一章 交際開始
夏休みが始まりすぐの事。邦宏は秋は制服に身を包み一緒に高校へ向かっていた。
「夏休みなのに休みらしい事して無いね」
「仕方ない受験あるし、内村さんはコンクールもあるし」
邦宏と秋は大学受験を控えていた。その上秋は初出場のピアノコンクールで注目を集めている。
「オルガンなら世界とれる自信あります。しかしトリマーの資格取らないと、家継げない」
秋の実家は床屋である。秋は幼い頃から家を継ぐ気満々で内村理容室二号店、内村美容室を作ると意気込んでいる。
「内村さん今時の人だよね」
「たまたまだよ。少し調子よくて、昔から通ってるピアノの先生の話しをちゃんと習って、記念出場して、有名な人にほめてもらって」
初出場にして、実力を見せつけて会場を騒ぎにした秋。関係各位から色々お話しを受けててんてこ舞い状態である。
「おはよう邦宏と内村さん」
長身のシルエットが近づく。背中、頭から更にギターケースが伸びてる。
「龍一、今日も練習」
「学校終わったらな。で?どうなった二人とも」
龍一は邦宏と秋の関係を知っている。付き合ってるのか付き合ってないのか気になる様だ。
「この通り付き合う事になった」
「・・・っしゃ!やっと付き合ったか!いやも遠くからいつ付き合うか皆んなで気になって気になって仕方ないたよ」
邦宏と秋が手を握り合って、交際宣言する。
「これでダブルデートも夢じゃない」
龍一は一年以上も前から付き合ってる彼女がいる。
喜ぶ龍一の見ながら秋が邦宏の耳打ちする。
「今度こそ見れるから相馬君の彼女」
「妄想どうかそろそろはっきりさせないとな」
彼女居る宣言されてはや一年写真するないから、クラスから可愛そうな奴認定を食らっている。
「あっ、信じてないな。全員の反応知ってるからな。まあ仕事落ち着いた言ったし8月中に合わせてやる」
耳打ちしてるのバレたようだ。
「仕事って?」
「親の仕事継ぐから勉強と仕事両立してるから中々会えないだ。って内村さん前々説明したよな」
龍一からこの説明を数回聞かされてるが間に受けた事は無い。
「はははっそうだったね」
「とにかく合わせてくれ。一応俺は信じてる方だから、多分最後の一人だ」
「一冴は信じてないのか?」
「学校で1番頭良い奴は嘘だと思てるよ」
井上一冴。龍一と邦宏と一緒に絡んでるクラスメイトである。高原高校入学から今日まで学校で1番の頭の良さであるが、邦宏と龍一と畑違いの2人と仲がいい。
「ヒデェ。着いたら目にモノを言わせてやる」
「喧嘩はダメだよ」
「喧嘩じゃない内村さん。わからせるだけだ。先に行くぞ邦宏」
と、駆け足で学校に向かって行く。
「騒がし奴」
「コレは着いたら騒ぎになってるね」
二人目を合わせて笑い、先に行った龍一をゆっくりと追う。
「本日着けで就任します世界史の瀬乃口です。よろしくお願いします」
高原高校の職員室に1人新任の教師として瀬乃口が挨拶している。
「確かアメリカ教育学博士得て、日本の教育現場の学力向上と安全の確保に力を入れたいそうです」
教頭先生の渡辺先生の紹介で職員室がざわつく。
「当校の学校法人私立高原高校は最新の教育に力を入れてると耳にしまして、研究方針と一致してると確信しました。日本で教育者として、前線で学力と校内安全に全力で挑みたいと思います。どうかよろしくお願いします」
深々と頭を下げる瀬乃口に、体育教師の小坂が突っかかってくる。
「校内安全って具体的どんな感じです?なんだかんだで皆んな安全に気を遣ってますよ」
「イジメなんか下らないからやめよと言える楽しい学校にしたい。が、どうにもならいなら法の力で現実を教えます。残念ながら教師だけでは守りきれません。迷わず法に頼る事を広めます。よろしいですか小坂先生」
瞼を閉じる事なく、迷いなく、言い切る。
「瀬乃口先生。別にここに来なくてもよろしのでは?」
英語科の野口が聞く。
「単純に現場主義です。博士号得たとしてもまだまだ学ぶ事だらけです。皆さんの協力が欲しい、安全に楽しい学校を作るのを手伝って欲しい」
頭下げる瀬乃口。とんでもない頭良い人が来てどう対応すれば良いのか分からない職員室の一同。
「とりあえず瀬乃口先生は夏休みの間は、補習や進学の為に勉強に来た子達の面倒見て下ださい」
「分かりました。今後ともよろしくお願いします」
自己紹介を終えて、瀬乃口が座る席に向かい着席する。隣りに先質問した野口が居る。
「え〜と、野口雪香です」
「瀬乃口充です。よろしく」
軽い会釈して、充はノートPCを開きキーボード叩く音が響きだす。
野口と反対側の国語科の竹内がそっと充のPCの中を見て、酷く驚く。内容が全て英語で構成されている。
「竹内先生も論文きになります?恋人同士の喧嘩で互いに銃持ち出して撃ち合いにならない方法を止めるには、と言う内容なんですが」
振り向きしないで言う。
「画面に反射してますからこっそり見ない方がいいですよ」
とんだ新任教師来た事で職員室に衝撃が走る同時に、校内でいつ付き合うかどうか注目の的になっていた2人が遂に正式に交際宣言したから騒動になってる3年生の教室。
「てな訳でこの2人に拍手!」
教室で邦宏と秋の2人黒板前に立たされて今日登校して来たクラス全員から祝福されているが、取り囲まれた当の2人は予想外の祝福に引いている。
「龍一なんて言ったんだ?」
「言った?前々から邦宏と内村さん2人が付き合ってるか無いか論争やってからな、今日の宣言で決着が付いたから皆んな喜んでる訳よ」
2人が悩んでる時にコイツらと来たらと思う邦宏と秋たが、笑顔で耐える。
微妙な距離感の所をショーにされたのだ。怒りが込み上げるが、廊下からやってきた一組によって止められる。
「園田君と秋、怒ってるわよ。良い加減にしなさい」
「悪ふざけはよせと言ったぞ」
車椅子を押す井上一冴と乗っている涼木千歳2人が、教室に入って来る。
「天才二人組のご来場と来ましたか」
「ふざけない、秋、園田君おめでとう、やっと付き合えたのね」
龍一の喋りを止めて、千歳が祝福する。
「ありがとう千歳さん」
「ショーにされたと思ってるとおもうけど、皆んな心配してだけよ。まあ大事になったけど」
秋は千歳の所に駆けていく。
「気にしてないよ」
「それなら良かった」
「内村さんおめでとう。邦宏とよろしく」
「井上君もありがとう」
千歳の後ろにる一冴にお礼言った時、黒板側の引き戸がガラリと開く。
「盛り上がってる所申し訳ない、一応時間だから座って下さい」
邦宏と秋以外は面識が無い先生が現れて教室が一瞬止まる。
「初めてまして、二学期から世界史担当の瀬乃口です。新学期になったら全校集会で正式に紹介される予定です」
黒板前の台の前で自己紹介して一礼する。
「それぞれ勉強お願いします」
いきなり知らない先生現れてざわつく教室。それを気にしせず教台に立ちノートPCを操作する。
静かに全員座る席に座り、大学受験の勉強を始めるが新任にしては貫禄ありすぎる未知の存在にそれどころじゃない。
幸い席順を知らなそうなので、千歳の席を中心に邦宏、秋、一冴、龍一の5人が集まり、小さな声で話し合いをする。
「世界史に新しい先生くるって聞いてたけど、見た事ないタイプの先生だよな」
龍一が目を細めながら瀬乃口の様子を見る。
「新任とは思えないぐらい貫禄ありすぎるわ」
千歳も目を細めなが言う。
「舐めてかからない方が身のためだ龍一、千歳」
一冴は何かを感じとったか1番乗り込んで行きそうな龍一と千歳に念押し、邦宏に目を合わせる。
「邦宏だけ視線が違うな。何か知ってる?」
「・・・中学の時にちょっとだけ」
「そこ席違うし、もう少し声のボリューム落としてね」
瀬乃口がいつのまにかこっち見てる。にっこり笑い手を振る。
静かに5人離散し、自分の席に付く。邦宏の中学の時の話しを聞きたいが残念ながら新任の瀬乃口に邪魔される。
今は大人しく勉強することになった。
そしてお昼休みの時間。入学初期からの絡む5人は、いつものように教室の一角に集まり駄弁り出す。
「カップル見えないのがこの2人良さ」
「熟年の夫婦だよな」
千歳と龍一が腕組みしながらうんうんと頭を上下に頷く。
「目の前の当人に言うか普通」
一冴がアンパン食ういながら言う。
まあそう言われても仕方ない。邦宏と秋は入学してからちょくちょく話す仲で、時間が経つ毎に活動する事が多くなり、常に一緒にいる時間が増え。周りからは付き合てるか無いからの話題になるまで来ていて、3年になり。もうはや進路やらで有耶無耶になるかと思ったら、ようやく付き合い始めた形である。
「一緒にいるのが当たり前だったけど、付き合い前と付き合い始めるとじゃ全然違うぞ」
「表情同じに見えるけど、心臓バクバクしてます」
邦宏と秋が手や腕をやら身を動かして表現する様子を微笑ましい見る3人。
「交際の先輩としてある程度の距離感は大事だと言っとこう。近すぎてもダメだぜ」
「ハイハイイマジナリーイマジナリー」
千歳は軽くあしらう。
「ふふふ、もう少ししたらそんな事言えなくなるからな。大阪の仕事安定したから夏に東京に帰ってくるからな」
千歳に目を見開きニヤリと笑う龍一。自身ありすぎて一同恐怖する。
「まぁお楽しみに、内村さん近く川崎さんの店でライブやるからピアノ弾いてれると嬉しいだけど」
お弁当に箸を向けよとしてる秋に龍一が両手を合わせてお願いする。
「ラ、ライブはちょっと」
「川崎さん店箱の10倍あるホールで演奏出来るのに?」
「合わせるってのはちょっと」
「激しいのはやらないから大丈夫、千歳もバイオリンお願い」
「安く無いわよ。一曲10万から」
「つれないな」
秋と千歳は音楽仲間である。秋のオルガン演奏を聴いてバイオリンで合わせたのが出会いである。邦宏より長い付き合いである。
「秋もこう断らないとドンドン利用されるわよ」
「分かったよ千歳さん」
「でも困ったな。ピアノ担当須藤さんその日同窓会でパスって急に言われてな、暖簾とかで隠すから前向き考えて」
外見は違いJAZZメンバーの龍一、JAZZギターが上手くヘルプも任せるとか。一年の時文化祭の時ソロで一躍注目受けたが例のイマジナリー件で微妙状況である。
「考えてとく」
「サンキュー」
「音楽できるって良いな。僕は勉強しか出来ないから」
「高原高校No. 1が何にか言ってる。早く医師になれ」
一冴の割り込みに邦宏が切り込む。
「一応好き好んで医師になりたい訳じゃいんですけど」
一冴の家庭は代々医師一族。親からずっと前から医師になれ医師になれと言われている。反抗心剥き出しだが、医大を志望してる。
「外科医になれって言われたけどリハビリやりたいって冗談言ったら怒られたんだけ?」
「千歳と一緒にいたいからそんなふざけた事言えるんだってっさ、別に違うだけどね」
一冴と千歳は親がらみの幼馴染で、一冴の情報は筒抜けである。
「確かに千歳の両足は切断されて、人の手を借りたリハビリが必要なのかもしれないが。この先再生医療が発展して切断された手足が元に戻る可能性がある。その事も考えればリハビリは学ぶ必要があるんだよ」
持論を豪語する一冴を冷たい目線で見る千歳。
「一冴がいなくても大丈夫よ。もう少ししたら昼休み終わるわよ」
話が盛り上がってるのが良いが、その分時間が経つのが早いのが困る。残りの弁当を慌てて放り込み、解散する。
そしてまた瀬乃口が教室に戻ってくる。
「各々勉強をするように」
一言言い、再び朝と同じ様にノート型パソコンを淡々とカタカタと叩く。
再び大量の視線を浴びる瀬乃口だが気にせず作業を続ける。
邦宏と秋の2人はこの人の事を知っているがあの時とは違う、あまりにも異様な雰囲気に言い出せないでいる。
邦宏と秋はこの後瀬乃口の部屋に行く事になっている。
そして時間は経ち放課後になり、邦宏の部屋の隣にある瀬乃口の部屋のインターホンを鳴らして来た事を知らせる。
「2人とも来てくれてありがとう」
機械越しの声からもの優しい声が聞こえてくる同時に、鍵が開き、扉が開かれる。
「どうぞこちらへ」
2人は言われるまま中へ入る。
瀬乃口が住む部屋は邦宏と同じ間取りだが、家具がほぼなくキッチンに長テーブルと椅子が一つ、上にノートPCが置かれている。
「ありがとう来てくれて、適当に座って」
瀬乃口は右手を差し出して促す。分かりましたといいながら、居間にあるソファーに腰掛ける二人。
「難しい話はない。単純にデートしててここ怖いなとか、危ないな、とかをこのリストに書いて渡してくれると嬉しい」
◯✖️方式と自由記入欄書いてる用紙を渡す瀬乃口。
「こんなのでいいのですか?」
「詳しく聞き過ぎたらストカー変わらないからね。書きたくない事あったら無理して書かなくていいから」
二人は貰った用紙を静かに見る。
「最低限の節度を守って欲しい、公共の場でマナー違反とね。ルールを守っていればいるほど君達の安全を守れる」
邦宏と秋の2人は改めて不思議な人に出会ったと思った。特に秋はつい最近あったばかりだが、なんだか有無を言わせない何かを感じる。
「アホみたいな事巻き込むのだから難しく考えないで下さい。はいこれ協力料」
充の胸ポケットから映画のペアチケットを取り出して渡す。
「あ、最近流行りの奴」
秋飛びつく。
「いい食いつき、喜んでくれて良かった」
笑顔で秋に充はチケットを渡す。
邦宏は映画にはあまり興味がある方では無いからこの手の作品に疎い所がある。目を細くしてチケットに書いてある作品名を見る。
「お節介な程に愛をお福分を」と書かれている。
「順調に進み過ぎた高校生カップルが、恋愛に困ってる人を助けるお話しだよ園田君」
「三角関係やら横槍やら邪魔無いからストレス無しで見れるからオススメです。楽しんでね」
「はい。ありがとうございます」
用紙と前売り券をもらい解散する事になった。
充の部屋から出る間際に秋をちゃんと家に送り届ける様にキツく言われ、言われなくても言い返した邦宏。
そしてマンションから出て空を見る2人。話しも手短に済ましただけあってまだ空は赤くなり始めたばかりだった。
空を見ながらゆっくりと歩き出す。
「上手くデートの流れになったね園田君」
「・・・そうだね」
何やら嵌められた感じがするけど、このままデートしないまま夏休みが終わる可能性は充分あった。
邦宏は受験、秋はピアノのコンクール。なんだかんだで忙しい2人である。
「改めてよろしくお願いしますえーと邦宏」
「ああよろしく秋」
お互い想い人になり、正式に付き合って始めたが、友達の延長線をやってる感じるあった。
名前で呼ぶ事で延長線を終わらせる。
「・・・・」
決意を込めたが、恥すかし方が勝ってしまった。
なんだかんだで友達から3年近くの付き合で、ずっと一緒だっただけ改めてたら改めてただけ恥ずかしい。
「もう少しゆっくり行こう」
「うん」
都内某所にある雑居ビルのテナントの一つにある神田弁護士事務所のエントランスから、1人の影が入ってくる
「お久しぶりですね神田さん」
「!?瀬乃口さん」
「四年振りですか?邦宏ちゃんと成長してて良かった」
事務所スタッフが急な来客に慌てるが、主人である神田が大丈夫だと言って止める。
「五分ぐらいならお話しする時間ありますよ」
「ただの挨拶だから帰るよ」
「色々聞きたい事がありますからどうぞ奥へ」
「邦宏に会ったのは偶然だから気にするな」
神田は邦宏の弁護士である。
「得体の知れない人間の言葉を信じられないです。邦宏君はやっと普通の生活に戻れたのに、ごちゃごちゃにするつもりですか」
充に詰め寄る神田の気迫に押されて2歩下がる。
「そんなつもりはない。邦宏の両親に誓ってだ。就職して、引越して、隣に邦宏が住んでた。運命とか宿命とか信じる達とは思わないだろ」
「邦宏の人生を滅茶苦茶にしたら許しませんよ」
神田はゆっくりと引き下がる。
「邦宏に彼女が出来たんだ。こんな嬉しい事は無いよな、ついついてを貸してしまった」
引き攣る表情に対して、満面の笑顔の充。
「あまり人の人生に介入しない方がいいですよ瀬乃口さん」
「肝に銘じとくよ、じゃまた来るよ」
「来ないで下さい」
来た出入り口からスッと歩いて消えていく充。
そろりと足を音立てずに事務所外の廊下を見るが気配がなくなってホッと胸を撫で下ろす。
「神田さん。誰です?あの人」
秘書が聞いてくる。
「さぁ、よくわからない。奴の名前が瀬乃口充しか分からない。一時期、奴と一緒に行動してある案件で無罪を勝ち取った」
「凄い人なんですね」
「デタラメが人の形して歩いてる」
えっ?と秘書が聞いてくる。
「今聞かなくてもその内分かるよ」
神田は右手で額を抑えながら言う。
3年前の話。男子中学生が喧嘩して、当たりどころが悪くて相手の子を殺してしまった。
色々な裁判を受け、彼は保護観察処分になった。
その観察官として参加した男が相当キレので、彼を今一度正気を取り戻させて、弁護士共に再審、正当防衛に持ち込んだ。
彼は喧嘩ではなく一方的な攻撃を受けていて、反撃をしなきゃ死ぬ所だった。
法的には彼の起こした反撃は正当。しかし、彼は一生人を殺した感触が残り続けるのだ。
「邦宏お前は幸せにならなきゃならない。大丈夫だ私がついている」