Foreverプリキュア GENERATIONS   作:へりてぃじ

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1-Ⅲ

 

「ネメシス様の動向は」「は、今の所は何も…ゲーテ様」

 

 空の杜、いつかネメシスが創った城ではそんな会話が繰り広げられていた。眼鏡を直しつつ椅子に腰を下ろし、ため息をつく。

「ウエーブも向かったはずだろう。奴からの連絡も無いのか」「はい、ございません」またため息が漏れる。奴も人間界へ顔を出していたはずだが…

 

 そんな事を考えていると、丁度幹部室の扉が開き、緩く巻いた髪が見えた。「はーい!只今帰りましたよ~っと」相変わらず軽い奴だ。

「ウエーブ」すかさず名を呼んだ。「ン~~?」自分の隣、2つ並べられた椅子に腰を下ろしつつ返事をする。「ずいぶん遅かったではないか。大方また人間界にでも行っていたのだろう」

奴はふんぞり返りながら答える。「正解正解。でも、ちょ~っと面白いコトがあってね…フフッ」

 

笑ってはいるが、その目は凍り付きそうな、冷徹な表情を見せていた。こういう時の奴は期待できる。

 

「─見つけたんだヨ、グリップをね─くくくっ…」

 

─────

 

 ようやく落ち着き、あのグリップで“変身”した後の記憶が無いこと、自分の意識の中で謎の少女が語りかけてきたことをつぐみに話した。

「つまり、つばさちゃんは自分の意志で戦っていたんじゃなくて、あの球に洗脳されていたの…?」「ううん、分かんない」私は首を振る。「でも─」無意識に自分の両手を見つめる。「でも、知らない誰かが、自分に乗り移ったような」手を握りしめる。「そんな気がしたの」

 

話し終わり、ふとつぐみの顔を見ると、不安に押しつぶされそうな表情をしている。「もう大丈夫だよ!ほら、なんともないでしょ?」ベッドから立ち上がってみせた。「…本当?」「明日は部活も無いし、お父さんとお母さんにあの箱と球のことも聞いてみようよ」ようやく少し顔が和らいだ。「うん、そうだね…!」つぐみは海で倒れたらしい私を家まで運んでくれたらしい。口には出さないがきっと心身ともかなり疲れているだろう。

そう二人ではなしていると、勢いよく部屋の扉が開いた。「つばさ!!!!起きたの!?」「お、お母さん、お父さん…!」「つばさ…!心配したんだぞ!」両親の顔を見ると何故か飛びつかずにはいられなかった。どうやら医者を探してあちこち飛び回ってくれていたようだ。

 

「本当に、どこも何も無いの?」「うん!大丈夫。ありがとう」

 

家族三人の顔を見たら、急に睡魔に襲われた。結局その日は晩ご飯も食べず、そのまま寝てしまった。時計の針は0時を指そうとしている。

 

 次の日、休日で部活も珍しく休みだったので、かなりゆっくり起きた。そして、両親に倉庫の箱について聞いてみるみることにした。飛び出した箱はつぐみが見つけて、持って帰ってきたらしい。倉庫から光が漏れていたことは説明したが、また心配させるだろうと流石に変身したこと、そして球が失踪したことは黙っておくことにした。

「ほら、ここ。」奥まで入り、隅を指さす。「ここにこの箱があったんだけど、見覚えある?」つぐみも箱を抱えて見せる。

「うーん、こんな箱あったかなぁ…」二人とも首をかしげる。すると、じっと箱を見つめていた母が声をあげた。「あっ!もしかして…」「何か思い出した?」とつぐみ。

「ほら、おじいちゃん、骨董品集めるの好きだったでしょ?そのコレクションじゃない?」「確かにそうかもな…」父がつぶやく。だが、ここから引っ越す前に大方売ったと聞いた。だとしたら、相当貴重な物だったのか、大切な物だったのか─

 

 休み明け、いつも通りつぐみと二人で登校した。坂を上ってくと、この前戦闘の舞台となった砂浜の海岸が見える。「…あれ、何だったんだろうね」ふと、つぐみが漏らした。「…うん…」私も歩く脚が止まった。「私達に何か関係があるのかもしれない」また曇った表情を見せる。

 

「きっと…きっとそのうち分かるよ!」根拠はまったく無い。だけど、自然とそんな言葉が出てきた。ぎゅっと、つぐみの右手を握る。「大丈夫!」

 

 

 

 

 つばさはいつだって前向きだ。そう、無理をしてでも。この前“変身”した時だって、怖かったに決まってる。自我を奪われたあげく、あの巨大な怪物を一瞬で倒すことになるなんて…

しかも、倒れて。気を失って。起きた後も震えてたじゃない。あの球体もどこかへ飛んでいってしまって、またいつか自分が乗っ取られるかも分からないのに?不安でいっぱいなはずなのに…?

 

でも、私の手を握って、まっすぐ目を見つめられると本当に大丈夫な気がしてきてしまった。

 

「うん…ありがとう」

 

私が元気づけなきゃいけないのに。そんな生返事しかできなかった。つばさの瞳は、光を失っていたあの時より、鮮やかな色を取り戻していた。

 

一つ気になることがある。あの事件依頼、喉に刺さった小骨のように引っかかっていることが。

あの球体、つばさが剣のグリップにもしていた、強制的に変身させられてしまった元凶と言える球体─

 

見覚えがある、というよりかすかに記憶に残っているような。でも、何回か思い出そうとしても、頭の中に霧がかかっているように絶対思い出せない。それがあの日以来、ずっと。

 

「もしかして私に何か…」ふと、呟いてみて、頭を振る。

 

しばらく考えるのをやめよう。

 

 

 

 

昼休みの校庭に、ミットにボールが収まる音が響いた。

「なーつばさーーー」相手はキャプテンだ。なかなか重いボールを投げるので、なかなか掌への衝撃がすごい。

「んー?なにー?」こちらも投げ返しながら返事をする。

 

「渚鳥さんさーー、今日元気ないんじゃないー?よっと」   

 

思わず、取りこぼしてしまった。「おっとっと…そ、そうかなーー?」

転々とするボールを追いかける。まさか、あんなことがあったとは流石に言えない。

 

…つぐみのことだから、まだ気にしてるんだろうな。誰だって家族が目の前で倒れれば、ショックを引きずるだろう。しかも、あんな怪物と戦って。

 正直思い出すだけで恐怖が蘇ってくる。あの球体の行方も分からない。またいつか自分の身体が乗っ取られるか…もし…もし自分以外が“変身”してしまったら…? 考えたくない。自分以外にあんな思いはして欲しくない。

 

「…つばさーーー?」

あまりにも投げ返さないのでキャプテンがこっちに駆け寄ってくる。「つばさもなんかおかしいぞ?」

 

「え…あっごめん…」「お前までどうしたんだ?」心配そうに顔を覗き込む。

 

ちょうど、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。「ヤバッ!提出物のこと忘れてた!まあ、何か手伝えることあったら絶対言ってよね」そう言って校舎へ走って行ってしまった。

 

心配をかけてしまった。優しいなぁキャプテンは…

「ふー……よし!」

ため息を一つ、校舎へ向かう。考えたって、分からないものは分からない。今は、目の前のことに集中しないと───

 

 

 

 

 

 自分の生まれた世界が憎かった。父も、母も、顔を見た記憶が無い。気がついた時には二つの郷の狭間にいた。

居場所なんてどこにも無かった。だから、動いた。居場所が無いなら、自分で創ればいい。そう、すべてを壊して、まっさらな世界で───

 

 放浪していた時に古い文献を見つけたことがあった。郷同士の争いが激しかった時代の物だった。

 

───遂に両郷の争いが始まってしまった。私はこれを鎮める為、同志とすべてをこの水晶に込めた。鎮める為には力が必要である。しかしこの剣で多くの命を奪ってしまった。戦禍を抑えるには仕方無かった。そして今平穏が訪れたのでこれを封印する。二度と争いが起こらぬことを願って───

 

 これだ。私の求めていた物は。付随していた地図をなんとか読み解き、古びた木箱を探し出した。中には、水晶玉が入っていた。

蓋の裏を見ると、「滅びでこの世が救われんことを」とある。その前にも文字が彫ってあるが、擦れて読みづらい。しかも、この世界の民が使っている文字と違うもので書いているようだ。

 

だが、その文字を見た瞬間、自分の口から勝手に言葉が出てきた。まるで昔からその言葉を知っていたように。

 

「…“プリキュア”…伝説となれ…」

 

 

 

 

 

 今日も一日の授業が終わった。何だか、妙に疲れた日だった。振り返ってみると、つぐみも帰る準備をしている。

「つぐみ、今日はもう帰るの?」「うん、何となくそうしようかなって」

 

心なしか、彼女も元気がない。「つばさちゃん、これから部活でしょ?キャプテンさんにありがとうって言っておいて」

 どうやら、いつもと様子が違うつぐみにも声を掛けていたようだ。どこまで出来た人間なんだ…

一人で関心していると、荷物をまとめ終わったつぐみが立ち上がった。「じゃ、また後でっ」軽く私の背中を叩いて教室を出て行った。

ちょっとは調子取り戻したかな?去っていく彼女の背中を見ながらそんなことを思った。ふと外を見ると、夕焼けが良く見える。教室の床も染められている。

 

「きれい…」

 

 外に見とれているとコツン、と何かが背中に当たった。振り返ると、あの翼を持つ球体が浮かんでいた。

 

「!!?この前の!?」思わず飛び退く。(何でまた私の所に…?)あの時の恐怖が蘇ってきた。

 

教室に現れた球体は、扉をすり抜け、廊下へ出て行った。まるで私を招いているように。「待って!!」堪らず私も廊下に飛び出す。廊下の中央に留まっていた球体はそれを待っていたかのように、音もなくまた動き出した。(今度は何だっていうの!?)確かに今にもどこか逃げ出したい気持ちだ。だけど、何故か追いかけられずにはいられなかった。

校内を走りながら、違和感を覚える。誰もいない。おかしい。まだ6限が終わってそれほど経っていないのに。確かに、アレが教室に出現した時も教室には私一人だけだった。まだ数人残っていたはず──

 

 そんなことを考えていると、屋上に繋がる扉の前に着いた。重々しい鉄板が鎮座している。勿論、鍵は開いてなんかいない。

その時、球体が光の粒子となり、鍵を覆った。ガチャリ、と開いた音が誰もいない階段に響く。「…行け…ってこと…?」ドアノブに手をかけ、力を込めると確かに開いている。

扉から見える景色に目を見張る。太陽が無い─?さっきまで空を染めていた夕焼けが鈍色になっている。まるで、世界の彩度が抜け落ちたような光景に思わず屋上へ飛び出す。だが、人がいないことを除けば、何も変わっていない。

 フェンスから身を乗り出して辺りを見ていると、頭上から球体がゆっくり降りてきた。そして、無意識に差し出した両手に乗る。

「何が起ころうとしているの…」思わず、手の上の球体に語りかけるようにつぶやいた。

 

 呆然としていると、急に目の前の空間が歪んだ。突風も吹き荒れている。思わず、腕で顔を覆う。(これって、もしかして)

 

「ザケンナーーーーーーー!!!!!」「ヤラネーーーーダァァァァァァ!」

 

この前と同じ、咆哮と共に二体の怪物が出現した。同時に、私の掌からふわり、と球体が浮かび上がる。

 

「私が…やるしかないの…?」目の前の球体に語りかける。そして、私の声に呼応するように、くるり、と回る。

 

もうあんな思いはしたくない。でも、ここで投げ出せばこの街はどうなるの?私の家族は?みんなは?

 

球体に左手を差し出す。それに応えるように、柄が現れた。深呼吸をして、ギュッと握る。身体が光に包まれ、前身に力が漲る感覚がする。

 

 

やがて光が解けると、白い装束に身を包んだ少女が現れた。

 

その瞳は、黒く塗りつぶされていた。

 

 

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