透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
カオスすぎて話が分からないかもしれません。
お許しください。
解除しないでください。
銀時「さぁついたぞここがーー」
「補習授業部の新校舎だ」
風が吹いた。寂れた校舎の外壁を擦るように、乾いた音を立てながら。
ヒフミは足を止め、恐る恐る目の前の建物を見上げた。夕暮れの赤い光が、崩れかけの校舎の輪郭をくっきりと浮かび上がらせる。いや、校舎というよりは、廃墟――いや、それすらも生ぬるい。まるで時間に取り残され、誰にも顧みられることのなかった幽霊屋敷のようだった。
外壁にはいくつかひび割れが走り、窓ガラスはところどころ割れ、残ったガラス片は陽の光を受けて鈍く光っていた。屋根は半ば崩れ落ちており、一部の梁が剥き出しになっている。その間から、枯れ枝のように絡みついたツタが無造作に垂れ下がっていた。
そんな不気味な光景を前に、ヒフミの顔はみるみる青ざめていく。
「新校舎っていうより……心霊スポットじゃないですか!? 何かが出てきそうなんですけど!!」
悲鳴にも近い声を上げながら、ヒフミは銀時の袖を掴み、必死に訴えかける。しかし、当の銀時はポケットに手を突っ込んだまま、相変わらずのダルそうな態度で建物を見上げた。
「おいおい、俺たち以外の何が出るってんだよ。せいぜい工場長の霊ぐらいだろうが。」
ヒフミは一瞬、言葉の意味が理解できずに固まる。
「……え? こ、工場長?」
「おう。そん時はみんなでそこら辺に転がってる斬魄刀でも拾い集めて、ソウルソサエティに送り返してやりゃいいんだよ。」
さらりと言ってのける銀時に、ヒフミの顔がますます引きつる。
「それはそれで嫌です!! ていうかどこからどう見ても学園なのに、なんで斬魄刀が転がってる前提なんですか!? ここ、瀞霊廷(せいれいてい)じゃないですよね!? ねえ、そうですよね!?」
混乱しながらも必死にツッコむヒフミの背後から、呑気な声が聞こえてきた。
「うーん、困りましたねぇ。」
困ったような顔をしながら、それでいてどこか楽しげな様子で、ハナコが顎に指を当てて考え込んでいた。
「このままでは、全員で裸になって同じ床について寝ることになってしまいますねぇ……。」
「何言ってるんですか!? なんでその選択肢しかないんですか!?」
ヒフミが食い気味に叫ぶが、ハナコはどこ吹く風といった様子で続ける。
「だって、寝床がない以上、布団の取り合いになってしまいますよね? ならばいっそ、みんなで一緒に寝ることで仲間意識を高めるべきかと――」
「なんで全員で一緒に寝るのがお約束みたいになってんの!!」
その瞬間、バンッ!と勢いよく木の箱を蹴り飛ばしながら、コハルが叫ぶ。
「◯Pダメ!! 死刑!!」
鋭い視線をハナコに向けながら、コハルは肩で息をしている。その目には、すでに断罪の意志が宿っていた。
「ふぇぇ……」
ヒフミはもはや呆れる暇もなく、その場にヘナヘナと崩れ落ちそうになった。
銀時はふと気がついた。
「そういえばヅラたちはどうした?」
補習授業部の新校舎(廃墟)の一角、銀時が適当に腰かけた埃っぽい木箱をトントンと叩きながら尋ねる。
ハナコは少し首を傾げた後、部屋の奥を見渡しながら答えた。
「あら? 先程までは一緒に居たのですが……」
確かに、ついさっきまで桂やアズサたちは共に行動していたはずだった。しかし、気づけばその姿は消え、残されたのは薄暗い部屋と、どこからともなく聞こえる風の音だけだった。
「おっかしいなぁ……トイレか? いやでも、そんな報告もなかったし……」
ハナコは窓を開け、外の様子を確認する。冷たい夜風が吹き込み、カーテンを揺らした。だが、桂たしの姿はどこにもない。
――ガチャリ。
その時、突然部屋の扉が開いた。
全員がハッとしてそちらを見ると、薄暗い廊下の奥から、静かにアズサが顔を覗かせる。彼女は普段と変わらぬ無表情のまま、一歩、また一歩と部屋へと足を踏み入れた。
「ア、アズサちゃん!? 今までどこに――」
ヒフミが安堵と驚きの入り混じった声を上げる。だが、それを遮るように、アズサは短く言い放った。
「偵察完了だ。」
その瞬間、桂が満面の笑みを浮かべ、まるで戦功を称えるかのように高らかに宣言した。
「よくやったぞ!アズサ殿! それではこれより、んまい棒授与式を――ブフォッ!!」
次の瞬間、銀時とヒフミの飛び蹴りが炸裂。二人の蹴りを同時に喰らい、桂は派手に吹っ飛んだ。
床を転がる桂を横目に、ハナコがふと窓の外へ目を向ける。何か、違和感があったのだ。
「……銀ちゃん、ヒフミちゃん、あれって……」
ハナコが指さした先。
月明かりに照らされた廃墟の外には、ぼんやりとした人影が三つ、揺らめいていた。
「おぉー、あれは工場長の霊だよ。間違いねぇようん。」
銀時が何の躊躇もなく頷く。まるで確信を持ったような口調で。
「で、でも……三人いた気が……」
ハナコが不安そうに呟く。
「じゃああれは、ベルトコンベアーを操作していた従業員と、工場長を突き落とした従業員の霊ですね。間違いありませんよ。うん。」
今度はヒフミが適当な推理を披露し、納得したように頷く。
「そ、そうですか……」
ハナコも、それ以上突っ込む気力がなくなったのか、何となく納得してしまった。その時――
「何納得してんの!! あれ完全に桂とアズサ、エリザベスのバカコンビだったでしょ!!」
コハルが勢いよく叫ぶ。
「あとどんだけ工場長を引っ張ってんの!! もういい加減にしなさいよアンタら!!」
そんなコハルの怒声をものともせず、銀時は気怠そうに欠伸をしながら肩をすくめた。
「いやいや、怪異(?)に立ち向かう気概がねぇなら補習授業部の一員としてやっていけねぇぞr18。」
「誰が補習授業部の一員としてやっていく覚悟を問われてるのよ!!!」
コハルのツッコミが響く中、部屋の扉が再び開かれた。
「初めましてでござりまする。」
慎ましやかに名乗りを上げたのは、一人の少女――栗子だった。
彼女は丁寧に一礼し、優雅に姿勢を正した。
「私は栗子、これより補習授業部の一員となることになりました。」
「おお! よく来たな、栗子殿!」
いきなり近寄ってきた桂に、栗子はぱちくりと瞬きをした。
「……どなたで?」
「何を言うか! 余はかつて、お主の屋敷で共に働いた仲――」
「はて?」
栗子はしばらく考え込むように銀時の方へ目を向けた。
「……銀時様、この方は?」
「あー、ヅラ。」
銀時があっさりと答える。
「ヅラじゃない桂だ!!!」
桂の反論も虚しく、栗子はさらに首を傾げる。
「……ヅラ? しかし、私は確かに以前、お屋敷でお世話になった家政婦の方しか存じ上げませぬが……」
「それがヅラ」
「ヅラじゃない桂だ!!! 何故そのような中途半端な認識で記憶されているのだ!?」
桂が必死に食い下がるが、栗子は「家政婦=桂」という認識しかないらしく、どうにも納得がいかない様子だった。
そのやりとりをぼんやり眺めながら、銀時はぼそっと呟いた。
「……家政婦ヅラ、誕生っと。」
その瞬間、桂が勢いよく詰め寄った。
「誰が家政婦だぁぁぁぁ!!!」
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真昼の太陽がギラつく空の下、灼けた空気がゆらめいている。どこからか蝉の声がけたたましく響き、まるで夏の暑さを煽るようだった。
そんな中、学園の一角――いや、正確には補習授業部の新校舎(廃墟)の少し離れた高台に、数人の男たちが集っていた。陽の光を浴びながら、彼らはじっと校舎の方を見つめている。
その中心にいるのは、一人の男。鍛え抜かれた体に羽織るのは、長年の風雪に晒されてきたかのような古びたコート。その瞳には猛禽類のような鋭さが宿っているが、今はそれ以上に怒りの炎が燃え盛っていた。
「聞きましたかい? アイツら、完全に油断してますぜ」
沖田総悟が淡々とした口調で言う。言葉の端々には、どこか楽しげな響きすら混じっていた。
隣に立つ男は、片栗虎――栗子の父であり、親バカの権化。彼はゆっくりとスナイパーライフルを構えながら、静かに――だが、確実に怒りを込めた声で呟いた。
「あのヤロー……栗子はなぁ、お前らの茶番に合わせて一時間も待ったんだよ……」
彼の声は低く、しかし雷鳴のように響く。
「手塩にかけて育てた娘の一時間……」
彼はゆっくりと銃のスコープを覗き込みながら、言葉を続けた。
「テメーらの残りの人生できっちり償ってもらおう」
「おいトシ、お前ちょっと土台になれ」
鋭い瞳の奥には、獲物を確実に仕留める狙撃手の決意が宿っていた。
その隣で、土方十四郎が思わず青筋を立てながら叫んだ。
「待たんかいィィ!! アイツってまさか補習の顧問になったアイツらか!!」
片栗虎は鼻を鳴らし、まるでゴミでも見るような目つきで土方を睨みつけた。
「顧問じゃねぇ!!」
拳を握りしめ、忌々しげに言葉を吐き捨てる。
「あんなぐうたら顧問に、テロリスト顧問パパは絶対認めねぇよ」
その言葉に、土方は即座に応戦する。
「やかましいわ! お前こそ俺たちの上司なんて絶対認めねーよ!!」
だが、それをさらに上回る勢いで、沖田がにやりと笑いながら口を挟んだ。
「土方さん、俺もアンタが真選組副長なんて絶対認めねーよ」
「オメーは黙ってろ!!」
暑さのせいではない、異様な熱気が辺りに満ちる。
土方はふと肩をすくめ、冷静さを取り戻しながら説明を始めた。
「いいか? 俺たちは気にいらねぇが、あの紅茶中毒女(ナギサ)の命令で、ここでアイツらが不審な動きを見せねぇか密偵の役にあたってんだぞ」
「その命令を無視してまで、わざわざ作戦があると来てみれば今しようとしてんのは娘の授業を邪魔するだァ?」
「やってらんね。もっと近くで監視するぞ」
だが、片栗虎はその説明を一蹴した。
「ちょっと待てぇ、俺がいつそんなこと頼んだ。」
スナイパーライフルの照準を微調整しながら、なおも鋭い視線を校舎に向けたまま、彼は静かに言葉を続ける。
「俺はただ、あの男どもを抹殺して血の海にあげてやりてぇだけさ」
「もっとできるかァァァァァ!!」
土方が思わず叫ぶ。しかし、片栗虎は動じることなく、少し肩を落として溜息をついた。
「いや、俺だって娘が学校の授業に遅れているのくれぇ、わかってる」
「だから臨時講師に習うのだって色々考えて了承した」
土方と沖田は、少し驚いた表情で片栗虎を見た。
しかし、その後に続いた言葉で、その驚きはすぐに呆れへと変わる。
「だが、それが2人とも、男でそれも片方はぐうたら・片方はテロリスト」
「どちらに惚れてもおかしくねぇ、ってんで抹殺しかねぇって思ったのさ」
「色々考えすぎだろ!!」
土方が全力でツッコミを入れる。
「近藤さん、あの親バカになんか言ってやってくれ!!」
そう言って振り向いた先にいたのは、なぜかサングラスをかけ、不気味に佇む男――近藤勲だった。
彼は静かに息を吸い込み、低く重い声で告げる。
「誰が近藤だ。」
サングラスの奥で目を細めると、ゆっくりとスナイパーライフルを構えた。
「ゴリラ13、依頼を受けたらなんでも撃ち抜き、露出狂に変えるBOR◯ER最高戦力の殺し屋だ」
「いやそれ最低の殺し屋だろそれ!! 社会的に抹殺してくる心のアサシンだろそれ!!」
土方の叫びも届かず、近藤は不敵に笑いながら片栗虎の肩を叩いた。
「とっつあん。共に栗子ちゃんを呪縛から解き放つぞ」
片栗虎は近藤の言葉を聞き、一瞬だけ沈黙する。
しかし、次の瞬間、彼の目には決意が宿っていた。
「近藤。」
そう静かに呼びかけると、二人はゆっくりとスナイパーライフルを構えた。
近藤が低く、だがはっきりとした声で言う。
「いつも妹みたいに見ていた栗子ちゃんを、あんな奴らに任せられっか。行くぞ、とっつあん!」
片栗虎が力強く頷く。
「おう!」
そして、それを少し離れた位置から観察していた土方十四郎は、額に冷や汗を滲ませながらその光景を見つめていた。
「……ヤベェぞあれ、絶対なんかしでかすに決まってる。止めに行くぞ、総悟!」
焦燥感に駆られた声で呼びかけるが、隣に立つ沖田総悟は、妙に落ち着いた様子でサングラスをかけ直しながら言った。
「誰が総悟でい」
彼はゆっくりと足を組み、拳銃のグリップを軽く回しながら、不敵な笑みを浮かべた。
「ソウゴ13、改めドS13。サディスティック星の王子にして、能力は撃ち抜いた相手をメス豚に変えるというもの。ゴリラ13と同じくBOR◯ER最高クラスの戦力だ」
「オメーに関してはいつもと何ら変わってねぇじゃねぇか!!」
土方が即座にツッコミを入れるが、沖田は意に介さず、さらにサングラスを押し上げながら淡々と続ける。
「ちなみに、土方に対しては当たれば一撃必殺の弾丸を撃ち込むことができる」
「それはキル出来ねぇようにしろよ!! なんでそこだけ殺意レベルMAXなんだよ!!」
土方の悲痛な叫びもむなしく、沖田は悠然と銃を持ち上げ、軽く構えながらニヤリと笑う。
「というわけで、俺も行ってきま〜す」
その瞬間だった。
ドッカン!!!
衝撃音と共に、炸裂する閃光。
土方が何かを言う間もなく、耳元をかすめるように炸裂弾が吹き飛ぶ。爆風に煽られ、彼の口に咥えたマヨネーズのキャップが吹っ飛んだ。
「ぐおォォ!! てめぇェェ!!」
悲鳴とも怒号ともつかぬ叫び声を上げる土方を尻目に、沖田はそのまま軽快に走り出した。まるで戦場を楽しむかのように、軽やかな足取りで。
「じゃ、ちょっくらゴリラととっつぁんを追うんで、あとはよろしくゥ」
そう言い残し、サングラスの奥で不敵な笑みを浮かべながら、沖田は片栗虎と近藤を追い、夜闇(まだ昼)へと消えていった。
その場に取り残された土方は、爆風で焦げた自分のコートを呆然と見つめながら、拳を震わせた。
「おい……ちょっと待て……待てコラァァァァ!!!!!」
土方十四郎の怒号が、真昼の空に響き渡る。
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日差しが斜めに差し込み、補習授業部の校舎を照らしていた。とはいえ、建物自体はボロボロで、その光さえもひび割れた窓や欠けた壁を通り抜け、どこか哀愁を帯びた影を落としていた。
その中で、一つだけ異様に磨かれた窓があった。
――カリカリッ、カリカリッ。
窓越しに見えるのは、一心不乱に雑巾を滑らせるヅラ子(桂小太郎)。その横では栗子(栗村アイリ)が少し緊張した面持ちで、桂の指導を受けていた。
「いいですか、栗子様。窓は新聞紙を丸めて水で少し濡らして……」
桂は優雅に微笑みながら、手際よく窓を磨いていく。その様子はまさに、長年仕えてきた家政婦の如き風格すら漂わせていた。
栗子は素直に頷きながら、その動きを真似る。彼女にとって、こんなに真剣に窓を磨くのは初めての経験だった。
——だが、その窓の向こうでは、別の緊張感が渦巻いていた。
一方、校舎から少し離れた茂みの中。
じりじりとした太陽の下、木漏れ日がちらつく隠れ家で、三人の男が身を潜めていた。
沖田総悟はスコープ越しに窓を見つめ、ニヤリと笑った。
「見てくだせぇ、アイツら油断して掃除なんてしてますぜ」
スコープの向こうでは、真剣に窓を磨く桂と栗子の姿が映っていた。
片栗虎(栗子の父)は、重々しく頷きながら、拳を握りしめる。
「そうか……さぁ、あの家政婦をよ〜く狙って――」
しかし、隣の近藤が不意に彼の腕を制した。
「待て、とっつぁん!見ろ、アイツらの窓……!」
片栗虎の視線の先、校舎の窓は洗剤で白く曇り、完全に視界が遮られていた。
「ヤロー……やりやがるな……洗剤で視界を消すたぁ……」
近藤が唸るように言い、片栗虎が歯を食いしばる。
「でしょ?アイツら、実は俺たちがいるって気がついて――」
「んなわけねぇだろ!!」
唐突に響いた怒鳴り声。
スナイパーたちの緊張感を一刀両断するように、土方十四郎が苛立たしげに叫んだ。
「窓拭きに洗剤使うなんて普通だし、あんな汚ねぇ校舎で勉強なんか出来るか!! 作戦でもなんでもねぇに決まってんだろ!! お前らの心も一緒に掃除されてろ!」
常識という名の砦を死守するべく、土方は全力でツッコミを入れる。しかし、片栗虎は眉をひそめ、憮然とした表情を浮かべた。
「窓拭き掃除なんて家政婦にしかやらせたことなんてねぇから分かんねぇよ」
その呟きに、土方の額の血管がピクリと跳ねる。
「じゃあオメー、今まで自分で窓くらい拭いたことねぇのかよ!」
「大人の窓にこんにちはしたことはあるけど」
「早まったことすんじゃねぇ!!」
ツッコミの応酬が続く中、土方は大きく息を吐いた。そして冷静に言い放つ。
「要はアイツらから娘を奪還すればいいんだろ? 他に方法なんていくらでもあるだろ」
近藤がニヤリと笑いながら、スナイパーライフルを持ち上げた。
「なんだお前、仲間に入りてぇのか?BOR◯ERの仲間入りしてぇのか?」
土方の表情が一気に険しくなる。
「テメェらが血迷ったことはしねぇかどうか見張りに来たんだろうが!! というかBOR◯ERってオメーらが勝手に名乗ってるだけだろ!」
「どっからどう見ても最高の殺し屋だろ、俺たち!」
近藤が得意げに言い放つが、土方はこめかみを押さえながら深いため息をつく。
「敵が誰なのかぐらい判別ぐらいできら」
「現に判別出来てねぇだろうが!!」
その時、沖田がふっと笑い、スコープを覗きながら口を開いた。
「まぁ、ああいう若い頃の娘はね、先生にでもなんでもコロっといっちゃうもんなんでさぁ」
涼しい顔で言いながら、まるで何かを悟ったように肩をすくめる。
「そして、ちと火傷して大人になっていくんでさぁ」
深く頷く沖田の言葉に、土方はしばし沈黙した。そして、心の底から呆れたように尋ねる。
「総悟、お前年いくつ?」
突如として訪れた静寂。
沖田は一瞬、思考が止まったかのような表情を見せたが、すぐにいつものようにニヤリと笑った。
「ん? それを言っちゃあ、おしまいでさぁ」
土方は拳を握りしめ、静かに震えた。
「おしまいなのは……てめぇの脳みそだろ」
昼下がりの校舎の裏で、土方十四郎が静かにツッコんだ。
「しかし、このままじゃ埒があかんぞ」
近藤勲が顎に手を当て、鋭い目つき(自称)で校舎を睨む。窓越しには、掃除を終えたばかりの桂と栗子たちの姿がぼんやりと映っている。
片栗虎は腕を組み、険しい表情で低く呟いた。
「じゃあ、ここはちょっと潜入してみるとするか」
彼の瞳がぎらりと光る。何かを思いついた時の目だ。
「ってんで……」
片栗虎は懐から一本の短刀を取り出し、無造作に土方の胸元へと突きつけた。
「トシー、この短刀を持って潜入、及び強盗、暗殺の冥人になって来いやー」
土方十四郎は、突如として渡された短刀を呆然と見つめた。そして、即座に拳を握りしめ、全力でツッコむ。
「なんでだァァァァァ!! なんで警察の俺がそんな真似しなきゃいけねぇんだよ!! あと冥人ってなんだ!!」
近藤が優しく(?)微笑みながら、ポンと土方の肩を叩く。
「何驚いてんだトシ、お前は蒙古襲来の折に誉れを捨てて対馬を救った冥——」
「ここで声優ネタぶち込むんじゃねぇよ!! ていうか何年前のゲームなんだよ!! 古りぃんだよ!!」
土方の叫びに、周囲の鳥たちが驚いて飛び立つ。だが、そんなことを気にする彼らではない。
沖田総悟が、スコープ越しに窓を眺めながら肩をすくめた。
「仕方ねぇや、土方さんが行かねぇなら俺がいく」
その一言に、片栗虎は目を潤ませ、感動したように呟いた。
「総悟……」
近藤も大きく頷き、拳を固める。
「よし! 行ってこい総悟! お前の真の実力見せびらかしてこい!」
「いや見せびらかしちゃダメだろ? 暗殺なんだから……せめて忍ぼう、な?」
土方が若干冷静にツッコむが、すでに沖田は戦闘態勢に入っていた。
「さてと……ここでは何人が雌ブタに——」
キラーンッ!
突如、微かな金属音が響いた。
ドギャァァァァァン!!
「ギャァァァァァ!!」
沖田が叫びながら宙を舞う。仕掛けられていた罠に引っかかり、ぐるぐると振り回された後、再び飛ばされる。そして……
ゴッ!!
土方の頭に直撃。
「テメェ! 何しやがる!!」
土方は額を押さえながら、地面に転がる沖田を睨みつける。沖田は必死に身を起こし、バタバタと手を振る。
「罠に引っかかった! 罠に引っかかったから!!」
その狼狽ぶりに、片栗虎は目を見開き、驚愕の声を上げた。
「おい、なんだコイツ、さっきとまるで別人じゃねぇか! テンパりまくってんぞ!」
沖田は地面に寝転がりながら、か細い声で呟く。
「Sだからこそ打たれ弱いの〜ガラスの剣な〜の〜」
再び罠に引っかかり、宙を舞う。
「た、たたた助けて土方コノヤロ〜!!」
そう叫びながら、土方の頭をつかむ。
「お前……いい加減しろ!!」
怒り心頭の土方は、縄をナイフで切り裂いた。
「ブシッ!」
沖田が地面に落ち、砂埃が舞い上がる。
ーーーーーーーーーーー
その騒ぎは、当然ながら校舎内にも伝わった。
銀時が片手を和服に突っ込み、面倒くさそうに茂みの方を見下ろす。
「おいおい、なんの騒ぎだこりゃ? ◯藤さんに◯暴行でもされたんですか? コノヤロ〜」
コハルが真っ赤になって叫ぶ。
「◯◯暴行なんて! Hなのはダメ! 死刑!!」
ヒフミが顔を手で覆いながら、呆れたように呟く。
「相変わらず危ないネタ引っ張ってきますよね………」
そこへ、アズサが静かに近づいてきた。
「罠に反応があったのだが……」
銀時はジト目で彼女を見つめ、肩をすくめる。
「罠なんて物騒なんもん張るじゃねぇよ、テロリスト」
アズサは一瞬考え込み、神妙な面持ちで頷いた。
「む、むぅ……分かった、トラップを仕掛ける場合は事前に許可を取る」
ヒフミはこめかみを押さえながら呻く。
「仕掛けないという発想はないんですか……?」
彼女の問いはもっともだった。しかし、ここにいるのはアズサである。
常識など、この場には存在しないのだった。
合宿所の廊下を掃除していた栗子は、思わず箒を握る手を止め、驚いた顔で窓の外を見た。
「何の音でござりまする!?」
その隣では、エプロン姿のヅラ子(桂)が、相変わらず優雅に佇んでいる。まるでこの世の全てを達観したような表情で、肩を軽くすくめながら答えた。
「さぁ、流れ星でも落ちたんでしょう?」
栗子は「そんなわけないでござりまする!」と言いかけたが、ヅラ子のあまりにも落ち着いた態度に、それ以上のツッコミを入れる気力をなくした。
策士 vs 親バカ
一方、茂みに隠れていた片栗虎は、驚きながらも口元に笑みを浮かべた。
「とんでもねぇ奴らだなぁ、まさか俺たちが来ると思って罠を仕掛けるたぁ……」
まるで戦国の猛将のような声色で言いながら、険しい視線を校舎へと向ける。その眼には、戦場を前にした武士のような鋭さが宿っていた。
「奴らも本気ってことだァろー」
だが、そんな彼の言葉に対し、隣の土方は呆れ果てたように顔を覆った。
「いやもっと驚けよ! 普通は合宿所なんかに罠なんか仕掛けるか! ◯殺教室じゃねぇんだぞ!!」
その怒りと困惑が混ざったツッコミを無視し、沖田はスコープ越しに校舎内を観察しながら呟いた。
「見てくだせぇ、まだ話は——」
校舎の中では、エリザベスがぴたりと動きを止めていた。その様子を見て、ヅラ子は首を傾げる。
「あら? エリザベスどうしたの?」
エリザベスはしばらく沈黙していたが、やがてゆっくりと紙を掲げた。
『驚きのあまりちびった』
ヅラ子と栗子は一瞬言葉を失い、次の瞬間、声を揃えて叫んだ。
「な!?」
その光景をスコープ越しに見た土方は、内心で複雑な感情を抱いていた。
(なんか……悪いな……)
彼らを動揺させるために仕掛けた作戦の一環とはいえ、まさかエリザベスがここまで反応するとは思っていなかった。とはいえ、ここで同情していては敵に情をかけることになる。土方は意を決して、己の心に蓋をすることにした。
(これも作戦のうち……ここは恥でもらって——)
しかし、その決意は、栗子の次の一言によって木っ端微塵に砕け散ることになる。
栗子は安心したように、ふわりと微笑んだ。
「よかった〜」
ホッとした顔で胸を撫で下ろす。
「漏らしたのは私だけだと思っていましたので、よかったでございりまする」
「えぇぇぇ!!」
片栗虎・土方・沖田の三人が、まるで空襲警報を聞いたかのように同時に叫んだ。
エリザベスは栗子の言葉を聞いて、再び紙を掲げた。
『お前も? もしかしてお揃い?』
栗子は照れ臭そうに頬を赤らめながら、小さく頷いた。
「もしかしたら私たち、運命的な何かで……」
片栗虎は怒りのあまり地面を叩いた。
「おい! どうなってんだよ!! もっと仲良くなってんじゃねぇかよ!!」
土方は未だに信じられないという顔で、栗子を指差す。
「そっちの娘こそどうなってんだ! 普通漏らすか!? どんな教育してんだ!」
沖田がそんな二人を無視し、妙な表情で近藤の方を見た。
「ちょいと土方さん? 近藤さんの様子が——」
近藤勲は、いつもの豪快な表情とは程遠い、静かな顔で佇んでいた。だが、彼の姿勢には明らかに違和感があった。
土方が眉をひそめる。
「あれ? 尻浮かせてねぇかあれ?」
近藤は震える手で拳を握りしめ、目を潤ませながら小さく呟いた。
「トシ、誰にも言うなでござりまする……」
その目尻から、一筋の涙がこぼれ落ちる。
その瞬間、土方たちはすべてを察した。
「えぇぇぇぇぇ!!!」
男たちの悲鳴は、晴れ渡る空の下に響き渡った。
爽やかな青空の下、そよ風が木々を揺らし、穏やかな昼下がりの時間が流れていた。だが、その平和な空気をぶち壊すように、片栗虎は深刻な表情で腕を組み、低く唸った。
「なんてこった……まさかアレ、『お漏らし』で引かねぇ〜なんて……」
まるで信じられない異常事態を目の当たりにしたかのように、彼の目は困惑と驚愕で見開かれていた。
「我が娘ながらなんと恐ろしい……」
まるで娘の胆力に震え上がる戦国武将のような口調で呟く。その横で、土方はタバコを口に咥えながら、静かに呟いた。
「ほんとに恐ろしいよ。」
だが、土方の言葉は、それ以上の感慨を込めたものだった。恐ろしいのは栗子の胆力だけではない。何よりも恐ろしいのは、それをここまで深刻に受け止める親バカの存在だった。
片栗虎は鋭い眼差しを土方に向けると、低く脅すように言った。
「テメェ、これ他人に言ったら殺すから」
父の愛と、娘の優しさ
だが、土方はその威圧に屈することなく、目を逸らすこともせずに言い放った。
「とっつぁん、安心しな……あんたの娘は漏らしてなんかいねぇよ。」
片栗虎は一瞬、眉をひそめた。
「……何?」
土方は顎をしゃくり、視線をエリザベスの方へと向けた。
「見ろよ。野郎(エリザベス)は着替えたってのに、あんたの娘はそのまんまだ。」
その言葉に、片栗虎は再び栗子の姿をじっくりと観察する。確かにエリザベスはすでに新しい衣服に着替えていたが、栗子は服装を変えた様子もなく、平然と佇んでいた。
「ケツに挟めたまま歩いてんじゃねぇの?」
そう呟く片栗虎に、土方は深く息を吐いた。
「んな訳ねぇだろう……娘が可愛くねぇのか?」
土方は静かに続けた。
「あんたの娘はなぁ……野郎(エリザベス)と奴らの雰囲気を傷つけないために、あんな嘘ついたんだよ。」
片栗虎はその言葉を聞いて、一瞬思考が止まった。まるで心の奥に突き刺さるような言葉に、しばらく沈黙が続いた。
「なぁに?」
その問いかけに答えるように、近藤が口を開いた。
「トシ、それはあれか?」
彼は目を細めながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「栗子ちゃんは、お漏らしなんかじゃ全然引いてない……と?」
土方は呆れたように顔をしかめたが、近藤はそのまま続ける。
「お前は俺が脱糞してドン引きしてたのに……栗子ちゃんは、そんな汚い部分も含めて、奴らを包み込んでいると……そういう事か?」
沖田はそれを聞いて、すかさずツッコミを入れた。
「近藤さん、俺も引いてますぜ。」
近藤は気にせずに奴らに目を向ける。
「おい!アイツら、屋外プールに向かってるぞ!?」
その一言で、片栗虎の顔色が一変する。
「何イ!?アイツら、水遊びで栗子とイチャイチャする気かアア!!」
目を見開き、拳を握りしめると、その場で仁王立ちした。彼の背後では、まるで大爆発が起きたかのような怒りのオーラが渦巻いていた。
「やらせはしねぇ!行くぞ!!」
片栗虎が怒りの咆哮を上げると、それに呼応するかのように沖田と近藤も拳を握る。
「おう!」
土方は腕を組み、静かに思索にふけっていた。
(……プールか。)
脳内に広がるのは、穏やかな水面と、楽しげにはしゃぐ子供たちの姿——ではなく、そこにたっぷりとかけられたマヨネーズの光景だった。白く輝く液体が水と混ざり合い、絶妙な濃度を保ちながら水面を覆う。泳ぐたびに全身に絡みつく、夢のような感触——。
(……プールをマヨネーズだらけにすると楽しくなるんじゃねぇか?)
その考えが一度浮かぶと、もう止めることはできなかった。視界の端で銀時たちが動き始めるのを見ながら、土方はゆっくりと呟く。
「邪魔するつもりなんてないんだがな……」
だが、その言葉とは裏腹に、すでに彼の頭の中では"プールマヨネーズ計画"が着々と進行していた——。
更衣室の扉が開き、少女たちがぞろぞろと姿を現した。
「よぉし、お前ら〜着替えてきたか?」
銀時が腕を組み、やる気のない声で問いかける。
「はい。」ヒフミが静かに頷く。
「問題ない。」アズサは淡々とした表情のまま答えた。
「……うぅぅ」コハルはなぜか不満げに唸っている。
「準備できたでござりまする!」栗子は元気よく言う。
彼女たちが身につけていたのは、黒くシンプルなスクール水着。まだ成長しきっていない身体にぴったりとフィットした布地は、どこか子供っぽさを際立たせていた。
銀時は、それを見た瞬間、大きなため息をついた。
「はぁー……」
ヒフミが不安げに眉を寄せる。
「ど、どうしたんですか?」
銀時は肩をすくめながら、遠い目をした。
「もう勘弁してくれよ……俺はもう、ケンさん頭みたくストイックなガキの体を見るのはウンザリなんだよ。」
かつて見たボディビルダー並みの鍛え上げられた子供の肉体が、脳裏にフラッシュバックする。あれ以来、"未成熟な肉体"を見るたびに、どこか心が荒んでいく気がするのだ。
「というわけで、その醜い体を晒さないように、さっさとプール掃除してこい!」
銀時の容赦ない一言が飛び出した瞬間、コハルの眉間に青筋が浮かんだ。
「誰が『ロリキャラの体に需要はないからさっさと脱いでこの身を満たしてからピーして消えろ』ですって!?」
「いや、誰もそこまで言ってねぇけど……」
「お前の18思考はいつになったら止まるわけ?」
彼女の過剰な解釈に、銀時は呆れたように首を振る。
夏の日差しがジリジリと照りつけるなか、片栗虎の眉間には深い皺が刻まれていた。
「ヤロー、俺の娘を馬鹿にしやがって……この恨み、晴らさずおくべきか〜」
怒りをにじませた声が静かに響く。だが、その隣で、近藤の表情が急に変わった。何かを見つけたような目をして、片栗虎の肩を叩く。
「ちょっと待って、とっつぁん! アレ!」
彼が指差した先、プールサイドでは奇妙なやり取りが繰り広げられていた。
プール掃除のはずが……
ブラシを手に持ち、プール掃除の準備を整えた少女たち。だが、ふとヒフミが首を傾げた。
「そういえば……ハナコさんが居なくないですか?」
アズサがその言葉に小さく頷く。
「そういえば……」
そんな彼女たちの疑問に応えるように、向こうから軽やかな足取りで現れたのは、遅れてきたハナコだった。
「遅れました〜。」
満面の笑みを浮かべながら、彼女は片手を上げてひらひらと手を振る。だが、問題はそこではなかった。
「ともあれ、皆さん、これでびしょびしょになっても構わないという事ですね♡」
その言葉を受けて、アズサは軽く頷く。
「うん、問題ない。」
ヒフミも少し戸惑いながらも返す。
「ま、まぁ、一応……」
しかし——。
「待て待て待てっ!?」
突然、コハルが大きな声をあげ、ハナコへと詰め寄った。
「コハルちゃん? どうかしましたか?」
不思議そうに小首を傾げるハナコに、コハルは苛立ちを隠せない。
「あんた、掃除のときは水着だって言ったのに、なんで今度は制服なの!? 本当にバカなの!? 濡れてもいい服って、あんたが言ってたじゃん!」
ハナコだけが、水着ではなくきっちりと制服を着込んでいたのである。
制服という美学
そんなコハルの叫びに、銀時は肩をすくめた。
「脳内ピンク、お前まだ分かってねぇな〜」
「は!?」
突然の言葉に、コハルが戸惑う。銀時は腕を組み、どこか誇らしげに語り出した。
「制服ってのはな、指定されたものを着ていながら水に濡れて透ける——」
まるで重大な哲学を語るかのような口調に、コハルの表情が険しくなる。
一方、近藤も遠くから銀時と同じ熱弁を繰り広げていた。
「服を着ていながら裸を魅せるという、超がつくほどのエロが出せる技……まさかアイツ、ここまで技を磨くとは!!」
その隣で、沖田が冷めた目で言い放つ。
「近藤さん、流石に俺も引きますぜ……」
コハルは銀時の話についていけず、困惑した表情を浮かべる。
「もうあんたが何を言ってるのか分かんない! 制服が濡れてもいいの!?」
すると、ハナコはふっと微笑み、静かに口を開いた。
「コハルちゃん、これは各々の美学の問題かもしれませんが……」
「……えっ、美学?」
真剣な表情を浮かべるハナコ。その気迫に、コハルは無意識に一歩後ずさった。
「水着と制服、どちらが濡れた時に『良い感じ』になると思いますか?」
「い、良い感じ……? な、何よそれ、何の話……!?」
銀時はすかさず口を挟む。
「つまりは、犯罪にならずに自分の身体を晒すことができるってことだ!」
「アンタはアンタで何言ってんの!?」
ヒフミは苦笑いしながら、少し引き気味に見守っていた。
水着が濡れた時の艶やかな質感、それはそれで非常に魅力的。だが、制服が濡れた時に生まれる独特の色気、それもまた見逃せない。どちらにも良い点があり、簡単に優劣はつけられないのだ。
ハナコは、ふふっと微笑むと、制服の裾を少しだけめくり上げた。
「まぁ半分は冗談ですよ。ほら、実は中に着ているんです。お小遣いで買ったビキニの水着♡」
「え、え……?」
驚いた表情を浮かべるコハルに、ハナコはにっこりと微笑んだ。
「先程、コハルちゃんに『水着の着用禁止』と言われてしまいましたし、確かに学校ではスクール水着の方が鉄板ですが……今日はこれで許して頂けませんか?」
確かに、制服の下にちらりと見えるのは鮮やかなビキニ。
コハルは混乱したように呟く。
「なら……何で上に制服を着るの……?」
「それが私の美学、という奴です♪」
さらりと言い切るハナコ。その言葉を聞いたコハルは、なんとも言えない表情を浮かべた。
だが——。
「スクール水着は今洗濯中でして、これがダメだとすると、私、下には何も……」
「わぁああッ!? だから脱ごうとしないで!? 分かった、分かったからッ! それで良いからっ!?」
必死に制止するコハルの姿に、ハナコはくすくすと笑う。
「ふふっ、ではそういう事で……♪」
露出狂への道
一方、遠くからその様子を見ていた近藤は、ハナコの成長(?)に感動していた。
「ハナコくん、君の露出狂への道のりはまだまだ先が……」
だが、その横で片栗虎が鋭い眼光を向ける。
「近藤……その道、俺の栗子にまで進ませたら、どたまぶち抜くからな……」
その殺気に、さすがの近藤も冷や汗を流す。
そんな騒ぎをよそに、ハナコはブラシを両手にしっかりと握り締め、明るく宣言した。
「改めて、お掃除を始めましょうか!」
太陽が高く昇り、夏の日差しが水面に反射してキラキラと輝く中、プール掃除という名の戦場は思わぬ方向へと転がり始めていた。
「見てください、虹ですよ、虹!」
浴槽の中を走るハナコは、ホースを片手に振り回しながら笑顔を浮かべていた。彼女が勢いよく撒く水は、日の光を受けて七色の輝きを放つ。
だが、その水しぶきは無差別に降り注ぎ——近くにいたヒフミの肌を鋭く打った。
「ひゃ!? ちょ、ハナコちゃん冷たいですよぉ!」
ヒフミは身を竦め、肩を抱きながら抗議する。しかし、ハナコはいたずらっぽく笑いながら言い放った。
「ふふっ、トリニティの湖から引っ張ってきている水ですし、そのまま口を開けて飲んでも大丈夫ですよ?」
その瞬間、空気が変わった。桂が鋭い目を光らせ、すかさず命令を飛ばす。
「そうか……やってしまえ! エリザベス!!」
エリザベスは一拍の間を置くと、静かに腕を振りかぶった。
『えい!』 ブンッ
水風船が一直線に飛び、アズサの顔面へと勢いよく激突する。
「むべっ」
水しぶきが弾け、アズサの表情が一瞬止まる。
戦場と化すプール
ヒフミは慌てふためきながら桂とエリザベスに詰め寄った。
「わっ! ちょっと桂さんにエリザベスさん、何やってんですか!?」
「というかどこから来たんですか!?」
桂は不敵な笑みを浮かべ、堂々と答える。
「皆がプールで遊ぶと聞いたのでな。ただ遊ぶだけでは面白くないと思い……」
少し間を置き、桂は拳を握りしめながら言い放つ。
「真選組らから逃げるための訓練をしようと思った次第だ。」
次の瞬間、エリザベスが無言で水風船を連続投げし始めた。
『フン!』 ブンッ ブンッ ブンッ‼︎
水風船が弾丸のように空を切り、次々と飛び交う。
アズサは素早く動き、それを紙一重で避けながら笑う。
「なるほど、弾幕を避ける訓練か……ふふっ、緩いぞ桂、エリザベス!」
一方で、状況を理解できないコハルが叫んだ。
「いや今掃除中なんだけど!?」
だが、桂はどこ吹く風。自信満々に水風船を指さし、胸を張る。
「案ずるな。このエリザベスが投げる水玉は時速200km……あらゆる汚れも洗い流す!」
「言ってる場合じゃないでしょ! このままじゃ私たちも掃除ができな——」
ピシャ‼︎
突然、乾いた音が響いた。
水風船が勢いよく飛び、コハルの顔面に直撃する。水が飛び散り、彼女の髪がぴったりと張りついた。
その場の空気が一瞬静まり返る。
アズサとエリザベス、桂は、それぞれが水風船を投げ合っていたため、誰が投げたものがコハルに当たったのかもわからない。
全員が固まる中——。
「……――いいわよ、やってやるわよ!!」
コハルの怒号がプールサイドに響き渡った。
続くカオス
怒りに燃えたコハルは、ホースの蛇口を全開にひねる。
「もうこうなったら、水を巻き散らしてやるわよ!!」
勢いよく放たれた水流が空中で弧を描き、アズサ、桂、エリザベスへと襲いかかる。
「おっと!」
アズサは素早く横に跳び、桂は腕で顔を覆いながら後退する。
だが——エリザベスは無言で立ち尽くしたまま、水を真正面から受け止めた。
全身ずぶ濡れになったエリザベスが、静かにボードを掲げる。
『ウォータープルーフ』
その余裕の態度に、コハルはさらに苛立ちを募らせる。
「ちょっと! 何そのボード!?」
掃除そっちのけで遊んでいる皆、普通ならここで部長として怒るべきだろう……しかし、すでに少し笑顔になりつつあるアズサと本気で楽しそうなハナコ、さらにそこにコハルも加わってとても楽しそうな雰囲気。
「――っ〜〜〜!私も混ぜてくださ〜〜い!!」
ヒフミも我慢はできなかった。その後補修授業部は水風船だけではなく水鉄砲も使うようになり、みんながみんな水遊びを楽しんだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
突如、空を切り裂くようにヘリのローター音が鳴り響いた。
プールでの騒ぎに興じていた者たちが、一斉に空を見上げる。
そこにいたのは——スナイパーライフルを構える片栗虎、沖田、そして近藤だった。
「こ、今度は何ですか!?」
ヒフミが思わず叫ぶが、答えは銃口が示していた。
ヘリの中、近藤がライフルを構えながら叫ぶ。
「殺し屋サムライ13、お命頂戴する!!」
「構え!!」
三人が一斉に狙いを定める。
その瞬間——桂が静かに笑った。
「フン! 面白い。」
アズサが横目で彼を見て、淡々と頷く。
「やるか、桂。」
その言葉と同時に、さらなる声が響いた。
「その心配はいらねぇよ。」
屋根の上——そこには、長身の影が立っていた。
桂の表情がわずかに変わる。
「誰だ!?」
しかし、それよりも先に反応したのは栗子だった。
「その声はーー!」
近藤が驚愕の表情で声をあげる。
「トシーー!!」
しかし、その影はゆっくりと立ち上がり、冷たく笑った。
「トシ? 誰だそいつは?」
彼が肩に構えているのは、異形の大砲——。
マヨネーズの大砲 だった。
「俺の名は——
マヨラ13。」
周囲が息をのむ。
「マヨラー星の王子にして、撃ち抜いた物をマヨネーズだらけにする……」
彼は銃口をヘリに向け、不敵に微笑んだ。
「BOR◯ER最高戦力のアサシンだ。」
「他人の授業を邪魔する不届き者は、俺が成敗してくれる!!」
次の瞬間、マヨネーズ砲が火を吹いた。
ドカーーン!!
ヘリが激しく揺れ、操縦桿を握る近藤が悲鳴を上げる。
「またこのパターンかよ〜!!」
爆発とともに、ヘリはマヨネーズまみれになりながら墜落していった。
地上では、栗子が興奮した様子で両手を組み、目を輝かせていた。
「マヨラー13様! マヨラー星から帰ってきたのでござりまするか!?」
彼女の期待に満ちた眼差しを受け、マヨラ13こと土方は静かに頷く。
「ああ。そして——」
彼は堂々とプールを見下ろしながら宣言する。
「この場にて、プール全体をマヨネーズに……」
しかし、その言葉を遮るように、新たな声が響いた。
「そうは問屋が落とさねーよ。マヨラ13殿?」
声がした瞬間土方の方向にビンのキャップが飛んできた。
桂が驚愕に目を見開く。
「そ、その声は!!」
煙の中から現れたのは——。
「銀時!!」
いや、違った。
銀時は目を細め、ニヤリと笑った。
「銀時? 誰ですか? その天パは?」
彼は手にした瓶をくるりと回し、胸を張った。
「俺は、BOR◯ER最高戦力。」
「生徒と甘い物のためなら本気を出す男。」
彼はその名を高らかに告げる。
「坂田太郎。または——」
「イチゴ13。」
イチゴ牛乳を一気に飲み干し、拳を鳴らす。
「能力は……」
「何でも武器として扱い、辺りをイチゴ牛乳に変える。」
「まさに、最高の力。」
それを聞いたコハルが、呆れたようにツッコミを入れた。
「いやそれ! ただ坂◯太郎にアンタの要素を足しただけだよね!? 糖尿病追加しただけだよね!?」
二人の男——否、二人の"13"が対峙する。
それぞれが片手に持つ液体を高く掲げた。
「マヨネーズの純粋なコクこそが、最高の味わい……」
「いやいや、イチゴ牛乳の甘さと滑らかさこそが、至高……」
周囲の空気が張り詰める。
そして——。
「なら、どっちが正しいか……」
「ここで決着をつけるか?」
二人は静かに距離を詰める。
そして、土方が叫んだ。
「——やってやろうじゃねぇか!!」
カチカチ——。
土方はマヨネーズ砲の引き金を引く。
しかし——。
「な!?」
撃たれなかった。
土方は察した。先ほどの瓶のキャップがマヨネーズ砲の邪魔をしていることに……しかし、気づいた時には遅かった。
銀時——イチゴ13が、余裕の笑みを浮かべる。
「残念でした〜。」
次の瞬間——。
ドカーーーーン!!
爆発音とともに、辺りは真っ白なイチゴ牛乳の濁流に包まれた。
「うわァァァァァ!!!」
土方が叫びながら吹き飛ばされる。
空中を舞いながら、彼の手からマヨネーズが飛び散る。
そして、プールの中で沈んでいく——。
混沌とした戦いが終わった後のプールサイドは、甘ったるいイチゴ牛乳の香りとマヨネーズの独特な酸味が入り混じった異様な空間になっていた。
全身ベタベタになった一同が息を切らしながらも、次の行動を決めるべく、静かに佇んでいる。
そこへ、銀時が手を腰に当てながら、ふてぶてしく言い放った。
「ほら〜お前ら! さっさと掃除を終わらせて、遊べるようにしろよ!!」
その言葉に呼応するように、桂が大げさに腕を振り上げる。
「そうだ! 俺たちの"学園パラダイス"が、このままでは始まらんではないか!!」
エリザベスもプラカードを掲げ、意思を示す。
『手を動かせ!税金泥棒ども!』
白い手袋をはめたエリザベスが、いつの間にかデッキブラシを手にしていた。
土方は溜め息をつきながら、肩を回す。
「まったく……結局、俺たちの仕事は"掃除"かよ。」
その横で、近藤が深く頷いた。
「まぁ、仕方ないさ。これで罪が消えるならマシな方だろう。」
しかし、その言葉を聞いた土方は、呆れたように近藤を見やる。
「アンタの場合、罪は"プラマイプラス"だろ。」
つまり、罪が減るどころか、日々増えているということである。なぜなら
「何で!! 毎回毎回、アンタは全裸でいるのよ!!」
突如響き渡る怒声。
振り向けば、鬼の形相のコハルが拳を握りしめている。
彼女の視線の先には——またしても"何も身に着けていない"近藤がいたからである。
「Hなのはダメ!! 死刑!!」
コハルが怒号に対して近藤がぼやいた。
「まったく、コハルくんはいつになったらあの露出嫌いが治るのだか……」
その呆れた口調に、すかさず土方が皮肉げに言い返す。
「俺はアンタの"露出癖"と"ストーカー癖"が治るのがいつなのか気になってるよ。」
まともな正論だった。
場がひと段落したところで、ふと近藤が周囲を見渡す。
「そういえば、とっつぁんはどうした?」
近藤がそう呟いた直後、沖田が肩をすくめながら答える。
「あれなら、さっき"メガネをかけた連邦生徒会の臨時会長さん"に、怒鳴られながら連れて行かれてましたぜ。」
沖田の指差す先には、遥か彼方——。
生徒会の腕章をつけた女学生に怒鳴られながら引きずられる片栗虎の姿があった。
鬼の形相で彼の耳を引っ張る生徒会長。
近藤はその光景を見て、軽く肩を落とした。
「……そうか。」
土方はタバコを取り出し、火をつける。
煙をふっと吐き出しながら、一言。
「ま、当然の報いだな。」
喧騒の後——。
真選組による掃除が終わり、ようやくプールは元の静けさを取り戻していた。
日は沈み、プールサイドに残ったのは補習授業部の面々。
水面は月の光を受け、静かに揺蕩っている。
周囲に響くのは、水がゆっくりと波打つ音だけだった。
冷えた夜風が、掃除で濡れたままの体を優しく撫でる。
皆の視線は夜空と、その下で揺れる水面に注がれていた。
「そういえば、水を入れるのって結構時間が掛かるものでしたね……ごめんなさい、失念していました。」
そう呟いたのはハナコだった。
彼女は申し訳なさそうに肩をすくめる。
だが、隣にいたアズサはすぐに首を振った。
「いや、謝ることはない。十分楽しかった。」
その一言に、ハナコは微笑む。
その横では、銀時と土方が肩を落としていた。
「……あーあ、イチゴ牛乳で埋め尽くす夢が……」
「……マヨネーズで埋め尽くす夢が……」
ヒフミが呆れたようにため息をつく。
「あなたたちはプールで何をしようとしてたんですか……」
彼女の問いに、二人は遠い目をしたまま答えない。
誰もが黙りこくる。
ただ、静かに水の音を聞いていた。
夜空に浮かぶ月は水面に映り、波に揺られながら幻想的な光景を作り出していた。
——これを見られただけでも、まぁ、悪くない。
コハルはそう思った。
何だかんだ、掃除だなんだと文句を言っていたが——こうして一日の終わりに、美しいものを眺められるのなら、それだけで十分だ。
……とはいえ。
「………」
徐々に、意識が遠のいていくのを感じる。
午前中から夕方まで、ずっと掃除に追われていたせいで、彼女の体力は完全に底を突いていた。
まぶたが重い。
ふっと気を抜いた瞬間——。
彼女の頭が、こくりと揺れた。
それに気づいたハナコが、そっと肩を支えながら微笑む。
「コハルちゃん、おねむですか?」
「そ、そんなことないもん……でも、ちょっと疲れた……」
寝ぼけながら呟くコハル。
その様子があまりにも無防備で、ハナコはくすりと笑う。
その時、別の方向から**「スゥ……スゥ……」**という妙な呼吸音が聞こえてきた。
視線を向けると——。
桂が、微動だにせず目を開けたまま眠っていた。
まるで死んだ魚のような目をしながら、完全に意識を手放している。
「あの人、どうやって寝てるの……?」
ヒフミが困惑した声を漏らす。
それに対し、銀時が肩をすくめながら答えた。
「……たぶん、四六時中真選組に追われてるから、"寝てることを悟られない"ための技術なんだろ。」
「いやそんな技術いらないでしょ。」
「アイツ、寝言で『ヅラじゃない、桂だ』とか言ってねーか?」
「……言ってますね。」
皆が一斉に桂を見つめる。
「ヅラ……じゃない……桂……」
ぼそぼそと呟きながら、目を見開いたまま寝息を立てていた。
「あのすごく怖いのでござりまする」
「俺はあなたの執着度の方が怖えよ」
土方がタバコをくわえながらため息をついた。
夜の空気は冷たく、しかしどこか心地よかった。
このまま、時間が止まればいいのに——そんなことを思いながら、彼らはしばらく静寂の中に身を置いていた。
——やがて、銀時がゆっくりと立ち上がる。
「……そろそろ帰るか。」
ヒフミ「エリザベス様。漏らしたって本当ですか?」
エリザベス『あれは真選組を釣るための罠。』
アズサ「流石はエリザベスだ。」
ヒフミ「でも……下に水溜りが出来てたって……」
エリザベス『………』
ヒフミ「エリザベス様!エリザベス様ァァァァァ!!」
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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銀時
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新八
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神楽
-
沖田
-
土方
-
山崎
-
高杉
-
桂
-
定春
-
エリザベス
-
ホシノ
-
シロコ
-
ヒナ
-
アコ
-
ミカ
-
ナギサ
-
セイア
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ユウカ
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ノア
-
近藤