(まあ、歩いてれば体力は戻ります)
元々、竜の騎士ですら真っ青な存在の娘であるシャトーには休憩等は必要は無かったが、気分の問題がある。それの解決法は徒歩だ。魔界には無い森林や川の近くを歩くだけで気分が違うし、時折食べる野生の木の実の鮮烈な味だけで満たされていた。実はベンガーナの次はテランが無難ではあるが、そこは諸事情で後回しにして辿り着いた先は?
【ランカークス】
小さな村だが、この村からは嫌な予感はしないハズだったのに、これから身構えるべき何かが起きる予感がすると戸惑っていたが、村の武器屋を見つけた時に答えが出た。
『バッカヤロウ共がああっ!!下らねえ事言ってねえで自分でやるだけはやる根性出しやがれえっ!』
ネズミが逃げ出すように武器屋からかなりの人数が飛び出して来た。
おととい来やがれなノリな強面男と、それを宥める優しげな女性。シャトーからしたら、まるで先日のドラゴラムで自分が放った雷すら及ばない何かが目の前に落ちたような衝撃に見舞われつつ店に入った。
「うん、何だまだ・・・・こりゃ、華奢なお嬢ちゃんだなあ」
「ぶ、武器を探してます・・・・あの、先程のは一体?」
「おぉ、うちの根性無しな馬鹿息子が何の間違いか勇者のお供をして知名度が出てしまいましてね、弟子だの何だのやかましい以前に此処にはいねえって説明したら、紹介してくれだのうるせえから、つい・・・・怒鳴っちまって」
「此処にはいない?」
「まあ、友達が行方不明になったから探すって話だ。事情はともかく手紙一つで済ませやがったからな、帰って来たらヤキ入れてやるって決めてるんです!」
「(レイラさんみたいに普段通りに振る舞ってるようで寂しそうですね、いやここに来たのはと)・・・・あの、私は武器・・・・っ?」
店の隅に、商品として並べる前の品のように置かれてるやや特徴的な鍔の剣をシャトーは手に取って鞘から抜いた。その光景にジャンクは既視感があった。
「嬢ちゃん・・・・【わかる】のか?」
「はい、これはまだ荒削りですが。普通の鋼鉄の剣とは違いますね・・・・【命】が宿るべき個体になりつつあります。これを売ってもらえますか?」
「ふむ、機会があったらこのメモに書いてある道順にある先の小さな小屋に行きな。特に【作らせた奴】は、わかるのを探しているらしいからな、じゃあ千ゴールド頂くぜ」
「安いですね・・・・軽く五倍は近い値段にする価値ありますよ?」
「漸く形になったばかりだかららしい、作り手の心境って奴さ、毎度ありだ」
その夜、教えてもらった方向とは真逆の河川近くに移動したシャトーは買った剣を手に取って集中していた。実を言うとマホステやダイの剣やクロコダイン達を見た等の一部を除いての話だが、シャトーはある事に気付いていた。
(私、無駄な事をしたのかもしれない)
バルジ島は、キラーマシンIIには苦戦したかもしれない程度、そもそもマリン達が天敵に対する対処を考えてないとは思えない。
ネイル村では、自分がやらずともレイラが使おうとした奥の手で勝ったろうが村の建物は壊されていたからああした。
デルムリン島では、例の洞窟はやはり早かったかもしれない。
ベンガーナは、市民の避難は進んでたし。ハドラー親衛騎団を知る者が多いから簡単には負けない。
(姫様!)
耳障りな声が響く、自分が名実共にバーンの娘となって以降は余計なもの迄背負った気がする。それに対する答えは?
【力】
単に敵を倒すだけではない、例えば?
「私が求めるのは【カラミティエンド】を使える身からのではないし、使っているだけで得れるようなものでもない」
舞い降りる落ち葉に鞘から抜いた剣で突きを打ち込むのを繰り返すがイメージ通りにはならない、針で刺したような穴だけ空けるのが理想なのに、簡単に真っ二つになってしまうのだ。
(・・・・されど、石の上にも三年と言うらしいから、ジャンクさんの言うように自分で根性を出さないと)
その日からシャトーは森林近くでひたすら剣を振るっていた。勿論、剣を振るうだけでは無い。
パシャっ
「釣れました。煮るか焼くか・・・・いや、待った待ったです。確か【鯉】ですよね、先ずは泥を吐かすで・・・・」
いそいそと即席の池を作った。この中に鯉を入れて、好き嫌いが無いらしいから適当に食事やりながら二日、水を変えながら放しとくとした。
「剣の修行はこうやって、精神を集中する事をやるのも良いらしいですね・・・・心を無に、しかし良い天気・・・・かなり、日光に慣れました」
そして、ランカークスでは以前より会う機会が増えた二名が今日も顔を合わせた。
「おう、ジャンク。景気はどうだ?」
「何だよロン、弟子の修行は良いんか?」
「今日は資材の整理と調達だよ、俺も日常生活くらい早くマトモにやる為にもリハビリとやらで散歩とかやる必要増えたんでな、ノヴァの剣は・・・・売れたのか」
「まあな、言われたように隅の方に置いといたが、以前のダイ君みたいに気付いたのがいたから売ったぜ、お前の家の地図も渡した。華奢な嬢ちゃんだったぜ」
「ほう・・・・まあ、魔甲拳を使ったと言ってもオリハルコン戦士を倒すマァムみたいのがいるんだから強い剣士になれるかもな嬢ちゃんくらいはいるか」
「ああ、それに【邪悪】じゃないようだしな」
ジャンクも聞いていた事で、あの剣は材質こそロン・ベルクの造る武器特有だが?
【破邪の剣やゾンビキラーの製法を取り入れているので、邪悪には拒まれる】
ロン・ベルクはそもそも武器の探求にのみ力を注いでいたので悪とは縁が遠くなっているから、その類いには拒まれないのだ。
「そういやロンよ、魔族の中には人間の年頃みたいな外見で強い剣士とかいるんか?」
「さあな、魔界の伝説の剣豪を騙し討ちにしたのなら聞いた事あるが」
何気ない会話だが、シャトーの正体を知らない故だ。そして、知っている側には思わぬ事態が起きていた。
ドォォン
「ちょ、ちょっとどうしたのよポップ、これで何度目よ?ロン・ベルクさんに聞きに行きたくても、最初から的外れなとこ行っちゃうし後の方はパプニカ付近から全然移動出来ないじゃないの!」
「わ、わかんねえよ!全然目的地が安定出来ねえ・・・・って、襟をばな゛じで」
「ポップさん、もしかしたらカールからアバン様と一緒に戻って来た時に違和感ありませんでした?」
「え、それは・・・・何かあの時は慌ててたか・・・・いや、待て!別々にルーラ使ったけど、アバン先生にしては、荒いルーラだった気がするぜ」
答えの半分であるが、もう半分はルーラの失敗の流れでメルルが感知し始めた。
「わ、わからないんですが・・・・この辺りだけではありません。陸に海に空・・・・邪悪ではありませんが、何か感じた事が無い気が微弱に広がっています」
「そ、それってシャトーって娘が何かやったとか?」
「ま、まあ大魔王の娘とかなら有り得るって考える方が安全だよな。此処は、一旦パプニカの城に戻って・・・・姫さんに頼んで気球を借りるか船を出してもらうかしねえか!」
同意したマァムとメルルを両脇に抱えたポップはトベルーラの全速力で駆け出した。
一体、世界に何が起きているかの一歩目である。この日から、世界各地でルーラを正確に使えなくなったという事態が続出したのだ。
そして、疑われ始めたシャトーは?
「ふむ、私は飲めないけどお酒の肴に最適な味ですか?」
泥を吐かせた鯉をどうするかな答えは、下処理をしっかりして?
【丸ごと唐揚げにして甘酢餡を掛けて食べる】
力には力の良い例だ。鯉のような食材は思い切りの良い調理法や味付けが向いてるとしてチャンレンジした料理の鮮烈で力強い味を堪能していた。新鮮で健康な鯉は生命力に溢れる食材故に尚武を養う食とやらに良いだろうとしているが、何か組み合わせが違う気はしてもお国柄の組み合わせとはまだ知らない、そもそもシャトーは酒飲みな父の嗜好に僅かに毒されてもいる。
(と、言うか・・・・地上は時々見てるだけでお腹がいっぱいになりそうな食事が良く似合う世界な気がしたけど、気のせいでしょうか?)
然り気無い爆弾発言のような気がするのは振り切ったシャトーは一時間程のお昼寝タイムとして日陰で休み始めた。そう、良く動いて学んで遊んで食べて休んで・・・・これも何か違う気がしながら。
元々があの御方のデザインなゲームが元の作品な割には食事シーンが全然無いんだよな、アベル伝説には何回かあったが。
おまけ。
ヒュンケル、ラーハルト、エイミは最終決戦後にダイを探す旅を続けていたが、ある日に狩った猪を・・・・食べ切れない分は塩を効かせて干し肉とし、鍋にして食べていた。ラーハルトはともかく、身体が完治しないヒュンケルと女性のエイミは栄養管理が重要だからだが?
「ヒュンケルよ・・・・お前が割りと料理が出来るのは意外だが、アバンの使途とはこういうのも嗜んでいるのか?」
「いや、俺は小さい時に育っていた場で下働きくらいはやって、アバンに同行してた時は料理する姿を見ていたからな、まあ見たことは無いが、俺よりマァムやレオ・・・・っ!な、何だエイミ」
「・・・・」
ヒュンケルの口を手で塞ぎつつ顔を横に振るしかないエイミに二人は不吉な予感を感じて質問は止めた。
アバンの使途の料理スキルは↓らしい。
ポップ>ヒュンケル>マァム>ダイ>レオナ。