アマラの野史録 -もう一度悪魔を目指す元混沌王の異世界転生-   作:Leiren

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第四話

 俺は嵌められた。新人冒険者を強くするとかいう口車に乗せられ、一つの国ですら全貌を把握仕切れていない、洞窟の深い深い場所に突き落とされた。

 ただまたここで嬉しい誤算もあった。この洞窟の深層は確かに悍ましいほどの妖気に包まれているが、同時に酔うほどマガツヒで充満されていた。まるでアマラ経絡のマガツヒが一気に解放されたような。

 

 常人なら気が狂いそうだが、悪魔の俺にとっては大いに好都合だった。ここで一気に力をつけてやる。

 

 俺が落ちた場所はたまたまあった地下水湖で、陸に上がった先に見える物は、ただただ吸い込まれそうな無限の闇。これから歩く場所がどれだけ広いのかも見当がつかない。

 しかし辛うじて洞窟の壁は自ら発光しており、それでも道という道は見えないが、壁伝いに俺は歩き出す。

 

 そう歩くこと数分、突如通路の奥から素早い足音が聞こえる。それは確かにこちらに近づいているようで、かなりの猛スピードで突進してくることが先に分かった。

 

「ガルルル! グルアアアッ!」

 

 暗闇から姿を表したのは狼だった。ただ造形が刺々しく、禍々しく変異しており、地上にいた物とは全く別物だとすぐに分かった。そして姿が見えると同時に、狼は既に俺に飛び掛かっていた。

 流石に反応しきれず、腕に思いっきり噛みつかれるもすぐに振り払い、即座に右フックで反撃する。

 

「キャウンッ!」

 

「逃がすかこの野郎ッ!」

 

 俺は殴られた狼が咄嗟に距離を置く前に頭と身体をしっかり両手で抑え、勢いよく地面に狼の頭を何度も打ち付ける。打ち付けるたびに溢れ出すマガツヒ。どうやらマガツヒを得る方法はこの世界でも同じようだ。ならばこんなところで時間を掛けるより、より強力な力で確実に殺した方が速い。

 もう既に息が絶え絶えの狼を見て、俺は拳に『突撃』のエネルギーを込め、狼の頭を潰さんとする勢いで拳を突き落とし、狼の頭を大きく変形させる。

 

 よし、良い調子だ。ここにあるマガツヒの量も、魔物から得られる分も桁違いだ。一気に力がマガタマから解放されることが分かる。

 『暴れまくり』の使い方を思い出すと同時に、一瞬だけ胸の気持ち悪さでえずき、マロガレを咄嗟に吐き出せば、身体の中に二番目のマガタマ、ワダツミが宿っていることを悟った。

 

 マロガレから引き出される力はまだあった筈だがやはり、活発的では無いものの、ゆっくりと蠢いていた。とにかくマガツヒを手に入れることで、忘れたスキルを獲得出来るようだが、必要なマガタマも順次身体から生成されるようだ。

 

 そうやってマガツヒの手に入れ方と、忘れて消えたマガタマが戻ってくる仕組みを理解すれば、まだこの洞窟は次々と強大な妖気の気配を感じさせる。ずんずんと洞窟の奥から地響きが聞こえれば、真っ赤な身体に丸く太った巨大な人型の魔物がこちらを見つめていた。

 

「ォ……オオォオ……」

 

 顔は潰れた豚ように醜悪で、動きはかなりゆっくりに見えるものの、こちらを見つめる目は俺をただの獲物としか捉えていないことが分かる。それなら先手必勝。

 俺は一気に突っ走り、赤い巨人の頭の高さまでジャンプすれば、勢いよく顔面のど真ん中をまた突撃の要領で殴る。

 

「ゴギャッ!? オォアアッ! スウウウゥッ」

 

 クリーンヒット。確かに手応えはあった。しかし、巨人は全く怯むことはなく、俺が地面に足をつける前に太い腕で薙ぎ払う。すぐに壁に向かって受け身を取るも、巨人は間髪入れずに勢いよく息を吸い、猛烈な火炎を吐き出す。

 

「ゴバァッ!!」

 

「ぐああああっ!」

 

 全身が火達磨となり、転げ回って火を消そうにも消えることはなく、あまりの激痛にふと普通にド忘れしていたことを思い出す。装備するマガタマには属性相性があることを。

 特にさっき生成された『ワダツミ』に関しては火炎こそ弱点だった。なんてタイミングの悪いことだ。一気に形勢逆転され、全身の青い入れ墨が赤く光っていることが自分が瀕死であることを理解させる。しかし残念ながら回復薬なんて一つ持っていなかった。

 

「次食らったら死ぬ……相手は物理耐性の火炎タイプってところか」

 

 目の前の赤い巨人に対する策を講じるが、俺が現在待っているスキルに全く解決策になるものはなかった。だから俺は決める。物理耐性でも殴り続ければいずれ効くと。

 

「うおおおぉ!」

 

 俺はもう一度巨人に向かって走り、少ない体力を絞って"暴れまくる"。デカく太った腹に目掛けて何度も拳を振るう。

 

「オオォアォ!!」

 

 巨人はまたしても次は両手を組んで、俺を叩き潰さんとハンマーのように腕を振り下ろす。だが次はしっかりと反応が出来る。サイドステップで攻撃を良ければ、巨人の腕は地面を抉るように破壊する。

 

「いい加減、ぶっ倒れろぉ!」

 

 なんど殴っても埒があかない。ただ今はやるしかないという状況からなんとか一瞬の隙を見れば、俺は巨人の攻撃を避けると同時に、壁に向かって三角跳びで後頭部にしがみ付けば、先ほどやられた両手を組んだ拳でハンマーのように脳天を一度殴れば、立て続けに勢いよく顔面に向かって膝蹴りをかます。

 

「ガッ!?」

 

 頭部への集中攻撃のおかげが遂に巨人は一瞬だけ白目を剥いてよろけ、俺はそこに勝機を見出す。

 

「お前のマガツヒを渡せぇ!」

 

 頭にしがみついたまま、振り払われる前に、零距離から拳で顔面を抉る。今までの中で一番のクリーンヒット。巨人の頭蓋骨が砕け散る感覚が拳に伝わる。巨人は漸く完全に気絶し、そのまま後方へぶっ倒れる。

 絶命はしていないものの、大量のマガツヒが溢れ始め、俺はそれを吸収することで『アイスブレス』の使い方を思い出す。

 

 それならばと、俺は気絶する巨人の口をこじ開け、アイスブレスで巨人を内側から凍らせる。そして最後の拳による渾身の一撃で、弱っていた巨人の体は粉々に爆散する。

 

「はぁ……はぁ……っ! 勝った! ぐっ!?」

 

 そうして大量のマガツヒを吸収したマガタマは俺の体の中で暴れ回る。壮烈な不快感に襲われる中、俺は良い期待する。数秒間その感覚に耐えれば、マガタマは動きは静まり、全身が暖かな光に包まれれる。

 

 俺は全快した。

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