機甲シン・ゼロ【Reboot】 作:PureFighter00
その合金は、頭脳は東大発想は京大、体力部分は日体大に並ぶとも劣らぬ俊英の巣箱、練馬の産んだ奇跡の学舎「城南大学」シキシマラボで合成された。
これは実際疑う事の出来ない事実なのだが、この日本には手塚や石ノ森や横山の魂を受け継いだ科学者が多数おり、彼らがロボット工学や人工知能など最先端科学分野を開発しまくっている。シキシマラボの助教授3名と井上教授が生み出したこの不可思議な合金も、井上博士が若き日より「鉄人28号やマジンガーやゲッターみたいにグニャグニャ曲がる金属作りたいなー」と、最初期はバンダイに売り付けるつもりで開発した合金だった。(井上博士なのにシキシマラボなのは、井上が重篤な鉄人オタだからである。学内でも教授はシキシマと呼ばねば眉すら上げず、学生の9割7分はシキシマが本名であると誤解している)
助教授3名の名前……いや、通称も、カブト、サオトメ、ナンブであるが、マジンガーZとゲッターロボとガッチャマンに由来するのは説明するまでも無いだろう。それに気付くとシキシマラボに連行されるから気を付けろ。
そして……総転移だかナノテクだか奇怪な理論により硬度や展性、形状を自在にコントロール出来るこの合金は、正に超合k……いや、超すごい合金であり──装甲であり、内部フレームや関節構造であり、アクチュエーターにもなる……いや、全ての機能を同時にこなせる夢のちょ……すごい合金だった。
通常、可動機械はフレームやアクチュエーターや装甲を別々に配置しなければならないので、重装甲にすると重量が増えてアクチュエーターでの動作が緩慢になるし、アクチュエーター出力を増やそうとすると装甲や関節構造、装甲が犠牲になる。重装甲で高機動なんて機体があったらスパロボシリーズに参戦した時に困るだろう?
しかし、この超すごい合金はそれらの両立を可能にしてしまうのだ。逞しい太い腕は途轍もない怪力と呆れる程の耐久性を同時にもたらし、身長18メートルや57メートルクラスの人型ロボットを構築する素材として活用できたのである。ダイカストモデルの代替素材として開発したものが、何故か本物のスパロボに使用できる素材になった。
この素材をクボタ辺りに提供していれば、クボタはアメリカキャタピラー社を追い抜いて建築機械メーカーのトップ企業になれただろう。まぁバンダイに売っても一生超合金トイには困らぬ生活が送れるに違いない。バンダイの村上さんが豪華な接待してくれる筈だ。
だが、有用であり戦闘機械に転用可能であるからこそ、急速に法整備が進みスーパーロボットの建造は不可能になるだろう。絶対米軍が難癖付けて軍事用技術として独占する奴だ。カブトはF2開発に携わったエンジニアからこういう時にアメリカがどんな行動を取るか聞いているし、シキシマ教授もマンハッタン計画に参加したオッペンハイマーの事は朝永博士から伝え聞いている。
つまり、こういうコトだ。技術公開前に実際スパロボ作ってしまわねば、二度とスーパーロボットを建造する機会は無い。
4人は俊英であり天才であったが、些か倫理部分が壊れていた。第二次世界大戦中の決戦兵器を研究し続けたり、神にも悪魔にもなれるロボを自家開発し、ゲッター線濃度が15倍だったり科学の忍者を秘密裏に結成してしまう様なマッドサイエンティストを瞼の師と仰げばこうもなろう。
シキシマラボは表向き最先端高級素材研究を主としているが、カブトはマジンガーゼロをうっかり読んでしまい、独自に高次予測が可能なAIを開発していた。このAIにマジンガーシリーズのアニメと漫画版、各種リメイクにスーパーロボット大戦を与えて徹底的に教育した。そして「彼」は高次予測を活用して株式投資で研究費の運用を行い莫大な利益を上げた。
サオトメは学外にダミー会社を設立し、謎の株主として大型作業機器の開発を開始した。後に産学連携プロジェクトとしてシキシマラボと提携し、こっそりラボの地下に30m級のスーパーロボット建造・整備基地を建築した。勿論建築許可の各種書類は偽造してある。
どれもこれも一歩間違えば一発御用で社会的に死亡待った無し案件であるが、秘密は不思議と守られた。無論ナンブが秘密裏に組織した科学のスパイがカウンターインテリジェンスを担当して暗闇に踊る白い影が暗躍したからである。ナンブは知古を通じて何処かの別班とか内調とかと秘密協定を結んでいる。
なぁに、地球や日本のピンチを颯爽と現れてスーパーロボットしたらどうとでもなる。4人のマッドサイエンティストは確信していた。新型コロナの時もそうだったじゃないか。普段人権やら自由を高らかに歌い上げていた理想主義者どもは、国家の危機となればそれらを全て見なかった事にした。それどころか蛇蝎の様に忌避していたファシズムという全体主義を持ち出して全体の安寧の為に個人の自由を制限したではないか!
暇な時には理想的な夢の国を語る奴らも、いざ我が身に危機が迫ればファシズムを選択するのだ。本質的には日本人……いや、世界中の全ての人が我が身可愛さに他人の自由を制限する。彼らは自分の掲げた自由の美旗の重さを知らない。
だから、大丈夫だ。
この機甲シン・ゼロが全力を尽くさなければならない国難が眼前に現れた時、人々はゼロの足下に膝を屈し命乞いをするであろう。また或いは最大多数の幸福だの科学だロジックだと屁理屈捏ねて、ごく少数のスケープゴートを仕立てて身の安寧を選ぶだろう。
建造中の機甲シン・ゼロは「Zのテーマ」を聴きながらその日を待ち侘びていた。
──何故か彼らは愚かにも、自分がスケープゴートにされるとは思いもしないのだ。
「こうしてやぎは彼らのもろもろの悪をになって、人里離れた地に行くであろう。すなわち、そのやぎを荒野に送らなければならない。」(レビ記 16章22)
……とまぁ、新型コロナ流行る本当に直前にこんな話を書き始めて、人類の安寧の為に東武練馬の女子中学生見殺しにする民衆と、覚悟がキマリ過ぎて全人類を危険に晒してでも女子中学生助けるんだよ、オメープライベート・ライアン見た事ねーのかよ!ってプロットのまま話書いたらアナーキスト確定であろう。(実際アレは超ファシズムだと思うのだが、国内外の賢人達も、空気読んで「それはファシズムなんじゃね?」とは誰も言わないのだ。