機甲シン・ゼロ【Reboot】   作:PureFighter00

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ドジっ子ボイジャー1号たん、暁に死す(トーストじみたものを咥えて四つ角で衝突というベタな始まり方)


第零話 宇宙は広いな、大きいな

貴方は無人宇宙探査機 ボイジャー1号を覚えているだろうか? 1977年に打ち上げられた太陽系外探査機であり、宇宙の何処かに居るであろう地球以外の星に住む知的生命体に向けて飛ばされた地球人類の希望である。

 

生命という存在は、非常に稀な確率で惑星上に発生する宝物だ。余りにレア過ぎて通常は出会う事などほぼ望めない。どれくらいレアかと言うと、ソシャゲの10連ガシャで10枚全部SSR引けるぐらい稀である。宇宙はなまら広く深遠なのだ。それが分からず……いや、それを承知で地球人類は何処かに仲間がいないかとボイジャー1号を飛ばしたのだ。もし……もし、他に命があるのであれば。もし……奇跡の様な偶然により他の知的生命体と出会えたならば……っ!

 

 

 

それは祈りである。

 

孤独な地球人類が造化の神に捧げた祈りである。

 

 

 

 

どうやら神は存在するらしい。我らがボイジャー1号は遠く輝く宇宙の彼方で異星文明との【物理的接触】に成功した! 快挙である。軌道が0.001度ズレていたら接触は叶わなかった。神は我々の願いを聞き届けてくれたのだ!

但し、その異星文明との接触は【物理的】であった──

 

 

──無音の宇宙に超新星爆発めいた大爆発が起き、周囲に電磁波やら中性子を盛大に巻き散らかす。神は居たがどうやら実在する神様とやらはクトゥルフ的な邪神か、少なくとも人類にはミリも興味を示さない存在らしい。

 

 

 

 

【プラコッタ星系 首星プラコッタ】

地球人類のパートナーとなるプラコッタ星人は、首星とその近隣の惑星に生活圏を広げたかなり科学が発達した異星人である。星系内探索を300年前に終わらせて増え続ける人口を首星外に移住させ始めて200年。読者諸兄に分かりやすく説明すると、ガミラスやイスカンダルに接触する前の「宇宙戦艦ヤマト」における地球の技術レベルに近い。

そして今、かの首星のIHIじみた企業のドックで星系初の外宇宙探査有人艦「プラコッテ」が完成して彼らは沸き立っていた。

所謂ワープ航法を実用化して世代を跨がず他の星系まで辿り着ける最新艦! これで我々は他の星系まで旅をする事が出来る……そりゃあもうプラコッタ星人は歓喜した。新聞の号外は出るし、これを機に年号を変えよう、宇宙世紀だ!と湧きに沸いた。

 

「エネルギー充填112%、フライホイール始動……」

 

……フライホイール使うのか……まぁ、物理法則同じだし、構造や機構が似て来るのは仕方が無い。

 

「重力圏離脱、ジャンプ準備完了!」

「探査プローブ異常なし、ジャンプアウト位置正常」

「よし、訓練通りジャンプ開始せよ。船長、指示を」

終身名誉大統総理大臣 ピョンタロスは厳かに船長へ下知した。実に貫禄たっぷりであり、背後には各種メディアが詰めている。既に小規模なジャンプは幾度も成功させており、ジャンプ自体の安全性は多重に確保されている。今回は撮影クルーを乗せて民草に我々の科学力を視覚的に体験してもらおうという寸法だ。しかし彼らはこの宇宙の神がニャルラトホテプとかダオロスじみた存在であるとはまだ知らない。

 

「これよりプラコッテはジャンプを行う。緊張せずにピョーンと行こう、但し気は抜くなよ……カウントダウン開始ぃ!」

「……5……4……3……2……1……ポチ」

 

すん……と音が消え、光が消え、艦体が消える。それと同時にプラコッテに乗る全ての乗員が5.3光年先の外宇宙に現れた。まばゆい光を彼らは見た。一瞬で視神経を焼き尽くす強烈な電磁波だった。

それが彼らの見た最後の光景であった。

 

 

 

 

これが冒頭に記載されたボイジャー1号が異星人に物理的接触をキメた部分の裏側である。いわゆるワープ航法出口にゴールデンディスクを咥えたボイジャー1号が、たまたま、本当に星の巡り合わせの悪いことに通りがかってしまったのだ。同一空間上に出現した座乗艦プラコッテは文字通りボイジャー1号と船体を重ねて爆ぜた。強制核融合というか、e=mc2というか。たまたま重なった場所がプラコッテ艦体後方のイオン・パルスエンジン部で動力中枢部の極めて「いいところ」だった為に、デススターの中心部に爆弾を落としたが如く僅か20秒で全長1.4kmのプラコッテは撃沈した。

直様プラコッタ星域宇宙軍やスペースコーストガードが救助に向かうが、当然の様に生存者はいない。星系の人々は熱狂から狂乱に急転直下。株価は大暴落して首星の中央線じみた列車に飛び込む者多数、失職者25万7000人、損保会社はひっくり返って更に何故か流行病がパンデミックである。

そして彼らは見た。奇跡的に形が残ったボイジャー1号の残骸と、地球人類が託したゴールデンレコードを。

 

 

【ゴールデンレコード】

異星人に向けたお手紙じみたもの。図書館とか行けば普通は内容確認できる。

 

 

ただでさえ運命の神々は地球人類及びプラコッタ星人に対して悪意しか持っていなさそうな偶然が続く中、次の不運も中々に凝った嫌がらせであった。ゴールデンレコードに収録された「ad astra per aspera」というラテン語が、本当にホントーに偶然プラコッタ星系の言語において「宇宙を超えて天に送る」……つまり、宇宙を超えてお前たちを殺すという意味に取れてしまったのである。それ以外にも裸の男女は彼らの文化の中では最大の侮蔑であったし、レコード内容を精査すると何十もの【彼らの文化圏に於いては】煽りに当たる無礼な文言だったのだ。イデオンで白旗が「相手を地上から一人残らず殲滅する」という意味に取られたのと似ている。嗚呼、カール・セーガンがイデオン見てからゴールデンディスクを作ってくれていれば……(尚、ボイジャー1号打ち上げはイデオン放送前なので、無理である)

 

よって、ボイジャー1号は地球人類が何らかの手段で未来予知をして、外宇宙に進出しようとする我が星系に対して行った攻撃であると看做された。態々地球人類が喧嘩吹っかけて来たと誤解されたのだ。運悪くプラコッタ星系でも政治形態は民主主義であり、民衆という存在は案外理屈ではなく感情で動く。ふざけんな! やり返したらんかい! が星の、星々の総意となった。

 

 

民衆を賢くするのは、ワープ航法を独自開発するより難しい。




船は女性扱いやろがい。
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