透き通る世界を照らす銀魂(ぎんのたましい) 作:時代に遅れている
ソファーの上には、ホシノがだらしなく横になっていた。腕枕をして、薄目を開けながらも夢の世界と現実の狭間をさまよっている。
「ホシノセンパーイ!」
部屋の扉を勢いよく開けて入ってきたのはセリカ。息を弾ませながら、ソファーのホシノへ向かって声を張る。
「起きてください⭐︎」
その後に続くようにノノミが、いつもの柔らかな笑顔を浮かべながらホシノのそばに駆け寄る。星のようなイントネーションを声に含ませて、無理やりでもテンションを上げようとしていた。
「ん! 久しぶりの出番!!」
廊下の奥から走ってきたシロコが、パイプ椅子に飛び乗る勢いで登場し、キリリとした目で部屋を見渡した。
「うへぇ〜今日どうしたのさ〜今深夜1時08分、良い子は寝る時間だよ〜」
ホシノはソファーから体を起こすこともなく、ぼやけた視界のまま不満げにぼやいた。彼女の髪は寝癖で跳ね、見慣れた無防備さが妙に場違いに感じられる。
「そ、そうなんですけどね。」
後ろからアヤネがそっと顔をのぞかせる。眼鏡の奥で不安げに揺れる瞳は、いつもの冷静さよりも戸惑いが勝っていた。
その時だった。
「よぉし!お前ら集まったな。」
教室の隅に立つ銀時が、パチンと手を打ちながらみんなの注意を引いた。彼の声が部屋の空気を切り裂くように響く。
「集まったな。じゃないわよ!! 何よ! こんな時間に呼び出して!!」
セリカが立ち上がって抗議の声を上げる。小柄な体をめいっぱい使って怒るその姿は、どこかコミカルで憎めない。
「仕方ねぇだろ。作者がこの時間帯投稿するんだから、文句なら時代錯誤の作者に言いやがれ」
銀時はあくび交じりに言い返す。やる気のない態度ながら、どこか真剣さも滲ませていた。
「で、今日は何で集めたの?」
シロコがパイプ椅子に深く腰をかけ、腕を組みながら問う。鋭い視線を銀時に向け、すでに状況を分析しようとしている。
「いつもなら万事屋の三人でやりますよね?」
アヤネが冷静に問いかけると、他のメンバーもうなずきながら銀時に視線を集中させた。
「実は作者からお願いを頼まれた。」
銀時の言葉に、その場の空気がわずかに引き締まる。
「「「「「お願い?」」」」」
全員が声を揃えて驚いたように問い返す。緊張というよりは、まるでドタバタ劇の幕開けのような空気。
「そうだ。今回はアイツらより、お前らの方に関係があるから集めたんだ。」
銀時がそう言うと、メンバーたちは不安と期待が入り混じったような視線を交わし合った。
「で、そのお願いとは?」
アヤネが一歩前に出て、再び尋ねる。
「それは………」
銀時がわざとらしく言葉を濁したその瞬間――
ドン!
シロコの顔がアップにされる。
ドン!
ノノミの笑顔がズームされる。
ドン!
ホシノの寝ぼけ顔が拡大される。
ドン!
セリカの驚いた表情が映し出される。
ドドン!!
そして、アヤネの眼鏡がクローズアップ――
「私だけ扱いおかしくないですか!?」
耐えかねたアヤネが叫ぶ。彼女の額には小さな怒りのマークが浮かびそうな勢いだった。
銀時はあくまで真面目な顔を崩さずに、すっと手を前に出す。
「お前らの登場したアビドス編及びその他ストーリーも。読み返したら所々セリフがキャラに沿ってなかったりする場面や、描写が少なくて読みにくい。」
「おまけにプロローグの戦闘も無くしているという体たらくがひどいと感じたため、編集し直すことになりそうだって話だ」
「「「「「えぇぇぇ!!」」」」」
悲鳴のような驚きが、深夜のアビドスにこだました。
銀時は腰に手を当て、少しだけ真面目な顔でメンバーたちを見渡した。ホワイトボードに残るかすれた文字を背にしながら、静かに、けれどはっきりと宣言する。
「そこでだ!」
「おそらくあの拙すぎる駄文をわざわざ読んでまでついて来てくれた物好き――もとい、ありがたい読者様がいるってんならよ、」
銀時は机の上に足を乗せて、指でぐるっと空を描くような仕草をしながら続けた。
「その人たちにアンケートをとって、編集するかしないかを決めてもらうことにした」
「「「「「アンケート!?」」」」」
部屋の中に再び驚きの声が響いた。パイプ椅子がガタンと音を立て、ノノミが口元を手で隠し、ホシノは眠そうな目を少しだけ見開く。
「まぁ、作者の独断と偏見だけで勝手にいじくるより、読者の声を聞くってのが筋ってもんだろ」
「だから、これを読んでくれてるお前ら……あ、読者のお前らな、」
銀時はソファーのホシノに視線を向けたかと思えば、ふっとニヒルに笑う。
「お前らの清き一票で、アビドス編及びその他ストーリーの運命を決めてくれや。編集するもよし、現状維持で突っ走るもよし――」
「けどな、どんな結果になろうと――この物語は、お前らと一緒に作っていくんだってこと、忘れんじゃねぇぞ」
照れ臭そうに銀時が鼻をこすりながら、そう締めくくると――
「……ってことで、投稿されたらコメント欄か、投票の形で意見くれな!」
「「「「「よろしくお願いしまーす!!」」」」」
「投稿頻度に影響は与えませんのでよろしくお願いします。」
「………」
「その顔――やっぱり知っていたんだね」
白洲アズサの名が銀時の耳に届いた瞬間――彼の表情に、波は起こらなかった。
驚きも、怒りも、悲しみもない。まるですべてを最初から知っていたかのように、ただ静かに、淡々と、受け止めていた。
なぜ――彼は、何も感じていないように見えたのか。
その答えは、補習授業初日の、あの夜にあった。
夜の帳が落ち、寮の部屋に微かな月光が差し込んでいた。
ヒフミが「おやすみなさい」と柔らかく微笑んで出ていったあと、静寂が部屋に訪れる。
銀時は、深く一度だけ息を吐いた。
その呼気はまるで、長い戦から一時だけ戻った兵士が甲冑を脱ぎ捨てたような、疲れと諦めを含んでいた。
椅子の背もたれに体を預けると、天井を仰ぎ見る。
机の上には、開きっぱなしの教材と、飲み干されたイチゴ牛乳の紙パックが転がっている。
甘い残り香だけが、夜の空気の中に漂っていた。
――だが、その静けさは、長くは続かなかった。
「……とんだ化け狐だな、あのナギサって奴は……」
暗がりの向こうから、不意に低い声が部屋の空気を割いた。
銀時の視線が、声のする方に流れる。
部屋の境界、闇と光の狭間から、土方十四郎が現れた。
薄明かりの中で彼の表情は硬く、何かを噛み殺すような鋭さが滲んでいる。
銀時は、目を細めると、再びイチゴ牛乳のストローを咥え直した。
飄々とした態度はいつも通り。けれど、その目だけは、相手の来訪の理由を見抜こうとしていた。
「おいおい、先生と生徒との二者面談を盗み聞きたぁ……」
わざとらしく肩をすくめ、軽口を飛ばす。
「趣味が悪いなぁ、土方君?」
しかし、土方は眉一つ動かさない。
その鋭い眼差しで、まっすぐに銀時を射抜いた。
「趣味が悪くて結構。俺はその化け狐の命令で、お前らを監視してるんだからな」
その声には、諦めでも忠誠でもない、ただ「必要だから従っている」という現実だけがあった。
銀時は苦笑し、椅子を少し前へ押し出すと、足を机に投げ出す。
「で、わざわざ毛嫌いしてる俺のところに来るってことは……」
口の端にストローを咥えたまま、土方の瞳を半眼で見据えた。
「何かあったのかよ」
土方は短く息を吐いた。
そして一瞬だけ視線を逸らし――次の言葉を吐き出す時には、声にわずかな苛立ちと警戒が混ざっていた。
「……疑わねぇなんてほざいてたテメェの前で言うのもアレなんだが――」
「白洲アズサ、あいつはあんま信用ならねぇぞ」
空気が一瞬、凍りついた。
名前を出されたその瞬間、銀時は表情を変えないまま、静かに視線だけを土方に向ける。
「このエデン条約で忙しい時に突然の入学」
「ここの合宿に来る前に、俺たち真選組と正義実現委員会がぶつかった事件……」
「桂がいたとはいえ、ただの生徒にしては手が慣れすぎてやがる」
言葉を重ねるごとに、土方の語気はわずかずつ熱を帯びていった。
彼は背後から取り出した一枚の紙を、机の上に音もなく置いた。
「それに徹底的な証拠がこれだ」
銀時は紙に目をやると、どこか興味なさげに呟いた。
「何だそれ?……離婚届?」
「んなわけねぇだろ!! こんな時でもふざけやがんのかテメェは!!」
思わず声を荒げる土方に対し、銀時は「はは」と肩を竦めて笑う。
「こいつは他の学校から転校する際に必要な書類――転校届だ」
土方の指が紙をなぞる。
そこには綺麗に整った文字列が並んでいたが、いくつかの箇所に、かすかな違和感があった。
「一見何の違和感もなさそうだが……よく見りゃ、所々に書き換えた痕跡がある。特に――以前いた学校の名前だ」
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銀時がぽつりと、自分の記憶の底から掬い上げるように呟いた。
「アリウス分校の生徒……」
「わぁ!やっぱり知ってたんだ」
無邪気な調子で入ってきたのはミカ。
けれどその言葉の内容は、場に新たな緊張を落とすものだった。
「トリニティにも珍しい転校生。それだけでも結構怪しいとは思うけれど……先生が言った通り、彼女の出身校は随分前にトリニティから追放された分派――『アリウス分校』なんだよ」
空気がまた一段と重く沈む。
“アリウス分校”――その名前は、かつてのトリニティにおける“異端”の象徴であり、“破門”の痕跡でもある。
「で? それを俺に教えて……お前は何がしてぇんだよ」
銀時の問いは、まるで岩のように無骨で、容赦がなかった。
飾りも予防線もない、真正面からの直球。だが、それは彼の誠実さの表れでもある。話の核心をすぐに引きずり出そうとするその姿勢に、ミカは目を瞬かせた。
「ちょっ、直球だね……まぁ、最初から誤魔化しても無駄そうな感じはしてたし、ちょうどいいかな」
一拍の間を置き、ミカは小さく息を吸い込む。そして、意を決したように告げた。
「白洲アズサ――あの子を、先生に守って欲しいの」
彼女の瞳には、少女らしい柔らかさの奥に、何か切実な願いが宿っていた。
一瞬、ふっと風が揺れたかのように、銀時の表情が唖然としたものに変化した。
「あー、そっか、ごめんね、ちょっと単刀直入過ぎたかな? ナギちゃんの悪い癖が移っちゃったのかも……まぁ、ちょっと長い話になるけど……」
照れ笑いを浮かべながら、ミカは頬をぽりぽりと掻いた。
まるで、重たい話の入り口を照らすために、彼女なりのランタンを振ってみせたかのように。
「えぇ……俺、長話嫌いなんだけど……授業とかずっと眠ってたし、抜け出してゲンコツ食らってた口だから」
銀時は天井を見上げ、遠い記憶をなぞるようにぼやいた。
その声には怠惰とユーモア、そしてほんの少しの懐かしさが滲んでいた。
「それ先生が言っていいことなの?」
呆れ顔のミカがつっこむが、銀時はどこ吹く風だ。
「とにかく……長話と難しい話は大の苦手だから、簡単にまとめて話すように」
その投げやりな態度に、ミカは苦笑しながら小さく頷いた。
「うん……まぁ私はナギちゃんみたいに頭が良くないから、うまく説明できるか分からないけど……うん、ちゃんと伝わるように頑張ってみる」
きゅっと拳を握り締めるミカ。その姿は、まるでクレヨンで描かれた勇者のように、どこか拙く、それでいて一途だった。
「そうだなぁ……まず、この“トリニティ”について。先生はどんな認識を持ってる?」
問いかけるミカの声は、どこかテストの問題を読む教師のようでもあった。
「他と違って腹黒い奴が多くて、タチが悪い奴らが多いし、変態が多い学校」
銀時の即答に、ミカは一瞬絶句する。が、すぐに苦笑混じりの声を漏らした。
「そうなんだよね〜……私の派閥にも腹黒い子がいっぱいでーー」
そして、ようやくツッコミを入れるタイミングを掴む。
「って違ァァァァァう!」
教室の面会室ガラスが震えそうな勢いで叫ぶミカ。銀時は「うるせぇなぁ……」と耳を押さえた。
「そうじゃなくて! どんな風に学校が成り立ってるかってこと!!」
「はいはい……ええっと待ってな。今ネットで調べるから……」
銀時がシッテムの箱を取り出す動作は、あまりにも自然だった。
ミカは半分呆れながらも、もう慣れたように肩をすくめた。
「先生ってやる気あるのかないのか、ほんと分かんないね……」
「……うんうん、なるほどなるほど……」
「わ、わかった?」
「……複数の分派が集まってできた、キヴォトスでも最大規模の学園」
「うん、そうだよ。ネットに載ってる情報そのままだから当たり前なんだけどね」
ミカは笑いながら、小さく手を動かす。
宙に丸を三つ――空気に印を刻むように描いた。
「それでね、その集まった分派の中で、『パテル』『フィリウス』『サンクトゥス』――この三つの分派がトリニティの中心になってて」
くるくると指先を動かし、さらに下に向かって小さな丸を描く。
それはまるで、聖堂のステンドグラスを模すように、派閥の関係図を空に映し出していた。
「でもね、これは正確じゃないの。今の救護騎士団の前身にあたる派閥とか、シスターフッドとか……大小さまざまな派閥が、学内にはたくさんあるの」
「へぇ〜じゃああれか? 学校でバレンタインにチョコレートたくさんもらう陽キャ軍団と、どのイベントでも誰にも呼んでもらえてないアニメオタクの小さい集まりがたくさんある感じ?」
ミカはぴたりと動きを止め、眉をひそめた。
「そ、そうだけど……先生の基準ってバレンタインのチョコなの?」
「バレンタインは人間関係の縮図なんだよ。チョコが戦果、男が女から義理も本命も奪い合う混戦の血戦だ」
「バレンタインってそんな血生臭いイベントだったの!?」
それでもミカは気を取り直して、話を続けた。
「まぁいいや。でね、その派閥同士で――昔のトリニティは、ゲヘナとトリニティみたいに、お互いを敵視して、対立してたんだって」
「毎日紛争してた時代もあったらしくてさ……チョコ……じゃなくて、爆弾の飛び交う学園生活だったんだよ」
その言葉の裏に、ただの学園の歴史ではない、「戦いの匂い」が確かにあった。
血で血を洗う抗争。
そこまで過激な表現が現実に即しているのかは分からない。だが、それでも確かに、傷の付き合い、靴の裏に絡みつくような陰湿さが、過去のトリニティには存在していたのだろう。
物理でぶん殴るゲヘナと違い、トリニティは表からは見えにくい手口――水面下で進む根回し、外交、そして裏工作。静かに、しかし確実に相手の足場を削っていくそのやり口は、まるで紅茶に混ざった毒のように優雅で、なおかつ致命的だ。
「けれど、いつまでもそんなこと続けられるはずもないじゃん?」
ミカの声は、そんな時代に蓋をするかのように、そっと語り始めた。
風にゆれるチャイムの音のように、柔らかくも、確かな響きを持っていた。
「いい加減争いはやめようって、協定が結ばれることになったの――戦いを止め、一つの学園になる、そんな話をしたのが、所謂『第一回公会議』」
「このトリニティ総合学園が生まれるきっかけとなった、始まりの会議なの」
第一回公会議。
それは、バラバラだった信仰、理念、組織を一つにまとめようとした“奇跡”の始まり。
教義や思想が絡み合う中で、一致団結するというのは、まるで食い違った歯車を無理やり噛み合わせるような行為だ。火花が散って当然だし、指を切る覚悟がなければ出来ない。
――それでも、当時の彼女たちはやり遂げたのだ。
犠牲も、矛盾も、恐らくあっただろう。それでも、**「未来のために」**と、その選択をした。
「今でも、分派だった頃の余波がないって言えば嘘になるけど……もうずいぶん昔の話だからね。今では全然気にしていないって声のほうが多いんだ――たった一つの学校を除いてね」
「……そいつが」
銀時の低い呟きが、静かに空気を揺らす。
その言葉にミカは、静かに頷いた。
「そう。一つの学校に纏まることを、最後まで拒んでいた学園。白洲アズサの母校――アリウス分校」
ミカの視線が、床に落ちる。
ガラスに歪んで映る自分の顔が、今にも崩れそうに揺れていた。
桃色の髪が、彼女の心情を代弁するように、かすかに震えた。
「……アリウスだってさ、元々は私たちと変わらない一つの分派だったんだよ?」
「経典に関する、ほんのちょっとした解釈の違いがあったくらいで……見た目も、授業内容も、ほとんど一緒だった」
「それでいて、どうしようもなく、ゲヘナのことを心底嫌ってた」
「パデルとはね特に仲良かったんだよ。ゲヘナを特別嫌う仲間としてね。」
「……だが、あまり表に出るところを見ねぇってことは……」
「うん、先生の想像通り。猛烈に反対したって聞いてる」
「だから、結局――戦争になった」
かつて同じ旗のもとにあった者同士が、最後には刃を交える。
それは何よりも悲しい結末だ。だが、現実にはよくある話でもある。
信仰も理念も、ひとたび立場が違えば、正義は幾通りにも分裂する。
「当時、連合になったトリニティ総合学園は、アリウスを徹底的に弾圧したんだって」
「当たり前の話だけどさ。たった一つの分派が、その他すべてに勝てるはずもないし……」
「それに、あまりにも大きな力を持つと、誰かに試したくなる。よくある話でしょ? だから、アリウスは団結の象徴として、そして力の見せ場として――丁度良かったのかもしれない」
ミカの口調は、今までになく沈んでいた。
その目には、過去の情景が映っているようだった。
血に塗れた制服、崩れ落ちるチャペル、泣き叫ぶ誰かの声――そうしたものが、まるで幻のように彼女の背後に立ち現れる気がした。
「それで、結局アリウスは潰された――徹底的に」
沈黙が落ちる。
「……何かと一番怖いのは人間だね〜」
その静寂を破ったのは、銀時の呆れとも苦笑ともつかないぼやきだった。
「今まで同じ道を歩んできた奴でも、己の道の邪魔となったら、新たに手を結んだ輩と潰しにかかる」
「とんだお仲間ごっこだよ」
その言葉には毒があった。だが、責めるような熱はなかった。
ただ、事実を告げる口調。だからこそ、その冷たさが胸に刺さる。
「そうだよね……」
ミカは小さく笑ったが、それはどこか力のないものだった。
「アズサの母校はどこにあんだよ……」
突然、銀時が目を細めて訊ねる。
ミカは一瞬きょとんとした後、慌てて答えようとする。
「え?」
「書類には学校名だけで、住所も何もなかった……その学校は、どこにあんのかって聞いてんだよ」
「……分からない。トリニティ自治区から追放されたって話は確か」
「でも、今どこにいるかは――ティーパーティーも掴んでいない。多分、キヴォトスのどこかに潜伏しているんだと思う」
「相当激しい戦いだったんだろうね。その後、全然見つからないような場所に隠れたみたいで……連邦生徒会ですら、アリウス自治区がどこにあるのか分かっていないと思う」
「そうかい……」
銀時の呟きは、水面に落ちた小石のように、ぽちゃんと音を立てて沈んでいった。
「こんな大きな事だったけどさ」
「今在学してる大半の生徒達にとっては、“そんな学園あったんだ”って程度の出来事なんだよ」
「争いがあったことすら知らない。今となっては、影すらなく、皆に忘れられた存在――それが、アリウス分校」
その言葉に、銀時は何も返さなかった。
ただ、静かに口を閉ざしていた。
「ね、そんな学校出身の生徒が――白洲アズサなんだよ」
それは、重く沈む名前だった。
忘れ去られた過去。否応なしに引きずられる運命。
それを一人で背負って立つ少女。
その存在を、ミカは――そして銀時は、見過ごすことができなかった。
「ナギちゃんが推進してるエデン条約……あれは、さっき話してた第一回公会議の再現なの」
「同じ学園になるっていうのは、流石に無理だけど……大きな二つの学園が和平を結ぶ、そんな条約」
「そう聞くと、何だか良いお話に聞こえるよね、先生?」
「何だよ。ただの和平条約じゃねぇってのか?」
風が吹いている。ミカの桃色の髪が、湖畔の風に揺れてふわりと浮かび上がる。彼女は銀時の方を振り向こうとはせず、遠く、どこかこの世界とは違う場所を見ているようだった。その視線の先にあるものは、過去か、未来か、それとも――誰にも届かない「真実」か。
「だってさ……和平だなんだって云っても、あの条約の核心ってさ、ゲヘナとトリニティの武力を一つに纏めて出来る新しい武力機構、『エデン条約機構』――略して『ETO』って呼ばれる軍事集団を創ることなんだよ」
その言葉は冗談のように軽やかでいて、深く沈んでいた。まるで底なし沼のように、何かを飲み込んでいく予感を孕んでいた。
「それが……本当に“和平”に繋がると思う?」
彼女は問いかけた。声のトーンはあくまで穏やか。それでも、そこに込められた不信と危機感は、確かに銀時の胸に刺さった。
ETO――ゲヘナとトリニティ、かつての敵同士が一つになる。だが、それは本当に理想郷の一歩なのか。それとも、新たな戦争の火種か。今まで争い続けてきた二つの力が、互いを完全に信じられる訳がない。むしろ、そんな巨大な力が一つに纏まれば、それを掌握しようとする争いが起きるのは、自然な帰結ではないか。
「ねぇ先生、これってさ……前に話した、アリウスのことと似ていない?」
銀時は眉を寄せた。「……何が言いてぇんだよ」
「キヴォトスの中に、誰にも止められないくらい大きな力ができる。しかも、今は連邦生徒会長が不在――指導者のいない混乱の時代に、だよ」
彼女の目が、銀時を試すように覗き込んでくる。目の奥には確かな光がある。あれは、不安。希望。そして――疑念。
「ナギちゃんはさ、そのETOを使って何をしようとしてるんだろう? 連邦生徒会を襲撃して、自分が新たな会長の座に就こうとしてるのかも。あるいは、勢いづいてるミレニアムに先手を打とうとしてるのかもしれない。……違うって、誰も証明できないよね?」
その声には、笑みが混じっていた。けれどそれは、皮肉でも、軽口でもなかった。ただ一人の少女が、確かな恐れを抱き、銀時に問いかけているだけだった。
「常に誰かを疑う人が、そんな大きな力を手にしたら……いつか、自分の疑いから逃れられなくなって、きっと、誰かを“武力で”排除するようになる」
そして――
「そのETOという力は、トリニティがかつてアリウスに向けたものと同じ。じゃあ、次はどこに向かうんだろうね? ゲヘナ? ミレニアム? それとも、別の誰か?」
彼女の声は、段々と小さく、そして寂しげになっていった。
「……あるいは、そうなる前に、ナギちゃんも――セイアちゃんみたいに」
銀時の目が、見開かれる。
その名を聞いた瞬間、時が止まったような錯覚に陥った。夢の中で出会った、血に濡れた学舎の中で微笑んでいた、あの少女――セイア。なぜ彼女の名前がここで出てくる?
ミカは気まずそうに、俯いた。が、直ぐに首を振り、曖昧な笑みを浮かべて言った。
「……ううん、ごめん。今のは失言だったかも」
「今、セイアって言ったか?」
銀時の声は低く、鋭かった。すでに、確信に近い直感が彼を突き動かしていた。
ミカは観念したように、肩を竦める。
「うん、言ったよ。……セイアちゃんは、私たちティーパーティーの一員だった。ホスト役で、誰よりも聡明で、今は入院中――」
銀時は黙っていた。ただ、視線はしっかりミカを捉えていた。
「……あー、やっぱり、先生は気づいちゃうんだね」
ミカの笑みは、今度こそ皮肉ではなかった。ただの諦念。けれど、その奥には――微かな希望があった。
「ねぇ、先生――真実を知りたいって、思う?」
「……あぁ」
その一言に、迷いはなかった。
「――本当に?」
彼女が手を伸ばし、銀時の手を取る。その手は細く、温かく、しかし震えていた。
「この話をしたら、私はもう戻れなくなる。ティーパーティーからも、トリニティからも追放される。今までの全部が、崩れちゃう。私の居場所が、どこにもなくなるかもしれない」
その覚悟は、命に等しかった。 それを預けると――彼女は言っている。
「――それでも先生は、私の全部を受け入れる覚悟が本当にある? あなたは、私が信じてもいい人ですか?」
「………」
問い掛けは、言葉以上の重みを持っていた。
これは、軽々しく頷けば良い問題ではない。そしてそれは、断るとしても同義。相応の覚悟には、相応の想いを。感情を秤にかける事は出来なくとも、示す事は出来る。
――生徒信頼の為に、先生あなたはどこまで出来るのか?
そう、問いかけられている様な気がした。
「――……なーんてね! ごめん先生! 今のはナギちゃんの真似だよ、誰も心の中なんて分からないから、誰もかれも疑っちゃう、私の幼馴染の真似を……」
銀時「話な」
ミカ「え?」
銀時は、夢の中で出会ったセイアとの約束した……
あの瞬間から、もう彼は決めていた。
「――初めの依頼を受けた時点で俺はその覚悟がある。話せよ。その真実を」
そして、ミカは静かに、口を開いた――
ミカはふと目を伏せ、まるで遠い記憶を追うように呟いた。
「……セイアちゃんはね。入院なんかしてないよ」
声は震えていたが、語調ははっきりしていた。
「……ヘイローを壊されたの」
まるで、世界の歯車が一瞬、軋んだような音がした気がした。
銀時の背に、嫌な汗がゆっくりと流れ落ちていく。
「……そいつは」
「あはは……冗談なんかじゃない。これはね、本当のことなんだよ」
ミカの笑みは、ひび割れていた。
表情を繕っているのが痛々しいほど伝わってくる。だがそれ以上に、その言葉が意味する事実が、銀時の心を凍らせる。
ヘイローの破壊。
それはこの世界において、生徒という存在の「死」を意味する。
この学園都市で“生徒”であることを保証する神聖な証――それが壊されたというのなら、彼女はもう、生徒ではない。いや、人としてこの世界に存在することさえ許されない、そんな存在にされてしまったということだ。
――銀時の胸に、あの日の夢の中で見た“彼女”の姿が蘇る。
(……あいつは、もう死んでたのか?)
(……いや)
彼は思い出す。少女が言った、もう一つの言葉。
『今は匿われている』
(……生きていた。少なくとも、俺の見た夢の中では)
(だが、こいつら――トリニティーの奴らは、それを知らねぇってことか)
「……去年、何者かの手で、唐突に襲撃されたの。あの子は」
ミカの言葉は静かで、けれど、感情の海に沈んだ声だった。
「対外的には『入院中』ってことになってるけど、それはただの建前……この事実を知ってるのは、ティーパーティーの私たちくらい。もしかしたら、シスターフッドには伝わってるかも……でも、基本的にはトップシークレット。普通じゃ絶対に知り得ないこと」
「……犯人は?」
銀時の問いは短く、鋭かった。だがその声音には、怒りではなく、探るような重さが滲んでいた。
ミカは少しだけ、銀時の目を見て、それからまた視線を落とした。
「分かっていない。……捜査はされてる。でも、そもそも彼女自身、秘密が多い子だったから……何が真実で、何が演技だったのか、私たちにもわからなかった」
少し間を置いて、ミカはぽつりと呟く。
「一応、犯人の目星が全くない訳じゃないけど……今の段階でそれを口にするのは、まだ……ね」
銀時は眉をしかめる。
「……でもよ、それって、お前がここで俺に話したからって、何も“戻れない”ってほどの話じゃねぇだろ?」
その一言に、ミカはゆっくりと首を振った。
その動きには、確かな決意と……言いようのない痛みが滲んでいた。
「ううん、先生。さっきのは“前座”」
彼女は一息吸い、そして告げる。
「本題は――これからだよ」
「……白洲アズサ。あの子を、トリニティに転校させたのは、私なの」
面会室の空気が、一気に変わる。
ひとつ、巨大な石が水面に投げ込まれたかのように、波紋が広がっていく。
「……なるほどな」
銀時の声は低い。確信を噛み締めるような声だった。
ミカは、まるで何でもないことのように話し続ける。だが、その目は笑っていなかった。
「ナギちゃんには内緒で、書類も全部捏造してね。時間はかかったけど、どうにか形にした」
銀時は、その核心に踏み込む。
「お前が、そこまでしてあいつをトリニティに入れた理由は何だ?」
「お前は仮にもトリニティのお偉いさんだ。そんな立場の奴が、敵対してた派閥の人間を引き入れるってのは、どう考えても理屈に合わねぇ」
ミカは一瞬だけ目を閉じて、そして静かに言った。
「……和解がしたかったの。アリウスと、私たちトリニティの」
「私たちは今、豊かな環境で学んでいる。でも、アリウスは違う。あの子たちは、学ぶことすら許されないような環境で、憎しみと孤独の中にいる。私たちが差し出した手も、拒絶された。連邦生徒会の手も、弾かれた。全部、過去の憎しみのせい」
「ナギちゃんも、セイアちゃんも……私の意見に反対だった。政治的な理由でね。確かにそれも分かるよ。ティーパーティーは、ただの個人の理想で動いていい立場じゃない。でもさ――」
彼女は、机の上に置いた自分の手を握りしめる。
「でも、本当に……こんなにも“和解”って難しいことなのかな?」
「お茶会をして、談笑して、同じ教室で勉強して……ただ、それだけのことなのに」
銀時は黙って聞いていた。
何かを否定するわけでもなく、ただ、その痛みを受け止めるように。
ミカは続ける。
「私はね、アズサちゃんに“象徴”になってほしかったの」
「象徴……?平和と言えばオールマイト的な?」
「そう、どんなに憎しみ合っていた過去があっても、こうして一緒に笑い合えるんだって……希望の象徴になってほしかった」
「ナギちゃんに正式に話を通すことも考えたけど、彼女は……あの頃からずっと、連邦生徒会長の失踪で神経を尖らせてた。聞いてもらえる気がしなかった」
銀時は、ゆっくりと息を吐く。
「……だから、アリウスとの和解を目指すなら、今しかないと判断したわけか」
「そう。もしエデン条約が締結されてしまったら、もう、アリウスとは絶対に歩み寄れなくなる」
「ナギちゃんが“裏切者”を探してるって話をし出したのは、その少し後……」
「理由は、分からない。私が何かミスをしたのかもしれないけど……結果として、彼女は『補習授業部』という“容疑者集団”を作った」
ミカはそう言って、ほんの少しだけ笑った。
「先生、あの子たちがどうして“補習授業部”に集められたのか、その理由って聞いたことある? もちろん、成績って意味じゃないよ」
銀時は、やや呆けたような顔で眉を上げた。
「いんや…じぇーんじぇん」
「ふふ、そっか。それならね、一人ひとり、なぜ選ばれたのか……全部教えてあげる」
ミカの声は静かで、どこか物語を語るナレーターのようでもあった。だがその裏には、冷たい水底に沈んだ真実が、ぽつりぽつりと顔を覗かせていた。
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「ハナコちゃんはね、ちょっと変わった子だけど……本当に、優秀な生徒だったんだよ。成績もトップクラス、生徒会長候補としても名前が挙がるほどにね。シスターフッドも、あの子を引き入れようとずっと動いていたくらい」
銀時は顎に手を当て、ふむ、と頷く。
「でも、そんな子が――急に変わった。まるで別人みたいに。今では落第寸前で、まともに授業にも出られないくらいに……どうしてだろうね?」
彼は肩をすくめながら言った。
「そりゃあれだろ、海パン刑事に憧れたとか、そういうアレじゃね?」
ミカは首を横に振りながら、小さく笑う。
「多分それは違うよね。だって普通の人は憧れないもん」
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「コハルちゃんは……あの子はどろどろした政治とか、そんな事とは何の関係もない、純粋で良い子なんだけれど――そういう意味だと、あの子個人の話じゃなくなるかな。選出された直接的な原因は本人じゃなくて、所属している場所――ハスミちゃん達、正義実現委員会だね」
銀時の顔に、あからさまな反応が浮かぶ。
「ああ、あのデカ女ことね」
口元を引きつらせながら返す銀時の顔を、ミカは静かに見つめる。
「巨大な武力を持った存在、それも特にハスミちゃんみたいなゲヘナに対して強い憎悪を持っている存在が自分の統制下にない不安感……何かが起こるのではないかという疑念。ナギちゃんはそこに対して、何らかの備えが欲しかったんだと思う……言い方は悪いけど、人質…みたいな感じかな、今のコハルちゃんは」
銀時は肩をすくめた。
「へぇ〜あいつってそこまでゲヘナが嫌いだったのか……そりゃああの温泉掘るとか抜かしてたテロリスト(温泉開発部)にバトルわけだよ」
ミカは一瞬きょとんとした表情になったあと、呆れたように笑った。
「ゲヘナ嫌いは多分関係ないよねそれ…パフェの時間奪われてキレただけだよねそれ」
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「そして……ヒフミちゃんか」
ミカの声が、ほんの僅か揺れた。
「あいつのどこに危険性があるのかね〜。強いていうならあの薬中鳥(ペロロ)が関わった時に豹変するぐらいじゃね?」
「そうそう。ヒフミちゃん、優しくて、可愛くて、良い子だよね。変な趣味があるのが玉に傷だけど……ナギちゃんもすっごく気に入っているんだ……でも、それでも尚、ナギちゃんの疑いの目が向いちゃったの」
銀時の指先がわずかに震える。自分が共犯であった事実が、まるでガラスの奥からじわじわと責めてくるようだった。
「どうやらこっそり学園の外に出て、怪しい所に行っていたみたい。トリニティの生徒は出入り禁止になっているブラックマーケットとか、あちこちにね……」
ギクッ――銀時の表情が固まる。
「………そ、そうなんだ〜いけないなぁ〜そんな事しちゃ〜」
(言えねぇよ過去に共謀してそこで銀行強盗したなんて絶対に言えねぇ〜)
「それに、どこかの犯罪集団と関りがあるって情報も流れて来た。あんな善良そうで、純粋な子に見えるのに、変な話」
「―――」
(心当たりがありすぎて結構焦っている)
「ナギちゃんだってヒフミちゃんの事は大好きなのに、それでも疑いの目は向けられた……まぁそれも、ナギちゃんらしいと云えば、らしいんだけれど―――」
その口調には、ナギサに対するどこか歪な信頼と、止められない流れへの諦念がにじんでいた。
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「さっきも云ったかもしれないけれど、この中でナギちゃんの云う裏切り者に該当するのは、白洲アズサ……本当は敵対しているアリウスの生徒な訳だからね。でも、あの子は何も知らないまま、私のせいで複雑な政治的な争いの渦中に立つ事になってしまったから……こんな形で、退学なんてさせたくないの」
ミカの目に、一瞬だけ涙が光った。だがそれは流れることなく、再び意思の色に変わる。
「それは、そうだな」
「だから、守って欲しい。それは今、先生にしか出来ない事だから――これが今の状況。ちょっと長かったけれど、今私が……話せる事の全部だよ」
無言の空白が、面会室に鈍く響く蛍光灯のノイズと溶け合いながら、重たい余韻を残す。ミカの姿はガラスの向こうでぼんやりと揺れ、感情の読み取れない微笑を浮かべたまま、どこか遠くを見ていた。
――ガチャ。
乾いた金属音が、重い空気を破るように響いた。背後の鉄扉が開き、制服姿の一人の男が姿を現す。
「すみません。ミカさん。」
控えめに、しかし緊張した声で口を開いたのは山崎だった。どこか所在なげに視線を泳がせながらも、務めを果たすように前へ進み出る。
ミカは、わずかに体をこちらへ向け、少しだけ不思議そうに首をかしげた。
「…あれ? どうしたの? まだ面会時間は――」
「いえ、その……ナギサさんがお迎えに来てまして……今すぐに戻りなさいとお達しが――」
山崎の言葉に、ミカはぷくりと頬を膨らませて小さく唇を尖らせた。
「むぅー、釈放してくれるのは嬉しいけど、もうちょっと空気読んで欲しいな〜。ねぇ先生」
彼女の声は、軽い調子を保ってはいたが、どこか名残惜しげな響きがあった。
銀時は座ったまま、眉間にしわを寄せてミカを見つめる。そしてふと視線を山崎に移すと、冷たく鋭い一言を放つ。
「てか、お前誰?」
「山崎ですよ!!山崎退!!影が薄くて登場回数が2回だからって酷くないですか!?」
怒りと哀れみの入り混じった声を上げる山崎。だが銀時はまるで興味がないと言わんばかりに鼻で笑いながら言い捨てた。
「うるせぇよ。お前は今、生徒との二者面談を中断させた。」
手をゆるく構え、見えない刀を抜くような仕草を加える。
「はい、士道不覚悟で切腹〜」
ミカも笑いを堪えきれず、楽しげに手を挙げる。
「そうだー切腹しろー」
「するかァァァァァ!!アンタらに言われたくないんだよグレーゾーン行き渡るクソ野郎ども!!」
山崎は半ば本気で怒鳴りながら、しかし職務には忠実に手を広げて促した。
「とにかく!ナギサさんが待ってるので、さっさと来てくださいね!」
ミカは両手を挙げて大げさに返事をする。
「はいはーい。じゃあね先生。」
くるりと踵を返し、軽やかに去ろうとするその背中――しかし、銀時の声が鋭く彼女を引き止めた。
「おい、ちょっと待って」
ピタリとミカの動きが止まる。振り返ることなく、その場で足を止めただけの静かな間。
「ん? 何?」
わずかに首を傾け、振り返ったその顔は、またいつもの無邪気な笑顔を浮かべている――ように見えた。
「お前の願いはそれだけか?」
銀時の声は低く、だが真っ直ぐに突き刺さるようだった。
「お前の行動。情緒の不安定さ……何か他にもあんだろ? 今のうちに吐ける分は吐いとけよ」
ガラス越しの視線が、まっすぐミカの瞳を捉える。
「後々苦しくなるだけなんだからよ。」
しばらく、返事はなかった。ミカはただじっと銀時を見ていた。笑顔も、怒りも、涙もない。その目は、底の見えない深海のようだった。
「………やだな〜、そんなわけないでしょ?」
やがてミカは、少し肩をすくめて、いつもの調子で笑った。
「じゃあ私は行くから、バイバーイ」
ひらひらと手を振る彼女の背中が、やがて面会室の扉の向こうへと消えていく。
閉じられる扉。その音は、何かが確かに終わったことを告げていた。
次回予告
銀時「よぉしお前ら帰ったぞー」
ヒフミ「あっ!銀さん!お帰りなさーー」
???「キャァァァァァ!!」
栗子「な、何でござりまするか?」
アズサ「侵入者だ」
桂「罠に遭ったが運の尽き……ここで沈んでもらうとしよう」
「「「「沈むのはテメェだァァァァァ!!」」」」
次回 シスターさん神に毛根が生えるように祈ってあげてくれません?
〜透魂〜第一回キャラクター人気投票
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銀時
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新八
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神楽
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沖田
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土方
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山崎
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高杉
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桂
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定春
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エリザベス
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ホシノ
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シロコ
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ヒナ
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アコ
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ミカ
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ナギサ
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セイア
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ユウカ
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ノア
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近藤