「バーンの娘、その話をどこで?」
言い淀むのをマァムは自分で気付かない程に奇跡的に感知したが、切り出しは見ているシャトー達からしたら無難である。確かにバーンの娘等と広めるだけで世界を震撼させられるのだから知った経緯が問題だろう。
だが、返しは曖昧でアバンの使途の使命を始めとする方向に持っていきたがる等と違和感があるものだ。処置のせいで外の会話が多少聞こえるポップからしてもおかしいので口を開く。
「ど、どういうこった。何故知ったかなバーンの娘を怖がるのはわかるけど、何か俺達アバンの使途を即刻に出向かせたがってるようだ」
「案の定ですね。ポップさん、率直に言いますが身内や同志かそれに近い思考をしてる人間以外から見たアバンの使途はそういうものなのでしょう、貴方やアバン先生で言えばメガンテ使うまで命を張って戦った逸話がありますが、それも一因でアバンの使途は【人間に都合が良い戦闘集団】みたいに認識されてるんです。それこそマァムが問い詰められてるように、知ったキッカケなんて後回しで真っ先に私を抹殺するのが義務な方向でね」
【人間に都合が良い戦闘集団】
そんな事は無いとメルルは言おうとしたが本のまま顔を青くしたポップの暗い気を感じて口を開けないでいた。そしてポップは重々しく切り出した。
「い、いや。そうかもしんねえよ、アバン先生は修行で得た力は他人の為に使うものと教えてくれたけど、それは昔の俺みたいに嫌な事から真っ先に逃げ回る側からしたらシャトーさんが言った流れを期待しちまう在り方かもな。本なんかになってから考えるしか出来ないでいたから思えるんだろけどよ」
メルルには口惜しさが感じられた。竜騎衆の時の演技と違って素で最低だったと自分を評した頃のポップ直接目の当たりにしていないメルルにはしっくり来ない。バーンとのやり取りをレオナから聞いて以来な発想でもあるのを含めてダイ達はやはり【強者】の側故に。
「まあ、今はマァムに任せましょう。不味くなりそうなら私が・・・・あらあっ!?」
シャトーは間抜けな声を出してしまう。スローモーションのように宙を舞い、地に落ちる隊長格の男が移る。何をしたのかは詰め寄る他を次々そうしている事でわかる。
【マァムが眼前に立つ男達の横っ面をひっぱたき続けている】
他がやられた男達を抱えて一目散に逃げ出した後にシャトーは怒りの収まらぬマァムを家に連れ込んで正座で向き合った。
「何でああしたのか正直に言いなさいマァム。場合によっては私が貴方の横っ面ひっぱたきますよ?」
「・・・・父さん、父さん・・・・を」
「父さん、確か勇者アバンのパーティーに戦士として参加していた【戦士ロカ】ですか?」
ポップも初めてマァムに会ってネェルの村に滞在した時に聞いた。マァムが小さい頃に死んでしまったと聞いたが、今の自分のようになったマトリフを見つけた男とも旅立ち前に聞いてはいる。そのロカについて何を聞いたのかとする質問にマァムは声を震わせながら漸く聞かせてくれたが内容が問題である。
「・・・・【裸でカールの国中を走り回った】ですって?」
「何だよそりゃ!?」
「な、何かの呪いを掛けられてたとか?」
「わ、わからないわよ。でも、バーンの娘に何かされたのかとかな後に、その時の父さんも操られたりしてそんな事をしたかもとか聞かされて、カッとなっちゃって・・・・父さんをそんな風に馬鹿にされて・・・・」
「はあ、そりゃ貴女はポップさん以外には御人好しで知られてるし、手を出すのは想定外だったんですかね。けど私みたいに父親を叩きのめしたのに言えた義理ではありませんが、死んだ父親を馬鹿にされたのを怒るのは個人としては間違いではありません。しかし、他者で弱者をいきなり殴ると言うのは・・・・」
幼い頃に死別した父を侮蔑された事からの行為に子供のように泣くマァムを諭すシャトー、の図は。
【まるで人間のしっかり者な女でしかない】
「まあ、それはともかく。マァム、貴女は短気はさておいて嫌な気配は感じたようだから連中はテランに入る前に目にした愚か者達の同類でしょう、しかし次はありませんよ!武道家以前にそろそろ大人な女としてな自覚をですね?」
ーーーーーー。
「な、なあメルルよ。俺に言えた事じゃねえがよ、甘さや御人好しで一番危険なのはシャトーさんじゃねえか?」
「ま、マァムさんには特にそうかもです。それに今日感じましたが・・・・もしかして、ザボエラやキルバーンがあの人間達のようなやり方で来たら負けていたのでは?」
次の準備を始める為に家の周りを確認しつつ二人はお互いの言う事を理解した。マァムに気を許しているシャトーは面と向かい合ってくれているがおかしな方向になりはしないか?
それに、身内を罵倒するやり口に関して実は耐性が無かったマァム以前に自分達は搦め手のみで来られてはやはり不利。今回の件は心しなければ近い内にシャトーすら危険と認識した。
―――――。
「ロカは純粋な男でした」
夫であるアバンの留守を預かるカールの王妃フローラは訪ねてきたレイラにそれくらいしか言えなかった。シャトーが言ったようにアバンの窮状についてはまだ言えない。ネイルの村に超魔生物の実験体の生き残りが現れた相談として来たのだが、話題がロカの事になると奇しくもマァムがしてやられた事についての対策になって苦笑いであった。
【ロカが国中裸で走り回った理由はマァムが知れば理解はしてくれるとしたが、知らずにいきなり言われたら危険】
「マァムは手を上げてしまうでしょうけど、やはりロカは可愛い男です。知ればマァムも理解してくれますわ・・・・多分」
既に小事防止は遅かったとして運ばれてきたお茶を二人は飲み始めた。
ギャグ回みたいになったが、キルバーンやザボエラの路線で来られたら原作中盤不利だったのは事実だろうな。