっていませんでしたよ?」

 

「私のことを話されているような声が聞こえたので、こちらに来てみました。」

 

「何か御用でしたか?」

 

彼女の声は澄んでおり、

その佇まいにはトリニティの淑女らしい優雅さがあった。

 

……ただし、スクール水着を着ていなければ。

 

――と、ヒフミは密かに思う。

 

そんな彼女を前に、ヒフミは一瞬動揺しつつも、

なんとか笑顔を作り、自然な流れで話を進めようとする。

 

「えぇ、ちょっと部活のことで、ね? 銀さん?」

 

そう言って視線を向けると――

 

銀時は、明らかに豊満な胸元からくびれまでを順番に堪能していた。

 

そして次の瞬間――

 

銀時は、自らの行動にハッと気づき、

真面目腐った表情で叫んだ。

 

「あっぶねぇ!! マジでちょっとだけ魅入っちまった!!!」

 

「なっ!」

 

コハルの顔が、一瞬にして真っ赤になる。

 

「銀さん!!」

 

ヒフミも慌てて叫ぶが、銀時はすでに制御不能の領域へ突入していた。

 

水着の少女――浦和ハナコは、口元に手を添えながら、

どこか楽しげに微笑む。

 

「あらあら、それは――」

 

だが、銀時はすぐに手を振り、

まるで冤罪を主張するかのように声を張る。

 

「いや、そりゃなるだろ!!」

 

「突然目の前で水着姿見せられて、冷静でいられるのは石仏だけだ!!」

 

「でもな!! 俺は一瞬で我に返った!!」

 

「俺は理性という名の鋼鉄の城に守られた男だからね!!!」

 

その言葉に、ヒフミは即座に反論する。

 

「いや、すでに落城寸前なんですけどその城!!」

 

「攻める所がないぐらいボロボロなだけなんですけど!?」

 

コハルは拳を握りしめ、顔を真っ赤にしながら叫ぶ。

 

「というか、なんであんたは普通に水着で歩いてるのよ!?!」

 

しかし、ハナコはまるで動じる様子もなく、

しなやかな手つきで髪を整えながら、優雅に銀時へと向き直る。

 

「あら、大人の方、ということは……先生ですね?」

 

彼女の眼差しは穏やかで、

どこか落ち着いた知性を感じさせるものだった。

 

「改めまして、こんにちは。」

 

「部活ということは――もしかして補習授業部の?」

 

銀時は、堂々とした態度で頷きながら答える。

 

「どうも〜坂田銀時でーす。」

 

「ここではアンタの担任なんでよろしく〜」

 

ハナコは、その言葉を受けて微笑み、

優雅な所作で銀時へと軽く会釈をする。

 

「こちらこそ。」

 

「では行きましょうか。」

 

そのあまりにも自然な流れに、

コハルは驚愕の表情を浮かべる。

 

「ま、待って!!」

 

彼女は慌てて立ち上がり、

ハナコの腕を掴む。

 

「その格好で出歩かないでよ!! ちょっとぉ!?!」

 

しかし、ハナコはまるで事態の深刻さを理解していない様子で、

心底不思議そうに首を傾げる。

 

「? 何か問題でもありますか、下江さん」

 

彼女の声は、至って穏やかだった。

 

まるで、「なぜこんなに慌てるのか分からない」という顔をしている。

 

そんなやり取りの最中――

 

「そうだぞ。ハナコさんになんの問題があるっていうだね、コハルくん。」

 

突然、どこか野太い声が部屋に響いた。

 

そして、コハルがハッとして振り返ると――

 

――そこにいたのは、一糸まとわぬ男だった。

 

いや、厳密にはゴリラだった。

 

正確には、

ゴリラのような風貌を持ち、

しかしながら確かに人間の形をしている近藤勲だった。

 

銀時は、近藤の姿を一瞥すると、

実にどうでも良さそうな声で呟く。

 

「ああ、ゴリラ。お前もいたんだ……」

 

その一言が、空間に妙な静寂をもたらした。

 

「…………お嫁に行けません////」

 

ヒフミは、顔を真っ赤に染めながら目を覆う。

 

彼女の中の"何か"が崩れ去ったようだった。

 

一方、コハルはというと――

 

「何がってーー」

 

次の瞬間、彼女は叫んだ。

 

「なんでアンタは全裸なのよォォォ!!////」

 

その言葉に、銀時は鼻を鳴らしながら肩をすくめる。

 

「何言ってんだお前ら、ゴリラは服かなんか着ないで生きてるだろ?」

 

彼は、極めて冷静な声で、まるで常識を語るかのように言い放った。

 

しかし、コハルは鬼気迫る表情で銀時を睨む。

 

「いや……その人は"人"よね!?」

 

「どっからどう見ても近藤さんって人よね!?」

 

彼女は、銀時の"異常な認識"に食ってかかる。

 

しかし――

 

「何言ってるんですか?」

 

ハナコが、驚いたようにコハルを見つめる。

 

そして、落ち着いた声で、まるで数学の公式を説明するかのように、淡々と続けた。

 

「近藤さんイコールゴリラ。」

 

「ゴリライコール裸。」

 

「裸イコール近藤さん。」

 

「すでに定められたルールじゃないですか。」

 

彼女の表情には、一切の迷いがなかった。

 

それは、まるで"宇宙の法則"を語るかのような確信に満ちていた。

 

しかし、コハルは、そんな彼女の言葉を受けて、

まるで理解が追いつかないといった顔をする。

 

そして――

 

「いやそんな式知らないけど!!」

 

全力でツッコミを入れた。

 

その叫びが、トリニティの静謐な空間に響き渡る。

 

 

まるで悪夢のような光景だったが、

二人の当人たちはいたって真剣だった。

 

近藤は堂々と胸を張り、

コハルの方へと力強く拳を握りしめながら語りかける。

 

「コハルくん!!」

 

「裸や水着姿は決して悪いもんじゃない!!」

 

「むしろ正義という名の真っ直ぐに伸びた一本の道になっているんだ!!!」

 

彼の瞳には、まるで自らが偉大な哲学者にでもなったかのような熱量が込められていた。

 

しかし、コハルはその言葉を聞き、

まるで正気を疑うような表情を浮かべた。

 

「いや、何言ってるのか分からないんだけど……というか分かりたくない!!」

 

彼女の全身から、

**「理性がこれ以上崩壊するのは耐えられない」**という悲鳴が滲み出ていた。

 

だが――

 

その時。

 

静かに話を聞いていたハナコが、

再び口を開く。

 

「それにしても……裸こそが正義とは。」

 

彼女は、まるで新しい価値観に目覚めたかのように、

神妙な面持ちで呟いた。

 

「かなり前衛的ですね。」

 

「あまり考えたことはありませんでしたが、成程……試してみるのもまた一興ですか――」

 

ハナコは、そう言いながらゆっくりと手を水着の肩紐へとかける。

 

その瞬間――

 

「おお、ここで令和のギルガーメッシュが!!!」

 

銀時が感嘆の声を上げた。

 

しかし、その直後。

 

「や、やめてッ!!」

 

コハルが絶叫した。

 

「こんな所で脱ごうとしないで!?!?」

 

「兎に角、早く戻って!! はやく!!」

 

「もうすぐ先輩達が来ちゃうからぁぁぁ!!!!」

 

彼女は、ほとんど泣きそうな顔で叫びながら、

必死になってハナコの手を止めようとする。

 

しかし、ハナコはどこ吹く風。

 

軽く首を傾げながら、

むしろ困惑したように銀時たちの方へ視線を向ける。

 

「あら、しかし先生たちは私に用事が……」

 

しかし、コハルはもう限界だった。

 

「うるさいうるさいッ!!!」

 

「この公共破廉恥罪共!!!」

 

「早く戻れっ!!!」

 

彼女の悲鳴が、

トリニティの静謐な空間を無惨に引き裂いた。

 

――だが、そこに食い下がる男が一人。

 

「おい、コハルくん!! まだ裸族の極意がーー」

 

「うるさい!!!!」

 

コハルは容赦なく近藤の顔を愛銃でフルスイングした。

 

バゴォン!!!!

 

――ゴリラは吹っ飛んだ。

 

そんな混乱の中、ハナコは静かに微笑むと、

優雅な足取りで部屋の奥へと戻る。

 

そして、銀時に向かって穏やかに微笑みながら一言。

 

「あらら、すみません先生。」

 

「どうやら色々と混乱している状況のようですので、また後程お会いしましょう。」

 

そう言い残し、

彼女は静かに部屋の奥へと消えていった。

 

「はぁ……助かりました。」

 

ヒフミは、ようやく肩の力を抜きながら、

心底安堵したようにため息をつく。

 

そして、その横で――

 

銀時は、どこか寂しげに呟いた。

 

「あーあ……令和のギルガーメッシュが……」

 

ヒフミは、銀時の発言を聞くや否や、

すかさずジト目を向けた。

 

「銀さん……この小説、本気で止めるつもりですか?」

 

その声は呆れと困惑に満ちていた。

 

しかし、銀時はどこ吹く風。

 

背後ではコハルが息を切らせながら戻ってきていた。

 

彼女は、先ほどまでの大騒動の中心人物――

水着姿のハナコと全裸の近藤を、どうにか部屋の奥へと押し込めてきたのだ。

 

額に汗を浮かべながら、

コハルは肩で息をしつつ、鋭い眼光で銀時とヒフミを睨みつける。

 

そして――

 

「はぁ、はぁ……」

 

彼女は、大股で二人の元へ詰め寄った。

 

「……で?」

 

「ハナコさんと近藤さんは、この後一体どうなるんですか?」

 

ヒフミが恐る恐る尋ねると、

コハルは、何の迷いもなく答えた。

 

「そんなの当然死刑よ!!」

 

彼女の声が部室に響き渡る。

 

「エッチなのはダメ! 死罪!!」

 

ヒフミは、震えながら、

どこかで見たような圧政者の如き発言に戦慄する。

 

しかし、銀時はすぐさま反論した。

 

「俺から言わせれば――」

 

彼は、腕を組みながら大きく息を吸い込み、

 

「ギルガーメッシュを奪ったお前にこそ!!!」

 

「男の夢を奪うなんてダメ! 死刑!」

 

「なんだけどな〜」

 

どこか芝居がかった口調で、

あたかも被害者のように嘆き悲しむ。

 

「う、うるさい!アンタも牢にぶち込むわよ。」

 

コハルの即答だった。

 

彼女は、殺気を帯びた目で銀時を睨みつける。

 

しかし、銀時はまるで動じず、

むしろ不敵な笑みを浮かべながら呟く。

 

「おう、やってみろよ。」

 

「どうせ牢に入ったところで、すぐに脱獄して水着美女と2◯1対1プレイするって相場が決まってんだからよ〜。」

 

その言葉に、ヒフミの怒りが爆発した。

 

「銀さん!!!!!」

 

 

彼女のツッコミが炸裂し、トリニティの厳かな部屋に無惨に響き渡った。

 

混乱と騒動がようやく収束し、

部屋の中に一瞬だけ静寂が訪れた。

 

ヒフミは、小さくため息をつきながら、

銀時へと視線を向ける。

 

「どうしましょう……」

 

「今ちょっとハナコさんとお会いするのは難しそうですが……別の生徒に会いに行きますか?」

 

彼女の言葉に、銀時は肩をすくめる。

 

「そうだな。そろそろムッツリにも遊び疲れたし……」

 

その適当すぎる返答に、

コハルが即座に噛みついた。

 

「遊ぶなッ!!」

 

コハルの怒声が響き渡る。

 

ヒフミは、びくっと肩を跳ねさせ、

若干涙目になりながら手にしたファイルをめくる。

 

その手元には、補習授業部の名簿。

 

ヒフミは、その名前欄を指先でなぞりながら、

次に向かうべきメンバーを確認する。

 

「えっと――次は……」

 

彼女は、小さく咳払いをして、

慎重に名前を読み上げる。

 

「『白洲アズサ』さん、ですね」

 

だが、その瞬間。

 

「――ただいま戻りました!!」

 

突如として、

部室の扉が勢いよく開かれた。

 

その場にいた全員が、

思わずそちらに目を向ける。

 

そこに立っていたのは――

 

正義実現委員会のメンバーたちだった。

 

彼女たちは、どこか誇らしげな表情を浮かべながら、

敬礼のポーズを取り、堂々と報告を始める。

 

「任務完了です!」

 

「現行犯で『白洲アズサ』さん――」

 

「桂小太郎さん――」

 

「そして、『謎の生物エリザベス』を確保しました!!」

 

室内に、凍りつくような沈黙が流れた。

 

そして、銀時は、

驚愕の表情を浮かべながら、

ゆっくりと眉をひそめる。

 

「……は?」

 

テロリストのメンバーに、

なぜか副顧問の桂とエリザベスが混じっていた。

 

――

"次なる嵐の予感"が、部室の空気をざわめかせる。

 

銀時は、報告を終えた正義実現委員会の背後に

嫌な予感を覚えながら、そっと視線を向けた。

 

そして――

 

そこにいたのは、

 

ガスマスクを装着した、如何にも不審者然とした生徒だった。

 

彼女は無言のまま立ち尽くし、

呼吸音だけが**「シュコー、シュコー……」**と

規則正しく響いていた。

 

その異様すぎる姿に、ヒフミは思わず絶句する。

 

(校内で水着ならば、まぁ、まだ理解出来ない訳でもない。一応制服だし、TPOは兎も角自分も着用するモノだし――)

 

(しかし、ガスマスクは分からない。)

 

(何故、ガスマスク? 一体何の為に?)

 

理解できないものは怖い。

分からないものほど恐ろしい。

 

ヒフミがこの生徒に抱いた感情は、

純粋な困惑と恐怖だった。

 

しかし、当の本人はというと――

 

捕縛されたまま、悔しげな声で呟いた。

 

「……惜しかった、弾丸さえ足りていれば、もう少し道連れに出来たのに。」

 

「み、道連れって……」

 

ヒフミの背筋が、ゾクリと冷え上がる。

 

「――もう良い、好きにして。」

 

「ただ拷問に耐える訓練は受けているから、私の口を割るのはそう簡単じゃないよ。」

 

そう云って背筋を正し、

超然とした態度を崩さない小柄な生徒。

 

補習授業部二年、白洲アズサ。

 

校内での暴力行為の疑いで正義実現委員会から追跡されていた所、

桂とエリザベスと協同で教材用催涙弾の弾薬庫を占拠。

 

凡そ一トンの催涙弾を爆破させ、八時間に渡る抵抗の末、逮捕。

 

確保される寸前まで各種ブービートラップ、IED急造爆発物、んまい棒を用いて激しく抵抗、被害者多数。

 

ヒフミは、膝が震えるのを必死に抑えながら、

銀時へと視線を向ける。

 

「ぎ、銀さん……この人、本当に補習授業部の生徒なんですか……?」

 

「知らねぇよ」

 

銀時が即答したその時――

 

アズサの横で、同じく拘束された桂が、不敵な笑みを浮かべながら言った。

 

「案ずるなアズサ殿。」

 

「牢にぶち込まれようと、我々の活動は止まることを知らない。」

 

その言葉に、アズサが首を傾げる。

 

「……どういう意味だ?」

 

「牢なんて、近くの定食屋感覚で無料で飲み食い出来る場所なんだからな。」

 

アズサは、桂の言葉を聞き、

一瞬考え込むような素振りを見せたが――

 

次の瞬間、納得したように頷いた。

 

「なるほど……勉強になった。小太郎。」

 

桂の目が、一瞬だけ驚いたように見開かれる。

 

そして、彼はゆっくりと微笑み――

 

「小太郎ではない……」

 

「俺たちはもう戦友。つまりは友。」

 

「これからは桂と呼べ。」

 

「……桂。」

 

「アズサ。」

 

「桂。」

 

「アズサ。」

 

「桂。」

 

「アズサ。」

 

銀時の顔が、見る見るうちに歪む。

 

次の瞬間――

 

「いつまで名前呼びごっこ続けてんだァァァァァ!! ウゼェ!!」

 

ドカァン!!!

 

銀時の飛び蹴りが、桂の顔面に炸裂した。

 

その衝撃で、桂は転がり、

背後の壁に頭をぶつける。

 

しかしこれだけでは終わらない

 

「何補習授業部副顧問のテメーが生徒と共にテロ行為して捕まってんだよ!」

 

「逃げきれよ!逃げの小太郎って名づけられてるだけの逃げくらい見せろよ!!」

 

しかし、彼はすぐに体勢を立て直し、

まるで何事もなかったかのように立ち上がると、

銀時を見つめ、穏やかに言った。

 

「なんだ銀時。」

 

「貴様も捕まったのか。」

 

「攘夷活動の同志がまた見つかって嬉しいぞ。」

 

銀時の顔が、一気に険しくなる。

 

そして、声を荒げた。

 

「俺がいつまた攘夷志士になったよ!?!」

 

「ていうかここ地球じゃなくてキヴォトス!!!」

 

桂は、まるで聞いていなかったかのように、

静かに微笑んだ。

 

「一体どこまで攘夷おままごと広めようとしてんだお前は!!」

 

桂の目が鋭く光る。

 

「攘夷おままごとなどではない!」

 

その宣言とともに、隣に立つエリザベスが素早くプラカードを掲げる。

 

『腐った風潮のお掃除だ』

 

銀時は、その一連の流れを呆れ顔で眺めると、

すかさずツッコミを入れた。

 

「そいつを攘夷活動(※銀魂の中では)って言うだろうが!!!」

 

彼のツッコミが炸裂した瞬間、

部室内の空気が一気に張り詰める。

 

そして――

 

そんな銀時の前に、一人の少女が姿を現した。

 

長身で鋭い眼光を持ち、端正な顔立ちを持つ少女。

 

その立ち姿は完璧なまでに整っており、背筋は一切の乱れを見せない。

 

彼女は、静かに息を整えながら言葉を紡ぐ。

 

「騒がしいです―よー―」

 

しかし、彼女は途中で言葉を止める。

 

目の前にいる銀時の顔を見た途端、

その表情が僅かに揺らいだ。

 

「……あなたは、あの時の……」

 

その声の主は――

 

正義実現委員会の副部長、ハスミ。

 

彼女は、銀時を見るなり小走りで銀時をの元へと駆け寄るた。

 

その様子を見て銀時はニヤリと口元を緩める。

 

「よぉ、デカ女。元気してたか?」

 

ドカッ!!

 

ボゴォ!!!!!

 

バギィ!!!!!!!

 

衝撃音が立て続けに響き渡る。

 

銀時は、見事なまでの三連撃を浴びせられ、

吹き飛びながら床を転がった。

 

「痛ってぇな!!!」

 

額を押さえながら、銀時は転がったまま叫ぶ。

 

「正義実現委員会の副部長ともあろうお方が、何拳で正義語ってんの!? 暴力反対!! 反省しなさい!!!」

 

だが、その叫びとは裏腹に、

ハスミは微動だにせず、腕を組んだまま銀時を見下ろす。

 

「……デカ女って言わないでください、と前にも言いましたよね?」

 

その目は、まさに裁きを下す女神のように冷徹だった。

 

銀時は、呻きながらゆっくりと体を起こし、

言い訳じみた言葉を並べようとする。

 

しかし、ハスミは冷ややかな目で彼を一瞥すると、

すぐに話題を切り替えた。

 

「さてと、それはさておき……」

 

銀時は、その言葉に驚きながら問いかける。

 

「無視ですか?」

 

ハスミは、その反応すら気に留めることなく、

銀時たちの状況を確認し始めた。

 

そして、簡単な報告を受けた後、

ゆっくりと銀時へと向き直る。

 

「……成程、お話は理解しました。」

 

彼女の声には、一切の迷いがなかった。

 

「銀さんが補習授業部の担任の先生になられると。」

 

それからややあって――

 

銀時たちから粗方の事情を聞き終え、

補習授業部の設立に関する情報を整理したハスミは、

正義実現委員会の副部長として酷く無念そうに呟いた。

 

「残念です。」

 

彼女は、静かに目を伏せる。

 

「出来ればお手伝いをしたかったのですが……」

 

その言葉は、

どこか"無力感"を滲ませていた。

 

正義実現委員会として、

補習授業部の秩序を正したいという思いはあれど、

それを直接支援する立場にはない。

 

その現実を前に、

ハスミは静かに拳を握る。

 

銀時は、それを眺めながら

わざとらしく肩をすくめた。

 

「別にそんな深刻になることねぇだろ?」

 

「アンタらの正義は正義でやりゃいいし、俺は俺で"バカども"の担任やらせてもらうだけだ。」

 

 

ハスミの眉がわずかに動いた。

 

「ーー!」

 

彼女は一瞬、何かを言おうとしたが、結局ため息混じりに首を振る。

 

「……全く、よく分からない人ですね。」

 

それに対して、銀時は不敵に笑う。

 

「よく分からない人で悪かったな。」

 

「そこでその"よく分からない人"から一つ頼みたいんだけど〜」

 

ハスミは、銀時の言葉に軽く目を細める。

 

「それ、気にしてるんですね。はい。なんでしょう。」

 

銀時は、ニヤリとしながら指を一本立てる。

 

「このテロリストたち連れて行ってもいいって許可が欲しいんだけど」

 

その瞬間、隣で話を聞いていたコハルが弾かれたように叫んだ。

 

「はぁ!? ダメに決まっているでしょ!? 絶対ダメ!! 凶悪犯なのよ!?!」

 

彼女は、ガスマスクをつけたまま静かに呼吸音を漏らすアズサや、

どこか無気力そうに立つ桂とエリザベスを指差しながら、

全力で反論する。

 

しかし、当の本人たちは――

 

自分たちの処遇に微塵も興味がないようだった。

 

アズサは微動だにせず、

むしろ銀時も拷問を担当する人員の一人だと見なしているのかもしれない。

 

どんな相手だろうと口を割るつもりはない――

そんな決意が、彼女の静かな姿勢から伝わってくる。

 

その異様な沈黙の中、

ハスミは冷静に口を開いた。

 

「コハル、この人は先生として、ティーパーティーから依頼を受けてこちらにいらっしゃったのです。規定上は何の問題もありません。補習授業部の顧問、担任になるのですから。」

 

コハルは、ハスミの言葉を聞き、目を丸くする。

 

「え、えぇ、でも――……」

 

彼女は、最初は強く拒絶するつもりだったが、

先輩としても正義実現委員会のメンバーとしても尊敬するハスミの意見には逆らえない。

 

渋々と意見を呑み込むように、彼女は目を伏せた。

 

だが、何を思ったのか、

目の前に立つヒフミと、拘束されたアズサや桂、エリザベスを見下ろすと、

鼻を鳴らし、明らかに嘲笑を零した。

 

「ふ、ふん! でも良い様よ!」

 

「こっちはこんな凶悪犯たちと一緒にいなくて済むし、そもそも補習授業部だなんて、恥ずかしい!」

 

「そう、そうよ! あははっ、良いんじゃない? 悪党と変態の組み合わせ!」

 

「そこにバカの称号だなんて、私なら一緒にいるだけで羞恥心で死んじゃいそう!」

 

彼女は、今にも腰に手を当てて高笑いを始めそうな雰囲気だった。

 

しかし、その瞬間。

 

「ふぅ……コハル?」

 

ハスミが、静かに彼女の名を呼ぶ。

 

その声は低く、

まるで「それ以上は言うな」と言わんばかりの圧力を含んでいた。

 

しかし、それとは別に、

コハルには**もっと別の"残念なお知らせ"**があった。

 

ヒフミは、手に持った名簿とコハルを交互に見つめながら、

申し訳なさそうに口を開く。

 

「えっと、その……非常に口にし辛いのですが」

 

彼女は、僅かに逡巡しながらも、

やがて、決定的な一言を告げる。

 

「まだここにはもう1人補習要員がいましてーー」

 

コハルは、笑いを止めると、

不安そうに問いかけた。

 

「え? 誰、誰?」

 

すると、銀時が軽く息をつき、

あまりにもあっさりと指を差した。

 

「お前だよ。脳内ピンク頭。」

 

ヒフミも、名簿を改めて確認しながら静かに言う。

 

「最後の一人は――

 

下江コハルさん、です。」

 

コハルの表情が、

まるで時が止まったかのように固まる。

 

「………………えっ」

 

あまりにも信じがたい言葉に、

彼女は言葉を失った。

 

そして、銀時は、

どこか哀れむような目で彼女を見ながら、

決定的な一言を告げる。

 

「しかも、この中でいちばんのバカ。」

 

――補習授業部一年、下江コハル。

 

既に三回連続で赤点を叩き出し、留年目前。

 

補足事項:成績が向上するまで、正義実現委員会には復帰出来ないものとする。

 

コハルは、信じられないものを見る目で銀時とヒフミを交互に見つめる。

 

そして、やがて、ゆっくりと足元に崩れ落ちた。

 

「……え?」

 

彼女の呟きは、虚空に消えた。

 

 

 




次回予告

銀時「さてとまずは自己紹介をしてもらいまーす」

桂「ちなみにヅラじゃない桂だ!みたいに短く頼むぞ」

栗子「遅れましたでござりまする!!」

ゴリラ13「お前たち栗子ちゃんに触れるなよ。殺し屋ゴリラ13」

ドS13「お前らメス豚どもを調教してやるぜ。殺し屋ドS13」

土方「お前ら何やってんだよ!それと13ってなんだァァァァァ!!?」

次回 レクレーションにまで来る親は心配しすぎて殺し屋を雇う。

〜透魂〜第一回キャラクター人気投票

  • 銀時
  • 新八
  • 神楽
  • 沖田
  • 土方
  • 山崎
  • 高杉
  • 定春
  • エリザベス
  • ホシノ
  • シロコ
  • ヒナ
  • アコ
  • ミカ
  • ナギサ
  • セイア
  • ユウカ
  • ノア
  • 近藤
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