前話でシャトーは四番目が一番怖くなって逃げ出した(汗)
シャトーにとって、バーンは父であって親父ではない。
【怖かった】
シャトーがジャンクに抱いた感想はそれだ。武器屋で見た人だがは関係無く、人間でも魔族でも未知のものはやはり怖い、メタルスライムやはぐれメタルの如く逃げ出して剣の修行に使った場の後片付けをしていた。
マァムはあの流れならネイル村に行くかもしれないがレイラとすれ違いになったかもしれない、悪いとは思うがどちらかと言えばマリンが来るかもとすら考えていたのだから、そこは見当違いだったとして次は何処へ行くかを考えるとした。
「え、と・・・・少し早いかもしれませんが」
「シャトーさん!」
声の主はマァムだった。但し、いつの間にか退散して平静さを保ててない顔を見られて怪訝に思われたとシャトーは理解した。恐怖の種類が違うのだ。
「ポップさんのお父様が怖かったので・・・・私はあれは未知数なんですよ」
バーンを父に持つ娘らしからぬが、こうして見ると、マァムからしてもやはり普通の少女にしか見えない、一先ず川辺の岩に腰を下ろして語り合う事にした。
「それで、追いかけて来たからには何か用件あるようですが一人で来たのは何故です?」
「え、と・・・・ポップが暫く動けなくなったのもあるけど、やっぱり今後について更に話したり聞いておきたいと思って・・・・私一人なのは【人選】ってものの結果ね。私よりノヴァが最適なんだろうけど、彼は修行途中だし・・・・メドローア=倒せる可能性持ちなポップや探るのをやれる可能性あるメルルより、私が一番危険を感じないかと・・・・」
「それはどうもです・・・・では、気になる事とかは?」
「バーンの娘と聞けば警戒してしまうのを理解しているとはわかってると思うわ、地上にいる人間は貴女の事を知ったら良い目は絶対にしない」
マァムとてそれなりに見てきた。ネイル村を出た後、バーンとの戦いが終わってダイを数週間探した時も魔王軍に付けられた爪痕は言うまでもない深さだ。
「それは当然ですが、私はバレても無駄な死人は出す気は無いから逃げる事にします。それに地上の方々は私に対して・・・・【勇者ダイが帰って来ればお前なんか怖くないんだから、さっさと魔界に帰れ】・・・・それくらい言えば楽なのでは?」
「私は正直に言えば、その手はやらない方が良いと思う・・・・それにダイが今直ぐに万全で帰って来ても貴方に勝てないと思うから」
「何故?」
「貴女はどう見ても父親の仇を取りたいとかな人には見えない・・・・私は以前に戦った相手に戦う必要無いとか言ってみたら【虫酸の走る良い子ちゃん】なんて言われた事あるけど、貴女はそれに近い何かがあるタイプな気がするの、とてもダイが倒す気で戦えるとは思えないから戦いが実現するかもしれない流れは止める方が良いと思うの」
マァムは、この時点で明け透けに話し過ぎな気もするが実現する流れだと確信している。例えばシャトーが実はダイやヒュンケルにザムザと似たような身の上だとしたらどうなるか知っている。戦わないなら戦わないに越した事は無い類いの意見に返しが来る。
「嗚呼、成る程です。私の事はさておき、貴女みたいのがそう感じるとしたら・・・・昨日の戦いも参考に考えたらダイは私相手に戦意が湧かないでしょうね、それ無しでも竜の騎士みたいな存在が代々戦って来たような相手は父やヴェルザーみたいな類いが多いハズですから、私みたいのは戸惑う可能性もありますね」
それもマァムの危惧する部分でもある。竜の騎士とは聞いた限りで各界のバランスを崩すような悪に制裁を加えるのが使命、代々戦っていたと推測されるのはバーンやヴェルザーのような者だとするのが恐らく正しい、他にも考えてはいけない類いを頭に浮かべてしまうマァムは経験上の勘で全力で危機を感じ取っていた・・・・そして、上手く切り出せない事を聞くべきか否かとしている。立場の異なる者と話し合うなら相手をある程度は理解する必要があるとした一例で。
【バーンの娘として魔界でどう過ごしていたのか】
「ねえ、マァムさん。父との戦いで多少聞いたかもにしても、魔界ってものがどんなものかは知ってますか?」
考えを読まれたかもと息を飲んだのを気にしないでシャトーは淡々と語り始めた。決して他の世界やそこの住人の都合を考えてないワケではない。
「地獄ですよ、強酸性程度当たり前で触れたらオリハルコンの剣すら只では済まないマグマの海、地上のと違う雷雲ばかりな空、擬似的な太陽はありますが、見渡す限りな不毛の大地にミナカトールでも弱体化させるのが難しいレベルの強者が弱肉強食で殺し合う地・・・・例えば、貴女が?」
川の向こう側の影に魔法力を飛ばしたと思ったら、マァムの目には箒を持った老婆の魔女のような者が消されたようで飛ばされたように見えた。
「バシルーラですよ、あれなら近くの大陸辺りに飛ばされる程度です。マァムさんはこの類いで魔界に飛ばされたらどうしますか?メルルさんとポップさん絡みでラブコメとやらをやってる身としては一人転落どこじゃないです」
「と、途中からのは・・・・何故、貴女がそんな事を?」
「ある程度は情報は知ってますよ。私は曲がりなりにもバーンの勢力では姫とやらですし、ミナカトールやる直前が語り草でしょう、何人が聞いてたのやらで・・・・アレ、アバンの印の石が何か安定してなかったせいですか?」
【ミナカトールの辺り】
アバンの印が五つ、正確には光らせる者が五名揃わなければ成立しない大破邪呪文を使っての最終決戦での一幕。
唯一印が光らなかったポップだが、そこからは振り返ればあんまりだとも言われた流れだ。シャトーが何故知ったのかは噂になってたりだけでもおかしくはないとして、実は正義の使途としてはマァムが【最低】と失望した時から這い上がったポップに対する周囲の評価は極めて高い、どん底から這い上がったポップはギリギリのところでアバンの印を光らせる要素の塊であるのを疑う者はいないのにとして戦いが終わった後に落ち着いて考えてみたら印の輝星石が不備を起こしやすい代物だったのでは?を始めとした疑念が幾種類か出ている。
「まあ、そうよね・・・・後になって考えたら少し変だった部分もあるし、チウが・・・・ああ、私の兄弟子なんだけど。例えばあの石はスケベな事してたら、光らなくなるような種類だったんじゃないかとか言ってたくらいだわ、ポップはそういうの度々あるし」
「スケベですか、スケベ=邪心があると石に認定されてしまうようなシビアなものなのですか?」
あんまりな推論だから話題を打ち切った。
結論としては、丸く収まりつつポップ・マァム・メルルの三角関係が密かに注目されていたのだ。もしもダイが何事も無く地上に残っていたままならどう茶化されているやらな関係なのだが、マァムはその類いには余りにも対応力が無いとされてるのを見たシャトーは一つ良い案を思い付いた。
「ふむ、私も貴女達がこの先どうなるかは知りませんが。ポップさんをメルルさんにあげたりする場合、良ければ私のところに来ませんか?私も諸事情で地上に詳しくて信用出来る者欲しいですから・・・・貴女をずっと公私のパートナーとして迎えたいです」
【ずっと公私のパートナーとして迎えたい】
それは・・・・と考えてしまったマァムは頬を赤くした。只の天然発言かもしれないとして待ったを掛ける。
「そ、それは誤解を招く言い方ですよ?」
「何がです?」
「少し違うかもしれないけど、貴女が口にしたラブコメとやらかもな意味で・・・・そもそも私達は同姓だから【構いませんけど?】・・・・へ?」
「だから私は構いませんよ。貴女みたいな人は身近にいて欲しいから考えておいてもらえませんか?」
「え、あの・・・・ね。そ、そうだわ!こういうのはお友達から・・・・そうでしょ?」
「お友達・・・・ですか、そうですね。マァムさんは私のお友達になってくれますか?」
何とか言った事への返しにもシャトーは真摯極まる瞳で真っ直ぐ見つめてくるのでマァムは益々に頬を赤らめてしまう、何か妖しい感覚が身体を走り始めるのに抵抗しながら漸く返答した。
「わ、私で良ければ」
「では、諸事情で魔界では友達に送る必要があるものと、戦意が無い証を受け取って下さい」
出された物は小さめな宝箱と、上にあるペンダントだった。果物を思わせるエンブレムが掘られたシンプルに丸いものだが、触ってみたら地上の材質ではないような感触だ。
「私の関係者の証拠代わりですよ、万が一魔界に飛ばされて誰かに見つかったらそれを見せなさい、知ってる者なら他よりマシな場に案内してもらえますよ」
「そ、それはありがとう・・・・後、この宝箱は何なの?」
「この宝箱には、私が大魔道士ポップと戦う可能性があったら使うよう言われたものが入っています。彼に対する恐るべき切り札として渡されましたけど、中身は知らないので取り扱い注意ですよ。私は昨日の件と貴女を気に入った事により、貴女達には敵対しないと判断しましたから、その証として譲ります」
「シャトーさん・・・・」
「シャトーで良いです。私もマァムと呼び捨てにさせて頂くので・・・・では、縁があったらまた会いましょう、今度は私から会いに来たいですよマァム」
「そ、その時は宜しくねシャトー・・・・」
そのまま自然に川を稲葉の白兎のように飛び越えて山を降りるシャトーをマァムは見送る。やはり、あの少女は敵にはしたくなかった。
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「シャトーさんがそんな物をね・・・・」
ジャンクとスティーヌが帰った後のロン・ベルクの住まいで、マァムが渡された物についての検討が始まった。パートナー云々は言わかったが、少なくとも友達として真摯に接してもらえたのは事実と感じた。先ずはこの宝箱についてだ。
「し、しかし・・・・疑うワケではないが、ポップ対策になるものとは一体?」
メルルは強い力は感じるが、嫌な気配は感じなかった。ダイがいる時から頼みの綱の一つなポップへの切り札とは一体?としながら、確認の為に宝箱を開けた。
「何かの本じゃねえか・・・・ま、まさか俺の弱点やら攻略法とかを記したりしてるんか?」
「だとしたら要注意かもしれないぞ。シャトーさんにこれを渡した者が魔王軍寄りだとしたら、敵として見たからこその視点でしか気付かない何かが記されてるのかも」
ノヴァの推論が一理あるとしたポップは思わず開けてしまうが、空いた口が広がらない間抜け顔となってしまう。
「ポップ、どうしたの?」
「いやはは・・・・これはな」
後退しながら、引き寄せられるようにページを見てしまった瞬間であった。
「ポ、ポップ!」
「な、何だこりゃああっ!?」
本に吸い込まれたと思ったら、表紙にポップの慌て顔が浮き出て喚き出した。聞いた事が無い現象にロン・ベルクすらも目を丸くする。
「もしかして【魔法の筒】みたいなアイテムなの?」
「だとしたら・・・・一人用なハズ・・・・一体これの中身・・・・はっ!?」
「ど、どうしたのノヴァ?」
「ノヴァさん、見せて・・・・っ」
沈黙と言うより、メルルには刺激が強すぎて半失神に近い状態になった。マァムは急速に幼い頃の記憶を甦らせ、もしやとしながら語り出した。
「思い・・・・出した、わ・・・・私の勘が正しいとしたらだけど。小さい頃にマトリフおじさんが両親とアバン先生に初めて会った時の話だけど、そこは【魔道書が沢山ある場】で油断したマトリフおじさんは罠に掛かって、長い間封じられていたと聞いた事があるわ・・・・母さんが、内容を苦笑いしながら秘密にしていたけど・・・・あのマトリフおじさんを封じ込められるくらい油断させるのが何なのかは・・・・長年、疑問だったけど・・・・これが答えだったのかも!!」
本の中身は所謂?
【えっちなほん】
何とか平静を取り戻したメルルを交えて、これが本を見たものを中に吸い込むトラップと解析した。
「成る程、マトリフの性格と弟子になった期間を調べた場合、そこまで語った可能性は低いとしたか・・・・確かにバーンを失った魔界側のポップ対策に打ってつけだ。ダイの行方探すポップが何かの書庫で調べものしてるとして、それを混ぜとけばこうなるとかな作戦か、まあ取り扱い注意と忠告されたのにこれだからシャトーの罠とか疑うんじゃないぞ」
ロン・ベルクは真面目に解析するが、益々ヒドい雰囲気になる。シャトーがこれを託したのはいっそ罠であれとまで考えてしまった。
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シャトーは次なる目的地に向かっていた。ベンガーナに残した魔法石がそのままだったのでリリルーラを使い、その後は?
「発見、何とやら~ですか」
馬車は借りないで、途中の森にいたマッド・オックスにレムオルを使って乗り、気ままに移動していたのである。
乗馬とは違う疾走感がある。ダイやマトリフもやっていたが、野生の何とやらなのかと何種類ものモンスターや野生動物に乗って移動する方針で到着した。
【ベンガーナから南のアルゴ岬方面】
(【奇跡の泉】の在り処も周りも確認は出来ましたが、何と言いますか・・・・)
「くそっ、今日も駄目かっ!」
「一体、どうなってやがんだ!?」
レムオルで姿を消しているシャトーが見たところ、感心しない連中が引き返している。
(勇者ダイ効果とやらですね、良くも悪くもですが)
真の勇者の聖地巡礼とかではない、ダイが竜の騎士と僅かに漏れた結果だろう、元々は地上にも言い伝えはあると言えばある。まして?
【テランから他に移住した者は多い】
しかし、人間達からしたらエルフの住むような場へ向かう方がマシなレベルの結界が広がりつつある。シャトーはそれを確認する為に一直線には向かわなかったのだ。
これを騒ぎには出来ない理由はダイの知名度が高まっている反面な不祥事に繋がる要素があるからであると理解している。
「止まりやがれ!」
【山賊ウルフ】
止められた者達に狼が人型になったようなモンスターが二名立ち塞がり、身ぐるみを剥ごうとしていた。
「ま、魔王軍の残党・・・・我等人間を害したらどうなるかわからんか!」
「おぉ、ごもっともだな。だが、人間とか言い出して良いのか?パプニカのお姫様とかならともかく、この辺りを探っているって事は・・・・勇者ダイ絡みの不祥事を暴いて一儲けをしている連中と見なされるんじゃねえか?」
「そうそう、身ぐるみを置いて逃げ出した方がまだマシだぜ」
「ライデイン」
ドガァァ~~~んっ!
聞くに耐えないので姿を消したシャトーは彼等の中間に敢えて電撃系呪文を一発放った。只の落雷にしては不自然な上にクレーターに残る余波から魔法力を敢えて感知出来るようにしたので双方が震え上がっている。
「ら、落雷・・・・魔法力を感じるぞ?」
「ま、まさか勇者ダイが近くにいるのか?」
勇者のみが使えるとされてる呪文から出る可能性はそれだ。ダイが帰って来ているとしたら姿を見せると推測されるのはポップかレオナのいる場にデルムリン島とテランだが、この辺りは候補として同等かそれ以上になりかねない地なのだとして双方が一目散に逃げ出す。この件が騒ぎになって真っ先にこの地に来るなら一番縁があるラーハルト辺りかとシャトーは思っている。
「まあ、好きなようにしてなさい。私はこの辺りに長居しますし」
そして、デルムリン島の結界同様に奇跡の泉に向かえる道全般に張られた結界を意に介せずシャトーは歩を進めた。
バシルーラはアベル伝説に出たようなイメージとノリ。
ポップがどうなったかは【勇者アバンと獄炎の魔王】でのマトリフ初登場時の状態。